説明

塵芥収集車およびその排出制御装置並びに排出制御方法

【課題】圧縮型の塵芥積込装置において圧縮板を後退させるよりも効率良く塵芥からの反力を緩和して、ロック装置を解除すること。
【解決手段】車台2上に搭載され、後方開口部13aを有する塵芥収容箱13と、この塵芥収容箱13の後方開口部13aに連設された塵芥投入箱14と、この塵芥投入箱14に装備される塵芥積込装置15であり、斜め上下方向に摺動する摺動板20と、この摺動板20に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板25とを備えた塵芥積込装置15と、塵芥投入箱14を塵芥収容箱13にロックするためのロック装置31と、塵芥投入箱14の傾動に先立って摺動板20を斜め下方向へ摺動させる排出制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮型の塵芥積込装置を備えた塵芥収集車およびその排出制御装置並びに排出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塵芥収容箱の後方開口部に、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱を傾動シリンダを介して傾動可能に連設した塵芥収集車が知られている。塵芥投入箱は、通常、ロック装置によって塵芥収容箱にロックされている。そして、収集された塵芥の排出時には、ロック装置を解除してから塵芥投入箱を上方へ傾動させて、塵芥収容箱の後方開口部を解放する。
【0003】
ところが、塵芥排出時にあっては、塵芥収容箱は塵芥をほぼ満載状態に収容しており、塵芥からの反力が塵芥積込装置を介して塵芥投入箱に作用している。また、前記傾動装置とロック装置は、共通の切換弁で順次作動させているため、ロック装置に反力が作用すると、傾動装置側に油圧が作用し、塵芥投入箱のロック装置を解除しようとしても、ますますロック装置が外れにくくなるという問題がある。
【0004】
そこで、従来、このような問題を解決するものとして、車体前後方向に揺動する押込板と、この押込板の下端付近に回転中心を有して正逆転する回転板とを備えた、いわゆる回転型の塵芥積込装置の場合には、まず押込板を若干後退させ、押込板に作用する塵芥の反力を緩和した後に、ロック装置を解除し、塵芥投入箱を解放可能にした塵芥収集車の排出制御装置が用いられている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0005】
一方、上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた、いわゆる圧縮型の塵芥積込装置の場合にも、上記回転型の塵芥積込装置と同様に、圧縮板(押込板)を後退させることによって圧縮板に作用する塵芥の反力を緩和した後に、ロック装置を解除し、塵芥投入箱を解放可能にした塵芥収集車の排出制御装置が用いられている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−67523号公報
【特許文献2】特開昭59−158701号公報
【特許文献3】特公平3−29683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、圧縮型の塵芥積込装置の場合、塵芥を圧縮して塵芥収容箱に積み込んでいるため、塵芥からの反力が回転型の塵芥積込装置の場合よりも大きくなっている。そのため、前述のように圧縮板を後退させたとしても、この塵芥からの反力を緩和しきれず、ロック装置を解除できないことがある。
【0008】
そこで、本発明では、圧縮型の塵芥積込装置において圧縮板を後退させるよりも効率良く塵芥からの反力を緩和して、ロック装置を解除することが可能な塵芥収集車およびその排出制御装置並びに排出制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塵芥収集車は、車台上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置と、塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板を斜め下方向へ摺動させる排出制御装置とを備えたものである。
【0010】
本発明の塵芥収集車によれば、塵芥投入箱傾動装置による塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板が斜め下方向へ摺動することにより、圧縮板の斜め上方向に位置する塵芥の全体が斜め下方向へ下がることになり、従来のように圧縮板を後退させるよりも少ない移動量で、塵芥からの大きな反力を緩和することができる。
