説明

塗装方法およびディスクホイール

【課題】塗料を塗装された被塗装物の表面が露出するとその部分に錆が発生する。
【解決手段】スポーク16の曲率半径が小さくなる部分の表面には溝40が形成されている。スポーク16に塗装された塗料38の一部は溝40に堆積する。塗料38には、表面張力がスポーク16の表面に平行する矢印Cおよび矢印Dの方向に作用する。ここで、表面張力の作用により曲率半径が小さくなる部分の表面の塗膜が薄くなるが、溝40には塗料38が堆積しており、その箇所における膜厚が確保されるので、スポーク16の表面が露出することはない。これによって、スポーク16の曲率半径が小さくなる部分の表面における錆の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物を塗装する方法および被塗装物としてのディスクホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品について、その表面の保護や装飾などを目的としてその製品の表面に塗料が塗装される場合がある。例えば、特許文献1には、アルミロードホイールの表面に電解着色アルマイト処理、下地防錆処理およびクリヤ塗装を順次実行して、アルミロードホイールの表面に光沢感をもたせる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−329502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塗装の対象となる被塗装物に塗料を塗装すると、その塗料には被塗装物の表面に沿って表面張力が働く。ここで、被塗装物に角や凸状の箇所がある場合、表面張力が働く結果、その角や凸状の箇所において塗膜が途切れて被塗装物の表面が露出してしまう場合がある。上述の特許文献1のように被塗装物の材質が金属でである場合、被塗装物の表面の露出はその箇所に錆が発生する原因となる。
【0004】
本発明は上述の事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料を塗装された被塗装物の表面が露出することを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、屈曲部分を有する被塗装物の表面に塗料を塗装する方法に関する。この塗装方法では、塗料の一部が堆積する溝を屈曲部分の稜線に形成しておく。この態様によれば、塗料を塗装したとき、表面張力の作用により塗膜が途切れやすい屈曲部分の稜線において溝に塗料が堆積するので屈曲部分に十分な膜厚を確保できる。これによって、屈曲部分において塗膜が途切れて被塗装物の表面が露出することを回避できる。
【0006】
本発明の別の態様は、凸状湾曲部分を有する被塗装物の表面に塗料を塗装する方法に関する。この塗装方法では、凸状湾曲部分において曲率半径が小さくなる部分の表面に塗料の一部が堆積する溝を形成しておく。この態様によれば、塗料を塗装したとき、表面張力の作用により塗膜が途切れやすい凸状湾曲部分の曲率半径が小さくなる部分において溝に塗料が堆積するのでその部分に十分な膜厚を確保できる。これによって、曲率半径が小さくなる部分において塗膜が途切れて被塗装物の表面が露出することを回避できる。
【0007】
本発明の別の態様は、屈曲部分を有する車両用ディスクホイールに関する。このディスクホイールは、ディスクホイールの表面に塗装される塗料の一部が堆積する溝が屈曲部分の稜線に形成されている。この態様によれば、ディスクホイールに塗料を塗装したとき、表面張力の作用により塗膜が途切れやすい屈曲部分の稜線において溝に塗料が堆積するので屈曲部分に十分な膜厚を確保できる。これによって、屈曲部分において塗膜が途切れて被塗装物の表面が露出すること回避できる。この結果、屈曲部分における錆の発生を抑制できる。
【0008】
本発明の別の態様は、凸状湾曲部分を有する車両用ディスクホイールに関する。このディスクホイールは、凸状湾曲部分において曲率半径が小さくなる部分の表面に、ディスクホイールの表面に塗装される塗料の一部が堆積する溝が形成されている。この態様によれば、ディスクホイールに塗料を塗装したとき、表面張力の作用により塗膜が途切れやすい凸状湾曲部分の曲率半径が小さくなる部分において溝に塗料が堆積するのでその部分に十分な膜厚を確保できる。これによって、曲率半径が小さくなる部分において塗膜が途切れて被塗装物の表面が露出することを回避できる。この結果、曲率半径が小さくなる部分における錆の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗装方法およびディスクホイールによれば、塗料を塗装された被塗装物の表面が露出することを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態では、被塗装物である車両用ディスクホール(以下、単に「ディスクホイール」という)の表面に塗料を塗装する場合について説明する。
図1は、本実施の形態に係る被塗装物であるディスクホイールの斜視図である。ディスクホイール10は、同図に示すようにホイールディスク12とリム14とが一体化されて構成されている。ホイールディスク12は、例えば6本のスポークを有し、二つのスポークの縁およびホイールディスク12の外周縁によって、6個の開口部18が形成されている。ホイールディスク12の中心にはハブ穴20が、ハブ穴20の周囲にはハブボルトを挿通させるための複数のボルト穴22が、開口部18の縁部分には1個のバルブ穴24が形成されている。
【0011】
本実施の形態では、ディスクホイール10に塗料を塗装する場合、塗料はディスクホイール10の表面全体に塗装されるものとする。このとき、塗装される面はホイールディスク12における、ディスクホイール10を車両に取り付けたときに車体の外側に位置する面(以下「外面」ともいう)やリム14の外周面に限られない。つまり、ホイールディスク12における、ディスクホイール10を車両に取り付けたときに車体の内側に位置する面(以下「内面」ともいう)やリム14の内周面、スポーク16の周囲にも塗料が塗装される。ディスクホイール10における径方向に伸びる各スポーク16の外縁のうち、ディスクホイール10の内面側に位置する外縁25には、ディスクホイール10の径方向に伸びる溝が形成されている。この溝については、図4を用いて後述する。
