説明

塗装物及びその形成方法、並びに、該方法に用いられる粉体塗料

【課題】環境に悪影響を及ぼすことなく、被塗装面から容易に剥離することができる塗装物及びその形成方法、並びに、該方法に用いられる粉体塗料の提供。
【解決手段】本発明の塗装物は、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを含み、前記マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在することを特徴とする。加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセルが、離型剤を内包する態様、加熱により膨張可能なマイクロカプセルが、発泡剤を内包する態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機、などの電子機器の筐体に形成された塗装物及び該塗装物の形成方法、並びに、該形成方法に用いられる粉体塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を収容する筐体の材料として、例えば、プラスチック、アルミ、マグネシウム、などが用いられ、これらの上には、通常、塗装物が形成されている。前記塗装物を形成するための塗料は、油性塗料、水性塗料、粉体塗料の3種類に分類される。これらの中でも、前記油性塗料が、作業性及び耐久性の点で有利なため、現在最も普及している。しかし、この油性塗料は、有機溶剤を含有するため、塗装時に、VOC(Volatile Organic Compounds,揮発性有機化合物)が発生し、環境に及ぼす悪影響が大きいという問題がある。また、前記水性塗料は、前記油性塗料よりも、塗装時におけるVOCの発生を低減することができるものの、依然として環境に及ぼす悪影響が大きいという問題がある。前記油性塗料及び前記水性塗料に対し、前記粉体塗料は、溶剤を使用する必要がなく、VOCの発生を抑制して、環境に及ぼす悪影響を小さくすることができる点で有利である。よって、今後は、前記粉体塗料が普及すると考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、電子機器は、材質ごとに分類されて、リサイクルされることが多くなっている。例えば、廃棄された電子機器から、筐体の材料としてのマグネシウムが回収されて、リサイクルされることが求められている。前記リサイクルのためには、まず、前記筐体上に形成されている塗装物を剥離する必要がある。しかし、前記塗装物の剥離には、多大な工数を要し、また、有機溶剤を使用する必要があるため、VOCが発生し、環境に及ぼす悪影響が大きいという問題があった(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
以上より、環境に及ぼす悪影響が小さい粉体塗料を用いて、電子機器の筐体から容易に剥離することができる塗装物を形成できる技術の開発が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−275666号公報
【特許文献2】特開平6−246228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、環境に悪影響を及ぼすことなく、被塗装面から容易に剥離することができる塗装物及び該塗装物の形成方法、並びに、該形成方法に用いられる粉体塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
被塗装面と塗装物との界面に、離型剤層を形成したり、隙間を生じさせたりすることにより、塗装物を被塗装面から容易に剥離することができる。これを達成するために、マイクロカプセルが好適に用いられる。被接着面に残渣を残すことなく、剥離可能な接着剤を得ることを目的として、液状接着剤に熱溶融性マイクロカプセルを均一分散させることが既に知られている(例えば、特開2007−262131号公報、特開2008−94957号公報、特開2008−142674号公報)。しかし、これらの液状接着剤では、前記マイクロカプセルを被接着面近傍に偏在させることは不可能である。よって、前記接着剤を粉体塗料に転用したとしても、接着強度が大きい塗装物を被塗装面から容易に剥離することができない。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、帯電量及び体積平均粒径の関係を規定したマイクロカプセル及び塗装用粒子を含む粉体塗料を用いることにより、マイクロカプセルを被塗装面に偏在させ、被塗装面と塗装物との界面に、離型剤層を形成したり、隙間を生じさせたりすることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の粉体塗料は、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかと、塗装用粒子とを含み、前記マイクロカプセルの表面の帯電量が、前記塗装用粒子の帯電量よりも大きく、前記マイクロカプセルの体積平均粒径が、前記塗装用粒子の体積平均粒径よりも小さいことを特徴とする。
該塗装物においては、マイクロカプセルの表面の帯電量が、塗装用粒子の帯電量よりも大きく、前記マイクロカプセルの体積平均粒径が、前記塗装用粒子の体積平均粒径よりも小さいため、単位表面積あたりの電荷密度が大きいマイクロカプセルが、選択的に、静電気力によって前記被塗装面に引き寄せられ、前記マイクロカプセルが前記被塗装面の近傍に偏在する塗装物が形成される。
本発明の塗装物は、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを含み、前記マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在することを特徴とする。
該塗装物においては、マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在するため、加熱により、前記マイクロカプセルからの内包物の漏出、及び前記マイクロカプセルの膨張の少なくともいずれかが引き起こされ、前記塗装物が被塗装面から容易に剥離される。
