塗装装置及び塗装方法
【課題】塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装技術を提供することを課題とする。
【解決手段】塗装装置20では、霧化装置30に、貯留室99と押出シリンダ88、貯留室104と押出シリンダ89、貯留室105と押出シリンダ91の計3組の貯留室と押出シリンダが備えられ、シリンダ88、89、91は、独立して駆動するように構成した。
【効果】貯留室99、104、105の各々に異なる色の塗料を貯留し、シリンダ88、89、91と塗料の色の組合せを事前に決め、選んだシリンダの押出動作で指定塗料を霧化装置30へ押出すことができる。この作用を用いれば、塗料98を使用した塗装終了後、色替えに合わせて続けて塗料103を霧化装置30へ供給することができる。色替え毎に貯留手段と押出し手段を交換しなくてよいので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止めなくてよい。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。
【解決手段】塗装装置20では、霧化装置30に、貯留室99と押出シリンダ88、貯留室104と押出シリンダ89、貯留室105と押出シリンダ91の計3組の貯留室と押出シリンダが備えられ、シリンダ88、89、91は、独立して駆動するように構成した。
【効果】貯留室99、104、105の各々に異なる色の塗料を貯留し、シリンダ88、89、91と塗料の色の組合せを事前に決め、選んだシリンダの押出動作で指定塗料を霧化装置30へ押出すことができる。この作用を用いれば、塗料98を使用した塗装終了後、色替えに合わせて続けて塗料103を霧化装置30へ供給することができる。色替え毎に貯留手段と押出し手段を交換しなくてよいので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止めなくてよい。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を霧化して被塗装物へ塗布する塗装技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料を霧化する技術として回転霧化塗装技術が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図11は従来の技術の基本原理を説明する図であり、回転霧化塗装装置200は、カップ201を回転させた状態で、塗料押出し手段202を用いて塗料貯留部203に貯留された塗料204をカップ201に供給して、塗料204を霧化させる装置である。また、高電圧発生器205で霧化した塗料204に負の電荷を与えることができるので、負に帯電した粒子状塗料を正に帯電させた被塗装物に吸着させることができる。
【0004】
ところで、特許文献1の回転霧化塗装装置200は、塗装色を変えたいとき、塗装ガン206から塗料貯留部203と塗料押出し手段202とを備えた塗料カートリッジ207を取り外して、異なる色の塗料が満たされた新たな塗料カートリッジを塗装ガン206に取り付ける必要がある。
【0005】
色替えのために塗料カートリッジ207を交換する際には、ロボットアーム208の動作を一旦止める必要があるので、塗装ラインも停止させることになる。これでは、塗装ラインの稼働率の低下を招く。
【0006】
そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−229446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化して被塗装物へ塗布する霧化手段とからなる塗装装置において、前記霧化手段に、前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化する霧化手段とからなる塗装装置を用いて塗装を施す塗装方法において、前記霧化手段に複数組設けられる前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、特定の被塗装物に対して、複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、霧化手段に、塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されているので、複数の塗料貯留手段にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出し手段と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出し手段の押出動作によって指定の塗料を霧化手段へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1の塗料を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2の塗料を霧化手段へ供給することができる。色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。
請求項1によれば、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装装置を提供することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されているので、塗料貯留手段が導体の部材で構成される場合に比べて、塗料貯留手段と塗料貯留手段の間に絶縁のための距離を設ける必要がない。そのため、複数の塗料貯留手段に要するスペースを小さくすることができるので、塗装装置をコンパクトにすることができる。塗装装置がコンパクトになると、ロボットアームの動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボットアームの操作性が向上する。
【0015】
請求項3に係る発明では、霧化手段に複数組設けられる塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させるので、複数の塗料貯留手段にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出し手段と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出し手段の押出動作によって指定の塗料を霧化手段へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1の塗料を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2の塗料を霧化手段へ供給することができる。色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装方法を提供することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、特定の被塗装物に対して、複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布するので、塗料押出し手段と塗料貯留手段に貯留されている塗料の組み合わせを事前に決めておけば、塗料の種類毎に複数の塗装装置を用意する必要がない。そのため、特定の被塗装物に異なる種類の塗料を塗布する場合でも、効率良く塗装を実施することができる塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る塗装装置を用いた塗装ラインの断面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段の斜視図である。
【図4】本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段の断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】第1塗料を使用した塗装作業が終了するまでの作用を説明する図である。
【図7】塗料の供給元を第1塗料貯留室から第2塗料貯留室に変更するまでの作用を説明する図である。
【図8】第2塗料を使用した塗装作業を開始するまでの作用を説明する図である。
【図9】本発明に係る別の塗装装置を用いた塗装ラインの断面図である。
【図10】図9の10部拡大図である。
