説明

塩素製造用再生触媒の製造方法、劣化触媒の再生方法、塩素の製造方法及び塩素製造用触媒の活性維持方法

【課題】本発明は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化し、塩素を製造する場合に、経時的に活性が低下した劣化触媒を効率よく、経済的に、高い回収率で再生させ、高収率で再生触媒を得る方法を課題としている。
【解決手段】本発明の塩素製造用再生触媒の製造方法は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用した劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程を1回または2回以上含む、塩素製造用再生触媒の製造方法であり、前記劣化触媒は、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化し、塩素を製造する場合において、経時的に活性が低下した劣化触媒を再生して、再生触媒を製造する方法および劣化触媒を再生する方法、また、触媒を再生させながら、効率よく、経済的に、長期にわたって塩素を製造する方法、さらに、流動層反応器内における触媒の流動安定性および反応活性を長期にわたり維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素は塩化ビニル、ホスゲン等の原料として有用である。塩素を工業的に製造する方法としては、塩化水素の触媒的酸化等が広く知られている。
塩化水素の触媒的酸化による製造は、塩化ビニルモノマーやイソシアネート類を製造する際に副生する塩化水素の回収法の1つとして考案された。副生する塩化水素を原料とする為、環境負荷の観点から非常に有効なプロセスである。
【0003】
塩化水素の触媒的酸化による、塩化水素からの塩素の製造においては、電気分解法、気相接触酸化法、非接触酸化法の3種がある。中でも、気相接触酸化法はDeaconプロセスとも呼ばれ、塩化水素と酸素から、塩素を得る方法として1860年代に提案された。この反応は発熱を伴う平衡反応であり、反応温度が低いほど反応が優位に進行する。この反応に用いられる触媒としては、例えば、銅を主成分とする触媒、クロムを主成分とする触媒等が知られている。
【0004】
銅を主成分とする触媒としては、例えば、比表面積200m2/g以上および平均細孔直径60Å以上のシリカゲル担体に塩化銅、アルカリ金属塩化物、塩化ジジミウム等のランタノイド類を担持した触媒(特許文献1)、比表面積が410m2/g、細孔容積が0.72ml/gのシリカゲルに銅、カリウム、ジジミウムを含浸し調製した触媒(特許文献2)などが知られている。これらの触媒は安価な成分で構成されているが、反応活性が低く、充分な活性を得る為には高温を要する。Deaconプロセスは発熱を伴う平衡反応である為、高温ほど、塩化水素の平衡転化率が低くなってしまうという問題点がある。また、ジジミウムは、様々な希土類元素を含む混合物であるが、混合物であるが故に、その採掘場所や時期によって、組成が一定ではなく、ジジミウムを用いた触媒では活性が一定ではなく、安定した使用には不利である。
【0005】
クロムを主成分とする触媒としては、例えば、酸化珪素にクロミアを担持した触媒等が知られている(特許文献3、4)。この触媒も反応活性が低いため、高温下における反応となり、銅を主成分とする触媒と同様に、充分な平衡転化率を得難いという問題点がある。同時に、安全衛生上、問題があるクロムを主成分としており、環境負荷の観点からも問題が大きいと言える。
【0006】
流動層プロセスは、固体粒子を流体により浮遊化させて反応、熱処理などの操作を行うプロセスであり、19世紀後半から広く知られるようになった。塩化水素の触媒を用いた酸化反応においては、上記の問題を伴うもののクロムを主成分とした触媒を用いて行う流動層プロセスが実用化されている。流動層プロセスでは、反応時に固体粒子が良好な流動性を維持することが求められ、粒子物性、装置構造、操作条件に関して、さまざまな検討がなされる。また、固体粒子が良好な流動性を維持するためには、反応時に触媒形状が維持されることが必要であり、反応中に触媒が磨耗、破砕等により著しく形状が変化すると、触媒成分の飛散を招くこととなり、反応活性の低下の要因となる。
【0007】
しかしながら、各因子が流動性に与える影響については未知の領域が多い。そのため、従来、流動層プロセスに用いられる触媒を再利用することは難しく、活性が低下した触媒は廃棄処分となり、環境負荷の観点から大いに問題があった。また、製造される塩素のコスト高の原因にもなっていた。
【0008】
そこで、活性が低下した触媒を再生し、利用する方法が、提案されている(たとえば、特許文献5〜7)。
しかしながら、これらの再生方法は、クロムを主成分とする触媒を再生するための方法であり、銅を主成分とし、多孔質の粒子を担体とする触媒とは触媒そのものが異なるため、直ぐには適用できない。すなわち、クロムを主成分とする触媒は、主にクロムとシリカとの複合体であり、活性の劣化は、主として、クロム濃度の減少によって生じると推定される。一方、銅を主成分とし、多孔質の粒子を担体とする触媒の活性の劣化は、銅の濃度が減少すること、担体に担持された銅元素とアルカリ金属元素の比、及び銅元素とランタノイド元素の比が大きく変化すること、また、経時的に蓄積される不純物が被毒成分として働くこと等が考えられる。このように触媒の劣化のメカニズムが異なるため、これらの再生方法を直ぐには適用できない。さらに、特許文献6や7の方法では、触媒中の金属濃度は変化しない為、銅を主成分とし、多孔質の粒子を担体とする触媒に対しては、複数回に渡って触媒活性を回復できるかどうか不明であり、元の反応活性と高い触媒回収率を同時に実現できるとは言い難い。
【0009】
したがって、流動層プロセスにて、経時的に劣化する、銅を主成分とし、多孔質の粒子を担体とする触媒を、効率よく再生させ、また、このような再生技術を用いることで、効率よく、経済的に、長期にわたって安定して塩素を製造できる方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許3260678号公報
【特許文献2】米国特許3483136号公報
【特許文献3】特開昭61−275104号公報
【特許文献4】特許第2513756号公報
【特許文献5】特開平10−15389号公報
【特許文献6】特開昭62−254846号公報
【特許文献7】特公平7−67530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造するにあたり、経時的に活性が低下した劣化触媒を効率よく、経済的に再生する方法および再生触媒を得る方法、また、劣化触媒を効率よく再生させながら、長期に渡って経済的に塩素を製造する方法を得ることを課題としている。また、触媒の優れた反応活性及び高い流動安定性を長期にわたって維持し、プラントの性能を長期に確保できる、触媒の活性維持方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の塩素製造用再生触媒の製造方法は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用した劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程を1回または2回以上含み、該劣化触媒は、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒であることを特徴とする。
【0013】
本発明の劣化触媒の再生方法は、劣化触媒に、銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行い、前記劣化触媒は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用した触媒であり、かつ(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒であることを特徴とする。
【0014】
本発明の塩素の製造方法は、流動層反応器内で、触媒を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する方法であり、かつ、前記流動層反応器中に含まれる全触媒の銅元素の含有量が、全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下であり、前記流動層反応器の抜出口から、前記触媒の一部を抜き出し、抜き出した触媒に、少なくとも銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行い、得られた触媒を流動層反応器に装入する工程を含み、前記抜き出した触媒は、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の塩素製造用触媒の活性維持方法は、流動層反応器の抜出口から、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用する塩素製造用触媒の一部を抜き出し、抜き出した触媒に、少なくとも銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行い、得られた触媒を流動層反応器に装入する、触媒を再生させながら触媒の活性を維持する方法であり、前記流動層反応器中に含まれる全触媒の銅元素の含有量が、全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下であり、前記抜き出した触媒が、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒を含むことを特徴とする。
【0016】
前記銅を含む溶液が、銅、アルカリ金属および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイドを含むことが好ましい。