本発明の塗装物の形成方法は、本発明の塗装物を被塗装面に形成する塗装物の形成方法であって、
前記被塗装面に粉体塗料を塗装する塗装工程を含み、前記粉体塗料が、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかと、塗装用粒子とを含むことを特徴とする。
該塗装物の形成方法では、前記塗装工程において、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかと、塗装用粒子とを含む粉体塗料が被塗装面に塗装される。その結果、前記マイクロカプセルが前記被塗装面の近傍に偏在する塗装物が形成される。
本発明の塗装物の形成方法は、本発明の塗装物を形成する塗装物の形成方法であって、前記被塗装面に、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを被覆した後、塗装用粒子を塗装する塗装工程を含むことを特徴とする。
該塗装物の形成方法では、前記塗装工程において、前記被塗装面に、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかが被覆され、その後、塗装用粒子が塗装される。その結果、前記マイクロカプセルが前記被塗装面の近傍に偏在する塗装物が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、環境に悪影響を及ぼすことなく、被塗装面から容易に剥離することができる塗装物及び該塗装物の形成方法、並びに、該形成方法に用いられる粉体塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(粉体塗料)
本発明の粉体塗料は、マイクロカプセルと、塗装用粒子とを含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
【0011】
−マイクロカプセル−
前記マイクロカプセルは、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを含む。
前記加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセルとしては、加熱により内包物を漏出可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する離型剤を内包するマイクロカプセル、などが挙げられる。
前記加熱により膨張可能なマイクロカプセルとしては、加熱により膨張可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する発泡剤を内包するマイクロカプセル、などが挙げられる。
【0012】
前記マイクロカプセルの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球形、楕円形、などが挙げられる。
【0013】
前記マイクロカプセルの構造としては、殻部と、前記殻部により画成され、後述する内包物が内包される空間としての空洞部とを有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記殻部の表面に樹脂を形成して、2層構造としてもよい。
前記構造のマイクロカプセルを形成するマイクロカプセル化法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、in−situ重合法、などが挙げられる。
【0014】
前記マイクロカプセルの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記体積平均粒径が、1μm未満であると、後処理として塗装物を加熱した際に、塗装物の剥離効果を発揮することができないことがあり、50μmを超えると、塗装物と被塗装面との密着性が低下することがある。
【0015】
前記マイクロカプセルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記粉体塗料に対し、1質量%〜20質量%が好ましい。前記マイクロカプセルの含有量が、1質量%未満であると、後処理として塗装物を加熱した際に、剥離効果を発揮することができないことがあり、20質量%を超えると、塗装物と被塗装面との密着性が低下することがある。
【0016】
−−殻部−−
前記殻部の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアネート樹脂、エチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等の熱溶融性物質、熱膨張破壊物質、などが挙げられる。これらの中でも、耐水性及び耐溶剤性が優れている点で、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアネート樹脂が好ましい。
なお、前記殻部は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの助剤を含んでいてもよい。
【0017】
前記殻部の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜150℃が好ましい。前記融点が100℃未満であると、塗装物を形成する際の加熱により、前記殻部が溶融してマイクロカプセルから内包物が漏出するために、塗装物と被塗装面との密着性が低下することがあり、150℃を超えると、前記殻部を溶融させてマイクロカプセルから内包物を漏出させるための加熱で、前記被塗装面を熱劣化させてしまうことがある。前記融点は、熱示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K7121に準じて、10±1℃/分の昇温速度で測定したときの融解ピーク温度を示す。
【0018】
