説明

塗装補修方法

【課題】袋構造部など外部から焼付けが困難な場所に補修欠陥部位が存在する場合であっても、塗装に用いた塗料と同一種の塗料で補修する方法を提供する。
【解決手段】被塗物上に存在する塗装欠陥部に塗料を塗布して補修部を得る工程と、前記被塗物にマイクロ波を照射し、前記被塗物表面を加熱させることにより前記塗料を硬化させて塗膜を得る工程と、を含む、塗装補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造においては、防錆と美観の付与等を目的として車体表面に塗装を施す。一般に、塗料は一つの材料で、要求されるすべての性能を満足することはできず、いくつかの材料を使い分け、何回か塗り重ねることにより、総合塗膜として諸性能を満足するようになっている。例えば、自動車車体外板部の塗装は、一般的に、鋼板素地上に(前処理、)電着塗装、中塗りおよび上塗りという塗膜を順に重ねたものである。前処理および電着塗装は防錆を、中塗りは仕上り外観向上のための表面調整を、上塗りは仕上り外観と耐久性を主体に塗膜性能を分担している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記いずれかの段階で塗装欠陥が生じた場合の補修方法の一例としては、塗装欠陥部位を研ぎ、塗装に用いた塗料と同一種の塗料を塗装して補修する方法がある。この場合、塗料をスプレー等により塗布した後、温風ヒーターや遠赤外線ランプにより熱を与える、または紫外線照射することで、塗料を硬化させ塗膜とし、品質(意匠、機能)を確保している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ボディ外表面やドア内板部等の視認できる部分は、上記の一般的な補修方法で補修することが可能である。一方、近年、自動車のボディは、より軽量で所望の強度を高めるために、複雑な袋構造を採る。しかしながら、シル内やピラー内の袋構造部に塗装補修が必要になった場合、塗料の塗布は可能であるが、塗膜の硬化を行うことができない。例えば、温風ヒーター等で外部から加熱した場合、袋構造部にある補修欠陥部位は複数のパネルにより遮蔽されるため、熱が内部にまで到達せず、加熱乾燥することができない場合がある。また、(遠、中、近)赤外線照射により加熱した場合、袋構造部にある補修欠陥部位は遮蔽物により影となるため、加熱乾燥することができない場合がある。さらに、UV塗料を用いた紫外線照射による補修も、袋構造部にある補修欠陥部位は遮蔽物により影となるため、塗料が硬化しない場合がある。したがって、袋構造部に補修欠陥部位が存在すると、上記一般補修方法が適用できないため、袋構造部に車体補修(溶接等)が行われた場合、塗装補修としては、応急的なワックス塗布を行う。
【特許文献1】特開平2−202961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワックス塗布は、防錆性等において塗膜が有する機能と比較して十分なものではないため、恒久的な補修方法とはなり得ない。したがって、袋構造部など外部から焼付けが困難な場所に補修欠陥部位が存在する場合であっても、塗装に用いた塗料と同一種の塗料または同様の機能を有する塗料で補修する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、マイクロ波により鋼板表面を加熱することにより、間接的に塗装欠陥部位に塗布された塗料を硬化させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
熱風や遠赤外線などによっては、補修箇所までエネルギーが到達せず塗料が硬化しにくい場所に補修箇所が存在しても、本発明によれば、塗料を硬化させて補修を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、被塗物上に存在する塗装欠陥部に塗料を塗布して補修部を得る工程と、前記被塗物にマイクロ波を照射し、前記被塗物表面を加熱させることにより前記塗料を硬化させて塗膜を得る工程と、を含む、塗装補修方法である。
【0009】
なお、本明細書において、「塗料」とは乾燥前の状態をいう。また、「塗膜」とは被塗物上で塗料が乾燥・硬化して膜状になった状態を言う。
【0010】
被塗物、例えば鋼板にマイクロ波を照射すると、鋼板表面に渦電流によるジュール熱が発生し(誘導加熱)、鋼板が加熱される。このマイクロ波の誘導加熱により、鋼板の表面温度が上昇し、塗料が硬化される。従来焼付けができなかった車体構造部内等に補修箇所が存在する場合にも、マイクロ波を鋼板に照射することによって被膜を硬化させることができる。