【0011】
ここで、本発明の塵芥収集車では、塵芥収容箱と塵芥投入箱との間に設けられ、塵芥投入箱を傾動させる傾動シリンダと、摺動板を斜め上下方向に摺動させる摺動シリンダとをさらに備え、ロック装置は、塵芥投入箱により塵芥収容箱の後方開口部を閉じた状態で、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロックシリンダを備え、排出制御装置は、摺動シリンダにより摺動板を斜め下方向へ摺動させた後、ロックシリンダによるロックを解除し、その後、自動的に傾動シリンダにより塵芥投入箱を上方へ傾動させるものであることが望ましい。
【0012】
これにより、塵芥投入箱の傾動に先だって、自動的に摺動板が斜め下方向へ摺動することになり、ロックシリンダに作用する力が軽減されるので、塵芥収容箱と塵芥投入箱のロック解除が容易となる。
【0013】
また、本発明の塵芥収集車の排出制御装置は、車台上に着脱自在に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置とを備えた塵芥収集装置の排出制御装置であって、塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板を斜め下方向へ摺動させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の塵芥収集車の排出制御方法は、車台上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置とを備えた塵芥収集装置の排出制御方法であって、塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板を斜め下方向へ摺動させることを特徴とする。
【0015】
これらの発明によれば、塵芥投入箱傾動装置による塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板が斜め下方向へ摺動することにより、圧縮板の斜め上方向に位置する塵芥の全体が斜め下方向へ下がることになり、従来のように圧縮板を後退させるよりも少ない移動量で、塵芥からの大きな反力を緩和することができる。
【発明の効果】
【0016】
(1)車台上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、塵芥投入箱を塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置と、塵芥投入箱の傾動に先立って摺動板を斜め下方向へ摺動させる排出制御装置とを備えたことにより、圧縮板の斜め上方向に位置する塵芥の全体が斜め下方向へ下がることになり、従来のように圧縮板を後退させるよりも少ない移動量で、塵芥からの大きな反力を緩和することができ、効率良く塵芥からの反力を緩和してロック装置を解除することが可能となる。
【0017】
(2)塵芥収容箱と塵芥投入箱との間に設けられ、塵芥投入箱を傾動させる傾動シリンダと、摺動板を斜め上下方向に摺動させる摺動シリンダとをさらに備え、ロック装置は、塵芥投入箱により塵芥収容箱の後方開口部を閉じた状態で、塵芥投入箱を塵芥収容箱にロックするためのロックシリンダを備え、排出制御装置は、摺動シリンダにより摺動板を斜め下方向へ摺動させた後、ロックシリンダによるロックを解除し、その後、自動的に傾動シリンダにより塵芥投入箱を上方へ傾動させるものであることにより、塵芥投入箱の傾動に先だって、自動的に摺動板が斜め下方向へ摺動し、ロックシリンダに作用する力が軽減されるので、塵芥収容箱と塵芥投入箱のロック解除が容易になり、塵芥投入箱を難なく傾動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における塵芥収集車を示す側面図である。
【図2】塵芥収集車の後部を断面にて示す側面断面図である。
【図3】塵芥投入箱の上部およびその周辺を拡大して示す側面図である。
【図4】ロック装置を拡大して示す説明図である。
【図5】油圧回路図である。
【図6】フロントパネルを拡大して示す正面図である。
【図7】リヤパネルを拡大して示す正面図である。
【図8】反転工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図である。
【図9】下降工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図である。
【図10】圧縮工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図である。
