説明

塩水淡水化装置

【課題】海水やかん水の淡水化において、高圧材料を使用する遮断弁の数量を削減することができる装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜モジュール2、高圧ポンプ1、エネルギー回収昇圧装置3、および、ブースターポンプ4を含み、かつ、一端が塩水供給ユニットに結合する塩水供給管路7、高圧ポンプ1に結合された第1の管路8、逆浸透膜モジュール2の塩水供給部に結合された第2の管路9、他端がエネルギー回収昇圧装置3に結合された第3の管路10、一端がエネルギー回収昇圧装置3に結合し、他端がブースターポンプ4に結合された第4の管路11、一端がブースターポンプ4に結合された第5の管路12、一端が逆浸透膜モジュール2の濃縮水導出部に結合された第6の管路13、濃縮水導出管路14、第7の管路15を含み、更に、洗浄水供給管路19を含む塩水淡水化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜モジュールを用いて塩水から淡水を得る塩水淡水化装置に関するものであって、詳しくは、該逆浸透膜モジュールを洗浄する洗浄水の供給方法に特徴を有する塩水淡水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜法による海水淡水化及びかん水淡水化は、相変化無しに塩分や有害物質を分離除去でき、運転管理が容易でエネルギー的に有利であることから、飲料用或いは工業用の淡水を取得する分野で利用されている。逆浸透膜の透過性、分離性の低下を防ぐために、通常、海水やかん水を逆浸透膜に供給する前に、砂ろ過、凝集沈殿、加圧浮上、精密ろ過膜と限外ろ過膜のろ過などの方法を用いて前処理を行う上で、さらに膜表面を定期的に洗浄する。
【0003】
膜表面の定期的な洗浄方法としては、亜硫酸水素ナトリウム、特殊な殺菌剤や硫酸による運転中の間欠洗浄に加え、一定期間の運転後に淡水化装置を停止させ、クエン酸による酸洗浄、及び、苛性ソーダによるアルカリ洗浄を行う定期洗浄などが挙げられる。
【0004】
間欠洗浄では、硫酸などの酸を間欠的に供給する殺菌方法が開発され(特許文献1)、多くのプラントで実用化されてきた。しかしながら、この間欠洗浄では、一時的に膜表面に付着した微生物層や金属イオンの析出物を除去することはできるが、間欠洗浄のみではこれら汚染物質の蓄積を完全に防止することはできず、いずれは設備を停止しての定期洗浄操作が必要となる。
【0005】
定期洗浄では、淡水化装置に併設され、洗浄水と洗浄薬品を混合及び備蓄する洗浄タンク、洗浄タンク内の洗浄水を該淡水化装置に送液するための洗浄ポンプ、及び、洗浄水中の粒子状物質を除去するためのフィルターから成る洗浄設備を用い、洗浄タンクにクエン酸又は苛性ソーダを投入し、クエン酸水溶液濃度1〜3%若しくは苛性ソーダ水溶液pH10〜12に溶解、希釈し、洗浄ポンプを用いて逆浸透膜モジュールに送液して行う。逆浸透膜を洗浄した洗浄水は、洗浄戻り配管を経由して洗浄タンクに循環する。
【0006】
逆浸透膜の透過原理から、海水またはかん水など、ある程度の塩分を含んだ供給水が逆浸透膜を透過するには、高圧ポンプなどを用いて供給水の圧力を浸透圧以上にする必要がある。浸透圧は塩分濃度と関係するが、例えば海水を逆浸透膜で分離する場合、最低30atm程度以上、実用性を考慮すると少なくとも50atm程度以上の圧力が必要となる。かん水の場合でも最低1atm程度以上の圧力が必要となる。従って、淡水化装置において、圧力の高い液体が通る部分すなわち、高圧ポンプと、高圧ポンプから逆浸透膜モジュールまでの配管と関連バルブ、及び逆浸透膜モジュールからの濃縮水の配管とバルブは、耐圧性のあるステンレス鋼を使用する。
【0007】
しかし、ステンレス鋼の耐腐食性には限界がある。金属の腐食に影響する因子は様々であるが、根本的には金属が持つ電位と関係する。環境によって金属表面には異なる皮膜が生成されるが、その皮膜の性質によって電位は影響を受ける。ステンレス鋼は、濃硫酸、濃硝酸、塩素イオンを含まない淡水と中性溶液、アルカリ性溶液では表面に不動態皮膜が形成され、性質が安定となり腐食しにくい。しかし、塩酸、希硫酸、海水の中では不動態皮膜が形成されない或いは不安定となるため、腐食が発生する。塩素イオンを含む海水が酸性である環境では、ステンレス鋼の腐食はさらに促進される。実際の海水淡水化プラントで、高圧配管に一番多く使われるステンレス鋼316Lと317Lが数ヶ月後で腐食し始めたという実例も多数報告されている(例えば、非特許文献1など。)。希硫酸に耐える目的で開発された、耐腐食性のより強い904Lなどのステンレス鋼の場合でも隙間腐食が起きている(非特許文献2)。電位の異なる金属同士の接触も腐食に大きく影響する。淡水化装置には、配管と配管、配管とポンプの接続部分や溶接部分が多く存在するが、これらの部位で隙間腐食や孔食がよく発生する。
