説明

塵芥収集車

【課題】塵芥作業車に装着される上部カバーの取り付けおよび取り外し性の向上を図り、もって塵芥作業車のメンテナンス作業性の向上を図る。
【解決手段】上部カバー10は、硬質材料で形成されると共に、車体の車幅方向両端部に配設されたリンク機構11を介して塵芥収容箱2および塵芥投入箱3に取り付けられる。リンク機構11は、相対回転可能に連結された第1および第2のリンク部材12,13を有し、第1のリンク部材12は、一端12aが上部カバー10の前部側に回転可能に連結されると共に、他端12bが塵芥投入箱3の前端上部に回転可能に連結され、第2のリンク部材13は、一端13aが上部カバー10の後部側に回転可能に連結されると共に、他端13bが塵芥収容箱2の後端上部に回転可能に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車に関し、詳しくは、塵芥収容箱とこの後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱との間に跨って設けられ、両者の連結部分上部間を被覆する上部カバーを備えた塵芥収集車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
塵芥収集車は、車体と、車体に搭載され、後部が開口した塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを主体とし、塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥積込装置によって塵芥収容箱内に積み込んで収容するように構成されている。この種の塵芥収集車は、塵芥の積み込み方式(塵芥積込装置の構成)によって、主に回転式とプレス式とに大別される。
【0003】
回転式又はプレス式に関わらず、この種の塵芥収集車においては、通常、塵芥収容箱と塵芥投入箱との連結部分上部間に跨って上部カバーが配設されている。上部カバーは、塵芥投入箱の開閉動作に連動して動作するように構成され、塵芥投入箱の開閉動作を許容しつつ、塵芥収容箱と塵芥投入箱との連結部分上部間に形成される構造的な隙間から、塵芥収容箱内に雨水が侵入するのを可及的に防止する。かかる機能を奏する上部カバーとしては、例えば、特許文献1に開示された柔軟性を有するキャンバスシートや、特許文献2に開示された硬質材料で形成されたいわゆるハードカバーが公知であるが、上部カバーとしてキャンバスシートを用いると塵芥収集車の全体的な意匠感を損なうという問題等があることから、近時においては、ハードカバーを採用することが検討され、あるいは実際に採用されている。
【0004】
特許文献2に開示された上部カバーは、その後部が塵芥投入箱の前端上部にロッドを介して連結されると共に、その前部が車幅方向に沿って所定間隔で複数設けたヒンジを介して塵芥収容箱の後端上部に回動自在に支持(連結)されることにより、塵芥投入箱の動作に連動して回動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−78604号公報
【特許文献2】特開2005−330075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された塵芥収集車においては、上部カバーが、その後部がロッドを介して塵芥投入箱の上部に連結されると共に、その前部が車幅方向に沿って複数設けられたヒンジを介して塵芥収容箱に支持(連結)されることから、上部カバーの取り付け、さらには取り外しに多大な手間を要するという問題がある。そのため、例えば上部カバーを取り外して、車体(塵芥収容箱)から塵芥投入箱に至って延びる油圧配管等のメンテナンスを行う際の作業性が悪いという問題が指摘されている。
【0007】
本発明の主な課題は、塵芥作業車に装着される上部カバーの取り付けおよび取り外し性の向上を図り、もって塵芥作業車のメンテナンス性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る塵芥収集車は、車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、塵芥収容箱および塵芥投入箱の連結部分上部間に跨って設けられ、連結部分上部間を被覆する上部カバーとを備えたものにおいて、上部カバーは、硬質材料で形成されると共に、車体の車幅方向両端部に夫々配設された一対のリンク機構を介して塵芥収容箱および塵芥投入箱に取り付けられ、各リンク機構は、相対回転可能に連結された第1および第2のリンク部材を有し、第1のリンク部材は、一端が上部カバーの前部側に回転可能に連結されると共に、他端が塵芥投入箱の前部上端に回転可能に連結され、第2のリンク部材は、一端が上部カバーの後部側に回転可能に連結されると共に、他端が塵芥収容箱の後端上部に回転可能に連結されていることを特徴とする。
