説明

塩類を含む土の除塩方法

【課題】 塩類含有土の除(脱)塩を効率よく行う。
【解決手段】 この発明は塩類を含む土を除塩する方法において、あらかじめ水分を調整し、土を造粒して、加熱によって水分を造粒物表面より浸出させて蒸発させる。そして土に含まれる塩類を造粒物表面に析出させた後、水洗することによって除塩を行う。 上記土が有機物を含む土であり、また造粒前の土に有機物又は有機物を含む土を添加混入することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土などの塩類を含む土を造粒加熱し、その造粒物を水洗することによって除塩を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にヘドロと呼ばれる黒色の高含水比の浚渫土は、粘土・シルトといった粒径の極めて小さい土粒子によって構成されており、数%〜20%程度の有機物を含んでいる。また、含水比が高く、著しく軟弱でその処理に多大なコストがかかるため、安価な処理技術が求められている。特に、内湾、汽水域等の浚渫工事において発生する浚渫土は、塩分を含むため農地に還元した場合、植物に生育障害が出る為、除(脱)塩を行う必要があった。
【0003】
一般的な除塩方法としては、排水設備を持つストックヤードを整備し、浚渫土を堆積させ、自然の降雨によって除々に除塩を行う方法が行われていた。また、河川水や地下水などを強制的に給水し、除塩する方法も行われている。
【0004】
また、浚渫された軟弱な土にセメント等の固化材を添加し、改良する方法もよく行われている。しかし、固化材によって固形化させるため、農地への適用は難しい。
【0005】
一方、下記特許文献1に示すように、パルプ部材をペーパーロールとし、該ペーパーロールにより耕作土中の塩分を自然乾燥によってペーパーロールに濃集させる技術が公知である。
【特許文献1】特開平6−141680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの処理方法は安価ではあるが、処理場の設置に広大な面積を必要とし、また相当の期間が必要であった。その原因として、浚渫土の粒子が小さい為、透水性が悪いことことがあげられる。そのため、降雨・強制給水等によって、土に含まれる塩分が排出されにくく、処理に時間がかかる問題があった。また、ペーパーロールによる 除塩では自然乾燥によって濃集させるため時間がかかるほか、脱塩率も低く、ペーパーロールの埋設や事後処理に多大な労力とコストを必要とし、現場作業が多い等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の除塩方法は、上記問題点を解決するために、第1に塩類を含む土を、あらかじめ水分調整し、造粒して、加熱によって水分を造粒物表面より浸出させて短時間で蒸発させ、土に含まれる塩類を造粒物表面に析出させた後、水洗することによって除塩を行うことを特徴としている。
特に、土を粒状化することによって透水性を改善し、造粒物の水洗時間を短くし、効率よく除塩を行うことにより、短時間での除塩を可能にする。
【0008】
第2に、粒状体の安定性を高めるために土が有機物を含む土であることを特徴としている。
【0009】
第3に、造粒前の土に有機物又は有機物を含む土を添加混入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成される本発明によれば、浚渫土のストックヤードや処理施設に広大な面積を必要とせず、短時(期)間で高い効率の除塩を行うことができるほか、現場作業も少なく労力や設備コスト等の面で経済性が高い。また有機質を含み又は含ませたものでは団粒の耐水安定性、通水性も高く、有機質の量をコントロールすることにより植物の成育性も高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
処理対象土は浚渫土・干拓地等の塩類集積土などであるが、泥水の様な著しく含水率比が高いもの、また著しく乾燥しているものは造粒できないため適さない。そこで、あらかじめ水分調整を実施する。なお、好ましい含水比は土の粒土によって異なるがおおむね40〜80%の範囲である。処理対象土がこの範囲内であれば水分調整は不要である。水分調整方法は凝集沈殿、静置分離、遠心分離、加圧脱水、加熱脱水、加水等1または2以上の組み合わせを行ってもよい。
【0012】
短時間で除塩を行うために造粒を行い、透水性を改善する。この透水性は、土の粒子が細かいほど透水しにくくなるため、造粒によって透水しやすくするとともに、乾燥を促進させる効果も期待できる。この造粒では、通水性とハンドリング性から0.2〜20mmに造粒することが好ましい。
【0013】
