説明

増幅または欠失した染色体領域の検出

【課題】種々の疾患に関連する新たな染色体異常の同定のためのin situ ハイブリダイゼーション方法を提供する。
【解決手段】染色体に特異的な標識化したプローブのマッピングしたライブラリーを用意し、プローブがサンプル中の標的ポリヌクレオチド配列と選択的に結合してハイブリダイゼーション複合体を形成する条件下で、患者からの染色体サンプルとライブラリーとを接触させ、ハイブリダイゼーション複合体を検出し、それぞれの複合体のコピー数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め選択した染色体における染色体異常を検出するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染色体異常は、遺伝的障害、退行性疾患およびガンとしばしば関連している。特に、染色体全体または染色体断片のコピーの欠失または増倍、並びにゲノムの特定の領域の高レベルの増幅は、ガンにおいて共通に発生するものである。例えば、Smith ら、Breast Cancer Res. Treat., 18:補遺 1: 5-14 (1991) 、van deVijerとNusse, Biochim. Biophys. Acta. 1072: 33-50 (1991) 、Satoら、Cancer. Res., 50: 7184-7189 (1990)を参照することができる。実際、ガン原遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子をそれぞれ含むDNA配列の増幅および欠失は、しばしば腫瘍化を特徴とする。Dutrillauxら、Cancer Genet. Cytogenet., 49:203-217 (1990)。明らかに、増幅および欠失した領域の同定、並びに関与する遺伝子のクローン化は、腫瘍化の研究およびガン診断学の発展の両者にとって非常に重要である。
【0003】
増幅または欠失した染色体領域の検出は、伝統的には細胞遺伝学によって行われていた。染色体へのDNAのパッキングは複雑であるため、細胞遺伝学的手法による分析は、約10Mb(ギムザ染色した染色体のバンドの幅に略等しい)より大きい領域に限定されていた。多数の転位および他の遺伝的変化を有する複雑な核型においては、伝統的な細胞遺伝学的分析は、殆ど有用性のあるものではなかった。細胞遺伝学的情報は、欠如したものであるか、解釈することのできないものであるためである。Teyssier, J. R., Cancer Genet. Cytogenet., 37: 103(1989) を参照することができる。更に、従来の細胞遺伝学的なバンドの解析は時間がかかり、多大の労力を要し、しばしば困難または不可能なものであった。
【0004】
更に最近では、サザンブロットによって染色体中の与えられたDNA配列の量を評価するために、クローン化したプローブが使用されている。この方法は、ゲノムが、有用な核型の情報が失われる程に激しく再配置されている場合でも有効である。しかしながら、サザンブロットは、DNA配列のコピー数の大まかな見積を与えるのみであり、染色体内でのその配列の局在(localization)についての情報は何ら与えるものではない。
【0005】
比較ゲノムハイブリダイゼーション(comparative genomic hybridization 、CGH)は、増幅/欠失配列の存在および定位を同定するための、より最近の手法である。Kallioniemi ら、Science, 258: 818 (1992)を参照することができる。CGHによれば、サザンブロットと同様に、ゲノムの再配置に拘わらず、増幅および欠失が明らかにされる。加えて、CGHによれば、サザンブロットより定量的なコピー数の見積が提供され、更に正常な染色体における増幅または欠失した配列の局在に関する情報も提供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、欠失または増幅の検出が、1コピーの配列の喪失または獲得に限定されている限り、従来技術の方法による分解能は限定されたものとなろう。正常細胞と腫瘍細胞とが混合したサンプルであっても、上昇した感度、影響を受けるDNA配列のより正確な局在位置、およびコピー数のより定量的な見積を提供する新しい技術が特に望ましい。本発明は、このような利益および他の利益を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明によれば、予め選択した染色体における染色体異常(例えば、欠失および増幅)を検出するための方法および組成物が提供される。この方法は、染色体に特異的な標識化したプローブのマッピングしたライブラリーを用意し、プローブがサンプル中の標的ポリヌクレオチド配列と選択的に結合してハイブリダイゼーション複合体を形成する条件下で、患者からの染色体サンプルとライブラリーとを接触させ、ハイブリダイゼーション複合体を検出し、それぞれの複合体のコピー数を決定することを含む。
【0008】
選択した染色体がヒト染色体20または17である場合は、好適なライブラリーは、それぞれ表1および表2に示すようなものである。この方法は、典型的には、蛍光によるin situ ハイブリダイゼーション(fluorescent in situ hybridization )を使用して実施し、ジゴキシゲニン(digoxigenin )またはビオチンを用いてプローブを標識化する。プローブを使用し、サンプル中の間期核(interphase nuclei )における標的配列を検出することができる。予め選択した染色体のセントロメア(動原体)内の配列に選択的に結合する参照プローブを、対照(コントロール)として使用することができる。
【0009】
更に、ここで開示される特定の異常を検出する方法が提供される。特に、ヒト染色体20上の位置FLpter 0.85 付近における増幅を検出する方法が開示される。この方法は、プローブが標的配列と安定なハイブリダイゼーション複合体を形成する条件下で、患者からの染色体サンプルと、ヒト染色体20上の位置FLpter 0.85付近における標的ポリヌクレオチド配列とそれぞれ選択的に結合する1以上の標識化した核酸プローブから本質的になる組成物とを接触させ、ハイブリダイゼーション複合体を検出することを含む。使用するプローブは、好ましくは、cS20.10A1、cS20.10B5 、cS20.10H1 またはcS20.10E2 由来のポリヌクレオチド配列を含む。