【0008】
配管やポンプが腐食すると、前処理後の逆浸透膜への供給水の水質に悪影響を与えるだけでなく、場合によってはプラントを停止してメンテナンスする必要がある。よりメンテナンス性を高めるために、耐腐食性の極めて高い254SMOのような[ASTM A31254]や[UNS S31254]相当品のスーパー・オーステナイト・ステンレス鋼や二相ステンレス鋼などの高価な材質を採用するプラントも90年代中半から建設されている。しかし、これらの耐腐食性の高いステンレス鋼の価格は、通常316Lや317Lの2−3倍であるため、これらの耐腐食性の高いステンレス鋼を採用すると装置の設備費が高くなり、造水コストも高くなる。
【0009】
淡水化装置において、ステンレス配管の腐食問題を抑制しようとする試みはいくつか行われている。例えば特許文献2では、スーパー・オーステナイト・ステンレス鋼またはチタン材等の耐食性材質からなる筒状の耐食性配管と、この内部管体を覆って設けられた耐圧性配管を有する金属製の耐圧性外殻と、この外殻管体と前記内部管体との間に充填されるプラスチック・セメント材等からなるシーリング材とを備えたコンポジット構造の配管を提案している。こういうアイデアで作られた配管は安価で堅牢とは言えるが、配管製造工程が複雑であり、かつ配管性能の安定性を評価する必要があるなど、実用化までに解決すべき課題は多い。もう一つ配管腐食問題に注目した特許文献3では、ポリカルボン酸等の有機酸を被処理液に添加することにより高圧配管の腐食を抑制しようとする。しかし、有機酸を添加することにより配管腐食はある程度抑制されるとしても、薬品使用費がかかりコストアップになること、また廃水中の有機物濃度が上昇し、場合によっては再処理する必要があり環境への負担が高くなる等の弱点がある。
【0010】
洗浄設備と逆浸透膜設備とを接続する箇所については、できるだけ洗浄水の送液に抵抗となる機器を経由しないよう、逆浸透膜モジュールの直前から洗浄液体を注入し、洗浄タンクへの戻り配管は逆浸透膜モジュールの下流直後に接続(特許文献4)することが一般的である。そのため、洗浄液体注入箇所については、供給塩水と洗浄液体とを切り替える弁に、洗浄液体の戻り分岐箇所については、濃縮塩水と洗浄戻り液体とを切り替える弁に、それぞれ高耐圧性、及び高耐腐食性を有する弁を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−237555号公報
【特許文献2】特開2001−137671号公報
【特許文献3】国際公開WO02/080671号パンフレット
【特許文献4】特願平8−156747号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Fayyaz Muddassir Mubeen、IDA World Congress(2005):SP05−001
【非特許文献2】Jan O.Olsson、Malin M.Snis、IDA World Congress(2005):SP05−036
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、海水やかん水の淡水化装置において、比較的高価な高圧耐性の遮断弁の数量を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための本発明は、次の特徴を有するものである。