説明

増加したリコピン含有量を有するニンジン

本発明は、増加したレベルのリコピンを含む根を有するニンジン株、ならびにかかるニンジンの容器に関する。本発明はまた、増加したリコピン含有量の根を有する株に由来するニンジン植物の部分であって、増加した根のリコピン含有量のニンジン植物を栽培することができる種子を含むものに関する。本発明はまた、RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bと称されるニンジン株の種子および植物を提供する。それゆえ、本発明は、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bの植物、種子および組織培養物に関し、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bを、それ自身または別の株の植物のごとき別のニンジン植物と交配させることにより産生されるニンジン植物を産生する方法に関する。本発明は、さらに、かかる交配により産生される種子および植物に関する。本発明は、さらに、かかる植物の果実および配偶子を含む、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bの植物の部分に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月18日提出の米国仮出願第60/852,397号および2007年3月9日提出の米国仮出願第60/905,809号の優先権を主張し、これらは各々、出典明示により本明細書に特に援用される。
【0002】
A.発明の技術分野
本発明は、植物遺伝学の分野、より詳細には、増加したリコピン含有量を有するニンジン植物の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
B.関連技術の記載
セリ科に属するニンジン(Daucus carota var sativus)は、最も重要な根菜の1つであり、世界で100,000ヘクタールにわたり栽培されている。ニンジンは、動物の食べ物において、ビタミンA(ベータカロテン)を含む様々なビタミンおよびミネラル、ならびに食物繊維含有物の優れた供給を提供する。ここ半世紀にわたる育種努力は、結果として栽培ニンジンのベータ−カロテン内容物の75%の増加を生じた。最近、キサントフィル、リコピン、アントシアニン、およびその他のフィトケミカルのごときその他のニンジン色素の栄養価について関心が高まっている。近年の育種努力にもかかわらず、リコピンのごときベータ−カロテン以外のカロテノイドの増加レベルを示すニンジンの開発の必要。
【0004】
一般に、植物育種の目的は、単一の品種/交雑品種における様々な所望の形質を組み合わせることにある。かかる所望の形質は、より高い収率、昆虫または害虫に対する耐性、熱および乾燥に対する耐性、より良好な農業品質、より高い栄養価、成長速度ならびに果実特性が含みうる。
【0005】
育種技術は、植物の受粉方法を上手く利用する。受粉には2つの一般的な方法が存在する。1つは、1種の花に由来する花粉が同一の植物または植物品種の同一または別の花に移される場合の植物の自家受粉である。もう1つは、花粉が異なる植物品種の花に由来するものである場合の他家受粉である。
【0006】
多くの世代にわたり自家受粉され、タイプについて選別されてきた植物は、ほとんど全ての遺伝子座においてホモ接合体となり、ホモ接合体植物である真性の育種子孫の均一な集団を産生する。異なる品種の2種のかかるホモ接合体植物間の交配は、多くの遺伝子座についてヘテロ接合体である交雑植物の均一な集団を生じる。逆に、多くの遺伝子座で互いにヘテロ接合体である2つの植物の交配は、遺伝学的に異なり、均一ではない交雑植物の集団を生じる。結果として生じる不均一性は予想し得ない性質を生み出す。
【0007】
均一な品種の開発は、多くの場合、ホモ接合性の近交系植物の開発、これらの植物の交配、およびこれらの交配の評価に関連する。系統育種および循環選抜は、育種集団から近交系植物を開発するのに用いられてきた育種方法の例である。これらの育種方法は、2種もしくはそれ以上の植物または多くの他の広範にわたる供給源に由来する遺伝子バックグラウンドを、新しい株が所望の表現型の自家受粉および選別により作成される育種プールへと合体させる。新しい株は、それらが商業的な可能性を有するかどうかを決定するために評価される。
【0008】
ニンジン(Daucus carota)は、最も重要な根菜の1つであり、世界で100,000ヘクタールにわたり栽培されている。栽培されるニンジンには2つの主要なタイプが存在する。東洋系/アジア系ニンジンは、多くの場合、それらの紫色の根からアントシアニンニンジンと呼ばれるが、いくつかの種類は黄色の根を有する。それらは、典型的に、軟毛におおわれた葉を有し、軟毛のため葉は灰緑色となり、抽薹(bolt)が容易である。それらは、やや分枝した根とともにやや網状化した葉を有し、一年生植物である。西洋系またはカロテンニンジンは、一般に、オレンジ色、赤色、または白色の根を有する。これらのニンジンは、黄色の東洋系ニンジン、ホワイトニンジン(white carrot)および地中海で栽培される野生型亜種の交雑子孫間の選別による最初の群にほとんどが由来するであろう。葉は、一般に、分枝していない根と明るい緑色のわずかな毛状葉とともに強く網状化され、二年生である。
【0009】
二年生ニンジンは、2年ごとにのみ開花する植物である。1年目では、植物は、食用根および葉の先端部を産生する。ニンジン植物が翌年中地中に残存され、休眠と寒冷な春化期間によって助長されると、開花し、種子が産生される。それゆえ、ニンジンの有性生殖は他の開花する植物と同様に行われうる。
【0010】
西洋系ニンジンは、最も一般的なニンジンであり、3つの群に細分化される:1)アムステルダムフォーシング(Amsterdam Forcing)、ティアナ(Tiana)、アーリーフレンチフレイム(Early French Frame)、アーリーナント(Early Nantes)、チャンピオンスカーレットホーン(Champion Scarlet Horn)のごとき;より迅速に成熟する、短い根を有する品種;2)商業的に栽培されるニンジンのなかで最も一般的なタイプであり、モクム(Mokum)、フラッキー(Flakkee)、オータムキング(Autumn King)、Chantenay Red Cored、Royal Chantenayのごとき品種を含む、中程度の根を有する品種;ならびに3)New Red IntermediateおよびSaint Valeryのごとき、長い根を有する品種。
【0011】
ニンジンは、生鮮市場または加工産物として広く用いられる。穀物として、ニンジンは、環境条件が採算の合う収率を産生できれば商業的に栽培される。ニンジンは、それらの栄養価と保存性が高いと見られている。ニンジンは、ビタミンA(ベータ−カロテン)を含む様々なビタミンおよびミネラル、ならびに食物繊維含有量の優れた供給源を提供する。最近、キサントフィル、リコピン、アントシアニン、およびその他のフィトケミカルのごとき他のニンジン色素の栄養価について関心が高まっている。
【0012】
歴史的に、ほとんどのニンジン育種法は、大量選別と循環選別に関連するものであり、結果として大量の開放受粉したニンジン品種を生成した(SteinとNothnagel,1995)。最初のニンジン交雑品種は、Thompson(1961年)およびHanschkeとGabelman(1963)によるニンジンにおける雄性不稔性の検出および分析後に、1960年代にアメリカ合衆国で販売された。ニンジンの交雑育種は、一般に、異なる遺伝子バックグラウンドおよび起源を有する細胞質雄性不稔(CMS)の2つの系統;「茶色の葯(brown anther)」型と「花弁状」型(SteinとNothnagel,1995)に基づく。第三のCMS系統は、野生型ニンジンD.carota gummifer Hook.fil.および栽培されたニンジンD.c.sativus Hoffm.の間の交配を起源とする異質細胞質形態において発見された(Nothnagel,1992)。
【0013】
今までの育種努力が有益な形質を有する多くの有用なニンジン株を提供してきたが、一方で、さらに改良された形質を有する新しい株に関する当該技術分野における多くの必要性が残る。かかる植物は、農作物の収率および/または質を改良することにより農業従事者と消費者に一様に利益になるであろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、増加したレベルのリコピンを含む根を有するニンジン株、ならびにかかるニンジンの容器に関する。本発明はまた、増加したリコピン含有量を伴う根を有する株に由来するニンジン植物の部分であって、増加した根のリコピン含有量を有するニンジン植物を栽培することができる種子を含むものに関する。
【0015】
本発明はまた、少なくとも100ppmのリコピン含有量を有する根を含む交雑品種植物を産生することができるニンジン植物の種子であって、約10個のニンジンの集団が約100ppmおよび約250ppmの間の平均リコピン含有量を含むものを提供する。
【0016】
本発明はまた、細胞質雄性不稔を有する約100ppmおよび約200ppmの間のリコピン含有量を有する雌性親を、約100ppmおよび約200ppmの間のリコピン含有量を有する雄性ニンジン株と交配させ、次いでF種子を得ることを含む、交雑ニンジン種子を産生する方法を提供する。
【0017】
なお別の態様において、本発明は、赤色ニンジン交雑品種0710 0325、赤色ニンジン交雑品種0710 0339、赤色ニンジン交雑品種0710 0346、赤色ニンジン交雑品種710313、赤色ニンジン交雑品種710305、赤色ニンジン交雑品種710316、赤色ニンジン交雑品種710319、赤色ニンジン交雑品種710311、赤色ニンジン交雑品種710304、赤色ニンジン交雑品種710310、赤色ニンジン交雑品種710303、株RN71−4963C、株RN71−4904C、株RF71−4911A、株RF71−4912A、株RIF71−4966C、株RIF71−4967B、および株RIF71−4968Bから選択されるニンジン品種の植物または種子により例示される。かかる品種の代表的な種子は、以下の本明細書中で説明されるようにATCCに寄託されている。本明細書中で用いられるように、本発明の植物はかかる植物のいずれをも含む。
【0018】
なおさらなる態様において、本発明はまた、増加したリコピンレベルを含む根を有する交雑ニンジン品種であって、リコピン含有量が、開放受粉された品種ニンジンキントキから得られたニンジン根の平均リコピン含有量と比較して、交雑ニンジン品種から得られる複数の根の平均リコピン含有量として測定されるものを提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、本発明のニンジン植物、ならびに本発明の植物の全ての生理学および形態学的な性質を有するニンジン植物を提供する。本発明のニンジン植物の部分はまた、例えば、植物の花粉、胚珠、果実、および細胞を含むものが提供される。
【0020】
本発明のニンジン種子は、本発明の植物のニンジン種子の必須な均一集団として提供されてもよい。種子の必須な均一集団は、一般に、他の種子の相当する数を含まない。それゆえ、種子は、全ての種子のうちの少なくとも約97%、種子の少なくとも約98%、99%、またはそれ以上を含むように生じると定義されてもよい。ニンジン種子の集団は、特に、必須として交雑種子を含まないと定義されてもよい。種子集団は、本発明のニンジン植物の必須な均一集団を提供するために別々に栽培されてもよい。
【0021】
本発明の別の態様において、付加された遺伝性形質を含む本発明の植物が提供される。遺伝性形質は、優性または劣性対立遺伝子である遺伝子座を含んでもよい。本発明の1の具体例において、本発明の植物は、単一遺伝子座の転座を含むものと定義される。本発明の特定の具体例では、付加された遺伝子座は、例えば、除草剤耐性、害虫耐性、病害耐性、および改善された糖質代謝のごとき1つまたはそれ以上の形質を付与する。形質は、例えば、戻し交配により株のゲノムに導入される天然に存在する遺伝子、自然のもしくは誘発された変異、あるいは植物またはその前の世代のいずれかの祖先に遺伝子形質転換技術を介して導入された導入遺伝子により付与されてもよい。形質転換を介して導入される場合、遺伝子座は、単一の染色体位置に組み込まれた1つまたはそれ以上の導入遺伝子を含んでもよい。
【0022】
本発明の別の態様において、本発明の植物の再生可能な細胞の組織培養物が提供される。組織培養物は、好ましくは、その株の全ての生理学および形態学的な性質を表し、ならびにその株の他の植物と実質的に同一の遺伝子型を有する植物を再生することができる。かかる生理学および形態学的な性質の例は、本明細書中の表で説明される形質を含む。かかる組織培養物における再生可能な細胞は、例えば、胚、分裂組織、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌しべ、花、種子および茎に由来してもよい。なおさらに、本発明は、本発明の組織培養物から再生されるニンジン植物であって、本発明の植物の全ての生理学および形態学的な性質を有する植物を提供する。
【0023】
本発明のさらに別の態様において、ニンジン種子、植物および果実を産生するための工程であって、一般に、第1の親ニンジン植物を第2の親ニンジン植物と交配させることを含み、ここで、前記第1または第2の親ニンジン植物のうちの少なくとも1つが本発明の植物である工程が提供される。1の具体例では、植物は、RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bと名付けられた株から選択される。これらの工程は、さらに、交雑ニンジン種子または植物を調製する工程として例示されてもよく、第1のニンジン植物が異なり、区別できる株の第2のニンジン植物と交配されることにより、その親の1つとして本明細書で提供されるニンジン植物株を有する交雑株が提供されてもよい。これらの工程では、交配は種子を産生する。種子の産生は種子が採取されるか否かにかかわらず生じる。
【0024】
本発明の1の具体例において、「交配」の第1工程は多くの場合、受粉が、例えば、昆虫媒体に介在されて起こるように近接して、第1および第2の親ニンジン植物の種子を植えることを含む。代替的に、花粉は手で移すことができる。植物が自家受粉する場合、受粉は、植物栽培以外に直接のヒトの介入を必要とせずに生じてもよい。
【0025】
第2工程は、第1および第2の親ニンジン植物の種子を、花をつける植物まで栽培または培養することを含んでもよい。第3工程は、花の雄性部分を除雄すること(すなわち、花を処置または操作して除雄された親ニンジン植物を産生すること)によるように、植物の自家受粉を妨げることを含んでもよい。自家不和合性系統はまた、同じ目的でいくつかの交雑穀物において用いられてもよい。自家不和合性植物は、生存能力のある花粉をすでに落とし、他の品種の植物とは受粉できるが、自分自身または同一株の他の植物と受粉することができない。
【0026】
交雑品種の交配の第4工程は、第1および第2の親ニンジン植物間の他家受粉を含んでもよい。なお別の工程は、親ニンジン植物のうちの少なくとも1つに由来する種子を収穫することを含む。収穫された種子は、栽培されてニンジン植物または交雑ニンジン植物が産生されうる。
【0027】
本発明はまた、第1の親ニンジン植物を第2の親ニンジン植物と交配させることを含む工程であって、第1または第2の親ニンジン植物のうちの少なくとも1つが本発明の植物である工程により産生されたニンジン種子および植物を提供する。本発明の1の具体例において、前記工程により産生されたニンジン種子および植物は、本発明による植物を別の異なる植物と交配させることにより産生された第1世代(F)の交雑ニンジン種子および植物である。本発明は、さらに、かかるF交雑ニンジン植物の植物部分、およびその使用方法を意図するものとする。それゆえ、本発明のある典型的な具体例は、F交雑ニンジン植物およびその種子を提供する。例えば、本発明は、交雑ニンジン品種0710 0325、0710 0339、または0710 0346の植物および種子を提供する。
【0028】
本発明のさらになお別の態様において、本発明のニンジン植物の遺伝学的相補物(genetic complement)が提供される。用語「遺伝学的相補物」は、ヌクレオチド配列の凝集物を意味することに用いられ、その配列の発現は、本場合において、ニンジン植物、またはその植物の細胞もしくは組織の表現型を定義する。それゆえ、遺伝学的相補物は、細胞、組織または植物の遺伝子構造を表し、交雑遺伝学的相補物は、交雑細胞、組織または植物の遺伝子構造を表す。したがって、本発明は、本明細書で開示されるニンジン植物細胞による遺伝学的相補物を有するニンジン植物細胞、ならびに植物、かかる細胞を含む種子および植物を提供する。
【0029】
植物の遺伝学的相補物は、遺伝子マーカープロファイルにより、ならびにその遺伝学的相補物の発現の性質である表現型形質の発現、例えば、アイソザイム型プロファイルにより測定されてもよい。本発明の植物は、例えば、単純配列長多型(SSLP)(Williamsら,1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、任意プライマー(Arbitrary Primed)ポリメラーゼ鎖反応(AP−PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(特に、出典明示により全体を本明細書に援用されるEP534858)、および一塩基多型(SNP)(Wangら,1998)のごとき多くの周知技術のいずれかにより同定されうると認められる。
【0030】
さらになお別の態様において、本発明は、ニンジン植物細胞、組織、植物、および種子により表され、本発明のニンジン植物の半数体遺伝学的相補物と第2のニンジン植物、好ましくは、別の異なるニンジン植物の半数体遺伝学的相補物との組み合わせにより形成されるような交雑遺伝学的相補物を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の交雑遺伝学的相補物を含む組織培養物から再生されるニンジン植物を提供する。
【0031】
さらになお別の態様において、本発明は、ニンジン株の植物であって、前記植物の根が、約110ppmから約250ppmまでの平均リコピン含有量ならびに約11°ブリックスから約20°ブリックスまでの平均ブリックス含有量を含む形質の組み合わせを有し、ここで、形質の組み合わせの発現が、1つまたはそれ以上の赤色ニンジン交雑品種070 0325、赤色ニンジン交雑品種0710 0339、赤色ニンジン交雑品種0710 0346、赤色ニンジン交雑品種710313、赤色ニンジン交雑品種710305、赤色ニンジン交雑品種710316、赤色ニンジン交雑品種710319、赤色ニンジン交雑品種710311、赤色ニンジン交雑品種710304、赤色ニンジン交雑品種710310、赤色ニンジン交雑品種710303、株RN71−4963C、株RN71−4904C、株RF71−4911A、株RF71−4912A、株RIF71−4966C、株RIF71−4967B、および株RIF71−4968Bを含む、本明細書で提供されるニンジン品種で見出される形質の発現について、遺伝学的手法により調節されるニンジン株の植物を提供する。
【0032】
さらになお別の態様において、本発明は、本明細書で開示されるニンジン株または品種の植物の遺伝子型を調べる方法であって、植物のゲノムにおいて少なくとも最初の遺伝子多型を検出することを含む方法を提供する。前記方法は、一定の具体例において、植物のゲノムにおける複数の遺伝子多型を検出することを含んでもよい。前記方法は、複数の遺伝子多型を検出する工程の結果を電子計算機可読媒体上に貯蓄することをさらに含んでもよい。前記発明は、かかる方法により作成される電子計算機可読媒体をさらに提供する。
【0033】
さらになお別の態様において、本発明は、本明細書で開示される株または品種に由来する植物を産生する方法であって、(a)前記株または品種に由来する子孫植物を調製し、ここで、調製は本発明の植物の植物を第2の植物と交配させることを含み;次いで(b)子孫植物を自分自身または第2の植物と交配させて次世代の子孫植物の種子を産生する工程を含む方法を提供する。さらなる具体例において、前記方法は、さらに、(c)次世代の子孫植物の前記種子から次世代の子孫植物を栽培し、次世代の子孫植物を自分自身または第2の植物と交配させ;次いでさらに3−10世代の間に工程を繰り返して前記株または品種に由来する植物を産生することを含んでもよい。由来する植物は、近交系株であってもよく、前記繰り返される交配の工程は、近交株を産生するのに十分な同系交配を含むものと定義されてもよい。前記方法では、工程(b)および(c)による継続的な交配の間に工程(c)から生じる特定の植物を選択することが望まれてもよい。1つまたはそれ以上の所望の形質を有する植物を選択することにより、前記株の所望の形質のいずれかならびに可能性のあるその他の選択される形質を有する植物が得られる。
【0034】
本発明の別の態様において、付加された遺伝的形質を含むニンジン株または品種の植物が提供される。遺伝的形質は、優性または劣性の対立遺伝子である遺伝子座を含んでもよい。本発明の1の具体例において、本発明の植物は、単一遺伝子座の転座を含むものと定義される。本発明の特定の具体例において、付加される遺伝子座は、例えば、除草剤耐性、昆虫耐性、害虫耐性、病害耐性、および改変された糖質代謝のごとき1つまたはそれ以上の形質を付与する。前記形質は、例えば、戻し交配により交雑品種のゲノムに導入される天然に存在する遺伝子、自然のもしくは誘発された変異、あるいは遺伝子形質転換技術を介して植物またはその前の世代の前駆体に導入される導入遺伝子により付与されてもよい。形質転換を介して導入される場合、遺伝子座は、単一の染色体位置に組み込まれる1つまたはそれ以上の導入遺伝子を含んでもよい。
【0035】
本発明の別の態様において、本明細書で開示される植物の再生可能な細胞の組織培養物が提供される。組織培養物は、好ましくは、交雑品種の全ての生理学的および形態学的な性質を表すことができる植物を再生し、実質的に交雑品種の他の植物と同一の遺伝子型を有する植物を再生することができる。本明細書で提供される株および品種の生理学的および形態学的な性質のいくつかの例は、本明細書の表に記載される形質を含む。かかる組織培養物中の再生可能な細胞は、例えば、胚、分裂組織、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌しべ、花、種子および茎に由来してもよい。なおさらに、本発明は、本発明の組織培養物から再生されるニンジン植物であって、本明細書で提供される植物の全ての生理学的および形態学的な性質を有する植物を提供する。
【0036】
さらになお別の態様において、本発明は、交雑または非交雑ニンジンの種子の容器(container)であって、前記種子の50%より多くのものから栽培された根が増加したリコピン含有量を有し、前記種子から栽培された約50個の根の集団が約100ppmと250ppmの間の平均リコピン含有量を含む容器を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、上昇したリコピン含有量を有するニンジンであり、前記増加したリコピン含有量が約100ppmから約250ppmの間の少なくとも約10個のニンジンの集団における平均リコピン含有量として測定される、ニンジンの少なくとも部分を有する交雑ニンジンの容器を提供する。
【0038】
本発明のこれらとその他の特徴および有利な点は、本発明による装置と方法の様々な典型的な具体例の下記の詳細な説明に記載されるか、または下記の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、増加したリコピン含有量を有するニンジン植物、特にニンジン栽培品種または株を提供する。かかるニンジンは、高リコピンニンジン品種と呼ばれうる。ある態様において、ニンジン植物は交雑ニンジン植物である。増加したリコピン含有量および細胞質雄性不稔を有するニンジン栽培品種または株もまた本明細書中で開示される。高リコピンニンジン株を育種する方法もまた提供される。高リコピンニンジンのF交雑品種もまた本明細書で開示される。