得られた再生触媒は、その銅含有量が、前記劣化触媒の銅含有量よりも多いことが好ましく、0.1重量%以上多いことがより好ましい。
【0017】
また、得られた再生触媒の平均真球度が、0.80以上であることが好ましい。
前記銅を含む溶液を含浸させる処理の前に、前記劣化触媒中に含まれる活性成分および被毒成分を、水および/または酸性溶液により溶解除去する処理を含むことが好ましい。
【0018】
前記溶解除去する処理の後に、乾燥および/または焼成することが好ましい。
前記銅を含む溶液を含浸させる処理の後に、乾燥および/または焼成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流動層反応器内で、触媒を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を生成する反応において、性能が低下した劣化触媒を効率よく、経済的に、高い回収率で再生することができ、触媒の初期の性能を回復することが可能となる。
【0020】
また、劣化触媒を効率よく再生させ、再利用することで、流動層反応器内の触媒は、優れた高い反応活性および固着を生じず高い流動性を長期にわたって維持できるため、プラントの性能を長期に確保できる。そのため、長期に渡って高い塩素収率を得ることができ、塩素を安定的に、経済的に提供することができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、劣化した触媒を効率よく再利用できるため、環境への負荷を最小限にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1に、実施例、参考例および比較例の触媒反応試験法にて用いたガラス製反応管の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
<塩素製造用再生触媒の製造方法、劣化触媒の再生方法、塩素の製造方法および触媒の活性維持方法>
(劣化触媒)
本発明における劣化触媒は、流動層反応器内で、塩化水素を酸素により酸化して塩素を生成する際に使用した触媒であり、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒である。担体は、多孔質の粒子であり、活性成分を分散、担持でき、かつ、塩酸、塩素に対して分解しない耐腐食性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ガラスなどが挙げられる。なかでも、本発明においては、担体が、シリカ、アルミナであることが好ましく、特に、効率的に銅を含む溶液を含浸させる処理を行える点で、シリカが好ましい。
【0024】
流動層反応器内において、触媒は、反応過程で、活性成分の減少、活性成分の変質、破砕等による触媒の物理的な崩壊、被毒成分の蓄積等により、反応初期に有する反応活性が低下し、触媒の流動安定性が悪化する。本発明では、このような経時的に劣化した触媒を、初期の触媒活性を示す再生触媒に、高い回収率で再生することが可能となり、経済的な効果は非常に大きいと言える。なお、劣化触媒の形状は、特に限定されないが、効率的に再生触媒を回収できる点で、球状が好ましい。
【0025】
また、劣化触媒は、塩素収率によって限定されないが、初期の塩素収率に対して、劣化触媒の塩素収率が10%以上減少していれば、顕著に劣化していると考えられる。なお、塩素収率は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0026】
劣化触媒中に含まれる銅元素(A)は、原子価が1価、2価いずれの状態で含まれていてもよい。銅元素の含有量は、劣化の程度により異なり特に限定されないが、初期の劣化前の触媒における銅含有量と、触媒を使用する環境を考慮すると、劣化触媒100重量%あたり、0.01重量%以上、5.0重量%以下の範囲にあることが多い。また、劣化の度合いに基づいて、後述する銅を含む溶液を含浸させる処理の効率を考慮すると、銅元素の含有量が、劣化触媒100重量%あたり、0.05重量%以上、3.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以上、1.0量%以下であると、活性向上の度合いがより大きく、再生効果がより顕著となる。
【0027】
劣化触媒に含まれるアルカリ金属元素(B)としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属元素(B)は、触媒中に単独で含まれても、2種以上組み合わせて含まれてもよい。このうち、残存した成分と後述する銅を含む溶液を含浸させる処理工程において処理された銅成分とで相互作用を発現しやすいという点から、劣化触媒に、ナトリウムおよび/またはカリウムが含まれていることが好ましく、カリウムがより好ましい。アルカリ金属元素(B)の含有量は、劣化の程度により異なり特に限定されないが、初期の劣化前の触媒におけるアルカリ金属元素の含有量と、触媒を使用する環境を考慮すると、劣化触媒100重量%あたり、0.01重量%以上、3.0重量%以下の範囲にあることが多い。また、劣化の度合いに基づいて、後述する銅を含む溶液を含浸させる処理の効率を考慮すると、アルカリ金属(B)の含有量が、劣化触媒100重量%あたり、0.05重量%以上、2.0重量%以下、好ましくは、0.1重量%以上、1.0量%以下であると、活性向上の度合いがより大きく、再生効果がより顕著となる。
【0028】
劣化触媒に含まれるランタノイド元素(C)は、原子番号57〜71のいわゆるランタノイド元素のうち、298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molの範囲にあるランタノイド元素である。ここで、ランタノイドと酸素との298Kにおける結合解離エネルギーは、次の表1に示すとおりであり、劣化触媒に含まれるランタノイド元素(C)としては、具体的には、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびルテチウム(Lu)よりなる群から選ばれる1種以上のランタノイド元素が挙げられる。
【0029】
【表1】

なお、上記表1に記載の298KでのLn−O(ランタノイド−酸素)結合解離エネルギーD298の値は、有機金属反応剤ハンドブック(玉尾皓平編著、化学同人、発行年月:2003年6月)223頁表2に記載の値である。
【0030】
本発明において、劣化触媒から再生された触媒が、ランタノイド元素の結合解離エネルギーが185kcal/molを超えると、酸素との結合が強くなりすぎ、また100kcal/mol未満であれば、酸素との親和性が低くなりすぎるため、反応活性(塩素収率)を十分に向上させることができない場合がある。そのため、ランタノイド元素の結合解離エネルギーが前記範囲内にある劣化触媒を再生させることが、より効率的に再生触媒を回収できるため、好ましい。なお、これらのランタノイド元素のうちでは、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウムが好ましく、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウムがより好ましい。これらのランタノイド元素は、単独で含まれていても、2種以上含まれていても構わない。
【0031】
ランタノイド元素(C)の含有量は、劣化の程度により異なり特に限定されないが、初期の劣化前の触媒におけるアルカリ金属元素の含有量と、触媒を使用する環境を考慮すると、劣化触媒100重量%あたり、0.01重量%以上、5.0重量%以下の範囲にあることが多い。また、劣化の度合いに基づいて、後述する銅を含む溶液を含浸させる処理の効率を考慮すると、ランタノイド元素の含有量が、劣化触媒100重量%あたり、0.05重量%以上、3.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以上、1.0量%以下であると、活性向上の度合いがより大きく、再生効果がより顕著となる。
【0032】
(劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程)
本発明では、劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程を1回または2回以上含む。前記の含浸処理により、劣化触媒中に残存する成分の影響を受けずに、効率よく、経済的に、塩化水素の酸化反応中に減少した活性成分を多孔質の粒子の担体に導入、補充することが可能となる。また本発明を用いれば、劣化触媒を、ほぼ100%の回収率で反応開始前の触媒と同等の性能を有する触媒に復元することが可能となり、廃棄する触媒を最小限とすることが可能となる。
【0033】
含浸に際しては、劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させれば、本発明の目的を損なわない範囲において、その前後に、銅、アルカリ金属および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molの範囲にあるランタノイドを含む溶液を含浸させても良いし、これらの活性成分をそれぞれ1種以上含む溶液を、別々に、含浸させても良い。また、劣化触媒に、複数の活性成分を含浸させても良い。また、溶液を含浸させる処理回数に特に制限はないが、5回以下が好ましく、3回以下がより好ましい。処理工程の効率性から、複数の金属を含浸させる場合には、同時に含浸させることが好ましく、活性成分の相互作用を効率よく発現させる為に、銅、アルカリ金属および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molの範囲にあるランタノイドを含む溶液を含浸させることが好ましく、活性成分の相互作用を最大限とする為に、銅、カリウムと、プラセオジム、ネオジム、サマリウムおよびユウロピウムから選ばれるいずれか1種以上を含む溶液を含浸させることがより好ましい。
