説明

塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体

【課題】本発明は、熱安定性、熱成形性等の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及びその塩素化塩化ビニル系樹脂組成物から得られた耐熱性、耐衝撃性等が優れ、熱歪みの少ない成形体を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部、塩素化ポリエチレン5〜20重量部、有機錫系熱安定剤1〜4重量部及び無機系安定剤2〜7重量部よりなることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、通常、水懸濁重合で製造されるので細孔を有する粒子(グレイン粒子)であり、その成形体は機械的強度、耐候性、耐薬品性等に優れており、且つ、他の熱可塑性樹脂に比較して安価なので給水配管等の多くの用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂は熱変形温度が低く、使用可能な上限温度が60〜70℃付近であるので、熱水を給排水する給湯管や耐熱性が要求される工業用途に使用することは困難であった。
【0004】
そこで、塩化ビニル系樹脂の高温下での耐久性を向上させるために、塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂が開発された。塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂の特性である機械的強度、耐候性、耐薬品性等を有すると共に耐熱性を有しており、機械的強度、耐候性、耐薬品性、耐熱性等の優れた中空状の給湯管、中実状の丸棒、六角棒、厚みのあるLフランジ等として広く使用されている。
【0005】
しかしながら、塩素化塩化ビニル系樹脂の成形体は、塩素化度が高くなるにしたがって、耐熱性が向上するかわり、熱成形性及び耐衝撃性が低下し、成形温度を高くしないと均一な成形体が得られず物性が低下する、搬送中や使用中に衝撃により割れが発生する等の欠点があった。
【0006】
上記耐衝撃性は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の衝撃改良剤を添加することにより改良されている。
【0007】
又、塩化ビニル系樹脂成形体の物性を充分発現させるためには、一般に、成形樹脂温度や金型温度を上昇させたり、金型内での滞留時間を長くする方法がとられているが、塩素化塩化ビニル系樹脂成形体の場合は、更に成形樹脂温度や金型温度を上昇させたり、金型内での滞留時間を長くする必要があり、塩素化塩化ビニル系樹脂が熱履歴を受け分解してロングラン性(連続成形性)が悪いという欠点があった。
【0008】
このような欠点を改良するには、塩素化塩化ビニル系樹脂そのものの熱安定性を改良する方法と塩素化塩化ビニル系樹脂に熱安定剤を添加する方法がある。塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性を改良するために、塩素化温度、塩素化時の圧力、過酸化水素の添加量、添加時期等種々の塩素化方法が検討されてきたが、塩素化の最適化だけで充分な熱安定性を有する塩素化塩化ビニル系樹脂を得ることはできなかった。
【0009】
又、熱安定剤を多量に添加して熱安定性を改良すると、ロングラン性は改良されるが、熱安定剤として、錫系熱安定剤等の液体熱安定剤や使用温度領域で溶融する有機熱安定剤を添加すると得られた成形体の耐熱性が低下するという欠点があった。
【0010】
これらの欠点を解消するために、塩素化塩化ビニル系樹脂に塩素化ポリエチレンを添加することが検討されている。例えば、塩素含有率が55〜70質量%の塩素化ポリ塩化ビニル50〜80質量%とポリ塩化ビニル20〜50質量%との混合物である塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、アルキル錫メルカプト等の錫系安定剤1〜2質量部、塩
素化ポリエチレン3〜5質量部、メチルメタアクリレート・ブタジエン・スチレン系共重合体(以下MBS)またはアクリレート系共重合体(以下アクリルゴム)からなる衝撃改良剤5.5〜7.5質量部、[Mg1-x Alx (OH)2 (CO3 x/2 ・mH2 O](前記化学式において、xは0.2〜0.35、mは0〜0.5を示す)を主成分とするハイドロタルサイトまたは置換A型ゼオライトである安定化助剤0.3〜1質量部からなることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−292712号公報
【0011】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂組成物は、外観が良好で優れた物性値、優れた熱安定性を有する成形品を高い連続成形安定性と生産性で得られると記載されているが、ポリ塩化ビニル20〜50質量%と多量に含まれているので耐熱性を要求される工業用途には使用できない。
【0012】
又、中実のLフランジ、角棒、丸棒等の工業用途の成形体は、成形後、外側から冷却されていくが、塩素化塩化ビニル系樹脂製であり、中実であるので、熱伝導率が低く中央部が充分に冷却されるのに時間がかかるため、パイプに比較し長時間高温に曝されることになり、高度な熱安定性が要求されるが、上記塩素化塩化ビニル系樹脂組成物では不充分であった。
【0013】
尚、成形体を水等で急冷することは可能であるが、急冷すると成形体の内部と外部で温度差が生じて成形体に歪みが発生したり、成形時にヒケたり、二次加工時の切削なので変形し、切削が困難になるという欠点が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、熱安定性、熱成形性等の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及びその塩素化塩化ビニル系樹脂組成物から得られた耐熱性、耐衝撃性等が優れ、熱歪みの少ない成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部、塩素化ポリエチレン5〜20重量部、有機錫系熱安定剤1〜4重量部及び無機系安定剤2〜7重量部よりなることを特徴とする。
【0016】
