塩素含有有機物の分解処理方法
【課題】環境に悪影響を与えず、処理作業が容易であり、かつ低コストにて塩素含有有機物を効率的に分解する。
【解決手段】1M以上のアルカリ性水溶液に塩素含有有機物を入れる工程と、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。
【解決手段】1M以上のアルカリ性水溶液に塩素含有有機物を入れる工程と、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンによる塩素含有有機物の分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自然界中に存在する残留性有機汚染物質の処理方法として、焼却、セメント固化、化学分解、洗浄等の処理方法が提案されている。しかし、まだ、効率的な処理方法は確立されていない。焼却処理には、塩化水素が発生するだけではなく、不完全な焼却処理の過程で発生するダイオキシンが排ガス中に含まれて、それが広範囲に拡散するという問題がある。また、セメント固化処理は、セメント内に塩素含有有機物を封じ込めているので、長時間が経過すると、塩素含有有機物がセメント内から溶出する危険性を有する。したがって、セメント固化処理は、必ずしも安全な処理方法とは言えない。また、洗浄剤による洗浄処理は、洗浄剤の選択および洗浄後の水処理が難しいという問題がある。
【0003】
このような問題に鑑み、塩素含有有機物の分解処理方法として、オゾンと過酸化水素などの酸化剤を用いる促進酸化処理法の適用が検討されている。促進酸化処理とは、オゾンや過酸化水素などの酸化剤と紫外線を用いて最も強力な活性酸素であるヒドロキシルラジカルを発生させ、これによって塩素含有有機物を酸化分解する方法である(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
さらに、従来行われている過酸化水素存在下における残留性有機汚染物質のオゾン処理法に比べより少ない薬品添加量で、残留性有機汚染物質を処理する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開2004−057934号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平09−141276号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩素含有有機物を分解処理する際、環境の安全性を考慮すると、オゾンを用いた促進酸化処理において、通常、反応溶媒として水が用いられる。
【0006】
しかし、当該促進酸化処理には、塩素含有有機物を投入した溶液中へのオゾンの溶解量が少ないという問題がある。このため、オゾンが溶液中の塩素含有有機物との反応に使われるのは、その一部であって、残りの大部分は、ガスとして溶液から出る。この結果、オゾンが大気中に拡散するのを抑制できない。
【0007】
また、塩素含有有機物を十分に分解処理しようとする場合、極めて長時間が必要である。このため、オゾンを発生させ続けるため、オゾン発生装置に必要な電力が多くなる。さらに、紫外線発生装置が必要となるため、コストが高くなるという問題もある。また、塩素含有有機物に対して、直接オゾンを作用させるため、オゾンによる酸化処理された混合水溶液中には、一般的に、0.1〜数mg/lの残留オゾンが含まれる。従って、オゾン処理溶液中の残留オゾンを何らかの方法で除去することが必要になる。一般的なオゾンの除去方法として、亜硫酸ソーダなどの還元剤による方法、曝気によるストリッピング方法、あるいは長時間滞留させる方法などがある。しかしながら、上記何れの除去方法でも、薬剤が必要となり、作業の効率性や歩留まり等を考慮すると、効果的な処理方法とは言えない。
【0008】
また、塩素含有有機物をオゾンにより分解処理する場合、塩酸が生成する。このため、オゾンによる分解処理は、時間の経過に伴い、溶液を酸性に変化させ、pHが小さくなる。これにつれ、プロトンの付加が起こり、分解処理をいっそう非効果的にする。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、環境に悪影響を与えず、処理作業が容易であり、かつ低コストにて塩素含有有機物を効率的に分解することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、1M以上のアルカリ性水溶液に塩素含有有機物を入れる工程と、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。
【0011】
このように、オゾンの分解処理の際に、濃厚なアルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合溶液にオゾンを入れるので、オゾンは、迅速に自己分解し、オゾンの分解過程で様々な中間活性イオンあるいは分子を生成する。ここで、オゾンの自己分解により発生する中間体、HO2−、O3−、O2−などのイオンあるいはOH等のヒドロキシラジカル分子を、オゾンに由来するイオンあるいは分子と定義する。
【0012】
オゾンの分解速度は、アルカリ性水溶液のOH−濃度に比例するため、混合水溶液のpHが高いほど、オゾンの分解速度は大きくなる。しかも、オゾンの分解により生成する反応活性なマイナスイオンの多くは、アルカリ性が強くなるほど安定化する。このため、アルカリ性水溶液の濃度を1M以上とすることにより、オゾンによる分解処理能力を高めることができる。また、濃厚なアルカリ性水溶液の中で、塩素含有有機物を分解処理することにより、生成した塩酸が中和される。このため、pHをアルカリ性に維持することができ、オゾンによる分解機能は失われない。従って、オゾンによる塩素含有有機物の分解処理を安定して行うことができる。また、紫外線発生装置を用いなくても分解処理効率を向上させることができ、かつ、処理水溶液中にオゾンが残留するという問題も生じない。
【0013】
また、別の本発明は、先の発明において、無機物との混合物または無機物に付着した状態である塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、土壌に塩素含有有機物が含まれている場合には、その土壌ごと分解処理に使用することができる。
【0014】
また、別の本発明は、先の各発明に加えて、さらに、有機溶媒を添加する工程を有し、無機物と塩素含有有機物とを分離させ、塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、有機溶媒により、無機物(土壌)等の固体物に付着あるいは混合している塩素含有有機物が剥離し、混合水溶液中にてオゾンの作用を効果的に受ける。従って、塩素含有有機物のオゾンによる分解処理をより促進することができる。なお、有機溶媒はオゾンを消費するため、添加する有機溶媒は必要最小限度の量とする方が好ましい。
【0015】
また、別の本発明は、さらに、先の各発明に加えて、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物とを少なくとも含む溶液に超音波を与え、塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、超音波が混合溶液に伝わることにより、無機物(土壌)等の固体物に付着あるいは混合している塩素含有有機物が剥離し、混合水溶液中にてオゾンの作用を効果的に受ける。従って、塩素含有有機物のオゾンによる分解処理をより促進することができる。
