説明

塗装制御方法及び塗装制御システム

【課題】 様々な要素に応じた塗装条件の設定を容易かつ自動で行うことができ、しかも作業効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】 自動演算手段13の塗装条件演算部13aによる自動演算によって、塗装条件テーブル12に保持されている塗装仕上げの条件に関わる様々な要素を用いての被塗装物毎の最適な塗装条件となる基準値を求め、塗装装置(塗装ロボット)23の作動制御と協動して塗装機による吹付け制御を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装仕上げに関わる設定を自動で行う塗装ロボットによる塗装制御方法及び塗装制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗装ロボットにおいては、本塗装の準備段階として、塗装スプレーの軌跡を教示し、続いて予測される様々な塗装条件を設定してテスト塗装が行われる。そして、教示された塗装作業によって繰り返し塗装が行われるために、少しでも無駄な塗装や不適当な動作があれば、これが繰り返されるため十分な教示が必要とされている。このため、作業者が塗り残しの有無や塗面の状況、更には塗料の膜厚を確認しながら塗装スプレーの軌跡、塗料の吐出量、塗料の吹付け圧力等の塗装条件を、被塗装物(ワーク)に対して最適となるように繰り返し調整していく。
【0003】
ところが、このような最適となる塗装条件の設定は、熟練を要するばかりか、非常に時間のかかる作業となっている。すなわち、最終的な塗装面の仕上がりに影響を与える要因は上記の塗装条件に限らず、多くの条件があり、これらは互いに一定の関連をもっている。一般的に知られている塗装での条件は、塗料の条件、塗装機の吹付条件、塗装の方法に関する条件があり、当然のことながらこれに被塗装物の条件が加わることになる。
【0004】
更に、塗装機の条件には、塗装機の吹付圧力、塗料の噴出量そしてパターン開きが3大要素としてあり、具体的には塗装機すなわちスプレーガンの調整項目としての重要性が認められている。また、塗装方法の条件は吹付操作条件として、吹付け距離、塗装機の移動速度そして吹付けパターンの塗り合わせ間隔もしくは塗り重ね間隔が同じように3大要素として認識されている。これらの条件は、たとえば塗料の吐出量が変わればパターンや塗り重ねに影響し、塗装膜厚に変化を及ぼすものであり、スプレーガンと被塗装物の間の吹付け距離やスプレーガンの移動する速度が変われば同じように塗装膜厚が変化することも明らかである。
【0005】
したがって、塗装作業においては長年の経験によって、塗装面の仕上がりが左右されるばかりではなく、塗料の使用量や塗装時間にも影響し、その差は生産性・利益に、更には省資源、地球環境にも影響することから、最適な塗装を行うことが常に要求されている。塗装の機械化の最先端を担う塗装ロボットにおいては、これらの要求は同じように、あるいはそれ以上に求められている。
【0006】
塗装条件の設定を容易に行うようにしたものとして、特許文献1では、塗装ガンの被塗装物の種類毎に応じた塗料吐出量、霧化エアー圧あるいはパターンエアー圧等の塗装条件のデータを、被塗装物の種類を示す識別番号と対応してデータ記憶手段に予め記憶しておき、被塗装物の種類の変更時に、条件設定手段に被塗装物の種類番号を入力することによって対応する塗装条件のデータをデータ記憶手段から呼び出し、そのデータに対応した制御信号を塗装ガンの制御装置に送出するとともに、雰囲気条件等によって修正を必要とする場合、補正手段によって条件設定手段に呼び出された塗装条件のデータを補正するようにした自動塗装システムの塗装条件管理装置を提案している。
【特許文献1】実用新案登録第2555619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1に示されるものでは、条件設定手段に被塗装物の種類番号を入力することにより対応する塗装条件のデータが得られるため、塗装条件の設定に際し比較的熟練を要しないものと考えられる。
【0008】
ところが、データ記憶手段に記憶されているデータは、塗装ガンの被塗装物の種類毎に応じた塗料吐出量、霧化エアー圧あるいはパターンエアー圧であって、全て塗料の吐出のみに関わる要素に限られており、前述の塗装機の吹付条件の調整に関わる設定の範囲であり、塗装条件の設定に関わる要素が極めて少ないものとなっている。
【0009】
そのため、たとえば塗料の特性に応じた設定、被塗装物の形状やサイズに応じた設定、吹付け操作に応じた設定、塗装装置に応じた設定、仕上げに応じた設定といった様々な要素に応じた塗装条件の設定を適切に行わなければ、前記噴霧塗料吐出の条件に限っても特定できず、最終仕上げも希望する状態が得られないという問題があった。