前記殻部の表面に形成される樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記殻部の表面の帯電量を大きくすることができる点で、エポキシ樹脂が好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、などが挙げられる。
【0019】
−−空洞部−−
前記空洞部は、後述する内包物が内包される空間である。
【0020】
前記内包物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、発泡剤、などが挙げられる。
【0021】
−−−離型剤−−−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級脂肪酸化合物、高級脂肪酸誘導体化合物、オルガノポリシロキサン化合物、ワックス、高級アルコール、鉱油、動物油、植物油、シリコーン油、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記離型剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記マイクロカプセルの作製に用いられる油性溶液、例えば、フッ素変性シリコンオイル(FS1265 1000CS、繁和産業(株)製)に対し、乾燥質量で3質量%〜90質量%が好ましい。前記離型剤の配合量が、3質量%未満であると、離型効果が発揮されないことがあり、90質量%を超えると、リサイクルを実施する前の通常の使用段階でカプセルがはじけて離型剤が漏出することがある。
【0023】
前記離型剤を内包するマイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在する塗装物を加熱することにより、該マイクロカプセルから前記離型剤が漏出して、該離型剤が前記被塗装面に接触し、前記塗装物と前記被塗装面との間に介在して、前記塗装物を前記被塗装面から容易に剥離することができる。
【0024】
−−−発泡剤−−−
前記発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の気化しやすい熱膨張性物質、などが挙げられる。
【0025】
前記発泡物を内包するマイクロカプセルの熱膨張開始温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃〜200℃が好ましい。前記熱膨張開始温度が、80℃未満であると、加熱しなくても、一部のマイクロカプセルが膨張することがあり、200℃を超えると、前記マイクロカプセルを膨張させるための加熱で被塗装面を熱劣化させてしまうことがある。
【0026】
前記発泡剤を内包するマイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在する塗装物を加熱することにより、前記マイクロカプセルの膨張の押圧力により前記被塗装面と前記塗装物とが剥離し、前記被塗装面と前記塗装物との接着面積が低減して、前記塗装物を前記被塗装面から容易に剥離することができる。
【0027】
なお、前記離型剤及び前記発泡剤は、同時に前記マイクロカプセルに内包されていてもよい。この場合、前記離型剤と前記発泡剤との相互作用を防ぐため、前記発泡剤がマイクロカプセル化されていることが好ましい。
【0028】
前記離型剤及び前記マイクロカプセル化された発泡剤を内包するマイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在する塗装物を加熱することにより、該マイクロカプセルから前記離型剤及び前記マイクロカプセル化された発泡剤が漏出して、該離型剤が前記被塗装面に接触し、前記塗装物と前記被塗装面との間に介在すると共に、前記マイクロカプセルの膨張の押圧力により前記被塗装面と前記塗装物とが剥離し、前記被塗装面と前記塗装物との接着面積が低減して、前記塗装物を前記被塗装面から容易に剥離することができる。
【0029】
−塗装用粒子−
前記塗装用粒子は、樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、着色剤、などを含む。
【0030】
−−樹脂−−
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記塗装用粒子の帯電量を小さくすることができる点で、アクリル樹脂が好ましい。
前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、さらには、必要によりこれら以外のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーなどを(共)重合したものが挙げられ、熱硬化性タイプ、熱可塑性タイプのいずれであってもよい。
【0031】
前記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル類などが挙げられる。
【0032】
前記(メタ)アクリル酸エステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート[ドデシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、β-メタリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチル-α-ヒロドキシメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリルレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、などが挙げられる。
前記(メタ)アクリロニトリル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エチルシアノ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0033】
これらのうちでは、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
