説明

増加したコハク酸産生を有する変異E.coli株

本発明は、細菌の変異株に関し、この変異株は、数個の重要な代謝酵素を欠損しているか、または変異遺伝子を含んでいる。そしてこの変異株は、嫌気条件下で大量のコハク酸を産生する。本明細書において、嫌気条件下でのカルボン酸産生を改善するために不活性化された2つより多い経路タンパク質を有する細菌が記載される。ここで、産生されるカルボン酸は、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸またはグリオキシル酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、代謝的に操作された微生物において、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、および他のカルボン酸を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
価値の高い特殊化学製品であるコハク酸およびその誘導体は、広範な産業的用途を有する。コハク酸は、食物、医薬、プラスチック、化粧品、および織物の原料として、ならびに被覆および廃棄ガス洗浄において、使用されている(非特許文献1)。コハク酸は、1,4−ブタンジオール(BDO)、テトラヒドロフラン、およびγ−ブチロラクトンのようなプラスチック前駆体のための原材料として機能し得る。さらに、コハク酸およびBDOは、ポリエステル用のモノマーとして使用され得る。コハク酸のコストが減少すれば、コハク酸は、他の大量の化学品を製造するための中間原材料としてより有用になる(47)。コハク酸と共に、他の4炭素ジカルボン酸(例えば、リンゴ酸およびフマル酸)もまた、原材料としてのポテンシャルを有する。
【0003】
コハク酸、リンゴ酸およびフマル酸の、グルコース、キシロース、ソルビトールおよび他の「緑色の」再生可能な原材料(この場合には、醗酵プロセスによって)からの産生は、再生可能ではない供給源からそのような酸を誘導するよりエネルギーの激しい方法に代わる方法である。コハク酸は、プロピオン酸産生細菌による嫌気醗酵のための中間体であるが、このプロセスは、低収率および低濃度しかもたらさない。酸の混合物がE.coli醗酵から産生されることは、長く知られていた。しかしながら、醗酵される各モルのグルコースに対して、1.2モルのギ酸、0.1〜0.2モルの乳酸、および0.3〜0.4モルのコハク酸しか産生されない。したがって、醗酵的にカルボン酸を産生させるための取り組みは、所望の産物には変換されない比較的大量の増殖基質(例えば、グルコース)をもたらす。
【0004】
コハク酸の収率および生産性を増加させるためにE.coliの嫌気中心代謝経路を代謝的に操作する多数の試みが、行われている(7、8、12、14、15、20、24、32、44、48)。産生条件の最適化と組み合わせた遺伝子操作もまた、コハク酸産生を増加させることが示されている。1つの例は、二相醗酵(dual phase fermentation)産生様式を使用するコハク酸産生変異E.coli株の増殖である。この二相醗酵産生様式は、最初の好気増殖相と、続く嫌気産生相とを含むか、または/かつ二酸化炭素、水素または両方のガスの混合物を使用する嫌気醗酵の上部空間条件を変化させることによる(特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
具体的には、特定の経路の増幅、付加または低減によって酵素レベルを操ることによって、高収率の所望の産物がもたらされ得る。E.coliの混合酸醗酵経路を使用する、嫌気条件下でのコハク酸産生のための種々の遺伝的改善が、記載されている。1つの例は、E.coli由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepc)の過剰発現である(34)。別の例では、フマル酸のコハク酸への変換は、E.coliにおける元来のフマル酸レダクターゼ(frd)の過剰発現によって改善される(17、53)。特定の酵素は、E.coliに固有のものではないが、コハク酸産生を増加させるのを潜在的に助け得る。Rhizobium etli由来のピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)をE.coliに導入することによって、コハク酸産生が強化された(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。他の代謝操作戦略としては、コハク酸の競合経路を不活性化することが挙げられる。不活性化されたピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)および乳酸デヒドロゲナーゼ(Idh)遺伝子を有する宿主においてリンゴ酸酵素を過剰発現させると、コハク酸が主要な醗酵産物になった(非特許文献6、非特許文献7)。同じ変異株(pfl−かつIdh−)における不活性グルコースホスホトランスフェラーゼ系(ptsG)もまた、E.coliにおけるより高い収率のコハク酸産生および増殖の向上をもたらすことが示された(非特許文献8)。
【0006】
嫌気条件下でのグルコースからのコハク酸の最大の理論的収率(モルベース)は、全ての炭素フラックスが本来のコハク酸醗酵経路を通ると仮定すると、1モル/モルに制限される(図1)。この醗酵性経路は、オキサロ酢酸(OAA)をリンゴ酸、フマル酸、次いでコハク酸に変換し、そしてこの経路は、産生されるコハク酸当たり2モルのNADHを必要とする。醗酵性経路による高いコハク酸収率の1つの大きな障害は、NADH制限に起因する。これは、1モルのグルコースは、解糖系を通るとわずか2モルのNADHしか提供しないからである;しかしながら、本来の醗酵性経路を通るコハク酸の1モルの形成には、2モルのNADHが必要である。コハク酸の嫌気産生はまた、遅い細胞増殖および産生の制限によっても束縛される。
【0007】
代謝的操作は、代謝経路のスループットを操ることによって、プロセスの生産性をかなり改善するポテンシャルを有する。具体的には、特定の経路の増幅、付加または欠失による酵素レベルを操ることが、高収率の所望の産物をもたらし得る。当該分野で必要とされているのは、従来提供されていたものよりも高レベルのコハク酸および他のカルボン酸を産生する改善された細菌株である。
【特許文献1】Nghiemら、米国特許第5,869,301号