【0010】
更に、ヒト染色体20上のFLpter 0.85 付近における標的ポリヌクレオチド配列と選択的に結合する核酸プローブを含む組成物が提供される。プローブは、本発明の方法での使用のために標識化され得る。
【0011】
更に、本発明によれば、ヒト染色体20上のFLpter 0.85 付近における増幅の検出のためのキットが提供される。このキットは、ヒト染色体20上のFLpter 0.85 付近における標的ポリヌクレオチド配列と選択的に結合する核酸プローブを含む区画部分(compartment) を含む。プローブは、好ましくは、cS20.10A1 、cS20.10B5 、cS20.10H1 およびcS20.10E2 由来のポリヌクレオチド配列を含む。これは、テキサスレッドアビジンおよびビオチン標識化ヤギ抗アビジン抗体を更に含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
ここで使用するように「染色体サンプル」は、以下に記載する標準的なin situ ハイブリダイゼーションの方法のために調製される組織または細胞のサンプルを指す。サンプルは、個々の染色体が実質的に無傷のまま保存され、典型的には標準的な技術によって調製された中期延展体(metaphase spread)または間期核(interphase nuclei )を含むように調製される。
【0013】
ここで使用するように「プローブ」は、1以上の種類の化学結合を介して、通常は水素結合の形成を介して、相補的な標的細胞の遺伝子配列に結合し得るポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)として定義する。当業者により、プローブは、典型的には、ハイブリダイゼーション条件の厳格度(stringency)に応じて、プローブ配列との完全な相補性を欠如する標的配列と実質的に結合し得ることが理解されよう。プローブは、好ましくはアイソトープを用いて直接標識化するか、または例えばストレプトアビジン複合体が後に結合し得るビオチンを用いて間接的に標識化する。プローブの存在または不存在について検定を行うことにより、標的の存在または不存在を検出することができる。この発明のプローブは、典型的には約20kb〜約60kb、通常は約30〜50kbとし得る。
【0014】
「標的ポリヌクレオチド配列とそれぞれ選択的に結合する1以上のプローブから本質的になる組成物」は、標的配列に実質的に結合し、標的染色体またはゲノム内の他の部分には全く結合せず、標的配列の存在または不存在の検出を可能とする1以上のプローブの集合体を指す。この種の組成物は、標的配列の検出に実質的に影響を与えない他の核酸を含むことができる。この種の付加的な核酸には、染色体中のセントロメア内の配列に特異的な参照プローブが含まれる。
【0015】
「実質的に結合する」とは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間の相補的なハイブリダイゼーションを指し、標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出を達成するために、ハイブリダイゼーション媒体の厳格度を低減させることにより適応し得る少数のミスマッチを包含する。
【0016】
「ハイブリダイズ」は、相補的な塩基の対合を介する2つの一本鎖ヌクレオチドの結合を指す。
【0017】
「核酸」は、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、特に限定しない限り、天然に存在するヌクレオチドと類似する様式で機能することのできる天然ヌクレオチドの公知のアナログを包含する。
【0018】
当業者により、ここに記載する特定のプローブの正確な配列をある程度修飾して、開示されるプローブと「実質的に同一」でありながら、標的配列に実質的に結合する能力を保持するプローブを生成し得ることが認識されよう。この種の修飾は、本文中の個々のプローブを参照することにより特に包含される。ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメーターを使用する以下に記載する方法を使用して参照配列と比較した場合に、少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%の配列の同一性を有する配列を含むことを意味する。
【0019】
以下に記載するように最高に対応させて整列させた場合に、2つの配列におけるヌクレオチドの配列が同一である場合は、2つの核酸配列は「同一である」という。「に対して相補的」という用語は、ここでは、相補的な配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部と同一であることを意味する。
【0020】
2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの間の配列の比較は、典型的には、「比較ウインドウ(comparison window )」上での2つの配列の配列(配列順序)を比較し、配列類似性の局所領域を同定し、比較することにより行う。ここで使用するように、「比較ウインドウ」は、少なくとも約20、通常は約50〜約200、より通常には約100〜約150の隣接する部分の断片を指し、この中で、2つの配列を最適に整列させた後に、ある配列と、同じ数の隣接する部分からなる参照配列とを比較することができる。
【0021】
比較のための配列の最適な整列は、Smith とWaterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needlemen とWunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1979)の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson とLipman, Proc.Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444 (1988) の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータでの実行により行うことができる。これらの参照文献を、援用して本文の一部とする。