【0016】
また、別の本発明は、先の各発明において、塩素含有有機物をPCBとする場合に、アルカリ性水溶液を、8M以上の水酸化ナトリウム水溶液とする塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、PCBをより効果的に分解処理できる。
【0017】
本発明の分解処理方法において、分解対象となる塩素含有有機物としては、例えば、DDT、BHC、エンドリン、PCB、スポルタック、トリフミン、ダイオキシン類の他、クロロホルム、四塩化炭素に代表される塩素系有機溶媒などを挙げることができ、特に、本発明の分解処理方法は、DDT、BHC、エンドリンを処理するのに適している。ただし、上述の分解対象物は一例に過ぎず、他の物質を処理しても良い。
【0018】
本発明の分解処理方法に用いられるアルカリ性水溶液は、NaOH水溶液、KOH水溶液あるいはこれらの混合物を好適に用いることができ、特にNaOH水溶液を用いるのがより好ましい。ただし、上述のアルカリ性水溶液は一例に過ぎず、他のアルカリ性水溶液を採用しても良い。
【0019】
また、本発明の分解処理方法において選択的に用いられる有機溶媒としては、例えば、エタノール、アセトン、クロロホルム、メタノール、メチルエチルケトン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、一種を単独で用いあるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。好ましくは、エタノール、アセトン、クロロホルムを用いる。ただし、エタノール、アセトン、クロロホルム以外の他の有機溶媒を採用しても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環境に悪影響を与えず、処理作業が容易であり、かつ、低コストにて、塩素含有有機物を効率的に分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る塩素含有有機物の分解処理方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1は、塩素含有有機物の分解処理を行う分解処理システムの概略図である。
【0023】
この分解処理システム1は、塩素含有有機物を入れる処理容器10と、オゾン発生装置20と、オゾン注入管30と、超音波発振機40とを備えている。
【0024】
処理容器10は、透明なガラス製のシリンダーの形態を有している。ただし、処理容器10は、ガラス製のビーカー、金属製若しくは樹脂製の容器の他、攪拌機等を備えた攪拌混合槽、スタティックミキサー、インラインミキサー等の混合機能を有する容器であっても良い。
【0025】
オゾン発生装置20は、放電作用を利用して取り込んだ空気または酸素の一部若しくは全部をオゾンに変化させ、オゾンを発生させる装置である。ただし、電解、光照射等を利用してオゾンを発生させるオゾン発生装置を用いても良い。
【0026】
オゾン注入管30は、一方をオゾン発生装置20と接続されると共に、他方を処理容器10の底近傍まで挿入されている。オゾン注入管30は、酸またはアルカリ性の溶液に対する耐蝕性を有する材料で構成されている方が好ましく、ガラス、耐蝕性の高い樹脂若しくは金属、あるいはセラミックス製の材料で構成されているものを好適に使用できる。処理容器10に挿入したオゾン注入管30の先端には、1つの小さな穴を有するオゾン注入口50が設けられている。ただし、かかるオゾン注入口50の代わりに、複数個のより小さな穴を設けても良い。
【0027】
超音波発振機40は、処理容器10の下方に配置され、発振された超音波を処理容器10内部の溶液に伝えるための装置である。超音波発振機40を用いることにより、処理容器10内部の溶液の混合を促進することができる。なお、処理容器10に攪拌手段(例えば、電動の攪拌羽根)を備える場合には、超音波発振機40を用いなくても良い。また、超音波発振機40の代わりに、処理容器10の内部に入れられる攪拌子と、処理容器10の下方に配置されるマグネティック・スターラとを用いて、処理容器10内部の溶液を混合するようにしても良い。
【0028】
次に、塩素含有有機物のオゾンを用いた分解処理を行う手順につき、説明する。
【0029】
まず、無機物に付着したままの塩素含有有機物を処理容器10に投入する。続いて、適量の有機溶媒と濃厚なアルカリ性水溶液を処理容器10に入れる。ここで、適量の有機溶媒は、無機物から塩素含有有機物を分離させるために用いられる。有機溶媒は、エタノール、アセトンを好適に用いるが、これら以外に、クロロホルム、メタノールなどを用いても良い。超音波発振機40を起動し、投入された溶液を混合する。この結果、無機物に付着している塩素含有有機物が無機物から剥離し、混合水溶液中に移行する。
【0030】
次に、オゾン発生装置20を起動し、オゾンを発生させ、オゾン注入管30を通して処理容器10の下方に送る。オゾンは、オゾン注入口50から泡状となって、混合水溶液中に放出される。オゾンは、アルカリ性水溶液中では分解しやすく、HO2−、O3−、O2−、OHラジカルとなる。これらのオゾンに由来するイオンあるいは分子が、塩素含有有機物の分解を行う。オゾンの濃度は、特に限定されるものではなく、オゾン、酸素とオゾンとの混合気体のいずれをも使用できるが、水への溶解速度を高め、塩素含有有機物の分解を速めるには、オゾンの濃度が高いほうが好ましい。
【0031】
塩素含有有機物の分解にあたって、アルカリ性水溶液は、混合水溶液のpHを強アルカリ性の側に維持し、オゾンを容易に分解する役割を有する。このように混合水溶液のpHを調整することにより、オゾンの分解速度とオゾンの分解から発生する反応活性なマイナスイオンを安定化することができる。アルカリ性水溶液としては、好適には、NaOH、KOH等を用いる。この結果、短時間、簡単な装置で塩素含有有機物を効率よく分解でき、処理コストも低減できる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明に係る塩素含有有機物の分解処理方法の実施例について説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、各共通の実施方法については、重複する説明を省略する。これらの実施例において、オゾンで分解処理された塩素含有有機物の残存状況については、島津製作所製GC/MS QP5000を用いて測定されたGC/MSスペクトルから把握した。
【0033】
(実施例1)
A.処理手順
DDT農薬(DDTは2.3%で、他は主成分としての酸化ケイ素である。)25gと、BHC農薬(BHCは14%で、他は主成分としての酸化ケイ素である。)5gとの混合物を、100mlのシリンダーに入れた後、エタノール5ml、1MNaOH水溶液を順番に加え、最終的に、全量を80mlとした。
【0034】
