説明

塩化ビニル樹脂組成物

【課題】耐衝撃性を低下させることなく、石油由来成分の比率が低減され、しかも、剛性が高く且つ線熱膨張率の低い成形品、特に押出成形品を得ることが可能な塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】石油由来成分の含有量が25〜32.5重量%の範囲に調整されている塩化ビニル樹脂組成物であって、(A)平均重合度が700〜1500の範囲にある塩化ビニル樹脂、100重量部;(B)無機充填材、40〜60重量部;及び、(C)塩素含有率が30〜40重量%の塩素化ポリエチレン、1〜15重量部;を含み、前記無機充填材(B)の80重量%以上が、脂肪酸またはその塩で処理され且つ平均粒径が1μm以下の炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂組成物に関するものであり、より詳細には省資源性に優れた塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油資源の枯渇を回避するために、種々の石油製品について省資源化が求められている。
このような石油製品の中で、塩化ビニルは、式:CClで表され、C=27.045、Cl=35.43であるから、石油由来成分の含有量[(27.045×100/(27.045+35.43))が43重量%と比較的少ない。従って、塩化ビニルを重合して得られる塩化ビニル樹脂は、省資源性の良好な樹脂であり、例えば、塩化ビニル樹脂を主成分として含む樹脂組成物(例えば特許文献1〜3参照)は、省資源性中の石油由来成分含量を低減させれば、より省資源に優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−288867号公報
【特許文献2】特開平10−25384号公報
【特許文献3】特開平07−18141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種の樹脂組成物において、石油由来成分(即ち、蒸留等により石油から採取される得られる成分であり、塩化ビニルではC基の部分がこれに相当する)の含有比率を低減させる手段としては、石油由来成分ではない無機充填材を多量に添加する方法が一般的である。
【0005】
しかしながら、塩化ビニル樹脂組成物では、無機充填材を多量に配合すると、塩化ビニル組成物から得られる成形体は、耐衝撃性が低下してしまい、脆くなるという問題があり、このため、通常、無機充填材の配合量は塩化ビニル樹脂100重量部当り、30重量部未満に抑えられており、従って、無機充填材の配合により省資源性を高めるには限界がある。特に、石油由来成分である可塑剤が添加されていない硬質配合では、無機充填材の配合による耐衝撃性の低下は著しく、その配合量は塩化ビニル樹脂100重量部当り10重量部程度であり、無機充填材の配合による省資源化は殆ど見込めないのが実情である。このような問題は、耐衝撃性を改良するために、柔軟性に富んだ樹脂乃至エラストマーを耐衝撃改良材として配合することにより解決できるが、このような耐衝撃改良材は石油由来材料であり、石油由来成分の比率が増大してしまい、省資源性を向上させるという本来の目的が達成されなくなってしまう。
【0006】
また、原材料である塩化ビニル樹脂等の使用量を低減させるために、成形品の薄肉化を図ることがあるが、無機充填材の配合量の増大は、剛性の低下をもたらし、その用途が制限されるという問題がある。特に塩化ビニル樹脂の押出成形品は、内装下地材や外装材などの建材として使用されているが、内装下地材では薄肉製品が多く、無機充填材が多量に配合された塩化ビニル樹脂組成物から得られる薄肉成形品を内装下地材として使用すると、剛性を有していないため、折れ曲がりなどを生じ易く、施工性が悪くなってしまうため、このような用途での使用が困難となってしまう。また、製品へのパンチング等の孔明け加工や切断加工を行うと割れ欠けが生じ易く、加工性も悪くなってしまう。
【0007】
一方、塩化ビニル樹脂組成物には、塩素捕捉能を有する炭酸カルシウムを高充填することがあるが、この場合においても、石油由来成分である可塑剤や耐衝撃改良材を多量に添加することにより、耐衝撃性などを改善せざるを得ず、従って、石油由来成分の比率を低減し、省資源性を高めることは困難である。
【0008】
さらに、塩化ビニル樹脂成形品は、線熱膨張率が大きいという性質を有しており、このため、外装材や内装下地材などの建材として用いた場合、熱収縮により施工箇所に隙間が発生したり、或いは接着剤から剥がれてしまうなどの問題があり、その改善が求められている。
【0009】
従って本発明の目的は、耐衝撃性を低下させることなく、石油由来成分の比率が低減され、しかも、剛性が高く且つ線熱膨張率の低い成形品、特に押出成形品を得ることが可能な塩化ビニル樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記組成物から成形された押出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、石油由来成分の含有量が25〜32.5重量%の範囲に調整されている塩化ビニル樹脂組成物であって、
