説明

填料内添紙

【課題】低米坪でありながら、不透明度と手肉感に優れた紙を提供すること。
【解決手段】パルプに填料を内添した紙であって、前記填料に、填料処理剤としてアニオン性化合物をあらかじめ添加した後、パルプに混合して抄紙することにより得られることを特徴とする紙。前記アニオン性化合物がスチレン−アクリルポリマーであることが好ましく、前記填料が、製紙スラッジ由来の再生粒子、脱墨フロス由来の再生粒子凝集体、又は、脱墨フロス由来の再生粒子凝集体をシリカで被覆したシリカ被覆再生粒子凝集体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、填料を内添した紙に関する。さらに詳しくは、低米坪の紙において、手肉感と不透明度が高い紙であり、例えば商業印刷物、情報用紙、包装用紙、新聞用紙、板紙等に好適に使用し得る紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙は商業印刷物、情報用紙、包装用紙、新聞用紙、板紙等、幅広く使用されているが、近年の環境問題や、持ち運びの容易さから、軽量化のニーズが高まっている。しかしながら、単に重量を低下させただけでは、へたり易く腰のない紙になるだけでなく、不透明度が低下し、裏面の印字が透けて見えたり、さらには裏面のインキが透過して表面の印刷が不鮮明になるトラブルが発生する。
【0003】
不透明性を向上させるために、填料を増配した場合には、填料が塊状になりやすく、塊になった部分の強度が低下し、紙の手肉感が低くなり、断紙が発生しやすくなる。紙の手肉感を維持するために、紙表面に澱粉やポリアクリルアミドなどの紙力向上剤を塗布する方法があるが(例えば特許文献1)、大規模な塗工設備が必要であるだけでなく、塗工されなかった部分が粕となり、異物化する問題がある。手肉感を向上させるためには、紙内部の繊維同士の絡み合いを向上させる必要があり、フィブリル化を促進したり、水素結合を阻害する作用のある内添填料を低減する方法が考えられるが、フィブリル化は手肉感の低下を招き、内添填料の低減は不透明度の低下を発生させる。
【0004】
填料配合量を低減させつつ高い不透明度を得る方法として、より不透明度の高い填料である、再生粒子凝集体を使用することができる(例えば特許文献2)。しかしながら、一般的な填料(例えばタルク、炭酸カルシウム)は、結晶構造が高く、電荷が一定であるのに対し、再生粒子凝集体はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムの混合物からなり、結晶化しておらず、電荷も一定でないため、前記一般的な填料とは異なり、従来一般に用いられてきた適切な凝集剤、凝結剤を用いても歩留りが悪く、期待した不透明度の向上効果が得られにくい問題があった。
【0005】
填料の歩留りを効率的に向上させる方法としては、填料を紙の原料であるパルプに添加する前に、予めCMCやエピクロロヒドリンと混合する方法があるが(例えば特許文献3、4)、この方法では填料が塊状になり易く、不透明度と手肉感を効率的に向上させる事ができない。
【0006】
以上のように、特に低米坪の紙において、不透明度と手肉感を両立する方法は、見出せていなかった。
【特許文献1】特開2006−70374号公報
【特許文献2】特開平6−73695号公報
【特許文献3】特開2006−249598号公報
【特許文献4】特表平09−506397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、低米坪でありながら、不透明度と手肉感に優れた紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
(1)パルプに填料を内添した紙であって、前記填料に、填料処理剤としてアニオン性化合物をあらかじめ添加した後、パルプに混合して抄紙することにより得られることを特徴とする紙。
(2)前記填料が製紙スラッジ由来の再生粒子であることを特徴とする、前記(1)に記載の紙。
(3)前記再生粒子が脱墨フロス由来の再生粒子凝集体であることを特徴とする、前記(2)に記載の紙。
(4)前記アニオン性化合物がスチレン−アクリルポリマーであることを特徴とする、前記(1)〜(3)いずれかに記載の紙。
(5)前記填料が脱墨フロス由来の再生粒子凝集体を、シリカで被覆したシリカ被覆再生粒子凝集体であることを特徴とする、前記(2)〜(4)いずれかに記載の紙。
(6)前記アニオン性化合物はアニオン性高分子化合物であり、当該アニオン性高分子化合物の分子量が1万〜100万であることを特徴とする、前記(1)〜(5)いずれかに記載の紙。
(7)前記填料と前記填料処理剤とをあらかじめ混合した後、1分以内にパルプに添加することを特徴とする前記(1)〜(6)いずれかに記載の紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低米坪でありながら、不透明度と手肉感に優れた紙となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態)
本発明の紙は、パルプに填料を内添した紙において、前記填料を予め填料処理剤と混合した後、パルプに混合して抄紙することにより得られる紙である。
【0011】
まず、本実施形態に係る紙を、印刷用塗工紙を例に説明する。
<パルプ>
基紙は、通常の原料パルプを抄紙して得られるものであればよい。該原料パルプにも特に限定がなく、例えば未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプや、これらを漂白したパルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して用いることができる。
【0012】
<再生粒子>
本発明では、不透明度を向上させるため、特に不透明度に優れた填料である、次の再生粒子、再生粒子凝集体、及びシリカ被覆再生粒子凝集体からなる群より選択される少なくとも1種の再生粒子を使用することが好ましい。
【0013】
a)製紙スラッジ由来の再生粒子
製紙スラッジ由来の再生粒子としては、例えば、特開2002−167523号公報に記載のものを使用することができる。具体的には、製紙スラッジを直径3〜10mmの紐状に押出成形し、長さ8〜10cmにカットし、次いでロータリーキルンで500〜1000℃で焼却し、この焼却により得た焼却灰を乾式粉砕、湿式粉砕の順で粉砕して得た、平均粒径0.1〜10μmの白色顔料を使用することができる。