上記の手順で作製された試料を超音波発振機により混合しながら、オゾン発生装置から発生したオゾンをシリンダーの下部に位置するオゾン注入口から混合水溶液中の固体を十分に分散するように吹き込んだ。オゾンによる処理時間は、それぞれ、2、3および4時間とした。各時間の経過時に試料10mlずつを取り出し、濾過して得られた濾液と固形残渣の各々をヘキサンで抽出した。その後、抽出液をエバポレーターにより40℃で真空蒸発し、さらに抽出物については、2mlのへキサンに溶かし、GC/MSスペクトルを測定する試料とした。オゾンによる分解処理後の塩素含有有機物またはその分解後の生成物の残存状況を確認するため、分解処理を行う前の混合物原液も1ml取り出した。当該原液は、へキサンで抽出した後、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これをGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0035】
B.分析結果
図2〜図5は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示すGC/MS測定の結果である。各図において、上段、中段および下段の各チャートは、それぞれ、GCスペクトルチャート、上段のGCスペクトルの拡大チャートおよびMSチャートである。以後、図6〜図20においても同様である。
【0036】
図2に示すチャートは、分解処理前の原液の分析結果を示すGCおよびMSスペクトルの各チャートである。図2に示すように、保持時間8〜9min付近にBHCのピークが明確に検出されると共に、10〜11min付近にDDTのピークも検出された。具体的には、対応する有機物のピークは、保持時間8.40min、10.217min、10.483minに検出された。
【0037】
図3、4および5は、それぞれ、オゾンの処理時間を2、3および4時間とした際の固形残渣のGC/MS測定の結果である。
【0038】
オゾンの処理時間が長くなるほど、DDTおよびBHC濃度は、段々と減少することがわかった。特に、4時間後(図5)では、オゾンの処理前(図2)と比べて、スペクトルの感度が100倍にもかかわらず、シグナル強度は誤差レベルになった。4時間のオゾンを用いた分解処理により混合水溶液中に残存する農薬は0.01%以下になるということが分かった。しかも、濾液からなる試料中のスペクトルにおいて、農薬の特有なピークは全く検出されなかった。この結果から、本発明の塩素含有有機物の分解処理方法によって、DDT農薬を効率よく分解することができるものと判断できる。
【0039】
(実施例2)
A.処理手順
実施例2では、有機溶媒として、エタノールの代わりにアセトンを用いた。処理手順は、実施例1と全く同一とした。オゾンによる処理時間は、それぞれ、0.5、1、2および3時間とした。各時間の経過時に試料10mlずつを取り出し、同じ前処理方法で処理した後、GC/MS測定に供する試料とした。
【0040】
B.分析結果
図6〜図13は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示す。
【0041】
図6〜図9は、それぞれ、オゾンの処理時間を0.5、1、2および3時間とした際の濾液のGC/MS測定の結果である。オゾンによる分解処理において、処理時間30分を経過しただけで、濾液中に農薬がほとんど存在しないことが判明した。
【0042】
図10〜図13には、それぞれ、オゾンの処理時間を0.5、1、2および3時間とした際の固形残渣のGC/MS測定の結果を示す。オゾン処理時間の経過に伴い、固形残渣に含まれる農薬の濃度は、段々と減少することが分かった。BHCのシグナルは、オゾン処理2時間を経過した後、ほとんどノイズレベルになった。一方、DDTのシグナルは、オゾン処理3時間を経過した後、1/100まで減少したが、まだわずかに残留しているようであった。保持時間10.9minに検出されたピークは、多くの副産物の生成を示すが、これらは塩素含有有機物ではなかった。実施例2の結果から、本発明の塩素含有有機物の分解処理方法によって、農薬を効率よく除去することができるものと判断できる。
【0043】
(実施例3)
A.処理手順
実施例3では、BHC、DDTとエンドリンとの混合物を試料に用いた。まず、試料をクロロホルムにより抽出し、農薬を含有する濃縮クロロホルム溶液を作製した。この溶液1mlを取り出し、エバポレーターにより蒸発乾固した後、2mlへキサンに溶かし、GC/MS測定用の原液試料とした。オゾンによる分解処理手順は、実施例1および実施例2と同様である。クロロホルムを溶媒として用いたので、クロロホルムの分解により塩酸が生成する。そのため、混合溶液のpHをアルカリ性に維持するように、適量のNaOHを入れる必要がある。実際に処理した際に、農薬を抽出したクロロホルム溶液30gを100mlのシリンダーに入れた後、1MのNaOH水溶液を加え、最終的に、全量を80mlとした。続いて、オゾン発生装置から発生したオゾンをシリンダーの下部に位置するオゾン注入口から吹き込みながら、合計27gのNaOH固体を30minずつ入れた。
【0044】
B.分析結果
図14〜図16は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示すGC/MS測定の結果である。
【0045】
図14は、分解処理前の原液の分析結果を示すGC/MS測定の結果である。図14に示すように、保持時間8.126、8.408、8.625minにBHCのピークと、9.20minにエンドリンのピークと、10.20、10.45minにDDTのピークとが、それぞれ明確に検出された。
【0046】
図15は、オゾンによる分解処理を2時間行った後のGC/MS測定の結果である。図15に示すように、オゾンによる分解処理を2時間行った時点では、BHC、エンドリン、DDTのすべてが残留していることが分かった。また、農薬以外の副生物も検出された。
【0047】
図16は、オゾンによる分解処理を4時間行った後のGC/MS測定の結果である。この測定結果より、農薬のピークはほとんど消滅し、代わりに保持時間11min以後のシグナルが出現していることがわかる。ただし、これらのシグナルは、長い炭素鎖で、塩素を含む有害物質ではないことが分かった。
【0048】
以上より、クロロホルムに濃縮された農薬は、実施例3のオゾンの分解処理により、効率よくほぼ完全に分解し、また、クロロホルムも同時に分解されることが分かった。DDT等の塩素含有有機物は、ベンゼン環を基本骨格として有している。本発明のオゾンを用いた分解処理により、そのベンゼン環が開裂して、DDTに含まれる芳香族分子が分解するものと考えられる。また、芳香族化合物であるPCBやダイオキシン類の分解の可能性も示唆される。さらに、クロロホルムを完全に分解した結果は、本発明の処理方法が塩素系有機溶媒の分解処理に応用できることを意味する。
【0049】
(実施例4)
A.処理手順
実施例4では、高圧コンデンサーに含まれるPCBをヘキサンにて100倍で希釈し、そこからPCBを含有するヘキサン溶液10mlを取り出し、1M、4M、8MのNaOH水溶液50mlに加え、さらに、超音波発振機を用いて超音波を付加しながら、オゾンの分解処理を行った。分解処理の時間は、すべて2時間とした。
【0050】
B.分析結果
図17〜図20は、PCBのオゾンによる分解処理に及ぼすNaOH水溶液の濃度の影響を示すGC/MS測定の結果である。
【0051】
図17は、分解処理前の試料の分析結果を示すGC/MS測定の結果である。保持時間7.8〜10.5min付近にPCBのピークが明確に検出された。1M、4Mおよび8MのNaOH水溶液を用い、オゾンによる分解処理を2時間行った後のGC/MS測定の結果は、それぞれ、図18、図19および図20に示すとおりである。1Mおよび4MのNaOH水溶液を用いた場合、PCB濃度の変化はほとんど見られなかった。一方、8MのNaOH水溶液を用いた場合には、PCBのピークが10分の1に減少することが分かった。