【0040】
本発明の一部として、カロテノイドリコピンを含む長い円柱形のニンジンは、切断および剥皮された加工品に対する必要性を含む、市場のニーズに合わせて開発されてきた。リコピンは、特に消化器官において、ガン発生を防ぐ際のその抗酸化能力に多くの注目を浴びている。いくつかの具体例において、本発明により提供されるニンジンは、切断され剥皮された製品の赤に色付けされた固形物のつめ合わせを製造するのに用いられるか、または赤色、オレンジ色および黄色のニンジンの混合物に混合されうる。本発明により提供される特大のニンジンはまた、ジュース生成用に用いられてもよい。
【0041】
適当なリコピン含有量を有するいずれかのニンジン植物は、本発明と一緒に用いられうる。適当なリコピンレベルを有するニンジンは、本発明の方法に用いられうる。好ましい態様において、増加したリコピン含有量の供給源は、選抜された植物である。1の態様において、適当なリコピンニンジンは、以下のリコピン供給源:ナトリ−レッド(ナトリ−レッド)、インディアン系統キャロット(Indian descent carrot)、およびキントキ(Kintoki)開放受粉した株と育種することにより産生されてもよい。1の態様において、リコピン供給源のニンジンは、例えば、以下に記載されるように、ニンジン根におけるリコピンレベルを調べることにより同定されうる。1の態様において、リコピン供給源のニンジン植物は、所望の形質を有する近交系ニンジン株と交配されてもよい。
【0042】
本発明はまた、(これまで71 0302と記載された)ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bの植物、種子および誘導物に関連する方法および組成物を提供する。これらの株は、以下に記載される形質について、環境が影響する制約の範囲内で均一性および安定性を示す。ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、およびRIF71−4968Bは各々、十分な種子の収率を提供する。異なる第2の植物と交配させることにより、均一なF交雑品種の子孫が得られうる。
【0043】
本発明により開発された交雑ニンジン品種のうち、0710 0325、0710 0339、および0710 0346は、より細く、長い根の形態を示し、例えば、切断と剥皮の市場における使用に十分適している。
【0044】
本発明の一部としても開発された他のニンジン品種とは対照的に、例えば、ニンジン交雑品種710313、710305、710316、710319、710311、710304、710310、および710303はより重く、直径がより広く、例えば、それらをジュース市場に応用することができる。
【0045】
A.ニンジン株と交雑品種の起源と育種の歴史
1.開放受粉された近交ニンジン株(これまで71 0302と記載された)RN71−4904Cの開発
高リコピンニンジン株RN71−4904Cを、以下に概略されるように得た。このニンジン株は、系統育種システムの結果であり、「リコピン71B」(セミニス近交株)と「7262B」(アントシアニンおよびカロテンを含むUSDAによるニンジン認定)の間の稔性x稔性交配により開始された。「リコピン71B」は、セミニスニンジン認定「ナトリ−レッド」に由来するM4高リコピン選別である。
【0046】
育種工程は、以下に要約されうる:
1年目 秋 カリフォルニア州、ブローリーで親株(「リコピン71B」および「72 62B」)を植え付けた
2年目 春 親の根を収穫し、稔性x稔性の様式で交配した。
2年目 秋 カリフォルニアで稔性x稔性の種子を植え付けた
3年目 春 FxF集団と自家受粉から活発なF根を収穫した
3年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた
4年目 春 赤色に色付いた円筒形の根であるFの選別を行った。FM集団につい て3つの根小塊(root small mass)を作成した。
4年目 秋 カリフォルニアでFM集団の種子を植え付けた
5年目 春 Fと同一の根の形態を選別した。再度、3つの根小塊を介してF まで殖やした。
5年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
6年目 春 F集団を栽培したが、収穫しなかった。育種も行わなかった。
6年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え直した。
7年目 春 FM集団と同一の判断基準で選別した。
4つの根塊を介して殖やしてF世代を産生した。
7年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
8年目 春 F集団における場合と同一の判断基準で選別した。
3つの根塊を介して殖やしてF世代を産生した。
8年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
9年目 春 F集団における場合と同一の判断基準で選別した。
より大きな種子の増加について12個の根塊を介して殖やした。
9年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
10年目春 品種名PSR71 0302を適用し(後にRN71−4904Cへと変 えた)、試験を観察した。
10年目秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付け、同時に新しい雄性不稔 株を交雑用に開発した(以下の育種工程の実施例4を参照)。
11年目春 雄性不稔株と花粉媒体株の根を収穫した。
ステックリング(steckling)を交雑ケージ単離に移植した。
11年目秋 カリフォルニアで交雑品種の種子を植え付けた。
12年目春 最も優れた実効性を有する交雑品種の組み合わせを収穫し、選別した。
【0047】
育種プログラムの間、赤色円筒形のニンジンタイプがF集団から出現し、選別した。「ナント(Nantes)」の根の形態についての小量選別を繰り返し、芯を通して表れる濃い赤色は、極めて安定で、かつ均一な形の根を生じた。1つの株を、12個の根塊を用いて、提示用の品質の種子を得るために、根ごとの高いレベルの均一性を有するものに関して選択し、レッドナント(Red Nantes)、またはRN71−4904Cとも名付けた。いずれかの畑の状態における環境の影響により表れることを除き、株内で非常に小さいばらつきを観察した。
【0048】
2.開放受粉した近交ニンジン株の開発
開放受粉したニンジン株もまた、親の1つとしてインディアン赤色ニンジン株(Indian red carrot line)を用いて交配から得られる。遺伝子多様性の1つの供給源は、インディアン遺伝資源(Indian germplasm)に由来するが、これらの供給源は、基本的に熱帯性または一年生タイプのニンジンである。このことは、温帯気候における使用に適さなくしている。これらの在来品種株はまた、早期でほぼ一年生の抽薹性質、重度の分岐(forking)と不規則な根の形態、多くの根毛増殖、根のタイプ、形、リコピン含有量、またはその他の表現型の性質における極端な変異のごとき欠点を有する傾向にある。
【0049】
しかしながら、これらのインディアン株は、優れた食感品質を含む、1)適度なレベルのリコピンを蓄積する能力、ならびに2)極端な遺伝子多様性のごときいくつかの有利な点を含む。この食感品質は、高い果汁含有量および低いテルペノイドレベルの結果でありうる。
【0050】
それゆえ、その他の高いリコピン植物素材を開発するために、以下の育種方策が用いられうる:
a)インディアン系統(Indian descent)(赤色)をリコピン71B (赤色)と交配した(上記を参照)。
b)インディアン系統(Indian descent)(赤色)を切断と剥皮の素 材(cut and peel material)(オレンジ色)(S−D81 3B、米国特許第6,787,685号を参照)と交配した。
c)ナトリ−レッド(赤色)を切断と剥皮の素材(オレンジ色)(SD813B、米 国特許第6,787,685号を参照)と交配した。
【0051】
例えば、以下のスキームを用いた:
1年目 秋 カリフォルニア州、ブローリーで親株(「リコピン71B」、インディア ン遺伝資源、およびS−D813B)を植え付けた。
2年目 春 親の根を収穫し、稔性x稔性の様式で交配する。
2年目 秋 カリフォルニアで稔性x稔性の種子を植え付けた。
3年目 春 FxF集団から活発なF根を収穫し、FM集団用に同胞交配する(F を模擬実験した)。
3年目 秋 カリフォルニアでFM集団の種子を植え付けた。
4年目 春 FM選別を行い、正常なもので赤色を示すもののうち切断と剥皮の形ま たはふっくらした興味深いニンジンの形について選択する。観察により、 元々のインディアン素材との大きな違いを示し、それは、重度で早期の抽 薹であり(ほぼ一年中の反応)、複数の分枝した根と多くの根毛を有する 傾向にある。
4年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
5年目 春 FMと同一の根の形態を選別し;2または3つの根塊集団を介してFまで殖やした。
5年目 秋 カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
6年目 春 F集団と同一の判断基準で選別した。
2または3つの根塊を介して殖やしてF世代を産生した。
6年目秋9月カリフォルニアでF集団の種子を植え付けた。
7年目 春 親として使用可能な株を評価した。交雑品種の開発および親の繁殖に関し て最も期待できる株を選んだ。
7年目 秋 進歩と種子の増加のための新しい交雑品種および親株を植え付けた。
【0052】
3.細胞質稔性不稔ニンジン株の開発
増加したリコピン含有量を有する細胞質雄性不稔を含むニンジン株は、例えば、開放受粉したナトリ−レッド株とオレンジ色の雄性不稔品種間の交配を用いて産生されて細胞質雄性不稔が高リコピンバックグラウンドに導入されうる。
【0053】
例えば、以下は、雄性不稔の高リコピン株の開発に用いられた育種工程である。
1年目 秋 インペリアルバレーでナトリ−レッド(赤色)およびオレンジ雄性不稔の 種子を植え付けた。
2年目 春 F交雑品種のためにナトリ−レッドとオレンジ雄性不稔株の根を収穫し た。
2年目 秋 カリフォルニアで交雑品種の種子を植え付けた。
3年目 春 最初の戻し交配の調製時にナトリ−レッドとオレンジ色の根(全てオレン ジ色)の交配品種を収穫した。
3年目 秋 カリフォルニアでBC種子を植え付けた。
4年目 春 BC集団内の赤色の根を選別し、ナトリ−レッドへの戻し交配のために 調製した。
4年目 秋 カリフォルニアでBC種子を植え付けた。
5年目 春 いくらかのオレンジ色の根が観察されたが、ほとんどの戻し交配はほぼ安 定であるようだった。赤色の根を再度選択し、ナトリ−レッドへの戻し交 配のために調製した。
5年目 秋 カリフォルニアでBC種子を植え付けた。
6年目 春 全ての戻し交配集団の100%が増加したリコピンの表現型を完全に表す 根を収穫した。交雑品種の産生と増加の可能性に関して最良の株を選別し た。
6年目 秋 進歩と種子の増加のために新しい交雑品種と戻し交配株を植え付けた。
【0054】
上記のプログラム後、増加したリコピン含有量を有するニンジンが得られ、それらもまた、細胞質雄性不稔を示した。
【0055】
4.高リコピン含有量を有する交雑ニンジン品種の開発
交雑ニンジンは、実施例2と3の開放受粉株(雄性親)を、実施例4の雄性不稔株(雌性親)と交配させ、交雑品種F種子を採取することにより開発された。いくつかの交雑品種は、増加したレベルのリコピンを含んで開発された。これらのことは、交雑品種710303、710304、710310、710313、710311、710319、710316、および710305として同定されている。交雑品種から根を収穫した後、交雑株710319がオレンジ色と赤色で分かれることが観察されたが、それ自体は高いリコピンニンジンを生じなかった。これらの交雑品種は、HPLCにより調べられるように、少なくとも115ppmのそれらの根における平均リコピン含有量を含む。
【0056】
5.ニンジン株RF71−4911Aの開発
ニンジン株RF71−4911Aは以下のごとく要約されうる:
0年目 9月 インペリアルバレーでナトリ−レッドおよびオレンジ雄性不稔種子を植 え付けた。
1年目 2月 F1交雑品種のためにナトリ−レッドおよびオレンジ雄性不稔の根を収 穫した。ナトリ−レッドから選別された個々の根を植え付け、雄性不稔 との交配を行い、それらの各交雑品種を用いてナトリ−レッドの新しい 亜株集団を樹立した。
1年目 9月 カリフォルニアで交雑品種の種子と新しい亜株を植え付けた。
2年目 2月 各亜株への最初の戻し交配の調製時にナトリ−レッド亜株およびオレン ジの根(全てオレンジ色)を収穫した。
2年目 9月 カリフォルニアで各亜株とともにBC種子を植え付けた。
3年目 2月 BC集団内の赤色の根を選別し、再度、ナトリ−レッド亜株への戻し 交配のために調製した。
3年目 9月 カリフォルニアで各亜株とともにBC種子を植え付けた。
4年目 2月 可能性のある遺伝子の遺伝に関する問題でいくつかのオレンジ色の根が 生じたが、ほとんどの戻し交配はほぼ安定であるようだった。赤色の根 は、ナトリ−レッド亜株への戻し交配のために再度選別し、調製した。
4年目 9月 カリフォルニアで各亜株とともにBC種子を植え付けた。
5年目 2月 根を収穫し、全ての戻し交配集団の100%がリコピンの完全な表現を 示すことを見出した。交雑品種の産生と増加の可能性に関して最良の株 を選別し、株の1セットがRF71−4911AとBである。
5/6年目9月 進歩の可能性と種子の増加のために新しい交雑品種と戻し交配株を植え 付けた。
6/7年目2月 0710 0325と0710 0339を含む最良の交雑品種の組み 合わせを評価し、選別した。
【0057】
株RF71−4911Aは、この株を商業用の種子の産生で有用とするために、多くの世代間で自家受粉され、植え付けられ、ホモ接合性と表現型の安定性が産生された。この株に関して変異体の形質はほとんど観察されておらず、または予想されていない。
【0058】
ニンジン株RF71−4911Aは、実質的にホモ接合体であり、当業者に周知な技術を用いて、前記株の種子を植え付け、自家受粉または同胞受粉の条件下で生じるニンジン植物を栽培し、生じる種子を収穫することにより再生されうる。
【0059】
6.ニンジン株RF71−4912Aの開発
ニンジン株RF71−4912Aの開発は、以下のとおりに要約されうる:
0年目 9月 インペリアルバレーでナトリ−レッドとオレンジ雄性不稔種子を植え付 けた。
1年目 2月 F交雑品種のためにナトリ−レッドとオレンジ雄性不稔の根を収穫し た。ナトリ−レッドから選別された各々の根を植え付け、雄性不稔と交 配を行い、それらの各交雑品種とのナトリ−レッドの新しい亜株集団を 樹立させた。
1年目 9月 カリフォルニアで交雑品種の種子および新しい亜株を植え付けた。
2年目 2月 各亜株への最初の戻し交配の作成時にナトリ−レッド亜株とオレンジ根 (全てオレンジ色)の交雑品種を収穫した。
2年目 9月 カリフォルニアで各亜種と一緒にBC種子を植え付けた。
3年目 2月 BC集団内で赤色の根を選別し、再度、ナトリ−レッド亜株への戻し 交配のために作成した。
3年目 9月 カリフォルニアで各亜株と一緒にBC2種子を植え付けた。
4年目 2月 ほとんどの戻し交配はほぼ安定であるようだったが、潜在的な遺伝子の 遺伝に関する問題でいくつかのオレンジ色の根が生じた。ナトリ−レッ ド亜株への戻し交配のために赤色の根を再度選別し、作成した。
4年目 9月 カリフォルニアで各亜株と一緒にBC種子を植え付けた。
5年目 2月 根を収穫し、全ての戻し交配集団の100%がリコピンの完全な発現を 示すことを見出した。交雑品種の産生と増加の可能性について最良の株 を選別し、株の1セットはRF71−4912AおよびBである。
5/6年目9月 進歩の可能性と種子の増加のために新しい交雑品種と戻し交配株を植え 付けた。
6/7年目2月 0710 0346を含む最良の交雑品種の組み合わせを評価し、選別 した。
【0060】
株RF71−4912Aは、この株を商業用の種子産生に有用とするため、多くの世代間で自家受粉され、植え付けられることにより、ホモ接合性と表現型の安定性が産生されてきた。この株では変異形質がほとんど観察されず、または予想されていない。
【0061】
ニンジン株RF71−4912Aは、実質的にホモ接合体であり、当業者に周知な技術を用いて、前記株の種子を植え付け、自家受粉または同胞受粉の条件下で生じるニンジン植物を栽培し、生じる種子を収穫することにより、再生されうる。
【0062】
7.ニンジン株RIF71−4966Cの開発
ニンジン株RIF71−4966Cの開発は、以下のとおりに要約されうる:
1年目 9月 インペリアルバレーのステックリングベッド(steckling b ed)でナトリ−レッドとオレンジ雄性不稔種子を植え付けた。
2年目 2月 稔性x稔性の交配パターンについてナトリ−レッドおよびS−D813 Bの集団内で最良の親の根を植え付けた。
2年目 9月 稔性x稔性の交配系に由来するF種子を植え付けた。
3年目 2月 FM集団の進展のために集団内で公知の交雑品種の根を選別した。
3年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーでFが選別された根からFM 種子を植え付けた。
4年目 2月 切断と剥皮の加工市場に適合するであろう細く円筒形のFM根を選別 した。また、直接食感品質を評価するために各々の根を味見した。同胞 交配育種系で植え付けた。
4年目 9月 カリフォルニアのインペリアルバレーでFM2集団種子を植え付けた 。
5年目 2月 F集団の根を評価し、円筒形の良好な食感品質および切断と剥皮 の加工用の品質に関して選別した。
5年目 9月 カリフォルニアのインペリアルバレーでF集団の種子を植え付け た。
6年目 2月 予備選別(sub−selection)で評価し、均一な根の形と一 貫性を有するRIF71−4966Cと名付けた1つの株を見出した。 交雑品種の組み合わせのスキームでテストすることで判定を行った。
6年目 9月 カリフォルニアのインペリアルバレーで花粉媒体RIF71−4966 Cから作り出された新しい交雑品種を植え付けた。
7年目 2月 評価し、0710 0325を含む最良の交配組み合わせを選別した。
【0063】
株RIF71−4966Cは、この株を商業用の種子産生に有用とするため、多くの世代間で自家受粉され、植え付けられることにより、ホモ接合性と表現型の安定性が生み出されてきた。この株では変異形質がほとんど観察されず、または予想されていない。
【0064】
ニンジン株RIF71−4966Cは、実質的にホモ接合体であり、当業者に周知な技術を用いて、前記株の種子を植え付け、自家受粉または同胞受粉の条件下で生じるニンジン植物を増殖させ、生じる種子を収穫することにより、再生されうる。
【0065】
8.ニンジン株RIF71−4967Bの開発
ニンジン株RIF71−4967Bの開発は、以下のとおりに要約されうる。
2年目 9月 インペリアルバレーのステックリングベッド(steckling b ed)でナトリ−レッドとS−D813Bの親株を植え付けた。
3年目 2月 ナトリ−レッドとS−D813Bの集団内で最良の親の根を稔性x稔性 の交配パターンについて選別した。
3年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーで稔性x稔性の交配系からF種 子を植え付けた。
4年目 2月 FM集団への進展のために集団内で公知の交雑品種の根を選別した。
5年目 2月 切断と剥皮の加工市場に適合するであろう細く円筒形のFM根を選別 した。また、直接食感品質を評価するために各々の根を味見した。優れ た食感品質と形を有する1つの根を見出し、自家受粉させた。
5年目 9月 カリフォルニアのインペリアルバレーでFMS集団の種子を植え付け た。
6年目 2月 自家受粉させた株を評価し、均一な根の形と一貫性を有するものをRI F71−4967Bと名付けた。交雑品種の組み合わせスキームでテス トすることで判定した。
6年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーで花粉媒体RIF71−4967 Bから作られた新しい交雑品種を植え付けた。
7年目 2月 評価し、0710 0339を含む最良の交雑品種の組み合わせを選別 した。
【0066】
株RIF71−4967Bは、この株を商業用の種子産生に有用とするため、多くの世代間で自家受粉され、植え付けられることにより、ホモ接合性と表現型の安定性が生み出されてきた。この株では変異形質がほとんど観察されず、または予想されていない。
【0067】
ニンジン株RIF71−4967Bは、実質的にホモ接合体であり、当業者に周知な技術を用いて、前記株の種子を植え付け、自家受粉または同胞受粉の条件下で生じるニンジン植物を増殖させ、生じる種子を収穫することにより、再生されうる。
【0068】
9.ニンジン株RIF71−4968の開発
ニンジン株RIF71−4968Bの開発は、以下のとおりに要約されうる。
1年目 9月 インペリアルバレーのステックリングベッドでナトリ−レッドとS−D 813Bの親株を植え付けた。
2年目 2月 稔性x稔性の交配パターンについてナトリ−レッドとS−D813Bの 集団内で最良の親の根を選別した。
2年目 9月 稔性x稔性の交配系からF種子を植え付けた。
3年目 2月 FM集団への進展に関して集団内で公知の交雑品種の根を選別した。
3年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーでFが選別された根からFM 種子を植え付けた。
4年目 2月 切断と剥皮の加工市場を標的とする細く円筒形のFM根を選別した。 また、直接食感品質を評価するために各々の根を味見した。同胞交配育 種系で植え付けた。
4年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーでF集団の種子を植え付け た。
5年目 2月 F集団の根を評価し、円筒形の良好な食感品質および切断と剥皮 の加工用の品質に関して選別した。優れた食感品質を有する各根を見出 し、自家受粉スキームを行った。
5年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーでFS集団の種子を植え付 けた。
6年目 2月 自家受粉させた株を評価し、均一な根の形と一貫性を有するものをRI F71−4968Bと名付けた。交雑品種の組み合わせスキームでテス トすることで判定した。
6年目 9月 カリフォルニア、インペリアルバレーで花粉媒体RIF71−4967 Bから作られた新しい交雑品種を植え付けた。
7年目 2月 評価し、0710 0346を含む最良の交雑品種の組み合わせを選別 した。
【0069】
株RIF71−4968Bは、この株を商業用の種子産生に有用とするため、多くの世代間で自家受粉され、植え付けられることにより、ホモ接合性と表現型の安定性が生み出されてきた。この株では変異形質がほとんど観察されず、または予想されていない。
【0070】
ニンジン株RIF71−4968Bは、実質的にホモ接合体であり、当業者に周知な技術を用いて、前記株の種子を植え付け、自家受粉または同胞受粉の条件下で生じるニンジン植物を増殖させ、生じる種子を収穫することにより、再生されうる。
【0071】
10.高リコピン含有を有する交雑ニンジン品種の開発
交雑ニンジン品種0710 0325、0710 0339および0710 0346は、以下の交配から生まれた:
0710 0325=RF71−4911A×RIF71−4966C
0710 0339=RF71−4911A×RIF71−4967B
0710 0346=RF71−4912A×RIF71−4968B
【0072】
B.ニンジン品種の生理学的および形態学的な性質
本明細書に記載されるニンジン交雑品種および近交品種の生理学的および形態学的性質を表1−17に表す。表に示される数値は典型的な値である。数値は環境により変動しうる。実質的に同等であるその他の数値もまた本発明の範囲内である。
表1:交雑品種PS0710−0346の生理学的および形態学的性質
【表1−1】


