説明

塩基検出細孔

本発明は、確率的感知により1つまたはそれ以上のヌクレオチドを検出するために有用である、変異型α−ヘモリシン(α−HL)細孔に関する。細孔はDNAまたはRNAの配列決定にとって特に有用である。ヌクレオチドの検出を可能とする分子アダプターは、細孔と共有結合する。細孔は特異的に修飾されてアダプターの配置を促進し、且つ共有結合を促進しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、確率的感知により1つまたはそれ以上のヌクレオチドを検出するために有用である、変異型α−ヘモリシン(α−HL)細孔に関する。細孔は、DNAまたはRNAの配列決定にとって特に有用である。ヌクレオチドの検出を可能とする分子アダプターは、細孔と共有結合する。細孔は特異的に修飾されてアダプターの配置を促進し、且つ共有結合を促進することもある。
【背景技術】
【0002】
確率的検出は、ヌクレオチド分子とレセプターの間の個別の結合イベントの観察に依拠する感知の手法である。確率的センサーは、ナノメーターサイズの単一細孔を絶縁膜に配置し、ヌクレオチド分子の存在下での細孔を経た電圧駆動イオン輸送を測定することによって創成することができる。電流の変動が発生する頻度によって、細孔内で結合するヌクレオチドの濃度が判明する。ヌクレオチドの本性は、その特徴的な電流シグネチャ、特に電流遮断の持続時間および程度によって判明する(Braha,O.,Walker,B.,Cheley,S.,Kasianowicz,J.I.,Song.L.,Gouaux.J.E.およびBayley,H.(1997)Chem.Biol.4,497−505;およびBayley,H.,およびCremer,P.S.(2001)Nature 413,22&230)。
【0003】
毒素α−ヘモリシン(α−HL)を形成する改変細菌細孔変種は、多種類の分子の確率的感知に用いられている(Bayley,H.,およびCremer,P.S.(2001)Nature 413,222−230;Shin,S.−H.,Luchian,T.,Cheley,S.,Braha,O.,およびBayley,H.(2002)Angew.Chem.Int.Ed.41,3707−3709;およびGuan,X.,Gu,L.−Q.,Cheley,S.,Braha,O.,およびBayley,H.(2005)ChemBioChem 6,1875−1881)。これらの研究の過程で、α−HLを操作して小さな有機ヌクレオチドと直接結合させる試みは困難となりうることが立証され、成功例はまれであることが確認された(Guan,X.,Gu,L.−Q.,Cheley,S.,Braha,O.,およびBayley,H.(2005)ChemBioChem6,1875−1881)。幸いなことに、非共有結合的に結合する分子アダプター、特にシクロデキストリン(Gu,L.−Q.,Braha,O.,Conlan,S.,Cheley,S.,およびBayley,H.(1999)Nature 398,686−690)、またさらに環状ペプチド(Sanchez−Quesada,L,Ghadiri,M.R.,Bayley,H.,およびBraha,O.(2000)J.Am.Chem.Soc.122,11758−11766)およびキューカビチュリル(Braha,O.,Webb,J.,Gu,L.−Q.,Kim,K.,およびBayley,H.(2005)ChemPhysChem 6,889−892)を利用した異なる戦略が発見された。シクロデキストリンは一時的にα−HL細孔内に滞留し、相当大きいが不完全なチャネル遮断を引き起こす。シクロデキストリンの疎水性の内部で結合する有機ヌクレオチドは、この遮断を増強してヌクレオチドの検出を可能とする(Gu,L.−Q,Braha,O.,Conlan,S.,Cheley,S.,およびBayley,H.(1999)Nature 398,686−690)。
【0004】
現在、広い用途範囲にまたがって、迅速且つ安価なDNAまたはRNA配列決定技術に対するニーズがある。既存の技術は、主として大量の核酸を生成する増幅技術に依拠し且つシグナルの検出に高品質の特殊な蛍光薬品を必要とすることから、緩速且つ高価である。確率的感知は、必要なヌクレオチドおよび試薬の量を減らすことにより迅速且つ安価なDNA配列決定をもたらす可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、驚くべきことに、139残基またはその近傍に配置されるようにその樽状構造またはチャネルの下部と共有結合する分子アダプターを有する変異型α−HL細孔が、ヌクレオチドを検出および識別することができることを証明している。特に発明者らは、139残基またはその近傍に配置されるように共有結合する分子アダプターを有する変異型α−HL細孔が、異なるヌクレオチドを識別することができることを示している。この細孔は感度が高く、且つそれゆえDNAまたはRNAなどの核酸の配列決定に用いることができる。
【0006】
また発明者らは、驚くべきことに、139残基またはその近傍に配置されるよう共有結合した分子アダプターを有する変異型α−HL細孔が、幅広い異なる条件の下で異なるヌクレオチドを識別することができることも証明している。特に、細孔はその機能が核酸の配列決定にとって必要である酵素にとって好ましい条件下でヌクレオチドを識別することができるであろう。
【0007】
また発明者らは、驚くべきことに、139残基におけるおよび/またはその近傍における変異型α−HL細孔の修飾がアダプターの配置および異なるヌクレオチドの検出および識別にとって不可欠であることも示している。
【0008】
本発明の細孔は確率的感知、特にヌクレオチドの検出またはDNAまたはRNAなどの核酸の配列決定にとって有用な手段である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって本発明は、サンプル中の1つまたはそれ以上のヌクレオチドの検出に用いることを目的とした変異型α−HL細孔であって:
(a)それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を含む7つのサブユニット、および
(b)細孔とヌクレオチドの間の相互作用を促進する分子アダプターを含み、
7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍において修飾されてアダプターの配置を促進し、且つ
分子アダプターがSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置されるよう1つまたはそれ以上のサブユニットと共有結合する変異型α−HL細孔を提供する。
【0010】
また本発明は、
−SEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HLのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列であって、サブユニットがEQ ID NO:2の119,121または135位にシステインを有するヌクレオチド配列;
−それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HLのサブユニットをコードする7つのポリヌクレオチドであって、サブユニットの少なくとも1つがSEQ ID NO:2の119、121または135位にシステインを有するポリヌクレオチドを含む変位型α−HL細孔を生成するためのキット;
−本発明の細孔を生成するための方法であって:
(a)上に定義された細孔を提供すること;および
(b)細孔と1つまたはそれ以上のヌクレオチドの間の相互作用を促進する分子アダプターを細孔と共有結合させることを含む方法;
−個別のヌクレオチドを同定する方法であって、
(a)ヌクレオチドが本発明の細孔と相互作用するようヌクレオチドを細孔と接触させること;および
(b)相互作用時に細孔を通過する電流を測定し、且つそれによりヌクレオチドの本性を決定することを含む方法;
−標的核酸の配列を決定する方法であって:
(a)エキソヌクレアーゼを用いて個別のヌクレオチドを標的配列の一方の末端より消化すること;
(b)ヌクレオチドがアダプターと相互作用するようヌクレオチドを本発明の細孔と接触させること;
(c)相互作用時に細孔を通過する電流を測定し、且つそれによりヌクレオチドの本性を決定すること;および
(d)核酸配列の同一末端において手順(a)から(c)を反復し、且つそれにより核酸の配列を決定することを含む方法;および
−核酸の配列を決定するキットであって:
(a)本発明の細孔または上記のキットに包含される7つのポリヌクレオチド;および
(b)エキソヌクレアーゼを含むキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例で用いられるアダプターの構造を示す。この図は、未反応アダプターであるヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−β−シクロデキストリン(am−βCD)、および二官能性架橋剤である3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)と一旦反応してamamPDP−βCDを形成した場合のアダプターの構造を示す。図は、アダプターに対するアミン基の影響を検討するために実施例で用いられた対照アダプターの構造も示す(amPDP−βCD)。
【図2】野生型バックグラウンドにおけるHL−(M113R)(上)およびRL2バックグラウンドにおけるHL−(M113R)(下)の単一チャネル記録を示す。am−βCD結合およびdNMPが認められる。
【図3】図1からの対応するdNMPイベントのヒストグラムを示す。Ledtは野生型であり右はRL2である(1200mM KCI、150mV,pH7.5)。
【図4】野生型と比較したRL2の重要な変異を示す図を示す。
【図5】dNMPがHL−(M1113R)RL2バックグラウンドおよびHL−(M113R/N139Q)wtバックグラウンドと結合した場合の残留電流のヒストグラムを示す。この図は、RL2バックグラウンドにおけるN139Q変異の重要性を示す(図3と比較せよ)(800mM KCl、160mV、pH7.5)。
【図6】提唱されたα−HLの残基139におけるシクロデキストリンの位置を示す。
【図7】α−HLのβ−樽状構造における重要な変異の位置を示す図を示す。
【図8】HL−(M113R/N139Q)(M113R/T115C−D8)変異体の単一チャネル記録を示す。amamPDP−βCDとの反応によって変動し雑音の多いベースラインとなることが認められる(バイアスはなし)。
【図9】変動し雑音の多いベースラインを示すHL−(M113R/N139Q)(M113R/T117C−D8)変異体の単一チャネル記録を示す(バイアスはなし)。
【図10】ヌクレオチドを添加する前後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/G119C−D8)変異体の単一チャネル記録を示す。また、ヌクレオチドを添加した後のベースラインの拡大も示す。
【図11】ヌクレオチドの添加後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N121C−D8)変異体の単一チャネル記録を示す。
【図12】HL−(M113R/N139Q)(M113R/G119G−D8)(左)およびHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N121C−D8)変異体(右)のヒストグラムを示す。800mM KCl、160mV、pH7.5において限定された塩基識別が認められる。
【図13】dGMP、dTMP、dAMP、dCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N123C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)を示す(1秒間提示)。
【図14】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N123−D8)(左)およびHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/G137C−D8)変異体(右)のヒストグラムを示す。限定された塩基識別が認められる(800mM KCl、160mV、pH7.5)。
【図15】dGMP、dTMP、dAMPおよびdCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)を示す(1秒間提示)。
【図16】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。良好な塩基識別が認められる(800mM KCl、160mV、pH7.5)。
【図17】印加された電位の範囲(110〜170mV)におけるHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体についてのdNMP結合の残留電流ヒストグラムを示す。4つのヌクレオチドの相対的位置の変化が認められる。鋭い黒いピークはシクロデキストリンレベルに対応する。
【図18】単一のヌクレオチドが細孔に結合した場合の印加電位によるピーク位置の変動(残留細孔電流)のプロットを示す。
【図19】印加電位130、150および170mVにおける試験についての残留電流ヒストグラム、各塩基のガウスフィッティングおよび隣接する塩基間の重なり面積の算出値のプロットを示す。
【図20】残留細孔電圧の平均に対する滞留時間を示す。dTMPの長い平均滞留時間を認めることができるように、全4種類の塩基(下から順にG、T、A、C)のピークを認めることができる。
【図21】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。低塩濃度で良好な塩基識別を認めることができる(400mM KCl、180mV、pH7.5)。
【図22】dNMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)を示す(350mM KCl、180mV、pH7.5)。
【図23】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。低塩濃度で良好な塩基識別が見られる(350mM KCl、180mV、pH7.5)。
【図24】300mM KCl、25mM Tris中でpH7.5より開始した単一チャネルについての溶液温度に対するヘモリシンコンダクタンスのプロットを示す。1.65pA/℃の上昇を見ることができる。
【図25】低塩濃度且つ高温(300mM KCl、180mV、pH7.2,40℃)で良好な塩基検出を示すHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体についてのヒストグラム(左)、および短い滞留時間を示す同じデータの振幅に対する滞留時間のプロット(右)を示す。
【図26】dCMPおよびメチル−dCMPの化学構造を示す(比較のためにdTMPも含める)。
【図27】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。dGMPおよびメチル−dCMP塩基検出を認めることができる(800mM KCl、180mV、pH7.5)。
【図28】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。全4種類の標準的ヌクレオチド一リン酸(左)およびメチル−dCMPを加えた全4種類の標準的ヌクレオチド一リン酸(右)の検出を認めることができる(800mM KCl、170mV、pH7.5)。
【図29】残留細孔電圧の平均に対する滞留時間を示す。全4種類の塩基およびメチル−dCMPのピーク(左)および5種類の塩基についての残留電流ヒストグラムのガウスフィッティング(右)を示す。
【図30】印加電位の範囲(130〜170mV)におけるHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体についてのdNMP結合の残留電流ヒストグラムを示す。メチル−dCMPを加えた4つのヌクレオチドの相対的位置の変化を認めることができる。
【図31】DNAおよび対応するRNA塩基の一般的に認められる塩基の化学構造を示す。
【図32】HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体のヒストグラムを示す。NMP塩基の検出が認められる(800mM KCl、160mV、pH7.5)=。
【図33】121位においてamamPDP−βCDと反応したホモ7量体HL−(M113R/N139Q/N121C)の単一チャネル記録を示す。
【図34】dGMP、dTMP、dAMP nd dCMPを添加した後にPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)を示す(800mM KCl、pH7.5、160mV、5kHフィルタリング、0.5秒間提示)。
【図35】dGMP、dTMP、dAMPおよびdCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)を示す(800mM KCl、pH7.5、160mV、5kHフィルタリング、0.5秒間提示)。
【図36】dGMP、dTMP、dAMPおよびdCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(wt)(L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)(800mM KCl、pH7.5、160mV、5kHフィルタリング、0.5秒間提示)および対応する残留電流ヒストグラムを示す。
【図37】dGMP、dTMP、dAMPおよびdCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(M113R)(M113R/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)(800mM KCl、pH7.5、160mV、5kHフィルタリング、0.5秒間提示)および対応する残留電流ヒストグラムを示す。
【図38】dGMP、dTMP、dAMPおよびdCMPを添加した後にamamPDP−βCDと反応したHL−(N139Q)(N139Q/L135C−D8)変異体の単一チャネル記録(5kHソフトウェアでフィルタリング)(800mM KCl、pH7.5、160mV、5kHフィルタリング0.5秒間提示)および対応する残留電流ヒストグラムを示す。
【0012】
(配列リストの説明)
SEQ ID NO:1は野生型α−ヘモリシン(α−HL)の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0013】
SEQ ID NO:2は野生型α−HLの1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0014】
SEQ ID NO:3はα−HL M113R−RL2の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0015】
SEQ ID NO:4はα−HL M113R−RL2の1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0016】
SEQ ID NO:5は野生型バックグラウンドを有するα−HL M113Rの1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0017】
SEQ ID NO:6は野生型バックグラウンドを有するα−HL M113Rの1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0018】
SEQ ID NO:7はα−HL M113R/N139Qの1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0019】
SEQ ID NO:8はα−HL M113R/N139Qの1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0020】
SEQ ID NO:9はα−HL M113R/N139Q/G119C−D8の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0021】
SEQ ID NO:10はα−HL M113R/N139Q/G119−D8の1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0022】