【0014】
製紙スラッジ由来の再生粒子の品質としては、例えば、白色度(粉体白色度計((株)ケット科学研究所製、形式C−100))が60%以上であり、硬度(プラスチックワイヤー摩耗度(日本フィルコン製、3時間))が100mg未満のものを使用することができる。
【0015】
b)脱墨フロス由来の再生粒子凝集体
脱墨フロス由来の再生粒子凝集体としては、例えば、特開2007−99613号公報や、特開2007−100262号公報に記載のものを使用することができる。具体的には、水分率95〜98質量%程度の脱墨フロスに凝集剤を加え、50〜60質量%程度まで脱水して、脱水物を熱風乾燥・分級した後、450〜650℃の範囲で、未燃率が10質量%以上、15質量%未満となるよう焼成して凝集させる。焼成した無機粒子凝集体を、一次粒子が平均粒子径0.01〜0.1μm、この一次粒子が凝集した二次粒子が平均粒子径0.1〜10μmとなるよう粉砕して得られた白色顔料を使用することができる。
【0016】
脱墨フロス由来の再生粒子凝集体の品質としては、例えば、吸油量が30〜100ml/100gである。また、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上に調整し、さらには原料スラッジ中のカルシウム、シリカ及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合に調整することで、無機粒子凝集体の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を300〜1000オングストロームに調整した白色顔料を使用することもできる。
【0017】
填料の品質においては、製紙スラッジ由来の再生粒子よりも脱墨フロス由来の再生粒子凝集体の方が好ましい。製紙スラッジには脱墨フロス以外に、製紙排液を処理した汚泥や重量異物が含まれるため、焼成ムラが発生し易く、均一に焼成できず、未焼成や過焼成による異物が発生して夾雑物の増加や、白色度および不透明度の低下が発生し易くなる。
【0018】
本形態の紙では、以上の再生粒子又は再生粒子凝集体を、少なくとも内添填料として用いることができる。この再生粒子又は再生粒子凝集体は、製紙スラッジ又は脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる製紙スラッジ又は脱墨フロスであるので、安価であり、新たな天然無機鉱物の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。
【0019】
c)シリカ被覆再生粒子凝集体
さらに本実施形態における、原料パルプに内添する好適な再生粒子として、前記再生粒子凝集体の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子凝集体が特に好適に用いることができる。
【0020】
シリカ被覆再生粒子凝集体としては、例えば、特開2007−146354号公報や、特開2007−186800号公報に記載のものを使用することができる。具体的には、水分95〜98%に脱水した脱墨フロスを、更に40%〜70%に脱水した後、100〜200℃の熱風で、水分率が2〜20質量%となるように乾燥する。乾燥物は、粒子径355〜2000μmのものが70質量%以上となるように調整する。乾燥物は510〜750℃の範囲で焼成して凝集させ、未燃分を調整した後、微細粒化し、一次粒子が平均粒子径0.01〜0.1μm、この一次粒子が凝集した二次粒子が平均粒子径0.1〜10μmとなるよう調整し、再生粒子凝集体を得る。
【0021】
再生粒子凝集体は、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上に調整し、さらには脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合に調整することで、無機粒子凝集体の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を300〜1000オングストロームに調整した白色顔料となることが好ましい。
【0022】
この再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に、加熱攪拌しながら、液温70〜100℃で硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを8.0〜11.0の範囲に調整することにより、再生粒子凝集体表面に粒子径10〜20nmのシリカゾル粒子を生成させて得られた白色顔料を使用できる。このシリカ被覆再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合とすることで、シリカ析出効果による吸油性、不透明性を向上させることができる。
【0023】
シリカ被覆再生粒子凝集体の品質としては、例えば、吸油量が30〜100ml/100gであり、抄紙工程で内添用として用いる場合は、平均粒径が0.1〜10μmに調整した白色顔料を使用することもできる。
【0024】
シリカ被覆再生粒子凝集体は、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、再生粒子の循環使用にも寄与させることができる。また、かかるシリカ被覆再生粒子凝集体を填料として原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子凝集体を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高性といった効果をより向上させることができる。
【0025】
本形態において、再生粒子(製紙スラッジ由来の再生粒子、脱墨フロス由来の再生粒子凝集体、シリカ被覆再生紙粒子凝集体)は共に、原料パルプ中への歩留りや再生粒子が白水中へ流失することによる、抄紙機内部での異物化の防止という点から、平均粒子径が0.1μm以上、さらには0.3μm以上であることが好ましく、また印刷適性の維持と剣先詰まりの防止という点から、平均粒子径が10μm以下、さらには8μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では、紙への歩留りが悪く、抄紙機内部に堆積して異物化しやすくなり、10μmを超過すると、紙内部で繊維同士の結合を阻害しやすく、得られる紙の手肉感が低下するため好ましくない。