【図11】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下では、被塗装物を車体とし、塗料押出し手段を塗料押出しシリンダとし、霧化手段を回転霧化装置として説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、塗装ライン10は、搬送装置11で搬送されている車体12に、ロボット13のアーム部14の先端で支持された塗装装置20が臨んで構成されている。この塗装装置20は、ロボット13のアーム部14の先端に連結部材21を介して取り付けられている回転霧化装置30(詳細後述)と、この回転霧化装置30の後部に連結されている塗料供給装置40(詳細後述)とからなる。
【0020】
搬送装置11は、床41に設けられているレール42、43と、これらのレール42、43に沿って走行可能であると共に車体12を支持する台車44と、この台車44の下方に配置され台車44の下端に設けた爪部材45を押して台車44を走行させる駆動部46とで構成される。駆動部46は、台車44及び車体12を図手前側に押す送り側47と、台車44及び車体12を押し終わった後に奥側(上流側)に戻る戻り側48とからなる。
【0021】
ロボット13は、搬送装置11の移動方向に平行になるようにレール49、51に移動自在に設けた台52の上に取り付けられている。この台52には、ロボット13の動作を制御するロボット制御部53と、このロボット制御部53の図右側に配置され回転霧化装置30に低電圧ケーブル54を介して接続されている電源装置55とが設けられている。
【0022】
ロボット13のアーム部14には、塗料供給装置40の各部を制御する塗料供給制御部56が設けられている。57は圧縮エアホース、58は洗浄液ホースである。
【0023】
図2に示されるように、回転霧化装置30は、塗料供給装置(図1の符号20)の軸59に連結される連結部61を備え図左方向に延びている円柱状の内蔵ブロック62と、この内蔵ブロック62の外周面に取り付けられ内蔵ブロック62を覆っているケース63と、このケース63の先端に取り付けられ図左側に延びているカバー64と、内蔵ブロック62に固定した滑り軸受65で回転可能に支持され内蔵ブロック62に設けた動力エア供給穴66を通る圧縮エアで回転する羽根部67を備える中空状の回転軸68と、この回転軸68の内部に配置されると共に後端部が軸59の先端に接するように内蔵ブロック62に固定され塗料の通路となる塗料通過管69と、回転軸68の先端に取り付けられているカップ71とで構成される。
【0024】
内蔵ブロック62の凹み72には高電圧発生器73が設けられ、この高電圧発生器73はケース63で覆われている。
【0025】
連結部61には、回転霧化装置30に塗料供給装置を連結するために、チャック機構部74が3個設けられている(3個のうち1個を図示した)。このチャック機構部74は、連結部61に取り付けられているチャックシリンダ75と、このチャックシリンダ75のピストンロッド76の先端に取り付けられているチャック部材77とで構成される。このチャック部材77が軸59の穴78に嵌っているので、回転霧化装置30に塗料供給装置が連結されている(図1参照)。
【0026】
塗料供給制御部56から破線(1)のようにチャックシリンダ75に指令を出すと、チャック部材77が穴78から外れるので、回転霧化装置30から塗料供給装置を分離させることができる。79は塗料供給穴、81は塗料吐出穴、82はシェーピングエア供給穴、83はシェーピングエア通路、84は円環状のシェーピングエア吹出し口、85は嵌合凹部である。
【0027】
回転軸68は、滑り軸受65で回転可能に支持されているため、動力エアを羽根部67に噴射することで、カップ71と共に回転することができる。カップ71に供給された塗料は、カップ71の回転により発生する遠心力で粒子状になって、車体(図1の符号12)に向かって飛ぶ。すなわち、回転霧化装置30は、塗料を霧化して車体に塗布する装置である。
【0028】
図3に示されるように、塗料供給装置40は、軸59に接続されている本体部86(詳細後述)と、この本体部86の右端に取り付けられているふた87と、このふた87に取り付けられている例えば3本の電動式の塗料押出しシリンダとを備えている。これらの塗料押出しシリンダは、図の最も上側に配置されている第1塗料押出しシリンダ88と、この第1塗料押出しシリンダ88よりも左下に配置されている第2塗料押出しシリンダ89と、この第2塗料押出しシリンダ89よりも右下に配置されている第3塗料押出しシリンダ91とからなる。
【0029】
92は第1ストローク検出センサ、93は第2ストローク検出センサ、94は第2弁開閉シリンダ、95はプラグ、134、135、137はフランジ、136、138はボルトである。
なお、第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91は、実施例1では電動式としたが、空圧式や油圧式であってもよい。
【0030】
図4に示されるように、塗料供給装置40は、二点鎖線で示す回転霧化装置30に連結される軸59と、この軸59に接続されている本体部86と、この本体部86に取り付けたふた87に取り付けられている第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91の合計3本のシリンダとを備えている。
【0031】
本体部86には、塗料を貯留する塗料貯留室が例えば3室設けられている。具体的には、本体部86は、第1塗料押出しシリンダ88の第1ピストンロッド96に取り付けた第1ピストン97を収納し例えば赤色の第1塗料98を貯留している第1塗料貯留室99と、第2塗料押出しシリンダ89の第2ピストンロッド101に取り付けた第2ピストン102を収納し例えば青色の第2塗料103を貯留している第2塗料貯留室104とを備えている。また、第3塗料押出しシリンダ91に対応して例えば黄色の第3塗料を貯留する第3塗料貯留室105は、破線で示すように図奥側に設けられている。
【0032】
すなわち、第1塗料押出しシリンダ88は、本体部86に付属され貯留されている第1塗料98を押出し、第2塗料押出しシリンダ89は、本体部86に付属され貯留されている第2塗料103を押出し、第3塗料押出しシリンダ91は、本体部86に付属され貯留されている第3塗料を押出すことができるので、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0033】
塗装装置20では、1台の回転霧化装置30に、第1塗料貯留室99及び第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料貯留室104及び第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料貯留室105及び第3塗料押出しシリンダ91の合計3組の塗料貯留室及び塗料押出しシリンダが備えられ、第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91は、独立して駆動するように構成されている。
【0034】
第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の第1塗料98、第2塗料103、第3塗料を貯留させ、塗料押出しシリンダ88、89、91と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出しシリンダの押出動作によって指定の塗料を回転霧化装置30へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1塗料98を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2塗料103を回転霧化装置30へ供給することができる。
【0035】
色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボット(図1の符号13)のアーム部(図1の符号14)の動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ライン(図1の符号10)の稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装装置20を提供することができる。
【0036】
また、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105は、例えば樹脂製の絶縁部材で構成されていることを特徴とする。
【0037】
そのため、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105が導体の部材で構成される場合に比べて、塗料貯留室99と塗料貯留室104、又は塗料貯留室104と塗料貯留室105、又は塗料貯留室105と塗料貯留室99の間に絶縁のための距離を設ける必要がない。そのため、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105に要するスペースを小さくすることができるので、塗装装置20をコンパクトにすることができる。塗装装置20がコンパクトになると、ロボットのアーム部の動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボットのアーム部の操作性が向上する。