【非特許文献1】Zeikusら、App.Microbiol.Biotechnol.(1999)51:545−52
【非特許文献2】Vemuriら、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2002)28:325−32
【非特許文献3】Gokarnら、Biotech.Let.(1998)20:795−8
【非特許文献4】Gokarnら、Appl.Environ.Microbiol.(2000)66:1844−50
【非特許文献5】Gokarnら、App.Microbiol.Biotechnol.(2001)56:188−95
【非特許文献6】StolsおよびDonnelly、App.Environ.Microbiol.(1997)63:2695−701
【非特許文献7】HongおよびLee,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2002)58:286−90
【非特許文献8】Chatterjeeら、Appl Environ Microbiol.(2001)67:148−54
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
嫌気条件下でのカルボン酸産生を改善するために不活性化された2つより多い経路タンパク質を有する細菌が記載される。ここで、産生されるカルボン酸は、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸またはグリオキシル酸である。本発明の1つの実施形態において、タンパク質ADHE、LDHA、ACKA、PTA、ICLRおよびARCAが不活性化される。本発明の別の実施形態において、ADHE、LDHA、ACKA、PTA、ICLR、およびARCAを含むタンパク質の種々の組み合わせが、不活性化される。これらのタンパク質の不活性化はまた、ACEA、ACEB、ACEK、PEPC、PYC、またはCITZの過剰発現と組み合わされ得る。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、破壊株が作製され、ここで、adhE、idhA、iclR、arcA、およびack−pta遺伝子が破壊される。本発明の別の実施形態において、adhE、IdhA、iclR、arcA、およびack−pta遺伝子の組み合わせが破壊される。SBS330MG、SBS440MG、SBS550MG、SBS660MG、およびSBS990MGと命名された変異株が、本発明のいくつかの実施形態を提供する。
【0010】
さらに、変異株を用いてカルボン酸を産生する嫌気的方法が記載される。この方法は、培地に上述の変異細菌株を接種する工程、この細菌株を嫌気条件下で培養する工程、および媒体からカルボン酸を単離する工程を包含する。細菌株は、フラスコ、バイオリアクター、流加バイオリアクター、またはケモスタットバイオリアクターにおいて培養され得、カルボン酸を得ることができる。カルボン酸の収率は、嫌気条件下でのコハク酸産生の前に、好気条件下でその細胞を培養することによって、さらに増加され得る。
【0011】
さらに、OAA−クエン酸およびOAA−リンゴ酸経路を通るカルボン酸を分配するための、細菌における解糖フラックスを変更することが、実証される。解糖フラックスは、10〜40%の間のクエン酸および90〜60%の間のリンゴ酸、より好ましくは約30%のクエン酸および約70%のリンゴ酸の比率であり得る。上述の細菌株は、この様式で解糖フラックスを分配している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の実施形態の説明)
本明細書中に記載されるカルボン酸は、構造、pHおよび存在するイオンによって、塩、酸、塩基または誘導体であり得る。例えば、用語「コハク酸(succinate)」および「コハク酸(succinic acid)」は、本明細書中で互換的に使用される。コハク酸はまた、ブタン二酸(C)とも呼ばれる。本明細書中に記載される化学物質としては、ギ酸、グリオキシル酸、乳酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸(OAA)、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、およびピルビン酸が挙げられる。Krebs回路(クエン酸回路、トリカルボン酸回路またはTCAサイクルとも呼ばれる)を含む細菌の代謝経路は、LehningerによるPrinciples of Biochemistryならびに他の生化学の文献において見ることができる。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「操作可能に結合された」または「操作可能に連結された」とは、機能的に連結された核酸配列をいう。
【0014】
「低下した活性」または「不活性」は、本明細書中では、適切なコントロール種と比較して、タンパク質活性における少なくとも75%の低下であると定義される。好ましくは、活性における少なくとも80%、85%、90%、95%の低下に達し、最も好ましい実施形態では、その活性は排除(100%)される。タンパク質は、インヒビターで、変異によって、または発現または翻訳の抑制などによって不活性化され得る。
【0015】
「過剰発現」または「過剰発現した」とは、本明細書中では、適切なコントロール種と比較して、少なくとも150%のタンパク質活性であると定義される。過剰発現は、タンパク質を変異させて、より活性な形態または阻害に耐性な形態を生み出すことによって、インヒビターを除去することによって、またはアクチベーターを付加することなどによって、達成され得る。過剰発現はまた、リプレッサーを除去することによって、細胞に多コピーの遺伝子を加えることによって、または内在性遺伝子をアップレギュレートすることなどによっても、達成され得る。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「破壊」および「破壊株」は、本来の遺伝子またはタンパク質が、その遺伝子の活性を減少させるように、変異、欠失、挿入、またはダウンレギュレートされている細胞株をいう。遺伝子は、全ゲノムDNA配列のノックアウトまたは除去によって、完全に(100%)低減され得る。フレームシフト変異、早期ストップコドン、致命的な残基の点変異、または欠失もしくは挿入などは、活性タンパク質の転写および/または翻訳を完全に妨げることによって、遺伝子産物を完全に(100%)不活性化し得る。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「組み換え」は、遺伝子操作された物質に関連するか、遺伝子操作された物質に由来するか、または遺伝子操作された物質を含む。
