説明

塩壁構造

【課題】塩タイルを用いる塩壁構造として、目地部による塩の効能低下を生じず、壁面が強固で良好な外観が得られ、施工の大幅な省力化を実現し得るものを提供する。
【解決手段】壁基体1の一面側に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる多数枚の塩タイル2…が固着され、塩タイル2…同士の周縁間に構成される目地間隙3に、精製塩又は天然塩の粉末に水を加えた塩ペーストからなる目地材4が充填されて、乾燥固化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライゼーションルームや塩サウナ等の内壁部に適用する塩壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
温浴を利用するリクライゼーション施設として、サウナ、岩盤浴、温泉等が利用されているが、近年、塩の持つ遠赤外線効果や殺菌効果等に着目して、砂利状の岩塩を床に敷き詰めたり、塊状岩塩を積み上げて壁体を構成する(特許文献1)ことが行われている。一方、朝鮮半島では、内壁面に塩タイルを貼り付けた部屋にオンドルを組み合わせた、所謂塩サウナが古くから利用されている。また、本発明者は先に、塩サウナ等の内装材用として、精製塩や天然塩を加熱溶融して成形型内で冷却固化させた塩製パネル(塩タイル)を提案している(特許文献2)。
【0003】
そして、前記塩サウナの塩タイルは、正六角形の厚板状のものが多用されているが、壁躯体表面に相互に近接するように配列固着し、その周縁間の間隙を漆喰やパテ材で埋めて目地とするか、目地なしで密に配列固着するのが一般的である。
【特許文献1】特開2005−92514号公報
【特許文献2】特開2007−92514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記のように塩タイルの目地に漆喰や一般的なパテ材を用いると、その目地が異材質である分だけ塩の効能が低下することに加え、施工に非常に手間が係るという難点もある。一方、塩タイルを目地なしで密に配列固着する構成では、個々の塩タイルガ独立しているために外力や振動を受けた際に剥がれ易い上、タイル境界によって見栄えが悪くなると共に、タイル境界の間隙に塵埃が入り込んで汚れを生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の情況に鑑み、塩タイルを用いる塩壁構造として、目地部による塩の効能低下を生じず、壁面が強固で良好な外観が得られると共に、施工の大幅な省力化を実現し得るものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る塩壁構造は、壁基体1の一面側に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる多数枚の塩タイル2…が固着され、これら塩タイル2…同士の周縁間に構成される目地間隙3に、精製塩又は天然塩の粉末に水を加えた塩ペーストからなる目地材4が充填されて、乾燥固化してなる構成としている。
【0007】
請求項2の発明は、上記請求項1の塩壁構造において、目地材4が塩粉末/水の重量比3/7〜7/3の塩ペーストからなるものとしている。
【0008】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の塩壁構造において、塩タイル2が正六角形の厚板状であるものとしている。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの塩壁構造において、壁基体1が透明プラスチック板からなると共に、塩タイル2が乳白色半透明である構成としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る塩壁構造では、塩タイル2…同士の周縁間の目地も塩ペーストの乾燥固化物で構成されるから、タイル側の壁面全体が全て塩になり、もって遠赤外線効果や殺菌効果等の塩の効能を最大限に発揮できると共に、塩タイル2…と同質の白い目地によって外観も良好になる。しかも塩ペーストが同質の塩タイル2…に対して高い親和性を示すと共に、その乾燥固化によって強固な目地層を形成するため、目地部での高い密着性及び強度が得られ、もって塩タイル2…の全体が目地材4を介して一体化した状態になって強固な壁面を形成する。また、施工に際しては、壁基体1の一面側に塩タイル2…を所要の配列で固着したのち、塩タイル2…の表面を含む全体に塩ペーストを塗り付ける形で、該塩ペーストを目地間隙3に入り込ませ、その塗布表面を布やブラシ等で擦過して塩タイル2…の表面上の余剰の塩ペーストを除去する手法により、少ない労力で極めて迅速に作業を行える。
