説明

塵芥収集車

【課題】積込動作を制御するスイッチの故障に対して、収集効率の低下を招くことなく塵芥の積込動作を可能とする塵芥収集車を提供する。
【解決手段】塵芥の積込動作を構成する順次の動作にそれぞれ対応する複数の動作完了スイッチ21〜24を有し、一の動作完了スイッチによる対応する動作の完了検知に基づいて、次の動作を開始させるようにした塵芥収集車において、複数の動作完了スイッチ21〜24が正常な通常制御モードによる積込動作中に、各動作完了スイッチ21〜24の出力に基づいて、各動作の開始から完了までのそれぞれの平均所要時間を演算する演算部28と、一の動作完了スイッチが故障したエマージェンシー制御モードによる積込動作中に、実行中の動作の経過時間が演算部28によって演算された当該動作の平均所要時間に達した場合に、当該動作を完了させて次の動作へ移行させる動作移行指示部29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塵芥収集車に関し、より詳しくは積込動作を制御するスイッチ等の予測し得る故障に対して塵芥の積込動作を可能とするフォールトトレラントを有する塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、昇降する可動遮蔽板及び前後に揺動する掻込板を備えた圧縮式積込装置が搭載された塵芥収集車では、塵芥の積込動作として、掻込板を後方に揺動させる反転動作、可動遮蔽板を下降させる下降動作、掻込板を前方へ揺動させる掻込動作、及び可動遮蔽板を上昇させる上昇動作を順次実行するようにしている。ここで、各動作は、対応するスイッチによって動作完了が検知され、これにより次の動作に移行するように制御されている。
【0003】
上記従来の塵芥収集車は、各動作に対応するスイッチが正常に作動することを前提として各動作が制御されている。このため、いずれか一つのスイッチが故障や検知不良(以下、総称して故障と言う)となって、当該動作の開始から一定時間経過しても対応するスイッチにより動作完了が検知されていなかった場合は、その時点で一切の積込動作が停止され、塵芥収集機能が全く作動しない仕様となっている。この作動停止により作業者の安全を確保するようにしている。
【0004】
しかし、このような仕様では、塵芥の収集作業中であっても故障の発生時点で収集作業が中断されることになる。このため、使い勝手が低下するとともに、故障が発生した場合は、故障したスイッチを修理あるいは交換したり、他の塵芥収集車に収集を依頼したりする等、塵芥の収集再開までに多くの時間を要することになって、収集地区住民に迷惑を及ぼすことが懸念される。
【0005】
その対策として、例えば、特許文献1のように、上記動作に対応するスイッチの故障の有無に拘らず、プログラム上で、当該動作の開始から一定時間経過しても対応するスイッチにより動作完了が検知されない場合は次の動作に移行するようにして、塵芥の積込動作を可能としたフォールトトレラントを有する塵芥収集車が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4142824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、塵芥収集車の上記の掻込板や可動遮蔽板は、油圧によって駆動される油圧シリンダによって構成される掻込板駆動用シリンダや可動遮蔽板駆動用シリンダの伸縮駆動によって実行され、その作動油は周囲温度によって粘性が変動する。この粘性の変動は各油圧シリンダの動作速度に変動を与える。すなわち、一車両であっても、季節や作業時間等の違いによって周囲温度が異なることから積込動作のサイクルも種々異っている。
【0008】
このため、特許文献1に記載の仕様、すなわち、各動作について、動作開始から一定時間経過した時点で、対応するスイッチにより動作の完了が検知されていなかった場合に次の動作に移行させる仕様においては、上記の一定時間を、制御上、基準温度(例えば、25℃)での動作所要時間よりも長めに設定しなければならない。
【0009】
その結果、積込動作のサイクルが不要に長くなって、塵芥の収集効率の低下を招くことが懸念される。特に、上記の一定時間に対応する基準温度よりも高い温度の場合は、本来、作動油の粘性が低くなって掻込板駆動用シリンダや可動遮蔽板駆動用シリンダの伸縮駆動に要する所要時間が短くなるのに、逆に、動作所要時間がより長くなるために、収集効率の低下が著しくなる。