(A)平均重合度が700〜1500の範囲にある塩化ビニル樹脂、100重量部;
(B)無機充填材、40〜60重量部;
及び、
(C)塩素含有率が30〜40重量%の塩素化ポリエチレン、1〜15重量部;
を含み、
前記無機充填材(B)の80重量%以上が、脂肪酸またはその塩で処理され且つ平均粒径が1μm以下の炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、また、上記の塩化ビニル樹脂組成物を用いて成形された押出成形体が提供される。
【0011】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物においては、
(1)さらに、1〜15重量部のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(D)またはアクリル系ゴム(D´)を含有していること、
(2)前記無機充填材(B)として、前記炭酸カルシウム粉末と共に、タルクが併用されていること、
(3)前記炭酸カルシウムの脂肪酸またはその塩による処理量が1重量%以下であること、
(4)石油由来成分の含有量が25〜31重量%の範囲に調整されている塩化ビニル樹脂組成物であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、無機充填材が多量に配合されており、しかも、石油由来成分である塩素化ポリエチレンの配合量が少なく、このため、石油由来成分の含有量を少なく抑えることができ、その含有量が25〜32.5重量%、好ましくは25〜31重量%の範囲に調整されている。従って、従来公知の塩化ビニル樹脂組成物に比して、石油由来成分の含有量が少なく、省資源性に優れている。
【0013】
また、無機充填材が多量に配合されており、石油由来成分の含有量が少ないにもかかわらず、得られる成形体は、耐候性に優れ、優れた耐衝撃性を示し、且つ高い曲げ弾性率を示し、剛性が高く、さらには、その線熱膨張係数も低く、建材として用いたときの施工部での隙間の発生や接着剤からの剥離などの不都合も有効に防止される。さらには、加工性も良好であり、例えば製品へのパンチング等の孔明け加工や切断加工に際しても、割れ欠けなどが有効に防止される。
【0014】
さらに、本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、石油由来成分の含有量が25〜32.5重量%、好ましくは25〜31重量%の範囲に維持される範囲でメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)またはアクリル系ゴムが配合されていることにより、その耐衝撃性をさらに向上することができる。
【0015】
また、無機充填材として炭酸カルシウムと共にタルクを併用することにより、剛性をさらに向上させることができる。特にタルクが併用されている本発明の塩化ビニル樹脂組成物においては、その成形品の剛性が著しく高められているため、内装下地材などに適用される薄肉成形品としての用途に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、省資源性の良好な塩化ビニル樹脂(A)を主成分とし、さらに必須成分として、(B)無機充填材及び(C)塩素化ポリエチレンを必須成分として含有し、さらに、必要により、MBSまたはアクリル系ゴム或いはその他の添加剤が、石油由来成分含量が一定の範囲内に維持されるような量で適宜配合される。
【0017】
<塩化ビニル樹脂(A)>
本発明において用いる塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であり、先にも述べたように、石油由来成分含有量が他の樹脂に比して少ない。即ち、このような塩化ビニル樹脂を主成分として用いることにより、この組成物の石油由来成分含量を25〜32.5重量%、好ましくは25〜31重量%の範囲に調整することができ、優れた省資源性を確保することができるのである。
【0018】
かかる塩化ビニル樹脂としては、平均重合度が700〜1500のものが使用される。即ち、平均重合度がこの範囲外のものは、例えば押出成形が困難となったり、或いは成形体に所望の物性を確保することが困難となってしまうからである。
【0019】
<無機充填材(B)>
本発明においては、塩化ビニル樹脂(A)と共に、該塩化ビニル樹脂(A)100重量部当り40〜60重量部の量で無機充填材が使用される。即ち、無機充填材をかかる量で使用することにより、塩化ビニル樹脂に特有の成形性や各種物性を損なうことなく、石油由来成分の含有比率を低減させ、優れた省資源性を確保することができるのである。例えば、無機充填材の量が、上記範囲よりも少ないと、石油由来成分の含有比率を効果的に低減させることができず、また、上記範囲よりも多量に使用した場合には、石油由来成分の含有比率を低減させることはできたとしても、耐衝撃性、剛性等の特性が不満足なものとなってしまう。
【0020】