【0011】
請求項2の発明によれば、目地材4として塩粉末/水の重量比が特定範囲の塩ペーストを用いるため、該塩ペーストが適度な粘性で塗り付け易い上、乾燥固化後の目地層が高強度でひび割れしにくいものとなる。
【0012】
請求項3の発明によれば、塩タイル2が正六角形の厚板状をなすから、これら塩タイル2…を同じ向きとして全体に偏りなく配列できると共に、120度の各角部が他の2枚の塩タイル2,2間の120度に開いた間に入り込む形になって、縦横いずれの方向にもずれにくくなる。
【0013】
請求項4の発明によれば、壁基体1が透明プラスチック板、塩タイル2が乳白色半透明で、背面側からの光を塩タイル2…を通して淡い光として前面側へ放射できるから、背面側に適当な発光手段を設けてその発光を制御することにより、淡い光の映像による高いリクライゼーション効果を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る塩壁構造の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の塩壁構造を利用したリラクゼーションルームの縦断面図、図2は塩壁構造の正面図、図3は同塩壁構造の第一実施形態の断面図、図4は同塩壁構造の第二実施形態の断面図である。
【0015】
図1で示すリラクゼーションルームは、鉄筋コンクリート構造の建物躯体10の内側に、塩壁構造によって構成されるルーム本体11が配置しており、該建物躯体10とルーム本体10との間に当該ルーム本体11の全周囲にわたる伝熱空間12が形成されている。そして、ルーム本体11の周壁部11aの下部側から床壁部11bの全体にわたる領域に臨んで、該伝熱空間12内にパネルヒーター13が配設され、該パネルヒーター13と建物躯体10の内面との間に断熱材14が介在されている。また、伝熱空間12内には、取付フレーム15に支持された多数の3原色のLED発光素子16…が、ルーム本体11の全周囲にわたって配列されると共に、要所に音響設備17…が設置されている。18はLED発光素子16…及び音響設備17…の稼働を司る制御装置、19はLED発光素子16…の発光パターンと音響設備17…の音響パターンを設定する光音響設定装置である。
【0016】
ルーム本体11の全体、つまり周壁部11a及び床壁部11bと天井壁部11cは、ポリカーボネート等の透明性プラスチックからなる壁基体1の内面側に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる多数枚の塩タイル2…を固着した塩壁構造となっている。
【0017】
図2及び図3に示すように、各塩タイル2は、表面2aがムラ状の凹凸をなす正六角形の厚板状であり、周囲の隣接する塩タイル2…との間に一定幅の目地間隙3を置く配置状態で、浅い凹面状をなす背面2b側で両面接着材5を介して壁基体1に接着固定されている。また、塩タイル2の周面は室内側へ収束する緩傾斜のテーパ面になっている。そして、塩タイル2…間の目地間隙3には、塩ペーストからなる目地材4が充填されて、乾燥固化している。なお、図3で示しているのは第一実施形態の塩壁構造である。
【0018】
図4で示す第二実施形態の塩壁構造においては、各塩タイル2は、壁基体1に対して直接には接着されておらず、ポリカーボネートの如き透明性プラスチックからなる保持枠6に保持された形で、両面接着材5を介して壁基体1に接着固定されている。この保持枠6は、塩タイル2に対応した正六角形で、その各辺に一体形成した係止爪6a…が一面側へ突出しており、塩タイル2の背面側に当接した状態で、当該塩タイル2を係止爪6a…によって把持している。しかして、この場合にも、塩タイル2…は各々周囲の隣接する塩タイル2…との間に一定幅の目地間隙3を置くように配置し、その目地間隙3に塩ペーストからなる目地材4が充填されており、目地間隙3にある保持枠6の係止爪6a…が目地材4で隠された状態になっている。
【0019】
ここで、塩タイル2の溶融成形物は、精製塩又は天然塩の微粉末を融点(800.4℃)以上、好ましくは810〜830℃に加熱して溶融させ、この加熱溶融物を成形型内に流し込んで冷却固化させたものであり、乳白色半透明で岩塩のように硬い板体になっている。そして、この成形において、成形型の開放面側のタイル表面(使用時の背面2b)が冷却固化時の収縮に伴って浅い凹面状になる一方、成形型の底面側に接するタイル表面(使用時の表面2a)には同収縮に伴ってムラ状の凹凸を生じる。なお、このムラ状の凹凸とは、不規則でなだらかな凹凸を意味する。
【0020】