【表1−2】


表2:交雑品種PS0710−0339の生理学的および形態学的性質
【表2−1】


【表2−2】


表3:交雑品種PS0710−0325の生理学的および形態学的性質
【表3−1】


【表3−2】


表4.交雑品種RF71−4912Aと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


表5:品種0710 0319と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


表6:品種0710 0305と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


表7:品種0710 0304と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表7−1】


【表7−2】


【表7−3】


表8:品種0710 0310と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】


表9:品種0710 0311と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表9−1】


【表9−2】


【表9−3】


表10:品種0710 0313と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表10−1】


【表10−2】


【表10−3】


表11:品種0710 0316と比較品種の生理学的および形態学的性質
【表11−1】


【表11−2】

【表11−3】


表12:品種RIF71−4966Cと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表12−1】


【表12−2】


【表12−3】


表13:品種RIF71−4968Bと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表13−1】


【表13−2】


【表13−3】


表14.:品種RIF71−4967Bと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表14−1】


【表14−2】


【表14−3】


表15:品種RN71−4904Cと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表15−1】


【表15−2】


【表15−3】


表16:品種RN−71−4963Cと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表16−1】


【表16−2】


【表16−3】


表17:品種RF71−4911Aと比較品種の生理学的および形態学的性質
【表17−1】


【表17−2】


【表17−3】

【0073】
C.さらなるニンジン株の育種
本発明の1の態様は、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bを、それ自身または第2の植物と交配させる方法、およびかかる方法により産生された種子と植物に関する。これらの方法は、株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bの繁殖に用いることができ、あるいは交雑ニンジン種子およびそこから栽培された植物を生産するのに用いることができる。交雑品種の種子は、株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bを第2のニンジン親株と交配させることにより産生される。
【0074】
1つまたはそれ以上の開始品種を用いる新しい品種の開発は、当該技術分野で周知である。本発明において、新規な品種は、かかる周知な方法により株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bを交配させ、次いで多世代の交配により作り出されてもよい。新しい品種は第2の植物のいずれかと交配させることにより作り出されてもよい。新規な株を開発するために交配するかかる第2の植物を選択する場合、1つまたはそれ以上の選択された所望の性質をそれら自身で示すか、または所望の性質を子孫で示すかのどちらかの植物を選択することが望まれてもよい。最初の交配がなされると、同系交配と選別が行われて新しい品種が産生される。均一な株または集団の開発のため、多くの場合、5回またはそれ以上の世代の自家または同胞交配ならびに選別が行われる。
【0075】
戻し交配はまた、株を改良するのに用いることができる。戻し交配は、特異的な所望の形質を、ある株からその形質を欠いている株へ移す。これは、例えば、最初に優れた植物(A)(反復親)を当該形質に適切な遺伝子座を運ぶドナー植物(非反復親)へ交配させることにより行うことができる。次いで、この交配の子孫は、優れた反復親(A)へ戻し交配され、非反復親から移行される所望の形質について、生じた子孫から選別される。5回またはそれ以上の戻し交配世代を所望の形質について選別した後、子孫は、移行される形質を制御する遺伝子座に関してヘテロ接合体であるが、大半もしくはほとんど全ての他の遺伝子座について優れた親に類似する。最後の戻し交配世代は、自家受粉して、移行される形質に関して純粋な育種子孫を生じるであろう。
【0076】
本発明の株は、特に、株の遺伝子バックグラウンドの選抜形態に基づく新しい株の開発に極めて適合する。新規のニンジン株を開発する目的で、RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bと交配させるための第2の植物を選択する際、典型的には、それら自身で1つまたはそれ以上の選択された所望の性質を示すか、または交雑品種を組み合わせる時に所望の性質を示すかのどちらかの植物を選択することが好ましい。望ましい性質の例は、色、直径、長さ、均一の細さ、最小限の分岐、高い水分、可溶性固体の内容量、みずみずしさ、および甘さのごとき所望の根の性質を含んでもよいが、これらだけに限定されない。所望の性質のさらなる例は、病害への耐性、害虫への耐性、土壌条件に対する適応性、天候状態に対する適応性、発芽、種子繁殖力、増殖率、成熟度、植物の均一性、増加した植物化学物質含有量、増加したベータ−カロテン含有量、増加したキサントフィル含有量、増加したリコピン含有量、および増加したアントシアニン含有量を含んでもよい。
【0077】
本明細書で用いられるように、「選抜株」は、優れた農業生産力に関する育種と選別から生じた株のいずれかである。選抜植物は選抜株に由来する植物のいずれかである。選抜株の例は、A−Plus、HCM、B8080、B6274、B5280、B6333、B5238、およびB6274(各々、USDAから利用可能である)のごとき農家またはニンジン育種者に市販されている株である。
【0078】
1回または2回の自家受粉、続いて同系受粉され、多世代にわたりタイプについて選別されてきた植物は、いくらかの遺伝子型ヘテロ接合型が残存するが、表現型としては均一となる。かかる育種方法には、著しい近交退化を受けるニンジンが用いられる。ホモ接合体の親ではなく2つのかかるヘテロ接合体間の交配は、多くの遺伝子座についてヘテロ接合体である交雑品種植物の表現型として均一な集団を生じる。かかる親株の開発は、一般に、少なくとも約5から7世代の自家および/または同系交配を必要とする。次に、2つのかかる親株が交配されることにより、改良されたF交雑品種が作成されうる。その後、交雑品種は、小規模な野外試験場でスクリーニングされ、評価されうる。典型的には、有望な商品価値について選択された約10から15種の表現形質が測定されうる。別の態様において、二ゲノム性半数体植物が開発され、これらの植物は遺伝子型が均一である。2つのかかる植物が交配されうるか、または上記の従来法で産生された親株が二ゲノム性半数体と交配され、上述のごとく評価されるF交雑品種が産生される。
【0079】
本発明はまた、高リコピンニンジンの子孫を提供する。本明細書で用いられるように、子孫は、(戻し交配または別の方法による)2つの植物間の交配のいずれかの産物だけではなく、その系統が元々の交雑品種に由来する全ての子孫を含むが、これらだけに限定されない。特に限定されないが、かかる子孫は、2つの元々交配した植物のうちの1つに由来する50%、25%、12.5%またはそれ以下の遺伝子物質を有する植物を含む。本明細書で用いられるように、第2の植物の系統が第1の植物を含む場合、第2の植物は第1の植物に由来する。
【0080】
本発明の方法を用いて作出された植物は、育種計画の一部でありうるか、または育種計画から作出されうる。育種方法の選択は、植物繁殖の様式、改良される形質の遺伝性、および商業的に用いられる栽培品種のタイプに依存する(例えば、F交雑栽培品種、純系栽培品種等)。本発明の植物を育種するために選択された非限定的な方法が以下に説明される。育種計画は、いずれかの交配の子孫のマーカー利用選抜のごとき利用可能ないずれかの方法を用いて高めることができる。商業的および非商業的な栽培品種は育種計画で利用されうることがさらに理解される。例えば、出芽力、生長力、ストレス耐性、病害への耐性、分枝、開花、結実、種子の大きさ、種子の密度、直立性、および脱粒性のごとき因子が一般的に選択に影響する。
【0081】
本発明は、新規なニンジン植物を作成する工程およびかかる工程により産生されるニンジン植物を提供する。かかる工程によると、第1の親ニンジン植物は第2の親ニンジンと交配されてもよく、ここで、第1および第2のニンジン植物のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されるごとく、親株または二ゲノム性半数体株または開放受粉株の高いリコピン含有量のニンジン植物である。前記工程の1つの応用は、F交雑品種植物の産生である。この工程の別の重要な態様は、新規な親、二ゲノム性半数体または開放受粉株の開発に用いることができる工程である。例えば、本明細書に記載の高リコピンニンジン植物は、いずれかの第2の植物と交配され、生じる交雑品種子孫が各々、約5から7回またはそれ以上の世代の間、自家受粉および/または同系受粉され、それにより多くの異なる親株が提供されうる。次いで、これらの親株が他の株と交配され、生じた交雑品種子孫が有益な性質について解析されうる。この方法において、所望の性質を付与する新規な株が同定されうる。
【0082】
ニンジン植物(Daucus carota var.sativus)は、自然または機械的な技術のどちらかにより交配されうる。機械的な受粉は、柱頭上に移されうる花粉のタイプを調節するか、または手で受粉させることのどちらかにより達成されうる。
【0083】
別の態様において、本発明は、(a)増加したリコピンを有するニンジン株を第2のニンジン株と交配させて分離集団を作成し;(b)増加したリコピン含有量について集団をスクリーニングし;次いで(c)増加したリコピン含有量を有する集団の1つまたはそれ以上のメンバーを選別すること:を含む増加したリコピン含有量を有するニンジン株を産生する方法を提供する。
【0084】
別の態様において、本発明は、(a)増加したリコピン含有量を有する少なくとも第1のニンジン株を第2のニンジン株と交配させて分離集団を形成し;(b)リコピン含有量について集団をスクリーニングし;次いで(c)増加したリコピン含有量を有する集団の少なくとも1つのメンバーを選別すること:を含む高いリコピン含有量の形質をニンジン植物に移入する方法を提供する。
【0085】
親植物は、典型的には、交互の列で、区切って、またはいずれか他の利便的な植え付けパターンで親植物を植え付けることにより相互に近接して受粉する時に植え付けられる。親植物が生殖成熟の時期についてずれる場合、最初により遅く成熟する植物を植え付け、それにより雌性親の柱頭が花粉を受け入れる期間に雄性親に由来する花粉の利用可能性を確保することが所望されてもよい。両方の親の親植物が栽培され、開花時期まで成長させることが可能である。有利なことに、この成長時期の間、植物は、一般に、育種者により適切と考えられるような肥料および/または他の農薬で処理される。
【0086】
代替的に、本発明の別の態様において、第1と第2の親ニンジン植物の両方は、本明細書に記載の高リコピンニンジン植物でありうる。したがって、本明細書に記載の高リコピンニンジン植物を用いて産生されるニンジン植物のいずれもが本発明の一部を形成する。本明細書で用いられるように、交配は、自家受粉、戻し交配、別もしくは同一の親株への交配、集団への交配、およびこれらの類似する交配を意味しうる。それゆえ、親として本明細書に記載の高リコピンニンジン植物を用いて産生される全てのニンジン植物は、本発明の範囲内である。
【0087】
1の態様において、雄性ニンジンのいずれかもが本発明のニンジンとの組み合わせで用いられうる。1の態様において、親の1つは、少なくとも50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、または100ppmのリコピン含有量の根を有する雄性ニンジンである。かかる雄性ニンジン植物株の例は、ナトリ−レッド、および赤色インディアン系統(Indian descent)ニンジン株を含む。
【0088】
別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有する交雑ニンジン植物を提供する。別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有する交雑ニンジン植物の種子を提供する。本明細書に記載の高リコピンニンジン植物が別の異なるニンジン親株と交配されるいずれの場合においても、第1世代(F)のニンジン交雑植物が産生される。かかる場合として、F交雑ニンジン植物は、例えば、本明細書に記載されるごとき高リコピンニンジン植物を第2の親ニンジン植物のいずれかと交配させることにより産生されうる。実質的に、いずれか他のニンジン植物は、1つの親として本明細書に記載の高リコピンニンジン植物を有する交雑ニンジン植物を産生するのに用いることができる。必要とされることは、少なくとも、1つの植物が雌性稔性であり、第2の植物が雄性稔性であることである。ニンジン植物は、天然に雄性と雌性稔性の両方がある。
【0089】
単一の交配交雑ニンジン品種は、2つの親株の交配であり、その各々が互いの遺伝子型を補う遺伝子型を有する。典型的には、F交雑品種はそれらの親より強勢である。この交雑品種強勢、またはヘテローシス(heterosis)は、向上された収率、より良好な根、より良質な均一性およびより向上した害虫と病害への耐性を含む、多くの遺伝子の形質に現れる。交雑品種の開発においてのみ、F交雑品種の植物が典型的に発生する。F単一の交配交雑品種は、2つの親植物が交配される時に産生される。二重交配交雑品種はペア(A×BとC×D)で交配された4種の親植物から産生され、次いで2種のF交雑品種が再度(A×B)×(C×D)で交配される。3方法の交配は(A×B)×Cと交配された3種の親植物から産生される。
【0090】
1の態様において、当業者間で知られるいずれかのニンジン品種が本発明の高リコピンニンジン株と交配されて交雑植物を産生することができる。好ましい態様において、かかるニンジン品種は、B3640M、B3080M、B3475、B8080、B5280、B6333、B5238、およびB6274(各々USDAから利用可能である)、S−D813B(Seminis Vegetable Seeds、および出典明示により本明細書に援用される米国特許第6,787,685号)を含むが、これらだけに限定されない。
【0091】
本明細書に記載の高リコピンニンジン植物は、別の親植物と交配されて交雑品種が産生される場合、母性または父性の植物として供給することができる。多くの交配の間、親植物の雌雄にかかわらず結果は同じである。交雑品種の交配では、第2の親と比べて種子産生の性質に依存し、雄性または雌性親として親植物の1つを用いることが所望されてもよい。それゆえ、雄性または雌性として1つの親植物を用いる決定は、当業者間で知られるような性質のいずれかに基づいて行われてもよい。
【0092】
1つまたはそれ以上の開始品種を用いる新しい品種の開発は、当該技術分野で周知である。本発明によると、新規の品種は、本明細書に記載の高リコピンニンジン植物の交配、次いでかかる周知の方法による複数世代にわたる育種により作り出されてもよい。新しい品種は、本明細書に記載の高リコピンニンジン植物を第2の植物のいずれかと交配させることにより作り出されてもよい。新規の親株の開発のために交配させるかかる第2の植物を選別する際、それら自身で1つまたはそれ以上の選択された所望の性質を示すか、または交雑品種の組み合わせで所望の性質を示すかのどちらかの植物を選択することが所望されてもよい。可能性として所望される性質の例は、より高い生産性、殺虫剤、除草剤、ペスト、および病害に対する耐性、熱および乾燥に対する耐性、穀物成熟までの時間短縮、より良好な農業生産品質、より高い栄養価、ならびに発芽時間、成長速度、成熟度、および根の大きさにおける均一性を含む。
【0093】
最初の交配が本発明の高リコピンニンジン株を用いて行われると、自家および/または同系受粉が起こり新しい親株を産生する。親株の開発はヒトの育種者による操作を必要とする。自家受粉と同系受粉の組み合わせは、遺伝子型が安定し、表現型が均一である新しい親株を開発するのに不可欠である。育種者が親株を作り出す理由は、表現型が均一であり、F交雑品種を産生するために利用できる異系交雑品種において均一な集団を開発することである。
【0094】
系統育種方法は、2つの遺伝子型を交配することに関する。各遺伝子型は、他方の性質を欠く1つまたはそれ以上の所望の性質を有することができるか、あるいは、各遺伝子型は他方を補うことができる。2つの元々の親の遺伝子型が所望の性質をほとんど提供しない場合、他方の遺伝子型が育種集団に含まれうる。これらの交配の産物である優れた植物は、代々、自家受粉または同系受粉され、選別される。後の世代は各々、自家または同系受粉および選別の結果として、より遺伝学的に均一となり、表現型について均一化されていく。典型的に、この育種方法は、5回またはそれ以上の世代の自家受粉もしくは同系受粉および選別に関連する。少なくとも5世代後に生じた親株は、各遺伝子座において安定な対立遺伝子の頻度を示し、表現型も均一である。
【0095】
新しい品種の開発時に通常では選択されず、戻し交配の技術により改良することができる多くの形質が同定されてきた。形質を付与する遺伝子座は、導入遺伝子であってもよく、または導入遺伝子でなくてもよい。当業者に知られるかかる形質の例は、雄性不稔、除草剤耐性、細菌、真菌、またはウイルス疾患に対する耐性、害虫耐性、雄性稔性および向上された栄養品質を含むが、これらだけに限定されない。これらの遺伝子は、一般に核を通して受け継がれるが、細胞質を通して受け継がれてもよい。これに対するいくつかの知られた例外は、雄性不稔に関する遺伝子であり、これらのうちのいくつかは細胞質で受け継がれるが、単一の遺伝子座の形質としても作用する。
【0096】
遺伝子座が優性形質として作用する場合、直接の選別が適用されてもよい。優性形質の例は、除草剤耐性形質である。この選別工程において、最初の交配の子孫は、戻し交配前に除草剤と一緒に噴霧される。噴霧は、所望の除草剤耐性の性質を有さないいずれかの植物を除去し、除草剤耐性遺伝子を有する植物のみが後の戻し交配に用いられる。次いで、この工程は全てのさらなる戻し交配世代間で繰り返される。
【0097】
D.性能特性
上述のごとく、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967BおよびRIF71−4968B、ならびにニンジン交雑品種0710 0325、0710 0339、0710 0346、710313、710305、710316、710319、710311、710304、710310、および710303は、例えば、リコピン含有量の増加を含む所望の農業生産形質を示す。他の株および品種と比較したこれらの株および交雑品種のいくつかの性能特性の目的解析を以下に表す。
【0098】
ナトリ−レッド株と比較したニンジン株RN71−4904Cの野外試験の結果を表18〜22に示す。記載する値は、各品種につき約50個の根から採取したサンプルの平均から得られる。
表18:8年目の株RN71−4904Cの性能特性
【表18】