【0052】
PCBは、様々なPCB種の混合物からなり、水に難溶性であり、かつ水より重い。このため、PCBは、容器の底部に油状の塊となって沈降しやすい。このため、単に、オゾンを吹き込むだけでは、分解反応は進みにくいと考えられる。実施例4では、8Mという濃厚なNaOH水溶液にPCBを投入し、その中にオゾンを吹き込んで分解処理を行った。このように、NaOH水溶液の濃度を8Mとすることにより、PCBはより分解しやすくなるということがわかった。
【0053】
(実施例5)
A.処理手順
実施例5では、農薬(無機物と塩素系有機物の混合物)と1MのNaOH水溶液とを混合し、非イオン性界面活性剤(株式会社ヤナギ研究所製「GULクリーン10」)を農薬に対して1重量%加え、良く攪拌した。攪拌後、混合物をしばらく放置し、浮遊物をヘキサンに溶解させ、当該ヘキサン溶液のGC/MSスペクトルを測定した。
【0054】
B.分析結果
浮遊物は、白いクリーム状の物質であった。図21は、浮遊物をヘキサンに溶解させたヘキサン溶液のGC/MS測定の結果である。
【0055】
図21に示すように、GCスペクトルにおける保持時間5〜6minのピークは、トリクロロベンゼンであり、他のピークは、BHCとDDTのピークである。この結果から、塩素系有機物が無機物から剥離されたことがわかる。したがって、無機物と塩素系有機物の分離には、有機溶媒のみならず、界面活性剤も有効であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、塩素含有有機物を無害化処理する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る塩素含有有機物の分解処理を行う分解処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例1において、分解処理前の原液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図3】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図4】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図5】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を4時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図6】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を0.5時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図7】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を1時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図8】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図9】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図10】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を0.5時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図11】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を1時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図12】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図13】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図14】本発明の実施例3において、オゾン処理前の試料の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図15】本発明の実施例3において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図16】本発明の実施例3において、オゾンによる分解処理を4時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図17】本発明の実施例4において、分解処理前の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図18】本発明の実施例4において、1MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図19】本発明の実施例4において、4MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図20】本発明の実施例4において、8MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図21】本発明の実施例5において、1MのNaOH水溶液と非イオン界面活性剤とを農薬(無機物と塩素系有機物との混合物)に加え、攪拌後に静置して得られた浮遊物を溶かしたヘキサン溶液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【符号の説明】
【0058】
1 分解処理システム
10 処理容器
20 オゾン発生装置
30 オゾン注入管
40 超音波発振機
50 オゾン注入口
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンによる塩素含有有機物の分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自然界中に存在する残留性有機汚染物質の処理方法として、焼却、セメント固化、化学分解、洗浄等の処理方法が提案されている。しかし、まだ、効率的な処理方法は確立されていない。焼却処理には、塩化水素が発生するだけではなく、不完全な焼却処理の過程で発生するダイオキシンが排ガス中に含まれて、それが広範囲に拡散するという問題がある。また、セメント固化処理は、セメント内に塩素含有有機物を封じ込めているので、長時間が経過すると、塩素含有有機物がセメント内から溶出する危険性を有する。したがって、セメント固化処理は、必ずしも安全な処理方法とは言えない。また、洗浄剤による洗浄処理は、洗浄剤の選択および洗浄後の水処理が難しいという問題がある。
【0003】
このような問題に鑑み、塩素含有有機物の分解処理方法として、オゾンと過酸化水素などの酸化剤を用いる促進酸化処理法の適用が検討されている。促進酸化処理とは、オゾンや過酸化水素などの酸化剤と紫外線を用いて最も強力な活性酸素であるヒドロキシルラジカルを発生させ、これによって塩素含有有機物を酸化分解する方法である(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