【0010】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、積込動作を制御するスイッチの予測し得る故障に対して、収集効率の低下を招くことなく塵芥の積込動作を可能とするフォールトトレラントを有する塵芥収集車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1に記載の塵芥収集車の発明は、塵芥の積込動作を構成する順次の動作にそれぞれ対応する複数の動作完了スイッチを有し、一の動作完了スイッチによる対応する動作の完了検知に基づいて、次の動作を開始させるようにした塵芥収集車において、上記複数の動作完了スイッチが正常な通常制御モードによる積込動作中に、上記複数の動作完了スイッチの出力に基づいて、上記各動作の開始から完了までのそれぞれの平均所要時間を演算する演算部と、上記一の動作完了スイッチが故障したエマージェンシー制御モードによる積込動作中に、実行中の動作の経過時間が上記演算部によって演算された当該動作の上記平均所要時間に達した場合に、当該動作を完了させて次の動作へ移行させる動作移行指示部とを備えることを特徴とする。
【0012】
これによると、複数の動作完了スイッチの少なくとも一つが故障したエマージェンシー制御モードでは、実行中の動作の経過時間が、通常制御モード時に演算された当該動作の平均所要時間に達すると、次の動作に移行する。したがって、通常制御モードによる積込動作とほぼ同じ時間サイクルでの積込動作が可能となるので、実働環境に沿った時間で通常通りの作業を行うことができ、収集効率の低下を招くことがない。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塵芥収集車において、上記演算部は、上記各動作について、許容所要時間を満たす最新の所定回数分の所要時間に基づいて上記平均所要時間を演算する、ことを特徴とする。
【0014】
これによると、通常制御モードにおける各動作の平均所要時間が、許容所要時間を満たす最新の所定回数分の所要時間に基づいて算出されるので、エマージェンシー制御モードにおいて、作業者に違和感を与えることなく、最新の実働環境に沿った時間で作業を行わせることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の塵芥収集車において、積込動作の開始および停止を入力する操作盤を有し、該操作盤からのコマンド入力により上記エマージェンシー制御モードによる積込動作を実行するように構成したことを特徴とする。
【0016】
これによると、操作盤からのコマンド入力によりエマージェンシー制御モードによる積込動作が実行されるので、作業者はエマージェンシー制御モードであることを認識して積込作業を行うことができ、作業者の安全性と作業性とを両立させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵芥収集車において、上記エマージェンシー制御モードによる積込動作中である旨を報知する警報装置を備えることを特徴とする。
【0018】
これによると、エマージェンシー制御モードによる積込動作中は、警報装置によって当該モード中であることが報知されるので、作業者に故障した動作完了スイッチの交換・修理を促すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エマージェンシー制御モードでは、実行中の動作の経過時間が、通常制御モード時に演算された当該動作の平均所要時間に一致すると、次の動作に移行するので、複数の動作完了スイッチの予測し得る故障に対して、収集効率の低下を招くことなく塵芥の積込動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る塵芥収集車を示す要部側面図である。
【図2】図1に示した塵芥投入箱の要部拡大側面図である。
【図3】図1に示した塵芥収集車の積込動作を構成する順次の動作を説明するための図である。
【図4】図1に示した塵芥収集車の積込動作を制御する制御装置の要部構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示した塵芥収集車の通常制御モードによる積込動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した塵芥収集車のエマージェンシー制御モードによる積込動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態に係る塵芥収集車を示す要部側面図、図2は図1に示す塵芥投入箱の要部拡大側面図であり、図3(a)〜(d)は積込動作を構成する順次の動作を説明するための図である。