このようなアクリル樹脂には、上記以外の「他のモノマー」が共重合されていてもよく、このような「他のモノマー」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマー、などが挙げられる。
【0034】
−−着色剤−−
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルチル型酸化チタン等の白色顔料、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、クロム酸塩等の無機顔料、有機顔料、などが挙げられる。
【0035】
−−塗装用粒子の製造方法−−
前記塗装用粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗装用粒子組成物(樹脂、着色剤、など)を、ミキサー又はブレンダーを用いて乾式混合した後、ニーダーにより溶融混練して冷却し、機械式又は気流式の粉砕機を用いて粉砕した後、分級する方法、などが挙げられる。
【0036】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
−マイクロカプセルの表面の帯電量と塗装用粒子の帯電量との関係−
前記マイクロカプセルの表面の帯電量としては、前記塗装用粒子の帯電量よりも大きい限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記マイクロカプセルを、被塗装面の近傍に容易に偏在させることができる点で、前記塗装用粒子の帯電量の1.5倍〜10倍が好ましい。
ここで、前記マイクロカプセルの表面及び前記塗装用粒子の帯電量は、前記マイクロカプセルの表面に形成された樹脂及び前記塗装用粒子に含まれる樹脂を選択することにより調節される。例えば、前記マイクロカプセルの表面にエポキシ樹脂が形成され、前記塗装用粒子がアクリル樹脂を含むことにより、前記マイクロカプセルの表面の帯電量を、前記塗装用粒子の帯電量よりも大きくすることができる。
【0038】
なお、前記帯電量は、例えば、以下に説明するカスケード法により測定することができる。
前記カスケード法に用いられる測定装置は、アルミニウム、などからなる導電性基板と、前記導電性基板の上方及び下方に配置され、サンプル粒子を収容する受け皿と、前記導電性基板に接続されると共に接地されたコンデンサと、を備える。
前記カスケード法による測定方法としては、まず、前記サンプル粒子(スプレーガンにより帯電させた粒子)を、水平面に対して45゜〜60゜程度傾斜して載置された前記導電性基板の上に、一定量ずつ10秒間〜20秒間程度落下させる。この落下したサンプル粒子は、前記導電性基板の上をすべり落ち、前記受け皿に収容される。これにより、前記サンプル粒子の電荷が前記導電性基板に移動して、該導電性基板に接続されたコンデンサに蓄えられる。ここで、前記サンプル粒子には、前記導電性基板に付与された摩擦帯電電荷と同量の逆極性の摩擦帯電電荷が付与されるので、前記コンデンサに蓄えられた電荷量を測定し、サンプル粒子1gあたりの値に換算することにより、前記サンプル粒子の帯電量を測定することができる。
【0039】
−マイクロカプセルの体積平均粒径と塗装用粒子の体積平均粒径との関係−
前記マイクロカプセルの体積平均粒径としては、前記塗装用粒子の体積平均粒径よりも小さい限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記マイクロカプセルを、被塗装面の近傍に容易に偏在させることができる点で、前記塗装用粒子の体積平均粒径の1/10倍〜1/2倍が好ましい。
なお、前記体積平均粒径の測定装置としては、特に制限はなく、公知の装置から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コールターマルチサイザー(日科機社製)、レーザー回折・散乱法の測定装置(ベックマンコールター社製、LS230)、などが挙げられる。
【0040】
(塗装物の形成方法)
本発明の塗装物の形成方法は、塗装工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0041】
−塗装工程−
−−塗装工程の第1の実施形態−−
前記塗装工程の第1の実施形態は、被塗装面に、本発明の粉体塗料を塗装する工程である。
前記被塗装面としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機等の電子機器の筐体表面、などが挙げられる。
前記塗装の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静電塗装法により、目的を達成できるが,静電塗装法としてコロナ荷電法,摩擦荷電法のいずれの方法が採用されてもよい。
前記静電塗装は、例えば、コロナ帯電方式のスプレーガン、などを用いて、前記粉体塗料を−30kV〜−150kVの電圧で負に帯電させることにより行われる。
【0042】
−−−膜化のための加熱−−−
前記膜化のための加熱における加熱温度としては、マイクロカプセルの内包物を漏出したり、マイクロカプセルを膨張したりすることがない温度である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜90℃が好ましい。前記加熱温度が、60℃未満であると、膜化されないことがあり、90℃を超えると、マイクロカプセルの内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
前記膜化のための加熱における加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20分間〜2時間が好ましい。前記加熱時間が、20分間未満であると、膜化されないことがあり、2時間を超えると、マイクロカプセルの内包物が漏出したり、また、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