【0038】
また、絶縁部材の絶縁作用により、回転霧化装置30に高電圧を集中的に加えることができるので、回転霧化装置30から飛び出す粒子状塗料を確実に負に帯電させることができる。そのため、車体(図1の符号12)に対する塗料の付着性を向上させることができる。
【0039】
軸59は、本体部86に接続される第1段部106と、この第1段部106から左へ延ばされ第1段部106よりも小径である第2段部107と、この第2段部107から左へ延ばされ第2段部107よりも小径である第3段部108と、この第3段部108から左へ延ばされ第3段部108よりも小径である第4段部109とからなる。
【0040】
また、軸59は、第1塗料貯留室99に繋がって図左へ形成されている第1通過穴111と、この第1通過穴111に繋がって下へ形成される第1中継穴112と、第2塗料貯留室104に繋がって左へ形成されている第2通過穴113と、この第2通過穴113に繋がって上へ形成されている第2中継穴114と、第1中継穴112及び第2中継穴114に繋がって左へ形成されていると共に回転霧化装置30の塗料通過管(図2の符号69)に繋がっている塗料供給穴79とを備える。
【0041】
さらに破線で示した116は、第3塗料貯留室105に繋がっている第3通過穴であり、この第3通過穴116に第3中継穴117が繋がっていて、この第3中継穴117は塗料供給穴79に繋がっている。
【0042】
また、軸59の第1段部106には、第1通過穴111を通過する第1塗料98の流れを第1弁体118で制御する第1弁開閉シリンダ119と、第2通過穴113を通過する第2塗料103の流れを第2弁体121で制御する第2弁開閉シリンダ94が設けられている。第3弁開閉シリンダは次図で説明する。
【0043】
123はピストンパッキン、124はクッション、125、126は接続部材、127は第1弁座、128は第2弁座、129はOリング、131はOリング溝、132は嵌合凸部、133は把持用金具である。
【0044】
塗料供給制御部56から破線(3)のように第1弁開閉シリンダ119に指令を出すと、第1弁座127に嵌っている第1弁体118が矢印(4)のように移動する。次に、塗料供給制御部56から破線(5)のように第1塗料押出しシリンダ88に押し動作指令を出すと、第1ピストン97が矢印(6)のように移動するので、第1塗料98が第1通過穴111から第1中継穴112へ流れ込む。
【0045】
同様に、塗料供給制御部56から破線(7)のように第2弁開閉シリンダ94に指令を出すと、第2弁座128に嵌っている第2弁体121が矢印(8)のように移動する。次に、塗料供給制御部56から破線(9)のように第2塗料押出しシリンダ89に押し動作指令を出すと、第2ピストン102が矢印(10)のように移動するので、第2塗料103が第2通過穴113から第2中継穴114へ流れ込む。次に軸59の内部での塗料の流れを説明する。
【0046】
図5に示されるように、軸59の第1段部106には、時計回りに左から第1弁開閉シリンダ119、第2弁開閉シリンダ94、第3弁開閉シリンダ139が取り付けられている。第1弁開閉シリンダ119を動作させて第1弁体(図4の符号118)を開状態にし、第2弁体(図4の符号121)及び第3弁体を閉状態にして、第1塗料押出しシリンダ(図4の符号88)に押し動作を行わせると、第1塗料(図4の符号98)が第1塗料貯留室99から第1通過穴111、第1中継穴112を通過して塗料供給穴79に流れ込む。塗料供給穴79に流れ込んだ第1塗料は、図手前側に進むので、回転霧化装置(図2の符号30)に第1塗料を供給することができる。
【0047】
また、第2弁体を開状態にし、第1弁体及び第3弁体を閉状態にして、第2塗料押出しシリンダ(図4の符号89)に押し動作を行わせると、第2塗料貯留室104に貯留されている第2塗料(図4の符号103)は、第2通過穴113、第2中継穴114を通って塗料供給穴79へ流れ込むので、回転霧化装置に第2塗料を供給することができる。
【0048】
さらに、第3弁体を開状態にし、第1弁体及び第2弁体を閉状態にして、第3塗料押出しシリンダ(図4の符号91)に押し動作を行わせると、第3塗料貯留室105に貯留されている第3塗料は、第3通過穴116、第3中継穴117を通って塗料供給穴79へ流れ込むので、回転霧化装置に第3塗料を供給することができる。
【0049】
このように、塗料供給装置40では、回転霧化装置に3組設けられる塗料貯留室及び塗料押出しシリンダ(第1塗料貯留室99及び第1塗料押出しシリンダ、第2塗料貯留室104及び第2塗料押出しシリンダ、第3塗料貯留室105及び第3塗料押出しシリンダ)のうち、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0050】
加えて、軸59の第2段部107には、洗浄系141が接続されている。この洗浄系141は、3つの第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の塗料が貯留されている場合に使用するものである。
【0051】
例えば、第1塗料貯留室99に貯留された赤色の第1塗料(図4の符号98)を使用した後、第2塗料貯留室104に貯留された青色の第2塗料(図4の符号103)を使用するときに、塗料供給制御部56から破線(11)のように洗浄液ホース58中の洗浄液弁142を開状態にすることで、洗浄液穴143、第1中継穴112、第2中継穴114、第3中継穴117、塗料供給穴79、回転霧化装置へ洗浄液を流すことができる。これで赤色の第1塗料と青色の第2塗料の混じりを防ぐことができる。
【0052】
なお、洗浄液穴143に洗浄液を流すときには、第1弁体(図4の符号118)、第2弁体(図4の符号121)及び第3弁体は閉状態である。144は継手である。
以上に述べた塗装装置を用いた塗装方法を次に述べる。
【0053】
図6において、(a)に示されるように、車体12に向けて、回転しているカップ71から粒子状の赤色の第1塗料98が矢印(12)のように飛ばされている。次に、塗装色を変更するために塗料供給制御部56から第1塗料押出しシリンダ88へ破線(13)のように押し動作停止指令が出される。
【0054】
(b)に示されるように、第1塗料貯留室99内で第1ピストン97が静止している。この状態で塗料供給制御部56が破線(14)のように第1弁開閉シリンダ119に閉指令を出すと、第1弁開閉シリンダ119は第1弁体118を矢印(15)のように第1弁座127に向けて押し出す。
【0055】
図7において、(a)に示されるように、赤色の第1塗料98の供給が完全に止まったので、塗料供給制御部56が破線(16)のように第2弁開閉シリンダ94に開指令を出すと、第2弁開閉シリンダ94は第2弁体121を矢印(17)のように第2弁座128から外す。
【0056】
(b)に示されるように、塗料供給制御部56から破線(18)のように第2塗料押出しシリンダ89に押し動作指令を出す。
【0057】
図8において、(a)に示されるように、第2ピストン102が矢印(19)のように押し出されるので、青色の第2塗料103は矢印(20)のように、第2通過穴113、第2中継穴114を通って塗料供給穴79へ流れ込む。
【0058】
(b)に示されるように、回転しているカップ71から車体12に向けて、粒子状の青色の第2塗料103が矢印(21)のように飛ばされているので、車体12に対して異なる色の塗料を連続して塗装することができる。
【0059】
塗装装置20では、第1塗料押出しシリンダ88は、本体部86に付属され貯留されている赤色の第1塗料98を押出し、第2塗料押出しシリンダ89は、本体部86に付属され貯留されている青色の第2塗料103を押出し、第3塗料押出しシリンダ91は、本体部86に付属され貯留されている黄色の第3塗料を押出すことができるので、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0060】
第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出しシリンダ88、89、91と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出しシリンダの押出動作によって指定の塗料を回転霧化装置30へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1塗料98を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2塗料103を回転霧化装置30へ供給することができる。