【0009】
上記のように、本発明に係る塵芥収集車は、上部カバーが、相対回転可能に連結された第1および第2のリンク部材を有するリンク機構を介して塵芥収容箱および塵芥投入箱に取り付けられている。かかる構成のリンク機構は、一組のアセンブリとして取り扱うことができることから、特許文献2に開示された上部カバーの連結機構(駆動機構)に比べて、上部カバーの取り付けおよび取り外しを容易化することができる。これにより、上部カバーを取り外し、車体(塵芥収容箱)から塵芥投入箱に至って延びる油圧配管等のメンテナンスを行う必要が生じた際にも、その作業性向上を図ることができる。また、上部カバーが、硬質材料で形成されたいわゆるハードカバーであることから、雨水の侵入防止効果を長期間に亘って安定的に維持することができ、しかも、塵芥収集車全体としての意匠性向上(塵芥収集車の外観デザイン向上)も図られる。
【0010】
上記の構成において、各リンク機構は、第1および第2のリンク部材の一端が回転可能に連結される第3のリンク部材をさらに有し、上部カバーは、その外側から内側に挿通させたボルト部材を介して第3のリンク部材に取り付け固定することができる。このような構成によれば、上部カバーをリンク機構にボルト固定するだけで上部カバーを回動自在に取り付けることができる。一方、(外部に露出した)ボルト部材を取り外し、リンク機構から上部カバーを分離するだけで油圧配管等を外部に露出させることができるので、油圧配管等のメンテナンスに際してリンク機構を車体側から取り外す必要がなくなる。従って、上部カバーの取り外しおよび再取り付けを含む一連のメンテナンス作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0011】
上部カバーは、その前後方向および車幅方向の中間部が上方に膨出した凸球状に形成することができる。このような構成によれば、上部カバーに雨水が溜まるのを可及的に防止することができることに加え、上部カバーの強度向上を図ることができる。
【0012】
以上に示す本発明の構成は、塵芥の収容方式を問わず(回転式やプレス式等を問わず)採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記したように、本発明によれば、塵芥作業車に装着される上部カバーの取り付けおよび取り外し性の向上を図り、もって塵芥作業車のメンテナンス作業性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る塵芥収集車の後方部分の左側面図であり、塵芥投入箱の全閉状態を示す図である。
【図2】本発明に係る塵芥収集車の後方部分の左側面図であり、塵芥投入箱の全開状態を示す図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図1に示す塵芥収集車の左側方に配設されたリンク機構を後方側から見たときの部分拡大正面図である。
【図5】図2の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明に係る塵芥収集車1の後方部分の側面図である。この塵芥収集車1は、車体に搭載され、後部が開口した塵芥収容箱2と、塵芥収容箱2の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱3とを備える。塵芥投入箱3の内部には、塵芥投入箱3に投入された塵芥を塵芥収容箱2内に積み込むための塵芥積込装置が装備されている。塵芥積込装置としては、例えば、揺動自在な押込板、およびこの押込板の下方に位置する回転自在な回転板を主要部として構成されるいわゆる回転式の他、昇降自在のパッカープレート、およびこのパッカープレートの下端部に揺動自在に設けられたプレスプレートを主要部として構成されるいわゆるプレス式が採用される。
【0017】
塵芥投入箱3は、塵芥収容箱2の後部上方に設けられた車幅方向に延びる固定支軸4を介して塵芥収容箱2の後部に開閉自在に連結される。塵芥収容箱2の後部の車幅方向両端部には一対のリフトシリンダ5,5が配設され、各リフトシリンダ5は、その一端部5aが塵芥収容箱2の後部に回転可能に連結されると共に、その他端部5bがブラケット6を介して塵芥投入箱3に回転可能に連結されている。リフトシリンダ5は、全縮状態において、前方側が後方側よりも上方に位置した傾倒姿勢でもって一端部5a及び他端部5bが塵芥収容箱2及び塵芥投入箱3のブラケット6に夫々連結されている。かかる構成から、図2に示すように、一対のリフトシリンダ5,5が全縮状態から伸長動作すると、塵芥投入箱3は塵芥収容箱2から離反する方向に回転し、塵芥収容箱2の後部開口を開放する。一方、リフトシリンダ5,5が全伸長状態から短縮動作すると、塵芥投入箱3は塵芥収容箱2に接近する方向に回転し、塵芥収容箱2の後部開口を閉塞する。
