説明

塗装方法

【課題】物品を塗装するに当たって乾燥工程の簡素化できる塗装方法を提供する。
【解決手段】物品に塗装を施工するに当たって、下塗りを含めてセッティング時間(T)経過後に少なくとも2層以上塗布して乾燥する。そして、前記物品の塗装の品質は、レーザー光を照射した箇所の塗料の状態で判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、物品を塗装するに当たって乾燥工程の簡素化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の塗装には、物品をコンベアで搬送し、塗料の種類によって異なるが、例えば、特開2007−289848号公報の図3には、ベース塗装を実施した後にプレヒートを行い、その後にクリア塗装した後に乾燥し、その後に検査を行う工程で実施している。
又、他の塗料を用いる場合には、物品をコンベアで搬送しながら、順次、第1塗装工程(下塗り)後に乾燥工程、第2塗装工程(中塗り)後に乾燥工程、第3塗装工程(上塗り)後に乾燥工程を実施した後に検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−289848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、物品は、下塗り塗装後に乾燥を行っている。
そのため、物品の塗装時間が長時間に渡ると共に、乾燥を下塗り、中塗り、上塗りを実施した後に、各々実施しているため、熱量的にも不経済である。
そこで、更に、簡略化した塗装方法として、鋭意、実験を試みた結果、乾燥は最終段階後に実施すれば良いことが、検査方法と共に判明したので、ここに本願発明を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、物品に塗装を施工するに当たって、下塗りを含めてセッティング時間(T)経過後に少なくとも2層以上塗布する。そして、その後、前記物品を乾燥する。即ち、複数層の塗装を実施した後に乾燥させる。
そして、前記物品の塗装の品質は、レーザー光を照射したレーザーマーキング跡の塗料の状態で判断する。
又、第2の発明は、塗装が下塗り、中塗り及び上塗りの3層である。
又、第3の発明は、物品を搬送コンベアで搬送しながら、塗装を順次行うことであり、各塗装ブースで一層の塗装を行う。
そして、塗装ブースから排出されて次の塗装ブースに到って塗装を開始するまでの時間をセッティング時間とする。尚、ここでいう搬送コンベアは、第1搬送コンベア、第2搬送コンベア等をいう。
【発明の効果】
【0006】
本願の発明は、複数の塗装を実施した後に乾燥させ、その品質をレーザーによって判断できるので、乾燥、検査工程の省略ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】塗装方法に用いる塗装装置の平面配置の概念図である。
【図2】レーザ光を照射したレーザーマーキング跡とセッティング時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明の物品を塗装する方法について、図1に示す塗装装置の平面配置の概念図を参照して説明する。
下塗色が白色の物品(例えば、治具)(図示略)は、建て屋1の入口1aからL字状の第1搬送コンベア11に載せられ、第1塗装ブース31に搬送される。 尚、この第1搬送コンベア11に載せられた物品は、第1搬送コンベア11の側部に設置の第1小型塗装機21によって、上塗りがされ、その厚みはaμmである。尚、この厚みaは、13〜18μmである。
又、前記第1搬送コンベア11と第1小型塗装機21はカバー体で覆われ、第1塗装ブース31を形成する。
【0009】
また、前記第1搬送コンベア11を含めて、下記する各搬送コンベア12〜17の速度Vは、設定されるセッティング時間(T)になるように設定される。
尚、前記セッティング時間(T)とは、第1塗装ブース31で下塗りをされた後、次の第2塗装ブース32に搬入されて中塗りを開始されるまでは、室内での自然乾燥状態であり、その時間であると共に、第2塗装ブース32で中塗りをされた後、次の第3塗装ブース33に搬入されて上塗りを開始されるまでの自然乾燥状態を維持している時間である。そして、この実施例では、セッティング時間(T)は、5分である。