また、上記の無機充填材(B)の内、少なくとも80重量%以上は、脂肪酸またはその塩で表面処理され且つ平均粒径が1μm以下の炭酸カルシウム粉末であることが重要である。即ち、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、このような炭酸カルシウム粉末が多量に微分散しており、この結果、多量の無機充填材が配合されているにもかかわらず、耐衝撃性の低下を有効に回避することが可能となり、また剛性を高め、さらには線熱膨張係数を低下させることができるのである。例えば、平均粒径が上記範囲よりも大きい炭酸カルシウム粉末を用いた場合には、この炭酸カルシウム粉末を均一に微分散することができず、この結果、耐衝撃性の低下を回避するためには、後述する成分(C)の塩素化ポリエチレンを多量に配合することが必要となり、石油由来成分の含有比率を低減させることが困難となってしまい、さらには、剛性の向上や線熱膨張係数の低下も実現することができなくなってしまう。また、脂肪酸またはその塩で処理されていない炭酸カルシウム粉末を用いた場合には、粉末同士の凝集を生じてしまい、平均粒径が1μm以下の炭酸カルシウム粉末を用いたとしても、やはり多量の炭酸カルシウムを樹脂組成物中に均一に微分散することができず、上記と同様の問題を生じてしまう。
【0021】
本発明において、上記の炭酸カルシウム粉末としては、軽質炭酸カルシウムでも重質炭酸カルシウムの何れであってもよく、またその粒子形状は、球状等の定形、或いは不定形、ウィスカー状等の何れであってもよい。
【0022】
また、炭酸カルシウムの表面処理に用いる脂肪酸またはその塩としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、並びに該脂肪酸とカルシウムなどのアルカリ金属との塩が好適に使用される。また、脂肪酸またはその塩の表面処理量は、炭酸カルシウムに対して1重量%以下、特に0.1乃至0.5重量%の範囲とすることが好ましい。即ち、多量の脂肪酸またはその塩で表面処理を行うと、例えば押出成形などを行ったとき、スクリュー表面に炭酸カルシウムが付着してしまい、得られる成形体の組成が不均一となってしまい、各種物性の低下を生じてしまうおそれがあるからである。脂肪酸またはその塩による表面処理方法は特に限定されず、通常は、溶媒に所定量の脂肪酸またはその塩を溶解して脂肪酸またはその塩溶液とし、当該溶液中に炭酸カルシウムの粉末を投入、混合し、次いで炭酸カルシウムを溶液から分離し乾燥する方法が採用される。
【0023】
尚、本発明において、炭酸カルシウムの平均粒径は、後述する実施例に明記されているように、炭酸カルシウム粉末1gの比表面積から算出された計算値である。
【0024】
本発明においては、無機充填材の80重量%以上が上記のような炭酸カルシウム粉末であることを条件として、他の公知の無機充填材を配合することができるが、特に、タルクを無機充填材として、炭酸カルシウム粉末と併用することが好ましい。即ち、配合されている無機充填材の内、20重量%以下、特に3乃至10重量%をタルクとすることにより、剛性を向上させることができ、特に内装下地材などの薄肉成形品として使用する場合に、特に効果的である。このようなタルクも、上記と同様の平均粒径を有していることが好ましい。
【0025】
<塩素化ポリエチレン(C)>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物に配合される塩素化ポリエチレン(C)は、耐衝撃性を向上させるための耐衝撃改良材として使用されるものであり、特に塩素含量が30〜40重量%のものが好適に使用される。当該塩素化ポリエチレンとしては、エラスレン301Aや同351A(昭和電工社製)、ダイソラックH−135(ダイソー社製)などの市販品が使用できる。このような塩素化ポリエチレンは、石油由来成分含量が60〜70重量%と塩化ビニル樹脂に比して高いが、塩化ビニル樹脂との相溶性が良好であり、少量の配合により、耐衝撃性を向上させることができる。この塩素化ポリエチレンの配合量は、塩化ビニル樹脂(A)100重量部当り1〜15重量部の範囲から選択される。この配合量が1重量部未満である場合には、耐衝撃性を向上させることができず、また、15重量部よりも多量に使用したとしても、耐衝撃性の向上効果は増大しないばかりか、石油由来成分の含有比率が増大してしまい、省資源性を高めるという本発明の本来の目的が損なわれてしまう。
【0026】
また、上記のような塩素含量の塩素化ポリエチレンには、非結晶性のものと結晶性のものとがあるが、耐衝撃性を向上させるためには非結晶性のものが好適であり、特にムーニー粘度MS1+4(121℃)が80〜100の範囲にあるものが好適である。
【0027】
<メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(D)>
本発明においては、上述した(A)乃至(C)成分に加えて、(D)成分としてメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)を配合することにより、耐衝撃性を更に向上させることができる。このようなMBS共重合体としては、メタブレンC−223(三菱レイヨン社製)、カネエースB−56(カネカ社製)などの市販品が使用できる。この共重合体は、石油由来成分であるため、上記の塩素化ポリエチレン(C)と同様、その配合量も制限され、例えば、塩化ビニル樹脂(A)100重量部当り1〜15重量部の範囲から選択されることとなる。