【0018】
塵芥収容箱2に収容された塵芥の排出作業は、リフトシリンダ5,5を伸長動作させて(塵芥投入箱3を開動作させて)塵芥収容箱2の後部開口を開放させた状態で、塵芥収容箱2の内部に装備された図示外の排出板を後方まで移動させることにより、あるいは、塵芥収容箱2の後部開口を開放させると共に、塵芥収容箱2の前部を持ち上げて前部側を後部側よりも上方に位置させた傾倒姿勢とすることにより行われる。
【0019】
塵芥収集車1には、塵芥収容箱2と塵芥投入箱3との接合部分上部間に跨って上部カバー10が設けられている。この上部カバー10は、塵芥投入箱3の開閉動作と連動して動作するように構成され、塵芥投入箱3の開閉動作を許容しつつ、(塵芥投入箱3の全閉時に)塵芥収容箱2と塵芥投入箱3との連結部分上部間に形成される構造的な隙間Gを被覆し、隙間Gを介しての塵芥収容箱2内への雨水の侵入等を可及的に防止する役割を担う(図3を参照)。上部カバー10は、その全体が硬質材料、例えば硬質プラスチックや金属材料、あるいは両者の組み合わせで形成されたいわゆるハードカバーである。この上部カバー10の蓋部(上記の連結部分上部間に形成される隙間Gを被覆する部分)は、図3〜図5に示すように、その前後方向および車幅方向の中間部が上方に膨出した凸球状に形成されている。
【0020】
上部カバー10は、車体の車幅方向の両端部に夫々配設された一対のリンク機構11,11を介して塵芥収容箱2および塵芥投入箱3に取り付けられることにより、塵芥投入箱3の開閉動作に連動して動作する。各リンク機構11は、一端12aが上部カバー10の前部側に回転可能に連結されると共に、他端12bが塵芥投入箱3の前端上部に回転可能に連結された第1のリンク部材12と、一端13aが上部カバー10の後部側に回転可能に連結されると共に、他端13bが塵芥収容箱2の後端上部に回転可能に連結された第2のリンク部材13と、第1および第2のリンク部材12,13を相対回転可能に連結する枢支ピン16とを備える。第1および第2のリンク部材12,13は、長手方向の所定部位で屈曲しており、リフトシリンダ5の全縮状態(塵芥投入箱3の全閉状態)ではその一部が上部カバー10内に収容される。このとき、上部カバー10は、塵芥収容箱2および塵芥投入箱3の上部に近接状態で配設されて上記の隙間Gを被覆する。
【0021】
リンク機構11は、さらに、第1および第2のリンク部材12,13の一端12a,13aを、前部側および後部側に回転可能に夫々連結した第3のリンク部材14を有し、上部カバー10は、外側(上側)から内側(下側)に挿通させたボルト部材18を介して第3のリンク部材14に取り付け固定されている(図4を参照)。第3のリンク部材14は、下方が開口した断面コの字状(凹字状)を呈し、その上部裏面に、ボルト部材18を螺着するためのナット部が設けられている。この第3のリンク部材14の車幅方向内側の側部の前部側には、長手方向(前後方向)に沿って延びた長孔15が設けられ、第1のリンク部材12の一端12aは、この長孔15に対して回転およびスライド移動可能に連結されている。また、第2のリンク部材13の一端13aは、第3のリンク部材14の車幅方向外側の側部の後部側に回転可能に連結されている。以上の構成を具備する本実施形態に係る各リンク機構11は、第1〜第3のリンク部材12〜14を相対回転可能に連結してなる一組のアセンブリとして取り扱われる。
【0022】
以上の構成から、リフトシリンダ5が伸長動作し、塵芥投入箱3が固定支軸4回りに塵芥収容箱2から離反する方向に回転すると、これに連動してリンク機構11を構成する第1および第2のリンク部材12,13、ひいては上部カバー10が回転する(図5を参照)。従って、上部カバー10は、塵芥投入箱3の開閉動作を許容しつつ、塵芥投入箱3の全閉時においては塵芥収容箱2と塵芥投入箱3との連結部分上部間に形成される隙間Gを被覆して、隙間Gを介しての塵芥収容箱2への雨水の侵入を可及的に防止する。
【0023】
