説明

塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法

【課題】本発明は、生産性が優れ、不安定構造の生成を抑制することによる熱安定性の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂、特に、塩素含有量が65重量%以上の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行う塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものであり、特に、高耐熱用途に用いられる塩素含有量65重量%以上の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造において、生産性を維持しつつ、不安定構造の生成を極力抑制し、熱安定性に優れた樹脂を得るために反応を制御した塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、塩素化塩化ビニル系樹脂(以下、「CPVC」という。)は、塩化ビニル系樹脂(以下、「PVC」という。)を後塩素化して製造されている。CPVCはPVCの長所である難燃性、耐候性、耐薬品性などの特徴を有しつつ、且つ、PVCの欠点といわれる高温での機械的物性を向上させたものであり、有用な樹脂として多方面の用途に使用されている。
【0003】
即ち、CPVCはPVCの持つ、優れた難燃性、耐候性、耐薬品性などをそのまま有し、更に、PVCよりも熱変形温度が20〜40℃も高いので、PVCの使用可能な上限温度が60〜70℃付近であるのに対し、CPVCは100℃付近でも使用可能であり、耐熱パイプ、耐熱シート、耐熱工業板などに使用されている。
【0004】
CPVCの製造方法は、一般にPVCを水媒体中に懸濁させ、そこに光又は熱によるエネルギーを与え、塩素化する方法が用いられている。塩素化速度は、光エネルギー又は熱エネルギーを多く付与すると早くなるが、不安定構造の生成が促進され熱安定性に劣るという欠点があった。
【0005】
上記欠点を解消する為に、過酸化水素を用いることで反応速度を制御する方法が提案されている。例えば、密閉可能な容器内でポリ塩化ビニルを水性媒体中に懸濁させ、上記容器内を減圧した後、塩素を容器内に導入して90〜140℃の温度でポリ塩化ビニルを塩素化する方法であって、塩素化の過程で、反応中のポリ塩化ビニルの塩素含有量が60重量%以上に至った時点で、ポリ塩化ビニルに対し5〜50ppm/hrの速度で過酸化水素の添加を開始する事を特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2001−151815号公報
【0006】
しかしながら、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法は、製造するCPVCの塩素含有量に関係なく60重量%と一定の塩素含有量に達した時点で反応速度を制御しているため、より高耐熱用途に使用されるCPVC(例えば、塩素含有量が65重量%以上のCPVC)を製造する際には、塩素含有量が高くなるほど極端に反応速度が低下するため、生産性が著しく悪くなり熱安定性と生産性の両立が不充分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、生産性に優れ、不安定構造の生成を抑制することによる熱安定性の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂、特に、塩素含有量が65重量%以上の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法は、密閉可能な反応容器内で塩化ビニル系樹脂を水性媒体中に分散させ、反応容器内を減圧した後、塩素を容器内に導入して塩化ビニル系樹脂を塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことを特徴とする.