【0034】
なお、銅、アルカリ金属、ランタノイドについては、前記劣化触媒を参照できる。
含浸させる処理方法は、特に限定されず、蒸発乾固法、噴霧法、吸着法、平衡吸着法、ポアフィリング法等が適用可能である。プロセス上の容易さから、蒸発乾固法あるいは噴霧法が好ましい。
【0035】
含浸に際しては、何れの方法においても、活性成分を含む化合物あるいは溶液を、任意の溶媒に添加し、活性成分が完全に溶解、あるいは完全に混合させた、銅を含む溶液を調製することが必要となる。
【0036】
また、いずれの処理方法においても、含浸させる際の温度は、特に限定されないが、0℃以上、100℃未満が好ましく、10℃以上、50℃未満がより好ましい。含浸する際の温度が0℃未満であると、溶液中に溶解していた活性成分が、溶媒中に析出してしまうおそれがあり、溶液自体の凍結等を招く為、好ましくない。一方、100℃以上であると、溶液中の溶媒の蒸発を招くおそれがあり、好ましくない。
【0037】
銅を含む溶液を製造する際に使用する溶媒は、活性成分を含む化合物を溶解または分散できるものであれば特に限定されず、水、メタノール、エタノールなどのアルコール、蟻酸、酢酸などの有機酸、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが、取り扱いの容易さから水が好ましい。活性成分を溶媒に溶解、分散するときの濃度は、活性成分の化合物が均一に溶解または分散できれば、特に制限されないが、濃度が低すぎると、使用する液量が増加してしまうおそれがあるため、活性成分の含有量は、活性成分および溶媒の合計100重量%当たり、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは2〜40重量%である。
【0038】
また、銅は、特に限定されないが、溶媒100重量%あたり、0.4〜20重量%、好ましくは、0.8〜16重量%含まれると、銅を効率よく含浸できる点から、好ましい。
溶液中、銅元素とアルカリ金属元素との重量比が1:0.2〜1:4.0の範囲であり、かつ、銅元素とランタノイド元素との重量比が1:0.2〜1:6.0の範囲であることが好ましい。また、銅元素とアルカリ金属元素の重量比は、1:0.2〜1:2.0の範囲であり、銅元素とランタノイド元素との重量比が、1:0.2〜1:3.0であることがより好ましく、銅元素とアルカリ金属元素との重量比は、1:0.3〜1:1.5であり、銅元素とランタノイド元素との重量比が、1:0.3〜1:2.5であることがさらに好ましく、銅元素とアルカリ金属元素との重量比は、1:0.4〜1:1.0であり、銅元素とランタノイド元素との重量比が、1:0.4〜1:2.0であることが最も好ましい。銅を含む溶液として、上記範囲の活性成分を含む溶液を用いると、各元素が複合化しやすく、長寿命が得られ、塩素製造用再生触媒が活性に優れたものとなるため、好ましい。
【0039】
活性成分として、溶液に溶解、混合させる銅化合物、アルカリ金属化合物およびランタノイド化合物は、本発明の目的を損なわない限り、どのような化合物、塩や錯塩でもよいが、それぞれ独立に、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、アルコキシドまたは錯塩であることが好ましい。中でも、塩化物、硝酸塩または酢酸塩であることが複合塩を形成しやすいという点で好ましい。
【0040】
なお、溶液には、本発明の目的を損なわない範囲において、活性成分および担体以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、アルカリ土類金属元素、ランタン、セリウム、イッテルビウム、スカンジウム、イットリウムなどのその他の希土類元素などが挙げられる。
【0041】
(水および/または酸性溶液により溶解除去する処理工程)
本発明において、前記銅を含む溶液を含浸させる処理工程の前に、水および/または酸性溶液を用いて、劣化触媒中に含まれる活性成分や被毒成分を溶解除去する処理工程を含むことが、触媒をより再生しやすく、塩素製造に使用する前の初期の触媒を得やすい点で好ましい。
【0042】
劣化触媒中に含まれる被毒成分としては、たとえば、主に流動層反応器に由来する、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、マンガン、等の金属成分や、硫黄などの非金属成分が挙げられる。再生触媒中にこれらの被毒成分が含有されていると、触媒活性を低下させ、流動性に悪影響を与えるおそれがあり、好ましくない。
【0043】
また、被毒成分の含有量は、たとえば、ニッケルであれば、劣化触媒100重量%あたり、1重量%以下にすることが好ましく、0.5重量%以下にすることが、触媒活性及び流動安定性を長期にわたって維持する観点から、より好ましい。なお下限値は、特に限定されない。
【0044】
また、酸性溶液にて使用する溶媒は特に限定されず、水、メタノール、エタノールなどのアルコール、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが、取り扱いの容易さから水が好ましい。酸性溶液中に含まれる酸の種類は、特に限定されないが、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、硝酸、塩酸が溶解除去の効率が高いため、好ましい。多孔質の担体中に残存する活性成分や被毒成分を効率よく除去するためには、酸性溶液を用いたあとに、水を用いることがより好ましい。また、劣化触媒に対して使用する溶媒量は特に限定されないが、劣化触媒に対して、1重量倍以上、10重量倍以下が好ましく、2重量倍以上、6重量倍以下であることがより好ましい。1重量倍未満であると劣化触媒に対する溶媒が不足し、被毒成分の溶解除去が効率的に進行しないおそれがある。一方、10重量倍より大きいと、廃溶媒量が過剰となり好ましくない。また、溶解除去する回数は、溶解除去の効率を向上させる為、2回以上行うことも可能である。この場合、劣化触媒に溶媒を添加した後、濾過等により劣化触媒と溶媒とを分離することを、複数回行うことで活性成分や被毒成分を効率よく除去することが可能となる。このように溶解除去する処理工程は、回数を重ねることにより、残存する被毒成分が低下することとなり好ましい。また、回数ごとに溶媒の種類を変更することも可能である。例えば1回目の溶解除去は酸を使用し、2回目以降は水を使用するなどが適用可能であり、酸性溶液と水とを併用することが好ましい。
【0045】
(溶解除去する処理工程後の乾燥および/または焼成する工程)
本発明において、前記溶解除去する処理工程の後で、劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程の前に、乾燥および/または焼成する工程(1)を含むことが好ましい。
【0046】
乾燥条件としては、特に限定されないが、大気中、または減圧下にて、乾燥温度0〜200℃で、乾燥時間10min〜24hrの条件で実施することが好ましい。
焼成条件としては、特に限定されないが、大気中下、焼成温度200℃〜600℃で、焼成時間10min〜24hrの条件で実施することが好ましい。
【0047】
なお、乾燥工程および焼成工程の順序は、特に限定されない。
乾燥および/または焼成することで、溶解除去する処理工程において使用した残存溶媒を劣化触媒から分離し、触媒の細孔容積の空隙率を増加させることができる。空隙率の増加により、銅を含む溶液を含浸させるスペースを確保することが可能となり、含浸が効率よく進行することとなり好ましい。
【0048】
(銅を含む溶液を含浸させる処理工程後の乾燥および/または焼成する工程)
本発明において、劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程の後に、乾燥および/または焼成する工程(2)を含むことが好ましい。
【0049】
乾燥条件、焼成条件については、前述の乾燥および/または焼成する工程(1)を参照できる。
銅を含む溶液を含浸させる処理工程の後に、得られた触媒を乾燥および/または焼成することで、塩化水素酸化反応に不要な溶媒を、予め除去することが可能となり、また、活性成分を、再生触媒中に強固に固定化させることができるため、好ましい。
【0050】
再生触媒に、触媒の細孔容積以上の溶媒量が残存する場合には、流動層反応器への触媒充填前に、再生触媒を、乾燥および/または焼成することにより、細孔容積未満まで溶媒除去することができるため好ましいが、残存する溶媒量が触媒の細孔容積以下であれば、そのままの状態で反応に用いても、乾燥および/または焼成により溶媒を除去した後に、反応に用いてもよい。
【0051】
(塩素製造用再生触媒)
本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造するための触媒に用いることができ、活性成分である、銅元素(a)、アルカリ金属元素(b)および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molの範囲にあるランタノイド元素(c)を含有する粒子からなり、該粒子の平均真球度が0.80以上の球状であることが好ましい。また、本発明に係る塩素製造用再生触媒は、これら活性成分が、通常、多孔質の粒子担体に担持されている。担体は、前記劣化触媒を参照できる。
【0052】
本発明に係る塩素製造用再生触媒中において、銅元素(a)は、原子価が1価、2価いずれの状態で含まれていてもよい。また、再生触媒と劣化触媒のそれぞれの銅含有量を比較した場合、再生触媒の銅含有量は、劣化触媒の銅含有量よりも多く、好ましくは0.1重量%以上多く、より好ましくは、0.2重量%以上多く、さらに好ましくは、0.3重量%以上多い。再生触媒の銅含有量が、劣化触媒の含有量よりも0.1重量%以上多いと、より塩化水素酸化活性の向上効果が大きくなる為、好ましい。なお、上限は特に限定されないが、再生の効率を考慮すると、劣化触媒の銅含有量に対して、12重量%である。
