説明

塗装方法

【課題】 自動車ボディを構成する部材を、水性塗料を用いて、効率的に塗装することができながら、しかも、部材の外側面の外観不良を低減することのできる、塗装方法を提供すること。
【解決手段】 3コート1ベーク方式、2コート1ベーク方式または1コート1ベーク方式の塗装方法において、部材の内側面を塗装した後、20分以内に外側面を塗装する。または、部材の外側面を塗装した後、内側面を塗装する。または、部材の外側面のみを塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装方法、詳しくは、自動車ボディを構成する部材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディを構成する金属や樹脂からなるパネルなどの部材の塗装方法として、まず、電着塗装により下塗りし、次いで、中塗りした後、仕上げに上塗りすることが、広く知られている。また、上塗り工程では、まず、着色塗料でベース塗装し、その後、クリア塗料でクリア塗装することが普及している。
このような塗装方法において、近年、環境負荷を低減する観点から、中塗りおよび上塗りするための塗料として、従来から用いられている有機溶剤系の塗料から、水系の塗料(水性塗料)へ移行することが、進められている。
【0003】
そして、このような水性塗料による中塗りおよび上塗りでは、水性塗料で中塗りした後、ウエット状態のまま着色水性塗料でカラーベース塗装し、さらに、ウエット状態のままクリア塗装した後に、焼き付ける、3コート1ベーク方式の塗装方法が、生産効率の向上を図れる観点より、検討されている。
この3コート1ベーク方式では、例えば、各塗装工程において、塗料をウエット状態(ウエットオンウエット)で重ねて塗工することから、中塗層とベース層と間、あるいは、ベース層とクリア層との間での混層を防止し、また、焼付工程での残留水分の突沸を防止すべく、中塗工程とベース塗装工程との間、および、ベース塗装工程とクリア塗装工程との間で、それぞれ予備加熱(プレヒート)することが提案されている。
【0004】
例えば、中塗工程において、水性第1着色塗料を塗装し、その塗膜を予備加熱して塗膜粘度を1×106mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒-1)以上に調整した後に、ベース塗装工程において、水性第2着色塗料を塗装し、プレヒートまたはエアブローを施して水性第2着色塗料の水分含有量を10重量%以下とした後、クリア塗装工程において、さらにクリア塗料を塗装することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、自動車ボディの部材には、例えば、ドアパネルやエンジンルーム内などの部材があるが、ドアパネルなどでは、車外からの外観のみならず、車内からの外観も重要であるため、その外側面および内側面の両面を塗装する必要がある。
しかし、上記の塗装方法の各塗装工程において、ドアパネルの内側面を塗装した後に、外側面を塗装すると、内側面の塗装時には、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着する。そして、外側面の塗装時には、その付着したダストが、外側面に対して塗装される水性塗料となじまずに、そのまま粒状に残存して、外側面に塗装されるウエット状態の塗膜に凹凸を生じて、その結果、外側面に外観不良を生じるという不具合がある。
【0006】
また、エンジンルーム内などでは、車外からの外観、つまり、外側面の外観は、重要である一方で、内側面の外観は、それほど重要とされない。さらには、同じ内側面でも、外観要求レベルの高いところと低いところがある。
そこで、本発明の目的は、自動車ボディを構成する部材を、水性塗料を用いて、効率的に塗装することができながら、しかも、部材の外側面の外観不良を低減することのできる、塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにしたことを特徴としている。
【0008】
この方法によれば、ベース塗装工程において、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、その付着したダストが、外側面に塗装される水性塗料により吸収される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
その結果、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、ベース塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後のクリア塗装により仕上げられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0009】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程を実施した後、20分以内に前記外側塗装工程を実施することをも特徴としている。
【0010】
この方法によれば、ベース塗装工程において、内側塗装工程を実施した後、20分以内に外側塗装工程を実施する。そうすると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、内側塗装工程の実施後から、外側塗装工程の実施開始までの時間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、中塗りされた水性塗料中に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが、少ない間に、外側面に水性塗料が塗装される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
【0011】
その結果、ベース塗装工程において、内側塗装工程の実施後から外側塗装工程の実施開始までの時間を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、ベース塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後のクリア塗装により仕上げられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0012】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施する、塗装方法を含んでいる。
【0013】
この方法によれば、ベース塗装工程において、外側塗装工程を実施した後、内側塗装工程を実施する。そうすると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面に水性塗料を塗装することができる。
【0014】
その結果、ベース塗装工程において、外側塗装工程と内側塗装工程との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、ベース塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後のクリア塗装により仕上げられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0015】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにした、塗装方法を含んでいる。
【0016】
この方法によれば、中塗工程において、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、その付着したダストが、外側面に塗装される水性塗料により吸収される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
その結果、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
【0017】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程を実施した後、10分以内に前記外側塗装工程を実施する、塗装方法を含んでいる。
【0018】
この方法によれば、中塗工程において、内側塗装工程を実施した後、10分以内に外側塗装工程を実施する。そうすると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、内側塗装工程の実施後から、外側塗装工程の実施開始までの時間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面に水性塗料が塗装される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
【0019】
その結果、中塗工程において、内側塗装工程の実施後から外側塗装工程の実施開始までの時間を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施する、塗装方法を含んでいる。
【0020】
この方法によれば、中塗工程において、外側塗装工程を実施した後、内側塗装工程を実施する。そうすると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面に水性塗料を塗装することができる。
【0021】
その結果、中塗工程において、外側塗装工程と内側塗装工程との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記中塗工程および前記ベース塗装工程の少なくともいずれかの工程では、前記部材の外側面のみを塗装することを特徴としている。
【0022】
この方法によれば、中塗工程およびベース塗装工程の少なくともいずれかの工程では、部材の外側面のみを塗装する。そのため、この方法を適用する部材として、外側面の外観ほど内側面の外観が要求されない部材を選択しておけば、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着しても、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、クリア塗装により仕上げることができる。
【0023】
その結果、中塗工程およびベース塗装工程の少なくともいずれかの工程における部材の内側面を塗装する工程を省略できながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、上記の塗装方法では、前記中塗工程と前記ベース塗装工程との間には、中塗りされた前記部材を予備加熱する第1予備加熱工程が設けられ、前記ベース塗装工程と前記クリア塗装工程との間には、ベース塗装された前記部材を予備加熱する第2予備加熱工程が設けられていることが好適である。
【0024】
第1予備加熱工程を設けることにより、中塗りされたウエット状態の塗膜と、ベース塗装される水性塗料との間の混層を防止することができる。また、第2予備加熱工程を設けることにより、ベース塗装されたウエット状態の塗膜と、クリア塗装される塗料との間の混層を防止することができる。
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにした、塗装方法を含んでいる。
【0025】
この方法によれば、塗装工程において、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、その付着したダストが、外側面に塗装される水性塗料により吸収される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
その結果、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後のクリア塗装により仕上げられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0026】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記内側塗装工程を実施した後、20分以内に前記外側塗装工程を実施する、塗装方法を含んでいる。
【0027】
この方法によれば、塗装工程において、内側塗装工程を実施した後、20分以内に外側塗装工程を実施する。そうすると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着しても、内側塗装工程の実施後から、外側塗装工程の実施開始までの時間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面に水性塗料が塗装される。そのため、外側面に塗装される水性塗料に、外側面に付着したダストをなじますことができる。
【0028】
その結果、塗装工程において、内側塗装工程の実施後から外側塗装工程の実施開始までの時間を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後に焼き付けられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0029】
また、本発明は、自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施する、塗装方法を含んでいる。
【0030】