SEQ ID NO:11はα−HL M113R/N139Q/N121C−D8の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0023】
SEQ ID NO:12はα−HL M113R/N139Q/N121C−D8の1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0024】
SEQ ID NO:13はα−HL M113R/N139Q/L135C−D8の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0025】
SEQ ID NO:14はα−HL M113R/N139Q/L135C−D8の1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0026】
SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12および14はいずれもアミノ末端にメチオニンを欠く成熟型である。
【0027】
SEQ ID NO:15はE.coliに由来するエキソヌクレアーゼIIIをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0028】
SEQ ID NO:16はE.coliに由来するエキソヌクレアーゼIIIのアミノ酸配列を示す。
【0029】
SEQ ID NO:17はE.coliに由来するエキソヌクレアーゼIをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0030】
SEQ ID NO:18はE.coliに由来するエキソヌクレアーゼIのアミノ酸配列を示す。
【0031】
SEQ ID NO:19はバクテリオファージλエキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0032】
SEQ ID NO:20はバクテリオファージλエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。配列は集合して3量体となる3つの同一のサブユニットの1つである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
開示された生成物および方法の異なる適用を、当技術分野における特定のニーズに対して個別に調節してもよいことを理解すべきである。本明細書で用いる用語は本発明の具体的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解すべきである。
【0034】
さらに、本明細書および付属の請求項で用いるところの単数形「1つの(a、an)」および「その」(the)は、内容が明確にそうでないと指示していない限り複数の指示物を含む。したがって、たとえば「1つのヌクレオチド」に対する言及は「複数のヌクレオチド」を含み、「1つの細孔」に対する言及は2つまたはそれ以上のこうした細孔を含み、「1つの分子アダプター」に対する言及は2つまたはそれ以上のこうしたアダプターを含む、などである。
【0035】
本明細書に引用された全ての出版物、特許および特許明細書は、上記のものも下記のものも、その全文を参照文献として本明細書に組み入れる。
【0036】
(変異型α−HL細孔)
本明細書は、1つまたはそれ以上のヌクレオチドを検出するのに用いることを目的とした変異型α−HL細孔を提供する。細孔は異なるヌクレオチドを鑑別または識別するために用いてもよい。細孔はヌクレオチドの相互作用を促進する分子アダプターを含む。アダプターは特定の位置で細孔と共有結合する。アダプターは、ヌクレオチドと細孔が相互作用する時に、ヌクレオチドがそのヌクレオチドに特有の様式で細孔内を流れる電流に影響するよう配置される。したがってアダプターは、確率的感知によるヌクレオチドの検出またはヌクレオチドの識別に細孔を用いることを可能とする位置で、細孔と共有結合する。
【0037】
本発明の細孔は、確率的感知にとって有用な手段である。本発明の細孔は、ヌクレオチド間の識別に特に有用である。したがって細孔は核酸の配列決定にとって理想的である。
【0038】
本発明の細孔は、異なるヌクレオチドを高い感度で識別することができる。細孔は、DNAおよびRNAにおける4種類のヌクレオチドを容易に識別することができる。本発明の細孔は、メチル化ヌクレオチドと非メチル化ヌクレオチドを識別することまでできる。残基135にアダプターが共有結合した変位型α−HL細孔の塩基分解能は、驚くほど高い。細孔は4種類のDNAヌクレオチドのほぼ完全な分離を示し、これを核酸配列決定のための優れた候補としている。細孔は、そのより長い細孔内滞留時間に基づき、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)を他の3種類のDNAヌクレオチドと明確に識別することを可能とする。さらに細孔は、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)とメチル−dCMPを、細孔内滞留時間および細孔内を流れる電流に基づいて識別する。
【0039】
本発明の細孔は、幅広い条件下で異なるヌクレオチド間を高い感度で識別することもできる。具体的には、細孔は核酸の配列決定にとって好ましい条件下でヌクレオチドを識別するであろう。細孔をDNAおよびRNA分子の配列決定に用いることができる方法は数多い。1つの方法は、エキソヌクレアーゼ酵素の使用を包含する。この手法では、エキソヌクレアーゼ酵素を用いて、DNAまたはRNA鎖よりヌクレオチドを連続的に脱離させる。このような酵素は、通常は高塩濃度下で機能しない。本発明の細孔は、低塩濃度であってもヌクレオチド同士を識別することができる。細孔は、たとえば室温で300mMと低いKCl濃度において、良好なヌクレオチド識別で機能することができる。細孔は、温度が上昇した場合または非対称的塩濃度が用いられた場合、より低い塩濃度において良好なヌクレオチド識別で機能するであろう。これについては、以下でより詳しく議論する。
【0040】
本発明の細孔が異なるヌクレオチドを識別できる度合いは、印加電位を変化させることによって調節することができる。それにより、特に配列決定の際に細孔の機能を精密に調節することができる。
【0041】
分子アダプターが固定されているという性質は、細孔から得られたシグナルが細孔の樽状構造またはチャネル内のヌクレオチドの存在に完全に依存し、且つアダプターの細孔からの解離によって影響されないことも意味している。換言すれば、アダプターが固定されているという性質は、ヌクレオチドが細孔と相互作用する時には、常に特徴的な電流が細孔内を流れることを意味している。配列内の各ヌクレオチドを検出および同定する必要があるので、これは核酸配列決定にとって特に重要である。
【0042】
本発明の細孔は、それらが遮断されないように設計することができる。電気生理学においては、細孔は大きな多価イオンによって遮断されることがある。イオンは細孔の樽状構造またはチャネルに捕捉され、さらにイオン電流の流れを妨害する。通常、遮断は超高純度塩溶液内で実験を実施することによって回避することができる。アルギニンなどの正に荷電した残基を、α−HLの樽状構造またはチャネルの狭窄部近傍に導入することにより、遮断されやすい細孔が生じる。以下の考察より明らかにされるように、本発明の変異型α−HL細孔が、1つまたはそれ以上の正荷電残基を、その樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に有することは必須ではない。このような残基を欠く本発明の細孔は、大きな多価イオンの存在下で遮断を受けることなく用いることができる。
【0043】
最後に、分子アダプターが固定されているという性質は、細孔およびアダプターを共に保存することができるので、即時使用可能なバイオセンサーの製造が可能となることを意味している。
【0044】
本発明の細孔は分離するか、相当分離するか、精製するか、または相当精製してもよい。脂質または他の細孔などの他の成分を全く含まない場合、本発明の細孔は分離または精製される。その意図する用途を妨害しない担体または希釈剤と混合される場合、細孔は相当分離される。たとえば、脂質または他の細孔などの他の成分を10%未満、5%未満、2%未満または1%未満含む形態で存在する場合、細孔は相当分離または相当精製される。代替的に、本発明の細孔は脂質二重層で存在することもある。
【0045】
本発明の細孔は、個別または単独の細孔として存在してもよい。本発明の細孔は、代替的に2つまたはそれ以上の細孔の相同または非相同群で存在してもよい。
【0046】
野生型α−HL細孔は7つの同一の単量体またはサブユニットより構成される(すなわち7量体)。α−ヘモリシンの1つの野生型単量体またはサブユニットの配列をSEQ ID NO:2に示す。変位型α−HL細孔は、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2のそれと異なるアミノ酸配列を有し、且つ細孔活性を維持する7量体細孔である。細孔は、以下に論じるようなアダプターの配置を促進する修飾を含む。細孔は、好ましくはアダプターの共有結合を促進する修飾も含む。
【0047】
細孔におけるサブユニットのうち1、2、3、4、5、6つがSEQ ID NO:2のそれと異なるアミノ酸配列を有してもよい。好ましい実施形態においては、細孔のサブユニットは全てSEQ ID NO:2のそれと異なるアミノ酸配列を有する。細孔における7つのサブユニットが全て同一であってもよいが、特に、以下に論じるように異なるサブユニットが異なる様式で修飾されてアダプターの配置を促進し、且つ任意にアダプターの共有結合を促進するので、典型的には異なる。
【0048】
本発明の変異型α−HL細孔は、それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を含む7つのサブユニットより形成される。変種とは、SEQ ID NO:2のそれと異なるアミノ酸配列を有し、且つ細孔を形成する能力を保持するサブユニットである。SEQ ID NO:4、6、8、10、12および14に示す配列は、全てSEQ ID NO:2の変種である。以下に論ずるSEQ ID NO:2に対する特異的な修飾は、いずれもSEQ ID NO:2の変種をもたらす。
【0049】
変種は、SEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有する構造体を含み、且つ米国特許出願第61/078,695号からの優先権を主張し且つ本出願と同時に出願された国際同時継続出願[J A Kemp & Co Ref:N.104404A;Oxford Nanolabs Ref:ONL IP 005]に記載されている。このような構造は、エキソヌクレアーゼなどの核酸代謝酵素も含む。その出願の教示するものは、全て本発明にも同等に適用することができる。
【0050】
細孔は、修飾されて1つまたはそれ以上のヌクレオチドを削除できるよう、アダプターを配置することを促進する。疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−カチオン相互作用および/または静電力などの非共有結合的相互作用によりアダプターを正しい位置に保持するために、1つまたはアミノ酸を細孔に導入する。
【0051】
7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基139においておよび/またはその近傍において修飾される。たとえば、7つのサブユニットのうち2つ、3つ、4つ、6つまたは全てがSEQ ID NO:2の残基139においておよび/またはその近傍において修飾される。7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基139においておよび/またはその近傍において2つ、3つ、4つまたは5つなど少なくとも1つの修飾を含む。
【0052】
7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基139においておよび/または残基139近傍において修飾される。7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が残基139の近傍で修飾される場合、修飾は残基139に十分に近いのでアダプターの配置を促進することができる。修飾は、SEQ ID NO:2の残基139より、典型的には20オングストローム未満の位置、たとえば15未満、10未満または5オングストローム未満などの位置において行われる。好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上において、SEQ ID NO:2の配列の残基139より2または3アミノ酸の残基が修飾される。より好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上において、SEQ ID NO:2の配列の残基139および/または残基139に隣接する残基の1つまたは両者が修飾される。好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基136、137、138、139、140、141または142における修飾またはそのあらゆる組合せを含む。最も好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基139のみにおける修飾を含む。
【0053】
7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、一旦配列が折りたたまれて三次元サブユニットを形成すると残基139の近傍となるSEQ ID NO:2の残基における修飾を含んでもよい。好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基117、119、121、123、135、137、141または143の修飾またはそのあらゆる組合せを含む。
【0054】
好ましくは、サブユニットは極性、非荷電アミノ酸の導入により残基139および/またはその近傍において修飾される。そのようなアミノ酸は、水素結合によるアダプターの配置に影響しうる。その電荷の欠如は、静電的相互作用がアダプターの機能を妨害することも防止する。下記の表1は極性非荷電アミノ酸を列挙する。グルタミンは好ましい極性非荷電アミノ酸である。極性非荷電アミノ酸は、残基139および/またはその近傍に挿入することができる。残基139におけるおよび/またはその近傍のアミノ酸は、代替的に極性非荷電アミノ酸と置換することができる。
【0055】
好ましくは、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が修飾されて、SEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍に極性非荷電アミノ酸であるグルタミンを含む。グルタミンを残基139および/またはその近傍に挿入することができるか、または残基139におけるおよび/またはその近傍のアミノ酸をグルタミンと置換することができる。好ましくは、残基139のアミノ酸はグルタミンと置換される(N139Q)。たとえば、7つのサブユニットのうち2つ、3つ、4つ、5つまたは6つがSEQ ID NO:2の残基139にグルタミンを有する。好ましい実施形態においては、7つのサブユニットの全てがSEQ ID NO:2の残基139にグルタミンを有する。残基139における非荷電グルタミンは、アダプター中の水酸基などの化学基と水素結合により相互作用し、且つそれにより変位型α−HL細孔の樽状構造またはチャネル内におけるアダプターの配置を促進することができる。SEQ ID NO:2の残基139がグルタミンと置換された好ましいサブユニット(N139Q)をSEQ ID NO:8、10、12および14に示す。適切なサブユニットは、SEQ ID NO:8、10、12および14に示すオクタアスパラギン酸テールを含んでも欠いてもよい。
【0056】
細孔は、樽構造またはチャネルの狭窄部の近傍に他の非荷電アミノ酸、または芳香族アミノ酸までもが配置されて、アダプターの配置がさらに促進されることがある。下記の表1は非荷電芳香族アミノ酸を列挙する。たとえば、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍にアスパラギンのような非荷電アミノ酸を1つまたはそれ以上、またはフェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸を1つまたはそれ以上配置されてもよい。細孔は、好ましくは4、5、6または好ましくは7つの非荷電または芳香族アミノ酸の環が、樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に配置される。環の中の各アミノ酸は、典型的には各サブユニットより提供される。樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に配置されるSEQ ID NO:2の残基は111、113および147を含むが、これに限定されない。適切なサブユニットは、SEQ ID NO:2の残基111、113または147に非荷電または芳香族アミノ酸を含む。SEQ ID NO:2の残基111、113または147に、非荷電または芳香族アミノ酸を挿入することができる。代替的に、SEQ ID NO:2の残基111、113または147のアミノ酸を非荷電または芳香族アミノ酸と置換することができる。
【0057】
細孔は、好ましくは修飾されてアダプターの共有結合を促進する。システインなどの共有結合を形成することのできる1つまたはそれ以上のアミノ酸を、1つまたはそれ以上のサブユニットに導入することができる。アミノ酸は、天然に産するものでも非天然的に産するものでもよい。アミノ酸は付加によって導入してもよい。アミノ酸は、好ましくは置換によって導入される。アダプターがSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置される限り、あらゆる位置にアミノ酸を導入することができる。アミノ酸が残基139より遠隔の残基に導入される場合、適切な長さの二官能性架橋剤を用いて、アダプターが残基139またはその近傍に配置されることを確実にしてもよい。
【0058】
好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上において、SEQ ID NO:2の残基119、121または135が修飾されてアダプターの共有結合を促進する。より好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つのみにおいて、SEQ ID NO:2の残基119、121または135が修飾されてアダプターの共有結合を促進する。SEQ ID NO:2の残基119、121または135に導入されるアミノ酸は、好ましくはシステインである。残基119、121または135のアミノ酸は、好ましくはシステインと置換される(G119C、N121CまたはL135C)。SEQ ID NO:2の119位がシステインと置換された好ましいサブユニット(G119C)を、SEQ ID NO:10に示す。SEQ ID NO:2の残基121がシステインと置換された好ましいサブユニット(N121C)を、SEQ ID NO:12に示す。SEQ ID NO:2の残基135がシステインと置換された好ましいサブユニット(L135C)を、SEQ ID NO:14に示す。
【0059】
細孔は、好ましくは樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に、正に荷電したアミノ酸が配置されてアダプターの共有結合を促進する。たとえば、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上に対し、樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に、アルギニン、リジンまたはヒスチジンのような正に荷電したアミノ酸が配置してもよい。正に荷電したアミノ酸は、アダプター内のアミンなどの正に荷電した基との静電的相互作用により、アダプターの共有結合を促進する。より具体的には、正に荷電したアミノ酸がアダプター内の正に荷電した基と反発し、アダプターを細孔の樽状構造またはチャネルに押し下げ、さらにSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置する。それにより、アダプターと細孔の共有結合反応が促進される。しかし、上に論じたように、樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に配置された正に荷電したアミノ酸を有する細孔は、遮断されやすいことがある。