【0053】
また、銅元素の含有量は、再生触媒100重量%あたり、0.5重量%以上、12.0重量%以下であり、好ましくは1.0重量%以上、10.0重量%以下、より好ましくは1.2重量%以上、8.0重量%以下である。銅含有量が12.0重量%より大きい再生触媒は、その製造が難しく、また高含有量の再生触媒を流動層反応器内に装入した際に、触媒間の流動性が悪化するおそれがあるため好ましくない。一方、銅含有量が0.5重量%未満の再生触媒では、充分な触媒の反応活性が得られず、高収率で塩素を得られないおそれがあるため経済的に好ましくない。
【0054】
本発明の塩素製造用再生触媒に含まれるアルカリ金属元素(b)については、前記劣化触媒を参照できるが、特に、ナトリウムおよび/またはカリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。アルカリ金属元素(b)の含有量は、特に限定されないが、塩素製造用触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、12.0重量%以下が好ましく、0.5重量%以上、10.0重量%以下がより好ましく、0.6重量%以上、8.0重量%以下がさらに好ましい。
【0055】
本発明の塩素製造用再生触媒に含まれるランタノイド元素(c)については、原子番号57〜71のいわゆるランタノイド元素のうち、298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molの範囲にあるランタノイド元素であり、前記劣化触媒を参照できる。
【0056】
塩素製造用再生触媒において、ランタノイド元素(c)の結合解離エネルギーが185kcal/molを超えると、酸素との結合が強くなりすぎ、また100kcal/mol未満であれば、酸素との親和性が低くなりすぎるため、反応活性(塩素収率)を十分に向上させることができない場合がある。
【0057】
塩素製造用再生触媒では、ランタノイド元素(c)として、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウムが好ましく、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウムが塩化水素から塩素への転化率、及び流動安定性のバランスの観点からより好ましい。これらのランタノイド元素(c)は、単独で使用しても、2種以上で使用しても構わない。
【0058】
ランタノイド元素(c)の含有量は、特に限定されないが、塩素製造用再生触媒100重量%あたり、0.5重量%以上、15.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以上、12.0重量%以下がより好ましく、1.2重量%以上、10.0重量%以下がさらに好ましい。
【0059】
本発明に係る塩素製造用再生触媒は、銅元素(a)、アルカリ金属元素(b)、および特定のランタノイド元素(c)を含み、それらの重量比は特に限定されないが、銅元素(a)とアルカリ金属元素(b)との重量比が1:0.2〜1:4.0の範囲であり、かつ、銅元素(a)とランタノイド元素(c)との重量比が1:0.2〜1:6.0の範囲であることが好ましい。また、銅元素(a)とアルカリ金属元素(b)の重量比は、1:0.2〜1:2.0の範囲であり、銅元素(a)とランタノイド元素(c)との重量比が、1:0.2〜1:3.0であることがより好ましく、銅元素(a)とアルカリ金属元素(b)との重量比は、1:0.3〜1:1.5であり、銅元素(a)とランタノイド元素(c)との重量比が、1:0.3〜1:2.5であることがさらに好ましく、銅元素(a)とアルカリ金属元素(b)との重量比は、1:0.4〜1:1.0であり、銅元素(a)とランタノイド元素(c)との重量比が、1:0.4〜1:2.0であることが最も好ましい。上記範囲では活性成分である各元素が複合化しやすく、長寿命が得られ、塩素製造用再生触媒が活性に優れたものとなるため、好ましい。
【0060】
本発明にかかる塩素製造用再生触媒の形状は、円柱状、リング状、顆粒状、あるいは球状等いずれの形状でも構わないが、触媒の耐摩耗性、耐久性に優れるとともに、流動性も良いため、球状が好ましい。再生触媒粒子の真球度の平均値は0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましい。0.80未満であると、摩擦による粒子の磨耗、粉化が無視できなくなり、反応中の流動性が悪化するおそれがある。良好な流動性が確保できなければ、反応効率が低下し、結果として生産性の低下につながる。なお、真球度の平均値の上限は、1であり、1のとき、真球を示す。また、再生触媒粒子の真球度の平均値は、たとえば、走査電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡写真の画像から求められる円形度係数(各粒子の真球度)の平均値により求めることができる。
【0061】
再生触媒の粒子形状が球形でない場合や、真球度の低い形状である場合には、摩擦による粒子の磨耗、粉化が無視できなくなり、反応中の流動性が低下することがある。良好な流動性が確保できなければ、反応効率が低下し、結果として生産性の低下につながる場合がある。
【0062】
また本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、劣化触媒、銅を含む溶液を含浸させる処理工程や、溶解除去をする処理工程などに由来する、上記活性成分および担体以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、ニッケル元素、コバルト元素、クロム元素、モリブデン元素、タングステン元素、鉄元素、マンガン元素、ルテニウム元素、パラジウム元素、イリジウム元素、バナジウム元素、ニオブ元素、アルミニウム元素、アルカリ土類金属元素、ランタン、セリウム、イッテルビウム、スカンジウム、イットリウムなどのその他の希土類元素などがあげられる。
【0063】
また、本発明にかかる塩素製造用再生触媒では、ランタン、セリウム、イッテルビウム、スカンジウム、イットリウムなどのその他の希土類元素を1種または2種以上含んでいる場合、好ましくは、塩素製造用再生触媒100重量%あたり、0.001重量%以上、10重量%以下である。また、本発明に係るランタノイド元素(c)と、その他の希土類元素との重量比は、特に限定されないが、好ましくは1:0〜1:9.0の範囲であり、より好ましくは1:0〜1:4.0の範囲である。
【0064】
本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、特に限定されないが、たとえば、平均粒子径が10μm以上、1000μm未満、好ましくは30μm以上、600μm未満、より好ましくは50μm以上、300μm未満であることが望ましい。
【0065】
本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、特に限定されないが、たとえば、平均細孔径が3nm以上、50nm以下であることが好ましく、6nm以上、30nm以下であることがより好ましい。平均細孔径が3nm未満であると、細孔内に銅をはじめとする活性成分を導入し難く、表面での凝集、細孔の閉塞などを招くおそれがあり好ましくない。一方、平均細孔径が50nmより大きいと、触媒の表面積の低下を招くこととなり、反応効率が低下してしまうおそれがあり好ましくない。
【0066】
本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、特に限定されないが、たとえば、比表面積は30m2/g以上、1000m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上、500m2/g以下であることがより好ましく、100m2/g以上、300m2/g以下であることがさらに好ましい。尚、本発明における比表面積は、たとえば、BET法比表面積測定装置(BELSORP−max:日本ベル株式会社製)を用いて測定できる。
【0067】
また本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、特に限定されないが、嵩密度が0.20g/ml以上、1.00g/ml以下であることが好ましく、0.30g/ml以上、0.80g/ml以下であることがより好ましい。
【0068】
また本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、特に限定されないが、細孔容積が0.3ml/g以上、3.0ml/g以下であることが好ましく、0.5ml/g以上、2.0ml/g以下であることがより好ましく、0.6ml/g以上、1.5ml/g以下であることがさらに好ましい。0.3ml/g未満であると、細孔内の空間が不足し基質の拡散が不充分となる、比表面積が低下し反応効率が低下する、等を招く場合があり好ましくない。一方、3.0ml/gよりも大きいと、触媒としての強度が低下し、反応中に触媒自身が破壊されてしまう場合があるため好ましくない。
【0069】
本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、活性成分である、銅元素(a)、アルカリ金属元素(b)および特定のランタノイド元素(c)を含有する粒子からなり、該粒子の平均真球度が0.80以上であれば、粒子の集合体からなるものであっても、全体として上記の特定性状を満たすものであればよい。
【0070】