【0026】
これら再生粒子の使用量は特に限定されないが、パルプ総量に対して0.2〜5.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。0.2質量%を下回ると、填料の歩留りが低下して白色度、不透明度が低下し、5.0質量%を超過すると、填料の過凝集が発生して、局所的にパルプ同士の繊維間結合が低下し、手肉感と操業性が低下する。
【0027】
<再生粒子以外の填料>
上記再生粒子、再生粒子凝集体、シリカ被覆再生粒子といった再生粒子以外にも、一般に抄紙用途で使用される填料を使用することができる。例えば、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等であり、必要に応じて1種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも炭酸カルシウムの使用が好ましい。
【0028】
再生粒子以外の填料の使用量は、パルプ総量に対して0.2〜12質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。0.2質量%を下回ると、填料の歩留りが低下して白色度、不透明度が低下し、12質量%を超過すると、填料の過凝集が発生して手肉感と操業性が低下する。
【0029】
<填料処理剤>
前述の再生粒子、再生粒子凝集体、シリカ被覆再生粒子凝集体、一般に抄紙用途で使用される填料等に加える填料処理剤としては、アニオン性化合物を使用する。カチオン性化合物の場合、これら填料と反発し、填料歩留りが向上せず、不透明度の上昇が得られない。アニオン性化合物としては、例えばコロイダルシリカ;ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリアクリル酸塩や、これらの誘導体等のアニオン性高分子化合物がある。この中でもポリアクリル系ポリマーおよびその誘導体が好ましく、スチレン−アクリルポリマーが特に好ましい。ポリアミンやアニオン性ポリアクリルアミド(PAM)を使用すると、凝集作用が強くフロックが密になるため灰分歩留まりが向上するものの、不透明度が低下するため、好ましくない。
【0030】
填料処理剤がアニオン性高分子化合物である場合には、その分子量は、1万〜100万の範囲が好ましく、2万〜50万の範囲がより好ましく、5万〜20万の範囲がさらに好ましい。1万を下回ると、填料の歩留りが低下して白色度、不透明度が低下し、100万を超過すると、填料が過凝集して手肉感が弱くなるだけでなく、欠陥の発生が増加して操業性が低下する。尚、本発明で言う分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)によって測定した重量平均分子量を言う。
【0031】
填料処理剤の使用量は、填料総量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.2〜0.5質量%がより好ましい。0.01質量%を下回ると、填料の歩留りが低下し、白色度、不透明度が低下する。1質量%を超過すると、填料の過凝集が発生して不透明度、手肉感、操業性が低下する。
【0032】
填料に填料処理剤を添加してからパルプに添加するまでの時間(処理時間)は、填料と填料処理剤とを混合し、均一に攪拌できるのであれば特に限定されないが、好ましくは填料と填料処理剤との混合から1分〜10分の間に、パルプに添加することが好ましい。1分未満では、填料と填料処理剤が充分に混合できず、填料の歩留りが低下して白色度や不透明度が低下する恐れがあるため好ましくない。10分を超過すると、填料同士の結びつきが強くなり、填料の粒子径が大きくなり、得られる紙の手肉感と不透明度が低下するため好ましくない。
【0033】
填料への填料処理剤の混合は、填料処理剤を填料のクッションタンクへ添加しても、配管内へ直接添加しても良いが、いずれも均一な混合ができるよう、十分な攪拌力が必要となる。
【0034】
クッションタンクに填料処理剤を添加する場合は、タンク内に攪拌装置を設けて攪拌することが好ましい。攪拌装置は、原料希釈タンクなど抄紙用途で一般的に使用されているアジテーターを用いることができる。
【0035】
填料用配管内(インライン)で填料処理剤を添加する場合は、添加後に填料と填料処理剤が十分に攪拌されるよう、填料添加ポンプの吸い込み側に添加することが好ましい。填料添加ポンプの吐き出し側へ添加しても良いが、吸い込み側とは異なりポンプによる攪拌力が得られないため、填料への定着に充分な時間を取る必要がある。定着時間は前述したとおり、パルプに混合するまでに1分以上10分未満となるよう、流速と配管の長さを適切に調節することが好ましい。但し、填料処理剤添加後からパルプに混合するまでの配管が短い場合は、填料処理剤が填料に充分に定着できず、白色度や不透明度の向上が得られにくいことに注意する必要がある。逆に、配管内で充分に填料と填料処理剤が混合できるのであれば、ポンプ吐き出し側に填料処理剤を添加しても問題ない。
【0036】
填料処理剤で処理した填料をパルプに添加する場所は、従来どおり填料を添加していた場所で良く、特定の場所に限定されない。好ましくは2次ファンポンプの吸い込み側が、ポンプおよび後に続くスクリーンでの攪拌効果が得られるため好ましい。2次ファンポンプより以前のクリーナー前に添加すると、原料および薬品の一部がクリーナーで除塵され、必要以上の薬品が必要となるため好ましくない。
【0037】
尚、填料処理剤で処理しない填料(未処理填料)を、填料処理剤で処理した填料(処理填料)と併用する場合において、処理填料および未処理填料のパルプへの添加場所は、上記同様、特に限定されない。また、処理填料と未処理填料を同時にパルプに添加しても良く、別々の場所で添加しても良い。
【0038】