【0022】
「配列同一性の百分率」は、比較ウインドウ上で最適に整列させた2つの配列を比較することにより決定するが、その際には、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は、最適に整列させた2つの配列について、参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含むものとし得る。この百分率は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両者の配列中に存在する位置の数を求めて、合致する位置の数を出し、合致した位置の数を、比較のウインドウ内の位置の合計の数で除算し、この結果に100を乗算して配列同一性の百分率を出すことにより計算する。
【0023】
ヌクレオチド配列が実質的に同一であることを示す他の場合は、2つの分子が、厳格条件(stringent conditions)下で同一の配列にハイブリダイズする場合である。厳格条件は配列依存性であり、異なる状況では異なるものとなろう。一般に、厳格条件は、特定されたイオン強度およびpHにおいて、特定の配列についての熱融解点(Tm)より約5℃低くなるよう選択する。Tmは、標的配列の50%が、完全に合致するプローブにハイブリダイズする(特定のイオン強度およびpHにおける)温度である。典型的には、厳格条件は、pH7で塩濃度が少なくとも約0.02モルであり、温度が少なくとも約60℃であるようなものとなろう。
【0024】
好適な実施態様の説明
本発明は、in situ(その場)で染色体異常を検出するために有用な方法およびプローブライブラリーを提供するものである。特に、この発明は、染色体中の増倍(multiplication)または欠失の存在を同定し、このような欠失または増倍に関与する染色体領域を迅速に同定する手段を提供するものである。
【0025】
染色体異常の検出および定位
本発明は、染色体の間期核または中期延展体(metaphase spreads) に対するin situ ハイブリダイゼーションにおいてゲノムプローブのライブラリーの使用に基づき、染色体異常を検出して定位するものである。このような異常は、幾つかの種類のものとすることができ、余剰または喪失した個々の染色体、染色体の余剰または喪失した部分(断片的な重複または欠失)、破断(break)、環化および染色体の再配置(rearrangement) を含む。染色体の再配置は、転位、二動原体状態(dicentrics) 、逆位、挿入、増幅および欠失を含む。
【0026】
一般に、本発明の方法は、2つの工程、すなわち1)マッピングしたプローブのライブラリーの造成、および2)染色体に対するこのようなプローブのin situ ハイブリダイゼーション、およびその後の、特定の染色体領域の相対的なコピー数を決定するためのハイブリダイゼーション頻度の検出により構成されるものである。
【0027】
マッピングしたプローブのライブラリーは、正常な染色体とハイブリダイズした場合に、対象領域を横切って相対的に均一に分布される一組のプローブより構成される。この領域は、典型的には1つの染色体または1つの染色体の一部である。特定の実施態様では、プローブのライブラリーは全ゲノムを包含することができる。
【0028】
ライブラリー中のそれぞれのプローブは、中期延展体における正常な染色体とin situ でハイブリダイズする。染色体上のプローブの物理的位置は、以下に詳細に記載するように、マーカーを目視可能とすること(visualization )によって決定する。プローブの位置は、典型的にはpテロメアからの平均断片長さ(average fractional length from the p telomere, FLpter )として表す。
【0029】
独特の領域とハイブリダイズし、相対的に均一な分布を示すプローブを一旦同定してマッピングしたならば、これらを使用して未知の遺伝子組成の染色体をプローブ処理し、増幅または欠失の存在または不存在および他の異常を決定する。特に、これらを使用して、活発に分裂しない大半の組織における優勢な細胞ステージである間期核をプローブ処理することができる。標準的な蛍光顕微鏡によってハイブリダイゼーションスポットを計数し、FLpterの関数としてコピー数を得ることができる。このようにして、正常な細胞と相対したコピー数が、増幅および欠失等のような種々の染色体異常を示すものとする。
【0030】
染色体の選択
典型的には、本発明のプローブライブラリーは、染色体全体に及ぶライブラリーから誘導する。代替的に、ライブラリーは、多数の染色体から、または染色体の断片に及ぶ領域から構成する。単一の染色体は、当業者に周知の方法を使用し、フローソーティング(flow sorting)により単離することができる。簡略には、染色体は、例えばコルセミドを添加することにより中期でブロックした細胞から単離し、2つのDNA結合蛍光色素を用いて染色する。その後、染色した染色体にセルソーターを通過させ、大きさおよび塩基対組成による染色体の2変数分析を使用して単離する(例えば、Blennow ら、Hum. Genet. 90: 371-374 (1992)を参照することができる)。
【0031】
当業者により、マッピングする染色体の選択は、特定の染色体とある種の疾患状況との関連についての予備知識に影響され得ることが認識されよう。例えば、染色体17は、p53 、RARA、NF1 、CMT およびERBBを含む幾つかの疾患に関連した遺伝子を宿すことが知られており、p53 に対して遠位の腫瘍サプレッサー遺伝子の存在(例えば、Coles ら、Lancet 336: 761-763 (1990)、Cropp ら、Proc.Natl. Acad. Aci. USA 87: 7737-7741 (1990) 、およびMatsumura ら、Cancer Res. 52: 3474-3477 (1992))、17q21 における乳ガンの初期兆候に関連する遺伝子の存在(Eastonら、Am. J. Human Genet., 52: 678-701 (1993) )、および乳ガンにおける1以上の領域の増幅の存在(Kallioniemi ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA 89: 5321-5325 (1992) )を示唆する報告がある。