【0060】
細孔は、好ましくはアルギニン、リジンまたはヒスチジンなどの正に荷電した4つ、5つ、6つまたは好ましくは7つのアミノ酸の環が、樽状構造またはチャネルの狭窄部の近傍に配置される。環の中の各アミノ酸は、典型的には各サブユニットより提供される。好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基113に、アルギニン、リジンまたはヒスチジンのような正に荷電したアミノ酸を1つ有する。より好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基113にアルギニン残基を有する。より好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのすべてがSEQ ID NO:2の残基113にアルギニン残基を有する。アルギニンを残基113に導入することができるか、または残基113をアルギニンと置換することができる(M113R)。SEQ ID NO:2の残基113がアルギニンと置換された好ましいサブユニット(M113R)を、SEQ ID NO:4、6、8、10、12および14に示す。
【0061】
サブユニットは、たとえばStaphylococcus属細菌などの生物が発現した天然に産する変種でもよい。変種は、組換え技術によって生成された非天然産生変種も含む。変種は、SEQ ID NO:2の全長に対し、好ましくは少なくとも50%がアミノ酸同一性に基づきその配列と相同となるであろう。サブユニットポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列のアミノ酸同一性に基づき、より好ましくは少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%が、配列の全長に対して相同となる。200またはそれ以上、たとえば230、250、270または280またはそれ以上の長さの近接アミノ酸に対し、アミノ酸の同一性は少なくとも80%、たとえば少なくとも85%、90%または95%ある(「硬い相同性」)。
【0062】
アミノ酸配列SEQ ID NO:2に対し、上に論じたものに加えて、たとえば1、2、3、4、5、10,20または30置換までなどのアミノ酸置換を行ってもよい。たとえば下記の表1によれば、保存的置換を行ってもよい。
【0063】
【表1】

【0064】
上に論じたポリペプチドより、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の1つまたはそれ以上の残基をさらに削除することができる。1、2、3、4、5、10、20または30残基まで、またはそれ以上を削除することができる。
【0065】
変種は、SEQ ID NO:2のフラグメントよりなるサブユニットを含んでもよい。このようなフラグメントは、細孔形成活性を保持する。フラグメントは少なくとも50、100、200または250アミノ酸の長さであってもよい。このようなフラグメントを用いて、キメラ細孔を生成してもよい。フラグメントは、好ましくはSEQ ID NO:2の細孔形成ドメインを含む。フラグメントは、SEQ ID NO:2の残基139および119、121または135を含まなければならない。
【0066】
変種は、SEQ ID NO:2のフラグメントまたは一部を含むキメラタンパク質を含む。キメラタンパク質細孔は、それぞれがSEQ ID NO:2のフラグメントまたはその一部を含む、1つまたはそれ以上のサブユニットより形成してもよい。キメラタンパク質細孔の細孔またはチャネル部分は、典型的にはSEQ ID NO:2のフラグメントまたはその一部より形成される。
【0067】
1つまたはそれ以上のアミノ酸を、代替的または追加的に上記のポリペプチドに付加してもよい。延長部を、SEQ ID NO:2またはそのポリペプチド変種またはフラグメントのアミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシル末端に提供してもよい。延長部は、たとえば長さ1から10アミノ酸のように非常に短くしてもよい。代替的に、たとえば50または100アミノ酸までのように、延長部をより長くしてもよい。担体タンパク質を本発明によるアミノ酸配列と融合させてもよい。
【0068】
上述のように、変種とはSEQ ID NO:2のそれと異なるアミノ酸配列を有し、且つその細孔形成能力を保持するサブユニットである。典型的には、変種は細孔形成を担当するSEQ ID NO:2の領域を含む。β−樽状構造を含むα−HLの細孔形成能力は、各サブユニットのβ−シートによって提供される。SEQ ID NO:2の変種は、典型的にはβ−シートを形成するSEQ ID NO:2の領域を含む。SEQ ID NO:2のアミノ酸22から30、35から44、52から62、67から71、76から91、98から103、112から123、137から148、154から159、165から172、229から235、243から261、266から271、285から286および291から293がβ−シートを形成する。生成する変種がその細孔形成能力を維持する限り、β−シートを形成するSEQ ID NO:2の領域に1つまたはそれ以上の修飾を施すことができる。SEQ ID NO:2のβ−シート領域に施すことのできる具体的な修飾を以下に論じる。
【0069】
SEQ ID NO:2の変種は、そのα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に、置換、付加または削除などの修飾を好ましくは1つまたはそれ以上含む。SEQ ID NO:2のアミノ酸2から6、73から75、207から209、214から216および219から222がα−ヘリックスを形成する。SEQ ID NO:2のアミノ酸7から21、31から34、45から51、63から66、72、92から97、104から111、124から136、149から153、160から164、173から206、210から213、217、218、223から228、236から242、262から265、272から274および287から290がループを形成する。アミノ酸1および294は末端アミノ酸である。
【0070】
当技術分野における標準的方法を用いて相同性を判定することができる。たとえばUWGCGパッケージは、たとえばそのデフォルト環境に使用される、相同性を算出するために用いることのできるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et at(1984)Nucleic Acids Research 12,p.387−395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いて、たとえばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290−300;Altschul,S.F.et.al.(1990)J Mol Biol 215:403−10に記載されているように、相同性を算出または配列を決定することができる(たとえば(典型的にはそのデフォルト環境に対して)同等の残基または対応する配列を同定するなど)。
【0071】
BLAST分析を実施するソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターより公開されている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、始めに、データベース配列において同じ長さのあるワードでアラインメントした場合、いくつかのプラス閾値スコアTに合致または適合する問い合わせ配列において、長さWの短いワードを同定することによって高スコア配列ペア(HSP)を同定することを包含する。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altsehul et al)。これらの初回の隣接ワードヒントは、検索を開始してHSPがこれらを含むことを確認するためのシードの機能を果たす。ワードヒントは、累積配列スコアを増加できる限り、各配列の両方向に拡張される。各方向へのワードヒントの拡張は:累積配列スコアがその最大達成値より量X減少した時;1つまたはそれ以上のマイナススコア残基配列が累積したことにより累積スコアが0またはそれ以下となる時;または各配列の末端に到達した時に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度およびスピードを決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)11、BLOSUM62スコアリング行列(HenikoffおよびHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sd.USA 89:10915−10919を参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5,N=4および両鎖の比較を用いた。
【0072】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実施する;たとえばKarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の指標の1つは、それによって2つのアミノ酸配列間の一致が偶然起こる確率の指標を提供する最小確率和(P(N))である。たとえば、第1の配列の第2の配列に対する比較における最小確率和が約1を下回り、好ましくは約0.1を下回り、より好ましくは約0.01を下回り、また最も好ましくは約0.001を下回る場合、一方の配列はもう一方の配列と類似している。
【0073】
たとえばその同定または生成を支援するためのヒスチジンまたはアスパラギン酸などの付加によって、または天然ではポリペプチドがシグナル配列を含まない細胞からのその分泌を促進するためのそのような配列の付加によって、1つまたはそれ以上のサブユニットを修飾してもよい。
【0074】
細孔は判別ラベルでラベリングしてもよい。判別ラベルは、細孔が検出されることを可能とするあらゆる適切なラベルとしてよい。適切なラベルは蛍光分子、たとえば125I、35Sなどの放射性同位元素、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよびビオチンなどのリガンドを含むが、これに限定されない。
【0075】
細孔は、Staphylococcus aureusなどの細孔生成生物より得ても、または合成的にまたは組換え手段によって生成してもよい。たとえば、細孔はin vitro翻訳および転写によって合成してもよい。細孔のアミノ酸配列は、非天然産生アミノ酸を含めるか、または化合物の安定性を高めるために修飾してもよい。合成的手段によって細孔が生成される場合、このようなアミノ酸を精製時に導入してもよい。細孔は、以下の合成または組換えのいずれかの生成法にしたがって変化させてもよい。
【0076】
細孔はD−アミノ酸を用いて生成してもよい。たとえば、細孔はL−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含んでもよい。このことは、このようなタンパク質またはペプチドを生成することを目的とした当技術分野において一般的である。
【0077】
細孔は、アダプターの配置を促進し、且つ任意に共有結合を促進するための特異的な修飾を1つまたはそれ以上含む。細孔は、アダプターの結合および配置を妨害しない限り、その他の非特異的修飾を含む。多数の非特異的な側鎖の修飾は当技術分野において既知であり、細孔の側鎖に行ってもよい。このような修飾は、たとえばアミノ酸に対するアルデヒドとの反応の後NaBHで還元することによる還元的アルキル化、メチルアセトイミデートによるアミジン化または無水酢酸によるアシル化などを含む。
【0078】
細孔は、当技術分野において既知である標準的な方法を用いて生成することができる。細孔または細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的な方法を用いて誘導および複製することができる。このような配列については以下でより詳しく議論する。細孔または細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的な技術を用いて、細菌宿主細胞に発現させることができる。細孔または細孔サブユニットは、組換え発現ベクターに由来するポリペプチドのin situ発現によって、細胞内で生成することができる。発現ベクターは、ポリペプチドの発現を制御するための誘導プロモーターを担持することもある。
【0079】
細孔サブユニットは、あらゆるタンパク質液体クロマトグラフィ系によって細孔生成生物より精製した後に、または以下に記載するような組換え発現後に、大スケールで生成してもよい。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィ系はFPLC、AKTAシステム、Bio−Radシステム、Bio−Rad BioLogicシステムおよびGilson HPLCシステムを含む。次に、本発明に従った使用を目的として、天然産生または組換え生成細孔または細孔サブユニットを、天然産生または人工膜に挿入してもよい。細孔を膜に挿入する方法を以下に記載する。
【0080】
SEQ ID NO:4、6、8、10、12および14に示された7つのサブユニット(すなわちSEQ ID NO:2の変種)のあらゆる組合せを用いて本発明の細孔を形成してもよい。好ましい細孔は:
(a)SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6つおよびSEQ ID NO:10に示すα−HL M113R/N139Q/G119C−D8サブユニット1つ;または
(b)SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6つおよびSEQ ID NO:12に示すα−HL M113R/N139Q/N121C−D8サブユニット1つを含み;
【0081】
細孔(a)および(b)においては、SEQ ID NO:10、12、18、22、26、30および34に示すサブユニットは、オクタ−アスパラギン酸テールを欠いてもよい。
【0082】
本発明の最も好ましい細孔は、SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6つおよびSEQ ID NO:14に示すα−HL M113R/N139Q/N135C−D8サブユニット1つを含む。このような細孔においては、SEQ ID NO:14に示すサブユニットは、オクタ−アスパラギン酸テールを欠いてもよい。
【0083】
(分子アダプター)
本発明の細孔は、細孔とヌクレオチドまたは標的核酸配列との相互作用を促進する分子アダプターを含む。アダプターの存在により、細孔とヌクレオチドのホスト−ゲスト化学が向上する。ホスト−ゲスト化学の原則は、当技術分野において周知である。アダプターは、そのヌクレオチドとの相互作用を向上させる細孔の物理的または化学的性質に対する効果を有する。アダプターは、典型的には細孔の樽状構造またはチャネルの電荷を変化させるか、またはヌクレオチドと特異的に相互作用または結合し、それによりその細孔との相互作用を促進する。
【0084】
アダプターは各個別のヌクレオチド同士の相互作用を媒介するか、または各ヌクレオチドが標的核酸配列および細孔である。ヌクレオチドは、好ましくはアダプターを介して、またはこれと共に、可逆的に細孔と結合する。ヌクレオチドは、最も好ましくは、それらが膜を横断して細孔を通過するにつれて、アダプターを介して、またはこれと共に、可逆的に細孔と結合する。またヌクレオチドは、それらが膜を横断して細孔を通過するにつれて、アダプターを介して、またはこれと共に、細孔の樽状構造またはチャネルと可逆的に結合することもできる。アダプターは、好ましくはヌクレオチドと相互作用できるように樽状構造またはチャネルを収縮させる。
【0085】
アダプターは、典型的には環状である。アダプターは、好ましくは細孔と同じ対称性を有する。α−HLは、中心軸の周囲に、膜貫通β−樽状構造に鎖14本を付与する7つのサブユニットを有するので、アダプターは好ましくは7倍の対称性を有する。
【0086】
アダプターは、典型的にはホスト−ゲスト化学によりヌクレオチドと相互作用する。アダプターは、典型的にはヌクレオチドと相互作用することができる。アダプターは、ヌクレオチドと相互作用することのできる化学基を1つまたはそれ以上含む。1つまたはそれ以上の化学基は、好ましくは、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−カチオン相互作用および/または静電力などの非共有結合的相互作用によって、ヌクレオチドと相互作用する。ヌクレオチドと相互作用することのできる1つまたはそれ以上の化学基は、好ましくは正に荷電する。ヌクレオチドと相互作用することのできる1つまたはそれ以上の化学基は、より好ましくはアミノ基を含む。アミノ基は一級、二級または三級炭素原子と結合することができる。アダプターは、より好ましくは6、7または8個のアミノ基の環などのアミノ基の環を1つ含む。アダプターは、最も好ましくは7個のアミノ基の環を1つ含む。プロトン化されたアミノ基の環は、ヌクレオチドの負に荷電したリン酸基と相互作用しうる。
【0087】
以下により詳しく論じるように、細孔の樽状構造またはチャネル内でのアダプターの正しい配置は、アダプターと細孔との間のホスト−ゲスト化学によって促進することができる。アダプターは、好ましくは細孔内で1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用することのできる化学基を1つまたはそれ以上含む。アダプターは、より好ましくは疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−カチオン相互作用および/または静電力などの非共有結合的相互作用により、細孔内の1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用することのできる化学基を1つまたはそれ以上含む。細孔内の1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用することのできる化学基は、典型的には水酸基またはアミン基である。水酸基は、一級、二級または三級炭素原子と結合することができる。水酸基は、細孔内の非荷電アミノ酸、具体的にはSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍に導入されたものと水素結合を形成しうる。アダプター内の1つまたはそれ以上の化学基と細孔内の1つまたはそれ以上のアミノ酸の間のこの相互作用を用いて、アダプターをSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍における正しい配置に保持することができる。
【0088】
細孔内の1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用することのできるアミン基は、ヌクレオチドと相互作用することのできるアミン基と同一でも、または異なっていてもよい。上に論じたように、細孔の樽状構造またはチャネル内に、SEQ ID NO:2の残基113におけるアルギニン(M113R)のような正に荷電したアミノ酸が存在すれば、アダプター内の正に荷電したアミン基は、これと静電的に相互作用してもよい。この相互作用によって、アダプターは細孔の樽状構造またはチャネルに押し下げられ、且つそれにより共有結合が促進される。
【0089】
細孔とヌクレオチドの相互作用を促進するあらゆるアダプターを用いることができる。適切なアダプターはシクロデキストリン、環状ペプチドおよびキューカビチュリルを含むが、これに限定されない。アダプターは、好ましくはシクロデキストリンまたはその誘導体である。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev,A.V.,およびSchneider,H−J.(1994)J.Am.Chem,Soc.116,6081−6088に開示されたもののうちいずれであってもよい。アダプターは、より好ましくはヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu−βCD)である。gu−βCD内のグアニジノ基のpKaはam−βCDの一級アミンよりもはるかに高いので、より正に荷電する。このgu−βCDアダプターを用いて、ヌクレオチドの細孔内滞留時間を延長、測定する残留電流値の精度を向上、さらには高温または低いデータ取得率において塩基検出率を向上してもよい。
