説明

塩化シアン検知材

【課題】塩化シアンは、作業環境における空気中の化学物質の許容濃度(TLV)が0.3 ppmに規制された有毒物質で、その濃度が厳しく規制されている。取扱いが容易で、モニタリングに適した塩化シアン検知材を提供する。
【解決手段】ガス吸着剤を含有させた通気性担体に、塩化シアンと反応して呈色反応する試薬を含浸させてなる塩化シアン検知材を提供する。本検知材は、環境中に放置するだけで塩化シアンと反応して塩化シアンの濃度に対応した色変化を生じるため、試料採取などの作業を必要とすることなく、濃度を監視することができる。また、グリセリンなどの吸湿剤を含有しないため、環境中の雑ガス、または担体がセルロースで構成されている場合にはセルロースと試薬との反応を可及的に防止でき、検出感度に変化をきたすことなく長期間の保存ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化シアンを呈色反応により検出する検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化シアンは、作業環境における空気中の化学物質の許容濃度(TLV)が0.3 ppmに規制された有毒物質で、その濃度が厳しく規制されている。
その濃度管理には通常、ガスクロマトグラフなどの分析装置が使用されているが、バッチ処理のため、環境中での濃度を常時監視するためには適当な検出手段とは言いがたく、また取扱いには熟練を要するなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは取扱いが容易で、モニタリングに適した塩化シアン検知材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために本発明の検知材は、ガス吸着剤を含有させた通気性担体に、塩化シアンと反応して呈色反応する試薬を含浸させて構成されている。
【発明の効果】
【0005】
環境中に放置するだけで塩化シアンと反応して塩化シアンの濃度に対応した色変化を生じるため、試料採取などの作業を必要とすることなく、濃度を監視することができる。
また、グリセリンなどの吸湿剤を含有しないため、環境中の雑ガス、または担体がセルロースで構成されている場合にはセルロースと試薬との反応を可及的に防止でき、検出感度に変化をきたすことなく長期間の保存ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
そこで、以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。試薬を担持する担体は、この実施例では植物繊維を梳いて通気性を有するシ−ト体が用いられ、この好ましくはケイ酸(H2SiO3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)等のガス吸着材を含有させて構成されている。
【0007】
この担体に、塩化シアンと反応して発色する試薬、例えば担体1平方米当り4−ベンジルピリジン4.0〜13グラム、バルビツール酸0.13〜2.6グラム程度含浸担持させる。
【0008】
試薬を担体に担持させる手法としては、メタノ−ルなどの有機溶媒に、4−ベンジルピリジン3〜10W/V%、バルビツール酸0.1〜2.0W/V%を溶解させてなる調製液に、上述した担体を所定時間浸漬して含浸させる。
【0009】
ついでテ−プを調製液から担体を引上げ、有機溶媒を室温で蒸発させることにより4−ベンジルピリジンとバルビツール酸だけを担体に残留させる。
【0010】
図1は、上述のように構成された担体をテープ状に裁断して検出テ−プとして構成したものを用いて塩化シアンの濃度を測定するための装置の一例を示すものであって、図中符号1は、テ−プ2の搬送経路に対向させて配置されたガス吸引部で、テ−プ2に対向する面には直径1センチメ−トル程度の通孔3が穿設されており、パイプ4を介して吸引ポンプ5からの陰圧が作用するように構成されている。
【0011】
図中符号6は、ガス吸引部1の通孔3に対向するテ−プ2の他面側に配置された測定ヘッド部で、吸引部1の通孔3と対向する位置に通孔7が形成された遮光容器として構成されており、内部に発光素子8と受光素子9を、テ−プ2上に形成された反応痕を検出できるような関係でもって配置収容し、さらに一端に被検ガスの導入口10を設けて構成されている。
【0012】
検出テ−プをリ−ル11、12にテ−プをセットし、吸引部1に吸引ポンプ5からの吸引圧を作用させると、導入口10から測定ヘッド部6に塩化シアンを含む空気が吸込まれる。この空気は、通孔7から検出用テ−プ2の細孔、つまり繊維の隙間を通過して通孔3に排出される。被検ガスが検出用テ−プ2を通過する過程でテ−プ2上の4−ベンジルピリジンとバルビツール酸が塩化シアンに反応し、塩化シアンの濃度に比例した光学濃度の反応コンが生じる。
【0013】
このようにして所定のサンプリング時間、例えば60秒程度が経過した時点で、吸引を停止して反応痕の光学的濃度の測定工程に移る。発光素子8からの光は、テ−プ表面に形成された反応痕の光学的濃度に応じて吸収を受けるので、測定開始前の光学的濃度、つまりテ−プのバックグランドとの光学的な濃度差を求めることによりテ−プ2を通過した塩化シアンの濃度、もしくは積算量を知ることができる。
【0014】
一方、上記測定によっても目的ガスが検出されない場合には再度、サンプリングを開始して上述と同様の工程を繰り返す。
【0015】
このようにして目的ガスが検出されることなく検出用テープの同一箇所での積算のサンプリング時間が所定時間を越えた時点で紙送り機構13を駆動してリ−ル11に収容されている検出用テ−プの未使用部分を測定領域に移動させる。
【0016】
図2は、上記検出テープを室温以上の温度、具体的には35℃で保管した場合における検出感度の経時変化を、1立方メートル当たり20ミリグラム含む標準ガスを30秒サンプリングして検査した場合の一例を示すものである。
図2からも明らかなように長期間に亘って感度の変化を来たすことなく常温での保存が可能となる。
【0017】
なお、上述の実施例においては担体としてセルロースからなるシートを使用しているが、親水性処理を施した高分子シートを用いても同様の作用を奏する。この場合、高分子シートを多孔質処理して通気性を持たせた場合には、上述した装置により測定が可能であり、また多孔質処理を施さない場合には、シートの表面に被検ガスを吹きつけるなどの方法で接触させて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の塩化シアン検知材をテープに整形して使用するのに適した検出装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の検知材の保存期間と検出感度との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ガス吸引部 2 テ−プ 6 測定ヘッド部 8 発光素子 9 受光素子 10 被検ガスの導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吸着剤を含有させた通気性担体に、塩化シアンと反応して呈色反応する試薬を含浸させてなる塩化シアン検知材。
【請求項2】
前記試薬として1平方メートル当たり担体に4−ベンジルピリジン4.0〜13グラム、バルビツール酸0.13〜2.6グラム含浸されている請求項1に記載の塩化シアン検知材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−70197(P2008−70197A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248196(P2006−248196)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【出願人】(592083915)警察庁科学警察研究所長 (23)
【Fターム(参考)】