また、添加順序としては、凝結剤やその他の添加剤を添加した後に、填料処理剤で処理した填料を加え、最後に凝集剤を添加することが好ましい。仮に填料処理剤で処理した填料をパルプに加えた後に凝結剤を添加すると、填料が凝結剤と結びついてパルプ繊維から脱落しやすく、灰分歩留りが低下するため好ましくない。また、填料処理した填料をパルプに添加した後に製紙用助剤(嵩高剤やサイズ剤など)を加えると、填料と製紙用助剤が結びつきやすく、助剤の効果が得られにくいため好ましくない。また、凝集剤を填料より前にパルプに添加すると、後から添加した填料の歩留りが低下し、不透明度向上の効果が得られない。このことから、添加順序は、凝結剤、製紙用助剤、填料処理した填料、凝集剤の順にするのが好ましい。
【0039】
本実施形態においては、前記原料パルプを混合して抄紙原料(紙料スラリー)を調製するが、該原料パルプに、例えば内添サイズ剤、嵩高剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の、通常塗工紙の基紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。
【0040】
本発明では、上述のとおり、パルプ繊維との混合前に特定の填料処理剤を用いて、不透明度の高い再生粒子、再生粒子凝集体、シリカ被覆再生粒子凝集体を処理するため、低米坪でありながら不透明度と手肉感に優れた紙が得られる。
【0041】
本発明においては更に、特定の凝結剤および凝集剤を用いて抄紙することにより、前述の填料処理した再生粒子を、より効果的に紙に歩留らせることができ、特に低米坪の紙においても、効果的に不透明度の向上と、手肉感低下の防止が図れるため、更に好ましい。
【0042】
<凝結剤>
本形態においては、前記処理した填料をパルプ繊維に混合させる前に、パルプ繊維スラリーに凝結剤を添加することで、アニオントラッシュや微細繊維を効果的にパルプ繊維に吸着させることができ、不透明度向上効果や、手肉感の低下防止効果が得られるため、特に好ましい。凝結剤の種類としては、一般に製紙用途に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸塩、メタクリル酸塩等があげられる。これらの中でも、前記処理した填料を効果的に紙に歩留らせ、白色度や手肉感を向上する効果が高いポリアミン、ポリエチレンイミン、DADMACが好ましく、ポリエチレンイミン、DADMACがより好ましく、DADMACが最も好ましい。
【0043】
前記凝結剤の添加量は、パルプ総量に対して0.01〜0.15質量%が好ましく、0.03〜0.10質量%が更に好ましい。0.15質量%を超過すると、填料とパルプ繊維が集まりやすく、手肉感が低下するため好ましくなく、0.01質量%を下回ると、アニオントラッシュや微細繊維に填料が吸着しやすく、填料の歩留りが低下して、不透明度が得られないため好ましくない。
【0044】
上述のごとく、再生粒子からなる填料に特定の填料処理剤を添加する前に、特定の凝結剤を用いて、アニオントラッシュや微細繊維をパルプ繊維に吸着させることで、不透明度の向上効果と、手肉感の低下防止効果が高くなる。
【0045】
<凝集剤>
本形態においては、パルプに前記凝結剤と、填料処理剤で処理した填料を添加した後、さらに当該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で、特定の凝集剤を添加することにより、更なる填料の歩留り向上による不透明度の向上効果、手肉感の低下防止効果が得られる。
【0046】
凝集剤の成分としては、従来一般に製紙用途で使用されている凝集剤を用いることができ、例えば、ベントナイトやコロイダルシリカなどの無機凝集剤、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の有機高分子系凝集剤のいずれをも用いることができる。但し、好ましくは、不透明度向上と手肉感の低下防止効果の高いベントナイト、カチオンPAM、アニオンPAMであり、より好ましくはカチオンPAM、アニオンPAMであり、最も好ましくはアニオンPAMである。
【0047】
凝集剤の添加量は、パルプ総量に対して好ましくは0.05〜0.30質量%であり、更に好ましくは0.10〜0.20質量%である。0.30質量%を超過すると、填料とパルプ繊維が凝集しやすく、手肉感が低下するため好ましくなく、0.05質量%下回ると、填料の歩留りが悪く、不透明度や白色度が向上しない。
【0048】
このように、凝集剤の種類や添加量を調整することで、効果的に不透明度の向上と手肉感の低下防止を図ることができる。また、前述の凝結剤と組み合わせることで、更なる効果が得られ、特に低米坪の紙において、不透明度と手肉感に優れた紙を得ることができる。
【0049】
このようにして得られたパルプスラリーを、ワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供することで、目的に紙を製造することができる。また、次いでコーターパートにて後述する塗工剤を基紙上に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート等に供して、塗工紙を得ることもできる。
【0050】
〔抄紙工程〕
本形態において使用できる抄紙設備としては、特に限定されないが、目的である不透明度と手肉感を得るには、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるドライヤーパートを組み合わせることが好ましい。
【0051】
〔ワイヤーパート(ヘッドボックス)〕
調成されたパルプスラリーは、ヘッドボックスを経由してワイヤーパートに送られる。ワイヤーパートとしては、長網フォーマや、長網フォーマにオントップフォーマを組み合わせたもの、あるいはツインワイヤーフォーマなど、特に限定されないが、ヘッドボックスから噴出された紙料ジェットを2枚のワイヤーで直ちに挟み込むギャップタイプのギャップフォーマが、両面から脱水するため脱水効率が良く、後述するプレスパートでのニップ圧を低減でき、手肉感が低下しにくいため好ましい。
【0052】
〔プレスパート〕
ワイヤーパートでの紙層は、プレスパートに移行され、さらに脱水が行われる。プレス機としては、ストレートスルー型、インバー型、リバース型のいずれであってもよく、またこれらの組み合わせも使用することができるが、オープンドローを無くしたストレートスルー型が、紙を保持しやすく、断紙などの操業トラブルが少ないため、好ましい。脱水方式としては、通常行われているサクションロール方式やグルーブドプレス方式等の方法を使用することができるが、脱水性が高いシュープレスを用いると、紙に掛かる線圧が低減でき、手肉感の低下を軽減することができるため好ましい。