【0090】
3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)架橋剤を、以下により詳細に論じる方法により用いる場合、アダプターは、好ましくはヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−6−N−モノ(2−ピリジル)ジチオプロパノイル−β−シクロデキストリン(amamPDP−βCD)である。
【0091】
(共有結合)
アダプターは細孔と共有結合する。アダプターは、当技術分野において既知であるあらゆる方法を用いて細孔と共有結合させることができる。アダプターは細孔と直接結合させてもよい。アダプターは、好ましくは二官能性架橋剤を用いて細孔と共有結合させる。適切な架橋剤は、当技術分野において周知である。好ましい架橋剤は3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)プロパン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブタン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イルおよび8−(ピリジン−2−イルジスルファニル)オクタン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イルを含む。最も好ましい架橋剤は3−(2−ピリジルジチオ)プロパン酸スクシンイミジル(SPDP)である。アダプターは、典型的にはアダプター/架橋剤複合体が細孔と共有結合する前に、二官能性架橋剤と結合するが、二官能性架橋剤/細孔複合体がアダプターと結合する前に、二官能性架橋剤が細孔と共有結合することも可能である。本発明の細孔の生成は、以下により詳細に論じる。
【0092】
共有結合部位は、アダプターがSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置されるよう選択される。それにより、ヌクレオチドと細孔の相互作用が促進され、且つそれによりヌクレオチドの検出が可能となる。またそれによって、ヌクレオチドがそのヌクレオチドに特異的な様式で細孔内を流れる電流を変化させることが確実となる。
【0093】
アダプターは、SEQ ID NO:2の残基139と同じ水平面において細孔の樽状構造またはチャネルに配置される場合、SEQ ID NO:2の残基139に配置される。アダプターは、細孔の樽状構造またはチャネル内で、SEQ ID NO:2の残基139と同じ垂直位置に配置される場合、SEQ ID NO:2の残基139に配置される。アダプターは、SEQ ID NO:2の残基139の近傍にある残基と同じ水平面において細孔の樽状構造またはチャネルに配置される場合、SEQ ID NO:2の残基139の近傍に配置される。アダプターは、細孔の樽状構造またはチャネル内で、SEQ ID NO:2の残基139の近傍にある残基と同じ垂直位置に配置される場合、SEQ ID NO:2の残基139の近傍に配置される。アダプターは、好ましくはSEQ ID NO:2の残基139の水平面より5オングストローム未満、たとえば3未満、または2オングストローム未満などにある水平面に配置される。アダプターは、より好ましくはSEQ ID NO:2の残基117、118、119、120、121、122、123、136、137、138、139、140、141または142と同じ水平面に配置される。
【0094】
アダプターは、典型的には細孔の樽状構造またはチャネルと共有結合する。アダプターがSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置され、ヌクレオチドとの細孔の相互作用を促進し、且つそれによりヌクレオチドの検出を可能とする限り、アダプターは樽状構造またはチャネル内のあらゆる部位で共有結合することができる。アダプターは、典型的にはSEQ ID NO:2の残基139の近傍にある樽状構造またはチャネル内のアミノ酸と共有結合する。アダプターは、好ましくは各サブユニットのSEQ ID NO:2の残基139によって形成される残基の環の近傍にある、細孔内のアミノ酸と共有結合する。各サブユニットのSEQ ID NO:2の残基139によって形成される残基の環より遠隔にある樽状構造またはチャネル内のアミノ酸に、アダプターが共有結合する場合、アダプターが残基139またはその近傍に配置されるように適切な長さの二官能性架橋剤を用いてもよい。
【0095】
アダプターは、好ましくは7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上におけるSEQ ID NO:2の残基119または121と結合する。アダプターは、より好ましくは7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上におけるSEQ ID NO:2の残基135と結合する。アダプターを残基119、121または135と結合させることで、アダプターは各サブユニットのSEQ ID NO:2の残基139によって形成される残基の環の近傍に配置される。
【0096】
細孔は、好ましくは1つまたはそれ以上のアミノ酸の導入によって修飾されて、分子アダプターの二官能性架橋剤との共有結合が促進される。より好ましくは、細孔の樽状構造またはチャネルが修飾されて、分子アダプターの二官能性架橋剤との共有結合が促進される。細孔は、当技術分野において既知であるあらゆる方法を用いて修飾することができる。1つまたはそれ以上のアミノ酸を、細孔の同一または異なるサブユニットに導入してもよい。システインなどのような、共有結合を形成することのできるあらゆるアミノ酸を導入することができる。アミノ酸は、天然に産するものでも非天然的に産するものでもよい。1つまたはそれ以上のアミノ酸は、好ましくは置換によって導入される。
【0097】
好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上においてSEQ ID NO:2の残基119、121または135が修飾されて共有結合を促進する。より好ましい実施形態においては、7つのサブユニットのうち1つにおいてSEQ ID NO:2の残基119、121または135が修飾される。上に論じたサブユニットのいずれも、分子アダプターまたは二官能性架橋剤の共有結合を促進するために用いることができる。
【0098】
(アダプターの配置)
アダプターは、細孔を用いてヌクレオチドを検出することを可能とする位置において、細孔と共有結合する。アダプターは配置され、そのようなヌクレオチドがそのヌクレオチドに特異的な様式で細孔内を流れる電流を変化させる。アダプターはそのように配置され、これは細孔とヌクレオチドのホスト−ゲスト化学を向上する。アダプターは、細孔の物理的または化学的性質を変化させ、且つそのヌクレオチドとの相互作用を向上させるよう配置される。アダプターは、典型的には細孔を通るイオンの流れに対して立体的な遮断を形成するよう配置される。アダプターがヌクレオチドと特異的に相互作用または結合することができる場合、アダプターはヌクレオチドと特異的に相互作用または結合するよう配置される。ヌクレオチドと相互作用するアダプター内の1つまたはそれ以上の化学基は、好ましくはヌクレオチドがそこを通じて進入する細孔の末端より離れて配向される。そのような配向によって、細孔の樽状構造またはチャネルを経たヌクレオチドの取り込みが促進される。好ましくは、基はアミノ基である。そこを経てヌクレオチドが進入する細孔の末端は、cis末端であってもtrans末端であってもよい。末端は、好ましくはcis末端である。
【0099】
共有結合は、アダプターが正しく配置されるよう設計してもよい。たとえば、アダプターが正しく配置されるよう、アダプターが細孔と共有結合する部位(例:アミノ酸)を設計してもよく、且つ/またはアダプターが正しく配置されるよう二官能性架橋剤を用いてもよい。
【0100】
本発明の細孔は、アダプターの配置を促進するよう修飾される。上に論じるように、7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、好ましくはSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍においてグルタミンを有する。残基139および/またはその近傍におけるグルタミンは、アダプター上の水酸基などの化学基と水素結合により相互作用することができ、かつそれにより細孔の樽状構造またはチャネル内におけるアダプターの配置を促進する。細孔は、アダプターの配置を促進することを目的とした、SEQ ID NO:2の残基113などの他の配置における修飾も含む(上を参照)。
【0101】
最も好ましくは、細孔は修飾されて共有結合を促進し、且つアダプターの配置を促進する。このような実施形態においては、共有結合部位と、アダプターの配置を促進するために細孔が修飾される部位の間の空間的関係は、アダプターが正しい位置に保持されることを確実にするよう設計される。たとえばアダプターは、好ましくは1つのサブユニットにおいてSEQ ID NO:2の残基135と結合し、各サブユニットのSEQ ID NO:2の残基139によって形成される1つまたはそれ以上のグルタミンの環の近傍にそれを配置する。1つまたはそれ以上のグルタミンは、水素結合によりアダプターの配置を促進する。
【0102】
(ポリヌクレオチド)
本発明は、SEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HLのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列であって、サブユニットが残基119、121または135にシステインを有するポリヌクレオチド配列も提供する。SEQ ID NO:2の変種は、上に論じたもののうちのいかなるものであってもよい。ポリヌクレオチド配列は、好ましくはSEQ ID NO:9、11または13に示す配列、またはSEQ ID NO:9、11または13の配列の全配列に対し、ヌクレオチド同一性に基づき、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%相同である配列を含む。600またはそれ以上、たとえば700、750、850または900またはそれ以上の長さの近接ヌクレオチドに対し、少なくとも80%、たとえば少なくとも85%、90%または95%のヌクレオチドの同一性があってもよい(「硬い相同性」)。相同性は上述の方法によって算出してもよい。ポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードの縮重度に基づき、SEQ ID NO:9、11または13と異なる配列を含んでもよい。
【0103】
ポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的な方法を用いて誘導または複製することができる。染色体DNAは、Staphylococcus aureusなどの細孔生成生物より抽出してもよい。細孔サブユニットをコードする遺伝子は、特異的なプライマーを包含するPCRを用いて増幅することができる。次に、増幅された配列は、クローニングベクターなどの複製可能な組換えベクターに組み込むことができる。ベクターを用いて、適合性のある宿主細胞内でポリヌクレオチドを複製してもよい。したがって、細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列は、細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入し、ベクターを適合性のある宿主細胞に導入し、さらにベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を発育させることにより生成してもよい。ベクターは、宿主細胞より回収してもよい。細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチドのクローニングに適した宿主細胞は、当技術分野において既知であり、且つ以下により詳細に記載される。
【0104】
細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列は、適切な発現ベクターにクローニングしてもよい。発現ベクターにおいては、細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列は、典型的には宿主細胞によるコード配列の発現を提供できる対照配列と動作的に結合する。このような発現ベクターは、細孔サブユニットを発現させるために用いることができる。
【0105】
用語「動作的に結合」は、記載された成分がその意図した様式で機能することを許す関係にある近接を指す。コード配列に「動作的に結合した」対照配列は、対照配列に適合した条件下でコード配列の発現が達成されるよう結合する。同一または異なった細孔サブユニット配列の複数のコピーを、ベクターに導入してもよい。
【0106】
発現ベクターは、その後で適切な宿主細胞に導入することができる。したがって、細孔サブユニットは、細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、ベクターを適合性のある細菌宿主細胞に導入し、さらに細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列の発現を引き起こす条件下で宿主細胞を発育させることにより生成してもよい。組換えにより発現した細孔サブユニットは、自己集合させて宿主細胞膜内の細孔としてもよい。代替的に、この様式で生成された組換え細孔を宿主細胞より取出し、さらに他の膜に挿入してもよい。少なくとも2つの異なるサブユニットを含む7量体細孔をプロディウスする場合、異なるサブユニットは上述の方法で異なる宿主細胞に別個に発現させ、宿主細胞より取出し、さらにウサギ細胞膜などの別の膜において集合させて細孔としてもよい。
【0107】
ベクターは、たとえば複製元、任意に前記ポリヌクレオチド配列の発現を目的としたプロモーターおよび任意にプロモーターのレギュレーターを具備したプラスミド、ウイルスまたはファージベクターとしてもよい。ベクターは1つまたはそれ以上の選択的マーカー遺伝子、たとえばテトラサイクリン耐性遺伝子を含んでもよい。プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、そのために発現ベクターが設計される宿主細胞と適合するように選択してもよい。典型的には、T7、trc、lac、araまたはλプロモーターが用いられる。
【0108】
宿主細胞は、典型的には細孔サブユニットを高レベルで発現する。細胞を形質転換するために用いられる発現ベクターと適合可能とするために、細孔サブユニットをコードするポリヌクレオチド配列によって形質転換された宿主細胞が選択されるであろう。宿主細胞は、典型的には細菌であり、且つ好ましくはEscherichia coliである。λDE3溶原を有するあらゆる細胞、たとえばC41(DE3)、BL21(DE3)、JM109(DE3),B834(DE3)、TUNER、OrigamiおよびOrigami Bは、T7プロモーターを含むベクターを発現することができる。
【0109】
(本発明の細孔を生成する方法)
本発明は、本発明の細孔を生成する方法も提供する。方法は、細孔とヌクレオチドの間の相互作用を促進する分子アダプターを細孔と共有結合させることを含む。アダプターは、当技術分野において既知であるあらゆる方法を用いて、細孔と共有結合させることができる。
【0110】
上に論じられた細孔、アダプターおよび二官能性架橋剤のいずれも本方法において用いることができる。共有結合部位は、上に論じられた方法で選択される。
【0111】
アダプターは、典型的には、amamPDP−βCDなどの二官能性架橋剤を含むアダプターを、システインなどの反応性アミノ酸を少なくとも1つ含む変異型α−HL細孔に添加することにより細孔と結合する。しかし、この方法には2つの欠点がある。第1は、時間の経過とともに酸化または溶液中の他の化学種との反応によって劣化する、システインなどのアミノ酸の反応性である。第2は、架橋剤と細孔の間で反応が起こるまでにかかる時間である。特に単一の細孔を用いる場合、これらの欠点によって困難がもたらされることがある。たとえば、単一のシステイン変位を含む単一のα−HL細孔を液状膜に挿入し、架橋剤を含むアダプターを電気生理学的チャンバーに添加する場合、1つがシステインと反応するまでアダプター分子は細孔に出入りする。システインが不活化すると、その後はどれだけ多くのアダプター分子が細孔に進入しても反応は認められないであろう。細孔中の反応性アミノ酸の不活化は、たとえば酸素の除去、還元剤(例:ジチオスレイトール、DTT)などの安定化剤の添加、システインを化学的保護したのち使用前に活性化すること、または保存前のアダプターとの化学的結合などによる保存条件の改善によって、減少させることができる。
【0112】
好ましい実施形態においては、そこにアダプターが結合する細孔は保護的脱離基を含み、且つ本方法は細孔から脱離基を置換することを含む。保護的脱離基は、細孔中の1つまたはそれ以上の反応的アミノ酸を保護するために用いられる。保護的脱離基は、好ましくは細孔中の1つまたはそれ以上のシステイン残基を保護するために用いられる。保護的脱離基は、架橋剤を含みうる、アダプター上の反応性の基との反応によって置換される。
【0113】
より好ましい実施形態においては、細孔は、上述の変種におけるSEQ ID NO:2の119、121または135のような、1つまたはそれ以上の反応性システイン上の保護的脱離基を含み、且つ反応性−SH基を有する架橋剤を含むアダプターと反応する。架橋剤上の−SH基は、細孔と結合した保護的脱離基と置換し、且つそれと共有結合するアダプターを有する細孔が生成される。
【0114】
保護的脱離基を細孔中の1つまたはそれ以上の反応性アミノ酸と結合させること、およびアダプター上に反応性の基を有することによって、本発明の方法は、特に単一の細孔を用いる場合に大いに改善される。たとえば、反応性アダプター分子を、保護基を有する単一の細孔と結合させる場合、アダプター分子数は単一細孔数をはるかに上回る。その結果、反応性分子の一部が不活化されたとしても、少なくとも1つは反応性を維持し、細孔より保護的脱離基を置換する可能性がある。
【0115】
電気生理学的実験は極めて困難なことがあるので、実験の準備時間を制限し、且つそれによりデータ取得までの時間を最適化することが好ましい。したがって、二層挿入の前にアダプターを細孔に結合することが好ましい。これは電気生理学的実験の容易さを高めるばかりでなく、細孔の使用期限を向上させる。
【0116】
適切な保護的脱離基は当技術分野において既知である。例は、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)および2,2’−ジチオジピリジンを含むが、これに限定されない。
【0117】
アダプターは、オリゴマー化して細孔を形成する前に、1つまたはそれ以上のサブユニットと結合させてもよい。大きなアダプター分子は、オリゴマー化の効率を低下させるか、または細孔の形成を完全に妨害することがある。しかし、この手法の利点は、電荷または質量の比較的大きな変化によって、単量体−アダプター化学種が未修飾単量体から容易に分離されることである。さらに、オリゴマー化の前に2つの化学種を分離することができるので、最終的なナノ細孔が共有結合したアダプターを含有する確率は高い。
【0118】
アダプターは、それらがオリゴマー化する際に、細孔の1つまたはそれ以上のサブユニットと結合させてもよい。これは、アダプターを装填された脂質小胞を用いて行う。この手法は、アダプターをサブユニットと離れた場所に配置することにより利益を受ける。さらに、オリゴマー化が起こる場合、細孔は小胞二重層によってアダプターより保護される。次に、装填された小胞は、SDS−PAGEゲル操作を実行して膜より小胞を抽出し、未反応のアダプターは全て除去する。
【0119】
アダプターは、オリゴマー化された細孔と結合させてもよい。細孔は、上に論じた標準的技術を用いて生成される。アダプターは、7量体が形成された後に付加される。これは、SDS−PAGEゲルを用いるなどの最終的な生成の前、または直後に行うことができる。この実施形態は、標準的な細孔生成プロトコルに必要な変更が最も少なく、且つ生成する本発明の細孔の割合は高い。しかし、この実施形態を用いて生成される細孔の収率は予想よりはるかに低いことが試験により示されている。おそらくこれは、タンパク質サンプル中の界面活性剤を阻害するのに十分な量のアダプターが存在して、タンパク質の凝集を引き起こしたか、または疎水性架橋剤が存在する場合、おそらくは架橋剤が細孔のβ−樽状構造と会合し、且つ効率的な細孔の挿入を妨害したためと思われる。