【0011】
マイクロ波の照射は、塗料が硬化されるように鋼板を加熱する条件であれば、特に限定されるものではない。マイクロ波の出力は、本発明においては、出力が高いほど塗膜硬化までの時間が短いため好ましく、また出力の下限としては、1kW程度である。1kW程度であれば、塗料を硬化させるために十分な加熱を施すことができる。また、用いられるマイクロ波の周波数は、2.45MHz程度とすることが好ましい。なお、A6サイズの鋼板において、出力5kW、周波数2.45MHzのマイクロ波を30分照射した場合、鋼板表面温度は約140℃に達した。そして、水系または溶剤中塗塗料を塗布した鋼板に、同様の条件で、鋼板に対してマイクロ波を照射することにより塗料が硬化することが確認された。
【0012】
マイクロ波を鋼板に対して照射すると、鋼板表面上でマイクロ波は反射する。袋構造部などの閉空間においては、マイクロ波は減衰するまで反射を繰り返す。したがって、放熱による加熱と異なり、補修部が袋構造内のどの部分に存在しても、反射によりマイクロ波が補修部および補修部付近の鋼板に到達する。マイクロ波の反射と同時に、上述したような鋼板表面の誘導加熱が起きる。すなわち、本発明は、マイクロ波の反射および誘導加熱を利用し、遮蔽物が存在する袋構造部内など、直接焼きつけが行うことができなかった箇所に塗装欠陥がある場合であっても好適に利用できる。
【0013】
したがって、本発明の好適な他の実施態様は、被塗物が袋構造であり、被塗物上に設けられた第1開口部から袋構造内部へマイクロ波を照射し、マイクロ波が被塗物表面上で反射して袋構造内に存在する塗装補修部付近へ到達することによって、補修部付近の鋼板表面を加熱させることにより塗料を硬化させる工程を含む、塗装補修方法である。
【0014】
上記実施態様を図1を用いて説明する。図1は、車室の側壁の下部に配置されたサイドシル1である。サイドシル1は、鋼板からなり、溶接により袋構造をとる。サイドシル1の袋構造内部は、電着塗装が施されている。サイドシル1の袋構造内部には、補修部6が存在する。補修部6は、被塗物上に存在する塗装欠陥部に補修用電着塗料(補修用プライマー)がスプレー塗装ガンなどの塗装機により塗布されている状態である。
【0015】
マイクロ波照射装置2は、マイクロ波発信機3およびマイクロ波発信器3から発せられるマイクロ波入射管4から構成される。鋼板表面上に存在する開口部5からマイクロ波入射管4を袋構造内部に挿入した後、マイクロ波を照射する。この場合のマイクロ波照射の条件は、上述した条件と同様である。開口部は、袋構造部、例えばシル上に水抜きや構造内部の状態を確認するために元々存在する開口部をマイクロ波導入口として用いることができる。なお、用いられるマイクロ波照射装置は、袋構造内にマイクロ波を照射できる装置であれば、特に上記形態に限定されるものではない。
【0016】
シル1内部に照射されたマイクロ波は、鋼板表面で反射する。この反射および同時に起こる誘導加熱により、補修部6付近の鋼板表面が昇温し、補修部に塗布された塗料が硬化する。この場合、反射したマイクロ波が補修部に照射し、マイクロ波によって直接塗膜が硬化される場合もある。
【0017】
上記電着プライマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を主成分とする有機溶剤系塗料が挙げられる。該有機溶剤系塗料には、タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレ−、シリカ、石英、ガラスなどの体質顔料;トリポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、りん酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、クロム酸亜鉛などの防錆顔料;チタン白、ベンガラ、カ−ボンブラック、鉄黒などの着色顔料が含まれていてもよい。
【0018】
本発明の好適な他の実施態様は、さらに、マイクロ波照射に先立って、開口部よりマイクロ波反射材を導入する。本実施態様の一例を図2に示す。サイドシル1、マイクロ波発信機3およびマイクロ波入射管4から構成されるマイクロ波照射装置2、開口部5および補修部6は上述で説明したとおりである。マイクロ波を反射させるマイクロ波反射材7を開口部5より袋構造部内へ導入する。マイクロ波反射材7は、袋構造部内への挿入後、空気により膨脹し、風船状となっている。マイクロ波反射材のマイクロ波導入部には、マイクロ波入射管4が配置される。