【0032】
代替的に、サザンブロットおよび比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)のようなゲノム全体の検索技術を使用して、頻繁に欠失および増幅の事態を招く傾向のある染色体、よって本発明を使用する更なる検討のための良い候補体を同定することができる。特に、CGHは、頻繁に起こる欠失または増幅の事態についてゲノムを検索するための有効な手段を提供する。CGHによる検討により、染色体20q上の配列が、乳腫瘍セルラインおよび初期乳腫瘍の両者において、頻繁に増幅されることが示されている。胎児期における検索のために適切な異常も同定することができる。
【0033】
CGHにおいては、異なる様式で標識化したテストDNAおよび正常な参照DNAを、正常な染色体中期延展体に対して同時にハイブリダイズさせる。2つの異なる蛍光色素を用いてハイブリダイゼーションを検出する。重複、欠失または増幅を含む異常な染色体領域は、標的染色体に沿う2つの蛍光色素の比率の変化として検出する。CGHの詳細な説明については、Kallioniemi ら、Science, 258: 818-821 (1992)を参照することができる。
【0034】
当業者により、本発明のライブラリーを使用して、ゲノム全体を検索し得ることが認識されよう。しかしながら、この技術は解像度が高く、ゲノム全体を検索するには多数のプローブが必要であるため、CGHまたは他の方法は、最初の検索のために好適である。
【0035】
プローブライブラリーの作製
好適な態様では、選択された染色体は、前記したようにフローサイトメトリーによって単離する。その後、少なくとも約20kb、更に好ましくは約40kbのDNA配列を与えるのに適切な制限酵素を用いて染色体を消化する。部分的配列消化の技術は当業界で周知である。例えば、Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning 第2版、Wiley N.Y. (1988)を参照することができ、これを援用して本文の一部とする。得られた配列は、耐性マーカーを含むベクターと連結する。ベクターは、適切な宿主にトランスフェクトして増殖させる。この目的のために適切な例示的なベクターには、コスミド、酵母人工染色体(yeast artificial chromosomes, YACs)、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosomes, BACs)、およびP1ファージが含まれる。通常、コスミドライブラリーが調製される。このようにして、コスミドライブラリーは、トランスフェクトした細菌の単一のクローンより構成されるものとする。
【0036】
前記したようにコスミドライブラリーを生成することが可能であるが、染色体全体に及ぶライブラリーが市販されており(Clonetech, South San Francisco,CA)、またはロス・アラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)から入手可能である。例えば、ロス・アラモスにより、マウス−ヒトハイブリッドセルライン、38L-27からソートされた染色体17全体に及ぶ一組の挿入物をコスミド中に含むLA17NC01と命名されたライブラリーが供給されている。染色体20についてのロス・アラモスのライブラリーは、LA20NC01と命名されている。
【0037】
コスミドプローブは、in situ ハイブリダイゼーションにおける使用のために標識化しなければならない。プローブは、ハイブリダイゼーション反応の前に、検出可能に標識化され得る。代替的に、ハイブリダイゼーション生成物に結合する検出可能な標識を選択することができる。プローブは、この発明を実施する際に使用するために、あらゆる検出可能なグループを用いて標識化することができる。この種の検出可能なグループは、検出可能な物理的または化学的性質を有するあらゆる材料とすることができる。この種の検出可能な標識は、免疫アッセイの分野で十分に開発されており、一般にこの種の方法において有用なあらゆる標識の殆どは、本発明に適用することができる。よって、標識は、分光光度計による手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって検出可能ないずれかの組成物とする。本発明で有用な標識は、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(ELISA において普通に使用されるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または抗血清若しくはモノクローナル抗体に有効なハプテンおよび蛋白質を含む。プローブのin situ ハイブリダイゼーションを妨害しない限り、特定の標識を使用することは、本発明において特に重要ではない。更に、標識は、極力少ないコピー数で検出可能であることが必要であり、これによりアッセイの感度を最大としながら、いずれかのバックグラウンドシグナル上であっても検出が可能となる。最後に、標識は、高度に局在化したシグナルを与えるよう選択する必要があり、これにより染色体に対してプローブを物理的にマッピングする際に、高度の空間的解像度(spatial resolution)が与えられる。好適な態様では、標識は、ジゴキシゲニン-11-dUTPまたはビオチン-14-dATPとし、その後、蛍光体(fluorophores)を使用してこれらを検出する。
【0038】
標識は、当業者に公知の種々の手段でプローブに連結することができる。好適な態様では、プローブは、ニックトランスレーションまたはランダムプライマー延長を使用して標識化し得る(Rigby ら、J. Mol. Biol., 113: 237 (1977)またはSambrookら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1985) )。