【0053】
〔プレドライヤーパート〕
プレスパートを通った湿紙は、シングルデッキ方式のプレドライヤーパートに移行し、乾燥が図られる。プレドライヤーパートは、断紙が少なく高効率に乾燥を行えるノーオープンドロー形式のシングルデッキドライヤーが好ましい。ダブルデッキ方式にて乾燥する方式も可能だが、キャンバスマーク、断紙、シワ、紙継ぎ等の操業性の面で、シングルデッキ方式に劣るため好ましくない。
【0054】
このようにして得られた紙の坪量に特に限定はないが、本発明においては、より低米坪な紙でも、上記のごとく不透明度、手肉感が高いものであり、例えば米坪が40g/m2以下でも、チラシやパンフレット、書籍などに好適に使用できる紙が得られる。坪量は、目的とする印刷用途により異なるが、本発明においては、30〜80g/m2であることを考慮して、該基紙の坪量は、通常25〜75g/m2程度となるように調整することが好ましい。
【0055】
基紙には、後述する顔料塗工層を設ける前に、澱粉や紙力向上剤を含む下塗塗工剤を塗工し、下塗塗工層を設けても良い。該下塗塗工層を設けることにより、手肉感を向上することができるが、本発明においては、これら澱粉や紙力向上剤を添加しなくても、手肉感と不透明度の向上を図ることができる。
【0056】
下塗塗工剤(澱粉またはその誘導体、および紙力増強剤やサイズ剤等を含む水溶液)を塗布する場合は、固形分付着量で基紙の片面あたりで1.0g/m2以下となるように、抄紙工程中のサイズプレス工程で、例えばフィルム転写方式により塗工されることが望ましい。ブレード塗工では、塗工量が多くなり、本発明の目的である軽量化が図れなくなる。
【0057】
下塗塗工剤は、抄紙工程中のサイズプレス工程で公知の種々の方式により塗工することができるが、特にフィルム転写方式により塗工されることが好ましい。該フィルム転写方式は、アプリケーターロール上に、湿潤状態にある下塗塗工膜を形成し、この下塗塗工膜を基紙表面に転写する方式で、例えばトランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター等が用いられる。フィルム転写方式を採用すると、一定膜厚の下塗塗工層を基紙表面に塗工することができるので、例えばツーロールサイズプレスのような塗工剤のポンドを形成して塗工する方式に比べて、塗布量が最低限に抑えられ、より軽量化を図ることができる。なお、フィルム転写方式において、アプリケーターロール上への下塗塗工膜の形成は、いかなる方法であってもよい。
【0058】
なお、下塗塗工層を形成するためのサイズ剤の種類には特に限定がなく、例えばスチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アクリレート系サイズ剤、スチレン−アクリル系サイズ剤等、一般的に製紙用途に用いられるものを適宜使用することができる。
【0059】
下塗塗工剤を調製する方法には特に限定がなく、前記サイズ剤に、所望の固形分濃度となるように適宜精製水を加えて適切な温度で撹拌し、均一な水溶液とすることが好ましい。
【0060】
次に、基紙上に、好ましくは該基紙上に設けられた下塗塗工層上に形成される顔料塗工層について説明する。該基紙上、好ましくは該基紙上に設けた下塗塗工層上には、顔料及び接着剤を主成分とする顔料塗工層が、少なくとも一層形成される。
【0061】
前記顔料の種類には特に限定がなく、一般的に製紙用の顔料として用いられるものを使用することができる。該顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンクレー、デラミネーテッドカオリン、タルク等が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。なお、高白色度を有する特殊顔料として、ホワイトカーボン、二酸化チタン、硫酸カルシウム等を使用することもできるが、本発明では、これら高白色度を有する特殊顔料を使用しなくとも、目的とする高白色度の印刷用塗工紙が得られるので、該特殊顔料を配合しないほうが、低コスト化が可能であり好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子、多孔質微粒子等の有機顔料等の特殊顔料を併用することもできる。
【0062】
上記顔料の中でも、カオリンクレーは、印刷用塗工紙の光沢度及び平滑性が向上し易く、より低ニップの平坦化条件で印刷適性が向上するため、紙の手肉感が低下し難いため好ましい。しかし一方で、白色度が炭酸カルシウムよりも低いため、高配合すると印刷用塗工紙の白色度が低下する恐れがある。したがって、該カオリンクレーの配合量は、全顔料100質量部に対して30〜70質量部とすることが好ましく、さらに好ましくは40〜60質量部である。
【0063】
また、クレー以外に好適に用いられる顔料としては、重質炭酸カルシウムを用いると白色度が高いため好ましい。重質炭酸カルシウムの配合量は、全顔料100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましく、さらに好ましくは40〜60質量部である。重質炭酸カルシウムの配合量が30質量部未満では、得られる印刷用塗工紙の白色度が充分に向上しない恐れがあり、逆に60質量部を超えると、印刷適性が低下する恐れがある。
【0064】
なお、重質炭酸カルシウムの種類には特に限定がないが、例えば白色結晶質石灰石を乾式粉砕又は湿式粉砕した、5μm程度以下の平均粒子径を有するものを例示することができる。
【0065】
また、前記重質炭酸カルシウムの代わりに、軽質炭酸カルシウムを用いることもできる。軽質炭酸カルシウムとしては、例えば石灰石を焼成して化学的に製造した、数μm前後の平均粒子径を有するものや、0.02〜0.1μm程度の平均粒子径を有するものがあげられ、その形状としては、例えば柱状、針状、紡錘型の他、これらの形状を有する結晶構造が凝集・結晶化した毬栗状等があげられる。軽質炭酸カルシウムは、顔料の柔軟性が高く、より平滑な顔料塗工層表面を形成でき、印刷適性が向上するため、より好ましい。
【0066】