【0023】
本実施の形態の塵芥収集車1は、キャブ2の後方に塵芥収容箱3が装着され、この塵芥収容箱3の後部開口端3aに、図示しない投入口を備えた塵芥投入箱4が連接されている。そして、投入口から塵芥投入箱4に投入された塵芥は、当該塵芥投入箱4に内蔵された圧縮式積込装置5によって塵芥収容箱3内に積み込まれるように構成されている。
【0024】
圧縮式積込装置5は、図2に示すように、塵芥投入箱4の両側壁4a(一方のみ図示)に各々前方上部から後方下部に亘って傾斜して設けられた一対の直線状に形成されたガイドレール6を有し、各ガイドレール6内を転動する一対のローラ7a、7bによって上下動可能に可動遮蔽板8が支持され、可動遮蔽板8と側壁4aとの間に油圧アクチュエータである可動遮蔽板駆動用シリンダ9が架設されている。
【0025】
可動遮蔽板8の下端には、断面視略三角形状をなす掻込板10が回動軸11によって揺動可能に支持され、可動遮蔽板8と掻込板10との間に架設された油圧アクチュエータである掻込板駆動用シリンダ12の伸縮駆動によって掻込板10が回動軸11を中心に揺動するように構成されている。
【0026】
そして、圧縮式積込装置5は、掻込板10を、図3(a)に示す積込完了状態である積込完了位置から図3(b)に示す反転完了状態とする反転動作、図3(b)に示す反転完了位置から図3(c)に示す下降完了状態とする下降動作、図3(c)に示す下降完了位置から図3(d)に示す掻込み完了状態とする掻込動作、図3(d)に示す掻込み完了位置から図3(a)に示す積込完了状態とする上昇動作を一サイクルの積込動作として、該積込動作を繰り返し実行することにより、投入口から塵芥投入箱4内に連続的に投入される塵芥を、塵芥収容箱3内に順次積み込み収容するようになっている。
【0027】
図4は、本実施の形態の塵芥収集車1の積込動作を制御する制御装置の要部構成を示すブロック図である。図4に示す制御装置は、積込動作の開始・停止・一時停止等を入力する操作盤20、反転動作の完了を検知する反転完了スイッチ(SW)21、下降動作の完了を検知する下降完了スイッチ(SW)22、掻込動作完了を検知する掻込完了スイッチ(SW)23、上昇動作の完了を検知する上昇完了スイッチ(SW)24、後述する通常制御モード及びエマージェンシー制御モード等の各種動作プログラムや各種データ等を記録する記憶部25、ブザー等の警報装置26、および制御部27を有する。なお、操作盤20は塵芥投入箱4に設置され、警報装置26は、例えば、キャブ2内に設置する。
【0028】
制御部27は、例えばCPU(中央処理装置)やDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等で構成され、操作盤20からの入力コマンド、完了スイッチ21〜24の各出力、記憶部25に記憶されている各種動作プログラムや各種データに基づいて、可動遮蔽板駆動用シリンダ9、掻込板駆動用シリンダ12および警報装置26の動作を制御するようになっている。なお、記憶部25は、制御部27の内蔵メモリで構成してもよいし、動作プログラムと各種データとを別々の記憶部に格納するようにしてもよい。
【0029】
本実施の形態の塵芥収集車1は、塵芥の積込動作モード(動作プログラム)として、全ての完了スイッチ21〜24が正常な場合に、これらの完了スイッチ21〜24の動作に基づいて積込動作を実行する通常制御モードと、完了スイッチ21〜24のいずれか一つが故障した場合に、通常制御モードによる各動作の平均所要時間に基づいて積込動作を実行するエマージェンシー制御モードとを有している。
【0030】
このため、制御部27は、通常制御モードによる積込動作中に、完了スイッチ21〜24の出力に基づいて、各動作の開始から完了までのそれぞれの平均所要時間を演算して記憶部25に格納する演算部28と、エマージェンシー制御モードによる積込動作中に、実行中の動作の経過時間と記憶部25に格納されている当該動作の平均所要時間とを比較して、経過時間が平均所要時間を超えたときに、当該動作を完了させて次の動作への移行を指示する動作移行指示部29とを有している。
【0031】
なお、制御部27は、通常制御モードにおいて、各動作の開始から予め設定された一定の故障判定時間を経過しても対応する完了スイッチにより動作完了が検知されない場合、当該完了スイッチを故障と判定して、通常制御モードによる積込動作を強制終了する。そして、強制終了した場合、制御部27は、作業者による操作盤20からの所定のコマンド入力を受けて、エマージェンシー制御モードによる積込動作を開始する。