【0019】
マイクロ波反射材を導入することにより、マイクロ波が反射する空間を減少させることができ、効率的に塗膜の硬化を行うことができる。
【0020】
マイクロ波反射材は、上述のように袋構造部内で風船状となることが好ましい。マイクロ波反射材を風船状とすることで、マイクロ波反射材の表面が凹凸のない表面となり、乱反射が抑制され、マイクロ波の反射効率が向上する。しかしながら、マイクロ波反射空間を減少させることができれば、マイクロ波反射材は風船状に限定されるものではなく、形状、大きさは特に限定されるものではない。例えば、平面状あるいは曲面状の板状であってもよい。この際、反射材表面は、乱反射が起きにくいように、凹凸のない表面であることが好ましい。
【0021】
また、マイクロ波反射材は、好ましくは被塗物表面に密着している。マイクロ波反射材を被塗物表面に密着させることで、補修空間系外へのマイクロ波の漏れを防止することができる。マイクロ波反射材を膨脹させて風船状とすることで、容易に被塗物表面にマイクロ波反射材を密着させることができる。なお、密着とは、被塗物表面とマイクロ波反射材とが面で接している状態を指す。
【0022】
マイクロ波反射材が風船状に膨脹できる場合には、マイクロ波反射材にホール8(反射材がない部分)が存在することが好ましい。かような形態とすることで、該ホールから、袋構造内へマイクロ波を通過させることができ、効率的に膜硬化を行うことができる。また、図2のように、風船状の反射材の内部にマイクロ波入射管4を設置し、ホール8をマイクロ波が通過することによって、マイクロ波入射部からの漏れを防止することができる。ホール8の形状は、マイクロ波を通過できれば特に限定されず、真円状、楕円状などである。また、ホール8の大きさは、マイクロ波が通過できれば特に限定されない。なお、反射効率の観点からは、ホールはできるだけ小さいほうが好ましい。
【0023】
マイクロ波反射材は、マイクロ波を反射する物質、例えば、銀、銅、ニッケルなどの金属を含有して、マイクロ波を反射することができれば特に限定されるものではないが、空気等の気体により風船状に膨脹することができるような材質であることが好ましい。マイクロ波反射材が気体により風船状に膨脹することができる材質であると、マイクロ波反射材を開口部から導入した後で、気体でマイクロ波反射材を膨らませることができる。これは、開口部は通常非常に狭く、大きな物質を導入することが困難であることを考慮すると、非常に有利である。狭い開口部からマイクロ波反射材を導入することができ、かつ、マイクロ波反射領域を十分に狭めるだけの閉空間を作ることができるからである。また、マイクロ波反射材の除去も容易に行うことができる。
【0024】
マイクロ波反射材は、特に限定されるものではないが、ゴム材にマイクロ波を反射する物質(マイクロ波反射物質)を混合して得られる導電性複合材を用いることができる。この際用いられるマイクロ波反射物質はマイクロ波を反射することができる物質であれば、特に限定されるものではない。マイクロ波反射物質の材料としては、銀、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、導電性複合材の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ゴム材に粉末状、繊維状およびフレーク状のマイクロ波反射物質を混合し、例えば風船状に成形することによって得られる。この際、マイクロ波反射物質が存在しないホール部を作成することが好ましい。
【0025】
また、用いられるゴム材を構成する材料は、気体により風船状に膨脹させることができる材料であれば、特に限定されない。例を挙げるとすれば、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ニトリル・イソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、クロロプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴムなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ゴム材には、従来公知の配合剤が適宜配合される。配合剤としては、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤または焼け防止剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤および可塑剤、粘着剤、しゃく解剤、着色剤、硬化剤、発泡剤、分散剤などが挙げられる。