【0043】
ここで、塗装工程の第1の実施形態について以下に図面を参照しながら説明する。
図1A〜図1Cに示すように、筐体10の被塗装面10aに、離型剤乃至発泡剤を内包するマイクロカプセル11と、塗装用粒子12とを含む粉体塗料100を塗装する(図1A及び図1B)。ここで、マイクロカプセル11の表面の帯電量は、塗装用粒子12の帯電量よりも大きく、マイクロカプセルの体積平均粒径11は、塗装用粒子12の体積平均粒径よりも小さい。よって、単位表面積あたりの電荷密度が大きいマイクロカプセル11が、選択的に、静電気力によって被塗装面10aに引き寄せられ、マイクロカプセル11が被塗装面10aの近傍に偏在する。さらに、塗装された粉体塗料100を加熱して、膜化する(図1C)。これにより、マイクロカプセル11が被塗装面10aの近傍に偏在した塗装物13が形成される。
【0044】
−−塗装工程の第2の実施形態−−
前記塗装工程の第2の実施形態は、被塗装面に、マイクロカプセルを被覆した後、塗装用粒子を塗装する工程である。
前記被塗装面としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機等の電子機器の筐体表面、などが挙げられる。
前記マイクロカプセルとしては、例えば、本発明の粉体塗料におけるマイクロカプセル、などが挙げられる。
前記被覆の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静電被覆、などが挙げられる。
前記静電被覆は、例えば、コロナ帯電方式のスプレーガン、などを用いて、前記塗装用粒子を−30kV〜−150kVの電圧で負に帯電させることにより行われる。
前記塗装用粒子としては、例えば、本発明の粉体塗料における塗装用粒子、などが挙げられる。
前記塗装の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静電塗装、などが挙げられる。
前記静電塗装は、例えば、コロナ帯電方式のスプレーガン、などを用いて、前記塗装用粒子を−30kV〜−150kVの電圧で負に帯電させることにより行われる。
【0045】
−−−マイクロカプセルを固定化するための加熱−−−
前記マイクロカプセルを固定化するための加熱は、前記マイクロカプセルを被覆した後であって、前記塗装用粒子を塗装する前に行われる。前記マイクロカプセルを固定化するための加熱により、前記マイクロカプセルの表面に形成された樹脂が溶融し、前記マイクロカプセルが被塗装面に固定される。
前記マイクロカプセルを固定化するための加熱における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜90℃が好ましい。前記加熱温度が、60℃未満であると、前記マイクロカプセルの表面に形成された樹脂が溶融せずに、前記マイクロカプセルが固定化されないことがあり、90℃を超えると、前記マイクロカプセルの内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
前記マイクロカプセルを固定化するための加熱における加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20分間〜2時間が好ましい。前記加熱時間が、20分間未満であると、前記マイクロカプセルの表面に形成された樹脂が溶融せずに、前記マイクロカプセルが固定化されないことがあり、2時間を超えると、前記マイクロカプセルの内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
【0046】
−−−膜化のための加熱−−−
前記膜化のための加熱は、前記塗装用粒子を塗装した後に行われる。
前記膜化のための加熱における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜90℃が好ましい。前記加熱温度が、60℃未満であると、膜化されないことがあり、90℃を超えると、前記マイクロカプセルの内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
前記膜化のための加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20分間〜2時間が好ましい。前記加熱時間が、20分間未満であると、膜化されないことがあり、2時間を超えると、前記マイクロカプセルの内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることがある。
【0047】
ここで、塗装工程の第2の実施形態について以下に図面を参照しながら説明する。
図2A〜図2Cに示すように、筐体20の被塗装面20aに、樹脂が被覆され、離型剤乃至発泡剤を内包するマイクロカプセル21を被覆し(図2A)、被覆されたマイクロカプセル21を加熱して、マイクロカプセル21に被覆された樹脂21aを溶融させ、マイクロカプセルを被塗装面20aに固定する(図2B)。その後、塗装用粒子22を塗装し(図2C)、塗装された塗装用粒子22を加熱し、膜化する(図2D)。これにより、マイクロカプセル21が被塗装面20aの近傍に偏在した塗装物23が形成される。
【0048】
このように、マイクロカプセル21を被覆し、その後、塗装用粒子22を塗装する場合は、前記マイクロカプセル21を被塗装面20aに固定化するため、マイクロカプセル21の殻部の表面に樹脂を被覆して(2層構造にして)、前記殻部の樹脂の融点を、前記殻部の表面に被覆された樹脂の融点よりも高くする必要がある。このような構造のマイクロカプセル21を、前記殻部の樹脂の融点よりも低く、前記殻部の表面に被覆された樹脂の融点よりも高い温度で加熱することにより、前記殻部の表面に被覆された樹脂のみを溶融し、マイクロカプセル21の内包物が漏出したり、マイクロカプセルが膨張したりすることなく、マイクロカプセル21を被塗装面20aに固定することができる。
【0049】
(塗装物)