また、焼成を行ったり、製造工程で不純物の除去を充分に行うことによって得られる、さらに高白色度を付与し得る高白色度クレーや、高白色度と共に高光沢度も付与し得る高白色度微粒クレーを配合することもできるが、本発明においては、これら高白色度クレーや高白色度微粒クレーを使用しなくても、目的とする高白色度の印刷用塗工紙を得ることができる。これらを用いる場合には、例えば前記カオリンクレーと同様に、全顔料100質量部に対して50質量部以下の配合量とすることが特に好ましい。
【0067】
前記顔料と共に配合される接着剤の種類には特に限定がないが、より柔軟な顔料塗工層を形成するためには、ラテックスの安定性が高いことから、モノマー成分としてブタジエン成分を含むラテックスを特に好適に使用することができる。中でも本発明においては、ブタジエン成分をモノマー成分全量の50〜80質量%、さらには55〜75質量%、特に60〜70質量%含有するラテックスを用いることが好ましい。該ブタジエン成分が50質量%を下回る場合には、顔料塗工層の柔軟性が低下して印刷適性が低下する恐れがある。逆にブタジエン成分が80質量%を超える場合には、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う場合に、顔料塗工層が金属ロールに取られてロール汚れが発生し易くなる恐れがある。
【0068】
前記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス以外にも、本発明においては、一般的に製紙用途で使用可能な接着剤を併用することができる。このような接着剤としては、例えばカゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックスもしくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常塗工紙に用いられる接着剤が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して併用することができる。
【0069】
顔料塗工剤における顔料と接着剤との配合割合は、全顔料100質量部に対して接着剤が3質量部以上、さらには4質量部以上となるように調整することが好ましく、また12質量部以下、さらには10質量部以下となるように調整することが好ましい。接着剤の配合量が3質量部未満では、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う場合に、顔料塗工層が金属ロールに取られてロール汚れが発生し易くなる恐れがある。逆に接着剤の配合量が12質量部を超えると、顔料塗工層中で接着剤が成膜してインキが転移し難くなり、印刷適性が低下する恐れがある。
【0070】
さらに顔料塗工層中には、白色度をより向上させる目的で、一般的に製紙用途で使用されている蛍光染料を含有させることができる。
【0071】
蛍光染料の種類には特に限定がなく、一般的に製紙用途に用いられるものを使用することができる。該蛍光染料としては、例えばアミノスチルベン系、イミダゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、ピラゾリン系等の蛍光染料が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中でも、アミノスチルベン系蛍光染料が好ましく、中でもアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が好ましい。さらには、スルホン酸基が1分子内に6つ配位したヘキサタイプやスルホン酸基が1分子内に4つ配位したテトラタイプのアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が、蛍光増白効果が高いので好ましい。特に、ヘキサタイプのアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が、より蛍光増白効果が高いので好ましい。
【0072】
本実施形態にて用いる顔料塗工剤は、顔料及び接着剤を主成分としているが、これらの他にも、例えば蛍光染料、蛍光染料定着剤、消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等、製紙用途で一般的に用いられる各種助剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0073】
顔料塗工剤を調製する方法には特に限定がなく、顔料、接着剤及び柔軟剤、並びに必要に応じて蛍光染料や各種助剤等の配合割合を適宜調整し、適切な温度にて均一な組成となるように撹拌混合すればよい。また顔料塗工剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗工装置や塗工量に応じて、例えば60〜75質量%程度に調整することが好ましい。
【0074】
次に、前記顔料塗工剤を基紙の少なくとも一方の面に、好ましくは該基紙上に設けられた前記下塗塗工層上に塗工し、該基紙上に少なくとも一層の顔料塗工層を形成する。
【0075】
基紙への顔料塗工剤の塗工は、例えば、複数段階、通常はプレドライヤーパートとアフタードライヤーパートとの2段階で行われるドライヤーパートの間のコーターパートにおいて行われることが好ましい。コーターパートでは、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、カーテンコーター等の塗工装置を設けたオンマシンコーター又はオフマシンコーターによって、基紙上に一層又は多層に分けて顔料塗工剤が塗工される。中でも、顔料塗工層表面の高い平滑性が確保されるという点から、ブレードコーターを用いることが好ましい。またドライヤーパートでの乾燥方法としては、例えば熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等の各種加熱乾燥方式を適宜採用することができる。
【0076】