【0026】
マイクロ波反射物質とゴム材との混合比率(重量%)は、反射効率の観点から、マイクロ波反射物質:ゴム材=100〜500:100であることが好ましい。マイクロ波反射材が導電性複合材からなる場合、成形性および反射効率の観点から、マイクロ波反射材の厚みは、50μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0027】
また、マイクロ波反射材の他の形態としては、マイクロ波反射物質を含む塗料を、例えば風船状に成形したゴム材表面略全面に塗布したものが挙げられる。なお、ホールが形成されるように、反射材上に一部塗料が塗布されていない部分が存在することが好ましい。
【0028】
用いられる塗料としては、ゴム材上に塗膜を形成することができる塗料であれば特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等のバインダー、有機溶剤、必要に応じて硬化剤、分散剤等を混合した混合物にマイクロ波反射物質をさらに混合させて得られる塗料が挙げられる。マイクロ波反射物質は上述したものを同様に用いることができる。
【0029】
また、この際のマイクロ波反射物質とマイクロ波反射物質以外の塗料との比率(重量%)は、反射効率の観点から、マイクロ波反射物質:塗料=100〜500:100であることが好ましい。塗料の塗布方法としては、従来公知の手段を用いることができ、スプレー塗装、はけ塗り等によって行うことができる。塗料のゴム材表面への塗布厚さ(乾燥膜厚)は、成形性および反射効率の観点から、50μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0030】
本発明の好適な他の実施形態としては、補修部を挟んで存在する第1の開口部と第2の開口部とから、マイクロ波反射材を導入し、補修部を含む空間体積を閉空間とする。
【0031】
図3を用いて上記実施形態を説明する。なお、図3はシル1の補修部付近の拡大図である。サイドシル1、マイクロ波発信機3およびマイクロ波入射管4から構成されるマイクロ波照射装置2、補修部6、ホール8は上述で説明したとおりである。図1および図2における開口部5をここでは第1開口部5とする。また、マイクロ波反射材7をここでは第1マイクロ波反射材7とする。図3の形態においては、第1開口部5と別にシル上に存在する第2開口部9から、第2マイクロ波反射材10を導入した後、第1マイクロ波反射材と同様に、空気により膨脹させ、風船状のマイクロ波反射材とする。この際、第2マイクロ波反射材は、鋼板面に密着させることが好ましい。第1開口部5および第2開口部9は、シル1上に設置されている複数の開口部の中から、補修部6に最も近く、また補修部6が含まれるマイクロ波反射空間が最も狭くなるように選択されることが好ましい。第二マイクロ波反射材は、ホール8を有しないこと以外は、上記マイクロ波反射材で説明したものと同様の材質、形態である。マイクロ波の導入は第1マイクロ波反射材内部から行われるため、第二マイクロ波反射材は、ホールを特に有する必要はない。
【0032】
第1の開口部と第2の開口部とから、マイクロ波反射材を導入することにより、マイクロ波が反射する空間を狭くすることができ、塗膜硬化の効率が向上する。また、第2マイクロ波反射材を空気等の気体により膨脹させて風船状とし、滑らかな(凹凸のない)反射材表面が形成され、反射効率が向上する。また、風船状とすることで、被塗物表面にマイクロ波反射材が密着し、マイクロ波の漏れを防止することができる。
【0033】
第1マイクロ波反射材および第2マイクロ波反射材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲内で適宜改良された形態を用いてもよい。
【0034】
また、上記実施形態において、第2マイクロ波反射材も、第1マイクロ波反射材と同じ部材を用いてもよいことはもちろんである。すなわち、第2マイクロ波反射材にホール(反射材がない部分)を存在させ、該ホールから袋構造内へマイクロ波を照射してもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態においては、2つのマイクロ波反射材を導入した形態を挙げたが、開口部から3以上のマイクロ波反射材を導入してもよい。この場合、用いられるマイクロ波反射材は、第1および第2のマイクロ波反射材に挙げた形態および必要に応じて改良された形態を適宜選択して用いることができる。