【0120】
本方法は、細孔を用いたヌクレオチドの検出を可能とする位置において、アダプターが細孔と結合するか否か判定することも含む。これは、細孔を用いてヌクレオチドの有無を判定することができるか否かを判定することも包含する。これは、以下により詳しく記載する方法で行うことができる。ヌクレオチドの有無を判定できる場合、アダプターは正しい位置にあり、且つ本発明の細孔が生成されている。ヌクレオチドの有無を判定できない場合、アダプターは正しくない位置にある可能性があり、且つ本発明の細孔は生成されていない。
【0121】
(個別のヌクレオチドを同定する方法)
本発明は、個別のヌクレオチドを同定する方法も提供する。本方法は、ヌクレオチドが本発明の細孔と相互作用するよう、ヌクレオチドを細孔と接触させること、および相互作用時に細孔を通過する電流を測定すること、およびそれによりヌクレオチドの本性を判定することを含む。したがって、本発明は個別のヌクレオチドの確率的感知を包含する。本発明の細孔のいずれも用いることができる。
【0122】
ヌクレオチドに固有の様式で細孔内を電流が流れる場合(すなわち、ヌクレオチドと関連する特徴的な電流が細孔を流れるのが検出される場合)、ヌクレオチドが存在する。電流がヌクレオチドに特異的な様式で細孔内を流れない場合、ヌクレオチドは存在しない。
【0123】
本発明は、それらが細孔を流れる電流に与える異なる作用に基づき、類似した構造のヌクレオチドを識別するために用いることができる。個別のヌクレオチドは、細孔と相互作用する際に、電流の振幅より単一分子レベルで同定することができる。本発明は、特定のヌクレオチドがサンプル中に存在するか否か判定するために用いることもできる。本発明は、サンプル中の特定のヌクレオチドの濃度を測定するために用いることもできる。
【0124】
本方法は、本発明の細孔を膜に挿入することができる、あらゆる適切な膜/細孔系を用いて実施することができる。本方法は、典型的には(i)本発明の細孔を含む人工膜、(ii)本発明の細孔を含む分離された天然産生膜、または(iii)本発明にしたがって修飾されている細孔を発現する細胞を用いて実施することができる。本方法は、好ましくは人工膜を用いて実施される。膜は、本発明の細孔に加えて、他の膜貫通および/または膜内タンパク質さらには他の分子を含んでもよい。
【0125】
膜は、イオン、ヌクレオチドおよび核酸の流れに対する障壁を形成する。好ましくは、膜は脂質二重層である。本発明にしたがって用いるのに適した脂質二重層は、本技術分野において既知の方法を用いて生成することができる。たとえば、脂質二重膜はMontalおよびMueller(1972)の方法を用いて形成することができる。脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/000563に記載の方法を用いて形成することもできる。
【0126】
本発明の方法は、リン脂質、糖脂質、コレステロールおよびその混合物を含むが、これに限定されない、あらゆる膜脂質より形成される脂質二重層を用いて実施してもよい。国際出願第PCT/GB08/000563に記載のあらゆる脂質を用いてよい。
【0127】
細孔を脂質二重層などの膜に挿入することについては、方法は本技術分野において既知である。たとえば、脂質二重層に拡散し、さらに脂質二重層と結合し且つ機能的な状態に集合することにより挿入されるよう、精製された形態で脂質二重層を含む溶液に細孔を懸濁してもよい。代替的に、M.A.Holden,H.Bayley.J.Am.Chem.Soc.2005,127,6502−6503および国際出願第PCT/GB2006/001057(WO2006/100484として公開)に記載の「ピック・ザ・プレイス」法を用いて、細孔を直接膜に挿入してもよい。
【0128】
本発明の方法は、典型的にはin vitroで実施される。
【0129】
(個別のヌクレオチド)
個別のヌクレオチドは、単一のヌクレオチドである。個別のヌクレオチドは、他のヌクレオチドまたは核酸と、ヌクレオチド結合により結合していないものである。ヌクレオチド結合は、他のヌクレオチドの糖基と結合しているヌクレオチドのリン酸基の1つを包含する。個別のヌクレオチドは、典型的には少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1000個、または少なくとも5000個のヌクレオチドの他の核酸配列とヌクレオチド結合によって結合していないものである。たとえば、個々のヌクレオチドは、DNAまたはRNA鎖などの標的ポリヌクレオチド配列より消化されている。
【0130】
本発明の方法を用いて、あらゆるヌクレオチドを判定することができる。ヌクレオチドは、天然産生または人工とすることができる。ヌクレオチドは、典型的には核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸基を含む。核酸塩基は、典型的には複素環状である。適切な核酸塩基はプリン類およびピリミジン類を含み、またより具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシルおよびシトシンを含む。典型的には、糖はペントース糖である。適切な糖はリボースおよびデオキシリボースを含むが、これに限定されない。ヌクレオチドは、典型的にはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には一リン酸、二リン酸または三リン酸を含む。
【0131】
適切な核酸は、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸、(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)を含むが、これに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくはAMP、TMP、GMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPである。
【0132】
ヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸などの核酸配列の消化によって得ることができる。核酸配列は、当技術分野において既知であるあらゆる方法を用いて消化することができる。適切な方法は酵素または触媒を用いるものを含むが、これに限定されない。核酸の触媒的消化は、Deck et al.,Inorg.Chem.,2002;41:669−677に開示される。
【0133】
単独の核酸配列に由来する個別のヌクレオチドは、核酸の全体または一部の配列を決定するために、連続的な様式で細孔と接触させてもよい。本発明の第2の実施形態にしたがった核酸配列の決定は、以下により詳細に論じる。
【0134】
典型的には、ヌクレオチドが核酸配列の消化に由来する場合のように、ヌクレオチドは未修飾である。ヌクレオチドは、代替的に修飾されていても損傷されていてもよい。ヌクレオチドは、典型的にはメチル化または酸化される。ヌクレオチドは、判別ラベルでラベリングしてもよい。判別ラベルは、ヌクレオチドが検出されることを可能とするあらゆる適切なラベルとしてよい。適切なラベルは蛍光分子、たとえば125I、35Sなどの放射性同位元素およびビオチンなどのリンカーを含む。
【0135】
ヌクレオチドは、典型的にはあらゆる適切な生物学的サンプル中に存在する。適切な生物学的サンプルは、上に論じられる。
【0136】
(細孔とヌクレオチドの相互作用)
ヌクレオチドは、膜のいずれかの側で細孔と接触させてもよい。ヌクレオチドは、膜のいずれの側で細孔に導入してもよい。ヌクレオチドは、ヌクレオチドが細孔を経て膜の反対側に通過することを可能とする膜の面と接触させてもよい。たとえば、ヌクレオチドが細孔を通過しうるよう、その生来の環境によって、イオンまたはヌクレオチドなどの小分子が細孔の樽状構造またはチャネルに進入することを可能とする、細孔の一方の末端にヌクレオチドを接触させる。このような場合、ヌクレオチドは、細孔の樽状構造またはチャネルを経て膜を横断するにつれて、細孔および/またはアダプターと相互作用する。代替的に、ヌクレオチドは、ヌクレオチドがアダプターを経て、またはこれとともに細孔と相互作用し、細孔と解離し、且つ膜の同じ側に留まることを可能とする膜の面と接触させてもよい。本発明は、そこにおいてアダプターの位置が固定される細孔を提供する。結果として、ヌクレオチドは、好ましくはアダプターがヌクレオチドと相互作用することを可能とする細孔の末端と接触する。
【0137】
ヌクレオチドは、あらゆる方式且つあらゆる部位で細孔と相互作用しうる。上に論じたように、ヌクレオチドは、好ましくはアダプターを介して、またはこれと共に、可逆的に細孔と結合する。ヌクレオチドは、最も好ましくは、細孔を経て膜を横断するにつれて、アダプターを介して、またはこれと共に可逆的に細孔と結合する。またヌクレオチドは、細孔をへて膜を横断するにつれて、アダプターを介して、またはこれと共に、細孔の樽状構造またはチャネルとも可逆的に結合することができる。
【0138】
ヌクレオチドは、ヌクレオチドと細孔の相互作用の際、そのヌクレオチドに特異的な様式で細孔内を流れる電流に影響する。たとえば、特定のヌクレオチドは、特定の平均時間の間且つ特定の程度、細孔を流れる電流を減少させるであろう。換言すれば、細孔を流れる電流は特定のヌクレオチドに特徴的である。対照実験を実施して、特定のヌクレオチドが細孔内を流れる電流に有する影響を判定してもよい。その後、サンプル中の特定のヌクレオチドを同定、または特定のヌクレオチドがサンプル中に存在するか判定するために、試験サンプルに対して本発明の方法を実施した結果を、このような対象試験より導かれたものと比較することができる。細孔を流れる電流が特定のヌクレオチドを指示する様式で影響される頻度は、サンプル中のそのヌクレオチドの濃度を判定するために用いることができる。サンプル中の異なるヌクレオチドの比率も、算出することができる。たとえば、dCMPとメチル−dCMPの比率を産出することができる。
【0139】
(機器)
本方法は、本発明の細孔が膜に挿入される膜/細孔系を検討するのに適したあらゆる機器を用いて、実施することができる。本方法は、確率的感知に適したあらゆる装置を用いて実施することができる。たとえば、装置は水溶液およびチャンバーを2つの区画に分ける障壁を含むチャンバーを含む。障壁は、細孔を含む膜が形成される開口を有する。ヌクレオチドは、ヌクレオチドをチャンバーに導入することにより、細孔と接触させることができる。ヌクレオチドは、チャンバーの2区画のうちいずれかに導入することができる。
【0140】
本方法は、国際出願第PCT/GB08/000562に記載の機器を用いて実施することもできる。
【0141】
本発明の方法は、ヌクレオチドとの相互作用時に細孔を流れる電流を測定することを包含する。したがって、機器は電位を印加し、且つ膜および細孔を横切る電気的シグナルを測定することのできる電気回路も含む。本方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを用いて実施することができる。方法は、好ましくは電圧クランプの使用を包含する。
【0142】
(サンプル)
ヌクレオチドはあらゆる適切なサンプル中に存在する。本発明は、典型的にはヌクレオチドを含有することが既知である、または含有することが疑われるサンプルに対して実施される。本発明は、その本性が不明である1つまたはそれ以上のヌクレオチドを含有するサンプルに対して実施してもよい。代替的に、本発明は、サンプル中のその存在が既知であるかまたは予測される1つまたはそれ以上のヌクレオチドの本性を確認するために、サンプルに対して実施してもよい。
【0143】
サンプルは、生物学的サンプルであってもよい。本発明は、あらゆる生物または微生物より得られるか、または抽出されるサンプルに対して、in vitroで実施してもよい。生物または微生物は、典型的には原核性または真核性であり、且つ典型的には5つの界:植物、動物、真菌、細菌、原生生物のうち1つに属する。本発明は、あらゆるウイルスより得られるか、または抽出されるサンプルに対して、in vitroで実施してもよい。サンプルは、好ましくは液状サンプルである。サンプルは、典型的には患者の体液を含む。サンプルは尿、リンパ液、唾液、粘液または羊水であってもよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。サンプルは、典型的にはヒト由来であるが、代替的にウマ、ウシ、ヒツジまたはブタなどの商業的に飼育される動物由来などの他の哺乳類由来であってもよく、または代替的にネコまたはイヌなどのペットであってもよい。
【0144】
サンプルは、非生物学的サンプルであってもよい。非生物学的サンプルは、好ましくは液状サンプルである。非生物学的サンプルの例は、外科用液状物、飲用水などの水、海水または河川水、および臨床検査用の試薬を含む。
【0145】
サンプルは、典型的にはたとえば遠心分離または望ましくない分子または赤血球などの細胞を濾取する膜の通過によって、分析される前に処理される。サンプルは、採取時に速やかに測定してもよい。またサンプルは、典型的には分析前に、好ましくは−70℃未満で保存してもよい。
【0146】
(条件)
本発明の方法は、ヌクレオチドとの相互作用時に細孔を流れる電流を測定することを包含する。膜貫通タンパク質細孔を通過するイオン電流を測定するための適切な条件は、当技術分野において既知であり、且つ実施例において開示される。方法は、膜および細孔を横断して印加される電圧によって実施される。用いられる電圧は、典型的には−400mVから400mVである。使用する電圧は、好ましくは−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限、および+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立に選択される上限を有する範囲内にある。使用する電圧は、より好ましくは120mVから170mVの範囲にある。上昇した印加電位を用いることにより、本発明の細孔による異なるヌクレオチドの間の識別を高めることが可能である。
【0147】
本方法は、典型的にはあらゆる塩化アルカリ金属塩の存在下で実施される。上に論じた典型的な機器においては、塩はチャンバー内の水溶液に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)または塩化セシウム(CsCl)が典型的に用いられる。KClが好ましい。塩濃度は、典型的には0.1から2.5M、0.3から1.9M、0.5から1.8M、0.7から1.7M、0.9から1.6Mまたは1Mから1.4Mである。塩濃度は、好ましくは150から500mMである。高い塩濃度は、高い信号雑音比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対して、同定すべきヌクレオチドの存在を指示する電流が見込まれる。核酸配列を決定する場合などのように、酵素の存在下でヌクレオチド検出が実施される場合、より低い塩濃度を用いなければならない。これについては以下でより詳しく議論する。
【0148】
本方法は、典型的には緩衝剤の存在下で実施される。上に論じた典型的な機器においては、緩衝剤はチャンバー内の水溶液に存在する。本発明の方法においては、あらゆる緩衝剤を使用することができる。適切な緩衝剤1つは、Tris−HCl緩衝剤である。本方法は、典型的には4.0から10.0、4.5から9.5、5.0から9.0、5.5から8.8、6.0から8.7または7.0から8.8または7.5から8.5のpHで実施される。使用されるpHは、好ましくは約7.5である。
【0149】
本方法は、典型的には0℃から100℃、15℃から95℃、16℃から90℃、17℃から85℃、18℃から80℃、19℃から70℃、または20℃から60℃で実施される。本方法は室温で実施してもよい。本方法は、好ましくは約37℃などの酵素機能を支持する温度で実施する。温度が上昇している場合、低い塩濃度で良好なヌクレオチド識別を達成することができる。
【0150】
(核酸配列を決定する方法)
本発明は、標的ヌクレオチド配列を決定する方法も提供する。1つの実施形態においては、本方法は(a)エキソヌクレアーゼを用いて標的配列の一方の末端より個別のヌクレオチドを消化すること;(b)ヌクレオチドが細孔と相互作用するようヌクレオチドを本発明の細孔と接触させること;(c)相互作用時に細孔を通過する電流を測定し、またそれによりヌクレオチドの本性を判定すること;および(d)標的配列の同じ末端で手順(a)から(c)を繰り返し、またそれにより標的配列を配列決定することを含む。したがって本方法は、核酸の配列を決定するための連続的な様式による、核酸配列の各単一ヌクレオチドの確率的感知を包含する。本方法の手順(b)および(c)は、全般的に、上に論じたヌクレオチドを同定する方法において実施される手順と同一である。
【0151】
本発明の細孔は、これらの方法に特に適している。核酸の配列を効率的に決定するためには、核酸中の各ヌクレオチドが連続的な様式で同定されることを確実にすることが重要である。本発明の細孔内でアダプターが固定されているという性質は、連続した各ヌクレオチドが細孔と相互作用すれば、常に特徴的な電流が細孔内を流れることを意味している。
【0152】
この方法を用いて、標的ヌクレオチドの配列全体または一部のみを決定してもよい。核酸配列は、あらゆる長さとすることができる。たとえば、核酸配列は少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも400個または少なくとも500個のヌクレオチドの長さとすることができる。核酸は天然産生または人工とすることができる。たとえば、本方法は、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を確認するために用いてもよい。本方法は、典型的にはin vitroで実施される。
【0153】
ヌクレオチドを検出することに関する、および具体的には使用してもよい細孔、膜、機器および条件に関する上記のすべての議論は、同等にこれらの方法に適用することができる。典型的には、核酸は上に論じるところのあらゆる生物学的サンプル中に存在する。
【0154】
(エキソヌクレアーゼ)
1つの実施形態においては、標的核酸配列を配列決定する方法は、標的配列をデオキシリボヌクレアーゼなどのエキソヌクレアーゼと接触させ、核酸の一方の末端より個別のヌクレオチドを遊離させることを包含する。エキソヌクレアーゼは、典型的には核酸の一方の末端に掛合し、且つ配列のその末端より一度に1つのヌクレオチドを消化する。エキソヌクレアーゼは核酸を5’から3’方向、または3’から5’方向に消化することができる。そこにエキソヌクレアーゼが結合する核酸の末端は、典型的には使用する酵素の選択および/または当技術分野において既知である使用する方法によって決定される。核酸配列のいずれかの末端における水酸基またはキャップ構造は、典型的にはエキソヌクレアーゼが核酸配列の特定の末端に結合することを妨害または促進するために用いうる。
【0155】
本方法においては、あらゆるエキソヌクレアーゼ酵素を使用することができる。本方法において用いるための好ましい酵素は、E.coliに由来するエキソヌクレアーゼIII(SEQ ID NO:16)、E.coliに由来するエキソヌクレアーゼI(SEQ ID NO:18)、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼ(SEQ ID NO:20)およびその変種を含む。SEQ ID NO:20の3つの同一のサブユニットが相互作用し、3量体エキソヌクレアーゼを形成する。変種は、SEQ ID NO:16、18または20のそれと異なるアミノ酸配列を有し、且つエキソヌクレアーゼ活性を保持するポリペプチドである。変種は、SEQ ID NO:2の変種について上に論じたのと同じ様式かつ同じ程度で、SEQ ID NO:16、18または20と異なりうる。変種は、好ましくは核酸との結合および核酸の消化を担当するドメイン(酵素的ドメイン)を含む。変種は、好ましくは必要に応じて酵素活性速度が増加または減少しており、且つ/または野生型酵素と比較してより高い塩耐性を有する。エキソヌクレアーゼは、細孔の生成について上に論じた方法のいずれかを用いて生成してもよい。
【0156】