以上に示すように、本発明に係る塵芥収集車1は、上部カバー10が、相対回転可能に連結された第1および第2のリンク部材12,13を有するリンク機構11を介して塵芥収容箱2および塵芥投入箱3に取り付けられている。リンク機構11は、一組のアセンブリとして取り扱うことができることから、特許文献2に開示された上部カバーの連結機構(駆動機構)に比べて、上部カバー10の取り付けおよび取り外しを容易化することができる。これにより、上部カバー10を取り外してメンテナンス作業を行う必要が生じた際にも、その作業性向上を図ることができる。また、上部カバー10が、硬質材料で形成されたいわゆるハードカバーであることから、雨水の侵入防止効果を長期間に亘って安定的に維持することができ、しかも、塵芥収集車1全体としての意匠性向上(塵芥収集車1の外観デザイン向上)も図られる。
【0024】
また、各リンク機構11は、第1および第2のリンク部材12,13の一端12a,13aが回転可能に連結された第3のリンク部材14をさらに有し、上部カバー10は、外側から内側に挿通させたボルト部材18を介して第3のリンク部材13に取り付け固定される。このような構成によれば、上部カバー10をリンク機構11(第3のリンク部材14)にボルト固定するだけで上部カバー10の取り付けを完了することができる。一方、外部に露出したボルト部材18を取り外し、リンク機構11から上部カバー10を分離するだけで油圧配管等を外部に露出させることができるので、油圧配管等のメンテナンスに際してリンク機構11を車体側から取り外す必要がなくなる。従って、上部カバー10の取り外しおよび再取り付けを含む一連のメンテナンス作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0025】
さらに、上部カバー10(の被覆部)は、前後方向および車幅方向の中間部が上方に膨出した凸球状に形成されることから、上部カバー10に雨水が溜まるのを可及的に防止することができることに加え、上部カバー10の強度向上を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態に係る塵芥収集車1について説明を行ったが、塵芥収集車1には本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。例えば、上記の実施形態で用いたリンク機構11は、これを構成する第1および第2のリンク部材12,13が共に長手方向の所定部位で屈曲したものであるが、両リンク部材12,13の何れか一方又は双方を直線状のもので構成することもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
10 上部カバー
11 リンク機構
12 第1のリンク部材
12a 一端
12b 他端
13 第2のリンク部材
13a 一端
13b 他端
14 第3のリンク部材
18 ボルト部材
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、前記塵芥収容箱および前記塵芥投入箱の連結部分上部間に跨って設けられ、該連結部分上部間を被覆する上部カバーとを備えた塵芥収集車において、
前記上部カバーは、硬質材料で形成されると共に、前記車体の車幅方向両端部に配設された一対のリンク機構を介して前記塵芥収容箱および前記塵芥投入箱に取り付けられ、
前記各リンク機構は、相対回転可能に連結された第1および第2のリンク部材を有し、
前記第1のリンク部材は、一端が前記上部カバーの前部側に回転可能に連結されると共に、他端が前記塵芥投入箱の前端上部に回転可能に連結され、前記第2のリンク部材は、一端が前記上部カバーの後部側に回転可能に連結されると共に、他端が前記塵芥収容箱の後端上部に回転可能に連結されていることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記各リンク機構は、前記第1および第2のリンク部材の一端が回転可能に連結される第3のリンク部材をさらに有し、
前記上部カバーは、その外側から内側に挿通させたボルト部材を介して前記第3のリンク部材に取り付け固定されていることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記上部カバーは、前後方向および車幅方向の中間部が上方に膨出した凸球状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−219230(P2011−219230A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91092(P2010−91092)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】