さらに、従来行われている過酸化水素存在下における残留性有機汚染物質のオゾン処理法に比べより少ない薬品添加量で、残留性有機汚染物質を処理する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開2004−057934号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平09−141276号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩素含有有機物を分解処理する際、環境の安全性を考慮すると、オゾンを用いた促進酸化処理において、通常、反応溶媒として水が用いられる。
【0006】
しかし、当該促進酸化処理には、塩素含有有機物を投入した溶液中へのオゾンの溶解量が少ないという問題がある。このため、オゾンが溶液中の塩素含有有機物との反応に使われるのは、その一部であって、残りの大部分は、ガスとして溶液から出る。この結果、オゾンが大気中に拡散するのを抑制できない。
【0007】
また、塩素含有有機物を十分に分解処理しようとする場合、極めて長時間が必要である。このため、オゾンを発生させ続けるため、オゾン発生装置に必要な電力が多くなる。さらに、紫外線発生装置が必要となるため、コストが高くなるという問題もある。また、塩素含有有機物に対して、直接オゾンを作用させるため、オゾンによる酸化処理された混合水溶液中には、一般的に、0.1〜数mg/lの残留オゾンが含まれる。従って、オゾン処理溶液中の残留オゾンを何らかの方法で除去することが必要になる。一般的なオゾンの除去方法として、亜硫酸ソーダなどの還元剤による方法、曝気によるストリッピング方法、あるいは長時間滞留させる方法などがある。しかしながら、上記何れの除去方法でも、薬剤が必要となり、作業の効率性や歩留まり等を考慮すると、効果的な処理方法とは言えない。
【0008】
また、塩素含有有機物をオゾンにより分解処理する場合、塩酸が生成する。このため、オゾンによる分解処理は、時間の経過に伴い、溶液を酸性に変化させ、pHが小さくなる。これにつれ、プロトンの付加が起こり、分解処理をいっそう非効果的にする。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、環境に悪影響を与えず、処理作業が容易であり、かつ低コストにて塩素含有有機物を効率的に分解することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、1M以上のアルカリ性水溶液に塩素含有有機物を入れる工程と、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。
【0011】
このように、オゾンの分解処理の際に、濃厚なアルカリ性水溶液と塩素含有有機物との混合溶液にオゾンを入れるので、オゾンは、迅速に自己分解し、オゾンの分解過程で様々な中間活性イオンあるいは分子を生成する。ここで、オゾンの自己分解により発生する中間体、HO2−、O3−、O2−などのイオンあるいはOH等のヒドロキシラジカル分子を、オゾンに由来するイオンあるいは分子と定義する。
【0012】
オゾンの分解速度は、アルカリ性水溶液のOH−濃度に比例するため、混合水溶液のpHが高いほど、オゾンの分解速度は大きくなる。しかも、オゾンの分解により生成する反応活性なマイナスイオンの多くは、アルカリ性が強くなるほど安定化する。このため、アルカリ性水溶液の濃度を1M以上とすることにより、オゾンによる分解処理能力を高めることができる。また、濃厚なアルカリ性水溶液の中で、塩素含有有機物を分解処理することにより、生成した塩酸が中和される。このため、pHをアルカリ性に維持することができ、オゾンによる分解機能は失われない。従って、オゾンによる塩素含有有機物の分解処理を安定して行うことができる。また、紫外線発生装置を用いなくても分解処理効率を向上させることができ、かつ、処理水溶液中にオゾンが残留するという問題も生じない。
【0013】
また、別の本発明は、先の発明において、無機物との混合物または無機物に付着した状態である塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、土壌に塩素含有有機物が含まれている場合には、その土壌ごと分解処理に使用することができる。
【0014】
また、別の本発明は、先の各発明に加えて、さらに、有機溶媒を添加する工程を有し、無機物と塩素含有有機物とを分離させ、塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、有機溶媒により、無機物(土壌)等の固体物に付着あるいは混合している塩素含有有機物が剥離し、混合水溶液中にてオゾンの作用を効果的に受ける。従って、塩素含有有機物のオゾンによる分解処理をより促進することができる。なお、有機溶媒はオゾンを消費するため、添加する有機溶媒は必要最小限度の量とする方が好ましい。
【0015】
また、別の本発明は、さらに、先の各発明に加えて、アルカリ性水溶液と塩素含有有機物とを少なくとも含む溶液に超音波を与え、塩素含有有機物を分解する塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、超音波が混合溶液に伝わることにより、無機物(土壌)等の固体物に付着あるいは混合している塩素含有有機物が剥離し、混合水溶液中にてオゾンの作用を効果的に受ける。従って、塩素含有有機物のオゾンによる分解処理をより促進することができる。
【0016】
また、別の本発明は、先の各発明において、塩素含有有機物をPCBとする場合に、アルカリ性水溶液を、8M以上の水酸化ナトリウム水溶液とする塩素含有有機物の分解処理方法としている。このため、PCBをより効果的に分解処理できる。
【0017】
本発明の分解処理方法において、分解対象となる塩素含有有機物としては、例えば、DDT、BHC、エンドリン、PCB、スポルタック、トリフミン、ダイオキシン類の他、クロロホルム、四塩化炭素に代表される塩素系有機溶媒などを挙げることができ、特に、本発明の分解処理方法は、DDT、BHC、エンドリンを処理するのに適している。ただし、上述の分解対象物は一例に過ぎず、他の物質を処理しても良い。
【0018】
本発明の分解処理方法に用いられるアルカリ性水溶液は、NaOH水溶液、KOH水溶液あるいはこれらの混合物を好適に用いることができ、特にNaOH水溶液を用いるのがより好ましい。ただし、上述のアルカリ性水溶液は一例に過ぎず、他のアルカリ性水溶液を採用しても良い。
【0019】
また、本発明の分解処理方法において選択的に用いられる有機溶媒としては、例えば、エタノール、アセトン、クロロホルム、メタノール、メチルエチルケトン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、一種を単独で用いあるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。好ましくは、エタノール、アセトン、クロロホルムを用いる。ただし、エタノール、アセトン、クロロホルム以外の他の有機溶媒を採用しても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環境に悪影響を与えず、処理作業が容易であり、かつ、低コストにて、塩素含有有機物を効率的に分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る塩素含有有機物の分解処理方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1は、塩素含有有機物の分解処理を行う分解処理システムの概略図である。