【図11】上昇工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における塵芥収集車を示す側面図、図2は塵芥収集車の後部を断面にて示す側面断面図、図3は塵芥投入箱の上部およびその周辺を拡大して示す側面図である。なお、以下の説明において、前後方向は車体の前後方向と同じ方向を指すものとし、左右方向は車体の前方に向かって左右方向を指すものとする。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における塵芥収集車1は、車台2とキャブ3とを有し、これら車台2とキャブ3とで車体4を構成している。車台2には、後方開口部13aを有する塵芥収容箱13が搭載されている。この塵芥収容箱13の後方開口部13aには、塵芥投入箱14が連設されている。
【0021】
塵芥投入箱14には、塵芥投入箱14に投入された塵芥を圧縮して、塵芥収容箱13に積み込む圧縮型の塵芥積込装置15が装備されている。塵芥投入箱14は、塵芥収容箱13と塵芥投入箱14との間に設けられた傾動シリンダ29により、図1に仮想線で示すように投入箱支持ピン5(図2参照。)を中心に傾動させる塵芥投入箱傾動装置を構成している。
【0022】
また、図3に示すように、塵芥投入箱14の左右両側壁には、溝形鋼で形成された案内溝部材18が補強枠を兼ねて前方上部より後方下部に向かって敷設されている。塵芥投入箱14内には、その横幅一杯に広がる摺動板20が収容されている。この摺動板20の左右両側縁の上下には、案内ローラ21が回転可能に設けられている。これらの案内ローラ21は、案内溝部材18の内壁に沿って摺動自在に嵌入されている。
【0023】
また、摺動板20の背面上部の左右端部にはボス部19が設けられている。このボス部19には、摺動板支持軸22が挿通されている。この摺動板支持軸22は、塵芥投入箱14の左右両側壁に形成された摺動用開口30を越えて塵芥投入箱14の内側より外側に突出するように配置されている。
【0024】
また、塵芥投入箱14の左右両側壁からそれぞれ外側に突出した摺動板支持軸22と塵芥投入箱14の下部間には、左右それぞれ塵芥投入箱14の外側に案内溝部材18の上方で傾斜方向に沿って設けられた摺動シリンダ23がそれぞれ連結されている。摺動シリンダ23は、棒状のシリンダロッド23aと、塵芥投入箱14の側壁に取り付けられた円筒状のシリンダチューブ23bとを備えている。摺動板20は、この摺動シリンダ23の伸縮作動によって案内溝部材18に沿って斜め上下に往復移動する。
【0025】
図2に示すように、摺動板20の下端には、塵芥投入箱14の横幅一杯に広がる圧縮板25が前後方向に揺動自在に支持されている。この圧縮板25の先端は前方に向かって若干屈曲形成されている。また、圧縮板25の左右両背面には接続部25aが突設されている。この左右それぞれの接続部25aと、摺動板20の背面上部に設けられた摺動板支持軸22との間には、揺動シリンダ24が連結されている。この揺動シリンダ24の伸縮作動によって、圧縮板25は前後に揺動する。
【0026】
また、塵芥収容箱13内には、排出板27が車体前後方向に摺動自在に配設されている。排出板27は、塵芥収容箱13の横幅および上下高さと略同じ大きさに形成された板状体である。この排出板27は、排出シリンダ26の伸縮動作により塵芥収容箱13内を前後に摺動する。また、塵芥収容箱13および塵芥投入箱14には、塵芥投入箱14を塵芥収容箱13に固縛(ロック)するためのロック装置31を有する。
【0027】
図4はロック装置31を拡大して示す説明図である。ロック装置31は、塵芥投入箱14を塵芥収容箱13にロックするためのロックシリンダ32と、アーム33a,33bが延設されたシャフト33と、塵芥投入箱14の前面に固設されたUボルト34と、Uボルト34に係合させるロック爪35と、ロック爪35を回動可能に軸支するピン36と、ロック爪35とシャフト33のアーム33bとを連結するロッド37とを備える。
【0028】
ロックシリンダ32は、塵芥収容箱13の裏面後部中央に一端を軸支され、他端を両側に延びるシャフト33の中央に設けられたアーム33aに軸支されている。シャフト33は、図示しないが、塵芥収容箱13の裏面後部両側に軸支されている。また、アーム33bはシャフト33の両端部に設けられている。ロック爪35は、これらのアーム33bに対峙してピン36で回動自在に設けられている。さらに、アーム33bとロック爪35とはロッド37により連結されている。
【0029】
このロック装置31では、ロックシリンダ32を伸縮させることで、アーム33aを介してシャフト33を回動させ、両側のアーム33bを介してロッド37によりロック爪35を回動させる。これにより、ロック爪35を塵芥投入箱14の前面下部両側のUボルト34に対して係合させると、塵芥投入箱14は塵芥収容箱13にロックされる。また、ロック爪35のUボルト34に対する係合を解くと、塵芥投入箱14はロック解除状態となる。