【0032】
以下、通常制御モードおよびエマージェンシー制御モードについて、更に詳細に説明する。
【0033】
先ず、通常制御モードによる積込動作について、再び図3(a)〜(d)を参照して更に詳細に説明する。ここでは、説明の便宜上、圧縮式積込装置5の可動遮蔽板8及び掻込板10は、図3(a)に示す積込完了位置をホームポジションとする。この状態で、操作盤20に設けられた積み込み開始ボタン(図示せず)が操作されると、制御部27は、掻込板駆動用シリンダ12を収縮駆動して、掻込板10を、回転軸11を中心に反転させる反転動作を開始させる。そして、掻込板10の先端10aが、図3(a)に示す積込完了位置aから所定量反転して、図3(b)に示すように反転完了位置bに達すると、反転完了スイッチ21の作動により、掻込板駆動用シリンダ12の収縮駆動を停止して、掻込板10を当該位置で停止させる。
【0034】
反転完了スイッチ21が作動すると、制御部27は、反転動作を終了させると同時に、可動遮蔽板駆動用シリンダ9を収縮駆動して、可動遮蔽板8及び掻込板10の下降動作を開始させる。そして、可動遮蔽板8が所定量下降して、掻込板10の先端10aが、図3(c)に示す下降完了位置cに達すると、下降完了スイッチ22の作動により、可動遮蔽板駆動用シリンダ9の収縮駆動を停止して、可動遮蔽板8を当該位置で停止させる。
【0035】
下降完了スイッチ22が作動すると、制御部27は、下降動作を終了させると同時に、掻込板駆動用シリンダ12を伸張駆動して、掻込板10を、回動軸11を中心に正転させる掻込動作を開始させる。そして、掻込板10が所定量正転して、先端10aが図3(d)に示す掻込完了位置cに達すると、掻込完了スイッチ23の作動により、掻込板駆動用シリンダ12の伸張駆動を停止して、掻込板10を当該位置で停止させる。この掻込動作により、塵芥投入箱4に投入された塵芥が塵芥収容箱3内に掻き込まれる。
【0036】
掻込完了スイッチ23が作動すると、制御部27は、掻込動作を終了させると同時に、可動遮蔽板駆動用シリンダ9を伸張駆動して、可動遮蔽板8及び掻込板10の上昇動作を開始させる。そして、可動遮蔽板8が所定量上昇して、掻込板10の先端10aが、図3(a)に示す積込完了位置aに達すると、上昇完了スイッチ24の作動により、可動遮蔽板駆動用シリンダ9の伸張駆動を停止して、可動遮蔽板8を当該位置で停止させる。この上昇動作により、掻込動作において掻込板10により掻き込まれた塵芥が後部開口端3aから塵芥収容箱3内に押し込まれる。
【0037】
上記の反転動作、下降動作、掻込動作及び上昇動作により、圧縮式積込装置5による積込動作の一サイクルが完了し、この積込動作を繰り返し実行することにより、投入口から塵芥投入箱4内に連続的に投入される塵芥が、塵芥収容箱3内に順次積み込み収容されるようになっている。なお、図3(a)〜(d)において、二点鎖線Tは、掻込板10の先端10aの軌跡を示している。
【0038】
本実施の形態では、上述した通常制御モードによる積込動作中に、完了スイッチ21〜24の出力に基づいて、演算部28により、各動作の開始から完了までのそれぞれの平均所要時間を演算して記憶部25に格納する。
【0039】
ここで、反転動作の所要時間は、上昇完了スイッチ24の作動から反転完了スイッチ21の作動までの時間であり、下降動作の所要時間は、反転完了スイッチ21の作動から下降完了スイッチ22の作動までの時間である。また、掻込動作の所要時間は、下降完了スイッチ22の作動から掻込完了スイッチ23の作動までの時間であり、上昇動作の所要時間は、掻込完了スイッチ23の作動から上昇完了スイッチ24の作動までの時間である。
【0040】
これらの各動作の所要時間は、例えば演算部28において、順次の完了スイッチ21〜24が作動する間の基準クロックをカウンタで計数して算出する。なお、各動作の所要時間は、操作盤20の操作による動作の一時停止によって増加したり、過負荷や一時的な電圧降下等によって一時的に増加したりする場合もあるので、予め許容所要時間を設定して、許容所要時間を満たす所要時間を記憶部25に格納するようにする。
【0041】
また、平均所要時間を算出するために、記憶部25に格納する各動作の所要時間のサンプル数は、上記の許容所要時間を満たす最新の所定サンプル数とする。ここでは、説明の便宜上、所定サンプル数を10サンプル数とする。このため、各動作の所要時間を格納する記憶部分は、10サンプル数分の容量を有する例えばFIFOやシフトレジスタ等のメモリ素子をもって構成して、古い順にサンプルを排出しながら新規のサンプルを格納するようにする。