また、本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、同じ組成の粒子のみの集合体であることが好ましいが、異なる組成の粒子を混合することで、全体として上記特定性状を満たすものであってもよい。異なる組成の粒子としては、塩化水素酸化反応に対して反応不活性な粒子(P)(不活性粒子(P)とも称す)など、組成や物性の異なる粒子が挙げられる。本発明において、このような不活性粒子(P)を再生触媒と共に用いると、高い流動性をより長期に渡り維持でき、より安定して塩素の供給をし得る。なお、このような不活性粒子は、本発明の目的を損なわない範囲で、劣化触媒中に含まれている不活性粒子をそのまま、再生触媒に添加、混合して用いても良い。反応不活性な粒子の素材としては、反応物(塩化水素、酸素)および生成物(塩素、水)に対して反応性を有しない限り、特に限定されるものではないが、たとえば、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ガラスなどが挙げられる。なかでもシリカ、アルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。また、不活性粒子(P)として、触媒が担持される前の担体を用いてもよい。不活性粒子(P)の形状は、円柱状、リング状、顆粒状、あるいは球状等いずれの形状でも構わないが、反応時の磨耗を抑えるためには、球状であることが好ましく、真球度の平均値が0.80以上の球状粒子であることがより好ましい。
【0071】
本発明において、塩素製造用再生触媒中の銅元素(a)の含有量は、触媒100重量%あたり、0.5重量%以上、12.0重量%以下であるが、塩素製造用再生触媒の使用に際して、不活性粒子(P)を混合することで、結果として、銅元素(a)の含有量が上記範囲外となっても良い。流動層反応器内の銅元素の含有量を、反応器内の全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下を維持することが好ましい。
【0072】
このような本発明にかかる塩素製造用再生触媒は、流動層反応器内で塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際の触媒として好適に用いることができる。
【0073】
(塩素の製造方法および塩素製造用触媒の活性維持方法)
本発明の塩素の製造方法は、流動層反応器内で、触媒の存在下、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する方法であって、該触媒は、前述した本発明にかかる塩素製造用再生触媒を含む。
【0074】
また、本発明の塩素製造用触媒の活性維持方法は、効率よく、塩素を製造するために、本発明により触媒を再生させながら、触媒の活性を維持する方法である。
本発明では、流動層反応器内における触媒層の反応活性及び流動安定性を長期にわたって維持することができ、高い塩素反応収率のもとで、より安価に、かつ安定的に塩素を製造し得る。また、触媒の廃棄量低減が可能となるため、環境負荷の低減に大きく貢献できる。
【0075】
なお、触媒は、本発明の目的を損なわない範囲で、流動層反応器内に存在する活性を有する触媒や劣化触媒などを含んでいてもよい。
本発明においては、反応を進行させながら、活性が低下した触媒の一部を再生するために、流動層反応器の抜出口から、触媒の一部または全部を抜き出し、抜き出した触媒を再生後、得られた再生触媒、あるいは必要に応じて不活性な粒子(P)と共に、流動層反応器に装入することも任意に実施可能である。この操作により、流動層反応器の反応活性を容易に制御することが可能となり、任意の反応活性に設定すること、さらには、所望の反応活性及び流動安定性を長期にわたって安価に維持することが可能となる。なお、再生触媒を得る方法については、前記の通りである。
【0076】
また、流動層反応器内の銅元素の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で、容易に制御可能であるが、好ましくは、流動層反応器中に含まれる全触媒の銅元素の含有量が、全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下であることが好ましい。
【0077】
本発明では、流動層反応器を用いるものであり、反応方式については、塩素を連続して製造することができるため流通式が好ましい。本反応は平衡反応であるため、反応温度が高すぎると塩素の収率が低下し、低すぎると触媒の活性が充分でないため、反応温度は、通常は250℃以上、500℃未満、好ましくは320℃以上、420℃未満で行う。反応時の圧力は、操作性を考慮すれば、大気圧以上、50気圧未満が好ましい。
【0078】
反応に用いる酸素の酸素源としては、空気をそのまま使用してもよいが、酸素分圧を制御しやすい純酸素がより好ましい。また、塩化水素を酸素により酸化して塩素を生成する反応は平衡反応であるため、塩素の収率は100%に至らず、未反応塩化水素と生成物である塩素との分離が必要である。酸素に対する塩化水素の量論モル比(塩化水素/酸素)は4であるが、一般的に理論量よりも酸素を過剰に供給する方が高活性、かつ良好な流動性を得ることができるため、酸素に対する塩化水素のモル比(塩化水素/酸素)は0.5以上、3.0未満が好ましく、1.0以上、2.5未満がより好ましい。また、必要に応じて、塩化水素、及び酸素以外のガスを反応器内に流通させても良い。
【0079】
さらに、反応の開始時、あるいは終了時には、酸素に対する塩化水素のモル比を低下させること、あるいは空塔速度を速めることなどにより安定な運転が可能となる。
また、使用する原料ガス中には、塩素の原料となる塩化水素、酸素以外に不純物ガスを含んでもいても良い。不純物ガスとしては特に限定されないが、例えば、塩素、水、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、塩化カルボニル、芳香族化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物等が挙げられる。特に一酸化炭素は、従来の触媒では触媒活性を低下させる要因となることが知られているが、塩素製造用触媒を使用する際には、触媒活性の顕著な低下は認められず、充分な活性が維持される。一酸化炭素の原料ガス中に含まれる濃度は10.0vol%未満が好ましく、6.0vol%未満がより好ましい。10.0vol%以上であると、一酸化炭素の酸化反応が顕著に進行し、発熱量が過剰となる、塩素の収率が減少する等の問題を生じることとなり好ましくない。
【0080】
また、本発明において、塩化水素の供給速度は、流動層反応器内に存在する全触媒1kgあたり、通常100NL/hr以上、2000NL/hr未満であることが好ましく、より好ましくは200NL/hr以上、1000NL/hr未満である。
【0081】
本発明におけるガス空塔速度は、0.01m/秒以上、1.0m/秒以下が好ましく、0.02m/秒以上、0.5m/秒以下がより好ましい。ガス空塔速度が0.01m/秒未満であると、触媒の流動が不充分となり流動性の悪化を招き好ましくない。ガス空塔速度が1.0m/秒より大きいと触媒が反応器内から飛散することとなり好ましくない。特に、本発明では、触媒の抜き出し、あるいは、再生触媒の装入時においても、ガス空塔速度を大きく変える必要がないため、効率よく、経済的に、長期に渡って安定して塩素を製造できる。
【0082】
本発明における塩素の製造方法において、その製造工程は特に限定されないが、以下の各工程を含むことが好ましい。
(1)塩化水素、酸素を含有する原料ガスを予め加熱する工程
(2)塩化水素の酸化反応を行う工程
(3)塩化水素、酸素、塩素、水を含有する生成ガスを冷却する工程
(4)生成ガスから塩化水素を回収・除去する工程
(5)生成ガスを脱水する工程
(6)生成ガスを圧縮、冷却し、塩素を液化塩素として分離する工程
【0083】
塩化水素、酸素を含有する原料ガスを予め加熱する工程においては、流動層反応器にガスが導入する前に100℃以上、400℃未満に加熱することが好ましく、150℃以上、350℃未満であることがより望ましい。予め加熱する温度が100℃未満であると、塩化水素ガスが系内で凝縮し、装置腐食が進行してしまうおそれがあるため、好ましくない。
【0084】
塩化水素、酸素、塩素、水を含有する生成ガスを冷却する工程においては、250℃〜500℃程度の、反応器内で生成した塩素及び水と、未反応の塩化水素及び酸素を含む生成ガスを冷媒によって冷却する。冷媒は特に限定されないが、水が好ましい。
【0085】
生成ガスから塩化水素を回収・除去する工程は、塩化水素、酸素、塩素、水を含有する生成ガスから未反応の塩化水素を回収・除去することを目的とする。塩化水素の回収・除去方法は、特に限定されないが、塩化水素を回収媒体に吸収させる方法が好ましい。回収媒体は、特に限定されないが、取り扱いの容易さから水が好ましい。また、生成ガスを冷却する工程、及び塩化水素を吸収する工程は、別々の装置を用いて実施しても良いし、同一の装置で実施しても良い。
【0086】
生成ガスを脱水する工程は、塩素、酸素、水を含む生成ガスから水を除去することを目的とする。脱水方法は、特に限定されないが、冷却脱水法、吸収脱水法、吸着脱水法、圧縮脱水法等の方法が好適に使用でき、吸収脱水法による方法が特に好ましい。当該工程を用いることで、生成ガス中に含まれる残存水分をほぼ完全に除去できる。
【0087】
生成ガスを圧縮、冷却し、塩素を液化塩素として分離する工程においては、前工程で水分除去された生成ガスを圧縮・冷却し、塩素を液化させてガス相より分離する。この際に塩素を液化分離した後のガス相は、酸素、未回収の塩素を含んでいる。この酸素を含むガスは、(1)塩化水素、酸素を含有する原料ガスを予め加熱する工程へ、再度、導入することにより、(2)塩化水素の酸化反応工程の原料ガスとして使用することができる。
【0088】
これらの工程を経ることにより、高純度の塩素が、連続的かつ効率的に製造可能となる。