【0009】
本発明で使用されるPVCは、塩化ビニル単重合体若しくは塩化ビニルを主体(50重量%以上含む)とする、塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体である。
【0010】
上記塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0011】
上記PVCの平均粒子径は、小さくなると取扱が難しくなり、大きくなると塩素化反応に時間を要すため、100〜200μmが好ましい。又、PVCの平均重合度は、成型加工性に優れている500〜2000が好ましい。
【0012】
上記PVCの製造方法は、特に制限されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法が挙げられる。
【0013】
上記懸濁重合は、例えば、重合器に塩化ビニル系モノマー、水性媒体、分散剤及び重合開始剤を投入し、所定の重合温度に昇温して重合反応を行い、塩化ビニル系モノマーの重合転化率が70〜90重量%の所定の割合に達した後、冷却、排ガス、脱モノマーの処理を行い、PVCを含むスラリーを得、このスラリーを脱水、乾燥することによりPVCを得る。
【0014】
上記分散剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース類;部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、アクリル酸重合体、ゼラチン等の水溶性高分子;ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の水溶性乳化剤などが挙げられる。
【0015】
上記重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル化合物;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0016】
更に、塩化ビニルの重合に通常使用されている重合調整剤、連鎖移動剤、PH調整剤、帯電防止剤、架橋剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、スケール防止剤等が添加されてもよい。
【0017】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法においては、密閉可能な反応容器内で塩化ビニル系樹脂を水性媒体中に分散させ、容器内を減圧した後、塩素を反応容器内に導入して塩化ビニル系樹脂を塩素化する。
【0018】
上記反応容器としては、例えば、攪拌装置、加熱装置、冷却装置、減圧装置、光照射装置等が装備された密閉可能な耐圧容器が好ましい。
【0019】
PVCを塩素化するには、まず、密閉可能な反応容器内に、PVCと水性媒体を供給し、攪拌してPVCを水性媒体中に分散する。次に、反応容器内を減圧して酸素を除去し、塩素を反応容器内に導入してPVCを塩素化する。
【0020】
上記減圧は、酸素が多く存在すると塩素化反応の制御が妨害されるので、反応容器内の酸素の量が100ppm以下になるように減圧されるのが好ましく、塩素の供給は、少量になると塩素化反応の進行速度が遅く、多くなると反応が終了しても未反応の塩素が多量に残り経済的ではないので、反応容器内の塩素分圧が0.03〜0.5MPaになるように供給されるのが好ましい。
【0021】
塩素化は、光照射又は加熱することにより行われるが、加熱しながら光照射してもよい。光照射する場合の反応温度は40〜80℃が好ましく、加熱のみで塩素化する場合の反応温度は、反応温度が低くなると塩素化速度が低下し、高くなりすぎると塩素化反応と並行して脱塩酸反応が起こり、得られたCPVCが着色するようになるので、70〜140℃が好ましく、より好ましくは100〜135℃である。
【0022】
又、塩素化の際に、光照射する事無く、過酸化水素を添加してもよい。過酸化水素の添加量は、少なくなると塩素化の速度を向上させる効果が無くなり、多くなると得られたCPVCの耐熱性が低下するので、PVCに対して1時間当たり5〜500ppm添加されるのが好ましい。又、過酸化水素を添加した場合の反応温度は、過酸化水素を添加することにより塩素化速度が向上するので60〜140℃が好ましく、より好ましくは65〜110℃である。
【0023】
上記塩素化の速度は、光の照射量、反応温度及び過酸化水素の添加量により制御することができるが、遅くなると生産性が低下し、早くなると脱塩酸反応が起こり、得られたCPVCが着色し、耐熱性も低下するので、平均塩素消費速度(原料の塩化ビニル系樹脂1kg当たりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.05kg・PVC−kg・minになるように設定されるのが好ましい。
【0024】
そして、本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法においては、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行う。
【0025】
塩素消費速度の制御方法としては、上述したように、光の照射量、反応温度、過酸化水素の添加等が挙げられる。光照射は照射距離が長くなるに従いエネルギーが損失するため、光照射装置近傍のみで反応が進みやすく反応の均一化の維持が困難となり、これを克服するために攪拌効率を大幅に上げる必要があり、そのためには設備改造が必要である。又、光照射強度の増加には光照射装置の能力増強が必要となるが、光照射強度増加により設備の大型化もしくは光照射装置の増設が必要となるため容易に可変する事が困難であり、経済的ではない。
【0026】
又、反応初期より高温(PVCのガラス転移温度以上)にした場合には塩素化速度は速くなるが、同時にPVC自体の脱塩酸反応も生じ、熱安定性などに悪影響をきたさない範囲に設定する必要があるため、反応温度の制御範囲が狭くなる。又、高温に耐えうる反応容器、周辺設備の対応といった設備対応が多く発生し経済的ではない。
【0027】
過酸化水素を塩素化反応の触媒に用いた場合は、過酸化水素の濃度、添加スピードにより反応速度を制御できる。特に、過酸化水素は水媒体中に素早く均一に分散し、且つ、添加速度の可変はポンプなどにより容易に制御可能なので、塩素化の進行に合わせた制御に非常に適している。
【0028】
塩素化速度は塩素化の進行具合により同じ条件でも異なる。これは塩素化の進行に伴いPVC構造中、塩素が付加し易い箇所から優先的に反応が進行し、一定塩素含有量以上になった場合には構造上塩素を付加させるに必要なエネルギーが大きくなり、かつ不安定な塩素が脱塩酸するなど塩素付加以外の反応も同時に起こるなどより複雑な反応を伴うためである。
【0029】