【0018】
遺伝子は、以下のように略される:イソクエン酸リアー (aceA a.k.a.ict);リンゴ酸シンターゼ(aceB);グリオキシル酸分路オペロン(thy glyoxylate shunt operon)(aceBAK);イソクエンデヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(aceK);酢酸キナーゼホスホトランスアセチラーゼ(ackA−pta);アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE);好気呼吸コントロールレギュレーターAおよびB(arcAB);過酸化物感受性(arg−lac);アルコールアセチルトランスフェラーゼ1および2(atflおよびatf2);推定カダベリン/リジンアンチポーター(cadR);クエン酸シンターゼ(citZ);脂肪酸分解レギュロン(fadR);フマル酸レダクターゼ(frd);フルクトースレギュロン(fruR);フマラーゼA、B、またはC(fumABC);イソクエンデヒドロゲナーゼ(icd);イソクエン酸リアーゼ(icf);aceBAKオペロンリプレッサー(iclR);乳酸デヒドロゲナーゼ(idhA);リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh);ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC);ピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl);ピルビン酸オキシダーゼ(poxB);ホスホトランスフェラーゼ系遺伝子FおよびG(PTSFおよびPTSG);ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc);グアノシン3’,5’−ビスリン酸シンターゼI(relAl);リボソームタンパク質S12(rpsL);ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(sdh)。Δlac(arg−lac)205(Ul69)は、H2O2に対して細胞を感受性にする遺伝子を保持するarg−lac領域の染色体欠失である(51)。PYCは、種々の種に由来しており、Lactococcus lactisのpycが1つの例(AF068759)として発現されている。
【0019】
略語:アンピシリン(Ap);オキサシリン(Ox);カルベニシリン(Cn);クロラムフェニコール(Cm);カナマイシン(Km);ストレプトマイシン(Sm);テトラサイクリン(Tc);ナリジクス酸(Nal);エリスロマイシン(Em);アンピシリン耐性(Ap);チアンフェニコール/クロラムフェニコール耐性(Thi/Cm);マクロライド、リンコサミドおよびストレプトアビジンA耐性(MLS);ストレプトマイシン耐性(Sm);カナマイシン耐性(Km);グラム陰性菌複製起点(ColE1);グラム陽性菌複製起点(OriII)。一般的な制限酵素および制限酵素部位は、NEB(登録商標)(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標)、www.neb.com)およびINVITROGEN(登録商標)(www.invitrogen.com)において見ることができる。ATCC(登録商標)、AMERICAN TYPE CULTURE COLLECTIONTM(www.atcc.org)。
【0020】
本発明の特定の実施形態において使用されるプラスミドおよび株は、表1および表2に記載される。MG1665は、F接合型欠損のFγ自然突然変異であり、Guyerら(18)に報告されるとおりである。経路の欠失は、P1ファージ形質導入およびλredリコンビナーゼに基づく一工程不活性化を使用して実施した。プラスミドおよび変異E.coli株の構築は、本明細書中で参照され、Sambrook(38)およびAusebel(5)において記載されている標準的な生化学技術を使用して実施した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

各実験について、適切な場合は、上記の株をプラスミドで新しく形質転換した。シングルコロニーを適切な抗生物質を含有するプレート上に再びストリークした。シングルコロニーを、50mlのLB培地を適切な抗生物質と一緒に含んでいる250ml攪拌フラスコに移し、250rpmで12時間攪拌しながら37℃で好気的に増殖させた。細胞をLB培地で2回洗浄し、適切な抗生物質濃度を有する各400mlのLB培地を含む2Lの攪拌フラスコ内で1% v/vでインキュベートし、250rpmで12時間攪拌しながら37℃で好気的に増殖させた。適切な細胞バイオマス(約1.4gCDW)を遠心分離によって収集し、その上清を廃棄した。この細胞を60mlの嫌気性LB培地(20g/Lのグルコース、1g/LのNaHCOを補充したLBブロス培地)に再懸濁し、直ちにリアクターに約10OD600の濃度で接種した。
【0023】
醗酵は、完全に嫌気的な条件下で行った。1Lのバイオリアクターに、適切な抗生物質を含む0.66LのLB培地の初期容量を含めた。0時点において、このリアクターは、記載されたように約10のOD600に接種された。リアクターにおける記載されたグルコース、抗生物質および細胞密度の初期濃度は、種菌が培養濃度を変化させるのに十分なときには、その種菌による希釈を考慮に入れた後の濃度である。pHは、1.0MのNaCOで7.0に維持し、醗酵期間の間、0.2L/分のCOの一定の流量を、培地を通して散布した。温度および攪拌は、それぞれ37℃および250rpmに維持した。グルコースおよび産物濃度の決定のためのサンプルは、リアクターから回収し、0.2μmフィルターを通して濾過して直ちにHPLCによって分析した。
【実施例】
【0024】
(実施例1:NADH競合経路の除去)