加熱によって造粒物に含まれる水分が蒸発する。このとき、造粒物内に含まれる水溶性の塩類は、水と一緒に造粒物表面へ移動し、析出する。これにより除塩を効果的に実施することが可能である。加熱温度は50〜200℃、水洗による造粒物の安定性を考慮するなら、100〜200℃が好ましい。なお、この加熱処理は造粒処理と同時に行ってもよい。
【0014】
塩類を表面に析出させた造粒物は、水洗によって除塩を行うことができる。水洗は、造粒物をかん水(浸して洗う方法)させてもよいし、造粒物堆積層の上面から散水させ、下面へ通水させてもよい。このとき使用する水は、河川水、下水処理水など塩類をなるべく含まないものが好ましい。
また、水洗は湾内や汽水域の通常の浚渫土であれば造粒物体積の5〜10倍程度の水で除塩可能である。
【0015】
さらに図4に示すように、浚渫土に下水汚泥等の有機質を10%程度添加混合することにより、団粒の耐水安定性を高め、植物の育成効果を高めることもできるほか、当初から粘土等の無機質と有機物とを含む土を処理することも可能であり、この場合も上記と同様の効果が期待できる。
【0016】
次に上記実施形態のものの具体的実施例を、図面に即して説明する。下記実施例1は浚渫土を用いたものを示す。
【実施例1】
【0017】
図1〜図5は実施例1の実施方法と結果を示し、この例では塩類を含む土として、島根県松江市松江港においてグラブ船浚渫された浚渫土を用いた。この土は、含水比80%EC43.5dS/mであり、粒度は0.2mmのふるいを97%通過するものであった。 但し、この実験は含水比80%の浚渫土は、そのままではEC値の測定ができないため、体積比を5倍にしたものであるため、実際のEC値はこの数値よりはるかに高いものと推測される。
【0018】
水分調整として1日静置し、上澄みを捨て含水比75%とした。水分調整した土を、造粒と加熱を同時に行う装置に投入し、加熱温度110℃および160℃で加熱造粒を処理を実施した。加熱造粒物の温度が110℃または160℃に達した時間を0時間とし、その後1時間、10時間で試料採取を行った。また対象として常温にて風乾させたものを用いた。
【0019】
これらの造粒物の水に浸かった際の粒状を保持できること確認するため、安定性試験を行った。安定性試験は、造粒物を2mmふるいを通過させ、0.2mmふるいに留まる様にふるい分け、遠沈管に造粒物を3g、蒸留水を30ml入れ、200rpmで往復振盪した。振盪時間は1時間および10時間である。振盪が終了した後、試料を取り出し、試料を崩さないよう、再度2mmふるいを通過し、0.2mmふるいに留まる様にふるい分け、乾燥させて団粒の残存重量を測定した。この結果を図4に示す。
図4によれば残存率はいずれの場合も風乾のものより加熱したものの残存率(安定性)が高い。
【0020】
上記土を、同様の造粒加熱装置より160℃にて処理を行い、160℃に達した時間を0時間とし、3時間経過した後取り出し、除塩を行った。
除塩は、プラスチック製の鉢に300mlの造粒物を入れ、蒸留水を300mlづつ、1時間毎に計6回水洗した。なお、鉢の底には回収トレーを置き、散水毎に洗浄水を回収しECを測定した。測定結果を図5に示す。図5によれば、第1回目以後の測定からEC値は急速に低下し、第6回目時点では市販の栽培土の未処理状態以下に低下している(塩類が除去されている)ことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は内海の湾内や汽水域等の浚渫土のように塩類を含む土を除塩することにより、栽培圃場用の培土、土壌改良資材等として利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の除塩作業のフロー図である。
【図2】同じく除塩作業状態を示す模式図である。
【図3】造粒乾燥・熱処理後の振盪による安定化試験の作業状態を示す模式図である。
【図4】団粒の安定化試験結果を示すグラフである。
【図5】団粒化後の塩類除去効果をEC値で示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩類を含む土を除塩する方法において、あらかじめ水分を調整し、土を造粒して、加熱によって水分を造粒物表面より浸出させて蒸発させ、土に含まれる塩類を造粒物表面に析出させた後、水洗することによって除塩を行う塩類を含む土の除塩方法。
【請求項2】
土が有機物を含む土である請求項1の塩類を含む土の除塩方法。
【請求項3】
造粒前の土に有機物又は有機物を含む土を添加混入する請求項1又は2の塩類を含む土の除塩方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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