このことから塩素化反応初期においては、通常光照射や加熱温度のみでも充分に塩化速度を高く維持することができるが、塩素化反応中期から後期にかけてはこれらのエネルギー源では不足となり塩素化速度が極端に遅くなることが知られている。これを補完するために過酸化水素などの過酸化物を触媒として添加することにより反応速度の向上を計ることが可能となる。
【0030】
塩素化反応初期において過酸化水素を投入した場合には、反応速度は当然通常以上に早くなり塩素化反応時間自体を短縮することは可能であるが、反応速度が速くなりすぎると発熱反応が起こり、通常塩素化反応後期に起こる脱塩酸反応などが初期から起こりやすくなることから二重結合や分岐といった不安定な構造を通常より多く有したCPVCとなり、最も重要な初期着色性や熱安定性といった性能が低下する。
【0031】
塩素化反応中期から後期にかけて、例えば、過酸化水素を添加することで反応速度を落とさないように制御可能となるが、添加しなかった場合には製品塩素含有量に達するまでの時間が長くなり生産性が大幅に悪化する。生産性を維持しようと加熱温度を上げた場合でもその効果は少なく、塩素化反応時間中に受ける熱履歴が大きくなることによる熱安定性が低下する。
【0032】
例えば、過酸化水素を添加することにより、塩素化の進行具合(塩素含有量)と塩素消費速度を制御し、生産性の向上、不安定構造の生成抑制、熱履歴受容の最小化等をはかり、熱安定性に優れたCPVCを得ることが可能となる。
【0033】
前述のCPVCの製造方法(例えば、特許文献1参照)では、塩素含有量が60重量%になった時点の塩素消費速度を制御することで生産性と初期着色性の改善を実施しているが、塩素含有量が65重量%以上の製品についても一様に適用させた場合には、熱安定性などの性能に対しては効果を発揮するが、生産性の面では塩素含有量が高くなるほどに低下している。これは反応速度の制御がCPVCの塩素含有量に関わらず一定に設定しているためである。
【0034】
本発明は、塩素化されているPVCの塩素含有率が、製造するCPVCの塩素含有率より5重量%手前及び3重量%手前の2段階で制御することにより、生産性を確保しつつ、不安定構造の発生を抑制した。
【0035】
即ち、CPVCの塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことにより、生産性が優れ、不安定構造の生成を抑制することにより熱安定性の優れたCPVCが得られる。
【0036】
上記CPVCの製造方法は、特に、塩素含有量が65重量%以上のCPVCを製造するのに適しているが、塩素含有量が高くなるほどに生産性が低下し、又、不安定構造が多く生成することによる熱安定性の低下も発生し、生産性と熱安定性を両立するためには、塩素化速度をより細かく制御することが必要となる。
【0037】
従って、最終塩素含有量が65重量%以上、70重量%未満のCPVCを製造する際には、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点から3重量%手前に達した時点までの塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を、0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲にて行うのが好ましい。
【0038】
又、塩素含有量が70重量%以上のCPVCを製造する際には、更に、生産性の低下が激しく、又、反応速度に関わらず不安定構造が生成する領域となるため、さらに熱安定性の低下が大きくなる。
【0039】
従って、最終塩素含有量が70重量%未満のCPVCを製造する際には、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を0.015〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を、0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲にて行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法の構成は上述の通りであり、生産性が優れ、不安定構造の生成を抑制することによる熱安定性の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂、特に、塩素含有量が65重量%以上の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
(実施例1)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000のPVC50重量部を供給し、攪拌してPVCをイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に100℃に昇温した。
【0042】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を320ppm(/時間)添加しながら塩素化反応を開始し、塩素化されたPVCの塩素含有量が62重量%になるまで反応を行った。
【0043】
塩素化されたPVCの塩素含有量が62重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を200ppm(/時間)に減少し、塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、塩素含有量が64重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppmに(/時間)減少し、塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、合計6.0時間塩素化して塩素含有量が67重量%のCPVCを得た。
【0044】
(実施例2)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000のPVC50重量部を供給し、攪拌してPVCをイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に100℃に昇温した。
【0045】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を320ppm(/時間)添加しながら塩素化反応を開始し、塩素化されたPVCの塩素含有量が66重量%になるまで反応を行った。
【0046】
塩素化されたPVCの塩素含有量が66重量%(5重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を300ppm(/時間)に減少し、塩素消費速度が0.016kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、68重量%(3重量%手前)に達した時に0.2重量%過酸化水素の添加量を200ppm(/時間)に減少し、塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進め、合計9.0時間塩素化して塩素含有量が71重量%のCPVCを得た。