表19:9年目の株RN71−4904Cの性能特性
【表19】

n.d.=測定していない
甘さの指標=1.73[フルクトース]+0.75[グルコース]+[スクロース]
表20:10年目の株RN71−4904Cの性能特性
【表20】


表21:11年目の株RN71−4904Cの性能特性
【表21】


表22:11年目の株RN71−4904Cのさらなる性能特性
【表22】

*パイク(Pike)=アルファ−ピネン、ベータ−ピネン、ミルセン、リモネン、ガンマ−テルピネン、およびテルピノレン
**シモン(Simon)=アルファ−ピネン、ベータ−ピネン、ミルセン、リモネン、ガンマ−テルピネン、テルピネオール、酢酸ボルニル、カリオフィレン、およびビサボレン。
【0099】
ニンジン株0710 0325、0710 0339、および0710 0346の野外試験の結果を以下の表23に示す。記載する値は、各品種につき約20個の根から採取したサンプルの平均から得られる。
表23:ニンジン交雑品種0710 0325、0710 0339、および0710 0346の性能特性
【表23】

【0100】
インビクタ(Invicta)、オレンジ(カロテン)交雑品種、2種のキントキOP株およびナトリ−レッドを、表23に要約される研究の対照用に用いた。全てのデータを、7年目の2月、カリフォルニア州のインペリアルバレーから得た。表は、交雑品種0710 0325が、競合する株と比べて、優れたリコピンとルテイン含有量を示し、加えてかなりの量のベータ−カロテンを含むことを示す。それゆえ、本発明の1つの重要な態様は、商業使用のための品種の種子を提供する。また、0710 0325、0710 0339、および0710 0346は各々、比較品種より高いスクロース含有量を示した。
【0101】
ニンジン交雑品種710313、710305、710316、710319、710311、710304、710310、および710303を以下の表24で比較する。各交雑品種株に由来する50個の根のリコピン含有量を、カリフォルニア州のエルセントロで栽培した植物からHPLCにより解析した。表24は、これらの交雑品種の各々、およびコントロール株ホンコウキントキ、インビクタ(オレンジ株;カロテン含有量)、レッドナント、およびシンクキントキについての平均リコピン含有量を表す。
表24:ニンジン交雑品種710313、710305、710316、710319、710311、710304、710310、および7100303の性能特性
【表24−1】


【表24−2】

ND=検出されず
【0102】
4種の交雑ニンジン品種は、少なくとも約115ppmの平均リコピン含有量を有する根を産生した。交雑品種710319を赤色の表現型について分離し、それゆえより低い平均リコピン含有量を生じた。
【0103】
株RF71−4911Aの性能解析も行った。解析結果を以下、表25と26に示す。
表25:20個の根のサンプル平均に基づく、株RF71−4911Aの生理学的および形態学的な性質。2006年2月と2007年2月の間にカリフォルニア州、インペリアルバレーから根を収穫した。
【表25】


表26:株RF71−4911Aの性能特性
【表26】

【0104】
株RF71−4912Aの性能解析をさらに行った。解析の結果を以下、表27と28に示す。
表27:20個の根のサンプル平均に基づく、株RF71−4912Aの生理学的および形態学的な性質。2006年2月と2007年2月の間にカリフォルニア州、インペリアルバレーから根を収穫した。
【表27−1】