本発明の塗装物は、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを含み、前記マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在することを特徴とする。
【0050】
−加熱−
前記加熱における加熱温度としては、前記内包物を漏出したり、前記マイクロカプセルを膨張したりすることができる温度である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜90℃が好ましい。前記加熱温度が、60℃未満であると、前記マイクロカプセルの内包物の漏出、又は前記マイクロカプセルの膨張が引き起こされないことがあり、90℃を超えると、被塗装面を熱劣化させてしまうことがある。
前記加熱における加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20分間〜2時間が好ましい。前記加熱時間が、20分間未満であると、前記マイクロカプセルの内包物の漏出、又は前記マイクロカプセルの膨張が引き起こされないことがあり、2時間を超えると、被塗装面を熱劣化させてしまうことがある。
【0051】
本発明の塗装物は、マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在するため、加熱により、前記マイクロカプセルの内包物の漏出、及び前記マイクロカプセルの膨張の少なくともいずれかが引き起こされ、被塗装面から容易に剥離することができる。
【0052】
ここで、本発明の塗装物について以下に図面を参照しながら説明する。
本発明の塗装物13は、被塗装面10aの近傍にマイクロカプセル11が偏在しているので(図3A)、加熱によりマイクロカプセル11から離型剤14を漏出させると(図3B)、離型剤14が、筐体10の被塗装面10aに接触し、被塗装面10aと塗装物13との間に介在する(図3C)。これにより、塗装物13は、離型剤14が形成された被塗装面10aから容易に剥離される(図3D)。
図4は、本発明の塗装物におけるマイクロカプセルが発泡剤を内包する場合を説明するための模式図である。
図4において、マイクロカプセル11は、殻材40を有し、離型剤14及び発泡剤含有カプセル41を内包する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
−マイクロカプセル粒子の調製−
フッ素変性シリコーンオイル(FS 1265 1000 CS、繁和産業(株)製)80部を、pHを6.0に調製したエチレン−無水マレイン酸共重合体(VEMA、ダイセル化学工業製)の4%水溶液180部に添加し、ホモジナイザを用いて乳化した後、この乳化液を60℃に昇温した。
前記乳化液とは別に、ホルムアルデヒドの40%水溶液(三菱ガス化学株式会社製)40部にメラミン(日産化学工業製))20部を加え、60℃で15分間反応させて得たプレポリマー水溶液を前記乳化液中に滴下し、更に攪拌しながら0.1Nの塩酸を滴下してpHを5.3とした後、80℃まで昇温して1時間攪拌し、続いて0.2Nの塩酸を滴下してPHを3.5まで下げ、更に3時間攪拌をした後に冷却して、体積平均粒子径が1μmのマイクロカプセルの分散液を得た。このマイクロカプセルの殻材の融点をDSCにより測定したところ、120℃であった。
次いで、前記マイクロカプセルの分散液をフィルタープレスし、風乾して粉体マイクロカプセルとした。この粉体マイクロカプセルの表面に、エポキシ樹脂エピコート1007(数平均分子量2,900、エポキシ等量が1,750〜2,100のビスフェノール型エポキシ樹脂、油化シェルケミカル(株)製)をスプレードライ法によりコーティングし、マイクロカプセル粒子を得た。
【0055】
−着色剤含有アクリル樹脂粒子(塗装用粒子)の調製−
基材としてのアクリル樹脂(FCA−1001−NS、藤倉化成製、75質量部と、着色剤(白色顔料)としてのルチル型酸化チタン(R−960、デュポン社製)5質量部と、帯電性を低下させる帯電制御剤としての正の帯電付与剤と、を使用する。4級アンモニウム塩(BONTRON P−51、オリエント化学製)3質量部を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合した。その後、100℃に加熱したニーダ(KH−3−S、井上製作所)を用い、30分間溶融混練した予備混練物を冷却した後、ハンマーミルで粉砕後、気流式の粉砕器により、粉砕分級を行い、体積平均粒径で10μmの着色剤含有アクリル樹脂粒子を得た。なお、前記アクリル樹脂の帯電量は、前記マイクロカプセルの表面にコーティングしたエポキシ樹脂の帯電量の1/5であった。
【0056】
(粉体塗料の調製)
前記マイクロカプセル粒子と、前記着色剤含有アクリル樹脂粒子とを混合することにより、粉体塗料を調製した。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、マイクロカプセル粒子を用いなかった以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0058】
(実施例2)
実施例1において、マイクロカプセルを熱膨張性微小粒子球(マイクロスフェア、松本油脂社製、熱膨張開始温度:120℃、体積平均粒子径:1μm)に代えた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0059】
(実施例3)
実施例1において、離型剤に加えて、熱膨張性微小粒子球(マイクロスフェア、松本油脂社製、熱膨張開始温度:120℃、体積平均粒子径:0.1μm)をマイクロカプセルに内包させた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0060】
(実施例4)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、帯電制御剤(BONTRON P−51、オリエント化学製)を1質量部に添加した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0061】