【0028】
<アクリル系ゴム(D´)>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物に配合されるアクリル系ゴムは、耐衝撃性を更に向上させることができるのみならず、耐候性も向上させ得る。当該アクリル系ゴムとしては、従来公知のアクリル系ゴムが使用され、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチルなどの各種アクリル酸アルキルエステルを基本構成成分とし、2-クロロエチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチリデンノルボルネンなどの官能基を有する成分を共重合した共重合体、或いはアクリル酸メチル、エチレンおよびカルボキシル基を有する成分との三元共重合体などがあり、耐熱性や耐油性に優れた高分子体として知られている。また、このアクリル系ゴムとして、コアシェルゴムと称される、スチレンブタジエンやアクリルエステルからなるゴム状コアに、メチルメタアクリレート(MMA)やアクリル酸エステルをグラフトさせた多層構造のものも使用でき、カネエースFM(カネカ社製)、メタブレンW−300(三菱レイヨン社製)などとして市販されている。当該アクリル系ゴム(D´)も、上記MBS(D)と同様の理由により、塩化ビニル樹脂(A)100重量部当り1〜15重量部の範囲から選択される。
【0029】
<その他の配合剤>
本発明においては、石油由来成分の含有比率を高めず、一定の範囲内に維持させ得ることを条件として、上記以外にも種々の添加剤を配合することができる。
【0030】
例えば、成形時における着色を防止するための熱安定剤を配合することができるが、このような熱安定剤としては、石油由来成分を含まない無機系の安定剤、例えばゼオライト、亜鉛等でイオン交換されるゼオライト、含水もしくは無水の非晶質ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト類化合物、亜鉛型ハイドロタルサイト類化合物、過塩素酸型ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物及び過塩素酸型のリチウムアルミニウム複合酸化物等が好適である。
【0031】
さらには、ポリエチレンワックス、或いはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジアセトモノラウレート、ソルビタンラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ステアリルステアレートなどの高級脂肪酸等の滑剤や、その他、各種の酸化防止剤、光安定剤、顔料、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、難燃剤等を、石油由来成分の含有比率が所定の範囲内に保持され且つ耐衝撃性や剛性等の各種特性が損なわれない範囲内で適宜配合することができる。また、塩化ビニル樹脂の優れた特性が損なわれず、且つ石油由来成分が所定の範囲内に保持される限り、樹脂成分として、塩化ビニル樹脂以外の他の樹脂を配合することもできる。
【0032】
<塩化ビニル樹脂組成物>
上述した各成分を含有する本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(A)乃至(C)成分、及び必要により(D)または(D´)成分を前述した配合量の範囲内で、石油由来成分含有比率が25〜32.5重量%、好ましくは25〜31重量%となるように使用し、且つ、この石油由来成分含有比率が保持される範囲内で、適宜、他の成分を使用し、各成分を、例えば溶融混練し、均一に混合することにより調製される。
【0033】
このように調製された本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、優れた省資源性を有しており、押出成形、射出成形、圧縮成形、シート成形等の種々の成形手段に供して任意の形状の成形体として使用することができるが、特に耐衝撃性、剛性に優れ、また線熱膨張係数が5.0×10−5/℃以下と小さいことから、特に外装材、内装下地材などの建材の用途に極めて有用であり、また薄肉にしても高い剛性を示し、折れ曲がり難いことから、薄肉成形品、特に内装下地材としての用途に極めて好適に適用される。
【実施例】
【0034】
本発明を次の実施例で更に説明する。次の実施例は、説明のためのものであり、いかなる意味においても本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
以下の実施例及び比較例で用いた各種成分は、以下の通りである。
【0035】
塩化ビニル樹脂(PVC):石油由来成分43.6重量%
(1)平均重合度1000(第一塩ビ社製 ZEST1000H)
(2)平均重合度700 (第一塩ビ社製 ZEST700F)