【0030】
次に、本実施形態における塵芥収集車の油圧系統について説明する。図5は油圧回路図である。
【0031】
図5に示すように、車体4は、エンジン4aを備えており、このエンジン4aから動力取出装置(PTO)4bによって動力を取り出し、油圧ポンプ4cを駆動するようになっている。油圧ポンプ4cから吐出された高圧油は、入力配管4dを通って油圧切替部4eに到る。また、作動油は、油圧切替部4eからリターン配管4gを通ってリザーバ4hへ戻るようになっている。
【0032】
油圧切替部4eには、アクチュエータとしての傾動シリンダ29、摺動シリンダ23、揺動シリンダ24、排出シリンダ26およびロックシリンダ32がそれぞれ接続されている。また、油圧切替部4eは複数の電磁弁(図示せず。)を備えており、制御盤50によって制御される。
【0033】
つまり、制御盤50の信号を受けて電磁弁の開閉ポートを切り替えることにより、油圧ポンプ4cから吐出された作動油が、油圧配管4fを介して所望のシリンダ23,24,26,29,32に対して供給される。これにより、各シリンダ23,24,26,29,32のシリンダロッドの伸縮動作の切り替えが制御され、または運転が停止される。
【0034】
図1に示すように、キャブ3内には、制御盤50に対して指令を出すコントローラとしてのフロントパネル51が設けられている。このフロントパネル51からの指示は、制御盤50に入力される。制御盤50は、この入力信号を油圧切替部4eに送信する。
【0035】
図6に示すように、フロントパネル51の右端側には、切換スイッチ52が設けられている。この切換スイッチ52は、上下2位置に操作することで、積込動作と排出動作とを切換可能となっている。すなわち、この切換スイッチ52は、上方に切り替えて積込動作とすることで、塵芥積込装置15による積込動作が可能となり、下方に切り替えて排出動作とすることで、排出シリンダ26による操作や、塵芥積込装置15による排出動作(かき出し動作)が可能となる。
【0036】
また、切換スイッチ52の左隣には、塵芥投入箱(ホッパ)スイッチ53が設けられている。この塵芥投入箱スイッチ53は、中立位置から上下2方向に操作下方に構成され、上方に操作して傾動シリンダ29を伸長させて塵芥投入箱14を投入箱支持ピン5を中心に回動させて後方開口部13aを開き、下方に操作して傾動シリンダ29を縮小させて塵芥投入箱14で後方開口部13aを閉じるように構成されている。
【0037】
この塵芥投入箱スイッチ53の左隣には、排出板スイッチ54が設けられている。この排出板スイッチ54は、中立位置から上下2方向に操作可能に構成されている。この排出板スイッチ54では、上方に操作して排出シリンダ26を伸長させて排出板27を後方へ移動させ、下方に操作して排出シリンダ26を縮小させて排出板27を前方へ移動させることができるようになっている。
【0038】
さらに、フロントパネル51の左端側には、かき出しスイッチ55が設けられている。このかき出しスイッチ55は、かき出し作動スイッチ55aとかき出し停止スイッチ55bとを備えている。かき出し作動スイッチ55aを押すと、塵芥投入箱14を傾動させた状態で塵芥積込装置15を作動させて塵芥投入箱14内に残っている塵芥80を外部にかき出し、かき出し停止スイッチ55bを押すことで塵芥積込装置15のかき出し作動を停止させるようになっている。
【0039】
また、フロントパネル51の上側には、パイロットランプとしてのロック開ランプ56、落下防止ランプ57およびメイン電源ランプ58が設けられている。
【0040】
図1、図5および図7に示すように、塵芥投入箱14は、後端に前述のアクチュエータを操作するコントローラとしてのリヤパネル60を備えている。リヤパネル60には、塵芥積込装置15の積込動作を開始させる積込ボタン61と、摺動板20を下降させる下降ボタン62と、摺動板20を上昇させる上昇ボタン63と、圧縮板25を反転動作させる反転ボタン64とが縦に並んで設けられている。反転ボタン64の下には、緊急停止ボタン65が設けられている。
【0041】
緊急停止ボタン65は、他のボタン61〜64が黒色であるのに対して赤色として目立ちやすくしている。積込ボタン61の上には、警報を鳴らしてキャブ3内に知らせるための連絡ブザーボタン66が設けられている。リヤパネル60からの信号は、制御盤50に送られるように構成されている。
【0042】