この方法によれば、塗装工程において、外側塗装工程を実施した後、内側塗装工程を実施する。そうすると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面に水性塗料を塗装することができる。
【0031】
その結果、塗装工程において、外側塗装工程と内側塗装工程との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。とりわけ、この方法では、塗装工程において、外側面に凹凸が生じることを防止できるので、その後に焼き付けられる外側面の外観を、平滑性に優れた外観とすることができる。
【0032】
また、上記の発明では、前記塗装工程は、前記部材を水性塗料でソリッド塗装するソリッド塗装工程を備えており、前記ソリッド塗装工程は、前記内側塗装工程および前記外側塗装工程を備えていることが好適である。
ソリッド塗装により、1コート1ベーク方式の塗装方法を実現することができ、効率よく塗装することができる。
【0033】
また、上記の前記塗装工程に代替して、前記塗装工程は、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でソリッド塗装するソリッド塗装工程とを備えており、前記中塗工程および前記ソリッド塗装工程は、前記内側塗装工程および前記外側塗装工程をそれぞれ備えていることも好適である。
中塗り後にソリッド塗装することにより、2コート1ベーク方式の塗装方法を実現することができ、効率よく塗装することができる。
【0034】
また、この塗装方法では、前記中塗工程と前記ソリッド塗装工程との間には、中塗りされた前記部材を予備加熱する予備加熱工程が設けられていることが好適である。
予備加熱工程を設けることにより、中塗りされたウエット状態の塗膜と、ソリッド塗装される水性塗料との間の混層を防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の塗装方法によれば、自動車ボディを構成する部材を、水性塗料を用いて、効率的に塗装することができながら、しかも、部材の外側面の外観不良を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の塗装方法の一実施形態である、3コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。また、図2は、図1に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。3コート1ベーク方式の塗装方法では、効率のよい塗装を実現することができる。
この塗装方法は、ドアパネルなどの自動車ボディを構成する部材を塗装するために用いられ、まず、電着塗装により下塗りされた部材を、まず、中塗ブース1において中塗りする(中塗工程)。
【0037】
中塗ブース1は、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側中塗塗装ブース2と、その内側中塗塗装ブース2の下流側(部材の搬送方向の下流側、以下同様。)に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側中塗塗装ブース3とを備えている。
中塗りに用いられる水性塗料は、特に制限されないが、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有する中塗水性塗料が用いられる。
【0038】
樹脂成分としては、親水性基(例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合など)と、硬化剤と反応する官能基(例えば、水酸基)を有する、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの公知の水性樹脂が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂が用いられる。
【0039】
このような樹脂成分は、親水性基の種類により、例えば、塩基性化合物または酸で中和して、水溶化または水分散化するか、あるいは、ポリオキシエチレン結合するものなどでは、そのまま水溶化または水分散化させる。
硬化剤としては、特に制限されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、より具体的には、親水性メラミンが挙げられ、また、ブロックポリイソシアネートとしては、より具体的には、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、例えば、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0040】
硬化剤の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、60重量部以下、好ましくは、20〜50重量部である。
また、顔料としては、特に制限されず、通常の着色顔料やメタリック顔料が挙げられる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、クロム酸ストロンチウム、シアナミド鉛、モノアゾイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら(赤)、鉛丹、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩基性クロム酸鉛、酸化クロム、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられる。また、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、フレーク状酸化アルミウム、パールマイカ、フレーク状マイカなどが挙げられる。これら顔料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0041】
顔料の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、120重量部以下、好ましくは、20〜100重量部である。
また、中塗水性塗料には、架橋反応を促進させるために、好ましくは、ブロック剤の解離触媒や酸触媒を含有させる。ブロック剤の解離触媒としては、特に制限されず、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。酸触媒としては、例えば、リン酸系、スルホン酸系の酸触媒が挙げられる。
【0042】
触媒の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは、0.01〜3重量部である。
また、中塗水性塗料には、必要に応じて、光干渉性顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、反応促進剤(例えば有機スズ化合物など)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤など、公知の添加剤を適宜配合することもできる。
【0043】
そして、中塗水性塗料は、上記の各成分を水とともに公知の方法によって配合して、樹脂成分を水溶化または水分散化することにより、例えば、その固形分濃度が20〜60重量%、好ましくは、35〜60重量%となるように調製される。
また、中塗水性塗料の塗装方法は、特に制限されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが用いられる。より具体的には、例えば、ベル塗装法が用いられ、その塗装条件は、例えば、ベル回転速度20000〜30000min-1、シェービングエア圧力0.5〜1.5kg/cm2、ガン距離20〜30cm、吐出量150〜350mLである。
【0044】
また、中塗水性塗料の塗装膜厚は、焼付け後の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、13〜35μmである。
そして、この塗装方法では、中塗ブース1において、まず、内側中塗塗装ブース2で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後(内側塗装工程)、次いで、外側中塗塗装ブース3で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する(外側塗装工程)。そして、このように、まず、内側中塗塗装ブース2で、部材の内側面を塗装した後、次いで、外側中塗塗装ブース3で、部材の外側面を塗装すると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される中塗水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着し、その付着したダストの上から、外側面に対して中塗水性塗料が塗装される。
【0045】
そのため、この塗装方法では、内側中塗塗装ブース2での部材の内側面の塗装終了後から、外側中塗塗装ブース3での部材の外側面の塗装開始までの間が、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、3分以内となるように、工程管理する。
このように工程管理すれば、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、下塗りされた塗膜に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面に中塗水性塗料が塗装される。つまり、外側面に付着したダストの粘度(ダストの固形分濃度)が上昇しないうちに、外側面に中塗水性塗料が塗装される。そうすると、外側面に付着したダストが、外側面に対して塗装される中塗水性塗料と相溶し、吸収されるので、外側面に塗装される中塗水性塗料になじますことができる。
【0046】
その結果、中塗工程において、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの時間を工程管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、中塗ブース1(内側中塗塗装ブース2および外側中塗塗装ブース3を含む。)内の水蒸発可能量(飽和水蒸気量に対する絶対湿度の差)は、2〜11g/kg、好ましくは、3〜6g/kgに管理する。中塗ブース1内の水蒸発可能量が、2g/kgより低いと、塗装時にタレを生じる場合があり、11g/kgより高いと、仕上がりでの外観が低下する場合がある。
【0047】
なお、中塗ブース1(内側中塗塗装ブース2および外側中塗塗装ブース3を含む。)内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
そして、この塗装方法では、中塗りされた部材を、第1熱風乾燥炉4で予備加熱する(第1予備加熱工程)。
第1熱風乾燥炉4は、第1ホットエアゾーン5と、第1ホットエアゾーン5の下流側に配置される第2ホットエアゾーン6と、第2ホットエアゾーン6の下流側に配置される第1クーリングゾーン7とを備えている。
【0048】
第1熱風乾燥炉4において、中塗りされた部材は、まず、第1ホットエアゾーン5で、予備加熱される(上流側予備加熱工程)。第1ホットエアゾーン5において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65℃〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第1ホットエアゾーン5における熱風の吹き出し温度は、次に述べる第2ホットエアゾーン6における熱風の吹き出し温度よりも、低く設定する。
【0049】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、中塗水性塗料の固形分濃度が急激に上昇して、塗膜の流動性が低下する場合がある。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0050】
なお、第1ホットエアゾーン5内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第1ホットエアゾーン5で予備加熱された部材は、次いで、第2ホットエアゾーン6で、予備加熱される(下流側予備加熱工程)。第2ホットエアゾーン6において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、70〜100℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第2ホットエアゾーン6における熱風の吹き出し温度は、第1ホットエアゾーン5における熱風の吹き出し温度よりも、高く設定する。
【0051】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、熱風の吹き出しのためのエネルギー消費が増大する。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0052】