【0010】
また、前記上塗り塗装された物品は、次の第2塗装ブース32に向けて搬送される。尚、第2塗装ブース32は、前記第1塗装ブース31の入口から見て奥に設置されている。
また、前記物品は、第2搬送機12から第3搬送機13、第4搬送機14に受け渡され、この第3搬送機13は逆U字状に設けてある。
この逆U字状の第3搬送機13、第4搬送機14の速度は、セッティング時間(T)になるように設定される。即ち、前記第1塗装ブース31で下塗りされた後、自然乾燥状態となり、第2塗装ブース32へ、セッティング時間Tで搬送される。
【0011】
第4搬送機14により第2塗装ブース32に移送された前記物品は、その第2搬送コンベア14の側部に設置の第2小型塗装機22によって中塗りされ、その厚みはbμmである。
尚、このbは13〜18μmである。そこで、塗装厚みは、前記下塗り(aμm)と中塗り(bμm)とで、(a+b)μmとなる。
又、前記第2搬送コンベア14と第2小型塗装機22はカバー体で覆われ、第2塗装ブース32を形成する。
【0012】
その後、前記中塗りが終了した物品は、第5搬送機15と第6搬送機16の上で自然乾燥され、第3塗装ブース33に搬送される。
尚、前記第4搬送機14の速度、第5搬送機15の速度、及び第6搬送機16の速度は、セッティング時間(T)になるように設定される。
【0013】
第3塗装ブース33の前に搬送された物品は、第3搬送コンベア16の側部に設置の第3小型塗装機23によって上塗りがされ、その厚みはcμmである。尚、この厚みcは13〜18μmである。以上によって、塗装膜厚は、下塗り、中塗り、上塗りによって(a+b+c)μmとなる。
又、前記第3搬送コンベア16と第3小型塗装機23はカバー体で覆われ、第3塗装ブース33を形成する。
その後、前記上塗りが終了した物品は、第6搬送機16を経て、S字状の第7搬送機17によって搬送される。
尚、この第7搬送機17の一部には、乾燥機50が組み込まれていて(図1の斜線部)、その速度はセッティング時間(T)に設定されている。
【0014】
そして、前記第7搬送機17に組み込まれている乾燥機50は、制御装置50aによって、所定の乾燥時間(f分)、温風(t℃)で乾燥され、乾燥が終了後、入口1aへと搬送される。
尚、前記乾燥時間fは、10〜15分であり、乾燥温度t℃は45〜65℃に設定される。又、この乾燥機50の乾燥時間(f分)は、前記セッティング時間(T)より長いので、滞留可能なスペースが確保されている。
【0015】
以上のように、物品は第1塗装ブース31で下塗りが施工され、強制乾燥されない状態で搬送され、第2塗装ブース32で中塗りが施工され、その後、強制乾燥されない状態で搬送され、第3塗装ブース33で上塗りが施工され、その後、乾燥機50で乾燥されるという工程で仕上げられ、乾燥機50を除く各ブース間の搬送に要する所要時間は、セッティング時間(T)である。
そして、前記乾燥された物品は、前記第7搬送機17で搬送され、入口1aから、製品として外に搬送される。
尚、第1搬送コンベア〜第7搬送コンベアを搬送コンベア、第1塗装ブース〜第3塗装ブースを塗装ブースと、第1小型塗装機〜第3小型塗装機を小型塗装機ともいう。
【0016】
次に、前記製品である物品の塗装の品質について、セッティング時間と表面態様の比較について図2を参照して説明する。
物品の乾燥後の塗装膜の厚み(a+b+c)μmは、許容厚み(X1〜X2)μmでなければならず、例えば、許容厚み(X1〜X2)μmは、39〜54μmである。
そして、この膜厚が合格した物品(製品)の塗装部に、レーザー光を照射して、例えば、「CLOSE」とマーキングをする。レーザー光が照射されて、前記塗装(中塗り、上塗り)のレーザーマーキング跡は溶解蒸発して、文字である「CLOSE」の部分は下塗色が露出する。
【0017】