【0023】
この分解処理システム1は、塩素含有有機物を入れる処理容器10と、オゾン発生装置20と、オゾン注入管30と、超音波発振機40とを備えている。
【0024】
処理容器10は、透明なガラス製のシリンダーの形態を有している。ただし、処理容器10は、ガラス製のビーカー、金属製若しくは樹脂製の容器の他、攪拌機等を備えた攪拌混合槽、スタティックミキサー、インラインミキサー等の混合機能を有する容器であっても良い。
【0025】
オゾン発生装置20は、放電作用を利用して取り込んだ空気または酸素の一部若しくは全部をオゾンに変化させ、オゾンを発生させる装置である。ただし、電解、光照射等を利用してオゾンを発生させるオゾン発生装置を用いても良い。
【0026】
オゾン注入管30は、一方をオゾン発生装置20と接続されると共に、他方を処理容器10の底近傍まで挿入されている。オゾン注入管30は、酸またはアルカリ性の溶液に対する耐蝕性を有する材料で構成されている方が好ましく、ガラス、耐蝕性の高い樹脂若しくは金属、あるいはセラミックス製の材料で構成されているものを好適に使用できる。処理容器10に挿入したオゾン注入管30の先端には、1つの小さな穴を有するオゾン注入口50が設けられている。ただし、かかるオゾン注入口50の代わりに、複数個のより小さな穴を設けても良い。
【0027】
超音波発振機40は、処理容器10の下方に配置され、発振された超音波を処理容器10内部の溶液に伝えるための装置である。超音波発振機40を用いることにより、処理容器10内部の溶液の混合を促進することができる。なお、処理容器10に攪拌手段(例えば、電動の攪拌羽根)を備える場合には、超音波発振機40を用いなくても良い。また、超音波発振機40の代わりに、処理容器10の内部に入れられる攪拌子と、処理容器10の下方に配置されるマグネティック・スターラとを用いて、処理容器10内部の溶液を混合するようにしても良い。
【0028】
次に、塩素含有有機物のオゾンを用いた分解処理を行う手順につき、説明する。
【0029】
まず、無機物に付着したままの塩素含有有機物を処理容器10に投入する。続いて、適量の有機溶媒と濃厚なアルカリ性水溶液を処理容器10に入れる。ここで、適量の有機溶媒は、無機物から塩素含有有機物を分離させるために用いられる。有機溶媒は、エタノール、アセトンを好適に用いるが、これら以外に、クロロホルム、メタノールなどを用いても良い。超音波発振機40を起動し、投入された溶液を混合する。この結果、無機物に付着している塩素含有有機物が無機物から剥離し、混合水溶液中に移行する。
【0030】
次に、オゾン発生装置20を起動し、オゾンを発生させ、オゾン注入管30を通して処理容器10の下方に送る。オゾンは、オゾン注入口50から泡状となって、混合水溶液中に放出される。オゾンは、アルカリ性水溶液中では分解しやすく、HO2−、O3−、O2−、OHラジカルとなる。これらのオゾンに由来するイオンあるいは分子が、塩素含有有機物の分解を行う。オゾンの濃度は、特に限定されるものではなく、オゾン、酸素とオゾンとの混合気体のいずれをも使用できるが、水への溶解速度を高め、塩素含有有機物の分解を速めるには、オゾンの濃度が高いほうが好ましい。
【0031】
塩素含有有機物の分解にあたって、アルカリ性水溶液は、混合水溶液のpHを強アルカリ性の側に維持し、オゾンを容易に分解する役割を有する。このように混合水溶液のpHを調整することにより、オゾンの分解速度とオゾンの分解から発生する反応活性なマイナスイオンを安定化することができる。アルカリ性水溶液としては、好適には、NaOH、KOH等を用いる。この結果、短時間、簡単な装置で塩素含有有機物を効率よく分解でき、処理コストも低減できる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明に係る塩素含有有機物の分解処理方法の実施例について説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、各共通の実施方法については、重複する説明を省略する。これらの実施例において、オゾンで分解処理された塩素含有有機物の残存状況については、島津製作所製GC/MS QP5000を用いて測定されたGC/MSスペクトルから把握した。
【0033】
(実施例1)
A.処理手順
DDT農薬(DDTは2.3%で、他は主成分としての酸化ケイ素である。)25gと、BHC農薬(BHCは14%で、他は主成分としての酸化ケイ素である。)5gとの混合物を、100mlのシリンダーに入れた後、エタノール5ml、1MNaOH水溶液を順番に加え、最終的に、全量を80mlとした。
【0034】
上記の手順で作製された試料を超音波発振機により混合しながら、オゾン発生装置から発生したオゾンをシリンダーの下部に位置するオゾン注入口から混合水溶液中の固体を十分に分散するように吹き込んだ。オゾンによる処理時間は、それぞれ、2、3および4時間とした。各時間の経過時に試料10mlずつを取り出し、濾過して得られた濾液と固形残渣の各々をヘキサンで抽出した。その後、抽出液をエバポレーターにより40℃で真空蒸発し、さらに抽出物については、2mlのへキサンに溶かし、GC/MSスペクトルを測定する試料とした。オゾンによる分解処理後の塩素含有有機物またはその分解後の生成物の残存状況を確認するため、分解処理を行う前の混合物原液も1ml取り出した。当該原液は、へキサンで抽出した後、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これをGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0035】
B.分析結果
図2〜図5は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示すGC/MS測定の結果である。各図において、上段、中段および下段の各チャートは、それぞれ、GCスペクトルチャート、上段のGCスペクトルの拡大チャートおよびMSチャートである。以後、図6〜図20においても同様である。
【0036】
図2に示すチャートは、分解処理前の原液の分析結果を示すGCおよびMSスペクトルの各チャートである。図2に示すように、保持時間8〜9min付近にBHCのピークが明確に検出されると共に、10〜11min付近にDDTのピークも検出された。具体的には、対応する有機物のピークは、保持時間8.40min、10.217min、10.483minに検出された。
【0037】
図3、4および5は、それぞれ、オゾンの処理時間を2、3および4時間とした際の固形残渣のGC/MS測定の結果である。
【0038】
オゾンの処理時間が長くなるほど、DDTおよびBHC濃度は、段々と減少することがわかった。特に、4時間後(図5)では、オゾンの処理前(図2)と比べて、スペクトルの感度が100倍にもかかわらず、シグナル強度は誤差レベルになった。4時間のオゾンを用いた分解処理により混合水溶液中に残存する農薬は0.01%以下になるということが分かった。しかも、濾液からなる試料中のスペクトルにおいて、農薬の特有なピークは全く検出されなかった。この結果から、本発明の塩素含有有機物の分解処理方法によって、DDT農薬を効率よく分解することができるものと判断できる。
【0039】
(実施例2)
A.処理手順