なお、第2ホットエアゾーン6内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第2ホットエアゾーン6で予備加熱された部材は、次いで、第1クーリングゾーン7で、冷却される(冷却工程)。第1クーリングゾーン7において、部材は、冷風により冷却される。冷却の条件は、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0053】
そして、このような第1熱風乾燥炉4での予備加熱により、部材の内側面および外側面に塗装された中塗水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、中塗層21(図2参照)を形成する。
また、このようにして中塗層21を形成する中塗水性塗料の塗膜の水に対する溶出率(水溶出率)は、55重量%以下となるように調製する。中塗水性塗料の塗膜の水溶出率が55重量%以下であれば、中塗層21と、ベース層22との間の混層を防止することができる。なお、水溶出率が55重量%以下となるように調製するには、例えば、中塗水性塗料中にウレタンエマルションなどを添加することが好適である。また、第1ホットエアゾーン5にて、部材の表面の風速が0.5〜2.0m/sとなるように、75℃の熱風にて1.3分加温後、第2ホットエアゾーン6にて、80℃の熱風にて1.3分加温することも好適である。
【0054】
なお、中塗水性塗料の塗膜の水溶出率は、例えば、次のように測定することができる。すなわち、
操作1:
(1)アルミホイル上に中塗水性塗料を厚み25μmで塗装し、これを乾燥炉内において1次予備加熱工程での加熱温度(熱風の吹き出し温度)とほぼ同様の温度(例えば、80℃で5分)で加熱(プレヒート)する。その後、これをデシケータ内で室温まで放冷した後、アルミホイルと中塗水性塗料との合計重量Wbを測定する。
(2)上記プレヒート後のアルミホイルと中塗水性塗料とを、さらに、焼き付け温度とほぼ同様の温度(例えば、140℃で60分)で加熱し、その後、これをデシケータ内で室温まで放冷した後、アルミホイルと中塗水性塗料との合計重量Wcを測定する。
(3)上記で使用したアルミホイルの重量Waを測定する。
操作2:
(1)アルミホイル上に中塗水性塗料を厚み25μmで塗装し、これを乾燥炉内において1次予備加熱工程での加熱温度(熱風の吹き出し温度)とほぼ同様の温度(例えば、80℃で5分)で加熱(プレヒート)する。その後、これをデシケータ内で室温まで放冷した後、アルミホイルと中塗水性塗料との合計重量Wdを測定する。
(2)上記プレヒート後のアルミホイルと中塗水性塗料とを、30℃の純水または脱イオン水に所定時間(例えば、60分間)浸漬する。取り出し後、焼き付け温度とほぼ同様の温度(例えば、140℃で60分)で加熱し、その後、これをデシケータ内で室温まで放冷した後、アルミホイルと中塗水性塗料との合計重量Weを測定する。
(3)上記で使用したアルミホイルの重量Wfを測定する。
計算:
(1)プレヒート後固形分重量を、下記式より算出する。
【0055】
プレヒート後固形分重量A=(Wd−Wf)(Wc−Wa)/(Wb−Wa)
(2)水溶出重量を、下記式より算出する。
水溶出重量B=(Wd−Wf)(Wc−Wa)/(Wb−Wa)−(We−Wf)
(3)水溶出率を、下記式より算出する。
水溶出率=水溶出重量B/プレヒート後固形分重量A×100 (%)
そして、このような第1熱風乾燥炉4での予備加熱では、まず、第1ホットエアゾーン5において、部材がより低い温度で予備加熱された後に、第2ホットエアゾーン6において、部材がより高い温度で予備加熱される。そのため、第1ホットエアゾーン5において、塗装された中塗水性塗料の流動性が確保され、均一な厚みの塗膜が形成された後に、第2ホットエアゾーン6において、次に形成されるベース層22(図2参照)との混層やワキの発生を防止することができる塗膜を形成することができる。その結果、中塗水性塗料を効率よく予備加熱することができ、しかも、予備加熱された塗膜に、良好な性状を付与することができる。
【0056】
次いで、この塗装方法では、ベース塗装ブース8において、ベース塗装する(ベース塗装工程)。
ベース塗装ブース8は、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ベース塗装ブース9と、その内側ベース塗装ブース9の下流側に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ベース塗装ブース10とを備えている。
【0057】
ベース塗装に用いられる水性塗料は、特に制限されず、中塗水性塗料と同様の成分からなり、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有するベース水性塗料が用いられる。例えば、カルボキシル基や水酸基などを有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂成分と、ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤と、顔料と、その他の添加剤とを、水に溶解または分散させることにより、調製することができる。
【0058】
なお、顔料として、例えば、アルミニウム粉、フレーク状酸化アルミウム、パールマイカ、フレーク状マイカなどのメタリック顔料を用いれば、メタリック調またはパール調の塗膜を形成することができる。また、ベース水性塗料における顔料の配合量は、ベース塗装により形成される塗膜が透明性を有し、その塗膜を介して中塗層21の色彩を目視で認識できる程度の配合量とされる。
【0059】
また、ベース水性塗料は、その固形分濃度が、例えば、20〜50重量%、好ましくは、25〜45重量%となるように調製される。
また、ベース水性塗料は、中塗層21に対する接触角が、40°以上、好ましくは、55°以上となるように調製する。ベース水性塗料の中塗層21に対する接触角が40°以上であれば、中塗層21と、ベース層22(図2参照)との間の混層を防止することができる。なお、接触角が40°以上となるように調製するには、例えば、表面調整剤などを添加することが好適である。また、第1ホットエアゾーン5にて、部材の表面の風速が0.5〜2.0m/sとなるように、75℃の熱風にて1.3分加温後、第2ホットエアゾーン6にて、80℃の熱風にて1.3分加温することも好適である。
【0060】
なお、接触角は、中塗層21の表面にベース水性塗料を滴下し、その液滴の傾斜角度を市販の接触角測定計で測定することにより、求めることができる。
また、ベース水性塗料の塗装方法は、特に制限されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが用いられる。より具体的には、例えば、ベル塗装法が用いられ、その塗装条件は、例えば、ベル回転速度25000〜35000min-1、シェービングエア圧力1.0〜2.0kg/cm2、ガン距離20〜30cm、吐出量150〜350mLである。
【0061】
また、ベース水性塗料の塗装膜厚は、焼付け後の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、10〜25μmである。
そして、この塗装方法では、ベース塗装ブース8において、まず、内側ベース塗装ブース9で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後(内側塗装工程)、次いで、外側ベース塗装ブース10で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する(外側塗装工程)。そして、このように、まず、内側ベース塗装ブース9で、部材の内側面を塗装した後、次いで、外側ベース塗装ブース10で、部材の外側面を塗装すると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装されるベース水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着し、その付着したダストの上から、外側面に対してベース水性塗料が塗装される。
【0062】
そのため、この塗装方法では、内側ベース塗装ブース9での部材の内側面の塗装終了後から、外側ベース塗装ブース10での部材の外側面の塗装開始までの間が、20分以内、好ましくは、15分以内、より好ましくは、10分以内となるように、工程管理する。
このように工程管理すれば、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、ウエット状態の中塗層21に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面にベース水性塗料が塗装される。つまり、外側面に付着したダストの粘度(ダストの固形分濃度)が上昇しないうちに、外側面にベース水性塗料が塗装される。そうすると、外側面に付着したダストが、外側面に対して塗装されるベース水性塗料と相溶し、吸収されるので、外側面に塗装されるベース水性塗料になじますことができる。
【0063】
その結果、ベース塗装工程において、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの時間を工程管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、ベース塗装ブース8(内側ベース塗装ブース9および外側ベース塗装ブース10を含む。)内の水蒸発可能量(飽和水蒸気量に対する絶対湿度の差)は、2〜11g/kg、好ましくは、3〜6g/kgに管理する。ベース塗装ブース8内の水蒸気蒸発可能量が、2g/kgより低いと、塗装時にタレを生じる場合があり、11g/kgより高いと、仕上がりでの外観が低下する場合がある。
【0064】
なお、ベース塗装ブース8(内側ベース塗装ブース9および外側ベース塗装ブース10を含む。)内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
そして、この塗装方法では、ベース塗装された部材を、第2熱風乾燥炉11で予備加熱する(第2予備加熱工程)。
第2熱風乾燥炉11は、第3ホットエアゾーン12と、第3ホットエアゾーン12の下流側に配置される第4ホットエアゾーン13と、第2ホットエアゾーン6の下流側に配置される第2クーリングゾーン14とを備えている。
【0065】
第2熱風乾燥炉11において、ベース塗装された部材は、まず、第3ホットエアゾーン12で、予備加熱される(上流側予備加熱工程)。第3ホットエアゾーン12において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第3ホットエアゾーン12における熱風の吹き出し温度は、次に述べる第4ホットエアゾーン13における熱風の吹き出し温度よりも、低く設定する。
【0066】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ベース水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、ベース水性塗料の固形分濃度が急激に上昇して、塗膜の流動性が低下する場合がある。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ベース水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0067】
なお、第3ホットエアゾーン12内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第3ホットエアゾーン12で予備加熱された部材は、次いで、第4ホットエアゾーン13で、予備加熱される(下流側予備加熱工程)。第4ホットエアゾーン13において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、70〜100℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第4ホットエアゾーン13における熱風の吹き出し温度は、第3ホットエアゾーン12における熱風の吹き出し温度よりも、高く設定する。
【0068】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ベース水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、熱風の吹き出しのためのエネルギー消費が増大する。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ベース水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0069】
なお、第4ホットエアゾーン13内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第4ホットエアゾーン13で予備加熱された部材は、次いで、第2クーリングゾーン14で、冷却される(冷却工程)。第4クーリングゾーン14において、部材は、冷風により冷却される。冷却の条件は、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0070】
そして、このような第2熱風乾燥炉11での予備加熱により、部材の内側面および外側面に塗装されたベース水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、ベース層22を形成する。