本発明では、流動性向上の為に、塩化水素酸化反応に対して反応不活性な粒子(P)を、塩素製造用触媒と共に反応器内に共存させて用いることも可能である。この際の不活性粒子(P)の使用割合は、特に限定されるものではないが、流動層反応器内に存在する全触媒と不活性粒子とからなる粒子全体に対して、1重量%以上、80重量%以下、好ましくは2重量%以上、50重量%以下、より好ましくは2重量%以上、40重量%以下である。不活性粒子の添加量が1重量%より少ないと、流動性向上の効果が低くなるおそれがあり、80重量%より多いと、塩素の収率が低下するおそれがある。なお、不活性粒子(P)については、前述の記載のとおりである。
【実施例】
【0089】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例または参考例の触媒の活性評価は、特に記述がない限りは、以下の触媒反応試験法の条件にて実施した。また、以下の実施例および参考例において、各性状の測定及び評価は以下のようにして実施した。
【0090】
〔1〕触媒反応試験法
中空部に厚さ3mmのガラスフィルターを設置した内径16mmのガラス製反応管(図1参照)の下部に石英砂を充填し、ガラス反応管中のガラスフィルターの上部に触媒を21.5ml充填する。ガラス反応管下部より、塩化水素を90.0Nml/min、酸素を45.0Nml/min供給し、触媒を流動させながら、常圧下、反応温度380℃で反応させた。この時のガス空塔速度は2.8cm/secであり、触媒1kg当りの塩化水素供給量は約600NL/hrであった。
【0091】
〔2〕塩素の収率
ヨウ化カリウム(関東化学(株)、オキシダント測定用)を水に溶解し、0.2mol/L溶液を調製する。この溶液300mlに反応管から生成ガスを8分間吸収させた。この溶液を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液(関東化学(株))で滴定し、生成した塩素の量を測定し、塩素の収率を求めた。尚、塩化水素の酸化反応においては、塩素、及び水以外の副生物が観測されない為、塩素の収率は塩化水素の転化率とほぼ同一となる。
【0092】
〔3〕触媒流動性の評価
反応温度を360℃とする以外は、前記触媒反応試験法に記載の方法にて、塩化水素の酸化反応を実施した。触媒層下部、すなわち、ガラスフィルターと接触している部分をA、ガラスフィルターから上へ40mmの部分をBとした場合に、AとBの温度差を測定した。この温度差が±2℃未満である状態を流動性良好、±2℃以上である場合を流動性不良と判断した。
【0093】
〔4〕平均真球度の測定
平均真球度の測定は、以下の手順に従って行った。
1.測定サンプルを試料台の上に粘着テープで固定し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した。
【0094】
2.SEM像を画像解析装置に取り込み、各粒子の真球度(円形度係数)を計測し、測定粒子数から平均真球度を算出した。測定対象は円相当径が30μm以上の粒子とし、測定粒子数は1000以上とした。
なお、測定で使用した装置および測定条件は、以下のとおりである。
【0095】
走査電子顕微鏡(SEM):(株)日立ハイテクノロジーズ社製S−4800
加速電圧:30kV、エミッション電流:20μA、倍率:30倍
画像解析装置:ライカマイクロシステムズ(株)社製ライカQ−win
【0096】
〔5〕触媒中の各元素の濃度
本発明において、触媒中の各元素の含有量は、蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700、島津製作所社製)を用いて測定した。
【0097】
[参考例1]
担体として、球状シリカ(富士シリシア化学株式会社、Q−15、粒度分布:75〜300μm、メーカー分析表よりの物性値は、平均細孔径:15nm、平均粒子径:150μm、嵩密度:0.4g/ml、細孔容積:1.2ml/gである。)を用いた。
【0098】
水59.0kgと塩化第二銅(和光純薬、特級)4.04kg、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)4.55kg、塩化カリウム(和光純薬、特級)2.15kgを加えて水溶液とした。この水溶液をシリカ担体120kgに噴霧含浸させた後、減圧型回転式乾燥機を用いて水分を除去し、参考触媒1を得た。この参考触媒1中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.00重量%であり、平均真球度は0.925であった。
【0099】
得られた参考触媒1の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、参考触媒1中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0100】
[参考触媒1の塩化水素酸化反応処理]
触媒層が存在する部分の水平断面における内径が2.70m、該断面における相当直径が0.84mである、直立インターナルおよび水平インターナルを含む円筒型の純ニッケル製反応器内に、参考触媒1を充填層高が2.80mとなるように充填した。この際、触媒層中に含まれる銅元素の含有量は1.50重量%であった。加熱により反応器内部の触媒層温度を350℃とした後、反応器下部より、触媒1kgあたり、塩化水素ガス:370NL/hr、酸素ガス:230NL/hr.塩化水素及び酸素以外のガス:200NL/hrからなる混合ガスを導入し、触媒を流動させながら塩化水素酸化反応を実施した。このとき、反応の進行による発熱により反応温度は400℃近くまで増加した。反応が定常状態となった後、300hr保持した。300hr後、塩化水素ガスの供給を止め、触媒層を冷却した。冷却後の触媒を取り出し、劣化触媒1とした。
【0101】
[参考例2]
劣化触媒1中に含まれる銅元素の濃度は0.89重量%、カリウム元素の濃度は0.58重量%、サマリウム元素の濃度は1.03重量%、ニッケル元素の濃度は0.10重量%であり、平均真球度は0.924であった。
【0102】
劣化触媒1の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、劣化触媒1中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0103】
[実施例1]
1000mlガラス製ビーカー中に3wt%硝酸水溶液を320g添加する。ここに劣化触媒1を80g添加し、常温で20分間、攪拌した。攪拌終了後、劣化触媒1を含むスラリーを減圧ろ過した後、続けて水300gで3回通水洗浄する。通水洗浄後、ウェットケーキ1を179.4g回収した。回収したウェットケーキ1の水分量を測定したところ、58.0wt%であった。このウェットケーキ1を1000mlガラス製ナスフラスコに充填し、エバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、洗浄後触媒1(触媒100重量%あたり、銅元素:0.02重量%、カリウム元素:0.01重量%、サマリルム元素:0.06重量%、ニッケル元素:0.01重量%)を75.2g得た。
【0104】
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、常温下、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒1を得た。再生触媒1中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.919であった。
【0105】
得られた再生触媒1の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒1中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0106】
[実施例2]
硝酸水溶液中の硝酸濃度を1wt%とする以外は、実施例1と同様にして洗浄後触媒2、及び再生触媒2を得た。再生触媒2中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.920であった。
【0107】
得られた再生触媒2の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒2中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0108】
[実施例3]
3wt%硝酸水溶液の代わりに、水を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄後触媒3、及び再生触媒3を得た。再生触媒3中に含まれる銅元素の濃度は1.6重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.7重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.917であった。
【0109】
得られた再生触媒3の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒3中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0110】
[実施例4]
3wt%硝酸水溶液の代わりに、3wt%塩酸水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄後触媒4、及び再生触媒4を得た。再生触媒4中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.00重量%であり、平均真球度は0.921であった。
【0111】
得られた再生触媒4の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒4中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0112】
[実施例5]
実施例1に記載の方法にて調製したウェットケーキ1を80℃で3hr乾燥した後、420℃で3hr焼成し、洗浄後触媒5を得た。
【0113】