実施例2では、有機溶媒として、エタノールの代わりにアセトンを用いた。処理手順は、実施例1と全く同一とした。オゾンによる処理時間は、それぞれ、0.5、1、2および3時間とした。各時間の経過時に試料10mlずつを取り出し、同じ前処理方法で処理した後、GC/MS測定に供する試料とした。
【0040】
B.分析結果
図6〜図13は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示す。
【0041】
図6〜図9は、それぞれ、オゾンの処理時間を0.5、1、2および3時間とした際の濾液のGC/MS測定の結果である。オゾンによる分解処理において、処理時間30分を経過しただけで、濾液中に農薬がほとんど存在しないことが判明した。
【0042】
図10〜図13には、それぞれ、オゾンの処理時間を0.5、1、2および3時間とした際の固形残渣のGC/MS測定の結果を示す。オゾン処理時間の経過に伴い、固形残渣に含まれる農薬の濃度は、段々と減少することが分かった。BHCのシグナルは、オゾン処理2時間を経過した後、ほとんどノイズレベルになった。一方、DDTのシグナルは、オゾン処理3時間を経過した後、1/100まで減少したが、まだわずかに残留しているようであった。保持時間10.9minに検出されたピークは、多くの副産物の生成を示すが、これらは塩素含有有機物ではなかった。実施例2の結果から、本発明の塩素含有有機物の分解処理方法によって、農薬を効率よく除去することができるものと判断できる。
【0043】
(実施例3)
A.処理手順
実施例3では、BHC、DDTとエンドリンとの混合物を試料に用いた。まず、試料をクロロホルムにより抽出し、農薬を含有する濃縮クロロホルム溶液を作製した。この溶液1mlを取り出し、エバポレーターにより蒸発乾固した後、2mlへキサンに溶かし、GC/MS測定用の原液試料とした。オゾンによる分解処理手順は、実施例1および実施例2と同様である。クロロホルムを溶媒として用いたので、クロロホルムの分解により塩酸が生成する。そのため、混合溶液のpHをアルカリ性に維持するように、適量のNaOHを入れる必要がある。実際に処理した際に、農薬を抽出したクロロホルム溶液30gを100mlのシリンダーに入れた後、1MのNaOH水溶液を加え、最終的に、全量を80mlとした。続いて、オゾン発生装置から発生したオゾンをシリンダーの下部に位置するオゾン注入口から吹き込みながら、合計27gのNaOH固体を30minずつ入れた。
【0044】
B.分析結果
図14〜図16は、農薬の分解処理に及ぼす全オゾン処理時間の影響を示すGC/MS測定の結果である。
【0045】
図14は、分解処理前の原液の分析結果を示すGC/MS測定の結果である。図14に示すように、保持時間8.126、8.408、8.625minにBHCのピークと、9.20minにエンドリンのピークと、10.20、10.45minにDDTのピークとが、それぞれ明確に検出された。
【0046】
図15は、オゾンによる分解処理を2時間行った後のGC/MS測定の結果である。図15に示すように、オゾンによる分解処理を2時間行った時点では、BHC、エンドリン、DDTのすべてが残留していることが分かった。また、農薬以外の副生物も検出された。
【0047】
図16は、オゾンによる分解処理を4時間行った後のGC/MS測定の結果である。この測定結果より、農薬のピークはほとんど消滅し、代わりに保持時間11min以後のシグナルが出現していることがわかる。ただし、これらのシグナルは、長い炭素鎖で、塩素を含む有害物質ではないことが分かった。
【0048】
以上より、クロロホルムに濃縮された農薬は、実施例3のオゾンの分解処理により、効率よくほぼ完全に分解し、また、クロロホルムも同時に分解されることが分かった。DDT等の塩素含有有機物は、ベンゼン環を基本骨格として有している。本発明のオゾンを用いた分解処理により、そのベンゼン環が開裂して、DDTに含まれる芳香族分子が分解するものと考えられる。また、芳香族化合物であるPCBやダイオキシン類の分解の可能性も示唆される。さらに、クロロホルムを完全に分解した結果は、本発明の処理方法が塩素系有機溶媒の分解処理に応用できることを意味する。
【0049】
(実施例4)
A.処理手順
実施例4では、高圧コンデンサーに含まれるPCBをヘキサンにて100倍で希釈し、そこからPCBを含有するヘキサン溶液10mlを取り出し、1M、4M、8MのNaOH水溶液50mlに加え、さらに、超音波発振機を用いて超音波を付加しながら、オゾンの分解処理を行った。分解処理の時間は、すべて2時間とした。
【0050】
B.分析結果
図17〜図20は、PCBのオゾンによる分解処理に及ぼすNaOH水溶液の濃度の影響を示すGC/MS測定の結果である。
【0051】
図17は、分解処理前の試料の分析結果を示すGC/MS測定の結果である。保持時間7.8〜10.5min付近にPCBのピークが明確に検出された。1M、4Mおよび8MのNaOH水溶液を用い、オゾンによる分解処理を2時間行った後のGC/MS測定の結果は、それぞれ、図18、図19および図20に示すとおりである。1Mおよび4MのNaOH水溶液を用いた場合、PCB濃度の変化はほとんど見られなかった。一方、8MのNaOH水溶液を用いた場合には、PCBのピークが10分の1に減少することが分かった。
【0052】
PCBは、様々なPCB種の混合物からなり、水に難溶性であり、かつ水より重い。このため、PCBは、容器の底部に油状の塊となって沈降しやすい。このため、単に、オゾンを吹き込むだけでは、分解反応は進みにくいと考えられる。実施例4では、8Mという濃厚なNaOH水溶液にPCBを投入し、その中にオゾンを吹き込んで分解処理を行った。このように、NaOH水溶液の濃度を8Mとすることにより、PCBはより分解しやすくなるということがわかった。
【0053】
(実施例5)
A.処理手順
実施例5では、農薬(無機物と塩素系有機物の混合物)と1MのNaOH水溶液とを混合し、非イオン性界面活性剤(株式会社ヤナギ研究所製「GULクリーン10」)を農薬に対して1重量%加え、良く攪拌した。攪拌後、混合物をしばらく放置し、浮遊物をヘキサンに溶解させ、当該ヘキサン溶液のGC/MSスペクトルを測定した。
【0054】
B.分析結果
浮遊物は、白いクリーム状の物質であった。図21は、浮遊物をヘキサンに溶解させたヘキサン溶液のGC/MS測定の結果である。
【0055】
図21に示すように、GCスペクトルにおける保持時間5〜6minのピークは、トリクロロベンゼンであり、他のピークは、BHCとDDTのピークである。この結果から、塩素系有機物が無機物から剥離されたことがわかる。