顔料塗工剤の塗工量は、固形分付着量で基紙の片面あたり5g/m2以上、さらには7g/m2以上、特に9g/m2以上であることが好ましく、また20g/m2以下、さらには18g/m2以下、特に15g/m2以下であることが好ましい。該塗工量が片面あたり5g/m2未満では、顔料塗工層が充分に平坦化されず、良好な印刷適性が得られ難くなる。逆に塗工量が片面あたり20g/m2を超えると、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う際に、顔料塗工層が剥離してロールに取られる、ロール汚れトラブルが発生し易くなり、生産性や品質が低下する恐れがあるだけでなく、軽量化という本発明の目的に沿わなくなる。
【0077】
〔カレンダーパート〕
塗工層に光沢性や平坦性、印刷適性を付与する目的で、少なくとも一方が熱ロールとされた一対のロール、好ましくは弾性ロール及び金属ロール間に通紙して平坦化処理を施すことができる。カレンダーの線圧は、100〜600KN/mが好ましく、100〜400KN/mがより好ましい。100KN/m未満であると、顔料塗工層の平坦化が進まず、また、600KN/mを超過すると、必要以上に原紙を圧迫するため、手肉感が低下するため好ましくない。金属ロールの温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。100℃未満であると、顔料塗工層の平坦化が進まず、また、300℃を超過すると、繊維焼けが発生したり、熱と圧力により、塗工紙自体が黄変化したりする、退色が発生するため好ましくない。
【0078】
カレンダー設備としては、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等の平坦化設備を用いることができる。中でも、マルチニップカレンダー、より望ましくは6段、8段、10段のマルチニップカレンダーが、ニップ圧を調整しやすく、手肉感や白紙光沢度を調整しやすく、嵩高性に優れるため最適である。また、カレンダーの設置場所としては、抄紙機及び塗工機と一体になったオンマシンタイプが好ましい。オンマシンタイプでは、塗工後すぐ、紙面温度が高い状態で平坦化処理できるため、白紙光沢度が向上しやすく、目的の塗工紙を得るために必要な線圧が低く、手肉感の低下が少ないため好ましい。
【0079】
かくして得られる印刷用塗工紙の坪量は、軽量化、不透明度、手肉感という点から、JIS P 8124「坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定して、30g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、また80g/m2以下、さらには75g/m2以下であることが好ましい。坪量が30g/m2未満の場合は、本発明をもってしても、不透明度と手肉感を充分に向上させることが難しい。また逆に、坪量が80g/m2を超える場合には、本発明を用いなくても、充分不透明度と手肉感を改善することができる。
【0080】
このような低米坪の紙においては、特に、印刷後に裏面の印刷が表面から見えない程度の不透明度が重要視されており、具体的には不透明度が85%以上であることが好ましく、87%以上であることが更に好ましく、89%以上であることが最も好ましい。不透明度が85%を下回ると、表面の印刷画像の鮮明性が損なわれるだけでなく、印字部においては、文字の判別がしづらいとの問題が発生する。
【0081】
また、低米坪の紙は一般的に腰がなく、ペラペラした手触りであり、高級感を損なうが、本発明においては、特定の填料および填料処理剤を用いているため、手肉感に優れる紙となる。
【0082】
白色度は、その用途に応じて多少異なるが、印刷物、記録物として充分に満足な美観を得るという観点から、カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)にて測定した顔料塗工層表面の白色度が86%以上、さらには88%以上、特に90%以上であることが好ましい。なお、印刷後に画線部と非画線部とのコントラストが高くなりすぎて、印刷物の見栄えを低下させないためには、該白色度は100%以下であることが好ましい。
【0083】
このように、本発明の塗工紙は、紙の軽量化を図りながら、優れた不透明度と手肉感を両立したものであり、例えば商業印刷物、情報用紙、包装用紙、新聞用紙に好適に使用することができる。
【0084】
次に、本発明の印刷用塗工紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
実施例および比較例では、ワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、アンダーコーターパート、アフタードライヤーパート、トップコーターパート、カレンダーパート、リールパートを含む抄紙機を用いて抄造した。
【0087】
NBKP20%、LBKP80%を混合したパルプ100質量部(絶乾量)に対して、各々固形分で、内添サイズ剤(品番:FK34改、東邦化学(株)製)0.001質量%、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)0.5質量%、及び、表1に示す凝結剤、填料処理剤を予め混合した填料又は混合しなかった填料、及び凝集剤を、表1に示す割合で混合してパルプスラリーを得た。尚、未処理填料には炭酸カルシウムを用いた。
【0088】
パルプスラリーをワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して、坪量49〜51g/m2の基紙を製造した。次いでアンダーコーターパートにて、下塗塗工剤を、固形分付着量で片面あたり1.0g/m2となるように、基紙の両面に下塗塗工し、アフタードライヤーパートで乾燥して下塗塗工層を形成した。
【0089】
基紙の白色度を、後述する印刷用塗工紙の白色度と同様の方法で測定したところ、83〜86%であった。
【0090】
この後、トップコーターパートにて、顔料塗工剤を、固形分付着量で片面あたり9g/m2となるように、基紙の両面における下塗塗工層の上に塗工して顔料塗工層を形成し、坪量67〜69g/m2の塗工紙を得た。
【0091】
次に、カレンダーパートにて、線圧200kN/m、金属ロール温度200℃、速度1000m/分で前記塗工紙に平坦化処理を施し、目的とする印刷用塗工紙を得た。
【0092】
なお、ワイヤーパートではギャップフォーマーを用いて抄紙し、アンダーコーターパートではロッドメタリングサイズプレスコーターを用いたフィルム転写方式を採用し、トップコーターパートではブレードコーターを用いた。またカレンダーパートでは、マルチニップカレンダーを用いた。