【表27−2】

【0105】
E.本発明のさらなる具体例
用語ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bが本発明の中で用いられる場合、少なくとも第1の所望な遺伝性形質を含むように改変された植物を含む。かかる植物は、1の具体例において、戻し交配と呼ばれる植物育種技術により開発されてもよく、ここで、基本的な全ての品種の所望の形態学的および生理学的な性質は、戻し交配技術を介して植物に移行される遺伝子座と一緒に戻される。本明細書で用いられる用語単一遺伝子座改変植物は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術により開発されるニンジン植物を意味し、ここで、基本的な全ての品種の形態学的および生理学的な性質は、戻し交配技術を介して植物に移行される遺伝子座と一緒に戻される。
【0106】
戻し交配の方法は、1つの性質を本願の品種に改良または導入するのに用いることができる。所望の性質に関する遺伝子座を寄与する親のニンジン植物は、非反復性(nonrecurrent)またはドナー親と呼ばれる。この技術用語は、非反復性親が戻し交配のプロトコルのなかで1回用いられ、それゆえ反復されないことを意味する。非反復性親に由来する遺伝子座が移行される親ニンジン植物は、戻し交配プロトコルにおいて数回用いられる反復性親として知られる。
【0107】
典型的な戻し交配プロトコルにおいて、目的の元々の品種(反復性親)は、移行される目的の単一遺伝子座を保有する第2の品種(非反復性親)と交配される。次いで、この交配から生じる子孫は再び反復性親と交配され、この工程は、非反復性親からの単一の移行された遺伝子座に加えて、基本的な全ての反復性親の所望の形態学的および生理学的な性質が改変植物に戻されるまで繰り返される。
【0108】
適当な反復性親の選別は、継続的な戻し交配の方法において重要な工程である。戻し交配の目的は、元々の品種における単一の形質または性質を変更または置換することである。これを達成するため、反復性品種の単一の遺伝子座は、非反復性親に由来する所望の遺伝子座で改変または置換される一方で、元々の品種の基本的な全ての残りの所望の遺伝子、すなわち所望の生理学および形態学的な構成が残る。特定の非反復性親の選択は、戻し交配の目的に依存する;主な目的の1つは商業的に所望される形質のいくつかを植物に付加することである。正確な戻し交配プロトコルは変更される性質または形質に依存し、適宜試験プロトコルが決定される。戻し交配の方法は、移行される性質が優性対立遺伝子である時に簡略化されるが、劣性遺伝子座もまた移行されてもよい。この場合には、所望の性質が継続的に移行されるかどうかを調べるために子孫のテストを導入することが必要とされうる。
【0109】
1の具体例において、RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bが反復性親である戻し交配の子孫のニンジン植物は、(i)非反復性親に由来する所望の形質、ならびに(ii)同一の環境条件で栽培された場合、5%の有意レベルで調べられるように、ニンジン株RN71−4904C、RF71−4911A、RF71−4912A、RIF71−4966C、RIF71−4967B、またはRIF71−4968Bの全ての生理学的および形態学的な性質を含む。
【0110】
ニンジン品種はまた、2種以上の親から開発することができる。改変戻し交配(modified backcrossing)として知られる技術は、戻し交配の間に異なる反復性親を用いる。改変戻し交配は、元々の反復性親を一定のより所望される性質を有する品種に置き換えるのに用いられてもよく、あるいは、複数の親は各々に由来する異なる所望の性質を取得するのに用いられてもよい。
【0111】
新しい株の開発においては通常選別されないが、戻し交配の技術により改善することができる多くの単一遺伝子座の形質が同定されてきた。単一遺伝子座の形質は、導入遺伝子であってもよく、そうでなくもよい;これらの形質の例は、雄性不稔、除草剤耐性、細菌性、真菌性、もしくはウイルス性疾患に対する耐性、害虫耐性、雄性稔性の回復、改善された脂肪酸または糖の代謝、向上した栄養価を含むが、これらだけに限定されない。これらは、一般的に核を介して遺伝される遺伝子を含む。
【0112】
単一遺伝子座が優性形質として作用する場合には、直接の選別が用いられてもよい。優性形質の1の例は、炭疽病耐性の形質である。この選別工程において、最初の交配の子孫は、戻し交配前に炭疽病の胞子と一緒に噴霧される。噴霧は、所望の炭疽病耐性の性質を有していない植物を除去し、炭疽病耐性遺伝子を有する植物のみが後の戻し交配に用いられる。次いで、この工程は全ての戻し交配世代の間に繰り返される。
【0113】
育種のためのニンジン植物の選別は、必ずしも植物の表現型に依存しておらず、代わりに遺伝学的研究に基づくことができる。例えば、1つは目的の形質に密接に遺伝学的に関連する適当な遺伝子マーカーを利用することができる。これらのマーカーの1つは、特定の交配の子孫における形質の有無を同定するのに用いることができ、継続的な育種における子孫の選別に用いることができる。この技術は、一般にマーカー利用選抜と呼ばれる。植物における目的の形質の相対的な有無を同定できる他のいずれかのタイプの遺伝子マーカーまたは他のアッセイもまた、育種のために利用することができる。ニンジン育種に適用可能なマーカー利用選抜の方法は、当業者間に周知である。かかる方法は、劣性形質および変化しやすい表現型の場合に、あるいは従来法がより高価であるか、時間がかかるか、またはその他の点で不利益でありうる場合に特に利用される。本発明により用いられうる遺伝子マーカーのタイプは、単純配列長多型(SSLPs)(Williamsら,1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPDs)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性増幅領域(SCARs)、任意プライマー(Arbitrary Primed)ポリメラーゼ鎖反応(AP−PCR)、増幅断片長多型(AFLPs)(特に出典明示により本明細書に援用されるEP534858)、および一塩基多型(SNPs)(Wangら,1998)を含むが、必ずしもこれらだけに限定されない。
【0114】
本出願は、高リコピンレベルを有するニンジン株を提供する。好ましい態様において、ニンジン株は交雑ニンジン品種である。別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有するニンジン根を提供する。本明細書で提供されるニンジン根のいずれかのリコピン含有量は、当該技術分野で利用可能ないずれかの手法により測定することができる。1の例において、ニンジン根のリコピン含有量は、下記の実施例1で記載されるごとく高圧液体クロマトグラフィーを用いて調べられる。1の例において、本明細書で提供されるニンジン根は、少なくとも、もしくは約100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、または135ppmのリコピン含有量を有する。好ましい態様において、ニンジン根は、少なくとも約100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppm、145ppm、または150ppmの平均リコピン含有量を有する。別の態様において、ニンジン根は、約100ppmと約250ppm、約100ppmと約225ppm、約100ppmと約200ppm、約100ppmと約175ppm、約100ppmと約160ppm、または約100ppmと約150ppmの間の平均リコピン含有量を有する。
【0115】
別の態様において、高リコピン含有量を有するニンジン株は、コントロールニンジン株と比較して、少なくとも、あるいは、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%より大きく増加するリコピン含有量を有する。1の具体例において、コントロールニンジン株はナトリ−レッドである。ナトリ−レッドは当業者に周知な品種である。それゆえ、特定の具体例において、本明細書で提供される植物の根のリコピン含有量は、同一条件下で栽培した場合にナトリ−レッドの平均の根のリコピン含有量の少なくとも約110%を含むものとして定義されてもよい。さらなる具体例において、根のリコピン含有量は、同一条件下で栽培した場合にナトリ−レッドのリコピン含有量の少なくとも約115、120、125、130、132.5、135、138.8、145.4、148.7、152.1、157.9または約171.1%と定義されてもよい。
【0116】
高リコピンニンジン株の平均リコピン含有量は、本明細書で提供されるように、株または栽培品種からいずれかの数の根のリコピン含有量を平均することにより調べることができる。1つの例において、平均リコピン含有量は、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個の根の平均である。好ましい態様において、根が得られるニンジン植物は、雄性不稔植物である。別の好ましい態様において、根が得られるニンジン植物は、細胞質雄性不稔植物である。
【0117】
別の態様において、本発明は、少なくとも100ppmのリコピン含有量の根を有する植物を産生することができるニンジン植物の種子を提供する。好ましい態様において、ニンジン植物は、雄性不稔植物である種子から栽培される。別の好ましい態様において、雄性不稔植物は、細胞質雄性不稔植物である。
【0118】
本発明はまた、増加したリコピン含有量の根を有する細胞質雄性不稔ニンジン植物を提供する。
【0119】
本発明はまた、増加したリコピン含有量を含む根を有する交雑ニンジン品種を提供する。1の例において、ニンジン植物は、少なくとも約80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、または135ppmの増加したリコピン含有量を有する。好ましい態様において、ニンジン根は、少なくとも約80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppm、145ppm、または150ppmの平均リコピン含有量を有する。別の態様において、ニンジン根は、約80ppmと約250ppm、約80ppmと約225ppm、約90ppmと約225ppm、約100ppmと約225ppm、約100ppmと約200ppm、約100ppmと約175ppm、または約100ppmと約160ppm、または約100ppmと約150ppmの間の平均リコピン含有量を有する。1の具体例において、リコピン含有量は、交雑ニンジン品種から得られた少なくとも約2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50個のニンジン根の平均リコピン含有量として測定される。別の態様において、交雑ニンジン品種は、コントロール交雑ニンジン品種、例えば、キントキ開放受粉品種から得られる平均リコピン含有量と比較して増加したリコピン含有量を有する。例えば、本発明の交雑ニンジンから得られるニンジン根は、コントロールニンジン株から得られる根と比較して、少なくとも、あるいは、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%より大きく増加する平均リコピン含有量を有する。
【0120】
別の態様において、本発明は、王立園芸協会カラーチャート(イギリス、ロンドンの王立園芸協会)の184色の群における色に対応する色を持つ根を有するニンジンを提供する。好ましい態様において、根は、カラーRHS184AとRHS184Cの間の184色の群における色を有する。好ましい態様において、根は、RHS184AとRHS184Bの間の色を有する。1の態様において、根は、約、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ミリメータ(mm)の根の表皮より下部の深さまでRHS184AとRHS184Cの間の色を有する。色の深さは、表皮から色の最も深い点までの根の色を測定することにより測定される。
【0121】
別の態様において、本発明は、分岐のごとき他の形質を最小化する一方、みずみずしさや甘さのごとき商業的に所望される根の品質形質を有する高リコピンニンジン植物を提供する。これらの形質の総説は、“Domestication,Historical Development,and Modern Breeding of Carrot,”P.W.Simon,Plant Breeding Reviews,19:157−190(ed.J.Janick;John Wiley & Sons 2000)中で見出される。ニンジン根の「みずみずしさ」は、一定の力を与えた後の根の破砕として定義される。「甘さ」は、ニンジン根の糖含有量の結果であり、例えば、屈折計により可溶性固体として測定され、ブリックス度として表すことができる。1の態様において、本発明のニンジン植物は、約または4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°ブリックスより高いブリックス含有量を有する根を産生する。別の態様において、本発明のニンジン植物は、約2°と約20°ブリックスの間、約3°と約20°ブリックスの間、約8°と約20°ブリックスの間、または約11°ブリックスと約20°ブリックスの間を有する根を産生する。
【0122】
「分岐」は、硬質粘土の土壌で栽培されるか、岩地で栽培されるか、もしくは密集状態で栽培される場合、または過剰な窒素の存在のため、または様々な病原菌のために起こり得、一次的な主根から二次的な根の増殖を生じる。1の態様において、本発明のニンジン株の根の集団は、25%、20%、15%、10%、5%より少ない分岐を有する。みずみずしさ、分岐、および甘さは、当該技術分野で知られるいずれかの方法により測定することができる。例えば、みずみずしさ、甘さ、および分岐は、同様の条件下で栽培された対照標準ニンジン根に対するテスト根の比較により測定されてもよい。
【0123】
1の態様において、本発明のニンジンは、約12ミリメータ(mm)、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mm、30mm、31mm、32mm、33mm、34mm、35mm、36mm、37mm、38mm、39mm、40mm、41mm、42mm、43mm、44mm、45mm、46mm、47mm、48mm、49mm、50mm、もしくは51mmあるいはこれらより大きい収穫時の直径を有する根を有する。別の態様において、ニンジンは、約10mmと約55mmの間、約12mmと約53mmの間、約15mmと約50mmの間、または約17mmと約48mmの間の収穫時の直径を有する根を有する。本明細書で用いられるように、収穫時の根の直径は、その最も大きいポイントにおける根の直径を測定することにより測定される。
【0124】
1の態様において、本発明のニンジンは、約7.5センチメータ(cm)、8.0cm、8.5cm、9.0cm、9.5cm、10.0cm、10.5cm、11.0cm、11.5cm、12.0cm、12.5cm、13.0cm、13.5cm、14.0cm、14.5cm、15.0cm、20cm、25cm、30cm、35cm、または40cmあるいはこれらより大きい収穫時の根の長さを有する。別の態様において、本発明のニンジンは、約5cmと約40cmの間、約7.5cmと約35cmの間、または約9cmと約30cmの間の収穫時の根の長さを有する。根の長さは、先端から下部までの根の最も長い地点をセンチメートル単位で測定される。本明細書で用いられるように、根の長さは、最も大きい地点間の根の長さに沿って収穫した根を測定することにより測定される。
【0125】
1の態様において、ニンジン根は、1、2、3、4、または5の全体の根の品質評価を有し、根の品質は、目視測定により1=悪いから5=優までの範囲のスケールで測定される。
【0126】
色、根の長さ、および根のリコピン含有量のごときニンジンの属性(attribute)は、様々な時期に測定することができる。別の態様において、属性は栽培チャンバーにおける栽培後に測定される。1の態様において、属性は収穫時に測定される。別の態様において、属性は、収穫後1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、または5週間の周囲条件におけるニンジン根の貯蔵後に測定される。さらに別の態様において、属性は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、または5週間の5℃におけるニンジン根の貯蔵後に測定される。
【0127】
本明細書で用いられるように、ニンジン植物は、根が約20から約50ミリメータ(mm)の間の直径と約50から約500mmの間の長さを有し、最小量の分岐と最小の芯を有する場合に、「好ましいニンジンの性質」を有する。1の態様において、ニンジン植物は、分岐した根を有するそのニンジンの25%、20%、15%、10%、または5%より少ないものを示す。別の態様において、ニンジン根は、根の全直径の60%、55%、50%、45%、または40%より小さい直径である表皮の直径を示す。別の態様において、識別可能な「甘さ」を有するニンジン根は、ニンジン根の甘さの知覚を意味する。1の態様において、甘さは、ニンジン根における可溶性固体の含有量に相関関係でありうる。根の可溶性固体は、屈折率測定によりブリックス度として測定することができ、好ましくは、少なくと4°、6°、8°、10°、12°、14°、16°、18°、20°ブリックスまたはそれ以上である。甘さはまた、ニンジン根で産生されるパイク(Pike)もしくはサイモン(Simon)テルペンのごときテルペノイドの量により影響されうる。テルペン含有量は、当該技術分野で利用可能ないずれかの方法を用いて、例えば、HPLCを用いて測定することができる。好ましくは、根は、50ppm、45ppm、40ppm、35ppm、30ppmより少ないテルペノイドを含む。
【0128】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるニンジン株の組織培養に関連する。本明細書で用いられるように、用語「組織培養」は、同一もしくは異なるタイプの単離された細胞、または植物の部分として組織されたかかる細胞の集合物を含む組成物を示す。組織培養の典型的なタイプは、プロトプラスト、カルス、葯培養、ならびに胚、葉、花柄、小花柄、葯、分裂組織、根端と分節、幹と茎、外植片、およびその類似物のごとき植物または植物の部分中の無傷な植物細胞である。好ましい態様において、組織培養は、これらの植物部分の未成熟組織に由来する胚、プロトプラスト、成長点の細胞、花粉、葉または葯を含む。別の好ましい態様において、組織培養は、二ゲノム性半数体の産生に用いることができる。植物組織培養を調製し、維持する手法は、当該技術分野に周知である。ニンジンの組織培養と再生の工程例は、例えば、Mattysseら(1978)に記載される。