(実施例5)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、帯電制御剤(BONTRON P−51、オリエント化学製)を1.5質量部に添加した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0062】
(実施例6)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、塗装用粒子の体積平均粒径を10μmから3.3μmに変えた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0063】
(実施例7)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、帯電制御剤(BONTRON P−51、オリエント化学製)を6質量部に添加した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0064】
(実施例8)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、帯電制御剤(BONTRON P−51、オリエント化学製)を9質量部に添加した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0065】
(実施例9)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、塗装用粒子の体積平均粒径を10μmから20μmに変えた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0066】
(実施例10)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、塗装用粒子の体積平均粒径を10μmから2μmに変えた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0067】
(実施例11)
実施例1の着色剤含有アクリル樹脂粒子の調製において、塗装用粒子の体積平均粒径を10μmから1.3μmに変えた以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0068】
(実施例12)
実施例1において、粉体塗料に対し、マイクロカプセルの含有量を0.5質量%とした以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0069】
(実施例13)
実施例1において、粉体塗料に対し、マイクロカプセルの含有量を1.0質量%とした以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0070】
(実施例14)
実施例1において、粉体塗料に対し、マイクロカプセルの含有量を10質量%とした以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0071】
(実施例15)
実施例1において、粉体塗料に対し、マイクロカプセルの含有量を20質量%とした以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0072】
(実施例16)
実施例1において、粉体塗料に対し、マイクロカプセルの含有量を30質量%とした以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製した。
【0073】
−帯電量の測定−
実施例1〜16及び比較例1で得られた粉体塗料において、マイクロカプセル粒子の帯電量Qa(C/g)及び着色剤含有アクリル樹脂粒子の帯電量Qb(C/g)を、カスケード法により、以下の手順で測定した。結果を表1に示す。
マイクロカプセル粒子及び着色剤含有アクリル樹脂粒子を、それぞれ、コロナ帯電方式のスプレーガンを用いて、−60kVの電圧を印加しながら、導電性基板の上に10秒間噴射し、噴射されたマイクロカプセル粒子の電荷量と、噴射された着色剤含有アクリル樹脂粒子の電荷量と、コンデンサに蓄えられた電荷量とを測定した。これらの測定値から、マイクロカプセル粒子の質量あたりの帯電量Qa(μC/g)と、着色剤含有アクリル樹脂粒子の質量あたりの帯電量Qb(μC/g)とを求めた。
【0074】
−体積平均粒径の測定−
実施例1〜16及び比較例1で得られた粉体塗料において、マイクロカプセルの体積平均粒径Dv1(nm)及び着色剤含有アクリル樹脂粒子の体積平均粒径Dv2を、コールターマルチサイザー(日科機社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例17)
−塗装物の形成−
実施例1〜16及び比較例1で得られた粉体塗料を、コロナ帯電方式のスプレーガン(X−2mエコロナハンドガン、旭サナック株式会社製)を用いて、マグネシウム合金の試験片(50mm×50mm×2mm)上に、焼付膜厚が30μmになるように静電塗装した。粉体塗料に−60kVの電圧を印加して、粉体塗料を負に荷電させた。次に、乾燥時の膜厚が20μmとなるように、粉体塗料を80℃で30分間加熱して、塗装物試験片とした。
【0076】
−塗膜剥離性試験−
得られた塗装物試験片を、150℃に加熱したオーブンで、10分間加熱し、スクレーパ(スクレーパーS型、OLFA製)を用いて、荷重1kg重で塗装試験片の全表面を1回こすった後、塗膜残渣を画像解析により定量化して算出した。結果を表1に示す。
前記画像解析は、塗装試験片の画像情報(写真)を画像処理解析装置(王子製紙社製、ドットアナライザーDA−5000S)により画像データに変換し、塗膜残渣が残存した筐体の面積a(mm)と、塗膜が剥がれた筐体の面積b(mm)とから塗膜残渣残存率(%)(a/(a+b)×100)を算出した。結果を表1に示す。また、塗膜剥離性試験の評価基準は以下の通りである。
塗膜残渣残存率が10%未満 :◎
塗膜残渣残存率が10%以上〜50%未満:〇