このような第2熱風乾燥炉11での予備加熱では、まず、第3ホットエアゾーン12において、部材がより低い温度で予備加熱された後に、第4ホットエアゾーン13において、部材がより高い温度で予備加熱される。そのため、第3ホットエアゾーン12において、塗装されたベース水性塗料の流動性が確保され、均一な厚みの塗膜が形成された後に、第4ホットエアゾーン13において、次に形成されるクリア層23(図2参照)との混層やワキの発生を防止することができる塗膜を形成することができる。その結果、ベース水性塗料を効率よく予備加熱することができ、しかも、予備加熱された塗膜に、良好な性状を付与することができる。
【0071】
次いで、この塗装方法では、クリア塗装ブース15において、クリア塗装する(クリア塗装工程)。
クリア塗装ブース15は、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側クリア塗装ブース16と、その内側クリア塗装ブース16の下流側に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側クリア塗装ブース17とを備えている。
【0072】
クリア塗装に用いられる塗料は、特に制限されず、公知のクリア塗料が用いられる。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂成分と、ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤と、その他の添加剤とを、有機溶剤または水に溶解または分散させることにより、調製することができる。
【0073】
また、クリア塗料には、必要に応じて、透明性を阻害しない範囲において、ベースカラー顔料やメタリック顔料を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤などを適宜含有させることができる。
また、クリア塗料は、その固形分濃度が、例えば、30〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%となるように調製される。
【0074】
また、クリア塗料の塗装方法は、特に制限されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが用いられる。好ましくは、ベル塗装法が用いられる。
また、クリア塗料の塗装膜厚は、焼付け後の膜厚として、例えば、10〜60μm、好ましくは、25〜50μmである。
そして、この塗装方法では、クリア塗装ブース15において、まず、内側クリア塗装ブース16で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、外側クリア塗装ブース17で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する。
【0075】
そして、この塗装方法では、クリア塗装された部材を、焼き付け炉18において、焼き付ける(焼付工程)。焼き付けは、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの公知の焼き付け方法が用いられる。焼き付け温度は、例えば、80〜170℃、好ましくは、120〜約160℃であり、焼き付け時間は、20〜40分程度である。
これによって、図2に示すように、下塗層20の上に、中塗層21、ベース層22およびクリア層23が積層された塗膜が形成される。
【0076】
このようにして形成された3層からなる塗膜は、上記したように、中塗層21、ベース層22およびクリア層23の各層において、外側面に凹凸が生じることが防止されているので、良好な外観を有している。
なお、上記の説明では、中塗ブース1およびベース塗装ブース8において、まず、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装したが、例えば、図3に示す工程図のように、中塗ブース1およびベース塗装ブース8において、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装してもよい。
【0077】
すなわち、図3では、中塗ブース1は、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側中塗塗装ブース3と、外側中塗塗装ブース3の下流側に配置される部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側中塗塗装ブース2とを備えている。また、ベース塗装ブース8は、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ベース塗装ブース10と、外側ベース塗装ブース10の下流側に配置される部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ベース塗装ブース9とを備えている。
【0078】
なお、図3において、上記した構成と同様の構成には、上記と同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
そして、この塗装方法では、中塗ブース1において、まず、外側中塗塗装ブース3で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後(外側塗装工程)、内側中塗塗装ブース2で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装する(内側塗装工程)。
【0079】
このように、外側中塗塗装ブース3で、部材の外側面を塗装した後、内側中塗塗装ブース2で、部材の内側面を塗装すると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される中塗水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面に中塗水性塗料を塗装することができる。
【0080】
その結果、中塗工程において、外側中塗塗装ブース3での部材の外側面の塗装と、内側中塗塗装ブース2での部材の内側面の塗装との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、この塗装方法では、ベース塗装ブース8において、まず、外側ベース塗装ブース10で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後(外側塗装工程)、次いで、内側ベース塗装ブース9で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装する(内側塗装工程)。
【0081】
このように、まず、外側ベース塗装ブース10で、部材の外側面を塗装した後、次いで、内側ベース塗装ブース9で、部材の外側面を塗装すると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装されるベース水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面にベース水性塗料を塗装することができる。
【0082】
その結果、ベース塗装工程において、外側ベース塗装ブース10での部材の外側面の塗装と、内側ベース塗装ブース9での部材の内側面の塗装との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
【0083】
また、図3に示す工程図では、中塗ブース1およびベース塗装ブース8の両方において、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装したが、中塗ブース1およびベース塗装ブース8のいずれか一方のブースにおいて、図3に示す工程図のように、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装し、そして、他方のブースにおいて、図1に示す工程図のように、まず、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装してもよい。
【0084】
また、部材が、エンジンルーフパネルなどである場合には、車外からの外観、つまり、外側面の外観は、重要である一方で、内側面の外観は、それほど重要とされないので、そのような場合には、図4に示す工程図のように、中塗ブース1およびベース塗装ブース8において、部材の内側面(例えば、エンジンルーフパネルインナ)を塗装せずに、部材の外側面(例えば、エンジンルーフパネルアウタ)のみを塗装してもよい。
【0085】
すなわち、図4では、中塗ブース1は、部材の外側面(例えば、エンジンルーフパネルアウタ)を塗装するための外側中塗塗装ブース3のみを備えている。また、ベース塗装ブース8は、部材の外側面(例えば、エンジンルーフパネルアウタ)を塗装するための外側ベース塗装ブース10のみを備えている。
なお、図4において、上記した構成と同様の構成には、上記と同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
そして、この塗装方法では、中塗ブース1においては、外側中塗塗装ブース3で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、エンジンルーフパネルアウタ)のみを塗装する。
また、この塗装方法では、ベース塗装ブース8においては、外側ベース塗装ブース10で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、エンジンルーフパネルアウタ)のみを塗装する。
【0087】
そして、この方法において、この方法を適用する部材として、外側面の外観ほど内側面の外観が要求されない部材、例えば、エンジンルーフパネルを選択しておけば、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着しても、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、クリア塗装により仕上げることができる。
【0088】
その結果、中塗工程における部材の内側面を塗装する工程を省略できながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
以上の説明では、図1〜図4を参照して、本発明の塗装方法の一実施形態として、3コート1ベーク方式による塗装方法を説明したが、次に、本発明の塗装方法の他の実施形態として、クリア塗装工程が省略されるソリッド塗装における2コート1ベーク方式および1コート1ベーク方式による塗装方法を説明する。2コート1ベーク方式または1コート1ベーク方式の塗装方法では、効率のよい塗装を実現することができる。
【0089】
図5は、2コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。また、図6は、図5に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。
2コート1ベーク方式による塗装方法は、ドアパネルなどの自動車ボディを構成する部材を塗装するために用いられ、まず、電着塗装により下塗りされた部材を、焼き付けた後、まず、中塗ブース24において中塗りする(中塗工程)。
【0090】
中塗ブース24は、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側中塗塗装ブース25と、その内側中塗塗装ブース25の下流側(部材の搬送方向の下流側、以下同様。)に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側中塗塗装ブース26とを備えている。
中塗りに用いられる水性塗料は、特に制限されないが、上記した3コート1ベーク方式による塗装方法で用いられる中塗水性塗料と同様のものが用いられる。また、中塗水性塗料の塗装方法も、上記した3コート1ベーク方式による塗装方法で用いられる塗装方法と同様の方法が用いられる。また、中塗水性塗料の塗装膜厚は、焼付け後の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、13〜35μmである。
【0091】
そして、この塗装方法では、中塗ブース24において、まず、内側中塗塗装ブース25で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後(内側塗装工程)、次いで、外側中塗塗装ブース26で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する(外側塗装工程)。そして、このように、まず、内側中塗塗装ブース25で、部材の内側面を塗装した後、次いで、外側中塗塗装ブース26で、部材の外側面を塗装すると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される中塗水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着し、その付着したダストの上から、外側面に対して中塗水性塗料が塗装される。
【0092】
そのため、この塗装方法では、内側中塗塗装ブース25での部材の内側面の塗装終了後から、外側中塗塗装ブース26での部材の外側面の塗装開始までの間が、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、3分以内となるように、工程管理する。