本方法は、上に論じたように、個別のヌクレオチドがそれぞれ同定できるような速度でヌクレオチドが核酸の末端より消化されるよう、核酸配列をエキソヌクレアーゼと接触させることを包含する。これを行う方法は当技術分野において周知である。たとえば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて同定できるように、ポリペプチドの末端より単一アミノ酸を連続的に消化するために、エドマン分解が用いられる。本発明においては、相同的な方法を用いてもよい。
【0157】
エキソヌクレアーゼは、好ましくは細孔と共有結合する。エキソヌクレアーゼを細孔と共有結合させるための方法は、当技術分野において周知である。本方法は、好ましくは米国特許出願第61/078,695号からの優先権を主張し且つ本出願と同時に出願された国際同時継続出願[J A Kemp & Co Ref:N.104404A;Oxford Nanolabs Ref:ONL IP 005]に記載されている、SEQ ID NO:2に示す配列またはその変種およびエキソヌクレアーゼを含む1つまたはそれ以上の構造体を含む細孔の使用を包含する。本方法が同時継続出願に開示された構造体を含む細孔の使用を包含する場合、標的核酸配列は、典型的には酵素が細孔と結合する膜の面と接触する。
【0158】
エキソヌクレアーゼが機能する速度は、典型的には野生型エキソヌクレアーゼの最適速度よりも低い。配列決定方法におけるエキソヌクレアーゼ活性の適切な速度は、0.5から1000ヌクレオチド/秒、0.6から500ヌクレオチド/秒、0.7から200ヌクレオチド/秒、0.8から100ヌクレオチド/秒、0.9から50ヌクレオチド/秒または1から20または10ヌクレオチド/秒の消化を包含する。好ましくは、速度は1、10、100、500または1000ヌクレオチド/秒である。好ましいエキソヌクレアーゼ活性の速度は、多様な方法で達成することができる。たとえば、本発明にしたがって、最適活性速度が低下した変種エキソヌクレアーゼを用いてもよい。
【0159】
エキソヌクレアーゼの活性は、典型的にはpHが減少するにしたがってその活性が低下するようなpH依存性である。したがって、第2の実施形態の方法は、典型的には7.5から8.0または7.7から8.0のpHで実施される。使用するpHは、好ましくは約7.5である。
【0160】
エキソヌクレアーゼの活性は、典型的にはマグネシウムのような特定の金属イオンの存在に依存する。したがって、エキソヌクレアーゼ酵素の活性の適切な速度は、マグネシウムイオンの濃度を低下させるか、またはマグネシウムイオンをマンガンイオンなどの異なる金属イオンと置換することによって達成される。
【0161】
エキソヌクレアーゼ活性の速度は、典型的には塩濃度が上昇するにつれて低下する。エキソヌクレアーゼは、高い塩コンサーントレーションにおいては作用しないであろう。本発明の細孔は、低い塩コンサーントレーションでヌクレオチドを識別することができる。配列決定法は、典型的には0.15から0.8M(150mMから800mM)の塩濃度を用いて実施される。これらの低塩濃度における良好なヌクレオチド識別は、30℃から40℃などの室温を上回る温度、且つ好ましくは約37℃において本方法を実施することにより達成される。
【0162】
酵素活性に適した条件を維持する一方で溶液のコンダクタンスを高めるために、溶液の濃度を高めることに加えて、用いることのできる他の戦略は数多くある。そのような戦略の1つは、酵素側の塩の低塩濃度および反対側のより高い濃度の異なる2つの濃度の塩溶液を分割するために、脂質二重層を用いることである。この手法の1例は、膜のcis側に200mM KClを、transチャンバーに500mM KClを用いることである。これらの条件においては、通常の条件下での細孔を経たコンダクタンスは400mM KClとほぼ同等と予想され、且つcis側に配置した場合、酵素は200mMのみを経験する。非対称的塩条件を用いることのもう1つの可能な利点は、細孔にまたがって誘導される浸透圧勾配である。この水の正味の流動を用いて、ヌクレオチドを細孔内に引き入れて検出することが可能であろう。ショ糖、グリセロールまたはPEGなどの中性オスモライトを用いて、同様の効果を達成することができる。もう1つの可能性は、KClレベルが比較的低い溶液を用い、且つ酵素活性に対する妨害性の低いもう1つの電荷坦持化学種に依拠することである。
【0163】
(キット)
本発明は、本発明の細孔を生成するためのキットも提供する。キットは、それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HL細孔のサブユニットをコードする、7つのポリヌクレオチドを含む。7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上が、SEQ ID NO:2の残基139にグルタミンを有する。サブユニットのうち少なくとも1つ、好ましくは1つのみが残基119、121または135にシステインを有する。SEQ ID NO:2の残基139にグルタミンを有するサブユニットをコードする好ましいポリヌクレオチドを、SEQ ID NO:7、9、11および13に示す。残基119,121または135にシステインを有するサブユニットをコードするポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチド、特にSEQ ID NO:9、11および13に示すもののうちいずれかであってもよい。
【0164】
キットは、好ましくはSEQ ID NO:7に示す配列を含む6つのポリヌクレオチド、およびSEQ ID NO:9、11または13に示す配列を含む1つのポリヌクレオチドを含む。キットは、最も好ましくはSEQ ID NO:7に示す配列を含む6つのポリヌクレオチドおよびSEQ ID NO:13に示す配列を含む1つのポリヌクレオチドを含む。
【0165】
本発明は、標的ヌクレオチド配列を決定する方法を実施するために用いうるキットも提供する。したがって、キットはヌクレオチド配列の決定に適している。キットは、本発明の細孔およびエキソヌクレアーゼを含む。
【0166】
本発明のキットは、さらに上述の実施形態のいずれかを実施可能とする他の試薬または器具を1つまたはそれ以上含んでもよい。このような試薬または器具は、以下に挙げるもののうち1つまたはそれ以上を含む:適切な緩衝剤(水溶液)、対象よりサンプルを採取する手段(容器または針を含む器具など)、ポリヌクレオチド配列を増幅および/または発現するための手段、上に定義するような膜または電圧またはパッチクランプ機器。試薬は、液状サンプルで試薬を再懸濁するよう、乾燥した状態でキットに存在してもよい。キットは、任意に、本発明の方法でキットを用いることができるようにする指示書、またはどの患者に本方法を用いうるかについての詳細も含んでよい。キットは、任意にヌクレオチドを含んでもよい。
【0167】
以下の実施例は本発明を例示する:
【実施例】
【0168】
(1.材料と方法)
(1.1 薬品類)
入手した試薬は以下のとおりである:1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids);ペンタン(Sigma−Aldrich);ヘキサデカン(99+%、Sigma−Aldrich);ヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−β−シクロデキストリン.7HCl(am−βCD、>99%、CYCLOLAB,ハンガリー、ブダペスト);2’−デオキシグアノシン5’−一リン酸ナトリウム塩(99%、Acros);2’−デオキシシトシン5’−一リン酸二ナトリウム塩(>95%、Fluka);2’−デオキシチミジン5’−一リン酸二ナトリウム塩(>97%, Fluka);2’−デオキシアデノシン5’−一リン酸二ナトリウム塩(>95%、Fluka);ウリジン5’−一リン酸二ナトリウム塩(99%、Fluka);シトシン5’−一リン酸(遊離酸>98%、Fluka);アデノシン5’−一リン酸(遊離酸99%、Acros);グアノシン5’−一リン酸二ナトリウム塩(97%、Acros);5−メチルシトシン(USB Europe),Trizma塩基(99.9%,Sigma−Aldrich);濃塩酸(分析試薬等級、Fisher Scientific);および塩化カリウム(99%、Sigma Aldrich)。
【0169】
(1.2 反応性シクロデキストリンの合成)
この作業に用いられるヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−β−シクロデキストリン(am−βCD)、amamPDP−βCDおよびamPDP−βCDの構造を図1に示す。am−amPDP−βCDは以下のように合成した:ヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−β−シクロデキストリン.7HCl(amβCD、60mg、0.053mmol)を脱イオン水(2.5mL)に溶解した。次に、これをエタノール(2.5mL)に溶解した3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(SPDP、3.13mg、0.01mmol)に加えた。生成した溶液を室温で24時間攪拌した。次に、溶媒を除去して生成物の混合物;未修飾シクロデキストリン(amβCD)、所望の一置換誘導体(am−amPDP−βCD)および少量の多置換シクロデキストリン(例:am−amPDP−βCD)を得た。生成物混合物を直接、または逆相分取HPLCにより精製した一置換生成物を電気生理学的実験に使用することができる。
【0170】
(1.3 共有結合のためのアダプターの設計)
この作業において用いる親和性の高いアダプターam−βCDは、一次ヒドロキシル面上で、各糖環に1つずつ7つの1級アミンを含む。これらの荷電基の存在は、塩基検出において決定的であることが知られている(以下を参照)。塩基検出のための所望の化合物は、細孔と結合するための単一の反応部位を有し、且つ塩基検出にとって必要な一級アミンも含有しなければならない。
【0171】
この作業においては、二官能性架橋剤3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸サクシンイミジル(SPDP)を用いて、遺伝子操作によってα−HLタンパク質細孔に導入したシステイン残基とam−βCDを結合させた。この架橋剤を、7つの1級アミンを含むシクロデキストリン分子(am−βCD)と反応させた。1つの架橋剤分子のみが単一のアミノシクロデキストリンと結合して、amamPDP−βCDアダプターを合成する最終化学種の形成を促進するよう、各化学種の濃度を選択した。
【0172】
(1.4 α−HL変異体の構造)
HL−M113R/N139Q(SEQ ID NO:5)およびHL−M113R/N139Q/L135C−D8(SEQ ID NO:7)構造体は、pT7−SC1発現ベクターにおいて集合し(Cheley,S.,Malghani,M.S.,Song,L.,Hobaugh,M.,Gouaux,J.E.,Yang,J.,およびBayley,H.,Protein Eng.,(1997),10(12),1433−1443)、且つα−HLインサート全体のDNA配列決定によって確認された。変異体をコードする遺伝子は、他の文献に記載されているように、PCR変異誘発およびライゲーションフリーin vivo組み換えによって生成した(Jones,D.H.(1995)PCR mutagenesis and recombination in vivo. In PCR primer:a laboratory manual. In: Dveksler,C.W.D.a.G.S.(ed).Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;およびHoworka,S.,およびBayley,H.,Biotechniques,(1998),25(5),764−766,768,770の諸所)。
【0173】
(1.5 共役in vitro転写および翻訳(IVTT))
タンパク質は、環状DNAのためのE.coli T7−S30抽出系を用いることによる共役in vitro転写および翻訳(IVTT)によって生成した(Promega,no.L1130)。キットに提供された、システインを除いた完全アミノ酸混合物(1mM)とメチオニンを除いた完全アミノ酸混合物(1mM)を等体積で混合し、高濃度のタンパク質を得るために必要とされる作業用アミノ酸溶液を得た。アミノ酸(5.0μL)をプレミックス溶液(20μL)、[35S]L−メチオニン(1μL、MP Biomedicals,no.51001H,1175Ci/mmol,10mCi/mL),リファンピシン(1μL,0.8mg/mL),プラスミドDNA(8μL,400ng/μL)およびT7 S30抽出物(15μL)(Cheley,S.,Malghani,M.S.,Song,L.,Hobaugh,M.,Gouaux,J.E.,Yang,J.,およびBayley,H.,Protein Eng,(1997),10(12),1433−1443)と混合した。37℃で1.5時間合成を実施し、放射能標識IVTTタンパク質50μLを生成した。
【0174】
(1.6 電気生理学的分析のためのヘテロオリゴマーの生成)
上述のように、IVTTによりタンパク質HL−M113R/N139Q(100μL;SEQ ID NO:6)およびHL−M113R/N139Q/L135C−D8(25μL;SEQ ID NO:6)を生成した。HL−M113R/N139Q/L135C−D8タンパク質(SEQ ID NO:8)の「D8テール」の負の荷電は、集合した細孔の電気泳動移動度を変化させてヘテロ7量体の分離を可能とすることが予測された。
【0175】
タンパク質サンプルを25,000gで10分間遠心分離してIVTT反応物の不溶性デブリを分離した。2つの上清をウサギ赤血球細胞膜(10μL、2.5mgタンパク質/mL)と混合し、DTTを添加して最終濃度を2mMとし、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、反応混合物を25,000gで10分間遠心分離し、上清を廃棄した。MBSA(10mM MOPS、150mM NaCl、pH7.4、1mg/mLウシ血清アルブミン含有)200μLに膜ペレットを再懸濁し、再度25,000gで10分間遠心分離することにより洗浄した。上清を廃棄した後、膜ペレットを1×Laemmliサンプル緩衝液75μLに溶解した。
【0176】
サンプル全体を5%SDS−ポリアクリルアミドゲルの単一ウェルに装填し、50Vで約18時間電気泳動した。次に、ゲルをWhatman3mmろ紙上で50℃において約3時間真空乾燥し、さらにX線フィルムに2時間露光した。HL−M113R/N139Q/L135C−D8タンパク質の“D8テール”(SEQ ID NO:8)の負の荷電は、集合した細孔の電気泳動移動度を変化させてヘテロ7量体の分離を可能とする(Howorka,S.,およびBayley,H.,Biotechniques,(1998),25(5),764−766,768,770の各所)。オートラジオグラムをテンプレートとして用い、HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/Ll35C−D8)を含むオリゴマーバンドをゲルより切り取った。次に、2mM DTTを含有するTE緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0)300μLでゲルスライスを再水和した。Whatman濾紙スライスを除去した後、滅菌乳棒でゲル片を粉砕した。オリゴマータンパク質を、0.2μm酢酸セルローススピンフィルター(カタログ番号7016−024、マイクロ遠心管、Rainin)を経て25,000gで30分間遠心分離することにより、ゲルデブリより分離した。濾液を分取して−80℃で保存した。
【0177】
(1.7 単一チャネル記録)
学術文献ですでに公開されている標準的な方法を用いて、単一チャネル記録を得た。簡単に言うと、平面二重層チャンバーをcisおよびtransの2つのコンパートメントに分割するテフロンフィルム(厚さ25μm、Goodfellow、ペンシルベニア州Malvem)における直径60〜150μmの開口部上に、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)の二重層を形成した。両コンパートメントとも緩衝液1mLを収容した。特に言及しない限り、ヘモリシン変異体およびdNMP(またはrNMP)の両者を、アースに接続したcisコンパートメントに添加した。am−βCDまたはamamPDP−βCDを、増幅器のヘッドステージに接続したtransコンパートメントに添加した。特に言及しない限り、dNMPを用いた実験は、25mM Tris HCl 800mM KCl pH7.5において22℃で実施した。ヌクレオチド保存液は、毎日用時分取した。
【0178】
(1.8 データの分析および取得)
単一チャネル記録は、パッチクランプ増幅器(Axopatch 200B;Axon instruments、カリフォルニア州Foster City)によって取得され、ビルトイン4極ベッセルフィルターにより10kHzで低フィルタリングされ、さらに、Digidata 1440A A/Dコンバーター(Axon instruments)を搭載しClampEx10ソフトウェア(MolecularDevices)を実行するPCにより、20kHzでサンプリングされた。
【0179】
以下の手順を用いてイベントヒストグラムを構築した:
1)生データに2つの隣接WTポイントウィンドウを通過させた(サンプリングレート20kHz、10kHzベッセルフィルタリング)。
2)ウィンドウ間のT−統計(2つの母集団の統計的な差の測定)を各時点で算出した。
3)所与の閾値TTを上回るT−統計におけるPT幅のピークを検出することによりステップを特定した。
4)ステップ間のデータを平均して平均電流およびイベント持続時間を算出した。
5)平均イベント電流のヒストグラムをプロットした。前のイベントの平均値が設定値LCDとUCDの間にあり、且つ持続時間がNデータポイントよりも大きい場合、1つのイベントは「限度内にある」と定義した。
【0180】
4−ヌクレオシド一リン酸ヒストグラムを生成するイベント検出のための典型的な数値は、WT=8、PT=3、Ft=20、TT=8であり、LCDおよびUCDがシクロデキストリンレベルの限度に対応していた。
【0181】
適切な初期パラメータで開始する反復平均、標準偏差および適切なピーク数についての振幅フィッティングにより、イベントヒストグラム上でマルチプルガウスフィッティングを実施した。
【0182】
ガウス分布の重なりは、2つの隣接するフィッティングピークの積をピーク面積の合計に対して正規化することにより算出した。重なりの範囲は0(重なりなし)から0.5(同一の分布)とした。始めに各ガウス分布をその面積で割ることにより、正規化した重なりを算出した。
【0183】
(2.結果)
(2.1 N139Q位の重要性)
2つの異なる変異体を比較した。第1は、RL2バックグラウンドにおけるHL−(M113R)変異体である。換言すれば、第1の変異体はRL2構造体より出発して生成された。SEQ ID NO:4に示す7つのサブユニットを含有した。
【0184】
RL2は、膜貫通β−樽状構造をコードする配列のカセット変異導入を可能とするよう設計された、半合成遺伝子の生成物である(Cheley,S.,Braha,O.,Lu,X.,Conlan,S.およびBayley,H.(1999)Protein Sci.8,1257−1267)。コード化されたポリペプチド配列に、6つのサイレント制限部位および5つの変換アミノ酸を含む(K8A、V124L、G130S、N139QおよびI142L)。D8RL2は、オクタアスパラギン酸テールを有するRL2である。K8Aを例外として、すべての変化はタンパク質の挙動に対して有する影響を最小限とするためになされ、その例は;バリンからロイシンおよびアスパラギンからグルタミンへの変異(付加メチレン基の導入)、およびイソロイシンからロイシンへの変異(メチレン基の部位の変動)である。
【0185】
第2は、野生型HLに基づくHL−(M113R)変異体である。換言すれば、第2の変異体は野生型α−HL構造体より生成し、かつRL2の5つの変異アミノ酸を含有しない。SEQ ID NO:6に示す7つのサブユニットを含有した。
【0186】
2つの変異体より非常に異なる結果が得られた。両変異体で、am−βCDを用いたアダプター結合イベントが認められ、またdNMPイベントが規則的に認められたが、dNMPの結合は極めて異なっていた(図2および3)。
【0187】