アルコールデヒドロゲナーゼ (adhE)および乳酸デヒドロゲナーゼ(idhA)活性を、SBS110MGにおいて低減させ、コハク酸を犠牲にしてアルコールおよび乳酸を産生するためのNADHの損失に取り組んだ(39)。SBS110MG(pTrc99A)は、11%の初期グルコースを消費し、低いコハク酸収率および高い酢酸収率を有した。
【0025】
(実施例2:ピルビン酸カルボキシラーゼの発現)
Lactococcus lactis(プラスミドpHL413)由来の異種PYCの発現は、ピルビンさんのOAAへの直接的な変換によってOAAプールを増加させるのを助ける。OAAは、グリオキシル酸および醗酵経路の前駆体として機能し、これらはいずれも、図1に示されるようにコハク酸酸性をもたらす。
SBS990MG株は、予測されたように、活性iclRに起因して、SBS330MG(pHL413)およびSBS550MG(pHL413)よりも低いICLおよびMS活性を示したが、基礎的な酵素レベルは、グリオキシル酸経路を駆動するのに十分なようである。
【0026】
コハク酸酸性E.coli株におけるPYCの異種発現は、ピルビン酸からOAAへのフラックスを増加させる。PYCは、ピルビン酸をOAAに回し、コハク酸産生を優先させる。L.lactis由来の異種ピルビン酸カルボキシラーゼをコードするプラスミドpHL413を保持するSBS110MGは、CO大気における24時間の培養あと、18.7g/L(104mM)のグルコースから15.6g/L(132mM)のコハク酸を産生した。この収率は、グルコース1モル当たり1.3モルのコハク酸であった。コハク酸産生を増加させるためのOAAの増加の有効性が実証された。
【0027】
(実施例3:グリオキシル酸分路の活性化)
ICLRの不活性化は、aceBAKオペロンの活性化によってアセチルCoAをコハク酸の産生へと回し、それによって、酢酸を通る炭素フラックスを減少させ、アセチルCoAの再利用を続ける。SBS330MG(pHL413)ACK−PTA株は、活性であり、それゆえこの経路が遺伝的に活性化されているときでさえ、ほとんど炭素の流れがグリオキシル酸に回らない。グリオキシル酸経路の活性は、野生型コントロールに対してこの株によって示されるより高い酵素活性によって証明される(データは示さず)。より高いICLおよびMS活性を有する株は、SBS330MG(pHL413)およびSBS550MG(pHL413)であった。これらの株は、野生型株の2倍を超える活性を示した。SBS330MG株は、adh、ldh変異株のSBS110MGにおいてiclR遺伝子の不活性化により、中間株として作製した。ldhA adhE変異株において、アセチル−CoAは、グリオキシル酸経路に回され、それゆえ酢酸の排出を減少させる。この株においてグリオキシル酸経路が継続的に活性化されているときでさえ、アセチル−CoAは、酢酸経路を通って供給される。
【0028】
図3において見られるように、SBS330MG株は、グルコース1モル当たり1.1モルのコハク酸、グルコース1モル当たり0.66モルのギ酸、およびグルコース1モル当たり0.89モルの酢酸を産生する。SBS330MG(pHL413)はかなりのコハク酸を産生するが、この株はまた、最高レベルのギ酸および酢酸も産生する。
【0029】
(実施例4:好気呼吸制御の除去)
ARCAタンパク質は、二成分(ARCB−ARCA)シグナル伝達系ファミリーに属し、同属の感覚性キナーゼであるARCBと協働して、多くのオペロン(例えば、プラビンタンパク質クラスのいくつかのデヒドロゲナーゼ、末端オキシダーゼ、トリカルボン酸サイクル、グリオキシル酸分路の酵素および脂肪酸分解のための経路の酵素)の発現を負または正に制御する、全体的な調節系を代表する。変異株SBS440MGCは、好気呼吸の制御に関与するタンパク質をコードする遺伝子である、arcAの変異バージョンを含む。
【0030】
SBS440MGC株におけるarcAの欠失は、図3において見られるように、グルコース1モル当たり1.02モルのコハク酸、グルコース1モル当たり0.45モルのギ酸、およびグルコース1モル当たり0.75モルの酢酸を産生した。ARCAの除去は、グルコース消費には劇的には影響しなかったが(図2)、全体的なコハク酸収率をわずかに減少させた(図3)。
【0031】
(実施例5:酢酸産生の低減)
SBS990MGC株において、酢酸キナーゼホスホトランスアセチラーゼ(ackA−pta)を、アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE)および乳酸デヒドロゲナーゼ(idhA)の背景において低減し、コハク酸産生を増加させ、エタノールおよび乳酸産生によるNADH消費を減少させた。ackおよびpta遺伝子の欠失により、主要な酢酸形成経路は排除される。変異株SBS990MGはadhE、ldhAおよびack−pta欠失を含むが、SBS990MGはなおインタクトのiclRを有する。活性なICLRはACEBAK発現を低下させ得るが、残ったACEAおよびACEB酵素活性はなお、残ったグリオキシル酸分路活性を可能にする。
【0032】
SBS990MGにおける増加したNADHアベイラビリティーは、完全に好気的条件下で、グルコースからのコハク酸収率を1.6モル/モルに増加させている(図2および図3)。SBS990MGは、高いコハク酸収率を達成することができた。
【0033】
(実施例6:二重のコハク酸合成経路)
活性化グリオキシル酸経路での経路設計は、コハク酸収率を増加させ、NADHアベイラビリティーの制約を緩和するように、インシリコで以前に開発および試験され(9)、遺伝子操作されたE.coliによってインビボで実現された(41)。SBS550MG(pHL413)株は、二重のコハク酸合成経路を有するように構築した。この経路は、必要とされる量のNADHを伝統的な醗酵経路に回し、そして醗酵経路とグリオキシル酸経路(これは、NADH所要量が少ない)とのバランスをとることによってコハク酸に変換される炭素を最大限にする(41)。再設計された経路は、野生型E.coli株における1モルのコハク酸当たり2モルのNADHという理論的所要量に対して、コハク酸1モル当たり約1.25モルのNADHというグルコースからの実験的NADH所要量を示した。
【0034】