このように工程管理すれば、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、下塗りされた塗膜に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面に中塗水性塗料が塗装される。つまり、外側面に付着したダストの粘度(ダストの固形分濃度)が上昇しないうちに、外側面に中塗水性塗料が塗装される。そうすると、外側面に付着したダストが、外側面に対して塗装される中塗水性塗料と相溶し、吸収されるので、外側面に塗装される中塗水性塗料になじますことができる。
【0093】
その結果、中塗工程において、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの時間を工程管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、中塗ブース24(内側中塗塗装ブース25および外側中塗塗装ブース26を含む。)内の水蒸発可能量(飽和水蒸気量に対する絶対湿度の差)は、2〜11g/kg、好ましくは、3〜6g/kgに管理する。中塗ブース24内の水蒸発可能量が、2g/kgより低いと、塗装時にタレを生じる場合があり、11g/kgより高いと、仕上がりでの外観が低下する場合がある。
【0094】
なお、中塗ブース24(内側中塗塗装ブース25および外側中塗塗装ブース26を含む。)内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
そして、この塗装方法では、中塗りされた部材を、第1熱風乾燥炉27で予備加熱する(予備加熱工程)。
第1熱風乾燥炉27は、第1ホットエアゾーン28と、第1ホットエアゾーン28の下流側に配置される第2ホットエアゾーン29と、第2ホットエアゾーン29の下流側に配置される第1クーリングゾーン30とを備えている。
【0095】
第1熱風乾燥炉27において、中塗りされた部材は、まず、第1ホットエアゾーン28で、予備加熱される(上流側予備加熱工程)。第1ホットエアゾーン28において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65℃〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第1ホットエアゾーン28における熱風の吹き出し温度は、次に述べる第2ホットエアゾーン29における熱風の吹き出し温度よりも、低く設定する。
【0096】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、中塗水性塗料の固形分濃度が急激に上昇して、塗膜の流動性が低下する場合がある。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0097】
なお、第1ホットエアゾーン28内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第1ホットエアゾーン28で予備加熱された部材は、次いで、第2ホットエアゾーン29で、予備加熱される(下流側予備加熱工程)。第2ホットエアゾーン29において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、70〜100℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第2ホットエアゾーン29における熱風の吹き出し温度は、第1ホットエアゾーン28における熱風の吹き出し温度よりも、高く設定する。
【0098】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、熱風の吹き出しのためのエネルギー消費が増大する。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、中塗水性塗料の固形分濃度が低く、混層やワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0099】
なお、第2ホットエアゾーン29内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第2ホットエアゾーン29で予備加熱された部材は、次いで、第1クーリングゾーン30で、冷却される(冷却工程)。第1クーリングゾーン30において、部材は、冷風により冷却される。冷却の条件は、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0100】
そして、このような第1熱風乾燥炉27での予備加熱により、部材の内側面および外側面に塗装された中塗水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、中塗層41(図6参照)を形成する。
そして、このような第1熱風乾燥炉27での予備加熱では、まず、第1ホットエアゾーン28において、部材がより低い温度で予備加熱された後に、第2ホットエアゾーン29において、部材がより高い温度で予備加熱される。そのため、第1ホットエアゾーン28において、塗装された中塗水性塗料の流動性が確保され、均一な厚みの塗膜が形成された後に、第2ホットエアゾーン29において、次に形成されるソリッド層42(図6参照)との混層やワキの発生を防止することができる塗膜を形成することができる。その結果、中塗水性塗料を効率よく予備加熱することができ、しかも、予備加熱された塗膜に、良好な性状を付与することができる。
【0101】
次いで、この塗装方法では、ソリッド塗装ブース31において、ソリッド塗装する(ソリッド塗装工程)。
ソリッド塗装ブース31は、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ソリッド塗装ブース32と、その内側ソリッド塗装ブース32の下流側に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ソリッド塗装ブース33とを備えている。
【0102】
ソリッド塗装に用いられる水性塗料は、特に制限されないが、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有するソリッド水性塗料が用いられる。
樹脂成分としては、親水性基(例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合など)と、硬化剤と反応する官能基(例えば、水酸基)を有する、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの公知の水性樹脂が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂が用いられる。
【0103】
このような樹脂成分は、親水性基の種類により、例えば、塩基性化合物または酸で中和して、水溶化または水分散化するか、あるいは、ポリオキシエチレン結合するものなどでは、そのまま水溶化または水分散化させる。
硬化剤としては、特に制限されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、より具体的には、親水性メラミンが挙げられ、また、ブロックポリイソシアネートとしては、より具体的には、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、例えば、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0104】
硬化剤の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、60重量部以下、好ましくは、20〜50重量部である。
また、顔料としては、特に制限されず、通常の着色顔料やメタリック顔料が挙げられる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、クロム酸ストロンチウム、シアナミド鉛、モノアゾイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら(赤)、鉛丹、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩基性クロム酸鉛、酸化クロム、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられる。また、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、フレーク状酸化アルミウム、パールマイカ、フレーク状マイカなどが挙げられる。これら顔料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0105】
顔料の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、120重量部以下、好ましくは、20〜100重量部である。
また、ソリッド水性塗料には、架橋反応を促進させるために、好ましくは、ブロック剤の解離触媒や酸触媒を含有させる。ブロック剤の解離触媒としては、特に制限されず、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。酸触媒としては、例えば、リン酸系、スルホン酸系の酸触媒が挙げられる。
【0106】
触媒の配合割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは、0.01〜3重量部である。
また、ソリッド水性塗料には、必要に応じて、光干渉性顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、反応促進剤(例えば有機スズ化合物など)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤など、公知の添加剤を適宜配合することもできる。
【0107】
そして、ソリッド水性塗料は、上記の各成分を水とともに公知の方法によって配合して、樹脂成分を水溶化または水分散化することにより、例えば、その固形分濃度が20〜70重量%、好ましくは、35〜60重量%となるように調製される。
また、ソリッド水性塗料の塗装方法は、特に制限されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが用いられる。より具体的には、例えば、ベル塗装法が用いられ、その塗装条件は、例えば、ベル回転速度20000〜30000min-1、シェービングエア圧力0.5〜1.5kg/cm2、ガン距離20〜30cm、吐出量200〜400mLである。
【0108】
また、ソリッド水性塗料の塗装膜厚は、焼付け後の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、20〜40μmである。
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装ブース31において、まず、内側ソリッド塗装ブース32で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後(内側塗装工程)、次いで、外側ソリッド塗装ブース33で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する(外側塗装工程)。そして、このように、まず、内側ソリッド塗装ブース32で、部材の内側面を塗装した後、次いで、外側ソリッド塗装ブース33で、部材の外側面を塗装すると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着し、その付着したダストの上から、外側面に対してソリッド水性塗料が塗装される。
【0109】
そのため、この塗装方法では、内側ソリッド塗装ブース32での部材の内側面の塗装終了後から、外側ソリッド塗装ブース33での部材の外側面の塗装開始までの間が、20分以内、好ましくは、15分以内、より好ましくは、10分以内となるように、工程管理する。
このように工程管理すれば、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、下塗りされた塗膜に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面にソリッド水性塗料が塗装される。つまり、外側面に付着したダストの粘度(ダストの固形分濃度)が上昇しないうちに、外側面にソリッド水性塗料が塗装される。そうすると、外側面に付着したダストが、外側面に対して塗装されるソリッド水性塗料と相溶し、吸収されるので、外側面に塗装されるソリッド水性塗料になじますことができる。
【0110】
その結果、ソリッド塗装工程において、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの時間を工程管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、ソリッド塗装ブース31(内側ソリッド塗装ブース32および外側ソリッド塗装ブース33)内の水蒸発可能量(飽和水蒸気量に対する絶対湿度の差)は、2〜11g/kg、好ましくは、3〜6g/kgに管理する。ソリッド塗装ブース31内の水蒸発可能量が、2g/kgより低いと、塗装時にタレを生じる場合があり、11g/kgより高いと、仕上がりでの外観が低下する場合がある。