すなわち、逆浸透膜モジュール、高圧ポンプ、エネルギー回収昇圧装置、および、ブースターポンプを含み、かつ、(a)一端が塩水供給ユニットに結合し、他端に第1の管路分岐部を有する塩水供給管路、(b)一端が前記第1の管路分岐部に結合し、他端が前記高圧ポンプに結合された第1の管路、(c)一端が前記高圧ポンプに結合し、他端が前記逆浸透膜モジュールの塩水供給部に結合された第2の管路、(d)一端が前記第1の管路分岐部に結合し、他端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合された第3の管路、(e)一端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合し、他端が前記ブースターポンプに結合され、かつ、前記エネルギー回収昇圧装置において、前記第3の管路に導通している第4の管路、(f)一端が前記ブースターポンプに結合し、他端が前記第2の管路に結合された第5の管路、(g)一端が前記逆浸透膜モジュールの濃縮水導出部に結合し、他端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合された第6の管路、(h)一端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合し、他端が第2の管路分岐部を有し、かつ、前記エネルギー回収昇圧装置において、前記第6の管路に導通している濃縮水導出管路、(i)一端が前記第2の管路分岐部に結合し、他端が濃縮水収集ユニットに結合された第7の管路を含み、更に、(j)一端が前記第2の管路分岐部に結合し、他端が前記塩水供給管路、あるいは、前記第3の管路に結合された洗浄水供給管路を含む塩水淡水化装置、である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逆浸透膜モジュールを用いて塩水から淡水を得る塩水淡水化装置において、塩水供給管路における切り替え弁、及び、濃縮水導出管路における切り替え弁として、耐塩水腐食性と耐圧力性を併せ持つ弁に換えて、耐塩水腐食性のみを有する安価な弁を適用できるため、塩水淡水化装置におけるコスト削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の塩水淡水化装置を示す実施例1に係るフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の塩水淡水化装置を示す実施例2に係るフローチャートである。
【図3】図3は、従来法の塩水淡水化装置を示す比較例に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を説明するために、まず、従来法の塩水淡水化装置における洗浄水供給管路の結合位置を比較例として、図3を以て説明する。
【0018】
塩水淡水化装置は主に、高圧ポンプ1、逆浸透膜(RO膜)からなる逆浸透膜モジュール2、エネルギー回収昇圧装置3、ブースターポンプ4、一端が塩水供給ユニットに結合し、他端に第1の管路分岐部20を有する塩水供給管路7、一端が第1の管路分岐部20に結合し、他端が高圧ポンプ1に結合された第1の管路8、一端が高圧ポンプ1に結合し、他端が逆浸透膜モジュール2の塩水供給部に結合された第2の管路9、一端が第1の管路分岐部20に結合し、他端がエネルギー回収昇圧装置3に結合された第3の管路10、一端がエネルギー回収昇圧装置3に結合し、他端がブースターポンプ4に結合され、かつ、エネルギー回収昇圧装置3において、第3の管路10に導通している第4の管路11、一端がブースターポンプ4に結合し、他端が第2の管路9に結合された第5の管路12、一端が逆浸透膜モジュール2の濃縮水導出部に結合され、他端がエネルギー回収昇圧装置3に結合された第6の管路13、一端がエネルギー回収昇圧装置3に結合され、他端が濃縮水収集ユニットに結合し、かつ、エネルギー回収昇圧装置3において、第6の管路13に導通している濃縮水導出管路14からなる。
【0019】
塩水淡水化装置を用いて塩水を淡水化するフローは、典型的には次に述べる通りである。塩水供給ユニットから導入された塩水が塩水供給管路7から流入し、第1の管路分岐部20を介して第1の管路8と第3の管路10とに分岐され、一部は第1の管路8に入り高圧ポンプ1により加圧され、残りは第3の管路10を経由してエネルギー回収昇圧装置3に流入し、エネルギー回収昇圧装置3の圧力交換作用により逆浸透膜モジュール2から第6の管路13を経由して排出される濃縮水の圧力を回収し、第4の管路11を経由して圧力昇圧用のブースターポンプ4に供給され、さらにブースターポンプ4の昇圧作用により第5の管路12から第2の管路9で上記高圧ポンプ1の排出水と合流し、逆浸透膜モジュール2の塩水供給部に供給される。
【0020】