【0093】
用いた薬品は次のとおりである。
【0094】
<再生粒子>
a)製紙スラッジ由来の再生粒子(再生粒子)
特開2002−167523号公報、試験例8の製法で粒径を調整して製造した。具体的には、DIPフローテーターのフロス又は脱水設備にて55〜65%に脱水して得られた製紙スラッジを、直径4.5mm、長さ8〜10cmの紐状にカットしてから、焼却炉において1000℃で焼却して二次粒子径3μmの再生粒子を生成した。
b)脱墨フロス由来の再生粒子凝集体(再生粒子凝集体)
特開2007−146354号公報、実施例3の製法で粒径を調整して製造した。具体的には、古紙の処理工程から排出される脱墨フロスを水分率60%まで脱水し(脱水工程)、120℃で乾燥して(乾燥工程)焼成工程入口での水分率が3%になるようにし、第1焼成工程で未燃分が7%となるように、第2焼成工程で未燃分が12質量%となるように焼成し(焼成工程)、粒子径5μmとなるように粉砕して(粉砕工程)、再生粒子凝集体を生成した。
c)シリカ被覆再生粒子凝集体(シリカ被覆)
特開2007−146354号公報、実施例15の製法で粒径を調整して製造した。具体的には、古紙の処理工程から排出される脱墨フロスを水分率50%まで脱水し(脱水工程)、130℃で乾燥して(乾燥工程)焼成工程入口での水分率が3%になるようにし、第1焼成工程で未燃分が7%となるように、第2焼成工程で未燃分が12質量%となるように焼成し(焼成工程)、粒子径5μmとなるように粉砕して(粉砕工程)、再生粒子凝集体の表面に、シリカを析出させたシリカ被覆再生粒子凝集体を生成した。
【0095】
<炭酸カルシウム>
品番:TP121−6S、奥多摩工業(株)製の軽質炭酸カルシウムを使用した。
【0096】
<填料処理剤>
スチレン−アクリルポリマー(品番:FM−8173、星光PMC社製)
アニオンPAM(品番:FA−230、ハイモ社製)
ポリアミン(品番:カルタフィックスNTC2、クラリアント社製)
エピクロロヒドリン(品番:FM−8170、星光PMC社製)
【0097】
<凝結剤>
ポリアミン(品番:FR740、ハイモ社製製)
ポリエチレンイミン(品番:カチオファストVFH、BASF社製)
DADMAC(品番:NR−783、ハイモ社製)
【0098】
<凝集剤>
ベントナイト(品番:ハイドロコール0、協和産業社製)
カチオンPAM(品番:パーコールE24X、チバスペシャリティ社製)
アニオンPAM(品番:FA−230、ハイモ社製製)
【0099】
【表1】

得られた印刷用塗工紙について、各物性及び特性を以下の方法にて調べた。その結果を表1に示す。
【0100】
(1)不透明度
ISP6149に準拠した方法で、カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)を用いて測定した。
【0101】
(2)白色度
JISP8148に準拠した方法で、カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)を用いて測定した。
【0102】
(3)手肉感
A4サイズ(210mm×297mm)の塗工紙サンプル20枚を重ね、長辺の一方をホチキスで3箇所(上端、中央、下端)綴じて水平に置き、1枚ずつ合計10枚捲って、手肉感について以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:めくった後の紙がへたれず、手肉感に特に優れる。
○:めくった後の紙のへたれが僅かであり、手肉感に優れる。
△:めくった後の紙のへたれが少なく、手肉感が良好である。
×:めくった後の紙がへたれ、手肉感に劣る。
【0103】
(4)操業性
24時間連続操業を行い、操業性を次の4段階で評価した。
◎:ドローやテンションの変動がほとんどなく、操業性に特に優れる。
○:ドローやテンションの変動が僅かであり、操業性に優れる。
△:ドローやテンションの変動が小さく、操業性が良い。
×:ドローやテンションの変動が大きく、操業性が悪い。
【0104】
表1より、実施例の紙はいずれも、所定の填料処理剤で填料を処理しているため、低米坪でありながら不透明度と手肉感が高い紙であることが分かる。
【0105】
これに対して、比較例はいずれも、所定の填料処理剤で填料を処理していないため、不透明度、手肉感が低い紙である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
低米坪でありながら、不透明度と手肉感に優れた紙が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプに填料を内添した紙であって、前記填料に、填料処理剤としてアニオン性化合物をあらかじめ添加した後、パルプに混合して抄紙することにより得られることを特徴とする紙。
【請求項2】
前記填料が製紙スラッジ由来の再生粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
前記再生粒子が脱墨フロス由来の再生粒子凝集体であることを特徴とする、請求項2に記載の紙。
【請求項4】
前記アニオン性化合物がスチレン−アクリルポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の紙。
【請求項5】
前記再生粒子が脱墨フロス由来の再生粒子凝集体を、シリカで被覆したシリカ被覆再生粒子凝集体であることを特徴とする、請求項2〜4いずれか1項に記載の紙。
【請求項6】
前記アニオン性化合物はアニオン性高分子化合物であり、当該アニオン性高分子化合物の分子量が1万〜100万であることを特徴とする、請求項1〜5いずれか1項に記載の紙。
【請求項7】
前記填料と前記填料処理剤とをあらかじめ混合した後、1分以内にパルプに添加することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の紙。

【公開番号】特開2009−242980(P2009−242980A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90240(P2008−90240)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】