【0010】
また、塗装仕様としては、乾燥した塗膜の厚さが何ミクロンで、塗装作業時間を何秒、何分で仕上げる等の条件が示されることが多く、通常は塗料の吐出量や吹付圧力といった吹付条件で示されることはなく、上記その他の条件や経験に基づいて、これらの吹付条件を設定しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、様々な要素に応じた塗装条件の設定を容易かつ自動で行うことができ、しかも作業効率を向上させることができる塗装ロボットによる塗装制御方法及び塗装制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の塗装制御方法は、塗装ロボットの制御装置により塗装機の吹付け条件設定を自動で行う塗装制御方法であって、塗装の仕様に関する条件を入力し、その仕様条件を塗装機の吹付条件値となるように演算処理し、該吹付条件値を塗装機に出力し、前記塗装ロボットの作動制御と協動して塗装機の吹付け制御を行うことを特徴とする。
【0013】
また、前記塗装の仕様に関する吹付条件値として、塗装膜厚及び1塗装サイクル当りの塗装時間を設定し、該塗装時間の必要塗料量から前記塗装機の塗料吐出量を算出し、塗料吐出調節手段及び/又は表示手段へ電気信号として出力するものとする。
【0014】
また、1塗装サイクル当りの必要塗料量を、少なくとも、被塗装物の塗装領域面積、希望膜厚、乾燥塗膜密度、軌跡中の吹付面積割合、塗着効率及び塗料の不揮発分比率を元にして算出するものとする。
【0015】
本発明の塗装制御方法は、塗装仕上げに関わる設定を自動で行う塗装制御方法であって、塗装条件である、塗料条件、被塗装物条件、吹付け操作条件、塗装装置条件、仕上げ条件が入力されると、予めプログラミングされている吐出量自動設定演算式を用いて演算し、その演算結果に応じた電気信号で塗料吐出調節手段を制御し、塗装機の塗料吐出量を制御することを特徴とする。
【0016】
また、被塗装物毎の最適な塗装条件に応じた目標流量データを保持し、その目標流量データと前記塗料吐出調節手段からの流量検出データとの比較による差に応じた前記塗料吐出調節手段に対するフィードバック制御のための流量補正値を求めるものとする。
【0017】
本発明の塗装制御システムは、塗装仕上げに関わる設定を自動で行う塗装制御システムであって、塗装の仕様に関する条件を入力する手段と、その条件を塗装機の吹付条件値となるように演算処理し、前記塗装機に吹付け条件として出力する手段と、前記塗装機を操作する塗装ロボットの作動制御と前記塗装機の吹付け制御を協動して塗装制御を行う出力手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、塗装の仕様条件として、塗料条件、被塗装物条件、吹付け操作条件、塗装装置条件、仕上げ条件を入力する手段と、前記塗装の仕様条件を用い予めプログラミングされている吐出量自動設定演算式を用いて吐出量を演算する手段と、その演算結果を電気信号で出力する手段と、該出力手段からの電気信号により制御される塗料流量制御バルブからの流量を検出する流量計の検出データをフィードバックし、前記演算結果の補正を可能とする補正手段とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明によれば、作業者が求める塗装仕上げに関する条件、すなわち塗装の膜厚をどの位に仕上げるか、あるいは任意の被塗装物に対してどの位の時間(サイクルタイム)で1つの塗装を完了させるかといった条件をそのまま入力することによって、予めプログラムされた演算処理手段が塗装装置の噴霧塗装条件、すなわち変動要素として調整が必要でありかつ容易な塗料吐出量を算出し、この値を出力することによって塗装を制御するため、求める塗装品質、塗装能率での塗装が容易に可能となる。
【0020】
たとえば、1つの塗装サイクル当りの時間を入力することによって、仕上げ時の膜厚を得るために必要な塗料の分量と、その分量から時間当りの塗料吐出量を算出し、また塗料の条件と塗装ロボットの作動制御と連動した吹付け操作条件に基づいた塗装効率より最適な塗料吐出量を算出できるようにしたことにより、適正な塗装条件を容易に、熟練した経験によらず得ることができる。
【0021】