そこで、例えば、前記セッティング時間(T)が、T1分<T2分<T3分<T4分<T5分に対して、前記レーザー光を照射したレーザーマーキング跡の「CLOSE」の「O」の文字の部分拡大の表面態様を図2(A)(B)(C)に示す。
セッティング時間(T)が、短いT1(1分)のときには、レーザーマーキング跡の拡大表面状態は、図2(A)である。
この図2(A)に示すように、前記工程で塗装した文字「O」(下塗色の白色)に黒い斑点が残っていて、この斑点はレーザー光によって、塗装が溶解蒸発しない箇所があることを意味している。
【0018】
即ち、セッティング時間(T)が短いので、第1塗装ブース31から第2塗装ブース32までに到る室内自然乾燥時間、第2塗装ブース32から第3塗装ブース33に到るまでの室内自然乾燥時間、第3塗装ブース33から乾燥機50までに到る室内自然乾燥時間が短いので、乾燥を乾燥機で実施しても十分でないことを表している。
従って、この塗装した文字「O」(下塗色の白色)に黒い斑点が残っている場合には、セッティング時間(T)が短いことが判る。
【0019】
次に、セッティング時間(T)がT3(3分)になると、図2(B)に示すように、斑点も僅かになる。
そして、セッティング時間がT4(4分)、T5(5分)の長時間になるに従って、文字「O」の下塗材の色(白色)が見えて、黒い斑点がなくなる。
この様に、物品の塗装(下塗り、中塗り、上塗り)の厚み(a+b+c)μmは、許容厚み(X1〜X2)μmの範囲内であり、且つ、レーザー光を照射したとき、そのレーザーマーキング跡の下塗色(白色)の色が見えて、未蒸発の「黒い斑点」が残らなければ、物品の塗装の品質が良いことを見出した。
【0020】
即ち、物品の乾燥は、下塗り、中塗り、上塗り後に乾燥させれば、レーザー光でのマーキング方式によって、良好な塗装であるか否かの判断ができ、その条件は、第1塗装ブース31〜第2塗装ブース32〜第3塗装ブース33に物品を搬送するに要するセッティング時間(T)で調整可能であることが判明した。
従って、このセッティング時間(T)を選定することによって、種々の塗装の種類、塗装の厚み等に対応することができ、且つ、途中の乾燥機による強制乾燥工程を省略できる。
【0021】
尚、前記例は、下塗り、中塗り及び上塗りの3段階の塗装工程について説明したが、下塗りと上塗りの2段階、或いは、下塗り、中塗り、上塗り、更に、上塗の4段階等、その塗装回数は適宜選定しても本願発明のセッティング時間(T)の概念は適用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 建て屋
1a 入口
11 第1搬送コンベア
12 第2搬送コンベア
13 第3搬送コンベア
14 第4搬送コンベア
15 第5搬送コンベア
16 第6搬送コンベア
17 第7搬送コンベア
21 第1小型塗装機
22 第2小型塗装機
23 第3小型塗装機
31 第1塗装ブース
32 第2塗装ブース
33 第3塗装ブース



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に塗装を施工するに当たって、下塗りを含めてセッティング時間(T)経過後に少なくとも2層以上塗布し、その後、前記物品を乾燥し、
レーザー光を照射したレーザーマーキング跡における塗料の状態で、前記物品の塗装の良否を判断する塗装方法。
【請求項2】
塗装は、下塗り、中塗り及び上塗りの3層である請求項1の塗装方法。
【請求項3】
物品を、順次、搬送コンベアで搬送しながら、複数設置の塗装ブースでそれぞれの層の塗装を行い、前記塗装ブースから排出されて次の塗装ブースに到って塗装を開始するまでの時間をセッティング時間とする請求項1又は請求項2の塗装方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−221183(P2010−221183A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73761(P2009−73761)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(309000554)丸和電子化学株式会社 (3)
【Fターム(参考)】