2つの変異体の間の明らかな違いの1つは電流遮断の振幅であり;RL2による変異を用いると、dNMP結合が生成した場合の残留電流は23〜33pAであり、また塩基の分布は4つのすべての塩基を識別するのに十分である。しかし、野生型変異体においては、残留電流の振幅は45〜50pAであり、またヒストグラムに特性が認められるにもかかわらず、dNMP識別は不良であった。
【0188】
野生型ベースのHL−(M113R)変異体とRL2ベースのHL−(M113R)の間のバックグラウンドの差は、RL2バックグラウンドに存在する追加的な変異によると考えられた。これらの変異のうち、N139Qは2つの変異体の間の差を引き起こす可能性が最も高いと思われた。K8A残基はタンパク質のcap領域に位置し、dNMP認識に干渉する可能性は低いが、V127L、I142LおよびG130S変異はβ−樽状構造の外面にあり、ほとんど影響がないと考えられる(図4)。
【0189】
塩基結合に対するN139Q変異の影響を検討するため、野生型バックグラウンドに、dNMP検出に必要なアルギニンと共に当該変異を組み入れ、HL−(M113R/N139Q)タンパク質を得た。このタンパク質は、SEQ ID NO:8に示された7つのサブユニットを含有した。同様の条件の下で、上に論じたRL2ベースの構造体と比較した(図5)。
【0190】
このデータより、N139Q変異は、これまで認識されていなかった効果である塩基検出にとって必要であることが明確である。
【0191】
(2.2 提唱されたam−βCDの配置)
我々は、シクロデキストリンが139位近傍のβ−樽状構造内の低い位置にあり、グルタミン基によって安定化されていると仮定した(図6)。N139Q変異の重要性を認識することは、塩基識別の機構を理解し、且つ向上され且つ連続的な塩基検出を目的として改善された構造体を設計するための鍵である。
【0192】
この仮説を検証するために、一連の変異体を設計および生成し、β−樽状構造内の広い位置範囲で反応性am−βCDと結合させた。一方が反応性システインを有しもう一方がシステイン基を欠く、異なる2種類の単量体ユニットを生成することにより、ヘテロ7量体が形成された。単量体を混合し、オリゴマー化して7量体タンパク質細孔とした。次に、これらを化学量論により分離して、あらゆる7量体タンパク質細孔にただ1つのシステイン修飾単量体ユニットが存在することを確実にし、結合部位の正確な制御が可能となるようにした。
【0193】
2セットの変異体を設計した;一方は結合したアダプターがβ−樽状構造の上部付近に配置されるよう設定する一方で、第2のセットはN139Q位の近傍にアダプターが配置されるよう設計された(以下の表2および図7)。
【0194】
【表2】

【0195】
一部の変異体はM113RまたはN139Q変異を有する6つの単量体のみを含むが、挙動の差は最小であると予想されることに留意すべきである。
【0196】
(2.3 am−βCDの共有結合)
反応性amamPDP−βCDは、幅広い実験条件の下で多数の変異体と良好に結合した。反応は、印加電位の極性または強度を変化させても除去することのできない、残留細孔電流の恒久的な低下によって特徴付けられる(図8)。この反応の更なる検証は、ジチオスレイトール(DTT)の付加を経てアダプターをタンパク質細孔と結合させるジスルフィド結合を低下させることである。
【0197】
反応の前に多数の異なるシクロデキストリン状態が認められることは共通しているが、一旦反応したならば、電流レベルは比較的一定した値に留まることに留意しなければならない。さらに、共有結合したシクロデキストリンのレベルは、未反応シクロデキストリンレベルに対してしばしば異なる強度を示す。
【0198】
(2.4 高い位置での結合−残基115から121)
シクロデキストリンの位置がβ−樽状構造の上部付近となるのを促進するために、シクロデキストリンについては高い位置での結合を選択した。選択したすべての位置はアミノ末端により近く、側鎖はβ−樽状構造の内部を指向する(奇数番の残基)。修飾シクロデキストリン上の架橋剤の設計は、シクロデキストリン上部が、結合部位からほぼ4アミノ酸離れた位置となることを意味している。したがって、117位結合は113位にあるシクロデキストリンの上部に対応する。
【0199】
(115位)
このガイドを用いた場合、特にシクロデキストリンの一級アミンと反発するであろうと予測されるアルギニン基がM113R変異体に存在する場合、反応したシクロデキストリンが113位近傍で安定に位置するには、115位はβ−樽状構造の上部の高い位置にありすぎると予想された。しかし、このタンパク質はamamPDP−βCDと反応した。
【0200】
α−HLの115位で反応が達成されたものの、ヌクレオチド塩基を添加する前であっても、ベースラインはノイズが多く且つ大きな電流の変動を示した。これは、β−樽状構造内のシクロデキストリンの動き、または溶液中に存在する他の化学種の結合による可能性があったが、しかしながら、ヌクレオチドの添加はこの構造体からのシグナルに影響しなかった。
【0201】
(117位)
シクロデキストリンを117位に結合することにより、シクロデキストリンは113位近傍に配置されるはずである。この構造体のチャートの例を以下に認めることが(図9)。HL−(M113R/N139Q)(M113R/T117C−D8)変異体はamamPDP−βCDと反応したが、ベースラインはHL−(M113R/N139Q)(M113R/T115C−D8)変異体と非常に類似していた。ヌクレオチドの添加は、細孔シグナルに認識できる変化をまったく引き起こさなかった。117位での結合により引き起こされる良好でない挙動は、荷電したアダプターと反発する、正に荷電したアルギニンと相互作用するシクロデキストリンの結果と思われる。塩基感知のために必要なアルギニンはシクロデキストリンに近すぎると思われ、且つシクロデキストリンが安定した位置を獲得することを妨げる可能性もあった。
【0202】
(119位)
システインの位置をβ−樽状構造のさらに下部に移行して119位とした場合、amamPDP−βCDとの反応は115または117位のいずれよりも明確なベースラインを示した。しかし、電流にはいまだに多少の変動があり、ベースラインのスパイクとして現れた(図10)。
【0203】
HL−(M113R/N139Q)(M113R/G119C−D8).amamPDP1−βCD構造体にヌクレオチドを添加したところ、ナノ細孔電流は、連続的なヌクレオチド結合イベントを明確に示しながら変調された(図10)。HL−(M113R/N139Q)(M113R/G119C−D8)はSEQ ID NO:8に示すサブユニット6個およびSEQ ID NO:10に示すサブユニット1個を含有していた。
【0204】
追加的なイベントはなおベースラインに存在し、且つシグナルを複雑化したが(図10)、ヌクレオチドイベントは、残留細孔電流の変動を引き起こすヌクレオチドの検出によって容易に識別することが可能であった。これらのイベントは、後でヒストグラムとしてプロットし、塩基識別を示すことができる(図12)。
【0205】
(121位)
この変異体群からの最も有望なシステイン部位は、残基121位であった。特に、HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N121C−D8).amamPDP−βCD構造体である。この構造体はSEQ ID NO:8に示すサブユニット6個およびSEQ ID NO:12に示すサブユニット1個を含有していた。反応した細孔のベースラインは、過去に試験した変異体よりも小さな変動を示し、且つ明らかな塩基結合を示した(図11)。
【0206】
121位にシステインを有する構造体は、119位にシステインを有する対応する変異体よりも、優れた分解能を有する塩基識別を示した。これは、各変異体についての残留細孔電流のヒストグラムに容易に認められる(図12)。
【0207】
HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N121C−D8)変異体は、修飾シクロデキストリンと反応して、連続的な塩基検出および若干の塩基間識別を示すことができるものの、残留電流間の重なりはこの手法による配列決定を困難にするであろう。
【0208】
(2.5 低い位置での結合−残基)
塩基分解能は、システインの位置がβ−樽状構造の下方に移動するにつれて上昇するので、塩基識別をさらに改善することが可能か確認するために、より低いシステイン位置を検討した。
【0209】
システインの位置を123、125、133、135および137残基に移動した;これらの変異体を選択して、アダプターをN139Q変異体にできるだけ近く配置した。シクロデキストリン架橋剤の長さの検討により、シクロデキストリンの上端(二級ヒドロキシル面)とチオール基の距離は9.2Åであることが示される。β−樽状構造内で多様な位置にあるアミノ酸架橋剤と139位にあるグルタミン環の距離を表3に示す。
【0210】
【表3】

【0211】
これらの測定値より、修飾シクロデキストリンの結合に最も適したシステインの位置は、N139Q位からの距離が9.1ÅであるL135C残基であることが明らかである。この数値は、細孔とアダプターとの水素結合を最大化し、かつそれにより構造体を安定化させる必要のある、シクロデキストリンの水素結合とチオール結合部位の距離(9.2Å)とよく適合する。
【0212】
この仮説を検証するために生成された変異体を表4に示す。
【0213】
【表4】

【0214】
(125位および133位)
β−樽状構造底部の125位および133位にシステインを有する変異体については、修飾シクロデキストリン(amamPDP−βCD)との反応を観察することは不可能であった。これは、反応を可能とするためには不適切な方向を指向するシステイン基によると思われ、代替的には、シクロデキストリンは反応しうるものの、シクロデキストリンはβ−樽状構造内に入らず、且つそれゆえ細孔を経たコンダクタンスの測定によって観察されなかった。
【0215】
(135位および137位)
123位および137位を、シクロデキストリントンの結合およびdNMPの検出について検討した。これらの位置はN139Q変異に近く、且つ121位における結合と同様の挙動を示すと予想された。いずれの位置も、amamPDP−βCDと良好に反応して安定したベースラインをもたらし、且つdNMPを添加すると塩基結合を示した。塩基検出は良好であったが、これらのシステイン位置のどちらについても、幅広い条件下での全4塩基間の識別は不可能であった。HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/N123C−D8)変異体のチャートの例を下に(図13)、dNMPが結合した際の残留電流のヒストグラム(図14)と共に確認することができる。
【0216】
(135位)
分子モデリングを用いて算出した距離は、塩基識別にとって最良の結合位置はL135Cでなければならないことを示した。先の変異体と同じ条件を用いて、HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/Ll35C−D8)変異体においてこの位置を検討した。この変異体はSEQ ID NO:8に示すサブユニット6個、およびSEQ ID NO:14に示すサブユニット1個を含有していた。
【0217】
システインは修飾シクロデキストリン(amamPDP−βCD)と良好に反応して、安定したベースラインをもたらした。ヌクレオチド(dGMP、dTMP、dAMP、dCMP)の添加時、追加的な結合イベントが認められた。これらのピークの振幅は、残留細孔電流のヒストグラムをプロットした場合(図16)に明瞭となる異なる母集団を示した(図15)。
【0218】
修飾シクロデキストリンがL135C位に結合した場合の塩基分解能は、β−樽状構造における他のいずれの位置よりも明らかに優れており、且つ4つのヌクレオチドすべてのほぼ完全な分離を示し、DNAまたはRNA配列決定のための優れた候補となった。
【0219】
したがって、この構造体は更なる研究のためのベースライン変異体として選択された。次の数節では、塩基識別に対する物理的パラメータの影響、塩および温度の制約、構造体が異なる化学種を同定する能力およびベースライン構造体の機械論的評価を扱う。
【0220】
(2.6 L135C位における塩基結合)
HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/Ll35C−D8)変異体をベースラインと定義し、4つのピークのそれぞれを同定する実験を実施した。これは、溶液中の単一のヌクレオシド一リン酸化学種、またはヌクレオシド一リン酸対のいずれかを用いて実験を実行することによって遂行された(データは示さず)。これらの試験によりピークを同定した。それらは、最大の遮断(またそれゆえ最小の残留電流)を示すヌクレオチドがdGMPであり、dTMP、dAMPがこれに続き、dCMPは最小の電流遮断(またそれゆえ最大の残留電流)を引き起こすことも示した。800 mM KCl中の160 mVにおいては、dNMPが結合した場合の残留電流はおおよそ:30pA(dGMP)、33pA(dTMP)、36pA(dAMP)および44pA(dCMP)であった。
【0221】
観察された電流の振幅は、印加された電位についてほぼ線形で比例するものの、4つの塩基の互いに対する位置は比例しない。これは、印加された電位範囲における残留電流ヒストグラムを検討することにより認められる(図17)。
【0222】
このデータより、より低い電位(100mV)においては、dGMPおよびdTMPが良好な分離を示したものの、dAMPとdCMPのピークは重なり、一方より高い電位(170mV)においては、今度はdGMPとdTMPのピークが重なる一方で、dAMPとdCMPピークは優れた分離を示すことが示される。したがって印加された電位は、分離を促進するために利用することのできる優れたピークの重なりの制御を提供する。このデータは、図18にも要約する。
【0223】
残留電流分布の重なりを算出するために、残留電流ヒストグラムに認められる各個別のdNMPピークを、単一のガウス分布にフィッティングした。次に、単一塩基を検出する確率が等しくなるようガウス分布を正規化し、さらに正規化したガウス分布の重なりの面積より、隣接する各塩基環の重なりの割合を算出した(図19)。
【0224】
異なる電位におけるピークの重なりの間には変動があるものの、変動は小さく、それゆえ、この構造体は幅広い操作条件において塩基識別のために用いることが可能であった。
【0225】
このプロットの1つの特徴は、dTMPピークの鋭さである。dTMP結合は、構造体中でより長い結合時間(滞留時間)を有する点で、他の4つの塩基と異なっている。これは、あるイベントの持続時間を、修飾した細孔を通る残留電流の平均に対してプロットすることによって、容易に認めることができる(図20)。
【0226】
平均すると、dTMPの滞留時間が長いほど、各結合イベントについて収集されるデータポイントの数が多くなる。データポイントの平均より残留細孔電流の精度を算出するので、あるイベントのデータポイントが多ければ平均値はより正確となり、且つそれゆえ残留電流ヒストグラムにおけるイベントの分布はより小さくなる。dNMPの読み違いの確率が低下するので、配列決定用途のためには長い結合時間が望ましい。
【0227】
(2.7 低塩濃度操作条件)
上に提示した全てのデータは比較的高い塩濃度で取得しており、溶液コンダクタンスが高ければ信号雑音比が高まり、細孔変動のバックグラウンドに対するシグナルを容易に特定することができるので、これは望ましい。しかし、配列決定の用途のためには、dNMPがDNAより遊離するよう、酵素機能にとって好ましい条件下で塩基検出を操作しなければならない。
【0228】
一連の塩条件を検討し、酵素操作条件に有利となるようなヌクレオチド検出および識別の下限を確認した。最初の検討は500mMに焦点を合わせたが、このKCl濃度においては、800mM KClでの測定と比較して塩基分離にはほとんど差が見られなかった(データは示さず)。さらに、400mM KClで実施した試験により、4つのdNMP塩基は電流状態の重なりがほとんど増加することなく、容易に分解することが可能であったものの、塩の減少は4つのピークの相対的位置に影響し、また最良のピーク分離を得るためにわずかに高い印加電位を必要とした(図21)。
【0229】
低塩濃度における実験のための良好なベースラインを達成し、塩濃度をさらに300および350mMに低下させた。350mMでの試験では比較的良好な塩基識別が示され、且つ4つのピークを識別することが可能であったものの、信号雑音比は低く、またシクロデキストリンレベル付近(dCMP結合)でピークがヌクレオチドイベントを選択することは困難であった(図22)。
【0230】
残留電流ヒストグラムにおいて4つのピークが容易に分離可能であることから、各ピークをガウス分布および算出した重なりとフィッティングした(図23)。ピークの重なりは400mM KClよりもわずかに高く、dTMPとdAMPの間に面積の20%の重なりを示したものの、他のヌクレオチドの分離は良好であった。
【0231】
塩濃度をさらに300mM KClに低下させ、同じ濃度で測定した。塩基検出は達成されたものの、dNMP間の識別は不良であった。
【0232】
異なったパラメータを用いてデータを分析したが、塩基分離を改善することは不可能であった。塩の減少によって伝導率が低下し、且つそれゆえ塩の検出が困難になったものの、ピークの位置および300mMと350mMの間のスペクトラムの大きな違いより、塩の変化が塩基結合のメカニズムに影響した可能性が示唆される。
【0233】
コンダクタンスを高める方法の1つは、溶液の温度を高めることである。これにより、温度が生理学的条件に近い場合に酵素活性が高まるという利点が付け加えられている。温度による溶液のコンダクタンスの変化の量について、300mM溶液の温度上昇にしたがって、単一のHL−(Ml113R/N139Q)(M113R/139Q/L135C−D8)変異体を通る電流を測定した(図24)。
【0234】
溶液の温度を25から40℃に上昇させると、細孔コンダクタンスが62.5pAから91.5pAに変化した(細孔コンダクタンスが46%上昇)。300mM KClにおける塩基検出実験を繰り返し、塩基識別に対する温度の影響を検討した(図25)。
【0235】
40℃と室温の間の残留電流ヒストグラムの明確な差は、分布幅の広さである。この効果は、高温におけるヌクレオチドの滞留時間の低下に帰すことができる(40℃では平均滞留時間が2m秒であるのに対し、室温では9.4m秒)。単一結合イベントの平均電流レベルの算出精度はデータポイント数と関連するので、電流レベルの分布は滞留時間が短くなると共に大きくなる。さらに、滞留時間が低下するにしたがい、短すぎて観察できないヌクレオチド結合イベントの数が増加し、同じ数のイベントを捕捉するためにより迅速なデータ取得速度が必要とされる。
【0236】
要約すると、HL−(M113R/N139Q)(M1133R/N139Q/L135C−D8).amamPDP−βCD構造体は幅広い操作条件を示し、その一部はエキソヌクレアーゼのようなDNA処理酵素に適している。塩濃度は、室温において良好な塩識別を示しながら350mMまで低下させることができ、且つ温度を高めた場合、または非対称的塩条件を用いた場合、より低い塩濃度を用いることができる。
【0237】
(2.8 メチル−dCMPの検出)
上に論じた4つのヌクレオチドに付け加えて、塩基対形成性に影響しないDNA構造の化学変化体である5−メチルシトシン(メチルd−CMP)に対して、科学界の関心が増大している(図26)。
【0238】
メチル−dCMPの存在は、非メチル化シトシンの自然発生的脱アミン化によってウラシルが生成され、これはDNA修復酵素によって認識および除去されるが、dCMPがメチル化されると脱アミノ化によってチミンが生成するので、エピジェネティクスにとって重要である。CからTへのこの変換によって対突然変異が生じることがあるため、遺伝病を理解するためには非常に重要である。
【0239】
HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8).amamPDP−βCD構造体を用いて、この技術によってメチル−dCMPを検出することが可能か確認した。始めに、メチル−dCMPを内部較正物質としてdGMPを含有する溶液に添加した(図27)。一方が既知のdGMP分布に対応し、もう一方がメチル−dCMPの結合に由来する異なる2つの母集団が認められる。
【0240】
我々のベースライン構造体がメチル−dCMPを検出することができることが証明され、且つこの化学種のピーク位置が確認されているので、5つのヌクレオシド一リン酸(dGMP、dTMP、dAMP、dCMPおよびメチル−dCMP)を全て含む溶液を試験し、物理的な条件を最適化した。800mM KClにおいて、最も低い塩基の重なりを達成するのに最適な電位は170mVであることが確認された。次に、これを4つの標準的ヌクレオチドを含有する測定(メチル−dCMPが存在しない)と比較した(図28)。