また、本発明によれば、使用する塗装装置や塗料等で定められた仕様値もしくは使用条件値を入力するのに加え、最終目標値とされる塗装仕上げに関する前記条件値を入力し、たとえば塗装仕上げに関わる様々な要素を用いた自動演算により塗装毎の最適な条件とされる基準値となる塗料吐出量が求められるので、様々な要素に応じた塗装条件の設定を容易かつ自動で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の塗装制御システムの概要を説明するための図、図2は、図1の塗装制御装置の詳細を説明するための図、図3及び図4は、図1の塗装制御システムによる塗装制御方法を説明するための図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、塗装制御システムは、塗料の吐出制御と塗装装置(塗装ロボット)23の作動制御とを行う塗装制御装置10と、塗装条件及び塗装状態を示す表示部11とを備えている。なお、表示部11には、タッチパネルが設けられており、画面へのタッチ入力に応じて後述する制御データの入力や図示しないが噴霧手段としてのスプレーガンを有する塗装装置23への作動条件の入力等を行うことができるようになっている。また、図中符号20は電空バルブ、符号21は流量制御バルブ、符号22は流量計を示している。また、これら電空バルブ20、流量制御バルブ21、流量計22は、塗料吐出調節手段を構成している。
【0024】
塗装制御装置10は、塗装条件テーブル12と、自動演算手段13とを有している。塗装条件テーブル12には、塗装を行う場合の様々な要素である、塗装仕様に関する各種の条件が保持される。塗装仕様に関する条件としては、塗料の特性に応じた塗料条件を示す設定データ、被塗装物の形状やサイズに応じた被塗装物条件を示す設定データ、吹付け操作に応じた吹付け操作条件を示す設定データ、塗装機に応じた吹付け条件を示す設定データ、塗装仕上げに関する仕上げ条件を示す設定データ等を含んだ塗装に関わる様々な要素である。
【0025】
また、塗料条件としては、塗膜乾燥密度、不揮発分比率、塗料特性、塗料粘度等があり、被塗装物条件としては、ワークの形状、サイズ等がある。更に、吹付け操作条件としては、塗装ロボットにより動かされる塗装機のオーバースプレー、ピッチ・ストローク等がある。塗装機の条件としては、スプレーガンの種別、塗着効率等の仕様と吐出量、吹付圧力、パターン開き等の吹付け条件等がある。仕上げ条件としては、膜厚、サイクルタイム(塗装時間)の他、塗面の美観仕上げ状態等がある。
【0026】
なお、塗装仕様に関する条件としては、記載されていない細部条件を含め、必要により追加、削除され、これらの塗料条件、被塗装物条件、吹付け操作条件、塗装装置条件、仕上げ条件に限られるものではなく、また環境条件として雰囲気温度、湿度等の他の条件(要素)を含むことも可能である。また、これらの塗装仕様に関する条件は、被塗装物毎に対応した塗装条件テーブル12に保持されるものである。
【0027】
その際、それぞれの塗装条件テーブル12に対し、被塗装物に対応する識別番号を付与しておくことで、自動演算手段13による被塗装物毎の最適な塗装条件の自動演算が行われるとき、その識別番号から塗装対象となる被塗装物に対応した塗装条件テーブル12を識別することが可能となる。ただし、ここでは説明の都合上、ある被塗装物に対しての塗装仕様に関する条件を例示するものとする。
【0028】
自動演算手段13は、少なくとも塗装条件テーブル12の塗装仕様に関する条件と表示部11からの制御データとを元に、自動演算により被塗装物毎の最適な塗装条件となる吹付条件値としての基準値を求めて、たとえば塗装機の吹付条件を制御する信号を出力するものである。図では吹付条件のうち塗料の吐出量を制御する場合の例として示しており、吹付条件演算部13a、塗装表示演算部13b、制御補正演算部13c、吐出量に対する流量補正演算部13d等を有している。
【0029】
吹付条件演算部13aは、塗装条件テーブル12に保持されている塗装条件を元に、自動演算によって塗装毎に最適な条件となる基準値を求め、その基準値に応じた吹付条件制御信号を電空バルブ20に出力する。また、吹付条件演算部13aは、制御補正演算部13c及び/又は流量補正演算部13dからの制御補正値及び/又は流量補正値を受け取ると、その補正値に基づいて基準値を補正した吹付条件制御信号を出力する。
【0030】
塗装表示演算部13bは、吹付条件演算部13aによって求められた基準値に応じてシミュレーション表示を行わせるための塗装表示制御信号を表示部11に出力する。なお、表示部11によるシミュレーションとしては、少なくとも塗装条件が確認できる表示であればよい。
【0031】
流量補正演算部13dは、任意の被塗装物に対する最適な吹付条件に応じた目標流量データを保持し、実際に吐出された流量を測定する流量計22からの流量検出データとの比較により、差があるとき、その差に応じた流量補正値を吹付条件演算部13aに与える。これにより、吹付条件演算部13aによって予め求められた基準値がその流量補正値に基づき補正され、その補正された基準値に基づく吹付条件制御信号が電空バルブ20へ出力されることで、電空バルブ20のフィードバック制御が行われる。なお、流量補正演算部13dに保持される目標流量データは、自動演算を行う吹付条件演算部13aから受け取るようにすればよい。