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを主体とする重合体であれば、従来公知の任意の樹脂が使用でき、例えば、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルを主成分とする塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、塩化ビニル以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト重合体が挙げられる。これらは単独で使用されても良く、2種類以上が併用されてもよい。
【0017】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、反応性二重結合を有し、ラジカル重合開始剤により塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイ
ミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。これらのその他の共重合性モノマーは、単独で使用されても良いし、2種類以上が併用されてもよい。
【0018】
上記塩化ビニル以外の重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は,小さくなると成形体の機械的物性が低下し、大きくなると熱成形性が低下するので600〜2000が好ましく、より好ましくは600〜2000である。
【0020】
尚、上記平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する
【0021】
本発明で使用される塩素化塩化ビニル系樹脂は、上記塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂である。
【0022】
塩化ビニル系樹脂の塩素化は、一般に水懸濁下で光照射及び/又は加熱することにより行われているが、光照射により塩素化すると得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の耐熱性が低下するので、本発明においては光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂を使用する。
【0023】
光照射することなく塩化ビニル系樹脂を塩素化して塩素化塩化ビニル系樹脂を製造する方法は従来公知の方法である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2000−119333号公報
【0024】
上記塩化ビニル系樹脂の塩素化反応を90℃未満で行ったのでは塩素化反応の速度が低くなり、塩素化に長時間を要し、従って実用に即せず、逆に塩素化反応を140℃を越えた温度で行ったのでは、塩素化とともに脱塩酸反応が起こり、得られる塩素化塩化ビニル系樹脂が着色するので、塩素化反応温度は90〜140℃が好ましい。
【0025】
又、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は高くなると、塩素化塩化ビニル系樹脂成形体を熱成形する際に成形性が低下し、成形体表面にムラが発生するようになり、又、成形体の耐衝撃性、表面平滑性等が低下し、逆に、低くなると耐熱性が低下するので、60.0〜72.0重量%であり、好ましくは65.0〜70.0重量%である。
【0026】
本発明で使用される塩素化ポリエチレンは、ポリエチレンの塩素化物であり、その重量平均分子量は、小さくなると成形体の衝撃強度が低下し、大きくなると成形体の衝撃強度改善の効果が発現されないので、50,000〜400,000が好ましく、より好ましくは150,000〜350,000である。尚、上記重量平均分子量は、GPCで測定されたポリスチレン換算値である。
【0027】
又、上記塩素化ポリエチレンの塩素化度は、低くなると耐熱性が低下し、成形体の外観がわるくなり、高くなると塩素化塩化ビニル系樹脂との相溶性が低下して成形性の改善効
果が低下するので、30〜55重量%が好ましい。
【0028】
更に、塩素化ポリエチレンの残存結晶化度は、塩素化塩化ビニル系樹脂の成形性への影響が大きく、大きくなると塩素化分布に偏りが発生して成形性改良効果及び物性が低下するため、20重量%以下が好ましい。
【0029】
上記塩素化ポリエチレンの塩素化反応は、通常、80〜120℃の範囲で行われ、残存結晶化度は、ポリエチレンを塩素化する際の反応温度により調整でき、高温にすると残存結晶は減少する。尚、残存結晶化度は、示差走差熱量分析計(DSC)を使用して、ポリエチレン融点付近のピークの融解熱量を測定することにより算出される。
【0030】
上記塩素化ポリエチレンの添加量は、少なくなると成形性改良効果が発現せず、多くなるとゲル化が抑制されて機械的物性が低下するので、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。
【0031】
本発明で使用される有機錫系熱安定剤は、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている錫系熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、アルキル錫メルカプト化合物、アルキル錫マレート 化合物、アルキル錫ラウレート化合物等が挙げられ、具体的にはジブチル錫メルカブト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ブチル錫メルカプトポリマー、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記錫系熱安定剤の添加量は、少ないと熱安定性が悪くなり、多いと耐熱性が低下するので、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜4重量部である。
【0033】
本発明で使用される無機系熱安定剤は、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている無機系熱安定剤であれば、特に限定されないが、ゼオライト類及びハイドロタルサイト類が好ましく、これらの群から選ばれた1種又は2種以上が併用されるのが好ましい。
【0034】
上記ゼオライト類としては、天然に産するゼオライト及び合成ゼオライトが挙げられ、このなかでも、A型ゼオライトが成形加工時に発泡を生じにくいため好ましい。