【0061】
色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボット(図1の符号13)のアーム部14の動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ライン(図1の符号10)の稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装方法を提供することができる。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、実施例1と共通の構造については、実施例1で用いた符号を流用して説明を省略する。
【0063】
図9に示されるように、塗装ライン150は、搬送装置11で搬送されている車体12に、ロボット13のアーム部14の先端で支持された塗装装置160が臨んで構成されている。この塗装装置160は、ロボット13のアーム部14の先端に連結部材21を介して取り付けられている回転霧化装置30と、この回転霧化装置30の後部に連結されている塗料供給装置170(詳細後述)とからなる。
【0064】
加えて、塗料供給装置170には、台52上の支持台171の左に設けた第2塗料押出し部172(詳細後述)が第2圧縮エアホース173を介して接続され、支持台171の中央に設けた第1塗料押出し部174が第1圧縮エアホース175を介して接続され、支持台171の右に設けた第3塗料押出し部176が第3圧縮エアホース177を介して接続されている。
【0065】
すなわち、塗料供給装置170は、3つの塗料押出し部172、174、176を本体部178とは別に設けたことにより、コンパクト化を実現することができる。塗料供給装置170がコンパクトになると、ロボットのアーム部の動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボット13のアーム部14の操作性が向上する。
【0066】
なお、第1塗料押出し部174、第2塗料押出し部172、第3塗料押出し部176の構造は、同一であるので、次図では代表して第2塗料押出し部172の詳細構造を説明する。
【0067】
図10に示されるように、塗料供給装置170の構造は、実施例1の塗料供給装置(図4の符号40)を変更したものであり、変更点は塗料押出し部を別に設けたことである。
【0068】
塗料供給装置170は、回転霧化装置30に連結される軸59と、この軸59に接続されている本体部178と、この本体部178の右端に取り付けられているふた179と、本体部178に継手181及び第2圧縮エアホース173を介して接続されている第2塗料押出し部172とで構成される。
【0069】
第2塗料押出し部172は、支持部材182を介して支持台171で支持されている例えばエア式の第2シリンダ本体183と、この第2シリンダ本体183の上端に設けられている例えば油圧式の第2塗料押出しシリンダ184とで構成される。また、第2シリンダ本体183のエア室185には、第2動力ピストン186が上下に移動可能に収納され、第2動力ピストン186の下側には、圧縮エア161を封入されている。
【0070】
本体部178には、塗料を貯留する塗料貯留室が例えば3室設けられている。具体的には、本体部178は、第1塗料押出し部(図9の符号174)が第1圧縮エアホース175で接続され第1ピストン187を収納すると共にベース塗料を貯留している第1塗料貯留室188と、第2塗料押出し部172が第2圧縮エアホース173で接続され第2ピストン189を収納すると共に中塗り塗料を貯留している第2塗料貯留室191と、第3塗料押出し部(図9の符号176)が第3圧縮エアホース(図9の符号177)で接続され第3ピストンを収納すると共にクリア塗料を貯留している第3塗料貯留室192とを備えている。すなわち、本体部178には、3種類の塗料が貯留されている。
【0071】
加えて、第1塗料貯留室188には、第1ピストン187の右方に第1エア室193が設けられ、第2塗料貯留室191には、第2ピストン189の右方に第2エア室194が設けられている。同様に、第3塗料貯留室192にも第3エア室が設けられる。
【0072】
塗料供給制御部56から第2塗料押出しシリンダ184に破線(22)のように押し動作指令を出すと、第2シリンダ本体183内の第2動力ピストン186が矢印(23)のように移動する。同時に第2シリンダ本体183の内にある圧縮エア161は、第2圧縮エアホース173を通って第2塗料貯留室191の右端にある第2エア室194に流れ込む。
【0073】
第2ピストン189が矢印(24)のように押し出されるので、第2塗料貯留室191に貯留された中塗り塗料を第2通過穴113、第2中継穴114、塗料供給穴79を通過させて回転霧化装置30へ供給することができる。
【0074】
次に、塗料供給制御部56から第1弁開閉シリンダ119に破線(25)のように戻り動作指令を出し、第1弁体118を開状態にする。次に、第1塗料押出しシリンダに押し動作指令を出して、第1シリンダ本体のエア室内の圧縮エアを第1エア室193に流すことで、第1ピストン187を矢印(26)のように押し出すことができる。
【0075】
第1塗料貯留室188に貯留されたベース塗料が第1通過穴111、第1中継穴112、塗料供給穴79を通過して回転霧化装置30へ供給される。なお、このとき、第2弁体121は閉状態である。195はクッションである。
【0076】
塗料供給装置170では、特定の車体に対して、3つの塗料貯留室188、191、192に貯留されている中塗り塗料、ベース塗料、クリア塗料の中から任意に塗料を選んで塗布するので、例えば第1塗料押出し部(図9の符号174)と第1塗料貯留室188に貯留されているベース塗料、第2塗料押出し部172と第2塗料貯留室191に貯留されている中塗り塗料、第3塗料押出し部176と第3塗料貯留室192に貯留されているクリア塗料というように、塗料押出し部と塗料の組み合わせを事前に決めておけば、塗料の種類毎に複数の塗装装置を用意する必要がない。
【0077】
そのため、特定の被塗装物に異なる種類の塗料を塗布する場合でも、効率良く塗装を実施することができる塗装方法を提供することができる。
【0078】
尚、本発明に係る被塗装物は、実施の形態では車体を適用したが、この他に機械製品や構造物を適用することもできるので、一般の工業製品を適用することは差し支えない。
また、本発明に係る塗料押出し手段は、実施の形態ではシリンダを適用したが、この他に送りねじなどを適用することができるので、一般の直動式機構を適用することは差し支えない。
【0079】
加えて、本発明に係る絶縁部材は、実施の形態では樹脂を適用したが、この他にゴムや磁器などを適用することもできるので、一般の絶縁材料を適用することは差し支えない。
また、本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段は、実施の形態では1台の回転霧化装置に対して3組設けたが、組数は任意に決めてよい。
【0080】
さらに、本発明の複数の塗料貯留手段に貯留される塗料の組み合わせは、自由であり、同一の種類の塗料を貯留させても、異なる種類の塗料を貯留させてもよい。
また、本発明に係る霧化手段は、実施の形態では回転霧化装置を適用したが、空気霧化装置、スプレー装置を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の塗装装置は、自動車の車体の塗装ラインに好適である。
【符号の説明】
【0082】
10、150…塗装ライン、12…車体、20、160…塗装装置、30…回転霧化装置、40、170…塗料供給装置、79…塗料供給穴、88…第1塗料押出しシリンダ、89、184…第2塗料押出しシリンダ、91…第3塗料押出しシリンダ、94…第2弁開閉シリンダ、97、187…第1ピストン、98…第1塗料、99、188…第1塗料貯留室、102、189…第2ピストン、103…第2塗料、104、191…第2塗料貯留室、105、192…第3塗料貯留室、111…第1通過穴、112…第1中継穴、113…第2通過穴、114…第2中継穴、116…第3通過穴、117…第3中継穴、119…第1弁開閉シリンダ、139…第3弁開閉シリンダ、172…第2塗料押出し部、174…第1塗料押出し部、176…第3塗料押出し部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を霧化して被塗装物へ塗布する塗装技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料を霧化する技術として回転霧化塗装技術が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図11は従来の技術の基本原理を説明する図であり、回転霧化塗装装置200は、カップ201を回転させた状態で、塗料押出し手段202を用いて塗料貯留部203に貯留された塗料204をカップ201に供給して、塗料204を霧化させる装置である。また、高電圧発生器205で霧化した塗料204に負の電荷を与えることができるので、負に帯電した粒子状塗料を正に帯電させた被塗装物に吸着させることができる。