【0042】
そして、演算部28により、各動作について、記憶部25に格納されている10サンプル数の所要時間を読み出して平均所要時間を演算し、その結果を記憶部25の所定の領域に更新しながら記憶する。
【0043】
図5は、通常制御モードにおける積込動作を示すフローチャートである。すなわち、通常制御モードでは、制御部27は、前動作に対応する完了スイッチの作動により次の動作を開始すると(ステップS51)、演算部28においてカウンタを起動させて経過時間の計測を開始させる(ステップS52)。
【0044】
その後、制御部27は、当該動作に対応する完了スイッチの作動が検知されると(ステップS53)、演算部28においてカウンタを停止させて、その時点までの経過時間である当該動作の所要時間を算出させる(ステップS54)。そして、算出した所要時間が許容所要時間を示す許容範囲内にあるか否かを判定し(ステップS55)、許容範囲内(Yの場合)であれば、記憶部25に記憶させるとともに(ステップS56)、当該所要時間を含む10サンプル分の所要時間を記憶部25から読み出して平均所要時間を算出し、その結果を記憶部25の所定の記憶領域に記憶する(ステップS57)。
【0045】
その後、制御部27は、操作盤20からの停止指令がなければ(ステップS58)、ステップS51に移行して、次の動作に対する上記の動作を繰り返す。これに対し、ステップS55において、算出した所要時間が許容範囲から外れる場合(Nの場合)はステップS58に移行し、ステップS58において停止指令があれば、通常制御モードの動作を終了する。また、制御部27は、ステップS53において完了スイッチの作動が検知されない場合(Nの場合)、ステップS59で当該動作の所要時間を算出後、ステップS60に移行して当該動作の開始から一定の故障判定時間を経過しているか否か判断する。そして、ステップS60で一定の故障判定時間を経過していると判断する場合には、当該動作の完了を検知する完了スイッチの故障を判断して、ステップS61にて通常制御モードによる積込動作を強制終了させる。すなわち、制御部27は、各動作の開始から一定の故障判定時間を経過しても対応する完了スイッチにより動作完了が検知されない場合、通常制御モードによる積込動作を強制終了する。
【0046】
次に、エマージェンシー制御モードについて説明する。
【0047】
エマージェンシー制御モードは、上述したように、通常制御モードにおいて完了スイッチにより対応する動作の完了が検知されずに通常制御モードが強制終了された後、作業者による操作盤20からの所定のコマンド入力を受けた場合に実行される。そして、通常制御モードの場合と同様の積込動作、すなわち、図3(a)〜(d)で説明した反転動作、下降動作、掻込動作および上昇動作を繰り返し実行して、投入口から塵芥投入箱4内に連続的に投入される塵芥を、塵芥収容箱3内に順次積み込み収容する。
【0048】
しかし、エマージェンシー制御モードでは、積込動作を構成する順次の動作への移行制御を、完了スイッチによらず、実行中の動作の経過時間と、通常制御モードによる積込動作において演算されて記憶部25に格納されている当該動作の平均所要時間との比較に基づいて実行する。
【0049】
図6は、エマージェンシー制御モードによる積込動作を示すフローチャートである。すなわち、エマージェンシー制御モードでは、制御部27は、コマンド入力により積込動作を開始すると(ステップS71)、動作移行指示部29においてカウンタを起動させて経過時間の計測を開始させる(ステップS72)。
【0050】
その後、制御部27は、動作移行指示部29において、計測中の経過時間が、記憶部25に格納されている当該動作の平均所要時間に達しているか否かを検知する(ステップS73)。そして、平均所用時間に達している場合は、操作盤20からの停止指令がなければ(ステップS74)、当該動作を完了させて次の動作に移行させる移行指示を与えて(ステップS75)、ステップS71に移行する。これにより、次の動作を開始させて、上記の動作を繰り返す。
【0051】
また、このエマージェンシー制御モードでは、制御部27は、警報装置26を一定間隔で駆動する。
【0052】
以上のように、本実施の形態の塵芥収集車1では、エマージェンシー制御モードにおいて、通常制御モード時に演算された各動作の平均所要時間をフィードバックして、実行中の動作の経過時間が当該動作の平均所要時間に一致すると、当該動作を停止させて次の動作に移行させるようにタイマ制御している。したがって、従来のように、予め設定された長めの一定時間で次の動作への移行を制御する場合と比較して、無駄な時間が発生せず、実働環境に沿った時間で通常通りの作業を行うことができ、収集効率の低下を招くことがない。