【0039】
プローブライブラリーのマッピング
プローブライブラリーを一旦構築したならば、プローブのサブセットを、選択した染色体上で物理的にマッピングする。FISHおよびディジタル画像解析を使用して、所望の染色体に沿ってコスミドを定位することができる。この方法は、以下に詳細に記載するが、Lichter ら、Science, 247: 64-69 (1990)に記載されている。簡略には、蛍光体として例えばFITCを使用し、正常な細胞からの中期延展体に対して、FISHによりクローンをマッピングする。塩基組成に拘わらずDNAを染色する色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)により、染色体を対比染色し、染色体のアウトラインを特定する。色に依存する画像シフトを回避するために多色ビームスプリッタを用いて、染色した中期のものを蛍光顕微鏡により画像形成する。CCDカメラを用いて異なる色の画像が得られ、ディジタル化した画像をコンピュータに保存する。その後、コンピュータプログラムを使用し、染色体の軸を計算し、2つの(単一コピー配列について)FITCシグナルをこの軸に垂直に投影し、特定された位置、典型的にはp−テロメアからの平均断片長さを計算する。
【0040】
プローブのマッピングした位置の精度は、間期マッピングを使用して上げることができる。簡略には、中期マッピングによって極めて近いと認められた2つのプローブの間の距離を、正常な間期核において測定する。2つの間のゲノム距離は、物理的距離の二乗に等しい(Van den Enghら、Science 257: 1410 (1992))。順序が不確定である場合は、プローブを異なる色で標識化し、第3の(遠い)プローブに対するその相対的な距離によるものとする。Trask ら、Am. J. Hum. Genet. 48: 1 (1991))。
【0041】
典型的には、マッピングしたライブラリーは、約20〜約125クローン、更に通常には約30〜約50クローンより構成し得る。理想的には、クローンは、対象領域、通常は染色体全体に渡って相対的に均一に分布される。
【0042】
マッピングしたライブラリーを用いたin situ ハイブリダイゼーション
その後、マッピングしたライブラリーを用いて、サンプル中の染色体異常を検索する。この発明の方法では、標準的なin situ ハイブリダイゼーション技術を使用して、染色体サンプル(典型的には、中期延展体または間期核)を分析する。技術の幾つかの指針が利用可能であり、例えばGallら、Meth. Enzymol., 21: 470-480 (1981)、およびAngerer ら、Genetic Engineering: Principles and Methods 中、SetlowとHollaender編、第7巻、第43-65 頁(plenum Press, New York1985 )がある。
【0043】
簡略には、染色体サンプルは、ガラススライドのような固体支持体上に、単一の細胞懸濁物としてまたは組織調製物として、細胞を付着させることにより調製し、細胞の最良の空間解像度および最適のハイブリダイゼーション効率を与える固定剤を選択することにより固定する。
【0044】
一般に、in situ ハイブリダイゼーションは、次の主要な工程を含む。すなわち、(1)分析する組織または生物学的構造体の固定、(2)標的DNAのアクセス能を増大させ、非特異的な結合を低減させるための生物学的構造体のプレハイブリダイゼーション処理、(3)生物学的構造体または組織中の核酸に対する核酸混合物のハイブリダイゼーション、(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄、および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出である。これらの工程のそれぞれで使用する試薬、および使用のためのそれらの条件は、特定の応用に応じて変動する。
【0045】
幾つかの適用においては、それぞれの配列のハイブリダイゼーション能力をブロックすることが必要である。この場合は、このようなハイブリダイゼーションをブロックするための薬剤として、ヒトゲノムDNAを使用する。二本鎖のニックトランスレーションした核酸については、好適な大きさの範囲は、約200 bp〜約1000塩基、更に好ましくは約400 〜約800 bpである。
【0046】
ここに開示する特定の応用のためのハイブリダイゼーションの手順を以下に詳細に記載する。適切な手順は、Pinkelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 9138-9142 (1988)、およびEPO 公開第430,402 号に記載されている。
【0047】
与えられたサンプルをプローブ処理するために、標準的なin situ ハイブリダイゼーション技術を使用する。ここに開示する特定の応用のためのハイブリダイゼーションの手順を以下に詳細に記載する。適切な手順は、Pinkelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 9138-9142 (1988)、およびEPO 公開第430,402 号に記載されている。
【0048】
典型的には、二色によるFISHを使用するのが望ましく、その際は、それぞれ異なる蛍光色素によって標識化された2つのプローブを利用する。対象領域にハイブリダイズするテストプローブを1つの色素を用いて標識化し、異なる領域にハイブリダイズする対照プローブを第2の色素を用いて標識化する。セントロメア領域のような対象染色体の安定部位に対してハイブリダイズする核酸が、対照プローブとしてしばしば最も有用である。このようにして、サンプル間のハイブリダイゼーションの効率の差を補償することができる。
【0049】