ldhA adhE iclR変異株におけるack−ptaの不活性化がアセチルCoAをグリオキシル経路に導くための鍵であることが証明された。酢酸経路の欠失は、グリオキシル酸およびコハク酸の形成に回されるアセチルCoAの形態で、炭素分子を保存するのを助ける。グリオキシル酸からリンゴ酸へ、フマル酸へ、そして最終的にはコハク酸へのさらなる変換もまた、NADH所要量を減少させるのを助ける。この経路は、2モルのアセチル−CoAおよび1モルのOAAから2モルのコハク酸を産生するのに、1モルだけのNADHを必要とする。
【0035】
PYCを過剰発現しているSBS550MG株の性能を試験し、その結果を図2に示した。PYCを有するSBS550MG株は、好気条件下では理論的によく増殖できるが、本研究では好気条件は細胞を嫌気的コハク酸産生相に供する前に、バイオマスを迅速に蓄積させるために使用した。pHL531を有するかまたは有さないSBS550MG株は、グルコース100%を消費し、両方の株は、100mMのグルコースから類似のレベルのコハク酸(160mM)を産生した。残留ギ酸の増加および酢酸レベルの低下を、NADH非感受性クエン酸シンターゼを過剰発現するプラスミドpHL531を保有する株を用いて観察した。SBS550MGベースの株の培養物において見出された酢酸レベルは、SBS110MG(pHL413)の培養物において見出された酢酸レベルよりも、ずっと低かった。SBS550MG(pHL413、pHL531)およびSBS550MG(pHL413、pDHK29)のコハク酸収率は、非常に類似していた(1モルのグルコース当たり約1.6モルのコハク酸)。
【0036】
NADH非感受性クエン酸シンターゼの過剰発現にもかかわらず、1.6モル/モルの高いコハク酸収率が変わらないままであるという事実はまた、本来のクエン酸シンターゼ系はグリオキシル酸経路を駆動するのにすでに十分であるということも示唆した。さらに、この結果は、二重経路のコハク酸産生系は非常に頑強であり;この系は収率における大きな変化なしにOAAノードにおける顕著な摂動に対処することができたことを示した。明らかに、この細胞は、コハク酸産生を効率的に最大にするために等価物および炭素原子を利用可能に減少する観点から、醗酵経路とグリオキシル酸経路との間のバランスのとれた分配を達成することができる。
【0037】
SBS660MGベースの株の培養物は、24時間の最後において、25%〜35%のグルコースしか消費していなかった。SBS660MG(ρHL413、pHL531)株およびSBS660MG(pHL413、pDHK29)株は両方とも、約1.7モル/モルという類似のコハク酸収率を産生した。これらの収率の値は、研究した全ての下部の中で最高である(表3)。形質転換された変異株SBS660MG(pHL413、pHL531)のコハク酸、酢酸またはギ酸収率において、そのコントロールに対して顕著な差異は観察されなかった(図3)。arcAの欠失は、グルコース1モル当たりのコハク酸産生を増加させたが、グルコース消費を減少させた。
【0038】
(実施例7:クエン酸シンターゼの発現)
図1は、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードするプラスミドpHL413およびクエン酸シンターゼを発現するプラスミドpHL531で形質転換された、E.coli変異株のSBS550MG、SBS660MGCおよびSBS990MGCにおいて産生された種々の代謝物を示す。これらの結果は、より高いNADHレベルによって引き起こされ、より低いNAD+レベルを好む、クエン酸シンターゼのいくつかの阻害が存在し得ることを示唆する。NADHがクエン酸シンターゼをアロステリックに阻害し(33、43)、そしてNAD+はNADH結合の弱い競合的インヒビターである(13)ことは、周知である。SBS330MG(pHL413)において観察された絶対的なインビトロでのクエン酸シンターゼ活性は、研究した全ての株で最低であった。
【0039】
SBS550MG(pHL413+pDHK29)をコントロールとして使用し、SBS550MG(pHL413+pHL531)は、異種PYCおよびクエン酸シンターゼを共発現する。pHL531を有するSBS550MG株およびpHL531を有さないSBS550MG株は、100%のグルコースを消費し、両方の株は、100mMのグルコースから類似のレベルのコハク酸(160mM)を産生した。酢酸経路がノックアウトされていたという事実にも関わらず、醗酵の最後に培養物において低濃度の酢酸を検出した。残りのギ酸における増加および酢酸レベルにおける減少を、NADH非感受性クエン酸シンターゼを過剰発現するpHL531プラスミドを保持する株で観察した。
【0040】
【表3】

SBS660MG(pHL413、pHL531)株におけるNADHクエン酸シンターゼの発現は、SBS660MG(pHL413、pDH29)コントロール株と比較して、グルコース消費を増加させ、そして産生される代謝物を約40%増加させた。SBS660MG(pHL413、pHL531)株およびSBS660MG(pHL413、pDHK29)株は両方、約1.7モル/モルという類似のコハク酸収率を産生した。これらの収率の値は、研究した全ての株の中で最高である(表3)。SBS990MG(pHL413、pDHK29)株によって産生されるコハク酸レベルは、SBS550MG(pHL413、pDHK29)株のコハク酸レベルと非常に類似していた。
【0041】
この結果は、二重経路のコハク酸産生系は非常に頑強であり;この系は収率における大きな変化なしにOAAノードにおける顕著な摂動に対処することができたことを示した。操作された細胞は、コハク酸産生を効率的に最大にするために等価物および炭素原子を利用可能に減少する観点から、醗酵経路とグリオキシル酸経路との間のバランスのとれた分配を達成することができる。これらの結果はさらに、adhE、ldhAおよびack−ptaが不活性化されるときに、グリオキシル酸経路のある程度の活性化が存在し得るという仮説を支持する。
【0042】
(実施例8:NADHフラックス解析)
回分培養条件下で得られた測定されたフラックスを、細胞内フラックスを推定し、重要な分岐点のフラックス分裂比率を同定するために使用した。異なる変異の結果としてのOAAノードにおけるグリオキシル酸経路および醗酵経路への分岐点フラックス分裂比率における変化の比較により、これらの操作に対してコハク酸の収率が感受性であることが明らかになった。
【0043】