【0053】
しかも、通常制御モードにおいて、各動作の平均所要時間を算出するにあたっては、許容所要時間を満たす最新の所定回数分の所要時間を用いるようにしているので、エマージェンシー制御モードにおいて、作業者に違和感を与えることなく、最新の実働環境に沿った時間で作業を行わせることができる。
【0054】
また、エマージェンシー制御モードは、完了スイッチの故障により通常制御モードによる積込動作が強制終了した場合に、作業者による操作盤20からのコマンド入力によって実行するようにしたので、作業者の安全性と作業性とを確保することできる。
【0055】
更に、フォールトトレラントシステムでは、一部の部品が故障しても正常に処理を実行できることから、一般に、作業者が故障に気付いてもそれを直すことが疎かになり易い。この点に関し、本実施の形態においては、エマージェンシー制御モードの場合、警報装置26を一定間隔で駆動するようにしたので、作業者に故障した完了スイッチの交換・修理を促すことができるフォールトトレラントシステムを実現できる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、上記実施の形態のように揺動および昇降する掻込板を有する圧縮式積込装置に限らず、積込動作を一連の複数の動作で実行する構成、例えば油圧アクチュエータとして油圧モータ及び油圧シリンダを備え、油圧モータで一方向に回転して投入された塵芥を掻き込む回転板と、この回転板によって掻き込まれた塵芥を油圧シリンダの伸縮駆動で塵芥収容箱に押し込む揺動自在な押込板とを有する回転板式積込装置にも適用可能である。また、通常制御モードにおいて完了スイッチの故障を検知した場合、強制終了することなく、自動的にエマージェンシー制御モードに移行するように構成してもよい。この場合、好ましくは、完了スイッチの故障を報知するランプや警報装置を駆動する。
【符号の説明】
【0057】
1 塵芥収集車
3 塵芥収容箱
4 塵芥投入箱
5 圧縮式積込装置
6 ガイドレール
8 可動遮蔽板
9 可動遮蔽板駆動用シリンダ(油圧アクチュエータ)
10 掻込板
11 回動軸
12 掻込板駆動用シリンダ(油圧アクチュエータ)
20 操作盤
21 反転完了スイッチ
22 下降完了スイッチ
23 掻込完了スイッチ
24 上昇完了スイッチ
25 記憶部
26 警報装置
27 制御部
28 演算部
29 動作移行指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥の積込動作を構成する順次の動作にそれぞれ対応する複数の動作完了スイッチを有し、一の動作完了スイッチによる対応する動作の完了検知に基づいて、次の動作を開始させるようにした塵芥収集車において、
上記複数の動作完了スイッチが正常な通常制御モードによる積込動作中に、上記複数の動作完了スイッチの出力に基づいて、上記各動作の開始から完了までのそれぞれの平均所要時間を演算する演算部と、
上記一の動作完了スイッチが故障したエマージェンシー制御モードによる積込動作中に、実行中の動作の経過時間が上記演算部によって演算された当該動作の上記平均所要時間に達した場合に、当該動作を完了させて次の動作へ移行させる動作移行指示部と、
を備えることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
上記演算部は、上記各動作について、許容所要時間を満たす最新の所定回数分の所要時間に基づいて上記平均所要時間を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
積込動作の開始および停止を入力する操作盤を有し、該操作盤からのコマンド入力により上記エマージェンシー制御モードによる積込動作を実行するように構成した、ことを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
上記エマージェンシー制御モードによる積込動作中である旨を報知する警報装置を備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11856(P2011−11856A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156566(P2009−156566)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】