逆浸透膜モジュール2に供給された塩水は、逆浸透膜法により透過水と濃縮水とに分離され、透過水は逆浸透膜モジュール2の透過水導出部より透過水導出管路16を介して回収され、濃縮水は逆浸透膜モジュール2の濃縮水導出部より第6の管路13を介して排出される。第6の管路13から排出された高圧の濃縮水はエネルギー回収昇圧装置3に流入し、その圧力が前述の通り第3の管路10より流入した塩水の昇圧に利用される。圧力を回収された低圧の濃縮水は濃縮水導出管路14を介して濃縮水収集ユニットへ流入する。
【0021】
なお、塩水供給ユニットから導入された塩水は、通常逆浸透膜モジュール2で処理される前に前処理されることが好ましく、本発明の塩水淡水化装置においても好ましく採用することができる。前処理設備が導入される位置は通常、塩水供給管路7内であり、図1〜3のいずれにおいても塩水供給管路7内に前処理設備が導入されている。
【0022】
ここで、前処理設備としては、精密膜ろ過或は限外膜ろ過、活性炭ろ過、保安フィルターなどが使用される。また、必要に応じ、殺菌剤、凝集剤、さらに還元剤、pH調整剤、スケール防止剤などの薬液添加を行うことができる。
【0023】
逆浸透膜モジュール2を洗浄するための洗浄設備は主に、洗浄タンク5、洗浄ポンプ6とこれら設備を接続する配管とバルブとからなる。図3においては、洗浄タンク5内で調整した洗浄液を、洗浄ポンプ行き管路18を経由して洗浄ポンプ6に供給し、洗浄ポンプ6で洗浄に必要な圧力まで加圧する。加圧された洗浄水は洗浄水供給管路19を経由して第2の管路9に供給される。洗浄水は逆浸透膜モジュール2を洗浄し、逆浸透膜モジュール2の濃縮水導出部より排出され、第6の管路13を介して洗浄水戻り管路17を経由して、洗浄タンク5に戻る。なお、本発明においては、便宜上、洗浄水戻り管路17、洗浄ポンプ行き管路18、洗浄水供給管路19をまとめて洗浄水供給管路19と呼ぶこともある。洗浄水を第2の管路9へ送り込む箇所には、洗浄水が高圧ポンプ1やブースターポンプ4に逆流しないように第1の遮断弁22を設けて、逆浸透膜モジュール2の洗浄時には閉止しておく。また、第6の管路13から洗浄水戻り管路17へと分岐する箇所には、洗浄水がエネルギー回収昇圧装置3を経由して第6の管路13に流出しないように第3の遮断弁24を設け、逆浸透膜モジュール2の洗浄時には閉止しておく。なお、通常運転時には、塩水や濃縮水が洗浄設備に流出しないよう、第2の遮断弁23及び第4の遮断弁25を設けるが、逆浸透膜モジュール2の洗浄時は開放しておく。
【0024】
ここで、図3の構成において、高圧材質からなる部分は、第2の管路9、第4の管路11、第5の管路12、第6の管路13、並びに、第1の遮断弁22、第2の遮断弁23、第3の遮断弁24、第4の遮断弁25と、図示しない関連バルブ類、高圧ポンプ1とブースターポンプ4、及びエネルギー回収昇圧装置3である。また、洗浄水供給管路19のうち、第2の遮断弁23以降の第2の管路9に接続するまでの部分、並びに、洗浄水戻り管路17のうち、第6の管路13の分岐点から第4の遮断弁25までの部分も高圧材質とする必要がある。
【0025】
低圧材質からなる部分は、塩水供給管路7、第1の管路8、第3の管路10、濃縮水導出管路14、透過水導出管路16、洗浄ポンプ行き管路18、第2の遮断弁23より上流側の洗浄水供給管路19、第4の遮断弁25より下流側の洗浄水戻り管路17と図示しない関連バルブ類である。
【0026】
よく用いられる高圧材質として各種のステンレス鋼がある。ステンレス鋼は耐圧性に加えて耐酸性を向上させるために鉄にクロム、ニッケル、モリブデン、窒素、銅などを含ませた合金鋼であり、その金属組織によりオーステナイト系(例えば304、304L、316、316L、317、317L、904L)とオーステナイト・フェライト系(例えば254SMO 、2205、2507、Zeron100、329)があり、本発明においてはこれらのどのステンレス合金鋼を使用してもよい。
【0027】
また、よく用いられる低圧材質として、各種のプラスチック材がある。プラスチック材には耐塩水腐食性を持つ塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエステルや、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン重合体等のフッ素樹脂があり、本発明においてはこれらのどのプラスチック材を使用してもよい。また、先述のプラスチック材を、塩水と鋼管が直接接触しないよう鋼管内面にライニング若しくはコーティングしたライニング鋼管を使用してもよい。また、先述の高圧材料として記載したステンレス鋼を低圧材料として用いてもよい。
【0028】