【0032】
次に、自動演算手段13の吹付条件演算部13aによる自動演算の詳細について前記塗料吐出量の場合を説明する。吹付条件演算部13aは、自動演算手段13内部に設けられた図示しないメモリに記憶されている、次のような吐出量自動設定演算式に基づいて自動演算を行う。
時間当りの吐出量(Fo)=(全吹付乾燥換算重量/ノンボラ(Nv))÷(希望サイクルタイム(Ct)×軌跡中の吹付割合(Sr))
=(吹付乾燥重量/塗着効率(Te))/ノンボラ(Nv)÷(希望サイクルタイム(Ct)×軌跡中の吹付割合(Sr))
=(塗装領域面積(Sa)×希望膜厚(Ft)×乾燥塗膜密度(Dd))/塗着効率(Te)/ノンボラ(Nv)÷(希望サイクルタイム(Ct)×軌跡中の吹付割合(Sr))
=60×10(Sa×Ft×Dd)/(Ct×Sr×Nv×Te)
ここにおいて、ノンボラ(Nv)は塗料不揮発分比率をいう。
【0033】
ここで、図3に示す吐出量の自動設定の一例のように、塗装領域面積(Sa)=50cm×50cm、希望膜厚(Ft)=10μ、乾燥塗膜密度(Dd)=1.1g/cm、希望サイクルタイム(Ct)=30sec、軌跡中の吹付割合(Sr)=80%、ノンボラ(Nv)=25%、塗着効率(Te)=50%とした場合、自動演算手段13による自動演算により、時間当り吐出量(Fo)=55(g/min)が得られることになる。そして、その時間当りの吐出量(Fo)が上述した吹付条件制御信号とされて電空バルブ20に出力される。
【0034】
吹付条件制御信号による吐出量の制御は、流量制御バルブ21によって行われる。この流量制御バルブ21は空気圧力によってバルブの開度が調整されて流量を制御するもので、予め設定された塗料に応じて必要とする空気圧力を、前記吹付条件制御信号として出力された電気信号に応じて吐出する電空バルブ20より受け、開度が調整され、必要な流量を吐出するものである。これらの流量制御は塗料の流量制御に適した装置方法として一般に用いられているものが利用される。
【0035】
次に、塗装制御方法について説明する。
まず、図4に示すように、塗装制御装置10から塗装装置(塗装ロボット)23に作動条件を与える(ステップS1)。作動条件としては、被塗装物毎に異なるものであるが、少なくとも塗装個所、パターン幅、ガン角度、吹付距離とする。また、塗装ロボットの教示において、ストローク、塗り合わせ間隔、塗り回数等の吹付け操作条件が塗装軌跡として入力される。
【0036】
次いで、自動演算手段13の吹付条件演算部13aにより、塗装条件テーブル12に保持されている塗装仕様に関する条件に基づく自動演算によって任意の被塗装物に最適な塗装条件が求められる(ステップS2)。これらの塗装条件のうち、最終的には塗装機の吹付け条件によって最適性が維持できるもので、特に塗料の吐出量は他の塗装仕様の多くに影響される条件で、その制御によって最適な条件を得ることが可能となる要素の1つである。
【0037】
したがって、塗料吐出量によって最適な塗装条件を求める場合、まず吹付条件演算部13aにより、任意の被塗装物に対応した塗装条件テーブル12に保持されている塗装仕様に関する条件を元に、上述した吐出量自動設定演算式に基づく自動演算が行われ、最適な塗装条件となる基準値である、時間当りの吐出量(Fo)が吹付条件制御信号とされて電空バルブ20に出力される(ステップS3)。
【0038】
これにより、吹付条件制御信号に基づき電空バルブ20の開度が制御され、吐出される塗料の分量等の塗装条件が調節される。このとき、流量補正演算部13dにより、任意の被塗装物に対する最適な塗装条件に応じた目標流量データと、流量計22からの流量検出データとが比較され(ステップS4)、差があるとき(ステップS5)、その差に応じた流量補正値が吹付条件演算部13aに与えられる。
【0039】
これにより、吹付条件演算部13aにより、予め求められた基準値がその流量補正値に基づき補正され(ステップS7)、その補正された吹付条件制御信号が電空バルブ20へ出力される。
【0040】
なお、(ステップS5)において、目標流量データと流量検出データとに差がない場合には、(ステップS6)及び(ステップS7)での吹付条件演算部13aによる基準値の補正と電空バルブ20に対するフィードバック制御が行われないことになる(ステップS8)。
【0041】
このように、本実施形態では、自動演算手段13の吹付条件演算部13aによる自動演算によって、塗装条件テーブル12に保持されている塗装仕様に関わる様々な要素を用いての被塗装物毎の最適な塗装条件となる基準値を求め、塗装装置(塗装ロボット)23の作動制御と協動して塗装制御を行うようにしたので、様々な要素に応じた塗装条件の設定を容易かつ自動で行い、しかも作業効率を向上させるようにした。