目地材4に使用する塩ペーストは、精製塩又は天然塩の微粉末に水を加えて混和したものであり、その水分比率によって粘度が異なるが、一般的には粉末/水の重量比3/7〜7/3の範囲、より好適には同重量比4/6〜6/4の範囲とするのがよい。
【0021】
しかして、このような塩ペーストは、乾燥固化した際にひび割れることなく強い塩層を形成すると共に、同じ塩材質である塩タイル2に対して高い親和性を示す。従って、第一及び第二実施形態の塩壁構造では、目地材4乾燥固化によって強固な目地層が形成され、その目地部での高い密着性及び強度が得られ、もって塩タイル2…の全体が目地材4を介して一体化した状態になって強固な壁面を形成する。
【0022】
また、このような塩壁構造の施工に際しては、壁基体1の一面側に塩タイル2…を所要の配列で固着したのち、塩タイル2…の表面を含む全体に塩ペーストを塗り付ける形で、該塩ペーストを目地間隙3に入り込ませ、その塗布表面を布やブラシ等で擦過して塩タイル2…の表面上の余剰の塩ペーストを除去する手法により、少ない労力で極めて迅速に作業を行える。なお、余剰の塩ペーストの塩ペーストについては、塩タイル2…も同じ塩であるため、完全に除去する必要はなく、塩タイル2の凹部等に一部が残留付着していても何ら差し支えない。
【0023】
図1に示すリラクゼーションルームにおいては、このような塩壁構造をルーム本体11の全周壁に適用していることから、伝熱空間12内のパネルヒーター13を駆動した際、該伝熱空間12内の空気を介してルーム本体11に伝わる熱が塩タイル2…及び目地材4を通して遠赤外線としてルーム内に放射され、入室者に心地よい温熱効果を与える。また、LED発光素子16…を様々なパターン及び色合い(3原色の混合による)で発光させることにより、その発光が乳白半透明の塩タイル2…を通してルーム内から淡い映像として視認されるため、入室者を視覚面からリラックスさせる大きな効果がある。しかして、このリラクゼーションルームでは、温熱効果と映像効果に加え、音響設備17…の稼働による音響効果を組み合わせることにより、非常に高いリラクゼーション作用が得られる上、ルーム本体11の内壁面全体が塩のみで構成されるため、ルーム内は細菌、黴、ウィルス等が繁殖する懸念のない完全な清潔空間となる。
【0024】
なお、第一及び第二実施形態の塩壁構造では、塩タイル2として正六角形のものを例示したが、該塩タイル2は三角形、四角形等の他の多角形、円形や楕円形等、種々の形態に構成できる。ただし、正六角形の塩タイル2では、それらを同じ向きとして全体に偏りなく配列できると共に、120度の各角部が他の2枚の塩タイル2,2間の120度に開いた間に入り込む形になって、縦横いずれの方向にもずれにくくなるという利点がある。一方、これら塩タイル2…の壁基体1に対する取付構造は、第一及び第二実施形態以外に種々設計変更可能である。また、本発明の塩壁構造は、図1で例示した以外の種々の構造のリクライゼーションルームや塩サウナ等の内壁部に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の塩壁構造を適用したリクライゼーションルームの縦断面図である。
【図2】同塩壁構造の一部の正面図である。
【図3】同塩壁構造の第一実施形態における断面図である。
【図4】同塩壁構造の第二実施形態における断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 壁基体
2 塩タイル
3 目地間隙
4 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体基体の一面側に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる多数枚の塩タイルが固着され、これら塩タイル同士の周縁間に構成される目地間隙に、精製塩又は天然塩の粉末に水を加えた塩ペーストからなる目地材が充填されて、乾燥固化してなる塩壁構造。
【請求項2】
目地材が塩粉末/水の重量比3/7〜7/3の塩ペーストからなる請求項1に記載の塩壁構造。
【請求項3】
塩タイルが正六角形の厚板状である請求項1又は2に記載の塩壁構造。
【請求項4】
壁基体が透明プラスチック板からなると共に、塩タイルが乳白色半透明である請求項1〜3のいずれかに記載の塩壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281023(P2009−281023A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133257(P2008−133257)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(503314716)
【Fターム(参考)】