【0036】
次に、被塗物上に存在する塗装欠陥部に塗料を塗布して補修部を得る工程について説明する。
【0037】
本発明において、被塗物としては、マイクロ波を反射させ、かつ表面で誘導電流により熱が発生する物質であれば特に限定されず、鉄、アルミ、ステンレスなどの金属が挙げられる。
【0038】
自動車車体の塗装は、一般的に、鋼板素地上に(前処理、)電着塗装、中塗りおよび上塗りという塗膜を順に重ねたものである。前処理および電着塗装は防錆を、中塗りは仕上り外観向上のための表面調整を、上塗りは仕上り外観と耐久性を主体に塗膜性能を分担している。
【0039】
本発明における塗装補修は、上記電着塗装、中塗塗装、上塗塗装のいずれにおいても用いられる。すなわち、塗装欠陥部は、電着塗装、中塗塗装、上塗塗装のいずれに存在していてもよい。通常の熱硬化が行うことが困難な箇所、例えば、車体の袋構造部内等は電着塗装が施されていることが多く、本発明はかような電着塗装の補修に特に好適である。
【0040】
塗装欠陥部に塗布される塗料は、通常公知の加熱硬化型の塗料を補修箇所により適宜選択すればよい。加熱硬化型の塗料としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系樹脂などを主成分とし、これに添加剤を添加してなる熱硬化型塗料が挙げられる。また、塗料の塗布方法は、特に限定されずスプレー塗装ガンなどの塗装機を用いて塗布することができる。本発明においては、塗料が塗布され、塗料を硬化させる前の状態の塗装欠陥部を塗装補修部とする。
【0041】
以上のように、本発明の塗装補修方法によれば、従来の加熱方法では熱エネルギーが到達せず、塗料を硬化させることができないために、塗料塗布により補修ができなかった補修部位の補修も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 サイドシル、
2 マイクロ波照射装置、
3 マイクロ波発信器、
4 マイクロ波入射管、
5 開口部(第一開口部)、
6 補修部、
7 マイクロ波反射材(第一マイクロ波反射材)、
8 ホール、
9 第二開口部、
10 第二マイクロ波反射材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に存在する塗装欠陥部に塗料を塗布して補修部を得る工程と、
前記被塗物にマイクロ波を照射し、前記被塗物表面を加熱させることにより前記塗料を硬化させて塗膜を得る工程と、を含む、塗装補修方法。
【請求項2】
前記被塗物が袋構造であり、前記被塗物上に設けられた開口部から袋構造内部へマイクロ波を照射し、前記マイクロ波が被塗物表面上で反射して袋構造内に存在する前記塗装補修部付近へ到達する、請求項1に記載の塗装補修方法。
【請求項3】
前記開口部よりマイクロ波反射材を導入する、請求項2に記載の塗装補修方法。
【請求項4】
前記マイクロ波反射材が風船状に膨脹している、請求項3に記載の塗装補修方法。
【請求項5】
前記マイクロ波反射材が前記被塗物面に密着している、請求項3または4のいずれか1項に記載の塗装補修方法。
【請求項6】
前記マイクロ波反射材にマイクロ波を反射しないホールが存在し、該ホールを通してマイクロ波を照射する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の塗装補修方法。
【請求項7】
前記被塗物上に設けられた第2開口部より第2マイクロ波反射材を導入し、前記補修部を含む空間体積を閉空間とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の塗装補修方法。
【請求項8】
前記第2マイクロ波反射材が風船状に膨脹している、請求項7に記載の塗装補修方法。
【請求項9】
前記第2マイクロ波反射材が前記被塗物面に密着している、請求項7または8に記載の塗装補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−220006(P2009−220006A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66609(P2008−66609)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】