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒5を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒5を得た。再生触媒5中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.923であった。
【0114】
得られた再生触媒5の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒5中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0115】
[実施例6]
実施例1と同様の方法により、ウェットケーキ1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これにウェットケーキ1を119.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒6を得た。再生触媒6中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%であり、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.917であった。
【0116】
得られた再生触媒6の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒6中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0117】
[実施例7]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水12.5gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒7を得た。再生触媒7中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.920であった。
【0118】
得られた再生触媒7の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒7中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0119】
[実施例8]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水125gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒8を得た。再生触媒8中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.921であった。
【0120】
得られた再生触媒8の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒8中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0121】
[実施例9]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25.0gと塩化第二銅(和光純薬、特級)2.89g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)3.25g、塩化カリウム(和光純薬、特級)1.53gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒9を得た。再生触媒9中に含まれる銅元素の濃度は2.5重量%、カリウム元素の濃度は1.5重量%、サマリウム元素の濃度は2.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であった。得られた再生触媒9とシリカ担体1を重量比で6:4となるように混合し、混合触媒1を得た。混合触媒1の平均真球度は0.915であった。
【0122】
混合触媒1の塩素収率、及び流動性を上記の方法により測定、評価した。結果を、混合触媒1中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0123】
[実施例10]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水37.5gと塩化第二銅(和光純薬、特級)6.21g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)6.98g、塩化カリウム(和光純薬、特級)3.30gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒10を得た。再生触媒10中に含まれる銅元素の濃度は5.0重量%、カリウム元素の濃度は3.0重量%、サマリウム元素の濃度は5.0重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であった。得られた再生触媒10とシリカ担体1を重量比で3:7となるように混合し、混合触媒2を得た。混合触媒2の平均真球度は0.912であった。
【0124】
混合触媒2の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、混合触媒2中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0125】
[実施例11]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)1.89g、塩化ナトリウム(和光純薬、特級)1.20gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒11を得た。再生触媒11中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、ナトリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.919であった。
【0126】
得られた再生触媒11の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒11中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0127】
[実施例12]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化ユウロピウム・六水和物(和光純薬、特級)1.90g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒12を得た。再生触媒12中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、ユウロピウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.917であった。
【0128】
得られた再生触媒12の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒12中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0129】
[実施例13]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化ネオジム・六水和物(和光純薬、特級)1.86g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒13を得た。再生触媒13中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、ネオジム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.915であった。
【0130】
得られた再生触媒13の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒13中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0131】
[実施例14]
実施例1と同様の方法により、洗浄後触媒1を得た。
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.68g、塩化プラセオジウム・七水和物(和光純薬、特級)1.94g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.90gを加えて水溶液とし、これに洗浄後触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒14を得た。再生触媒14中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、プラセオジウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.01重量%であり、平均真球度は0.920であった。
【0132】
得られた再生触媒14の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒14中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0133】
[実施例15]
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)0.56g、塩化サマリウム・六水和物(和光純薬、特級)0.50g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.23gを加えて水溶液とし、これに劣化触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒15を得た。再生触媒15中に含まれる銅元素の濃度は1.5重量%、カリウム元素の濃度は0.9重量%、サマリウム元素の濃度は1.5重量%、ニッケル元素の濃度は0.09重量%であり、平均真球度は0.919であった。