ここで、高圧ポンプ1とは、上記高圧材質を用いて作られたポンプで、様々な形式があるが、本発明においては目的の圧力と流量を得られるものであれば特に形式を限定するものではなく、例えばプランジャーポンプのようなピストンタイプのポンプ、渦巻ポンプ、遠心ポンプ、多段遠心ポンプなどを適宜目的に応じて用いることができる。
【0029】
本発明で言う塩水とは、塩分を含む水の総称であり、塩素イオン濃度が300から15,000mg/l程度の一般的にかん水と呼称する比較的低濃度の塩水や、塩素イオン濃度が15,000から40,000mg/l程度の一般的に海水と呼称する比較的高濃度の塩水などを指す。
【0030】
ここで、本発明に係る逆浸透膜モジュール2に使用される逆浸透膜とは、供給液の一部の成分、例えば塩分を透過させ他の成分を透過させない半透性膜である。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が使用できる。膜形態には中空糸膜、平膜などがある。本発明では、逆浸透膜の素材、膜形態によらず利用することができるが、特にポリアミドなど耐塩素性の弱い膜素材を用いる場合に本発明の効果が好ましく発揮できる。
【0031】
逆浸透膜エレメントとは上記逆浸透膜を実際に使用するための形態化したものであり平膜、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのエレメントに組み込んで、また中空糸膜は束ねた上でエレメントに組み込んで使用することができるが、本発明ではこれらの逆浸透膜エレメントの形態に左右されるものではない。
【0032】
逆浸透膜モジュールとは上述の逆浸透エレメント1〜数本を圧力容器の中に収めたモジュールを並列に配置したもので、その組合せ、本数、配列は目的に応じて任意に行うことができる。
【0033】
エネルギー回収昇圧装置は、一般に、高圧ポンプの吐出側から出る液体が直接エネルギー回収装置に流入する、いわゆる高圧ポンプ一体型と、供給水の一部が高圧ポンプに流入し残りの一部がエネルギー回収装置に流入する、いわゆる高圧ポンプ分離型に大きく分かれるが、本発明で使用されるエネルギー回収昇圧装置3は、塩水供給管路7から流入された塩水の一部が高圧ポンプ1に流入し、残りの一部がエネルギー回収昇圧装置3に流入する、先述の高圧ポンプ分離型のエネルギー回収昇圧装置である。エネルギー回収昇圧装置3の材質は各種のステンレス及び/またはセラミックス材質部品を含み、ステンレス材質としては前述の高圧配管と同様に304、304L、316、316L、317、317L、904L、254SMO、2205、2507、Zeron100、329など、セラミックス材質としてはアルミナ、酸化アルミ、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、窒化アルミなどが含まれる。
【0034】
ここでブースターポンプ4とは、上記高圧材質を用いて作られたポンプで、設計流量において、第5の管路12、第2の管路9と第5の管路12との合流点から逆浸透膜2に至る第2の管路9、逆浸透膜モジュール2、第6の管路13、エネルギー回収昇圧装置3の高圧流路、及び第4の管路11の圧力損失の合計と等しい揚程以上の能力を有すればよく、本発明においては上記の揚程と流量を得られるものであれば特に形式を限定するものではなく、例えばプランジャーポンプのようなピストンタイプのポンプ、渦巻ポンプ、遠心ポンプ、多段遠心ポンプなどを適宜目的に応じて用いることができる。
【0035】
逆浸透膜モジュール2の洗浄工程では、必ずしも洗浄水を洗浄タンク5に戻す必要はなく、洗浄水戻り管路17を経由せずに、そのまま排水されてもよい。また、洗浄水中の不純物を除去するために、フィルターを洗浄水戻り管路17、洗浄ポンプ行き管路18、洗浄水供給管路19のいずれかに設置してもよい。
【0036】
本発明では、図1と図2に示す実施形態(実施例)のように、濃縮水導出管路14に第2の管路分岐部21を設けて洗浄水戻り管路17と接続し、かつ洗浄水供給管路19を塩水供給管路7、あるいは、第3の管路10と接続することを特徴とする。このような構成とすることにより、第1の遮断弁22、第2の遮断弁23、第3の遮断弁24、第4の遮断弁25をそれぞれ低圧材質からなる管路に設置することになるため、塩水淡水化装置において使用される全ての遮断弁として低圧材料で作られた遮断弁を用いることができる。
【0037】