代謝マトリックスは、細胞内中間代謝物の質量保存の法則および擬似定常状態仮定(pseudo−steady state hypothesis)(PSSH)に基づいて構築した。図1に示される代謝ネットワークに基づいて公式化された一次方程式のセットから得られた化学量論的行列により、測定された代謝物、細胞内代謝物についてのPSSHバランスおよびNADHバランスのみに基づいて、15×15次元の正方行列を得た。NADHバランスについては、NADHの産生と消費とは等しいはずであると想定した。レドックスバランスの誘導は、バイオマスに同化されたいずれの炭素も考慮に入れなかった。バイオマス(ν)は、野生型を除いて全ての変異株についてゼロであると仮定し、解が最小二乗法フィッティングによって見つけられた過剰決定体系を生じた測定値として使用した。上記ネットワークにおける種々の種に関する数学的表示、化学量論的行列および正味の変換方程式は、表4に示される。
【0044】
【表4】

ベクトルr(t)(m×1)(ここで、m=15,16または17)は、種々の代謝物に対する正味の変換速度を意味する:
【0045】
【数1】

MG1655(pHL413)については、H2およびバイオマスについてのバランスは除外し、したがって行列Aは15×15の正方行列に縮小した。正確な解は、式1によって得た:
【0046】
【数2】

全ての変異株SBS110MG(pHL413)、SBS330MG(pHL413)、SBS550MG(pHL413)およびSBS990MG(pHL413)について、H2バランスを除外し、バイオマスを含めることによって、結果として過剰決定体系(m=16かつn=15)を得た。これを、最小二乗法フィッティングアプローチによって解き、以下の式2に従って計算した:
【0047】
【数3】

排出された代謝物の時間変動濃度のケイ酸は、t=0hと、t=6hまたはt=7hとの間で決定し、以下(4)のように、平均細胞密度に基づいた:
【0048】
【数4】

コハク酸の収率は、PEP/PYRノードよりもOAAノードにおける分離比率に対して、比較的より感受性であることを見出した。最高のコハク酸収率を得るための最も好ましい分離比率は、SBS550MG(pHL413)株およびSBS990MG(pHL413)株において得られた、OAAからグリオキシル酸へ0.32、および醗酵経路へ0.68という分配比であった。これら2つの株において達成されたコハク酸収率は、それぞれ、1.6モル/モルおよび1.7モル/モルであった。idhA、adhE、ack−pta変異株における活性名グリオキシル酸経路が、嫌気的に達成される高いコハク酸収率を担っていることが示された。野生型と比較してNADHおよびアセチルCoAの高い細胞内レベルが、嫌気醗酵の開始時にSBS550MG(pHL413)およびSBS990MG(pHL413)において見出されたが、これらのレベルは急速に低下し、このことは、これらの株がPEP/PYR分岐点の下流の酵素の不活性化にもかかわらず高い解糖フラックスに対処することができることを示唆している。
【0049】
SBS550MG(pHL413)株の解糖フラックス(ν〜ν)は、SBS330MG(pHL413)に対して増加したが、野生型コントロール株に対しては減少した。PFLフラックス(ν)もまた、野生型コントロール株に対して減少し、酢酸およびギ酸フラックスにおける主要な減少を引き起こした。これらの解糖フラックスは、高いコハク酸収率がOAA−クエン酸とOAA−リンゴ酸との間のカルボン酸の分配に依存していることを実証している。このフラックスは、NADH消費のバランスをとり、コハク酸の産生増加につながる。高コハク酸産生株における分配は、10〜40%のクエン酸由来コハク酸と、90〜60%のリンゴ酸由来コハク酸との間で変動する(図1を参照のこと)。
【0050】
【表5】

(実施例9:流加嫌気醗酵)
バイオリアクターは、より制御された環境に起因して、より高い生産性を生じる。回分実験を二連で実施し、制御条件下でのコハク酸産生についてSBS550(pHL314)の効率を試験した(図5)。この実験において、このバイオリアクターに、最初にLBを充填し、86mMのグルコースを補充した。0時点において、このリアクターにOD17まで接種した。グルコースは、矢印によって示されるようにグルコースが約20mMまで落ちたときに、律動的に添加した。試行の間の初期グルコース濃度およびグルコース添加時間における差異は、株の性能に影響しなかった。
【0051】
図5において見られるように、この株は、コハク酸を産生するのに非常に効率的である。コハク酸産生は、1時間当たり12〜9mMのコハク酸の範囲であり、収率は非常に効率的な1.6モル/モルである。この系は、非常に少量の他の代謝物(例えば、ギ酸および酢酸)のみを副産物として産生した。この系は、コハク酸収率を1.8モル/モル、1.9モル/モルまたは2.0モル/モル、あるいはそれより高くにさえ改善するように、さらに最適化され得ることもまた、予期される。
【0052】
本明細書中で引用される全ての参考文献は、明示的に参考として援用される。
【0053】
【数5】

【0054】
【数6】

【図面の簡単な説明】
【0055】
本明細書中に組み込まれ、かつその一部を形成する添付の図面は、本発明を例示しており、そして説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図1A】図1は、遺伝子操作された嫌気代謝経路である。NADH競合経路:乳酸(LDH)、エタノール(ADH)、および酢酸経路(ACK−PTA)。グリオキシル酸バイパス(ICLRノックアウト)の開始およびL. lactis由来の外来性ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)の過剰発現。図1に示される遺伝子操作された株は、代表株のSBS550MGである。
【図1B】図1は、遺伝子操作された嫌気代謝経路である。NADH競合経路:乳酸(LDH)、エタノール(ADH)、および酢酸経路(ACK−PTA)。グリオキシル酸バイパス(ICLRノックアウト)の開始およびL. lactis由来の外来性ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)の過剰発現。図1に示される遺伝子操作された株は、代表株のSBS550MGである。
【図2】図2は、グルコースの消費および産生濃度である。
【図3】図3は、産物の収率である。
【図4】図4は、累積的なコハク酸収量である。