【0036】
無機充填材(フィラー):
(1)炭酸カルシウム、平均粒径0.7μm
尚、炭酸カルシウムは、予め、1対1(重量比)のエチレングリコールとZn−St(ステアリン酸亜鉛)との混合物を、炭酸カルシウムに対して0.5重量%用いて表面処理したものである。
(2)タルク、メディアン径18.5μm
【0037】
強化材(耐衝撃性改良材):
(1)アクリル系ゴム(カネカ社製 カネエースFM)
(2)MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体;カネカ社製
カネエースB)
(3)CPE(塩素化ポリエチレン;昭和電工社製 エラスレン)
塩素含量35重量%、ムーニー粘度MS1+4(121℃)90
【0038】
熱安定剤:
Ca−Zn系安定剤
滑剤:
(1)ポリエチレンワックス
(2)高級脂肪酸;グリセリンモノステアレート
【0039】
尚、炭酸カルシウム等の平均粒径は、島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100型を使用し、粉末1g当りの表面積(比表面積)を測定し、下記式により算出した。
平均粒径(μm)=[6/(比重×比表面積)]×10000
また、塩素化ポリエチレンのムーニー粘度は、JIS K−6760に準拠し、荷重21.6kgで測定した値である。
【0040】
<実施例1〜5、比較例1〜4>
表1に示す処方に従って、塩化ビニル樹脂(PVC)、無機充填材(フィラー)、強化材、安定剤及び滑剤を押出機中に投入し、155乃至175℃のシリンダー温度で溶融混練して押出し、厚さが2mmのシート状成形体を作製した。得られた成形体について、以下の方法で各種性状を測定し、その結果を表1に示した。
【0041】
(1)曲げ弾性率:
JIS K−7171に準拠して測定した。
【0042】
(2)シャルピー衝撃強度(−10℃)
JIS K−7111に準拠して測定した。
【0043】
(3)線膨張係数
成形体を500mmの長さLに裁断して試験片を作製し、この試験片を、70℃で24時間アニール後、任意の温度の雰囲気中に12時間ずつ放置し、取り出し直後の長さLを測定する。この測定値から、0℃での寸法を基準とした長さLの寸法変化率を求め、この寸法変化率から線膨張率を算出した。尚、3つの試験片について線膨張率を求め、その平均値を表1に示した。
【0044】
(4)加熱収縮
上記で作製された長さLが500mmの試験片を、23℃±2℃、50±10%RHの恒温恒湿雰囲気に24時間放置した後、70℃で24時間アニールを行い、長さLについて、アニール後の加熱収縮率を求めた。3つの試験片について加熱収縮率を求め、その平均値を表1に示した。
【0045】
(5)ビカット軟化点
JIS K−7206に準拠して測定した。
【0046】
(6)耐候性
実施例1及び実施例5における耐候性試験は、サンシャインウェザーメーターを用いて促進耐候性試験を行い、分光測色計で色差ΔEを測定した。色差ΔE値が小さいほど色の変化が小さく、耐候性に優れることを表す。結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油由来成分の含有量が25〜32.5重量%の範囲に調整されている塩化ビニル樹脂組成物であって、
(A)平均重合度が700〜1500の範囲にある塩化ビニル樹脂、100重量部;
(B)無機充填材、40〜60重量部;
及び、
(C)塩素含有率が30〜40重量%の塩素化ポリエチレン、1〜15重量部;
を含み、
前記無機充填材(B)の80重量%以上が、脂肪酸またはその塩で処理され且つ平均粒径が1μm以下の炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、1〜15重量部のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(D)またはアクリル系ゴム(D´)を含有している請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填材(B)として、前記炭酸カルシウム粉末と共に、タルクが併用されている請求項1または2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの脂肪酸またはその塩による処理量が1重量%以下である請求項1乃至3の何れかに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
石油由来成分の含有量が25〜31重量%の範囲に調整されている塩化ビニル樹脂組成物である請求項1乃至4の何れかに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの樹脂組成物を用いて押出成形された押出成形体。

【公開番号】特開2010−100828(P2010−100828A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207984(P2009−207984)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】