次に、上記構成の塵芥積込装置15の運転動作について図8から図11を参照して説明する。図8は反転工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図、図9は下降工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図、図10は圧縮工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図、図11は上昇工程にある塵芥積込装置を拡大して示す側面図である。なお、図8〜図11において、簡略化のために、摺動シリンダ23は省略している。
【0043】
図8に示すように、摺動シリンダ23および揺動シリンダ24がいずれも伸長して摺動板20が上昇終了位置(最上位置)にある状態で、投入口14aを通して塵芥80を塵芥投入箱14内に投入し、リヤパネル60の積込ボタン61を押す。積込ボタン61が押されると、制御盤50は以下の積込動作を行うように油圧切替部4eの動作を制御する。
【0044】
まず、図8に示す状態で、揺動シリンダ24が縮退作動して圧縮板25が反転作動し、反転終了位置(図9参照。)に達する(反転工程)。この後、摺動シリンダ23が縮退作動して摺動板20が下降し、これに伴って圧縮板25が下降する(下降工程)。そして、圧縮板25が下降終了位置(図10参照。)に達すると、揺動シリンダ24を伸長させて圧縮板25を前方に揺動させ、圧縮工程に移行する。
【0045】
そして、圧縮板25が最前方位置(図11参照。)まで揺動する(圧縮工程)と、摺動シリンダ23を伸長させて圧縮板25を上昇させる(上昇工程)。この圧縮板25が上昇終了位置に達すると(図8参照。)、一連の積込動作を終了する。これにより反転、下降、圧縮、上昇の各工程を1サイクルとした塵芥積込動作を繰り返して行うことができる。
【0046】
また、塵芥収容箱13に塵芥80を積み込む際において、塵芥収容箱13内の排出板27は、最後方位置に配置されており、塵芥積込装置15により積み込まれる塵芥80が排出板27を押圧する力が所定以上に達した際に、排出シリンダ26が縮退することで徐々に前方に移動する。このような排出板27の移動動作によって塵芥80を圧縮しながら積み込むことができる。
【0047】
そして、このように塵芥80を積み込んで塵芥収容箱13が満杯状態になると、塵芥80の排出作業に移る。すなわち、塵芥収集車1を塵芥処理場等へ移動させた後、フロントパネル51の塵芥投入箱スイッチ53を上方に操作する。このとき、図8に示すように、摺動シリンダ23および揺動シリンダ24はいずれも伸長して、摺動板20は上昇終了位置(最上位置)にある。
【0048】
ここで、塵芥投入箱スイッチ53が上方へ操作されると、制御盤50は摺動シリンダ23を縮退させるように油圧切替部4eの動作を制御する。これにより、摺動シリンダ23が縮退作動して摺動板20が斜め下方向へ摺動し、摺動板20に作用する塵芥の反力が低減される。
【0049】
次いで、制御盤50は、ロックシリンダ32を伸長させるように油圧切替部4eの動作を制御する。ロックシリンダ32が伸長すると、図4においてシャフト33が反時計回りに回動し、アーム33bおよびロッド37の作用により、ロック爪35がピン36を中心に時計回りに回動する。これにより、ロック爪35のUボルト34に対する係合が解かれ、塵芥投入箱14のロックが解除される。
【0050】
その後、制御盤50は、傾動シリンダ29を伸長させるように油圧切替部4eの動作を制御する。傾動シリンダ29が伸長すると、塵芥投入箱14は投入箱支持ピン5を中心にして上方に回動し、塵芥収容箱13の後部が解放状態となる。
【0051】
そして、排出板スイッチ54が上方に操作されると、制御盤50は、排出シリンダ26を伸長させるように、油圧切替部4eの動作を制御する。これにより、塵芥収容箱13の前部に位置する排出板27が後方に移動し、この塵芥収容箱13内に収容された塵芥80が排出される。
【0052】
このように、本実施形態における塵芥収集車1では、塵芥80の排出作業時に、制御盤50が、塵芥投入箱14の傾動に先立って摺動板20を斜め下方向へ摺動させる排出制御装置として機能し、圧縮板25の斜め上方向に位置する塵芥80の全体が斜め下方向へ下がることになる。これにより、塵芥80からの反力が大きく緩和され、ロック装置31が解除される。
【0053】
特に、本実施形態における塵芥収集車1では、制御盤50が、摺動シリンダ23により摺動板20を斜め下方向へ摺動させた後、ロックシリンダ32によるロックを解除し、その後、自動的に傾動シリンダ29により塵芥投入箱14を上方へ傾動させる排出制御装置として機能するので、塵芥投入箱14の傾動に先だって、自動的に摺動板20が斜め下方向へ摺動し、ロックシリンダ32に作用する力が軽減される。したがって、塵芥収容箱13と塵芥投入箱14のロック解除が容易になり、塵芥投入箱14を難なく傾動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、圧縮型の塵芥積込装置を備えた塵芥収集車およびその排出制御装置並びに圧縮制御方法として有用であり、特に、圧縮型の塵芥積込装置において圧縮板を後退させるよりも効率良く塵芥からの反力を緩和して、ロック装置を解除することが可能なものとして好適である。