染色体異常を検出するためのFISH法は、ナノグラム量の対象となる核酸により実施することができる。新鮮な材料または凍結した材料と同様に、パラフィン包埋した腫瘍切片を使用することができる。FISHは、限定された材料に適用し得るものであるために、培養されていない一次腫瘍物から調製した接触調製物(touchpreparation) も使用することができる(例えば、Kallioniemi, A. ら、Cytogenet. Cell Genet. 60: 190-193 (1992) を参照することができる)。例えば、腫瘍由来の少量の生検組織サンプルを、接触調製物のために使用することができる(例えば、Kallioniemi, A. ら、Cytogenet. Cell Genet. 60: 190-193 (1992)を参照することができる)。吸引生検から得られた少数の細胞または体液(例えば、血液、尿、唾液等)中の細胞も分析することができる。胎児期の診断のためには、適切なサンプルには、羊膜液等が含まれよう。
【0050】
対象領域が一旦同定されて、本発明の方法によりマッピングされたならば、当業者により、この領域を同定しかつ/または検索する多数の手段があることが認識されよう。制限酵素を用いて染色体DNAを消化し、この発明のマッピングしたコスミドをハイブリダイゼーションプローブとして使用して、特定の重複を担持する断片を同定することにより、その領域を配列決定することができる。その後、陽性のクローンを適切なベクターにサブクローン化して配列決定する。
【0051】
配列情報により、標的配列の検出のために適切な、高度に特異的なハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーの設計が可能となる。これは、診断検索システム並びに研究の目的のために有用である。
【0052】
特異的なDNA配列を検出する手段は当業者に周知である。例えば、この領域を有する選択サブ配列と相補的となるよう選択したオリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。代替的に、配列またはサブ配列は、プローブを使用する検出の前に、種々のDNA増幅技術により(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、翻訳増幅等を介して)増幅することができる。DNAの増幅により、可能な標的サブ配列の一層多数のコピーを提供することによって、アッセイの感度が上がる。更に、増幅過程において標識化したプライマーを使用することにより、DNA配列を増幅する際に標識化することができる。
【0053】
本発明を説明するために以下の実施例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0054】
染色体20のマッピング
増幅のためにゲノム全体を検索する「比較ゲノムハイブリダイゼーション」(CGH)を用いた実験の結果は、染色体20q上の配列が、胸部腫瘍セルラインおよび一次胸部腫瘍の両者において頻繁に増幅されることを示す。これらの遺伝子の変化をより詳細に特定するために、コスミドFISHプローブのライブラリーを単離し、染色体20に対して物理的にマッピングした。その後、マッピングしたプローブのライブラリーを、FISHを使用する染色体20のプローブ処理に使用して、増幅および欠失に関与する特定の遺伝子座を決定することができた。この実施例は、染色体20に対して物理的にマッピングした所定のプローブのライブラリーを詳細に示すものである。
【0055】
製造業者の指針に従って(Qiagen社、Chatsworth, CA)Qiagenカラムを使用し、単一の細菌クローンから、染色体20ライブラリー由来のコスミドを無作為に単離した。ビオチン-14-dATP(Gibco )を用いて、ニックトランスレーションによりコスミドDNAを標識化し、長さ0.3 〜1.0 kb(非変性条件下)の断片を得た。これらのプローブを、正常なヒトリンパ球中期調製物にハイブリダイズさせた。70%ホルムアミド/2×SSC中で、スライドを70℃で3分間変性させた後、70%/85%/100%エタノール中で脱水した。10μlの50%ホルムアミド/2×SSC中で37℃で、5μgのヒト胎盤DNA(Sigma )の存在下に、40ngのヒトビオチン標識化コスミドDNAを用いてスライドを一夜ハイブリダイズさせた。70℃で5分間プローブを変性させ、スライドに施す前に37℃で復元させた。50%ホルムアミド/2×SSC中で3回、0.1×SSC中で1回、2×SSC中で2回、45℃でスライドを洗浄した(それぞれの洗浄について15分間)。残りの工程は室温で行った。
【0056】
4×SSC/0.1%Triton X100 (「洗浄」緩衝液)中でスライドを平衡化させ、5%ドライミルク/0.1%アジ化ナトリウムを用いた洗浄緩衝液(「ブロック緩衝液」)中で5分間ブロックした。5μg/mlのアビジンFITCを用いて、ビオチン化プローブの染色を行い(ブロック緩衝液中60分)、5μg/mlのビオチン化抗アビジンを用いた30分のインキュベートにより増幅し(ブロック緩衝液中)、アビジン-FITC を用いて更に30分インキュベートした。その後、各染色工程の後にそれぞれ10分間、スライドを3回洗浄した。抗退色溶液(anti-fade solution)(ref )を施す前に、0.05μg/mlのヨウ化プロピジウムおよび0.4μMのDAPIを用いて、0.1×SSC中でスライドを平衡化させた。
【0057】
スライドを最初に蛍光顕微鏡で検査し、シグナルが存在するか否かを決定し(29/40テストしたコスミド)、存在する場合は、検出されたコスミドが単一コピー配列であるか否かを決定した(28/40テストしたコスミド)。1つのコスミドが染色体20のセントロメアにハイブリダイズしたが、アクロセントリック(末端動原体)染色体のp−アームにもハイブリダイズした。CCDカメラ(Photometrics社、Tucson, AZ)および色に依存する画像シフトを回避するための多色ビームスプリッタ(Chroma Technology 社、Brattleborrough, VT )を備えたニコンSA蛍光顕微鏡により、単一コピー配列を検出するコスミドとハイブリダイズさせた中期のものを分析した。染色体20の画像はコンピュータソフトウエアを用いて解析し、Lichter ら、前記により一般的に記載された方法を使用して、ヨウ化プロピジウム染色により特定されたものとして、染色体軸に沿うpテロメアからの断片長さ(FLpter)に関して、平均位置(2つのFITCプローブスポットの平均位置)を決定した。
【0058】