【0035】
上記ハイドロタルサイト類としては、[Mg1-X AlX (OH)2 (CO3 X/2 ・mH2 O]を主成分とする化合物が挙げられる(上記式でxは0.2〜0.35、mは0〜0.5である。)。ハイドロタルサイト類の平均粒子径は0.1〜3μmのものが好ましく使用される。
【0036】
上記無機系熱安定剤の添加量は、塩素化塩化ビニル系樹脂成形体を中実状成形体の場合には、少ないと熱安定性が悪くなり、分解し、多いと衝撃性が低下するので、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、2〜7重量部である。
【0037】
請求項2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部、塩素化ポリエチレン5〜20重量部及び鉛系熱安定剤1〜5重量部又は鉛系熱安定剤1〜5重量部と無機系安定剤2〜7重量部よりなることを特徴とする。
【0038】
本発明で使用される鉛系熱安定剤は、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている鉛系熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、三塩基性硫酸鉛、四塩基性硫酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、塩基性亜硫酸亜燐酸等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記鉛系熱安定剤の添加量は、少ないと熱安定性が悪くなり、多いと成形体の機械的物性が低下するので、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜5重量部である。
【0040】
本発明においては、上記鉛系熱安定剤は単独で添加されてもよいし、鉛系熱安定剤1〜5重量部と無機系安定剤2〜7重量部が併用されてもよい。
【0041】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物は、上記塩素化塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリエチレン、有機錫系熱安定剤及び無機系熱安定剤、若しくは、上記塩素化塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリエチレン、鉛系熱安定剤単独又は鉛系熱安定剤と無機系熱安定剤の併用系からなるが、塩素化塩化ビニル系樹脂成形体を成形する際に一般に添加されている配合剤が、本発明の目的を損なわない範囲内で添加されてよく、配合剤としては、例えば、安定化助剤、加工助剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、無機充填剤、可塑剤等が挙げられる。
【0042】
上記安定化助剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている安定化助剤であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている加工助剤であれば、特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記加工助剤の添加量は特に限定されないが、多すぎるとコストアップにつながり、少なすぎると安定して塩素化塩化ビニル系樹脂成形体の平滑性やムラを良好に保ちにくいことから、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜2.5重量部である。
【0045】
上記滑剤としては、上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤とは、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を低下させ、摩擦発熱を防止する目的で使用されるものであり、具体的には、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記外部滑剤とは、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用されるものであり、具体的には、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記酸化防止剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている酸化防止剤であれば、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記光安定剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記紫外線吸収剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている紫外線吸収剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記帯電防止剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている帯電防止剤であれば、特に限定されず、例えば、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記顔料としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている顔料であれば、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記無機充填剤としては塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている無機充填剤であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
請求項5記載の塩素化塩化ビニル系樹脂成形体は、請求項1〜4のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を熱成形したことを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂成形体である。