【0004】
ところで、特許文献1の回転霧化塗装装置200は、塗装色を変えたいとき、塗装ガン206から塗料貯留部203と塗料押出し手段202とを備えた塗料カートリッジ207を取り外して、異なる色の塗料が満たされた新たな塗料カートリッジを塗装ガン206に取り付ける必要がある。
【0005】
色替えのために塗料カートリッジ207を交換する際には、ロボットアーム208の動作を一旦止める必要があるので、塗装ラインも停止させることになる。これでは、塗装ラインの稼働率の低下を招く。
【0006】
そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−229446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化して被塗装物へ塗布する霧化手段とからなる塗装装置において、前記霧化手段に、前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化する霧化手段とからなる塗装装置を用いて塗装を施す塗装方法において、前記霧化手段に複数組設けられる前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、特定の被塗装物に対して、複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、霧化手段に、塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されているので、複数の塗料貯留手段にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出し手段と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出し手段の押出動作によって指定の塗料を霧化手段へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1の塗料を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2の塗料を霧化手段へ供給することができる。色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。
請求項1によれば、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装装置を提供することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されているので、塗料貯留手段が導体の部材で構成される場合に比べて、塗料貯留手段と塗料貯留手段の間に絶縁のための距離を設ける必要がない。そのため、複数の塗料貯留手段に要するスペースを小さくすることができるので、塗装装置をコンパクトにすることができる。塗装装置がコンパクトになると、ロボットアームの動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボットアームの操作性が向上する。
【0015】
請求項3に係る発明では、霧化手段に複数組設けられる塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させるので、複数の塗料貯留手段にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出し手段と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出し手段の押出動作によって指定の塗料を霧化手段へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1の塗料を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2の塗料を霧化手段へ供給することができる。色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボットアームの動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ラインの稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装方法を提供することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、特定の被塗装物に対して、複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布するので、塗料押出し手段と塗料貯留手段に貯留されている塗料の組み合わせを事前に決めておけば、塗料の種類毎に複数の塗装装置を用意する必要がない。そのため、特定の被塗装物に異なる種類の塗料を塗布する場合でも、効率良く塗装を実施することができる塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る塗装装置を用いた塗装ラインの断面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段の斜視図である。
【図4】本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段の断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】第1塗料を使用した塗装作業が終了するまでの作用を説明する図である。
【図7】塗料の供給元を第1塗料貯留室から第2塗料貯留室に変更するまでの作用を説明する図である。
【図8】第2塗料を使用した塗装作業を開始するまでの作用を説明する図である。
【図9】本発明に係る別の塗装装置を用いた塗装ラインの断面図である。
【図10】図9の10部拡大図である。
【図11】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下では、被塗装物を車体とし、塗料押出し手段を塗料押出しシリンダとし、霧化手段を回転霧化装置として説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、塗装ライン10は、搬送装置11で搬送されている車体12に、ロボット13のアーム部14の先端で支持された塗装装置20が臨んで構成されている。この塗装装置20は、ロボット13のアーム部14の先端に連結部材21を介して取り付けられている回転霧化装置30(詳細後述)と、この回転霧化装置30の後部に連結されている塗料供給装置40(詳細後述)とからなる。
【0020】
搬送装置11は、床41に設けられているレール42、43と、これらのレール42、43に沿って走行可能であると共に車体12を支持する台車44と、この台車44の下方に配置され台車44の下端に設けた爪部材45を押して台車44を走行させる駆動部46とで構成される。駆動部46は、台車44及び車体12を図手前側に押す送り側47と、台車44及び車体12を押し終わった後に奥側(上流側)に戻る戻り側48とからなる。
【0021】
ロボット13は、搬送装置11の移動方向に平行になるようにレール49、51に移動自在に設けた台52の上に取り付けられている。この台52には、ロボット13の動作を制御するロボット制御部53と、このロボット制御部53の図右側に配置され回転霧化装置30に低電圧ケーブル54を介して接続されている電源装置55とが設けられている。
【0022】
ロボット13のアーム部14には、塗料供給装置40の各部を制御する塗料供給制御部56が設けられている。57は圧縮エアホース、58は洗浄液ホースである。
【0023】
図2に示されるように、回転霧化装置30は、塗料供給装置(図1の符号20)の軸59に連結される連結部61を備え図左方向に延びている円柱状の内蔵ブロック62と、この内蔵ブロック62の外周面に取り付けられ内蔵ブロック62を覆っているケース63と、このケース63の先端に取り付けられ図左側に延びているカバー64と、内蔵ブロック62に固定した滑り軸受65で回転可能に支持され内蔵ブロック62に設けた動力エア供給穴66を通る圧縮エアで回転する羽根部67を備える中空状の回転軸68と、この回転軸68の内部に配置されると共に後端部が軸59の先端に接するように内蔵ブロック62に固定され塗料の通路となる塗料通過管69と、回転軸68の先端に取り付けられているカップ71とで構成される。