【0111】
なお、ソリッド塗装ブース31(内側ソリッド塗装ブース32および外側ソリッド塗装ブース33)内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装された部材を、第2熱風乾燥炉34で予備加熱する(予備加熱工程)。
第2熱風乾燥炉34は、第3ホットエアゾーン35と、第3ホットエアゾーン35の下流側に配置される第4ホットエアゾーン36と、第4ホットエアゾーン36の下流側に配置される第2クーリングゾーン37とを備えている。
【0112】
第2熱風乾燥炉34において、ソリッド塗装された部材は、まず、第3ホットエアゾーン35で、予備加熱される(上流側予備加熱工程)。第3ホットエアゾーン35において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第3ホットエアゾーン35における熱風の吹き出し温度は、次に述べる第4ホットエアゾーン36における熱風の吹き出し温度よりも、低く設定する。
【0113】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が急激に上昇して、塗膜の流動性が低下する場合がある。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0114】
なお、第3ホットエアゾーン35内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第3ホットエアゾーン35で予備加熱された部材は、次いで、第4ホットエアゾーン36で、予備加熱される(下流側予備加熱工程)。第4ホットエアゾーン36において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、70〜100℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第4ホットエアゾーン36における熱風の吹き出し温度は、第3ホットエアゾーン35における熱風の吹き出し温度よりも、高く設定する。
【0115】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、熱風の吹き出しのためのエネルギー消費が増大する。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0116】
なお、第4ホットエアゾーン36内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜23g/kgに管理する。
そして、第4ホットエアゾーン36で予備加熱された部材は、次いで、第2クーリングゾーン37で、冷却される。第2クーリングゾーン37において、部材は、冷風により冷却される(冷却工程)。冷却の条件は、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0117】
そして、このような熱風乾燥炉34での予備加熱により、部材の内側面および外側面に塗装されたソリッド水性塗料は、ウエット状態のソリッド層42(図6参照)を形成する。
このような第2熱風乾燥炉34での予備加熱では、まず、第3ホットエアゾーン35において、部材がより低い温度で予備加熱された後に、第4ホットエアゾーン36において、部材がより高い温度で予備加熱される。そのため、第3ホットエアゾーン35において、塗装されたソリッド水性塗料の流動性が確保され、均一な厚みの塗膜が形成された後に、第4ホットエアゾーン36において、ワキの発生を防止することができる塗膜を形成することができる。その結果、ソリッド水性塗料を効率よく予備加熱することができ、しかも、予備加熱された塗膜に、良好な性状を付与することができる。
【0118】
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装された部材を、焼き付け炉38において、焼き付ける(焼付工程)。焼き付けは、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの公知の焼き付け方法が用いられる。焼き付け温度は、例えば、80〜170℃、好ましくは、120〜160℃であり、焼き付け時間は、20〜40分程度である。
これによって、図6に示すように、中塗層41の上に、ソリッド層42が積層された塗膜が形成される。
【0119】
このようにして形成された中塗層41およびソリッド層42からなる塗膜は、外側面に凹凸が生じることが防止されているので、良好な外観を有している。
なお、上記の説明では、中塗ブース24およびソリッド塗装ブース31において、まず、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装したが、例えば、図7に示す工程図のように、中塗ブース24およびソリッド塗装ブース31において、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装してもよい。
【0120】
すなわち、図7では、中塗ブース24は、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側中塗塗装ブース26と、外側中塗塗装ブース26の下流側に配置される部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側中塗塗装ブース25とを備えている。また、ソリッド塗装ブース31は、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ソリッド塗装ブース33と、外側ソリッド塗装ブース33の下流側に配置される部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ソリッド塗装ブース32とを備えている。
【0121】
なお、図7において、上記した構成と同様の構成には、上記と同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
そして、この塗装方法では、中塗ブース24において、まず、外側中塗塗装ブース26で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後(外側塗装工程)、内側中塗塗装ブース25で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装する(内側塗装工程)。
【0122】
このように、外側中塗塗装ブース26で、部材の外側面を塗装した後、内側中塗塗装ブース25で、部材の内側面を塗装すると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装される中塗水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面に中塗水性塗料を塗装することができる。
【0123】
その結果、中塗工程において、外側中塗塗装ブース26での部材の外側面の塗装と、内側中塗塗装ブース25での部材の内側面の塗装との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、この塗装方法では、ソリッド塗装ブース31において、まず、外側ソリッド塗装ブース33で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後(外側塗装工程)、次いで、内側ソリッド塗装ブース32で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装する(内側塗装工程)。
【0124】
このように、まず、外側ソリッド塗装ブース33で、部材の外側面を塗装した後、次いで、内側ソリッド塗装ブース32で、部材の外側面を塗装すると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装されるソリッド水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面にソリッド水性塗料を塗装することができる。
【0125】
その結果、ソリッド塗装工程において、外側ソリッド塗装ブース33での部材の外側面の塗装と、内側ソリッド塗装ブース32での部材の内側面の塗装との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
【0126】
また、図7に示す工程図では、中塗ブース24およびソリッド塗装ブース31の両方において、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装したが、中塗ブース24およびソリッド塗装ブース31のいずれか一方のブースにおいて、図7に示す工程図のように、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装し、そして、他方のブースにおいて、図5に示す工程図のように、まず、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装してもよい。
【0127】
図8は、1コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。また、図9は、図8に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。
1コート1ベーク方式による塗装方法は、ドアパネルなどの自動車ボディを構成する部材を塗装するために用いられ、まず、電着塗装により下塗りされた部材を、焼き付けた後、まず、ソリッド塗装ブース31においてソリッド塗装する(ソリッド塗装工程)。
【0128】
ソリッド塗装ブース31は、上記と同様に、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ソリッド塗装ブース32と、その内側ソリッド塗装ブース32の下流側に配置される部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ソリッド塗装ブース33とを備えている。
ソリッド塗装に用いられる水性塗料は、上記したソリッド水性塗料が用いられる。また、ソリッド水性塗料の塗装方法も、上記した塗装方法が用いられる。
【0129】
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装ブース31において、まず、内側ソリッド塗装ブース32で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後(内側塗装工程)、次いで、外側ソリッド塗装ブース33で、同じく上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装する(外側塗装工程)。そして、このように、まず、内側ソリッド塗装ブース32で、部材の内側面を塗装した後、次いで、外側ソリッド塗装ブース33で、部材の外側面を塗装すると、内側面の塗装時に、内側面に対して塗装される水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって外側面に飛散して、外側面に付着し、その付着したダストの上から、外側面に対してソリッド水性塗料が塗装される。
【0130】
そのため、この塗装方法では、内側ソリッド塗装ブース32での部材の内側面の塗装終了後から、外側ソリッド塗装ブース33での部材の外側面の塗装開始までの間が、20分以内、好ましくは、15分以内、より好ましくは、10分以内となるように、工程管理する。
このように工程管理すれば、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの間が短いので、外側面に付着したダスト中の水分が、下塗りされた塗膜に吸収されたり、あるいは、大気中に蒸発することが少ない間に、外側面にソリッド水性塗料が塗装される。つまり、外側面に付着したダストの粘度(ダストの固形分濃度)が上昇しないうちに、外側面にソリッド水性塗料が塗装される。そうすると、外側面に付着したダストが、外側面に対して塗装されるソリッド水性塗料と相溶し、吸収されるので、外側面に塗装されるソリッド水性塗料になじますことができる。
【0131】
その結果、ソリッド塗装工程において、内側面の塗装終了後から外側面の塗装開始までの時間を工程管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
また、ソリッド塗装ブース31(内側ソリッド塗装ブース32および外側ソリッド塗装ブース33)内の水蒸発可能量(飽和水蒸気量に対する絶対湿度の差)は、上記と同様に、2〜11g/kg、好ましくは、3〜6g/kgに管理する。ソリッド塗装ブース31内の水蒸発可能量が、2g/kgより低いと、塗装時にタレを生じる場合があり、11g/kgより高いと、仕上がりでの外観が低下する場合がある。
【0132】
なお、ソリッド塗装ブース31(内側ソリッド塗装ブース32および外側ソリッド塗装ブース33)内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装された部材を、上記と同様に、第2熱風乾燥炉34で予備加熱する(予備加熱工程)。