【0055】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の成形方法は、従来公知の任意の製造方法が採用されてよく、上記塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及び必要に応じて上記配合剤よりなる塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を、例えば、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等のミキサーで混合した後、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等の成形方法で成形する方法が挙げられる。
【0056】
上記押出成形に使用する成形機も、従来公知の任意の押出機が採用されてよく、例えば、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、二軸同方向押出機等が挙げられる。
【0057】
又、上記成形機を用いて成形する際の賦形する金型、樹脂温度、成形条件等も特に限定されるものではない。
【0058】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の構成は上述の通りなので、押出成形することにより、中実のLフランジ、角棒又は丸棒である成形体が得られる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の構成は上述の通りであるから、熱安定性、熱成形性等が優れており、連続成形性が優れている。又、その結果、中実のLフランジ、角棒、丸棒等の成形体を好適に成形することができる。
【0060】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物から得られた成形体は、耐熱性、耐衝撃性等が優れ、熱歪みが少ないので工業用用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明を更に詳しく説明するために、実施例を挙げて説明するが、下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
塩素化塩化ビニル樹脂P−1の調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に、平均重合度1050の塩化ビニル樹脂40重量部と水性媒体160重量部を供給し、撹拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させた。その後、反応槽内を加温して槽内を100℃に保った。
【0063】
次いで、反応槽内に窒素ガスを吹き込み、槽内を窒素ガスで置換した後、反応槽内に塩素ガスを吹き込み、光照射することなく塩化ビニル樹脂の塩素化を行った。反応槽内の塩酸濃度を測定することにより塩素化反応の進行をモニターしながら塩素化反応を続け、生成した塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率が67.3量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。
【0064】
次に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂を水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、水で洗浄し脱水、乾燥して粉末状の塩素含有率67.3重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0065】
塩素化塩化ビニル樹脂P−2の調製
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率が69.5量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した以外は上記と同様にして、粉末状の塩素含有率69.5重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0066】
塩素化塩化ビニル樹脂P−3の調製
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率が66.0量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した以外は上記と同様にして、粉末状の塩素含有率66.0重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0067】
塩素化塩化ビニル樹脂P−4の調製
塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率が68.5量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した以外は上記と同様にして、粉末状の塩素含有率68.5重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0068】
塩素化塩化ビニル樹脂P−5の調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に、平均重合度1050の塩化ビニル樹脂40重量部と水性媒体160重量部を供給し、撹拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−78.4kPaになるまで
減圧した。次に、窒素ガスを供給しゲージ圧が0になるまで圧戻しを行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応器内を加温した。
【0069】
反応槽内の温度が70℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、水銀ランプにより槽内を紫外線で照射しながら反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から反応機内の塩化ビニル樹脂の塩素含有率を計算し、塩素化含有率が67.4重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。
【0070】