【図5】図5は、SBS550MG(pHL413)を用いた流加産生である。黒い記号は、最初の試行において測定された代謝物に対応し、白い記号は、反復試行において測定された代謝物に対応する。グルコースは、矢印によって示されるようにグルコースが約20mMまで落ちたときに、律動的に添加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気条件下でカルボン酸産生を増加させるために、2つより多い経路タンパク質において低下した活性を有する遺伝子操作された細菌株であって、該株は、以下:
a)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の低下した活性;
b)ARC、酢酸キナーゼホスホトランスアセチラーゼ (ACKA−PTA)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADHE)、好気呼吸コントロールレギュレーターAおよびB(ARCAB)、過酸化物感受性(ARG−LAC)、推定カドベリン/リジンアンチポーター(CADR)、脂肪酸分解レギュロン(FADR)、フマル酸レダクターゼ(FRD)、フルクトースレギュロン(FRUR)、フマラーゼ(FUM)、イソクエンデヒドロゲナーゼ(ICD)、イソクエン酸リアーゼ(ICL)、aceBAKオペロンリプレッサー(ICLR)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDHA)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ピルビン酸オキシダーゼ (POXB)、ホスホトランスフェラーゼ系遺伝子FおよびG(PTSFおよびPTSG)ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)からなる群より選択される1つ以上のタンパク質の低下した活性;ならびに
c)イソクエン酸リアーゼ(ACEA)、リンゴ酸シンターゼ(ACEB)、イソクエンデヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(ACEK)、クエン酸シンターゼ(CITZ)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)、およびピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)からなる群より選択されるタンパク質の過剰発現、
を含む、細菌株。
【請求項2】
前記細菌は、嫌気条件下でグルコース1モル当たり少なくとも1.5モルのコハク酸を産生する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項3】
前記細菌は、前記細菌は、嫌気条件下でグルコース1モル当たり少なくとも1.6モルのコハク酸を産生する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項4】
前記細菌は、嫌気条件下でグルコース1モル当たり少なくとも1.7モルのコハク酸を産生する、請求項1に記載の細菌株。
【請求項5】
前記細菌は、idhA、adhE、ackA−pta、arcA、ptsG、およびiclRからなる群より選択される1つ以上の遺伝子の破壊を含む、請求項1に記載の細菌株。
【請求項6】
前記細菌は、aceA、aceB、aceBAK、aceK、citZ,pepC,pfl、およびpycからなる群より選択される遺伝子に操作可能に連結された発現構築物を含む組み換えDNAを含む、請求項1に記載の細菌株。
【請求項7】
前記細菌株は、SBS330MG、SBS440MG、SBS990MGC、SBS550MG、およびSBS660MGCからなる群より選択される、請求項1に記載の細菌株。
【請求項8】
嫌気細菌培地においてカルボン酸を産生する方法であって、該方法は、以下:
a)培地中に細菌を提供する工程であって、該細菌は、LDHおよびADHの低下した活性を有し、ここで、該細菌は、以下:
i)ARC、FADR、FRD、FRUR、FUM、ICD、ICLR、MDH、POXB、PTSF、PTSGおよびSDHからなる群より選択された1つ以上のタンパク質の低下した活性を含む細菌;
ii)PYC、PEPC、CITZ、ACEA、ACEBおよびACEKからなる群より選択されるタンパク質の過剰発現を含む細菌;ならびに
iii)i)およびii)の両方を含む細菌;
からなる群より選択される、工程;
b)該細菌に糖基質を供給する工程;
c)該細菌に該糖を代謝させる工程;ならびに
d)該培地から該カルボン酸を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項9】
前記細菌は、adh、ldhおよびiclRの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細菌は、adh、ldh、iclR、およびarcAの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記細菌は、adh、ldhおよびack−ptaの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌は、adh、ldh、ack−pta、およびarcAの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌は、adh、ldh、ack−pta、およびiclRの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記細菌は、adh、ldh、ack−pta、iclRおよびarcAの破壊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌は、PYC、PEPC、CITZ、ACEA、ACEBまたはACEKを発現する発現ベクターを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボン酸はコハク酸であり、前記細菌は、破壊されたsdh遺伝子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボン酸はフマル酸であり、前記細菌は、破壊されたfum、フマラーゼA(fumA)、フマラーゼB(fumE)、またはフマラーゼC(fumC)遺伝子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸はリンゴ酸であり、前記細菌は破壊されたmdh遺伝子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記細菌株は、SBS330MG、SBS440MG、SBS990MGC、SBS550MG、およびSBS660MGCからなる群より選択される、請求項8に記載の細菌株。