【0024】
内蔵ブロック62の凹み72には高電圧発生器73が設けられ、この高電圧発生器73はケース63で覆われている。
【0025】
連結部61には、回転霧化装置30に塗料供給装置を連結するために、チャック機構部74が3個設けられている(3個のうち1個を図示した)。このチャック機構部74は、連結部61に取り付けられているチャックシリンダ75と、このチャックシリンダ75のピストンロッド76の先端に取り付けられているチャック部材77とで構成される。このチャック部材77が軸59の穴78に嵌っているので、回転霧化装置30に塗料供給装置が連結されている(図1参照)。
【0026】
塗料供給制御部56から破線(1)のようにチャックシリンダ75に指令を出すと、チャック部材77が穴78から外れるので、回転霧化装置30から塗料供給装置を分離させることができる。79は塗料供給穴、81は塗料吐出穴、82はシェーピングエア供給穴、83はシェーピングエア通路、84は円環状のシェーピングエア吹出し口、85は嵌合凹部である。
【0027】
回転軸68は、滑り軸受65で回転可能に支持されているため、動力エアを羽根部67に噴射することで、カップ71と共に回転することができる。カップ71に供給された塗料は、カップ71の回転により発生する遠心力で粒子状になって、車体(図1の符号12)に向かって飛ぶ。すなわち、回転霧化装置30は、塗料を霧化して車体に塗布する装置である。
【0028】
図3に示されるように、塗料供給装置40は、軸59に接続されている本体部86(詳細後述)と、この本体部86の右端に取り付けられているふた87と、このふた87に取り付けられている例えば3本の電動式の塗料押出しシリンダとを備えている。これらの塗料押出しシリンダは、図の最も上側に配置されている第1塗料押出しシリンダ88と、この第1塗料押出しシリンダ88よりも左下に配置されている第2塗料押出しシリンダ89と、この第2塗料押出しシリンダ89よりも右下に配置されている第3塗料押出しシリンダ91とからなる。
【0029】
92は第1ストローク検出センサ、93は第2ストローク検出センサ、94は第2弁開閉シリンダ、95はプラグ、134、135、137はフランジ、136、138はボルトである。
なお、第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91は、実施例1では電動式としたが、空圧式や油圧式であってもよい。
【0030】
図4に示されるように、塗料供給装置40は、二点鎖線で示す回転霧化装置30に連結される軸59と、この軸59に接続されている本体部86と、この本体部86に取り付けたふた87に取り付けられている第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91の合計3本のシリンダとを備えている。
【0031】
本体部86には、塗料を貯留する塗料貯留室が例えば3室設けられている。具体的には、本体部86は、第1塗料押出しシリンダ88の第1ピストンロッド96に取り付けた第1ピストン97を収納し例えば赤色の第1塗料98を貯留している第1塗料貯留室99と、第2塗料押出しシリンダ89の第2ピストンロッド101に取り付けた第2ピストン102を収納し例えば青色の第2塗料103を貯留している第2塗料貯留室104とを備えている。また、第3塗料押出しシリンダ91に対応して例えば黄色の第3塗料を貯留する第3塗料貯留室105は、破線で示すように図奥側に設けられている。
【0032】
すなわち、第1塗料押出しシリンダ88は、本体部86に付属され貯留されている第1塗料98を押出し、第2塗料押出しシリンダ89は、本体部86に付属され貯留されている第2塗料103を押出し、第3塗料押出しシリンダ91は、本体部86に付属され貯留されている第3塗料を押出すことができるので、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0033】
塗装装置20では、1台の回転霧化装置30に、第1塗料貯留室99及び第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料貯留室104及び第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料貯留室105及び第3塗料押出しシリンダ91の合計3組の塗料貯留室及び塗料押出しシリンダが備えられ、第1塗料押出しシリンダ88、第2塗料押出しシリンダ89、第3塗料押出しシリンダ91は、独立して駆動するように構成されている。
【0034】
第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の第1塗料98、第2塗料103、第3塗料を貯留させ、塗料押出しシリンダ88、89、91と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出しシリンダの押出動作によって指定の塗料を回転霧化装置30へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1塗料98を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2塗料103を回転霧化装置30へ供給することができる。
【0035】
色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボット(図1の符号13)のアーム部(図1の符号14)の動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ライン(図1の符号10)の稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装装置20を提供することができる。
【0036】
また、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105は、例えば樹脂製の絶縁部材で構成されていることを特徴とする。
【0037】
そのため、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105が導体の部材で構成される場合に比べて、塗料貯留室99と塗料貯留室104、又は塗料貯留室104と塗料貯留室105、又は塗料貯留室105と塗料貯留室99の間に絶縁のための距離を設ける必要がない。そのため、第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105に要するスペースを小さくすることができるので、塗装装置20をコンパクトにすることができる。塗装装置20がコンパクトになると、ロボットのアーム部の動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボットのアーム部の操作性が向上する。
【0038】
また、絶縁部材の絶縁作用により、回転霧化装置30に高電圧を集中的に加えることができるので、回転霧化装置30から飛び出す粒子状塗料を確実に負に帯電させることができる。そのため、車体(図1の符号12)に対する塗料の付着性を向上させることができる。
【0039】
軸59は、本体部86に接続される第1段部106と、この第1段部106から左へ延ばされ第1段部106よりも小径である第2段部107と、この第2段部107から左へ延ばされ第2段部107よりも小径である第3段部108と、この第3段部108から左へ延ばされ第3段部108よりも小径である第4段部109とからなる。
【0040】
また、軸59は、第1塗料貯留室99に繋がって図左へ形成されている第1通過穴111と、この第1通過穴111に繋がって下へ形成される第1中継穴112と、第2塗料貯留室104に繋がって左へ形成されている第2通過穴113と、この第2通過穴113に繋がって上へ形成されている第2中継穴114と、第1中継穴112及び第2中継穴114に繋がって左へ形成されていると共に回転霧化装置30の塗料通過管(図2の符号69)に繋がっている塗料供給穴79とを備える。
【0041】
さらに破線で示した116は、第3塗料貯留室105に繋がっている第3通過穴であり、この第3通過穴116に第3中継穴117が繋がっていて、この第3中継穴117は塗料供給穴79に繋がっている。
【0042】
また、軸59の第1段部106には、第1通過穴111を通過する第1塗料98の流れを第1弁体118で制御する第1弁開閉シリンダ119と、第2通過穴113を通過する第2塗料103の流れを第2弁体121で制御する第2弁開閉シリンダ94が設けられている。第3弁開閉シリンダは次図で説明する。