【0241】
各イベントの持続時間を残留細孔電流に対してプロットし、標準的な4つの塩基と比較したメチル−dCMPの結合親和性を示した(図29)。それによりメチル−dCMPの滞留時間がより長く、dCMPよりもdTMPに近いことが示された。このことは、dTMPおよびメチル−dCMPの両者に存在するメチル基(図26)が、シクロデキストリンとの長時間の結合に重要であることを示唆している。
【0242】
5つのヌクレオシド一リン酸ピークを全てガウス分布にフィッティングし、重なり面積の割合を算出した(図33)。全4個の塩基の検出についてのガウス分布の重なりは良好であったが、メチル−dCMPとdAMPの間には比較的大きな重なりが認められた。ここでも、各塩基の相対位置は、印加電位の強度を変化させることによって制御することが可能であった(図30)。
【0243】
メチル−dCMPを検出する能力は幅広い用途にとって重要であるが、従来の技術で達成することは非常に困難である。この理由の1つは、現行の戦略の多くがPCRまたは他の一般的技術によってDNA濃度を増幅することに依拠していることである。DNAを増幅する際、メチル−dCMPは全てdCMPに変換され、且つそれゆえ情報が失われる。他の多くの技術と異なり、ナノ細孔感知は単分子システムであり、且つそれゆえDNAを増幅することなく用いられる可能性があることから、エピジェネティクス情報を抽出するための完璧な候補となる。
【0244】
(2.9 RNA塩基検出)
ベースライン構造体について示されたデータは、現在のところDNAの構成単位であるdNMP塩基に焦点を置いているものの、このシステムは他のヌクレオチド、具体的にはRNAに認められるリボース塩基を検討する能力を有する。これらの塩基は2つの点で対応するdNMPと異なる;糖単位はさらなる水酸基を有し且つチミン塩基がウラシルに置換されている(ウラシルはチミンの非メチル化体)(図31)。
【0245】
HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8).amamPDP−βCD構造体を用いて、4つの主要なRNA塩基であるアデンソシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、ウリジン一リン酸(UMP)およびシチジン一リン酸(CMP)を試験し、これらの化学種が互いに識別されるか検討した。始めに選択した条件は、dNMP塩基にとって最適の条件(800mM KCl、160mV、pH7.5)であった。これらの結果を残留電流ヒストグラムにプロットした(図32)。
【0246】
RNA塩基検出についての予備的な結果は良好であり;これらの塩基について特に最適化しなくとも、変動のないヒストグラムは3つの明確な分布を示す。これらのピークの本性はまだ確認されていないものの、順序はこれらの条件下におけるdNMP塩基と類似しており、GMPが最も大きな細孔遮断を示し(30pA残留電流)、AMP(34pA残留電流)がこれに続き、最小の遮断はCMP(38pA残留電流)より生じた可能性が高いとみられる。ウリジン一リン酸の化学構造はシチジン一リン酸のそれと酷似しており、且つ同様のレベルの細孔遮断を引き起こすことが可能であったと思われる。
【0247】
(2.10 ヘテロ7量体対ホモ7量体)
これらの実験を実施する上での制限因子の1つは、amamPDP−βCDが反応に要する時間の長さであり、タンパク質細孔の一部はシクロデキストリンとまったく反応しない。これについての説明の1つは、タンパク質へテロ7量体上の単一システイン残基が不純物と反応したか、または酸化したというものである。一旦これが起こると、この官能基の活性を回復することは難しい。
【0248】
これに対する解決策の1つは、細孔中のシステイン残基数を増加させることである。これは、7量体中の修飾単量体の数を最大全7個までに変更することによって実施される。7量体中の7個の単量体全てが同一である場合、タンパク質はホモ7量体と呼ばれる(表5)。
【0249】
【表5】

【0250】
ホモ7量体をamamPDP−βCDと反応させ、対応するヘテロ7量体と比較した(図33)。全般的に、ホモ7量体細孔は対応するヘテロ7量体よりも大きな変動性を示した。これらの構造体の大半が修飾シクロデキストリンと反応したものの、ホモ7量体はベースライン変動の増加を被り、ベースラインの「ノイズ」に対して良好な塩基識別を得ることは困難であった。
【0251】
これについて可能な説明の1つは、他の6つの無反応システインの化学的状態である。これらの基のそれぞれは、数多くの異なる酸化状態にある可能性がある。システイン基は酸化されると以下の形態をとることができる:スルフェン酸(R−SOH)、スルフィン酸(R−SO2−)、またはスルフォン酸(R−SO32−)。より高い酸化状態はまれであるものの、このような化学種の形成は、修飾シクロデキストリンの一級アミンなどの隣接する正に荷電した基によって触媒することができる。酸化されると、システインはシクロデキストリンの正に荷電した基と相互作用して、観察される細孔電流に影響する可能性がある。
【0252】
(2.11 バイオセンサーの機械論的評価)
ベースライン構造体をよりよく理解するために、一連の変異体を生成し、アダプターがL135残基に結合した場合の個別のタンパク質構成単位をそれぞれ試験した(表6)。一連のタンパク質は113残基にアルギニンを欠く変異体、139残基にグルタミンを欠く変異体を含有した。さらに、細孔と反応することができるがamamPDP−βCD化合物の一級アミンを欠く化学修飾アダプターを用いて、ベースライン変異体を試験した。
【0253】
【表6】

【0254】
初めに検討した修飾はシクロデキストリンの一級アミン基であって、その6つのアミンがpH7.5で部分的にプロトン化され、且つdNMFの負のリン酸基と総合作用しうるアミン基であった。アミノシクロデキストリンは他の利点も有し、正電位における滞留時間を通常の(ヒドロキシル)β−シクロデキストリンと比較して1000倍に増大することができる。この滞留時間の増加は、アダプターの共有結合にとっては有用であるが、必要ではない。
【0255】
ベースライン変異型細孔を最適条件下で(800mM KCl、pH7.5、160mV)試験し、一方の測定ではPDP−βCDを用い(図34)、もう一方の測定では標準的なamamPDP−βCDシクロデキストリン(図35)を用いた。
【0256】
dNMPの高分解能検出のためには、amamPDP−βCDアダプターの一級アミン基が必要であることは明らかである。アミノシクロデキストリン(68pA)とヒドロキシルシクロデキストリン(30pA)の間の大きなコンダクタンスの変化より、反応したシクロデキストリン化合物の安定化に一級アミンが1つの役割を果たすことが証明される。荷電したアミン基が、結合時に塩基と直接相互作用することができる可能性もあるとみられる。
【0257】
次に試験した構造体は、113残基のアルギニンと139残基のグルタミンを共に欠いていたが、なおL135C位のシクロデキストリン結合部位を維持していた。この変異体は、本質的に単一のシステインを有する野生型タンパク質であった。アミノシクロデキストリンを用いたところ良好に反応したものの、ヌクレオチドを添加する前でも反応レベルはベースライン構造体よりも大きな変動を示した。標準的な4つのヌクレオシド一リン酸を全て添加したところ、若干の結合イベントが認められたものの、これらは頻度が低く且つ塩基間の識別は不可能であった(図36)。
【0258】
それにより、正確な塩基識別のためにはアルギニン、グルタミン、または両変異が必要であることが示される。これを判定するために、N139Q変異を欠くベースライン変異体の変種を試験した。この変異体は野生型細孔と類似しているが、β−樽状構造体にアルギニン環、およびL135C位にシクロデキストリンの結合のための単一システインを有していた。正に荷電したアルギニンは負に荷電したdNMPと相互作用すると予測されるが、アミノシクロデキストリン上の電荷にも影響し、さらにベースラインシグナルに影響しうる。
【0259】
反応したHL−(M113R)(M113R/L135C−D8)変異体は、アミノシクロデキストリンとの反応後にHL−(wt)(L135C−D8)変異体よりも明瞭なベースラインを示した。ヌクレオチドの添加により観察すべき結合イベントが発生し、且つベースラインにおける追加的なスパイクも認められた。結合は野生型類似体よりも頻繁であり、アルギニンがヌクレオチドと反応しうることが示唆された。ヌクレオチド結合イベントの残留電流は変動し、且つ残留電流ヒストグラムにプロットした場合の塩基間の識別は不良であった(図37)。
【0260】
この理由の1つは、結合したシクロデキストリンの安定性であり、HL−(M113R)(M113R/L135C−D8)変異体は、シクロデキストリンの二次ヒドロキシル面と水素結合し、かつ構造体を安定化することができる139位のグルタミンを欠く。このデータは、ヌクレオチド間の高分解能分離を達成するためにシクロデキストリンが安定化されなければならないことを示し、このことはグルタミンまたはアスパラギンなどの水素結合残基によって達成することができる。
【0261】
次に試験すべきタンパク質は、ベースライン構造体と類似しているが狭窄点にアルギニンを欠くHL−(N139Q)(N139Q/L135C−D8)変異体であった。この変異体は、水素結合相互作用により結合したアミノシクロデキストリンを安定化させることができるはずであるが、荷電したアルギニンがないため塩基を捕捉できないと思われた。
【0262】
HL−(N139Q)(N139Q/Ll35C−D8)変異体はシクロデキストリンと反応し、且つ非常に変化の少ないベースラインをもたらした。塩基を添加する際に、生チャート上で異なる振幅を伴う結合イベントを視覚的に確認することが可能であった。残留細孔電流のヒストグラムは、HL−(M113R/N139Q)(M113R/N139Q/L135C−D8)ベースライン変異体とほぼ同一である、4つの異なるピークを示した(図38)。
【0263】
このことは、アルギニンはベースライン構造体で認められた4つの塩基の識別をもたらすために必要でないことを証明する。しかし、それらはやはり細孔の性能に影響しうる。構造体の成功には数多くの追加的な因子が関与しており;これらはヌクレオチドの検出率およびナノ細孔と結合したアダプターの収率を含む。
【0264】
アルギニン基はdNMP塩基の結合部位への誘因を促進することもあり、且つヌクレオチドの捕捉率を高める可能性があり、これは配列決定用途にとって望ましい。しかし、アルギニン側鎖はタンパク質中に認められるアミノ酸の中でより嵩高いものの1つであり、立体的相互作用によって捕捉率を制限する可能性がある(検討中)。
【0265】
アルギニン基がシクロデキストリンの良好な反応の促進に関与している可能性もある。非共有結合アダプターデータに認められるように、HL−(M113R/N139Q)変異体は、塩基検出のためにシクロデキストリンをN139Q残基近傍に配置し、アルギニンが除去された場合には見られない効果である(データは示さず)。L135C残基にある反応部位はN139Qに近いので、アルギニンはシクロデキストリンの反応を補助すると思われる。シクロデキストリンは、頻度は高くないものの、L135C位で反応するが、dNMPを検出することのできない雑音の多いベースラインを示すことがある。このことを、変異によって影響されることのある、細孔におけるシクロデキストリンの配向と関連付けることも可能である。
【0266】
【表7】

【0267】
【表8】

【0268】
【表9】

【0269】
【表10】

【0270】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の1つまたはそれ以上のヌクレオチドの検出に用いることを目的とした変異型α−ヘモリシン(α−HL)細孔であって:
(a)それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を含む7つのサブユニット、および
(b)前記細孔と前記ヌクレオチドの間の相互作用を促進する分子アダプターを含み、
前記の7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍において修飾されて前記アダプターの配置を促進し、且つ
前記分子アダプターがSEQ ID NO:2の残基139またはその近傍に配置されるよう1つまたはそれ以上の前記サブユニットと共有結合する前記変異型α−HL細孔。
【請求項2】
前記の7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍にグルタミンを含む、請求項1に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項3】
7つのサブユニットの全てがSEQ ID NO:2の残基139および/またはその近傍にグルタミンを含む、請求項2に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項4】
前記の7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がSEQ ID NO:2の残基136、137、138、139、140、141および142のうち1つまたはそれ以上にグルタミンを含む、請求項2または3に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項5】
前記アダプターが前記サブユニットのうち1つまたはそれ以上においてSEQ ID NO:2の残基119、121または135と共有結合する、前記の請求項のうちいずれか1つに記載の変異型α−HL細孔。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の前記サブユニットにおいて残基119、121または135が修飾されて前記アダプターの前記共有結合を促進する、請求項5に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項7】
残基119、121または135がシステインの導入によって修飾される、請求項6に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項8】
前記の7つのサブユニットのうち1つまたはそれ以上がさらに修飾されて前記アダプターの共有結合を促進する、前記の請求項のうちいずれか1つに記載の変異型α−HL細孔。
【請求項9】
前記の1つまたはそれ以上のサブユニットがSEQ ID NO:2の残基113にアルギニンを導入することにより修飾される、請求項8に記載のα−HL細孔。
【請求項10】
前記の請求項のうちいずれか1つに記載の変異型α−HL細孔であって、前記細孔が:
(a)SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6個およびSEQ ID NO:14に示すα−HL M113R/N139Q/L135C−D8サブユニット1個;
(b)SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6個およびSEQ ID NO:10に示すα−HL M113R/N139Q/G119C−D8サブユニット1個;または
(c)SEQ ID NO:8に示すα−HL M113R/N139Qサブユニット6個およびSEQ ID NO:12に示すα−HL M113R/N139Q/N121C−D8サブユニット1個を含む前記変異型α−HL細孔。
【請求項11】
前記分子アダプターがシクロデキストリンである、前記の請求項のうちいずれか1つに記載の変異型α−HL細孔。
【請求項12】
前記シクロデキストリンがヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(amβ−CD)である、請求項11に記載の変異型α−HL細孔。
【請求項13】
前記アダプターが二官能性架橋剤を介して前記細孔と共有結合する、前記の請求項のうちいずれか1つに記載の変異型α−HL細孔。
【請求項14】
SEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HLのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列であって、前記サブユニットがSEQ ID NO:2の残基119,121または135位にシステインを有する前記ポリヌクレオチド配列。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドがSEQ ID NO:9、11または13に示す配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項16】
変異型α−HL細孔を生成するためのキットであって、それぞれがSEQ ID NO:2に示す配列またはその変種を有するα−HLのサブユニットをコードする7つのポリヌクレオチドを含み、前記サブユニットの少なくとも1つがSEQ ID NO:2の残基119、121または135にシステインを有する前記キット。
【請求項17】
請求項16に記載のキットであって、前記キットが:
(a)SEQ ID NO:7に示す配列を含むポリヌクレオチド6つ、および
(b)SEQ ID NO:9、11または13に示す配列を含むポリヌクレオチド1つを含む前記キット。
【請求項18】
請求項1から13のうちいずれか1つに記載の細孔を生成するための方法であって、
(a)請求項1から13のうちいずれか1つに定義するところの細孔を提供すること;および
(b)前記細孔と1つまたはそれ以上のヌクレオチドの間の相互作用を促進する分子アダプターを前記細孔に共有結合させることを含む前記方法。
【請求項19】
(a)における前記の提供することが請求項14または15に定義された前記の7つのポリヌクレオチドを宿主細胞に発現させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
手順(a)において提供される前記細孔が保護的脱離基を含み且つ手順(b)が前記脱離基を前記細孔より置換することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか1つに記載の方法であって、前記アダプターが:
(a)オリゴマー化する前に前記細孔の1つまたはそれ以上のサブユニットと;
(b)オリゴマー化する際に前記細孔の1つまたはそれ以上のサブユニットと;または
(c)オリゴマー化した細孔と結合する前記方法。
【請求項22】
個別のヌクレオチドを同定するための方法であって:
(a)前記ヌクレオチドが請求項1から13のいずれか1つに記載の細孔と相互作用するよう前記ヌクレオチドを前記細孔と接触させること;および
(b)前記相互作用中に前記細孔を通る電流を測定し且つそれにより前記ヌクレオチドの本性を決定することを含む前記方法。
【請求項23】
標的核酸配列を配列決定する方法であって:
(a)エキソヌクレアーゼを用いて前記標的配列の一方の末端より個別のヌクレオチドを消化すること;
(b)前記ヌクレオチドが前記アダプターと相互作用するよう前記ヌクレオチドを請求項1から14のいずれか1つに記載の細孔と接触させること;
(c)前記相互作用中に前記細孔を通る電流を測定し且つそれにより前記ヌクレオチドの本性を決定すること;および
(d)前記標的配列の同一末端において手順(a)から(c)を反復し且つそれにより前記標的配列の前記配列を決定することを含む前記方法。
【請求項24】
核酸の配列を決定するためのキットであって:
(a)請求項1から13のいずれか1つに記載の細孔または請求項14および15に定義される前記の7つのポリヌクレオチド;および
(b)エキソヌクレアーゼを含む前記キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−527191(P2011−527191A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517228(P2011−517228)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001690
【国際公開番号】WO2010/004273
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511005402)オックスフォード ナノポア テクノロジーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】