幾つかの中期のものについては、それぞれのコスミドについて分析を行った。FLpter値およびSEM を表1に示す。全てのFLpter値の平均SDは0.030 であり、−2Mbに対応する。SEM の2.5倍未満のFLpter値により分離されるコスミドは、統計的な信頼性をもって順序付けすることはできなかった。表1の縦の線は、信頼性良く順序付けできなかったコスミドに渡って付したものである。
【0059】
表1 染色体20コスミドのFLpter値
【表1】

*縦の線で結ばれたいずれか2つのコスミドは、統計的な信頼性をもって順序付けすることができない。
【0060】
FLpter値を、染色体20のイデオグラム(ideogram)と共にグラフにより図1に示す。染色体20のセントロメアプローブ(p3-4)は、FLpter=0.443(SEM=0.008, n=10 )にマッピングされ、このイデオグラムにおけるセントロメアの位置、および報告された染色体20のセントロメアの物理的局在位置と良く一致した(Schnittgerら、Genomics, 16: 50-55 (1993)、Passarge, E. pp. 135-205、Methods in Human Genetics中、SchwarzacherとWolf編、Springer, Berlin (1974))。図1に示す対応するバンド位置は、DAPIの明るいバンドの位置(このような条件下ではギムザ染色のバンドに略対応する)に対して、目視によっても確認された。コスミドは、染色体全体に渡って相当均一に分布し、セントロメア領域および−0.6 のFLpter値を有する領域において、可能性として、不足および過剰の対応範囲(under- and over-representation)をそれぞれ有すると認められる。
【0061】
染色体17のマッピング
ロス・アラモス国立研究所において、マウス−ヒトハイブリッドセルライン38L-27からフロー・ソートした染色体より、染色体17コスミドライブラリーを調製した(LA17NC01と命名した)。FISHを使用し、ソートした染色体を純度について検査した。DNAを抽出し、Sau3A1により部分消化し、脱リン酸化し、宿主としてHB101 を用いてsCos1 にクローン化した。最初のライブラリーの特徴付けにより、これは92%ヒト挿入物、2.6%マウスおよび5.4%非組換え体によるものであり、39×の対応範囲を有することが示された。
【0062】
約12,000のコロニーを採取し、ミクロタイタープレート中で生育させ、染色体17の5×の包含範囲(coverage)を得た。これらのプレートの一組の内容物を共にプールし、プールした5×ライブラリーとした。この検討のために、5×ライブラリーをプレート処理し、288 の個々のクローンを無作為に採取し、3つのミクロタイタープレートに並べた。これらの内の71個を、FISHを用いて分析した。遺伝子リンク分析(O'Connell ら、Genomics, 15: 38-47 (1993))により予めマッピングした20のコスミドプローブも、分析のために選択した。
【0063】
FISHは、主として先に記載されたようにして実施した。Kallioniemi ら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5321-5325 (1992)およびPinkelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 9138-9142 (1988)を参照することができ、この両者を援用して本文の一部とする。簡略には、製造業者の指針に従ってQiagenカラム(Qiagen社、Chatsworth, CA)を使用し、個々のクローンおよび5×プールからDNAを単離した。ビオチン-14-dATPを用い、ニックトランスレーションを使用してDNAを標識化した。染色体17セントロメアリピートプローブ由来のDNAを、ジゴキシゲニン-11-dUTPにより標識化した。正常な末梢血リンパ球から調製した中期延展体に対して、染色体17セントロメアプローブと共にそれぞれのプローブをハイブリダイズさせた。アビジン−テキサスレッドおよび抗ジゴキシゲニン−FITCを使用し、ハイブリダイズしたプローブを検出した。抗退色溶液中でDAPIを使用し、中期染色体を対比染色した。
【0064】
前記したようにディジタル画像分析システムを使用し、サンプルの分析を行った。半自動化したプログラムを使用し、1)各DAPI画像を部分に分け、2)染色体の中央軸を特定し、3)各候補体ハイブリダイゼーションドメインの質量の中心を特定し、4)染色体の短いアームのテロメアに対する、染色体軸に沿う各ドメインの断片位置を計算した(FLpter)。分析プログラムによって特定される候補体ハイブリダイゼーションドメインは、目視による検査によって確認した。染色体17のセントロメアプローブを、それぞれのハイブリダイゼーションにおいて内部標準として使用した。セントロメアのFLpter値が予期される範囲(0.300<FLpter<0.342)に該当しない場合は、その染色体は、FLpter計算のために使用しなかった。
【0065】
ライブラリー全体(LA17NC01)からのDNAを描画プローブ(painting probe)として使用するFISHの結果、染色体17全体の強い特異的な染色が得られ、染色体の全ての部分がライブラリーで表現されていることが示された。ライブラリーから選択した71の個々のコスミドを、FISHを使用して概略的にマッピングした。これらの内、15(21%)がp−アームにマッピングされ、46(65%)がq−アームにマッピングされ、2(3%)がセントロメア近傍(peri-centromeric) リピート領域にマッピングされた。この分布は、無作為に分布したプローブについて予期されるものと近似する。8のコスミド(11%)は、いずれのヒト染色体上でも全くシグナルを与えず、このためヒト起源のものではないと考えられる。これは、8%のクローンが、組み換え体でないか、またはマウス挿入物を含むものであることを示したスロットブロット分析による最初のライブラリーの特徴付けと一貫する。
【0066】