【0043】
123はピストンパッキン、124はクッション、125、126は接続部材、127は第1弁座、128は第2弁座、129はOリング、131はOリング溝、132は嵌合凸部、133は把持用金具である。
【0044】
塗料供給制御部56から破線(3)のように第1弁開閉シリンダ119に指令を出すと、第1弁座127に嵌っている第1弁体118が矢印(4)のように移動する。次に、塗料供給制御部56から破線(5)のように第1塗料押出しシリンダ88に押し動作指令を出すと、第1ピストン97が矢印(6)のように移動するので、第1塗料98が第1通過穴111から第1中継穴112へ流れ込む。
【0045】
同様に、塗料供給制御部56から破線(7)のように第2弁開閉シリンダ94に指令を出すと、第2弁座128に嵌っている第2弁体121が矢印(8)のように移動する。次に、塗料供給制御部56から破線(9)のように第2塗料押出しシリンダ89に押し動作指令を出すと、第2ピストン102が矢印(10)のように移動するので、第2塗料103が第2通過穴113から第2中継穴114へ流れ込む。次に軸59の内部での塗料の流れを説明する。
【0046】
図5に示されるように、軸59の第1段部106には、時計回りに左から第1弁開閉シリンダ119、第2弁開閉シリンダ94、第3弁開閉シリンダ139が取り付けられている。第1弁開閉シリンダ119を動作させて第1弁体(図4の符号118)を開状態にし、第2弁体(図4の符号121)及び第3弁体を閉状態にして、第1塗料押出しシリンダ(図4の符号88)に押し動作を行わせると、第1塗料(図4の符号98)が第1塗料貯留室99から第1通過穴111、第1中継穴112を通過して塗料供給穴79に流れ込む。塗料供給穴79に流れ込んだ第1塗料は、図手前側に進むので、回転霧化装置(図2の符号30)に第1塗料を供給することができる。
【0047】
また、第2弁体を開状態にし、第1弁体及び第3弁体を閉状態にして、第2塗料押出しシリンダ(図4の符号89)に押し動作を行わせると、第2塗料貯留室104に貯留されている第2塗料(図4の符号103)は、第2通過穴113、第2中継穴114を通って塗料供給穴79へ流れ込むので、回転霧化装置に第2塗料を供給することができる。
【0048】
さらに、第3弁体を開状態にし、第1弁体及び第2弁体を閉状態にして、第3塗料押出しシリンダ(図4の符号91)に押し動作を行わせると、第3塗料貯留室105に貯留されている第3塗料は、第3通過穴116、第3中継穴117を通って塗料供給穴79へ流れ込むので、回転霧化装置に第3塗料を供給することができる。
【0049】
このように、塗料供給装置40では、回転霧化装置に3組設けられる塗料貯留室及び塗料押出しシリンダ(第1塗料貯留室99及び第1塗料押出しシリンダ、第2塗料貯留室104及び第2塗料押出しシリンダ、第3塗料貯留室105及び第3塗料押出しシリンダ)のうち、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0050】
加えて、軸59の第2段部107には、洗浄系141が接続されている。この洗浄系141は、3つの第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の塗料が貯留されている場合に使用するものである。
【0051】
例えば、第1塗料貯留室99に貯留された赤色の第1塗料(図4の符号98)を使用した後、第2塗料貯留室104に貯留された青色の第2塗料(図4の符号103)を使用するときに、塗料供給制御部56から破線(11)のように洗浄液ホース58中の洗浄液弁142を開状態にすることで、洗浄液穴143、第1中継穴112、第2中継穴114、第3中継穴117、塗料供給穴79、回転霧化装置へ洗浄液を流すことができる。これで赤色の第1塗料と青色の第2塗料の混じりを防ぐことができる。
【0052】
なお、洗浄液穴143に洗浄液を流すときには、第1弁体(図4の符号118)、第2弁体(図4の符号121)及び第3弁体は閉状態である。144は継手である。
以上に述べた塗装装置を用いた塗装方法を次に述べる。
【0053】
図6において、(a)に示されるように、車体12に向けて、回転しているカップ71から粒子状の赤色の第1塗料98が矢印(12)のように飛ばされている。次に、塗装色を変更するために塗料供給制御部56から第1塗料押出しシリンダ88へ破線(13)のように押し動作停止指令が出される。
【0054】
(b)に示されるように、第1塗料貯留室99内で第1ピストン97が静止している。この状態で塗料供給制御部56が破線(14)のように第1弁開閉シリンダ119に閉指令を出すと、第1弁開閉シリンダ119は第1弁体118を矢印(15)のように第1弁座127に向けて押し出す。
【0055】
図7において、(a)に示されるように、赤色の第1塗料98の供給が完全に止まったので、塗料供給制御部56が破線(16)のように第2弁開閉シリンダ94に開指令を出すと、第2弁開閉シリンダ94は第2弁体121を矢印(17)のように第2弁座128から外す。
【0056】
(b)に示されるように、塗料供給制御部56から破線(18)のように第2塗料押出しシリンダ89に押し動作指令を出す。
【0057】
図8において、(a)に示されるように、第2ピストン102が矢印(19)のように押し出されるので、青色の第2塗料103は矢印(20)のように、第2通過穴113、第2中継穴114を通って塗料供給穴79へ流れ込む。
【0058】
(b)に示されるように、回転しているカップ71から車体12に向けて、粒子状の青色の第2塗料103が矢印(21)のように飛ばされているので、車体12に対して異なる色の塗料を連続して塗装することができる。
【0059】
塗装装置20では、第1塗料押出しシリンダ88は、本体部86に付属され貯留されている赤色の第1塗料98を押出し、第2塗料押出しシリンダ89は、本体部86に付属され貯留されている青色の第2塗料103を押出し、第3塗料押出しシリンダ91は、本体部86に付属され貯留されている黄色の第3塗料を押出すことができるので、各々の塗料押出しシリンダを独立して駆動させることができる。
【0060】
第1塗料貯留室99、第2塗料貯留室104、第3塗料貯留室105にそれぞれ異なる色の塗料を貯留させ、塗料押出しシリンダ88、89、91と塗料の色の組み合わせを事前に決めておけば、選択した塗料押出しシリンダの押出動作によって指定の塗料を回転霧化装置30へ押し出すことができる。この作用を用いれば、第1塗料98を使用した塗装作業が終了した後、色替えに合わせて、続けて第2塗料103を回転霧化装置30へ供給することができる。
【0061】
色替えの度に塗料貯留手段及び塗料押出し手段を交換する必要がないので、塗装中にロボット(図1の符号13)のアーム部14の動作を一旦止める必要がない。そのため、塗装ライン(図1の符号10)の稼働率を向上させることができる。したがって、塗装ラインの稼働率を向上させることができる塗装方法を提供することができる。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、実施例1と共通の構造については、実施例1で用いた符号を流用して説明を省略する。
【0063】
図9に示されるように、塗装ライン150は、搬送装置11で搬送されている車体12に、ロボット13のアーム部14の先端で支持された塗装装置160が臨んで構成されている。この塗装装置160は、ロボット13のアーム部14の先端に連結部材21を介して取り付けられている回転霧化装置30と、この回転霧化装置30の後部に連結されている塗料供給装置170(詳細後述)とからなる。
【0064】
加えて、塗料供給装置170には、台52上の支持台171の左に設けた第2塗料押出し部172(詳細後述)が第2圧縮エアホース173を介して接続され、支持台171の中央に設けた第1塗料押出し部174が第1圧縮エアホース175を介して接続され、支持台171の右に設けた第3塗料押出し部176が第3圧縮エアホース177を介して接続されている。
【0065】
すなわち、塗料供給装置170は、3つの塗料押出し部172、174、176を本体部178とは別に設けたことにより、コンパクト化を実現することができる。塗料供給装置170がコンパクトになると、ロボットのアーム部の動作に必要なスペースを小さくすることができるので、ロボット13のアーム部14の操作性が向上する。
【0066】
なお、第1塗料押出し部174、第2塗料押出し部172、第3塗料押出し部176の構造は、同一であるので、次図では代表して第2塗料押出し部172の詳細構造を説明する。
【0067】
図10に示されるように、塗料供給装置170の構造は、実施例1の塗料供給装置(図4の符号40)を変更したものであり、変更点は塗料押出し部を別に設けたことである。
