説明

塩酸槽のゴムライニング診断方法

【課題】耐酸煉瓦の一部を除去する必要がなく、操業停止時間や診断コストを低減することが可能な塩酸槽のゴムライニング診断方法を提供する。
【解決手段】耐酸煉瓦3の外側に耐酸ゴムライニング2を有し、耐酸煉瓦3同士の間に、塩酸又は塩酸を含む液体に接触するエキスパンションゴム4を介装する塩酸槽のゴムライニング2を診断するにあたり、エキスパンションゴム4の槽内側部分から、ゴムライニング2に及ぶ試料又はゴムライニング2近傍に及ぶ試料5を切り取り、切り取られた試料5のゴムライニング2近傍部分でゴムライニング2の劣化状態を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸洗やエッチングに用いられる塩酸槽のゴムライニング診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の酸洗やエッチングは、内側に耐酸煉瓦が貼り付けられた酸洗槽で行われる。酸洗槽の耐酸煉瓦の外側には、耐酸性のゴムライニングが施されている(例えば、特許文献1参照)。このゴムライニングは耐酸性を有するが、耐酸煉瓦の目地からしみこんだ塩酸によって、どうしても劣化してしまう。従来は、このゴムライニングの劣化状態を診断するために、耐酸煉瓦の一部を除去し、ゴムライニングから直接試料を採取して分析し、例えばゴムの劣化層の厚さから劣化の進行度を診断している。鉄鋼の酸洗やエッチングには、酸洗槽として塩酸槽がよく用いられるが、この場合も同様である。
【特許文献1】特開平2−97689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記塩酸槽のゴムライニング診断方法では、耐酸煉瓦の一部を除去しなければならないので、塩酸槽を長時間停止させたり、ゴムライニング採取のために多大なコストが必要となったりする。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、耐酸煉瓦の一部を除去する必要がなく、操業停止時間や診断コストを低減することが可能な塩酸槽のゴムライニング診断方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の塩酸槽のゴムライニング診断方法は、耐酸煉瓦の外側に耐酸ゴムライニングを有し、耐酸煉瓦同士の間に、塩酸又は塩酸を含む液体に接触するエキスパンションゴムを介装する塩酸槽のゴムライニング診断方法であって、前記エキスパンションゴムの槽内側部分から、ゴムライニングに及ぶ試料又はゴムライニング近傍に及ぶ試料を切り取り、切り取られた試料のゴムライニング近傍部分でゴムライニングの劣化状態を診断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
而して、本発明の塩酸槽のゴムライニング診断方法によれば、耐酸煉瓦の外側に耐酸ゴムライニングを有し、耐酸煉瓦同士の間に、塩酸又は塩酸を含む液体に接触するエキスパンションゴムを介装する塩酸槽のゴムライニングを診断するにあたり、エキスパンションゴムの槽内側部分から、ゴムライニングに及ぶ試料又はゴムライニング近傍に及ぶ試料を切り取り、切り取られた試料のゴムライニング近傍部分でゴムライニングの劣化状態を診断する構成としたため、耐酸煉瓦の一部を除去する必要がなく、操業停止時間や診断コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の塩酸槽のゴムライニング診断方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のゴムライニング診断方法が適用される塩酸槽の概略構成図である。この塩酸槽は、図に示すように、断面が方形で、図の前後方向に長手なものである。図中の符号1は、塩酸槽の外枠を構成する鉄皮、符号2は、鉄皮1の内側に張られた耐酸性のゴムライニングである。このゴムライニング2の内側には、凡そ耐酸煉瓦3が積層されているが、塩酸槽の長手方向所定間隔ごとに、エキスパンションゴム4が、耐酸煉瓦3の層同士の間に介装されるようにして設けられている。なお、エキスパンションゴム4も、ゴムライニング2と同様の耐酸性のゴムからなる。
【0007】
図2aには、耐酸煉瓦3の積層部分の縦断面図を、図2bには、エキスパンションゴム4の部分の縦断面図を示す。積層される耐酸煉瓦3同士の間は目地5で埋められているが、この目地5から染みこんだ塩酸又は塩酸を含む液によってゴムライニング2が劣化する。また、エキスパンションゴム4は、塩酸槽の熱膨張や熱収縮を吸収されるために設けられているが、エキスパンションゴム4の内側は、槽内の塩酸又は塩酸を含む液に直接晒される。
【0008】
従来は、ゴムライニング2の劣化状態を診断するため、耐酸煉瓦3の一部を除去し、ゴムライニング2から直接的に試料を採取し、劣化層の厚さを測定するなどしている。一方、本実施形態では、図3に示すように、エキスパンションゴム4の槽内側部分から、例えばコアドリルのような工具で穴を穿ち、ゴムライニング2に及ぶ試料又はゴムライニング2近傍に及ぶ試料5を細長く切り取って採取し、図4に示すように、その試料5のゴムライニング2の近傍部分7でゴムライニング2の劣化状態を診断する。エキスパンションゴム4はゴムライニング2と同様の耐酸性ゴムであり、採取・診断する部位もゴムライニング2の近傍部分であるから、その部分の劣化状態は、ゴムライニング2の劣化状態と同等又はほぼ同等である。従って、ゴムライニングの劣化状態を診断する際に、耐酸煉瓦3の一部を除去したり、ゴムライニング2から直接的に試料を採取したりする必要がなく、操業停止時間やコストを低減することができる。
【0009】
また、エキスパンションゴム4の試料5として切り取られた部分には、図3に示すように同等の耐酸性を有するゴム定形部材6を押し込んだり、或いは不定形ゴム部材を注入したりすることで、復元することができる。
このように、本実施形態の塩酸槽のゴムライニング診断方法によれば、耐酸煉瓦3の外側に耐酸ゴムライニング2を有し、耐酸煉瓦3同士の間に、塩酸又は塩酸を含む液体に接触するエキスパンションゴム4を介装する塩酸槽のゴムライニング2を診断するにあたり、エキスパンションゴム4の槽内側部分から、ゴムライニング2に及ぶ試料又はゴムライニング2近傍に及ぶ試料5を切り取り、切り取られた試料5のゴムライニング2近傍部分でゴムライニング2の劣化状態を診断することとしたため、耐酸煉瓦3の一部を除去する必要がなく、操業停止時間や診断コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の塩酸槽のゴムライニング診断方法の一実施形態を示す塩酸槽の概略構成図である。
【図2】(a)は図1の塩酸槽の耐酸煉瓦部分の縦断面図、(b)は図1の塩酸槽のエキスパンションゴム部分の縦断面図である。
【図3】エキスパンションゴムから試料を切り出す説明図である。
【図4】図3で切り出された資料の説明図である。
【符号の説明】
【0011】
1は鉄皮、2はゴムライニング、3は耐酸煉瓦、4はエキスパンションゴム、5は試料、6はゴム定形部材、7は近傍部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸煉瓦の外側に耐酸ゴムライニングを有し、耐酸煉瓦同士の間に、塩酸又は塩酸を含む液体に接触するエキスパンションゴムを介装する塩酸槽のゴムライニング診断方法であって、前記エキスパンションゴムの槽内側部分から、ゴムライニングに及ぶ試料又はゴムライニングの近傍に及ぶ試料を切り取り、切り取られた試料のゴムライニング近傍部分でゴムライニングの劣化状態を診断することを特徴とする塩酸槽のゴムライニング診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90419(P2010−90419A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259946(P2008−259946)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】