第2熱風乾燥炉34は、第3ホットエアゾーン35と、第3ホットエアゾーン35の下流側に配置される第4ホットエアゾーン36と、第4ホットエアゾーン36の下流側に配置される第2クーリングゾーン37とを備えている。
【0133】
第2熱風乾燥炉34において、ソリッド塗装された部材は、まず、第3ホットエアゾーン35で、予備加熱される(上流側予備加熱工程)。第3ホットエアゾーン35において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第3ホットエアゾーン35における熱風の吹き出し温度は、次に述べる第4ホットエアゾーン36における熱風の吹き出し温度よりも、低く設定する。
【0134】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が急激に上昇して、塗膜の流動性が低下する場合がある。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0135】
なお、第3ホットエアゾーン35内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
そして、第3ホットエアゾーン35で予備加熱された部材は、次いで、第4ホットエアゾーン36で、予備加熱される(下流側予備加熱工程)。第4ホットエアゾーン36において、部材は、熱風により予備加熱される。予備加熱の条件は、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、70〜100℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。また、第4ホットエアゾーン36における熱風の吹き出し温度は、第3ホットエアゾーン35における熱風の吹き出し温度よりも、高く設定する。
【0136】
熱風の吹き出し温度が、45℃より低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、100℃より高いと、熱風の吹き出しのためのエネルギー消費が増大する。また、熱風の吹き出し速度が、0.3m/sより低いと、ソリッド水性塗料の固形分濃度が低く、ワキを生ずる場合がある。また、10.0m/sより高いと、表面のみが乾燥することにより、塗膜の流動性が低下したり、ワキを生ずる場合がある。
【0137】
なお、第4ホットエアゾーン36内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜23g/kgに管理する。
そして、第4ホットエアゾーン36で予備加熱された部材は、次いで、第2クーリングゾーン37で、冷却される。第2クーリングゾーン37において、部材は、冷風により冷却される(冷却工程)。冷却の条件は、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0138】
そして、このような熱風乾燥炉34での予備加熱により、部材の内側面および外側面に塗装されたソリッド水性塗料は、ウエット状態のソリッド層42(図8参照)を形成する。
このような第2熱風乾燥炉34での予備加熱では、まず、第3ホットエアゾーン35において、部材がより低い温度で予備加熱された後に、第4ホットエアゾーン36において、部材がより高い温度で予備加熱される。そのため、第3ホットエアゾーン35において、塗装されたソリッド水性塗料の流動性が確保され、均一な厚みの塗膜が形成された後に、第4ホットエアゾーン36において、ワキの発生を防止することができる塗膜を形成することができる。その結果、ソリッド水性塗料を効率よく予備加熱することができ、しかも、予備加熱された塗膜に、良好な性状を付与することができる。
【0139】
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装された部材を、焼き付け炉38において、焼き付ける(焼付工程)。焼き付けは、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの公知の焼き付け方法が用いられる。焼き付け温度は、例えば、80〜170℃、好ましくは、120〜約160℃であり、焼き付け時間は、20〜40分程度である。
これによって、図8に示すように、下塗層40の上に、ソリッド層42が積層された塗膜が形成される。
【0140】
このようにして形成されたソリッド層42からなる塗膜は、外側面に凹凸が生じることが防止されているので、良好な外観を有している。
なお、上記の説明では、ソリッド塗装ブース31において、まず、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装した後、次いで、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装したが、例えば、図10に示す工程図のように、ソリッド塗装ブース31において、まず、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後、次いで、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装してもよい。
【0141】
すなわち、図10では、ソリッド塗装ブース31は、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装するための外側ソリッド塗装ブース33と、外側ソリッド塗装ブース33の下流側に配置される部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装するための内側ソリッド塗装ブース32とを備えている。
なお、図10において、上記した構成と同様の構成には、上記と同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0142】
そして、この塗装方法では、ソリッド塗装ブース31において、まず、外側ソリッド塗装ブース33で、上記した方法により、部材の外側面(例えば、ドアパネルアウタ)を塗装した後(外側塗装工程)、内側ソリッド塗装ブース32で、上記した方法により、部材の内側面(例えば、ドアパネルインナ)を塗装する(内側塗装工程)。
このように、外側ソリッド塗装ブース33で、部材の外側面を塗装した後、内側ソリッド塗装ブース32で、部材の内側面を塗装すると、外側面の塗装時に、外側面に対して塗装されるソリッド水性塗料が、ダスト(塗料の液滴)となって内側面に飛散して、内側面に付着する。しかし、内側面は、外側面ほど外観を厳しく要求されないので、そのまま、弊害なく、内側面にソリッド水性塗料を塗装することができる。
【0143】
その結果、ソリッド塗装工程において、外側ソリッド塗装ブース33での部材の外側面の塗装と、内側ソリッド塗装ブース32での部材の内側面の塗装との順序を管理するのみの簡易な方法により、効率的に部材の内側面および外側面を塗装することができながら、しかも、外側面に凹凸が生じることを効果的に防止でき、外側面の外観不良を低減することができる。
【0144】
なお、上記の説明では、自動車ボディの部材として、ドアパネルやエンジンフードパネルなどを例示したが、上記の説明において、部材の外側面とは、ドアやフードなどの蓋部材を閉鎖した状態で露出する面を意味し、また、部材の内側面とは、蓋部材を閉鎖した状態では露出しないが、蓋部材を開放した状態で、露出する面を意味する。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
塗装例1
図1に示す工程図に従って3コート1ベーク方式の塗装方法によって、予め電着塗装によって下塗りされたドアパネルを、以下のように塗装した。
(中塗工程)
中塗ブース1内の水蒸発可能量を5〜6g/kg、温度を28℃に管理した。
【0146】
まず、中塗ブース1の内側中塗塗装ブース2において、下記に示すベル塗装条件で、下記に示す中塗水性塗料を、ドアパネルインナに塗装した。
ベル塗装条件:ベル回転速度25000min-1、シェービングエア圧力1kg/cm2、ガン距離25cm、吐出量260mL、焼付け後の膜厚20μm
中塗水性塗料:WP−550D(関西ペイント社製)
内側中塗塗装ブース2におけるドアパネルインナの塗装が終了してから、2分後に、中塗ブース1の外側中塗塗装ブース3において、上記と同じベル塗装条件で、上記と同じ組成の中塗水性塗料を、ドアパネルアウタに塗装した。
【0147】
(第1予備加熱工程)
第1ホットエアゾーン5内および第2ホットエアゾーン6内の温度を28℃、水蒸発可能量を18g/kgに管理した。
中塗り塗装したドアパネルを、第1ホットエアゾーン5において、下記の予備加熱条件で、予備加熱し、続いて、第2ホットエアゾーン6において、下記の予備加熱条件で、予備加熱した後、第1クーリングゾーン7において、下記の条件で冷却した。
【0148】
第1ホットエアゾーン5の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度75℃、熱風の吹き出し速度10m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第2ホットエアゾーン6の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度80℃、熱風の吹き出し速度10m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第1クーリングゾーン7の冷却条件:冷風の吹き出し温度20〜23℃、冷風の吹き出し速度10m/s、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、冷却時間1.3分
なお、中塗水性塗料の塗膜の水溶出率は、30%であった。
(ベース塗装工程)
ベース塗装ブース8内の水蒸発可能量を5〜6g/kg、温度を28℃に管理した。
【0149】
まず、ベース塗装ブース8の内側ベース塗装ブース9において、下記に示すベル塗装条件で、下記に示すベース塗装水性塗料を、ドアパネルインナに塗装した。
ベル塗装条件:ベル回転速度30000min-1、シェービングエア圧力1.5kg/cm2、ガン距離30cm、吐出量200mL、焼付け後の膜厚13μm
ベース水性塗料組成:WBC−710D(関西ペイント社製)接触角63°
内側ベース塗装ブース9におけるドアパネルインナの塗装が終了してから、6分後に、ベース塗装ブース8の外側ベース塗装ブース10において、上記と同じベル塗装条件で、上記と同じ組成のベース水性塗料を、ドアパネルアウタに塗装した。
【0150】
(第2予備加熱工程)
第3ホットエアゾーン12内および第4ホットエアゾーン13内の温度を28℃、水蒸発可能量を18g/kgに管理した。
ベース塗装したドアパネルを、第3ホットエアゾーン12において、下記の予備加熱条件で、予備加熱し、続いて、第4ホットエアゾーン13において、下記の予備加熱条件で、予備加熱した後、第2クーリングゾーン14において、下記の条件で冷却した。
【0151】
第3ホットエアゾーン12の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度75℃、熱風の吹き出し速度10m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第4ホットエアゾーン13の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度80℃、熱風の吹き出し速度10m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第2クーリングゾーン14の冷却条件:冷風の吹き出し温度20〜23℃、冷風の吹き出し速度10m/s、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、冷却時間1.3分
(クリア塗装工程)
クリア塗装ブース15内の水蒸発可能量を5〜6g/kg、温度を28℃に管理した。
【0152】
まず、クリア塗装ブース15の内側クリア塗装ブース16において、下記に示すベル塗装条件で、下記に示すクリア塗料を、ドアパネルインナに塗装した。
ベル塗装条件:ベル回転速度30000min-1、シェービングエア圧力1.5kg/cm2、ガン距離30cm、吐出量300mL、焼付け後の膜厚30μm
クリア塗料:DNC−K12(関西ペイント社製)
内側クリア塗装ブース16におけるドアパネルインナの塗装が終了してから、2分後に、クリア塗装ブース15の外側クリア塗装ブース17において、上記と同じベル塗装条件で、上記と同じ組成のクリア塗料を、ドアパネルアウタに塗装した。
【0153】
(焼き付け工程)
焼き付け炉18において、焼き付け温度140℃、焼き付け保持時間18分で焼き付けた。
上記で塗装されたドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表1に示す。
【0154】
塗装例2〜8
中塗工程およびベース塗装工程において、ドアパネルインナの塗装終了後からドアパネルアウタの塗装開始までの時間を、表1に示す時間としたこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、塗装後のドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表1に示す。
【0155】