【0042】
また、本実施形態では、塗装が完了するまでの間において、流量補正演算部13dからの流量補正値に基づき、電空バルブ20の開度が最適な塗装条件となるようにフィードバック制御により調節されるようにしたので、塗装仕上げを均一化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
塗装ロボットによる塗装仕様に関するあらゆる条件を満たした塗装制御及び装置として要求される内容を入力することで特別高度な知識がなくても塗装ロボットの制御装置が最適な塗装条件を設定して塗装するので、作業能率の大幅な向上を達成でき、熟練作業者のいない作業所や中小企業などにおいて広範な活用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の塗装制御システムの概要を説明するための図である。
【図2】図1の塗装制御装置の詳細を説明するための図である。
【図3】図1の塗装制御システムによる吐出量の自動設定の一例を説明するための図である。
【図4】図1の塗装制御システムによる塗装制御方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 塗装制御装置
11 表示部
12 塗装条件テーブル
13 自動演算手段
13a 吹付け条件演算部
13b 塗装表示演算部
13c 制御補正演算部
13d 流量補正演算部
20 電空バルブ
21 流量制御バルブ
22 流量計
23 塗装装置(塗装ロボット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ロボットの制御装置により塗装機の吹付け条件設定を自動で行う塗装制御方法であって、
塗装の仕様に関する条件を入力し、
その仕様条件を塗装機の吹付条件値となるように演算処理し、該吹付条件値を塗装機に出力し、
前記塗装ロボットの作動制御と協動して塗装機の吹付け制御を行う
ことを特徴とする塗装制御方法。
【請求項2】
前記塗装の仕様に関する吹付条件値として、塗装膜厚及び1塗装サイクル当りの塗装時間を設定し、該塗装時間の必要塗料量から前記塗装機の塗料吐出量を算出し、塗料吐出調節手段及び/又は表示手段へ電気信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の塗装制御方法。
【請求項3】
1塗装サイクル当りの必要塗料量を、少なくとも、被塗装物の塗装領域面積、希望膜厚、乾燥塗膜密度、軌跡中の吹付面積割合、塗着効率及び塗料の不揮発分比率を元にして算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装制御方法。
【請求項4】
塗装仕上げに関わる設定を自動で行う塗装制御方法であって、
塗装条件である、塗料条件、被塗装物条件、吹付け操作条件、塗装装置条件、仕上げ条件が入力されると、予めプログラミングされている吐出量自動設定演算式を用いて演算し、その演算結果に応じた電気信号で塗料吐出調節手段を制御し、塗装機の塗料吐出量を制御する
ことを特徴とする塗装制御方法。
【請求項5】
被塗装物毎の最適な塗装条件に応じた目標流量データを保持し、その目標流量データと前記塗料吐出調節手段からの流量検出データとの比較による差に応じた前記塗料吐出調節手段に対するフィードバック制御のための流量補正値を求める
ことを特徴とする請求項4に記載の塗装制御方法。
【請求項6】
塗装仕上げに関わる設定を自動で行う塗装制御システムであって、
塗装の仕様に関する条件を入力する手段と、
その条件を塗装機の吹付条件値となるように演算処理し、前記塗装機に吹付け条件として出力する手段と、
前記塗装機を操作する塗装ロボットの作動制御と前記塗装機の吹付け制御を協動して塗装制御を行う出力手段とを備える
ことを特徴とする塗装制御システム。
【請求項7】
塗装の仕様条件として、塗料条件、被塗装物条件、吹付け操作条件、塗装装置条件、仕上げ条件を入力する手段と、前記塗装の仕様条件を用い予めプログラミングされている吐出量自動設定演算式を用いて吐出量を演算する手段と、その演算結果を電気信号で出力する手段と、該出力手段からの電気信号により制御される塗料流量制御バルブからの流量を検出する流量計の検出データをフィードバックし、前記演算結果の補正を可能とする補正手段とを備えることを特徴とする請求項6に記載の塗装制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−689(P2007−689A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180368(P2005−180368)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】