【0068】
塗料供給装置170は、回転霧化装置30に連結される軸59と、この軸59に接続されている本体部178と、この本体部178の右端に取り付けられているふた179と、本体部178に継手181及び第2圧縮エアホース173を介して接続されている第2塗料押出し部172とで構成される。
【0069】
第2塗料押出し部172は、支持部材182を介して支持台171で支持されている例えばエア式の第2シリンダ本体183と、この第2シリンダ本体183の上端に設けられている例えば油圧式の第2塗料押出しシリンダ184とで構成される。また、第2シリンダ本体183のエア室185には、第2動力ピストン186が上下に移動可能に収納され、第2動力ピストン186の下側には、圧縮エア161を封入されている。
【0070】
本体部178には、塗料を貯留する塗料貯留室が例えば3室設けられている。具体的には、本体部178は、第1塗料押出し部(図9の符号174)が第1圧縮エアホース175で接続され第1ピストン187を収納すると共にベース塗料を貯留している第1塗料貯留室188と、第2塗料押出し部172が第2圧縮エアホース173で接続され第2ピストン189を収納すると共に中塗り塗料を貯留している第2塗料貯留室191と、第3塗料押出し部(図9の符号176)が第3圧縮エアホース(図9の符号177)で接続され第3ピストンを収納すると共にクリア塗料を貯留している第3塗料貯留室192とを備えている。すなわち、本体部178には、3種類の塗料が貯留されている。
【0071】
加えて、第1塗料貯留室188には、第1ピストン187の右方に第1エア室193が設けられ、第2塗料貯留室191には、第2ピストン189の右方に第2エア室194が設けられている。同様に、第3塗料貯留室192にも第3エア室が設けられる。
【0072】
塗料供給制御部56から第2塗料押出しシリンダ184に破線(22)のように押し動作指令を出すと、第2シリンダ本体183内の第2動力ピストン186が矢印(23)のように移動する。同時に第2シリンダ本体183の内にある圧縮エア161は、第2圧縮エアホース173を通って第2塗料貯留室191の右端にある第2エア室194に流れ込む。
【0073】
第2ピストン189が矢印(24)のように押し出されるので、第2塗料貯留室191に貯留された中塗り塗料を第2通過穴113、第2中継穴114、塗料供給穴79を通過させて回転霧化装置30へ供給することができる。
【0074】
次に、塗料供給制御部56から第1弁開閉シリンダ119に破線(25)のように戻り動作指令を出し、第1弁体118を開状態にする。次に、第1塗料押出しシリンダに押し動作指令を出して、第1シリンダ本体のエア室内の圧縮エアを第1エア室193に流すことで、第1ピストン187を矢印(26)のように押し出すことができる。
【0075】
第1塗料貯留室188に貯留されたベース塗料が第1通過穴111、第1中継穴112、塗料供給穴79を通過して回転霧化装置30へ供給される。なお、このとき、第2弁体121は閉状態である。195はクッションである。
【0076】
塗料供給装置170では、特定の車体に対して、3つの塗料貯留室188、191、192に貯留されている中塗り塗料、ベース塗料、クリア塗料の中から任意に塗料を選んで塗布するので、例えば第1塗料押出し部(図9の符号174)と第1塗料貯留室188に貯留されているベース塗料、第2塗料押出し部172と第2塗料貯留室191に貯留されている中塗り塗料、第3塗料押出し部176と第3塗料貯留室192に貯留されているクリア塗料というように、塗料押出し部と塗料の組み合わせを事前に決めておけば、塗料の種類毎に複数の塗装装置を用意する必要がない。
【0077】
そのため、特定の被塗装物に異なる種類の塗料を塗布する場合でも、効率良く塗装を実施することができる塗装方法を提供することができる。
【0078】
尚、本発明に係る被塗装物は、実施の形態では車体を適用したが、この他に機械製品や構造物を適用することもできるので、一般の工業製品を適用することは差し支えない。
また、本発明に係る塗料押出し手段は、実施の形態ではシリンダを適用したが、この他に送りねじなどを適用することができるので、一般の直動式機構を適用することは差し支えない。
【0079】
加えて、本発明に係る絶縁部材は、実施の形態では樹脂を適用したが、この他にゴムや磁器などを適用することもできるので、一般の絶縁材料を適用することは差し支えない。
また、本発明に係る塗料貯留手段及び塗料押出し手段は、実施の形態では1台の回転霧化装置に対して3組設けたが、組数は任意に決めてよい。
【0080】
さらに、本発明の複数の塗料貯留手段に貯留される塗料の組み合わせは、自由であり、同一の種類の塗料を貯留させても、異なる種類の塗料を貯留させてもよい。
また、本発明に係る霧化手段は、実施の形態では回転霧化装置を適用したが、空気霧化装置、スプレー装置を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の塗装装置は、自動車の車体の塗装ラインに好適である。
【符号の説明】
【0082】
10、150…塗装ライン、12…車体、20、160…塗装装置、30…回転霧化装置、40、170…塗料供給装置、79…塗料供給穴、88…第1塗料押出しシリンダ、89、184…第2塗料押出しシリンダ、91…第3塗料押出しシリンダ、94…第2弁開閉シリンダ、97、187…第1ピストン、98…第1塗料、99、188…第1塗料貯留室、102、189…第2ピストン、103…第2塗料、104、191…第2塗料貯留室、105、192…第3塗料貯留室、111…第1通過穴、112…第1中継穴、113…第2通過穴、114…第2中継穴、116…第3通過穴、117…第3中継穴、119…第1弁開閉シリンダ、139…第3弁開閉シリンダ、172…第2塗料押出し部、174…第1塗料押出し部、176…第3塗料押出し部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化して被塗装物へ塗布する霧化手段とからなる塗装装置において、
前記霧化手段に、前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、
各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化する霧化手段とからなる塗装装置を用いて塗装を施す塗装方法において、
前記霧化手段に複数組設けられる前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させることを特徴とする塗装方法。
【請求項4】
特定の被塗装物に対して、前記複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布することを特徴とする請求項3記載の塗装方法。
【請求項1】
塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化して被塗装物へ塗布する霧化手段とからなる塗装装置において、
前記霧化手段に、前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段が複数組備えられ、
各々の塗料押出し手段は、独立して駆動するように構成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記塗料貯留手段は、絶縁部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
塗料を貯留する塗料貯留手段と、この塗料貯留手段に付属され貯留されている塗料を押出す塗料押出し手段と、この塗料押出し手段で前記塗料貯留手段から押し出された塗料を霧化する霧化手段とからなる塗装装置を用いて塗装を施す塗装方法において、
前記霧化手段に複数組設けられる前記塗料貯留手段及び塗料押出し手段のうち、各々の塗料押出し手段を独立して駆動させることを特徴とする塗装方法。
【請求項4】
特定の被塗装物に対して、前記複数の塗料貯留手段に貯留されている異なる種類の塗料の中から任意に塗料を選んで塗布することを特徴とする請求項3記載の塗装方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−227853(P2010−227853A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79338(P2009−79338)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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