まず、図1の実施形態では、洗浄水供給管路19を塩水供給管路7に接続し、洗浄時に塩水供給管路7に洗浄水が逆流しないように第1の遮断弁22を塩水供給管路7の上流側に設けると共に、洗浄水戻り管路17を第2の管路分岐部21を介して濃縮水導出管路14に接続し、洗浄時に洗浄戻り水が濃縮水排水として流出しないように第3の遮断弁24を第7の管路15の上流側に設け、且つ通常運転時に塩水が洗浄水供給管路19に流出しないよう第2の遮断弁23を設けると共に、低圧濃縮水が洗浄水戻り管路17に流出しないよう第4の遮断弁25を設ける。この場合、第1の遮断弁22、第2の遮断弁23、第3の遮断弁24、第4の遮断弁25はいずれも低圧管路に接続することから、先述の低圧材料を用いた遮断弁とすることができる。
【0038】
次に、図2の実施形態では、洗浄水供給管路19を第3の管路10に接続し、洗浄時に塩水供給管路7に洗浄水が逆流しないように第1の遮断弁22を第3の管路10の上流側に設けると共に、洗浄水戻り管路17を第2の管路分岐部21を介して濃縮水導出管路14に接続し、洗浄時に洗浄戻り水が濃縮水排水として流出しないように第3の遮断弁24を第7の管路15の上流側に設け、且つ通常運転時に塩水が洗浄水供給管路19に流出しないよう第2の遮断弁23を設けると共に、低圧濃縮水が洗浄水戻り管路17に流出しないよう第4の遮断弁25を設ける。この場合も、第1の遮断弁22、第2の遮断弁23、第3の遮断弁24、第4の遮断弁25はいずれも低圧配管に接続することから、先述の低圧材料を用いた遮断弁とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1:高圧ポンプ
2:逆浸透膜モジュール
3:エネルギー回収昇圧装置
4:ブースターポンプ
5:洗浄タンク
6:洗浄ポンプ
7:塩水供給管路
8:第1の管路
9:第2の管路
10:第3の管路
11:第4の管路
12:第5の管路
13:第6の管路
14:濃縮水導出管路
15:第7の管路
16:透過水導出管路
17:洗浄水戻り管路
18:洗浄ポンプ行き管路
19:洗浄水供給管路
20:第1の管路分岐部
21:第2の管路分岐部
22:第1の遮断弁
23:第2の遮断弁
24:第3の遮断弁
25:第4の遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜モジュール、高圧ポンプ、エネルギー回収昇圧装置、および、ブースターポンプを含み、かつ、
(a)一端が塩水供給ユニットに結合し、他端に第1の管路分岐部を有する塩水供給管路、
(b)一端が前記第1の管路分岐部に結合し、他端が前記高圧ポンプに結合された第1の管路、
(c)一端が前記高圧ポンプに結合し、他端が前記逆浸透膜モジュールの塩水供給部に結合された第2の管路、
(d)一端が前記第1の管路分岐部に結合し、他端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合された第3の管路、
(e)一端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合し、他端が前記ブースターポンプに結合され、かつ、前記エネルギー回収昇圧装置において、前記第3の管路に導通している第4の管路、
(f)一端が前記ブースターポンプに結合し、他端が前記第2の管路に結合された第5の管路、
(g)一端が前記逆浸透膜モジュールの濃縮水導出部に結合し、他端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合された第6の管路、
(h)一端が前記エネルギー回収昇圧装置に結合し、他端が第2の管路分岐部を有し、かつ、前記エネルギー回収昇圧装置において、前記第6の管路に導通している濃縮水導出管路、
(i)一端が前記第2の管路分岐部に結合し、他端が濃縮水収集ユニットに結合された第7の管路を含み、更に、
(j)一端が前記第2の管路分岐部に結合し、他端が前記塩水供給管路、あるいは、前記第3の管路に結合された洗浄水供給管路を含む塩水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−115704(P2011−115704A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274295(P2009−274295)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】