【0129】
本明細書で用いられるように、「高リコピン」ニンジン株は、少なくとも約100ppmの平均リコピン含有量を有する根の集団におけるニンジン株に由来するいずれかのニンジン根である。他の態様において、根の集団は、少なくとも、または約110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppmまたはそれより高い平均リコピン含有量を有する。高リコピンニンジン株は、以前に報告されたニンジン植物、例えば、ニンジン株インディアンレッドとナトリ−レッドより高い本発明のニンジン根の集団における平均リコピン含有量を有する。ニンジン根の集団は、同一条件下で栽培された、同一ニンジン株内の異なるニンジン植物から得られる2個またはそれ以上の根であって、好ましくは、同一ニンジン株内の異なるニンジン植物から得られる2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、200個、500個、または1000個もしくはそれ以上の根を意味する。1の態様において、平均リコピン含有量は、約100ppmと約250ppmの間、約100ppmと約225ppmの間、約100ppmと約200ppmの間、約100ppmと約175ppmの間、約100ppmと約165ppmの間、または約100ppmと約155ppmの間の平均リコピン含有量として同定される。1の態様において、ニンジン根のリコピン含有量は収穫時に測定される。
【0130】
本発明はまた、50%より多くの種子から栽培された根が増加したリコピン含有量を有するニンジン種子の容器を提供する。別の態様において、容器中のニンジン種子の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%より多くから栽培されたニンジン植物から得られた根は、増加したリコピン含有量を有する。1の態様において、種子から栽培された植物から得られた根の集団は、約100ppmと約250ppmの間、約100ppmと約225ppmの間、約100ppmと約200ppmの間、約100ppmと約175ppmの間、約100ppmと約165ppmの間、約100ppmと約155ppmの間、約110ppmと約225ppmの間、約120ppmと約225ppmの間、または約125ppmと約225ppmの間の平均リコピン含有量を有する。他の態様において、種子から栽培された植物から得られた根の集団は、少なくとも、または約100ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppmより多い平均リコピン含有量を有する。このことに関連して、根の集団は、少なくとも約2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、200個、500個、または1000個もしくはそれ以上の根を含む。
【0131】
ニンジン種子の容器は、いずれの種子の数、重さまたは体積を含むことができる。例えば、容器は、少なくとも、または約10個、25個、50個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1500個、2000個、2500個、3000個、3500個、4000個、5000個、10,000個、20,000個、30,000個、40,000個、50,000個より多くの種子を含むことができる。別の態様において、容器は、約、または約1グラム、5、10、15、20、25、50、100、250、500、1000グラムより多くの種子を含むことができる。代替的に、容器は、少なくとも、または、約1オンス、5オンス、10オンス、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50ポンドまたはそれ以上の種子を含むことができる。
【0132】
ニンジン種子の容器は、当該技術分野で利用可能ないずれの容器でありうる。例えば、容器は、箱、バッグ、缶、パケット、ポーチ、テープロール、バケツ、またはチューブでありうる。
【0133】
別の態様において、ニンジン種子の容器に含まれる種子は、処理または未処理のニンジン種子でありうる。1の態様において、種子は、例えば、種子を刺激することにより、または種子伝染性病原体から保護するための消毒により、発芽を改善するために処理することができる。別の態様において、種子は、例えば、植物性、種子出芽、および種子伝染性病原体からの保護を改善するためにいずれかの利用可能なコーティングを用いてコートされうる。種子コーティングは、ペレット状、膜コーティング、および被膜化(encrustments)を含むが、これらだけに限定されない種子コーティングのいずれかの形態でありうる。
【0134】
別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有するニンジンの少なくとも一部分を有するニンジン根の容器を提供する。1の態様において、容器は、約2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、またはそれ以上のニンジン根を含む。さらに別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有する束に少なくともニンジンの一部分を有する一束のニンジン根を提供する。1の態様において、束は、結びつけられた約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはそれ以上のニンジン根を含む。別の態様において、本発明は、増加したリコピン含有量を有する切断ニンジン根の少なくとも一部分を有する、切断またはコイン状(coins)のごとき切断ニンジン根の容器を提供する。1の態様において、容器は、約2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、またはそれ以上の切断ニンジン根を含む。別の態様において、容器は、0.5ポンド、1ポンド、2、3、4、5、またはそれ以上のポンドの切断ニンジン根を含む。別の態様において、容器は、5、10、25、50、75、100、250、500、1000、2000またはそれ以上のグラムの切断ニンジン根を含む。リコピン含有量は、当該技術分野で利用可能な手法のいずれかにより測定されうる。例えば、リコピン含有量は、ニンジン根の集団のリコピン含有量を平均することにより測定されうる。この関連で、ニンジン根の集団は、2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、またはそれ以上の根でありうる。集団内の平均リコピン含有量は、約100ppmと約250ppmの間、約100ppmと約225ppmの間、約100ppmと約200ppmの間、約100ppmと約175ppmの間、約100ppmと約165ppmの間、または約100ppmと約155ppmの間でありうる。
【0135】
1の態様において、ニンジンの容器または束は市場で見出すことができる。例えば、容器または束は、食料品店、レストラン、パン屋、およびそれらの類似店で見出すことができる。1の態様において、ニンジンの容器または束は、市場における販売中に見出すことができる。
【0136】
別の態様において、容器中の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%より多くのニンジン根は増加したリコピン含有量を有する。
【0137】
増加したリコピン含有量を有する洗浄されたニンジン根の容器が本明細書で提供される。本発明はまた、洗浄されたニンジン根の部分の容器を提供する。1の態様において、根の部分の容器は固体であるか、または市場における販売に利用可能でありうる。
【0138】
F.遺伝子改変により生じたニンジン植物
戻し交配により、ならびに直接、植物に導入することができる多くの有用な形質は、遺伝子形質転換技術により導入されるものである。それゆえ、遺伝子形質転換は、選択された導入遺伝子を本発明のニンジン株に導入するのに用いられてもよく、あるいは代替的に、戻し交配により導入されうる導入遺伝子の調製に用いられてもよい。ニンジンを含む植物の形質転換方法は、当業者に周知である。ニンジンの遺伝子形質転換に採用されうる技術は、エレクトロポレーション、微粒子銃、アグロバクテリウム介在形質転換およびプロトプラストによる直接のDNA取り込みを含むが、これらだけに限定されない。
【0139】
エレクトロポレーションによる形質転換を行うため、1つは細胞または胚形成カルスの懸濁培養のごとき脆弱な組織を用いてもよく、代替的に、1つは未熟な胚または他の構成された組織に直接形質転換してもよい。この技術では、1つは、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に露出させることによるか、または調節された手段で機械的に組織を傷害することにより、選択された細胞の細胞壁を部分的に分解しうる。
【0140】
DNA断片を植物細胞に形質転換する特に効率的な送達方法は、微粒子銃である。この方法では、粒子は核酸で被膜され、推進力により細胞に送達される。典型的な粒子は、タングステン、白金、好ましくは、金からなるものを含む。送達に際し、懸濁中の細胞はフィルターまたは固体培地上で濃縮される。代替的に、未成熟な胚またはその他の標的細胞は、固体培地上で並べられてもよい。送達される細胞は、マクロプロジェクタイルストッピングプレート(macroprojectile stopping plate)の下に適切な距離で配置される。
【0141】
加速度によりDNAを植物細胞に送達する方法の例示的な具体例は、Biolistics Particle Delivery Systemであり、これは、標的ニンジン細胞を載せた表面上を、ステンレス製またはNYTEXスクリーンのごときスクリーンを通してDNAまたは細胞でコートされた粒子を推進するのに用いることができる。スクリーンは、それらが大きな凝集体で受容細胞へ送達されないように粒子を分散させる。送達装置と送達される細胞の間に介在するスクリーンは、送達凝集体の大きさを減少させ、大きすぎる推進により受容細胞上に与えられる傷害を減らすことにより高頻度の形質転換に貢献しうると考えられる。
【0142】
微粒子銃の技術は広く応用可能であり、実質的にいずれの植物種を形質転換するのに用いられてもよい。
【0143】
アグロバクテリウム介在送達は、遺伝子座を植物細胞に導入する別の広い応用可能な系である。この技術の有利な点は、DNAが植物組織の全体に導入され、それによりプロトプラストから無傷の植物の再生についての必要性を回避することができることにある。現在のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、アグロバクテリウムと同様に大腸菌で複製することができ、利便的な操作を可能にする(Kleeら,1985)。さらに、アグロバクテリウム介在遺伝子送達ベクターにおける最新の技術的な進歩は、ベクター内の遺伝子の配置と制限酵素部位を改良して多様なポリペプチドをコードする遺伝子を発現できるベクターの構築を容易にした。公表されたベクターは、挿入されたポリペプチドをコードする遺伝子の直接発現のために、プロモーターに挟まれた利便的な複数リンカー領域およびポリアデニル化部位を有する。加えて、アーム化された(armed)およびアーム化されていない(disarmed)Ti遺伝子の両方を含むアグロバクテリウムが形質転換のために用いられうる。
【0144】
アグロバクテリウム介在形質転換が効率的である植物株において、それは遺伝子座送達の簡便かつ明確な性質による選択の方法である。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム介在植物組み込みベクターの使用は、当該技術分野で周知である(Fraleyら,1985;米国特許第5,563,055号)。
【0145】
植物プロトプラストの形質転換はまた、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組み合わせに基づく方法を用いて行うことができる(Potrykusら,1985;Omirullehら,1993;Frommら,1986;Uchimiyaら,1986;Marcotteら,1988を参照)。植物の形質転換と外部遺伝子エレメントの発現は、Choiら(1994)とEllulら(2003)中で例示される。
【0146】
多くのプロモーターは、選択可能なマーカー、害虫耐性、病害耐性、栄養価向上の遺伝子、および農業目的のためのいずれか他の遺伝子を含むが、これらだけに限定されない目的遺伝子のいずれかについての植物遺伝子の発現に関する有用性を有する。ニンジン植物遺伝子発現に有用な構成的プロモーターの例は、単子葉植物(例えば、Dekeyserら,1990;TeradaとShimamoto,1990を参照)を含む、ほとんどの植物組織で構成的な高レベル発現を付与するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)P−35Sプロモーター(例えば、Odellら,1985を参照);CaMV35Sプロモーターの縦列重複バージョン、亢進35Sプロモーター(P−e35S)、ノパリン合成プロモーター(Anら,1988)、オクトピン合成プロモーター(Frommら,1989);ならびに米国特許第5,378,619号に記載のゴマノハグサモザイクウイルス(P−FMV)プロモーターおよびP−FMVのプロモーター配列が縦列に重複されるFNVプロモーターの亢進バージョン(P−eFMV)、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター、サトウキビバチリホルム(bacilliform)ウイルスプロモーター、ツユクサ黄色斑紋ウイルスプロモーターおよびその他の植物細胞で発現することが知られている植物DNAウイルスプロモーターを含むが、これらだけに限定されない。
【0147】
環境、ホルモン、化学物質、および/または発生シグナルに応答して調節される多様な植物遺伝子プロモーターは、植物細胞において操作可能に連結された遺伝子の発現に用いることができ、(1)熱(Callisら,1988)、(2)光(例えば、エンドウマメrbcS−3Aプロモーター、Kuhlemeierら,1989;トウモロコシrbcSプロモーター、SchaffnerとSheen,1991;またはクロロフィルa/b結合タンパク質プロモーター、Simpsonら,1985)、(3)アブシジン酸のごときホルモン(Marcotteら,1989)、(4)創傷(例えば、wunl、Siebertzら,1989);または(5)ジャスモン酸メチル、サリチル酸、またはセーフナー(safener)のごとき化学物質により調節されるプロモーターを含む。器官特異的プロモーターを用いることもまた、有利な点でありうる(例えば、Roshalら,1987;Schernthanerら,1988;Bustosら,1989)。
【0148】
本発明のニンジン株に導入されうる典型的な核酸は、例えば、別の種に由来するDNA配列または遺伝子、あるいは同一種を起源とするかまたは同一種に存在するが、従来の繁殖または育種技術よりも遺伝子改変方法により受容細胞に導入される遺伝子または配列をも含む。しかし、用語「外因性」はまた、形質転換される細胞に通常存在しないか、またはDNA断片もしくは遺伝子を形質転換する際に見出されるように、単に形態、構造等に存在しない遺伝子を意味するか、あるいは通常存在し、天然の発現パターンとは異なる様式で発現すること、例えば、過剰発現することが望まれる遺伝子を意味するものとされる。それゆえ、用語「外因性」遺伝子またはDNAは、同様の遺伝子がすでにかかる細胞に存在しうるかどうかにかかわらず、受容細胞に導入される遺伝子またはDNA断片のいずれかを意味するものとされる。外因性DNAに含まれるDNAのタイプは、すでに植物細胞に存在するDNA、別の植物に由来するDNA、異なる生物に由来するDNA、あるいは遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列、または遺伝子の合成もしくは改変バージョンをコードするDNA配列のごとき外部で生成されたDNAを含むことができる。
【0149】
何千といかないまでも何百もの異なる遺伝子が知られ、本発明によりニンジン植物に導入される可能性がある。ニンジン植物へ導入するために選ばれうる特定の遺伝子およびそれに対応する表現型の非限定的な例は、Bacillus thuringiensis(B.t.)遺伝子のごとき昆虫耐性、真菌病防除の遺伝子のごとき害虫耐性、グリホセート耐性を付与する遺伝子のごとき農薬耐性に対する1つまたはそれ以上の遺伝子、ならびに収率、栄養価向上、環境もしくはストレス耐性、または植物生理機能、増殖、発生、形態、もしくは植物生成物におけるいずれかの所望の変化のごとき品質改善に対する遺伝子を含む。例えば、構造遺伝子は、出典明示により本明細書に援用されるWO99/31248、出典明示により本明細書に援用される米国特許第5,689,052号、出典明示により本明細書に援用される米国特許第5,500,365号および第5,880275号に記載されるごときBacillus昆虫防除タンパク質遺伝子を含むが、これだけに限定されない昆虫耐性を付与する遺伝子のいずれかを含む。別の具体例において、構造遺伝子は、出典明示により全体を本明細書に援用される米国特許第5,633,435号に記載されるアグロバクテリウム株CP4グリホセート耐性EPSPS遺伝子(aroA:CP4)、または出典明示により全体を本明細書に援用される米国特許第5,463,175号に記載されるグリホセート酸化還元酵素遺伝子(GOX)を含むが、これに限定されない遺伝子により付与される除草剤グリホセートに対して耐性を付与することができる。
【0150】
代替的に、DNAコーディング配列は、内在性遺伝子の発現を標的とする阻害、例えば、アンチセンス−または共抑制−介在のメカニズムを介して引き起こす非翻訳可能RNA分子をコードすることによりこれらの表現型に影響を与えることができる(例えば、Birdら,1991を参照)。RNAはまた、所望の内在性mRNA産物を切断するように改変された触媒RNA分子(すなわち、リボザイム)でありうる(例えば、GibsonとShillito,1997を参照)。それゆえ、目的の表現型または形態変化を表すタンパク質またはmRNAを生成する遺伝子のいずれかは、本発明の実施において有用である。
【0151】