【請求項20】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413)、SBS440MG(pHL413)、SBS990MGC(ρHL413)、SBS550MG(pHL413)、およびSBS660MGC(pHL413)からなる群より選択される、請求項8に記載の細菌株。
【請求項21】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413+pHL531)、SBS440MG(pHL413+pHL531)、SBS990MGC(pHL413+pHL531)、SBS550MG(pHL413+pHL531)、およびSBS660MGC(pHL413+pHL531)からなる群より選択される、請求項8に記載の細菌株。
【請求項22】
前記方法は、前記細胞を、フラスコ、バイオリアクター、流加バイオリアクター、またはケモスタットバイオリアクターにおいて培養する工程を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子操作された細菌株であって、該細菌は、
a)ldhAの破壊;
b)adhEの破壊;および
c)ack−ptaの破壊、
を含む、細菌株。
【請求項24】
前記細菌は、iclRの破壊を含む、請求項23に記載の細菌株。
【請求項25】
前記細菌は、発現構築物に操作可能に連結されたpyc遺伝子を含む、請求項23に記載の細菌。
【請求項26】
前記pycは、Lactobacillus lactisに由来する、請求項25に記載の細菌株。
【請求項27】
前記細菌は、発現構築物に操作可能に連結されたcitZ遺伝子を含む、請求項23に記載の細菌株。
【請求項28】
前記citZは、Bacillus subtilisに由来する、請求項27に記載の細菌株。
【請求項29】
前記細菌株は、SBS330MG、SBS440MG、SBS990MGC、SBS550MG、およびSBS660MGCからなる群より選択される、請求項23に記載の細菌株。
【請求項30】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413)、SBS440MG(pHL413)、SBS990MGC(pHL413)、SBS550MG(pHL413)、およびSBS660MGC(pHL413)からなる群より選択される、請求項23に記載の細菌株。
【請求項31】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413+pHL531)、SBS440MG(pHL413+pHL531)、SBS990MGC(pHL413+pHL531)、SBS550MG(pHL413+pHL531)、およびSBS660MGC(pHL413+pHL531)からなる群より選択される、請求項23に記載の細菌株。
【請求項32】
コハク酸を産生する方法であって、該方法は、以下:
a)嫌気条件下で請求項20に記載の細菌株を培養する工程;
b)糖基質を提供する工程;
c)該細菌に、該基質を代謝させる工程;および
d)コハク酸を単離する工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
カルボン酸を産生するように操作された細菌株であって、該細菌株は、嫌気培養条件下でカルボン酸産生を増加させるように、OAAとリンゴ酸との間の解糖フラックスを分配する、細菌株。
【請求項34】
前記解糖フラックスの比率は、クエン酸約30%およびリンゴ酸約60%である、請求項33に記載の細菌株。
【請求項35】
前記細菌は、グルコース1モル当たり1.5モルより多いコハク酸を産生する、請求項33に記載の細菌株。
【請求項36】
前記細菌は、グルコース1モル当たり1.6モルより多いコハク酸を産生する、請求項33に記載の細菌株。
【請求項37】
前記細菌は、グルコース1モル当たり1.7モルより多いコハク酸を産生する、請求項33に記載の細菌株。
【請求項38】
前記細菌株は、SBS330MG、SBS440MG、SBS990MGC、SBS550MG、およびSBS660MGCからなる群より選択される、請求項33に記載の細菌株。
【請求項39】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413)、SBS440MG(pHL413)、SBS990MGC(pHL413)、SBS550MG(pHL413)、およびSBS660MGC(pHL413)からなる群より選択される、請求項33に記載の細菌株。
【請求項40】
前記細菌株は、SBS330MG(pHL413+pHL531)、SBS440MG(pHL413+pHL531)、SBS990MGC(pHL413+pHL531)、SBS550MG(pHL413+pHL531)、およびSBS660MGC(pHL413+pHL531)からなる群より選択される、請求項33に記載の細菌株。
【請求項41】
コハク酸を産生する方法であって、該方法は、以下:
a)嫌気条件下で請求項33に記載の細菌株を培養する工程;
b)糖基質を提供する工程;
c)該細菌に、該基質を代謝させる工程;および
d)コハク酸を単離する工程、
を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−516585(P2008−516585A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530238(P2007−530238)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/030689
【国際公開番号】WO2006/031424
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504080087)ライス ユニバーシティー (6)
【Fターム(参考)】