【0047】
(比較例1)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000のPVC50重量部を供給し、攪拌してPVCをイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に100℃に昇温した。
【0048】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を320ppm(/時間)添加しながら塩素化反応を開始し、塩素化されたPVCの塩素含有量が60重量%になるまで反応を行った。
【0049】
塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が60重量%(7重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を150ppm(/時間)に減少し、塩素消費速度が0.005kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、8.0時間塩素化して塩素含有量が67重量%のCPVCを得た。
【0050】
(比較例2)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000のPVC50重量部を供給し、攪拌してPVCをイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に100℃に昇温した。
【0051】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を320ppm(/時間)添加しながら塩素化反応を開始し、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が60重量%になるまで反応を行った。
【0052】
塩素化されたPVCの塩素含有量が60重量%(11重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整してしながら塩素化を進め、5.8時間塩素化して塩素含有量が67重量%のCPVCを得た。
【0053】
(比較例3)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200重量部と平均重合度1000のPVC50重量部を供給し、攪拌してPVCをイオン交換水中に均一に分散させた後、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に100℃に昇温した。
【0054】
次いで、塩素を反応容器内に、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2重量%過酸化水素を320ppm(/時間)添加しながら塩素化反応を開始し、塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が60重量%になるまで反応を行った。
【0055】
塩素化されたPVCの塩素含有量が60重量%(11重量%手前)に達した時に、0.2重量%過酸化水素の添加量を150ppm(/時間)に減少し、塩素消費速度が0.005kg/PVC−kg・5minになるように調整して、塩素化を進め、18時間塩素化して塩素含有量が71重量%のCPVCを得た。
【0056】
得られたCPVC100重量部、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名「ONZ−100F」)1.5重量部、MBS系衝撃改質剤(カネカ社製、商品名「M511」)8重量部、アクリル系加工助剤(三菱レイヨン社製、商品名「メタブンレンP−550」)1重量部及びステアリン酸系滑剤(理研ビタミン社製、商品名「SL800」)0.5重量部よりなる樹脂組成物を195℃のロールでロールに巻き付き後3分間ロール混練した。得られたロールシートを用いて静的熱安定性試験である熱老化試験(200℃、10毎×140分)を実施し黒化するまでの時間(分)を測定した。
【0057】
得られたCPVC1gを10mlのガラス製試験管に取り、窒素気流下で190℃のオイルバス中で加熱し、CPVCから発生する塩酸を水中でトラップし、その水のpHを測定することにより、発生した塩酸量が5,000ppmに達するまでの時間を測定した。
各実施例及び比較例の塩素化の条件と、黒化時間及び脱塩酸時間を表1に示した。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な反応容器内で塩化ビニル系樹脂を水性媒体中に分散させ、反応容器内を減圧した後、塩素を容器内に導入して塩化ビニル系樹脂を塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
最終塩素含有量が65重量%以上、70重量%未満の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を、0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
最終塩素含有量が70重量%以上の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が、最終塩素含有量から5重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)が0.015〜0.020kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、その後、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を次第に低下させ、最終塩素含有量から3重量%手前に達した時点の塩素化を、塩素消費速度(原料塩化ビニル系樹脂1kgあたりの5分間の塩素消費量)を、0.005〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2006−328165(P2006−328165A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151932(P2005−151932)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000224949)徳山積水工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】