更に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂を水で洗浄し、脱水・乾燥して粉末状の塩素含有率67.4重量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0071】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1に示した所定量の塩素化塩化ビニル樹脂(P−1、P−2、P−3、P−4、P−5)、塩素化ポリエチレン(ダイソー社製、商品名:JMR135C、重量平均分子量200000、塩素化度35重量%、残存結晶化度0重量%)、オクチル錫メルカプト(三共有機合成社製、商品名:ONZ−7F)、ブチル錫メルカプトポリマー(三共有機合成社製、商品名:STANN OMF)、ゼオライト(水澤化学社製、商品名:ミズカライザーDS)、三塩基性硫酸鉛(堺化学社製、商品名:TL−7000)、MBS樹脂(カネカ社製、商品名:B−56)、ポリエチレンワックス(三井化学社製、商品名:Hiwax220MP)及びエステル系ワックス(コグニス・ジャパン社製、商品名:VPN−960)をヘンシェルミキサーに供給し、室温から120℃まで昇温しながら混合した後、クーリングミキサーで45℃まで冷却して塩素化塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0072】
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を195℃のミキシングロールで3分間混練してロールシートを得た。得られたロールシートを200℃、200kg/cm2 で3分間予熱し3分間プレスして厚さ3mm及び1mmのプレートを得た。
【0073】
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を、中実用金型が設置されている二軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製、商品名:SLM50)に供給し、直径12mmの丸棒の成形体を得た。尚、中実用金型の樹脂流動面はクロムメッキされており、出口部の外半径は11.66mmであり、D1は190℃、D2は205℃、D3(先端平行部)は205℃に設定した。又、押出スクリューの回転数は20〜25rpmであり、押出量は25kg/h、金型入口部の樹脂温度は200℃であった。
【0074】
得られたロールシート、プレート及び丸棒成形体を使用し、熱安定性、アイゾット衝撃性、耐熱性及び応力緩和を測定し、その結果を表1に示した。尚、測定方法は下記の通りである。
【0075】
(1)熱安定性
得られたロールシートを切断して4×5cmの試験片を作成し、200℃のギアオーブンに供給した。10分間隔で取り出し、試験片の発泡状態を目視で観察し、発泡するまでの時間を測定した。発泡するまでの時間が120分以上のものを○、120分未満のものを×とし、発泡時間と共に表1に示した。
【0076】
(2)アイゾット衝撃性
得られた丸棒成形体から試験片を切り出し、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃試験を行った。アイゾット衝撃値が88.3J/m以上のものを○、88.3J/m未満のものを×とし、アイゾット衝撃値と共に表1に示した。
【0077】
(3)耐熱性
得られた厚さ3mmのプレートを切削して試験片を作成し、90℃×24時間のアニール処理を行った後、ASTM D648に準拠してHDTを測定した。HDTが100℃以上のものを○、100℃未満のものを×とし、HDTと共に表1に示した。
【0078】
(4)応力緩和
得られた厚さ1mmのプレートを切削して直径25mmの円形試験片を作成し、レオメトリックス ダイナミックス スペクトロメーター(RHEOMETRICS FAREAST LTD.社製、商品名:RDAー700)に供給し、温度200℃、歪0.5%の条件で初期応力が半分になった時間を測定した。応力緩和が早いと歪みが少ないことが知られているので、測定時間が0.25秒未満のものを○、0.25秒以上のものを×とし、測定時間と共に表1に示した。
【0079】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部、塩素化ポリエチレン5〜20重量部、有機錫系熱安定剤1〜4重量部及び無機系安定剤2〜7重量部よりなることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂を水懸濁下で光照射することなく塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂であって、塩素含有率が60〜72重量%の塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部、塩素化ポリエチレン5〜20重量部及び鉛系熱安定剤1〜5重量部又は鉛系熱安定剤1〜5重量部と無機系安定剤2〜7重量部よりなることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
塩素化ポリエチレンの重量平均分子量は50,000〜400,000、塩素化度は30〜55重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
無機系安定剤が、ゼオライト類及びハイドロサルタイト類からなる群から選ばれた1種以上の無機系安定剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を熱成形したことを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂成形体。
【請求項6】
成形体が、中実のLフランジ、角棒又は丸棒であることを特徴とする請求項5記載の塩素化塩化ビニル系樹脂成形体。

【公開番号】特開2006−199801(P2006−199801A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12144(P2005−12144)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000224949)徳山積水工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】