多くの有用な形質は、遺伝子形質転換技術により導入されるものである。ニンジンの遺伝子形質転換方法は、当業者に知られている。例えば、ニンジンの遺伝子形質転換について記載された方法は、エレクトロポレーション、電気形質転換(electrotransformation)、微粒子銃、アグロバクテリウム介在形質転換、プロトプラストの直接DNA取り込み形質転換および炭化ケイ素介在形質転換を含む。例えば、Khachatourians,G.ら編、Transgenic Plants and Crops, Marcel Dekker,Inc.(2002)を参照。
【0152】
メンデル遺伝により単一遺伝子座を子孫に受け渡す、安定に形質転換されるニンジン植物の産生技術が当該技術分野に周知であるため、導入遺伝子は直接植物に形質転換される必要がないことが当業者に理解される。それゆえ、かかる遺伝子座は、当業者間で周知である一般的な植物育種技術により親植物から子孫植物まで受け渡されてもよい。本発明によりニンジン植物に導入されうる形質の例は、例えば、雄性不稔、除草剤耐性、病害耐性、害虫耐性、および栄養価の向上を含む。
【0153】
PCRとサザンハイブリダイゼーションは、一定の遺伝子座の存在、次いでその遺伝子座の変換の確認に用いられうる分子技術の2つの例である。
【0154】
上記で引用される全ての参考文献、特許文献、またはその他の公表文献は、出典明示により全体が本明細書に援用される。
【0155】
G.リコピン含有量の測定
各根のリコピン分析では、各根端を細かく刻み、重さを測定し、次いで同等量のR/O水で微細なスラリーまで細かくする。副サンプル(約1グラム)を褐色の抽出バイアルに測り分ける。アセトン、メタノールおよびヘキサンの抽出混合物をバイアルに添加する。カロテノイドを、IKA T25Ultra−Turraxホモジェナイザーを用いて破砕により抽出する。ヘキサンを、1M塩化ナトリウム水溶液の添加、次いで遠心分離によりその他の溶媒から分離する。ヘキサン層をキュベットに移し、Cary 1 spectrophotometer(カリフォルニア州、パロアルトのVarian,Inc.)で503nmの吸光度を読み取ることによりリコピンを測定する。
【0156】
リコピン含有量の大量の根の分析では、15から20個のニンジンを細かく刻み、重さを測定し、次いで同等量のR/O水で微細なスラリーまで細かくする。副サンプル(約1グラム)を褐色の抽出バイアルに測り分ける。アセトン、メタノールおよびヘキサンの抽出混合物をバイアルに添加する。カロテノイドを、IKA T25Ultra−Turraxホモジェナイザーを用いて破砕により抽出する。ヘキサンを、1M塩化ナトリウム水溶液の添加、次いで遠心分離によりその他の溶媒から分離する。リコピンを、Agilent 1100HPLCシステムにてヘキサン層を分析することにより測定する。15マイクロリットルのヘキサン抽出物を、Whatman Partisil 5 ODS−3 WVSカラムに注入し、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、水(765、90、162、36)の等張溶媒混合物を用いて分離した。リコピンを、503nmにおいてAgilent G1315Bダイオードアレイ検出器(Agilent/Hewlett Packard)を用いて定量した。
【0157】
H.定義
本明細書中の記載と表において、多くの用語が用いられている。明細書および特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するため、以下の定義が提供される:
【0158】
A:用語「含む」またはその他の冒頭の単語が併せて用いられる場合、単語「a」および「an」は「1つまたはそれ以上」を意味する。
【0159】
対立遺伝子:遺伝子座の1つまたはそれ以上の代替的な形態のいずれかであって、その対立遺伝子の全てが1つの形質または性質に関連する。二倍体の細胞または生物において、所定の遺伝子の2つの対立遺伝子は、一組の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0160】
戻し交配:育種者が交雑子孫、例えば、第一世代の交雑品種(F)を、交雑子孫の親の1つへ戻して繰り返し交配する工程。戻し交配は、1つまたはそれ以上の単一遺伝子座の変換を1つの遺伝子バックグラウンドから別のものへ導入するのに用いられうる。
【0161】
交配:2つの親植物の掛け合わせ。
【0162】
他家受粉:異なる植物に由来する2つの配偶子の結合による受粉
【0163】
二倍体:2組の染色体を有する細胞または生物
【0164】
去勢:雄性不稔を付与する細胞質性もしくは核遺伝子性因子または化学物質を用いる植物雄性生殖器官の除去または器官の不活性化。
【0165】
酵素:生物学的な反応において触媒として作用することができる分子。
【0166】
交雑品種:2つの非同系植物の交配の第一世代子孫。
【0167】
遺伝子型:細胞または生物の遺伝子構成。
【0168】
半数体:二倍体における2組の染色体のうちの1組を有する細胞または生物。
【0169】
連鎖(Linkage):同一染色体上の対立遺伝子が、それらの移行が独立している場合に、予想される以上に一緒に分離する傾向にある現象。
【0170】
マーカー:環境分散成分なし、すなわち、1の遺伝率により、好ましくは共優性様式で遺伝される(二倍体ヘテロ接合体の遺伝子座における両方の対立遺伝子が容易に検出できる)、容易に検出できる表現型。
【0171】
表現型:性質が遺伝子発現の出現である、細胞または生物の検出可能な性質。
【0172】
量的形質遺伝子座(QTL):量的形質遺伝子座(QTL)は、通常では連続して分配される数的に表現可能な形質をある程度まで制御する遺伝子座を意味する。
【0173】
再生:組織培養からの植物の発生。
【0174】
自家受粉:同一植物の葯から柱頭までの花粉の移行。
【0175】
単一遺伝子座が変換された(変換)植物:戻し交配と呼ばれる植物育種技術により発生される植物であって、ニンジン品種の基本的な全ての所望の形態学的および生理学的な性質が、戻し交配技術を介しておよび/または遺伝子形質転換により、品種に移行される単一遺伝子座の性質に加えて戻される植物。
【0176】
実質的に同等な:比較すると、平均値と統計的な有意差(例えば、p=0.05)を示さない性質。
【0177】
四倍体:4組の染色体を有する細胞または生物。
【0178】
組織培養:同一のもしくは異なるタイプの単離された細胞または植物の部分へと組織されたかかる細胞の集合物を含む組成物。
【0179】
導入遺伝子:形質転換によりニンジン植物のゲノムに導入された配列を含む遺伝子座。
【0180】
三倍体:3組の染色体を有する細胞または生物。
【0181】
本明細書で用いられるように、「コントロール」ニンジンは、ホンコウキントキ、インビクタ(Invicta)、およびシンキキントキからなる群から選択されるニンジン株である。好ましい態様において、ホンコウキントキはコントロールニンジン株である。コントロールニンジン株はまた、本開示によるニンジン株と同一環境条件下で栽培される。
【0182】
本明細書で用いられるように、「開放受粉」は、自家および他家受粉の混合から育種可能な植物を意味する。例えば、開放受粉された植物は自家または同系受粉および他家受粉することができる。
【0183】
本明細書で用いられるように、「細胞質雄性不稔」は、植物が花粉を産生できないため、自家または同系受粉から種子を作成することはできないが、他家受粉から育種することができる植物を意味する。
【0184】
本明細書で用いられるように、「連鎖(Linkage)」は、同一染色体上の対立遺伝子が、それらの移行が独立している場合、予想される以上に一緒に分離する傾向にある現象である。
【0185】
本明細書で用いられるように、「ナント」は、世界中で栽培されている主なニンジン品種の1つを意味する。ナント品種は、一般に、根冠部に弱く接触する薄い葉を有するニンジン株として特徴付けられる。ナントの根は、その長さに沿って均一な直径(約1−2インチ、または約2.5cm−5cmの間)で中程度に長い(約6−7インチ、または約2.5cm−5cmの間)。根は、さらに、成熟時に丸い先端部を有し、極めて着色した芯を示し、比較的多肉性で脆弱な根を有する。ナントの根はまた、早期に成熟し(播種後約55日と約100日の間)、根は糖度がより高いが、テルペノイドと乾燥物質が平均より低く、これが根を長期保存に不向きにする。さらに、根の表面が多くの他の品種より薄く、根痕となりやすい。
【0186】
本明細書で用いられるように、「赤色雄性ニンジン」は、雌性レシピエントニンジン植物を受精させる花粉の供給源を提供する、増加したリコピン含有物を有するニンジン植物を意味する。
【0187】
本明細書で用いられるように、「オレンジ雄性ニンジン」は、雌性レシピエントニンジン植物を受精させる花粉の供給源を提供する、低いか、または検出できないレベルのリコピンを含む根を有するニンジン植物を意味する。例えば、オレンジ雄性ニンジンは、約40ppm、約30ppm、約20ppm、または約10ppmより少ないリコピンを有する根を産生する。オレンジ雄性ニンジン株の例は、S−D813B(Seminis Vegetable Seeds,Inc.)、B3640M、B3080M、B3475、B8080、B5280、B6333、B5238、およびB6274(各々USDAから利用可能である)を含む。
【0188】
本明細書で用いられるように、「雌性親」は、雄性ドナー株に由来する花粉のレシピエントであるニンジン植物を意味する。雌性親は、花粉のレシピエントであるニンジン植物のいずれかでありうる。かかる雌性親は、例えば、細胞質雄性不稔の結果として雄性不稔でありうる。細胞質雄性不稔は、葯が開花前に退化し萎む、茶色の葯のタイプであり、S−細胞質および少なくとも2つの相補作用を有する劣性遺伝子に基づきうる。細胞質雄性不稔はまた、5つのさらなる花弁が葯に置き代わる花弁タイプであり、S−細胞質および少なくとも2つの相補作用を有する優性遺伝子から生じうる。
【0189】
本明細書で用いられるように、「マーカー」は、一塩基多型(SNP)、断片化増幅多型配列(CAPS)、増幅断片長多型(AFLP)、制限酵素断片長多型(RFLP)、単純反復配列(SSR)、またはランダム増幅多型DNA(RAPD)のごとき、少なくとも1つの表現型または多型の存在に関する指標である。マーカーは、環境分散成分なし、すなわち、1の遺伝率をもって、好ましくは、共優性様式(遺伝子座の両方の対立遺伝子が容易に検出可能である)で遺伝される。本明細書で用いられる「核酸マーカー」は、多型、表現型、またはその両方を検出するマーカーとなりうる核酸分子を意味する。
【0190】
H.寄託情報
寄託は、上記開示されたニンジン株について行われ、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110−2209に関して特許請求の範囲に列挙された。特許の発行により、寄託による全ての制限は除かれ、寄託は37C.F.R.§1.801−1.809の全ての要件を満たすものとされる。寄託は、30年間、もしくは最後の依頼後5年、または特許の有用な期間のいずれか長い期間寄託機関において維持され、必要ならばその期間に置き換えられる。
【0191】
ニンジン交雑品種から得られた種子サンプルは、以下のATCC受入番号で寄託された:交雑ニンジン品種710313(D.carotae SVR 0710 0313)の種子は、(2006年10月4日に寄託された)ATCC受入番号PTA−7904で寄託された;交雑ニンジン品種710311(D. carotae SVR 0710 0311)の種子は、(2006年10月4日に寄託された)ATCC受入番号PTA−7907で寄託された;交雑ニンジン品種710319(D.carotae SVR 0710 0319)の種子は、(2006年10月4日に寄託された)ATCC受入番号PTA−7906で寄託された;交雑ニンジン品種710316(D.carotae SVR 0710 0316)の種子は、(2006年10月4日に寄託された)ATCC受入番号PTA−7905で寄託された;およびニンジン株710305(D.carotae SVR 0710 0305)の種子は、(2006年10月4日に寄託された)ATCC受入番号PTA−7908で寄託された。交雑ニンジン品種710304(D.carotae SVR 0710 0304)の種子は、(2007年1月10日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8121で寄託された;交雑ニンジン品種710310(D.carotae SVR 0710 0310)の種子は、(2007年1月10日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8122で寄託された;交雑ニンジン品種710303(D.carotae SVR 0710 0303)の種子は、(2007年1月10日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8123で寄託された;ニンジン株RN71−4904C(表記71 0302とも示される)の種子は、(2007年9月25日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8648で寄託された;ニンジン株RF71−4911Aの種子は、(2007年9月21日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8642で寄託された;ニンジン株RF71−4912Aの種子は、(2007年9月21日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8646で寄託された;ニンジン株RIF71−4966Cの種子は、(2007年9月25日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8651で寄託された;ニンジン株RIF71−4967Bの種子は、(2007年9月25日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8650で寄託された;ニンジン株RIF71−4968Bの種子は、(2007年9月25日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8649で寄託された;ニンジン株RN71−4963Cの株は、(2007年9月25日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8647で寄託された;交雑ニンジン品種0710 0325(D.carotae SVR 0710 0325)の種子は、(2007年9月21日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8643で寄託された;交雑ニンジン品種0710 0339(D.carotae SVR 0710 0339)の種子は、(2007年9月21日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8645で寄託された;および交雑ニンジン品種0710 0346(D.carotae SVR 0710 0346)の種子は、(2007年9月21日に寄託された)ATCC受入番号PTA−8644で寄託された。
【0192】
前記発明は、明確と理解のために例示と実施例によりある程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲のみに限定された本発明の範囲内で一定の変化と改変が行われてもよいことは明白である。
【0193】
本明細書で引用された全ての文献は、出典明示により本明細書に援用される。
【0194】
参考文献
以下の文献は、それらが一般的な方法または本明細書で説明される方法を補足する詳細を提供する程度まで、出典明示により本明細書に特に援用される。
米国特許第5,463,175号
米国特許第5,500,365号
米国特許第5,563,055号
米国特許第5,633,435号
米国特許第5,689,052号
米国特許第5,880,275号
米国特許第5,378,619号
WO99/31248
Anら,Plant Physiol.,88:547,1988
Birdら,Biotech.Gen.Engin.Rev.,9:207,1991
Bustosら,Plant Cell,1:839,1989
Callisら,Plant Physiol.,88:965,1988
Choiら,Plant Cell Rep.,13:344−348,1994
Dekeyserら,Plant Cell,2:591,1990
Ellulら,Theor.Appl.Genet.,107:462−469,2003
EP534858
Fraleyら,Bio/Technology,3:629−635,1985
Frommら,Nature,312:791−793,1986
Frommら, Plant Cell,1:977,1989
GibsonとShillito,Mol.Biotech.,7:125,1997
HanschkeとGabelman,Proc.Amer.Soc.Hort.Sci.,82:341−350,1963
Kleeら,Bio−Technology,3(7):637−642,1985
Kuhlemeierら,Plant Cell,1:471,1989
Marcotteら,Nature,335:454,1988
Marcotteら,Plant Cell,1:969,1989
Matthysseら,Infect.Immunol.22:516−522,1978
Nothnagel,Plant Breeding,109:67−74 1992
Odelら,Nature,313:810,1985
Omirullehら,Plant Mol.Biol.,21(3):415−428,1993
Potrykusら,Mol.Gen.Genet.,199:183−188,1985
Roshalら,EMBO J.,6:1155,1987
SchaffnerとSheen,Plant Cell,3:997,1991
Schernthanerら,EMBO J.,7:1249,1988
Siebertzら,Plant Cell,1:961,1989
Simpsonら,EMBO J.,4:2723,1985
SteinとNothnagel,Plant Breeding,114:1−11,1995
TeradaとShimamoto,Mol.Gen.Genet.,220:389,1990.
Thompson,Proc.Amer.Soc.Hort.Sci.,78:332−338,1961.
Uchimiyaら,Mol.Gen.Genet.,204:204,1986
Wangら,Science,280:1077−1082,1998.
Williamsら,Nucleic Acids Res.,1 8:6531−6535,1990