なお、以下の表1〜8に示す評価は、下記の通りである。
○:良好
○△:ほぼ良好
△:普通
×:不良
【0156】
【表1】

【0157】
塗装例9
図3に示す工程図に従って、中塗工程において、外側中塗塗装ブース3でドアパネルアウタを塗装し、その塗装が終了してから15分後に、内側中塗塗装ブース2でドアパネルインナを塗装したこと、および、ベース塗装工程において、外側ベース塗装ブース10でドアパネルアウタを塗装し、その塗装が終了してから30分後に、内側ベース塗装塗装ブース9でドアパネルインナを塗装したこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、塗装後のドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表2に示す。
【0158】
塗装例10
ドアパネルに代えてエンジンルーフパネルを被塗物とし、図4に示す工程図に従って、中塗工程において、外側中塗塗装ブース3でエンジンルーフパネルアウタのみを塗装し、次いで、ベース塗装工程において、外側ベース塗装ブース10でエンジンルーフパネルアウタのみを塗装したこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、塗装後のドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表2に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
塗装例11〜16
第1予備加熱工程および第2予備加熱工程において、第1ホットエアゾーン5、第2ホットエアゾーン6、第3ホットエアゾーン12および第4ホットエアゾーン13の熱風の吹き出し温度および吹き出し速度を、表3に示す温度および速度としたこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、中塗り後およびベース塗装後のドアパネルアウタのワキおよび仕上がりを目視により評価した。その結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
塗装例17〜20
中塗ブース1内およびベース塗装ブース8内において、水蒸発可能量を表4に示す量にしたこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、中塗り後およびベース塗装後のドアパネルアウタのタレおよび仕上がりを目視により評価した。その結果を表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
塗装例21
図8に示す工程図に従って1コート1ベーク方式の塗装方法によって、予め電着塗装によって下塗りされたドアパネルを、以下のように塗装した。
(ソリッド塗装工程)
ソリッド塗装ブース31内の水蒸発可能量を5〜6g/kg、温度を28℃に管理した。
【0165】
まず、ソリッド塗装ブース31の内側ソリッド塗装ブース32において、下記に示すベル塗装条件で、下記に示す組成のソリッド塗装水性塗料を、ドアパネルインナに塗装した。
ベル塗装条件:ベル回転速度30000min-1、シェービングエア圧力1.0kg/cm2、ガン距離25cm、吐出量270〜290mL、焼付け後の膜厚30μm
ソリッド塗装水性塗料組成:WT−2000D(関西ペイント社製)
内側ソリッド塗装ブース32におけるドアパネルインナの塗装が終了してから、6分後に、ソリッド塗装ブース31の外側ソリッド塗装ブース33において、上記と同じベル塗装条件で、上記と同じ組成のソリッド水性塗料を、ドアパネルアウタに塗装した。
(予備加熱工程)
第3ホットエアゾーン35内および第4ホットエアゾーン36内の温度を28℃、水蒸発可能量を18g/kgに管理した。
【0166】
ソリッド塗装したドアパネルを、第3ホットエアゾーン35において、下記の予備加熱条件で、予備加熱し、続いて、第4ホットエアゾーン36において、下記の予備加熱条件で、予備加熱した後、第2クーリングゾーン37において、下記の条件で冷却した。
第3ホットエアゾーン35の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度75℃、熱風の吹き出し速度4.0m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第4ホットエアゾーン36の予備加熱条件:熱風の吹き出し温度78℃、熱風の吹き出し速度10m/s、熱風の被塗面での風速1〜2m/s、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、予備加熱時間1.3分
第2クーリングゾーン37の冷却条件:冷風の吹き出し温度20〜35℃、冷風の吹き出し速度10m/s、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離40〜50cm、冷却時間1.3分
(焼き付け工程)
焼き付け炉38において、焼き付け温度140℃、焼き付け保持時間18分で焼き付けた。
【0167】
上記で塗装されたドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表5に示す。
塗装例22〜24
ソリッド塗装工程において、ドアパネルインナの塗装終了後からドアパネルアウタの塗装開始までの時間を、表5に示す時間としたこと以外は、塗装例21と同様の条件でドアパネルを塗装し、塗装後のドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表5に示す。
【0168】
【表5】

【0169】
塗装例25
図10に示す工程図に従って、ソリッド塗装工程において、外側ソリッド塗装ブース33でドアパネルアウタを塗装し、その塗装が終了してから30分後に、内側ソリッド塗装ブース32でドアパネルインナを塗装したこと以外は、塗装例21と同様の条件でドアパネルを塗装し、塗装後のドアパネルアウタの外観を目視により評価した。その結果を表6に示す。
【0170】
【表6】

【0171】
塗装例26〜30
予備加熱工程において、第3ホットエアゾーン35および第4ホットエアゾーン36の熱風の吹き出し温度および吹き出し速度を、表7に示す温度および速度としたこと以外は、塗装例21と同様の条件でドアパネルを塗装し、ソリッド塗装後のドアパネルアウタのワキおよび仕上がりを目視により評価した。その結果を表7に示す。
【0172】
【表7】

【0173】
塗装例31〜34
ソリッド塗装ブース31内において、水蒸発可能量を表8に示す量にしたこと以外は、塗装例1と同様の条件でドアパネルを塗装し、ソリッド塗装後のドアパネルアウタのタレおよび仕上がりを目視により評価した。その結果を表8に示す。
【0174】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の塗装方法の一実施形態である、3コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。
【図2】図1に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。
【図3】図1に示す塗装工程の他の実施形態(部材の外側面を塗装後に、内側面を塗装する態様)を示す工程図である。
【図4】図1に示す塗装工程の他の実施形態(部材の内側面の塗装を省略する態様)を示す工程図である。
【図5】2コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。
【図6】図5に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。
【図7】図5に示す塗装工程の他の実施形態(部材の外側面を塗装後に、内側面を塗装する態様)を示す工程図である。
【図8】1コート1ベーク方式による塗装方法を実施するための塗装工程を示す工程図である。
【図9】図8に示す塗装方法により塗装された塗膜の一実施形態を示す断面図である。
【図10】図8に示す塗装工程の他の実施形態(部材の外側面を塗装後に、内側面を塗装する態様)を示す工程図である。
【符号の説明】
【0176】
1 中塗ブース
2 内側中塗ブース
3 外側中塗ブース
4 第1熱風乾燥炉
8 ベース塗装ブース
9 内側ベース塗装ブース
10 外側ベース塗装ブース
11 第2熱風乾燥炉
15 クリア塗装ブース
18 焼き付け炉
24 中塗ブース
25 内側中塗ブース
26 外側中塗ブース
27 第1熱風乾燥炉
31 ソリッド塗装ブース
32 内側ソリッド塗装ブース
33 外側ソリッド塗装ブース
34 第2熱風乾燥炉
38 焼き付け炉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにしたことを特徴とする、塗装方法。
【請求項2】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程を実施した後、20分以内に前記外側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項3】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記ベース塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項4】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにしたことを特徴とする、塗装方法。
【請求項5】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程を実施した後、10分以内に前記外側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項6】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記中塗工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項7】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装されたウエット状態の前記部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記中塗工程および前記ベース塗装工程の少なくともいずれかの工程では、前記部材の外側面のみを塗装することを特徴とする、塗装方法。
【請求項8】
前記中塗工程と前記ベース塗装工程との間には、中塗りされた前記部材を予備加熱する第1予備加熱工程が設けられ、
前記ベース塗装工程と前記クリア塗装工程との間には、ベース塗装された前記部材を予備加熱する第2予備加熱工程が設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の塗装方法。
【請求項9】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程によって飛散し、前記部材の外周面に付着した水性塗料を、前記外側塗装工程の実施によって塗装される水性塗料中に吸収するようにしたことを特徴とする、塗装方法。
【請求項10】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記内側塗装工程を実施した後、20分以内に前記外側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項11】
自動車ボディを構成する部材の塗装方法であって、
前記部材を水性塗料で塗装する塗装工程と、塗装された前記部材を焼き付ける焼付工程とを備え、
前記塗装工程では、前記部材の内側面を塗装する内側塗装工程と、前記部材の外側面を塗装する外側塗装工程とを備え、
前記外側塗装工程を実施した後、前記内側塗装工程を実施することを特徴とする、塗装方法。
【請求項12】
前記塗装工程は、前記部材を水性塗料でソリッド塗装するソリッド塗装工程を備えており、
前記ソリッド塗装工程は、前記内側塗装工程および前記外側塗装工程を備えていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の塗装方法。
【請求項13】
前記塗装工程は、前記部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされたウエット状態の前記部材を水性塗料でソリッド塗装するソリッド塗装工程とを備えており、
前記中塗工程および前記ソリッド塗装工程は、前記内側塗装工程および前記外側塗装工程をそれぞれ備えていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の塗装方法。
【請求項14】
前記中塗工程と前記ソリッド塗装工程との間には、中塗りされた前記部材を予備加熱する予備加熱工程が設けられていることを特徴とする、請求項13に記載の塗装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−61798(P2006−61798A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246022(P2004−246022)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】