塗膜残渣残存率が50%以上 :×
【0077】
【表1】

【0078】
マイクロカプセル粒子を含む実施例1〜16の粉体塗料により形成された塗装物は、マイクロカプセル粒子を含まない比較例1の粉体塗料により形成された塗装物よりも、塗膜剥離性試験の評価結果が良好であり、被塗装面から塗装物を容易に剥離することができる。
【0079】
マイクロカプセル粒子の帯電量が、着色剤含有アクリル樹脂粒子の帯電量の1.5倍〜10倍である実施例5〜7の粉体塗料により形成された塗装物は、マイクロカプセル粒子の帯電量が、着色剤含有アクリル樹脂粒子の帯電量の1.5倍〜10倍の範囲外である実施例4及び8の粉体塗料により形成された塗装物よりも、塗膜剥離性試験の評価結果が良好であり、被塗装面から塗装物を容易に剥離することができる。
【0080】
マイクロカプセルの体積平均粒径が、着色剤含有アクリル樹脂粒子の体積平均粒径の1/10倍〜1/2倍である実施例10の粉体塗料により形成された塗装物は、マイクロカプセルの体積平均粒径が、着色剤含有アクリル樹脂粒子の体積平均粒径の1/10倍〜1/2倍の範囲外である実施例9及び11の粉体塗料により形成された塗装物よりも、塗膜剥離性試験の評価結果が良好であり、被塗装面から塗装物を容易に剥離することができる。
【0081】
粉体塗料に対するマイクロカプセルの含有量が、1質量%〜20質量%である実施例13〜15の粉体塗料により形成された塗装物は、粉体塗料に対するマイクロカプセルの含有量が、1質量%〜20質量%の範囲外である実施例12及び16の粉体塗料により形成された塗装物よりも、塗膜剥離性試験の評価結果が良好であり、被塗装面から塗装物を容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】図1Aは、本発明の塗装方法における塗装工程の第1の実施形態を説明するための模式図である(その1)。
【図1B】図1Bは、本発明の塗装方法における塗装工程の第1の実施形態を説明するための模式図である(その2)。
【図1C】図1Cは、本発明の塗装方法における塗装工程の第1の実施形態を説明するための模式図である(その3)。
【図2A】図2Aは、本発明の塗装方法における塗装工程の第2の実施形態を説明するための模式図である(その1)。
【図2B】図2Bは、本発明の塗装方法における塗装工程の第2の実施形態を説明するための模式図である(その2)。
【図2C】図2Cは、本発明の塗装方法における塗装工程の第2の実施形態を説明するための模式図である(その3)。
【図2D】図2Dは、本発明の塗装方法における塗装工程の第2の実施形態を説明するための模式図である(その4)。
【図3A】図3Aは、本発明の塗装物を説明するための模式図である(その1)。
【図3B】図3Bは、本発明の塗装物を説明するための模式図である(その2)。
【図3C】図3Cは、本発明の塗装物を説明するための模式図である(その3)。
【図3D】図3Dは、本発明の塗装物を説明するための模式図である(その4)。
【図4】図4は、本発明の塗装物におけるマイクロカプセルが発泡剤を内包する場合を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0083】
10 筐体
10a 被塗装面
11 マイクロカプセル
12 塗装用粒子
13 塗装物
14 離型剤
20 筐体
20a 被塗装面
21 マイクロカプセル
22 塗装用粒子
23 塗装物
24 離型剤
40 殻材
41 発泡剤含有カプセル
100 粉体塗料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを含み、前記マイクロカプセルが被塗装面の近傍に偏在することを特徴とする塗装物。
【請求項2】
加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセルが、離型剤を内包する請求項1に記載の塗装物。
【請求項3】
加熱により膨張可能なマイクロカプセルが、発泡剤を内包する請求項1に記載の塗装物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の塗装物を被塗装面に形成する塗装物の形成方法であって、
前記被塗装面に粉体塗料を塗装する塗装工程を含み、
前記粉体塗料が、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかと、塗装用粒子とを含むことを特徴とする塗装物の形成方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の塗装物を被塗装面に形成する塗装物の形成方法であって、
前記被塗装面に、加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかを被覆した後、塗装用粒子を塗装する塗装工程を含むことを特徴とする塗装物の形成方法。
【請求項6】
加熱により内包物を漏出可能なマイクロカプセル、及び加熱により膨張可能なマイクロカプセルの少なくともいずれかと、塗装用粒子とを含み、前記マイクロカプセルの表面の帯電量が、前記塗装用粒子の帯電量よりも大きく、前記マイクロカプセルの体積平均粒径が、前記塗装用粒子の体積平均粒径よりも小さいことを特徴とする粉体塗料。
【請求項7】
マイクロカプセルの表面の帯電量が、塗装用粒子の帯電量の1.5倍〜10倍であり、前記マイクロカプセルの体積平均粒径が、前記塗装用粒子の体積平均粒径の1/10倍〜1/2倍である請求項6に記載の粉体塗料。
【請求項8】
マイクロカプセルの含有量が、1質量%〜20質量%である請求項6から7のいずれかに記載の粉体塗料。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−149058(P2010−149058A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330862(P2008−330862)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】