【0134】
得られた再生触媒15の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒15中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0135】
[実施例16]
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)0.28gを加えて水溶液とし、これに劣化触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒16を得た。再生触媒16中に含まれる銅元素の濃度は1.2重量%、カリウム元素の濃度は0.58重量%、サマリウム元素の濃度は1.03重量%、ニッケル元素の濃度は0.10重量%であり、平均真球度は0.914であった。
【0136】
得られた再生触媒16の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒16中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0137】
[実施例17]
500mlガラス製ナスフラスコに水25gと塩化第二銅(和光純薬、特級)0.046gを加えて水溶液とし、これに劣化触媒1を50.0g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固し、再生触媒17を得た。再生触媒17中に含まれる銅元素の濃度は0.94量%、カリウム元素の濃度は0.58重量%、サマリウム元素の濃度は1.03重量%、ニッケル元素の濃度は0.10重量%であり、平均真球度は0.918であった。
【0138】
得られた再生触媒17の塩素収率、及び流動性を前記した方法により測定、評価した。結果を、再生触媒17中のランタノイド元素の酸素との結合解離エネルギー値とともに表2に示す。
【0139】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明によれば、流動層反応器内において、性能が低下した劣化触媒を効率よく、経済的に、高い回収率で再生することができ、触媒の初期性能を回復した、すなわち、触媒活性が高く、触媒寿命が長く、安価で安定供給が可能であって、固着を生じず高い流動性を長期にわたって維持し得る、流動層反応器での反応に好適な塩素製造用再生触媒を高収率で提供できる。
【0141】
また、本発明の塩素の製造方法によれば、塩素を長期にわたり安定して連続的かつ効率的に、そして、より経済的に製造することができる。本発明の触媒の活性維持方法によれば、触媒の優れた反応活性及び高い流動安定性を長期にわたって維持し、プラントの性能を長期に確保できる。
【0142】
さらに、本発明によれば、劣化した触媒を効率よく再利用できるため、環境への負荷を最小限にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0143】
1 生成ガス
2 ガラス反応管(内径:16mm)
3 ヒーター
4 触媒層
5 ガラスフィルター
6 石英砂
7 原料ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用した劣化触媒に、銅を含む溶液を含浸させる処理工程を1回または2回以上含む、塩素製造用再生触媒の製造方法であり、
前記劣化触媒は、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒である
ことを特徴とする塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項2】
前記得られた再生触媒は、その銅含有量が、前記劣化触媒の銅含有量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項3】
前記銅を含む溶液を含浸させる処理工程の前に、前記劣化触媒中に含まれる活性成分および被毒成分を、水および/または酸性溶液により溶解除去する処理工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項4】
前記溶解除去する処理工程の後に、乾燥および/または焼成工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項5】
前記銅を含む溶液が、銅、アルカリ金属および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイドを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項6】
前記銅を含む溶液を含浸させる処理工程の後に、乾燥および/または焼成工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項7】
前記得られた再生触媒は、その銅含有量が、前記劣化触媒の銅含有量よりも、0.1重量%以上多いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項8】
前記得られた再生触媒の平均真球度が、0.80以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の塩素製造用再生触媒の製造方法。
【請求項9】
劣化触媒に、銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行う、劣化触媒の再生方法であり、
前記劣化触媒は、流動層反応器を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用した触媒であり、かつ(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒である、
ことを特徴とする劣化触媒の再生方法。
【請求項10】
得られた再生触媒は、その銅含有量が、前記劣化触媒の銅含有量よりも多いことを特徴とする請求項9に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項11】
前記銅を含む溶液を含浸させる処理の前に、前記劣化触媒中に含まれる活性成分および被毒成分を、水および/または酸性溶液により溶解除去させる処理を行うことを特徴とする請求項9または10に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項12】
前記溶解除去させる処理の後に、乾燥および/または焼成することを特徴とする請求項11に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項13】
前記銅を含む溶液が、銅、アルカリ金属および298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイドを含むことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項14】
前記銅を含む溶液を含浸させる処理の後に、乾燥および/または焼成することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項15】
得られた再生触媒は、その銅含有量が、前記劣化触媒の銅含有量よりも、0.1重量%以上多いことを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項16】
得られた再生触媒の平均真球度が、0.80以上であることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載の劣化触媒の再生方法。
【請求項17】
流動層反応器内で、触媒を用いて、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する方法であって、かつ、前記流動層反応器中に含まれる全触媒の銅元素の含有量が、全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下であり、
前記流動層反応器の抜出口から、前記触媒の一部を抜き出し、抜き出した触媒に、少なくとも銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行い、得られた触媒を流動層反応器に装入する工程を含み、
前記抜き出した触媒は、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒を含む、
ことを特徴とする塩素の製造方法。
【請求項18】
流動層反応器の抜出口から、塩化水素を酸素により酸化して塩素を製造する際に使用する塩素製造用触媒の一部を抜き出し、抜き出した触媒に、少なくとも銅を含む溶液を1回または2回以上含浸させる処理を行い、得られた触媒を流動層反応器に装入する、触媒を再生させながら触媒の活性を維持する方法であり、
前記流動層反応器中に含まれる全触媒の銅元素の含有量が、全触媒100重量%あたり、0.3重量%以上、4.5重量%以下であり、
前記抜き出した触媒が、(A)銅元素、(B)アルカリ金属元素、および(C)298Kにおける酸素との結合解離エネルギーが100〜185kcal/molを満たすランタノイド元素を含む活性成分が、多孔質の粒子の担体に担持された触媒を含む、
ことを特徴とする塩素製造用触媒の活性維持方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−61450(P2012−61450A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209712(P2010−209712)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】