【符号の説明】
【0055】
1 塵芥収集車
2 車台
3 キャブ
4 車体
4a エンジン
4c 油圧ポンプ
4d 入力配管
4e 油圧切替部
4f 油圧配管
4g リターン配管
4h リザーバ
13 塵芥収容箱
13a 後方開口部
14 塵芥投入箱
14a 投入口
15 塵芥積込装置
18 案内溝部材
19 ボス部
20 摺動板
21 案内ローラ
22 摺動板支持軸
23 摺動シリンダ
23a シリンダロッド
23b シリンダチューブ
24 揺動シリンダ
25 圧縮板
25a 接続部
26 排出シリンダ
27 排出板
29 傾動シリンダ
30 摺動用開口
31 ロック装置
32 ロックシリンダ
33 シャフト
33a,33b アーム
34 ボルト
35 ロック爪
36 ピン
37 ロッド
50 制御盤
51 フロントパネル
52 切換スイッチ
53 塵芥投入箱スイッチ
54 排出板スイッチ
55 スイッチ
55a 作動スイッチ
55b 停止スイッチ
56 ロック開ランプ
57 落下防止ランプ
58 メイン電源ランプ
59 キャブ内コントロールスイッチ
60 リヤパネル
61 積込ボタン
62 下降ボタン
63 上昇ボタン
64 反転ボタン
65 緊急停止ボタン
66 連絡ブザーボタン
80 塵芥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、
この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、
この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置と、
前記塵芥投入箱の傾動に先立って前記摺動板を斜め下方向へ摺動させる排出制御装置と
を備えた塵芥収集車。
【請求項2】
前記塵芥収容箱と前記塵芥投入箱と間に設けられ、前記塵芥投入箱を傾動させる傾動シリンダと、
前記摺動板を斜め上下方向に摺動させる摺動シリンダと
をさらに備え、
前記ロック装置は、前記塵芥投入箱により前記塵芥収容箱の後方開口部を閉じた状態で、前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱にロックするためのロックシリンダを備え、
前記排出制御装置は、前記摺動シリンダにより前記摺動板を斜め下方向へ摺動させた後、前記ロックシリンダによるロックを解除し、その後、自動的に前記傾動シリンダにより前記塵芥投入箱を上方へ傾動させるものである
請求項1記載の塵芥収集車。
【請求項3】
車台上に着脱自在に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、
この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、
この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置と
を備えた塵芥収集装置の排出制御装置であって、
前記塵芥投入箱の傾動に先立って前記摺動板を斜め下方向へ摺動させることを特徴とする排出制御装置。
【請求項4】
車台上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、
この塵芥収容箱の後方開口部に連設された塵芥投入箱と、
この塵芥投入箱に装備される塵芥積込装置であり、斜め上下方向に摺動する摺動板と、この摺動板に軸支されて車体前後方向に揺動する圧縮板とを備えた塵芥積込装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱にロックするためのロック装置と、
前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱に対して傾動させる塵芥投入箱傾動装置と
を備えた塵芥収集装置の排出制御方法であって、
前記塵芥投入箱の傾動に先立って前記摺動板を斜め下方向へ摺動させることを特徴とする排出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−208804(P2010−208804A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56940(P2009−56940)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】