間期細胞のFISH分析のために有用たり得るプローブを同定するために、中期および間期の両者において最も顕著なハイブリダイゼーションシグナルを与えた40のコスミドを、ディジタル画像分析を使用してマッピングした。各コスミドについてのFLpter値を表2に示す。FLpter測定についての標準偏差(sd)および各プローブ(n)について分析した染色体の数を列挙し、各FLpterの見積についての平均の標準誤差(standard error of the mean, sem =sd/√n)を計算できるものとした。>2.5 semで異なるFLpter平均を有するプローブは、統計的信頼性をもって順序付けすることができる。
【0067】
図3は、17p11-12付近の配列の僅かに過剰な対応範囲が認められるものの、プローブは、染色体全体に渡って分布していることを示す。中期染色体に対する2つの色による対合様式のハイブリダイゼーションにより、これらは同一のクローンを表していないことが示された。FLpter値は、図3のICSN染色体17のイデオグラムに関連する。他の研究により、FLpter値とバンド局在位置との間の妥当な対応が示されているためである(Lawrenceら、Science, 249: 928-932 (1990)、Lichter, P. ら、Science, 247: 64-69 (1990))。しかしながら、この関係は、近似的なものに過ぎないと考えられる。イデオグラム上のバンド局在位置は厳密ではないからである。
【0068】
遺伝子リンク分析によって既にマッピングされている20のコスミド(O'Connell ら、Genomics, 15: 38-47 (1993))を、同様に物理的にマッピングした。全てのコスミドについてのFLpter測定の平均標準偏差は0.035 であった。これは約3Mbs に対応する。平均の標準誤差(sem )として決定される平均のマッピング精度は、〜1Mbに対応する約0.01であった。〜2.5 Mbで分離されるコスミド(すなわち、表2で、その平均は>2.5sem により分離される)は、統計的な信頼性をもって順序付けすることができる。
【0069】
染色体20における増幅の検出
図2は、前記したように標準的なFISH技術を使用し、間期BT474 乳ガン細胞において、異なるマッピングの染色体20特異的コスミド(図1参照)のスポット数を計数した例を示す。FLpter-0.85 付近の領域が激しく増幅されている。
【0070】
ここに引用した参照文献は、全て援用して本文の一部とする。明確化および理解の目的のために、これらの実施例および前記開示において、この発明を相当詳細に説明した。しかしながら、添付する請求の範囲の範囲内で、ある種の変更および改変を行い得ることは明らかであろう。
【0071】
表2:遺伝子リンク分析により先にマッピングされた(太字で示す)
20個を含む60個のコスミドについて測定したFLpter値
【表2】

これらのプローブの遺伝子位置は、'Connellら、Genomics, 15: 38-47 (1993)により示された情報からグラフにより見積もった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、染色体20に特異的なコスミドの物理的位置を示す。中期FISHおよびディジタル画像分析によって決定された位置は、Flpterの平均(±sem )として示されている。
【図2】図2は、間期BT474 乳ガン細胞で計数した、異なるマッピングの染色体20特異的コスミド(図1参照)のスポット数を示す。FLpter-0.85 付近の領域が激しく増幅されている。したがって、この領域は、ガン(原)遺伝子を含んでいる可能性がある。
【図3】図3は、ライブラリーLA17NC01から選択した40のコスミドの染色体17上の物理的位置を示す。中期FISHおよびディジタル画像分析によって決定された位置は、FLpterの平均(±sem )として示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め選択した染色体における染色体異常を検出する方法であって、
前記染色体に特異的な標識化したプローブのマッピングしたライブラリーを用意し、
患者からの染色体サンプルと前記ライブラリーとを、プローブがサンプル中の標的ポリヌクレオチド配列と選択的に結合してハイブリダイゼーション複合体を形成する条件下で接触させ、
前記ハイブリダイゼーション複合体を検出し、
それぞれの複合体のコピー数を決定すること、
を含むことを特徴とする染色体異常の検出方法であって、前記プローブのマッピングしたライブラリーが表1、表2に示すもの以外である、
染色体異常の検出方法。
【請求項2】
前記染色体異常が欠失である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記染色体異常が増幅である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジゴキシゲニンまたはビオチンを用いて前記プローブを標識化する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する工程が、蛍光標識を検出することにより実施される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光標識がFITCである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ハイブリダイゼーション複合体を、サンプル中の間期核において検出する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
予め選択した染色体のセントロメア内の配列に選択的に結合する参照プローブと細胞サンプルとを接触させることを更に含む請求項1に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−109850(P2006−109850A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13884(P2006−13884)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【分割の表示】特願平7−510861の分割
【原出願日】平成6年9月26日(1994.9.26)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【Fターム(参考)】