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根が、約110ppmから約250ppmまでの平均リコピン含有量および約11°ブリックスから約20°ブリックスまでの平均ブリックス含有量を含む、ニンジン植物。
【請求項2】
根が、約110ppmから約175ppmまで、または約110ppmから約160ppmまでの平均リコピン含有量を示す、請求項1記載の植物。
【請求項3】
根が、ニンジン品種ナトリ−レッドの平均リコピン含有量の少なくとも約110%、115%、120%、または130%である平均リコピン含有量を示す、請求項1記載の植物。
【請求項4】
根の分割(root splitting)または抽薹(bolting)に対する耐性をさらに含む、請求項1記載の植物。
【請求項5】
根が、約110ppmと約250ppmの間の平均リコピン含有量および約11°ブリックスと約20°ブリックスの間の平均ブリックス含有量を含む、請求項1記載の植物の根の容器。
【請求項6】
前記容器が、少なくとも100個の根を含む、請求項5記載のニンジンの根の容器。
【請求項7】
前記容器が、バッグ、箱、パケット、ポーチ、缶、およびバケツからなる群から選択される、請求項5記載のニンジン種子の容器。
【請求項8】
前記種子の75%、85%または95%より多くのものが、増加したリコピン含有量を有する、請求項5記載のニンジン根の容器。
【請求項9】
請求項1記載の植物のニンジン種子。
【請求項10】
前記種子が、細胞質雄性不稔の親ニンジンおよび雄性親の間の交配から得られる、請求項9記載のニンジン種子の容器。
【請求項11】
前記種子が、交雑ニンジンの種子である。請求項10記載のニンジン種子の容器。
【請求項12】
種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8643で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種0710 0325;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8644で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種0710 0339;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8645で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種0710 0346;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−7904で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710313;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−7908で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710305;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−7905で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710316;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−7906で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710319;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−7907で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710311;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8121で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710304;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8122で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710310;ならびに種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8123で寄託されている、赤色ニンジン交雑品種710303からなる群から選択される交雑品種の植物としてさらに定義される、請求項1記載の植物。
【請求項13】
請求項1記載の植物の種子。
【請求項14】
種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8647である、RN71−4963C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8648である、RN71−4904C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8642で寄託されている、RF71−4911A;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8646で寄託されている、RF71−4912A;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8651で寄託されている、RIF71−4966C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8650で寄託されている、RIF71−4967B;ならびに種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8649で寄託されている、RIF71−4968Bからなる群から選択される品種のニンジン植物の細胞。
【請求項15】
種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8647である、RN71−4963C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8648で寄託されている、RN71−4904C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8642で寄託されている、RF71−4911A;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8646で寄託されている、RF71−4912A;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8651で寄託されている、RIF71−4966C;種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8650で寄託されている、RIF71−4967B;ならびに種子のサンプルがATCC受入番号PTA−8649で寄託されている、RIF71−4968Bからなる群から選択される品種の植物であって、前記植物が請求項14に記載の細胞を含む植物。
【請求項16】
請求項15記載の植物の植物部分。
【請求項17】
前記部分が、葉、果実、花粉、胚珠および細胞からなる群から選択される、請求項16記載の植物部分。
【請求項18】
請求項15記載のニンジン植物の全ての生理学的および形態学的性質を有する、ニンジン植物、またはその部分。
【請求項19】
請求項14に記載の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項20】
胚、分裂組織、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌しべ、花、種子および茎からなる群から選択される植物部分に由来する細胞またはプロトプラストを含む、請求項19記載の組織培養物。
【請求項21】
請求項15記載の植物をそれ自体または第2のニンジン植物と交配させることを含む、ニンジン種子を産生する方法。
【請求項22】
請求項15記載の植物が、雌性親である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項15記載の植物が、雄性親である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
請求項21記載の方法により産生されるF交雑品種の種子。
【請求項25】
請求項24記載の種子を栽培することにより産生される植物。
【請求項26】
請求項15記載の植物に由来する植物の種子を産生する方法であって、
(a)請求項15記載の植物を、第2のニンジン植物と交配させ;次いで
(b)播種して前記請求項15記載の植物に由来する植物を作成する
工程を含む方法。
【請求項27】
(c)前記種子から栽培した植物をそれ自体または第2のニンジン植物と交配させて種子を得て;
(d)前記種子を栽培して後の世代の子孫植物を得;次いで
(e)(c)および(d)の交配および栽培を繰り返してさらに生じるニンジン種子を作成する
工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ニンジン植物を栄養繁殖(vegetatively propagating)させる方法であって、
(a)請求項15記載の植物から繁殖させることが可能な組織を採取し;
(b)前記組織を栽培して増殖した苗条を得;次いで
(c)前記増殖した苗条を植えて根付いた植物体を得る
工程を含む、方法。
【請求項29】
前記根付いた植物体から植物を栽培することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項15記載の植物に所望の形質を導入する方法であって、
(a)請求項15記載の植物を、所望の形質を含む第2のニンジン植物と交配させてF子孫を産生し;
(b)所望の形質を含むF子孫を選別し;
(c)選別されたF子孫を、前記請求項15記載の植物と同一の遺伝子型の植物と交配させて戻し交配の子孫を産生し;
(d)所望の形質を含む戻し交配の子孫を選別し;次いで
(e)工程(c)および(d)を連続して3回またはそれ以上繰り返して所望の形質を含む選別された4回またはそれ以上の戻し交配の子孫を産生すること
を含む方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法により産生されたニンジン植物。
【請求項32】
付加された所望の形質を含むニンジン植物を産生する方法であって、請求項15記載の植物に所望の形質を付与する導入遺伝子を導入することを含む方法。
【請求項33】
請求項15記載の植物の遺伝子型を調べる方法であって、前記植物から核酸のサンプルを得、次いで前記核酸において複数の遺伝子多型を検出することを含む方法。
【請求項34】
複数の遺伝子多型を検出する工程の結果を電子計算機可読媒体上に貯蓄する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
(a)成熟するまで栽培された請求項15記載の植物を得;次いで
(b)前記植物からニンジンを採取すること
を含む、ニンジンを産生する方法。

【公表番号】特表2010−506597(P2010−506597A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533533(P2009−533533)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081819
【国際公開番号】WO2008/049071
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(500195035)セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド (17)
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
【Fターム(参考)】