したがって、無機物と塩素系有機物の分離には、有機溶媒のみならず、界面活性剤も有効であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、塩素含有有機物を無害化処理する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る塩素含有有機物の分解処理を行う分解処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例1において、分解処理前の原液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図3】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図4】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図5】本発明の実施例1において、オゾンによる分解処理を4時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図6】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を0.5時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図7】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を1時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図8】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図9】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図10】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を0.5時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図11】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を1時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図12】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図13】本発明の実施例2において、オゾンによる分解処理を3時間行った後の固形残渣の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図14】本発明の実施例3において、オゾン処理前の試料の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図15】本発明の実施例3において、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図16】本発明の実施例3において、オゾンによる分解処理を4時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図17】本発明の実施例4において、分解処理前の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図18】本発明の実施例4において、1MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図19】本発明の実施例4において、4MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図20】本発明の実施例4において、8MのNaOH水溶液を使用し、オゾンによる分解処理を2時間行った後の濾液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【図21】本発明の実施例5において、1MのNaOH水溶液と非イオン界面活性剤とを農薬(無機物と塩素系有機物との混合物)に加え、攪拌後に静置して得られた浮遊物を溶かしたヘキサン溶液の分析結果を示すGCスペクトルおよびMSの各チャートである(上段:GCスペクトルチャート、中段:上段のチャートの拡大チャート、下段:MSチャート)。
【符号の説明】
【0058】
1 分解処理システム
10 処理容器
20 オゾン発生装置
30 オゾン注入管
40 超音波発振機
50 オゾン注入口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有有機物の分解処理方法であって、
1M以上のアルカリ性水溶液に上記塩素含有有機物を入れる工程と、
上記アルカリ性水溶液と上記塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、
上記アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により上記塩素含有有機物を分解することを特徴とする塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項2】
前記塩素含有有機物は、無機物との混合物または無機物に付着した状態であることを特徴とする請求項1に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項3】
さらに、有機溶媒を添加する工程を有し、前記無機物と前記塩素含有有機物とを分離させて、前記塩素含有有機物を分解することを特徴とする請求項2に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項4】
さらに、前記アルカリ性水溶液と前記塩素含有有機物とを少なくとも含む溶液に超音波を与え、前記塩素含有有機物を分解することを特徴とする請求項2または3に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項5】
前記塩素含有有機物をPCBとする場合に、前記アルカリ性水溶液は、8M以上の水酸化ナトリウム水溶液とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項1】
塩素含有有機物の分解処理方法であって、
1M以上のアルカリ性水溶液に上記塩素含有有機物を入れる工程と、
上記アルカリ性水溶液と上記塩素含有有機物との混合物中にオゾンを存在せしめる工程とを有し、
上記アルカリ性水溶液中にて、オゾンの作用により上記塩素含有有機物を分解することを特徴とする塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項2】
前記塩素含有有機物は、無機物との混合物または無機物に付着した状態であることを特徴とする請求項1に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項3】
さらに、有機溶媒を添加する工程を有し、前記無機物と前記塩素含有有機物とを分離させて、前記塩素含有有機物を分解することを特徴とする請求項2に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項4】
さらに、前記アルカリ性水溶液と前記塩素含有有機物とを少なくとも含む溶液に超音波を与え、前記塩素含有有機物を分解することを特徴とする請求項2または3に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【請求項5】
前記塩素含有有機物をPCBとする場合に、前記アルカリ性水溶液は、8M以上の水酸化ナトリウム水溶液とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塩素含有有機物の分解処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−216076(P2007−216076A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342258(P2005−342258)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
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