【0012】
図2は、従来のディスクホイールが有するスポーク26の径方向の断面図である。この従来のディスクホイールは、基本的な形状は図1に示したディスクホイール10と同様であるが、スポークに溝が形成されていない点で異なる。ここで、このディスクホイールの表面全体には塗料が塗装されているものとする。同図に示すように、スポーク26の角に対応する部分28、30、32および34は凸状に湾曲しており、そのうちディスクホイールの外面側に位置する部分28および30は鈍角に湾曲し、内面側に位置する部分32および34は鋭角に湾曲している。
【0013】
図3は、図2に示したスポーク26の角に対応する部分のうち、ディスクホイールの内面側に位置する部分34を拡大した図である。図3において、スポーク26の表面に塗装された塗料36を斜線で示す。塗料36には表面張力がスポーク26の表面に平行する矢印Aおよび矢印Bの方向に作用する。その結果、同図において破線で示した曲率半径が小さくなる部分において塗膜が途切れてしまい、スポーク26の表面が露出してしまう。このようにスポーク26の表面が露出するとその箇所に錆が発生しうる。
【0014】
図4は、本実施の形態に係るディスクホイール10が有するスポーク16の径方向の断面の一部を拡大した図である。同図は、スポーク16における、図2で示したディスクホイールの内面側に位置する部分34と対応する部分の拡大図である。スポーク16は、図4において破線で示した曲率半径が小さくなる部分の表面に溝40が形成されている点で従来のディスクホイールが有するスポーク26とは異なる。図4ではスポーク16に形成された溝40の断面が示されている。溝40は断面が半円となる形状であり、その深さは塗料の膜厚をtとするとき、例えば0.5t〜1.5tである。
【0015】
図4において、スポーク16の表面に塗装された塗料38を斜線で示す。スポーク16に塗装された塗料38の一部は溝40に堆積する。塗料38には、表面張力がスポーク16の表面に平行する矢印Cおよび矢印Dの方向に作用する。ここで、表面張力の作用により曲率半径が小さくなる部分の表面の塗膜が薄くなるが、溝40には塗料38が堆積しており、その箇所における膜厚が確保されるので、スポーク16の表面が露出することはない。これによって、スポーク16の曲率半径が小さくなる部分の表面における錆の発生を抑制できる。
【0016】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0017】
本実施の形態では、被塗装物がディスクホイール10としたが、被塗装物はこれには限られない。
本実施の形態では、スポーク16の凸状に湾曲した部分の表面に溝40を形成したが、溝40を形成する箇所はこれに限られない。例えば、スポークの角が屈曲して角張っている場合にはその屈曲部分の稜線に溝が形成されてもよい。これによっても、溝に塗料が堆積するのでスポークの表面の露出を回避でき、錆の発生を抑制できる。
本実施の形態では、溝40はスポーク16に形成されたが、溝が形成する部分はこれに限られない。例えば、図1に示したホイールディスク12の外面におけるハブ穴20やバルブ穴24の縁部分に溝が形成されてもよい。これによっても、溝に塗料が堆積するので各部分の表面の露出を回避でき、錆の発生を抑制できる。
【0018】
本実施の形態では、鋭角に湾曲した部分の表面に溝40を形成したが、溝40を形成する箇所はこれに限られず、鈍角に湾曲した部分に形成されてもよい。例えば、スポーク16の角に対応する凸状に湾曲した部分のうち、鈍角に湾曲した部分の表面に溝を形成してもよい。これによっても、溝に塗料が堆積するのでスポーク16の表面の露出を回避でき、錆の発生を抑制できる。
本実施の形態では、溝をその断面が半円となるような形状に形成したが、溝の形状はこれには限られない。すなわち、溝の形状は、塗料が堆積して膜厚を確保できる形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る被塗装物であるディスクホイールの斜視図である。
【図2】従来のディスクホイールが有するスポークの径方向の断面図である。
【図3】図2に示したスポークの角に対応する部分のうち、ディスクホイールの内面側に位置する部分を拡大した図である。
【図4】本実施の形態に係るディスクホイールが有するスポークの径方向の断面の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0020】
10 ディスクホイール、 12 ホイールディスク、 14 リム、 16 スポーク、 18 開口部、 20 ハブ穴、 22 ボルト穴、 24 バルブ穴、 26 スポーク、 36、38 塗料、 40 溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部分を有する被塗装物の表面に塗料を塗装する方法であって、塗料の一部が堆積する溝を該屈曲部分の稜線に形成しておくことを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
凸状湾曲部分を有する被塗装物の表面に塗料を塗装する方法であって、該凸状湾曲部分において曲率半径が小さくなる部分の表面に塗料の一部が堆積する溝を形成しておくことを特徴とする塗装方法。
【請求項3】
屈曲部分を有する車両用ディスクホイールであって、該ディスクホイールの表面に塗装される塗料の一部が堆積する溝が該屈曲部分の稜線に形成されていることを特徴とするディスクホイール。
【請求項4】
凸状湾曲部分を有する車両用ディスクホイールであって、該凸状湾曲部分において曲率半径が小さくなる部分の表面に、該ディスクホイールの表面に塗装される塗料の一部が堆積する溝が形成されていることを特徴とするディスクホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−185555(P2007−185555A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3263(P2006−3263)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】