説明

増幅回路ならびにそれを用いた受信装置および通信装置

【課題】 入力信号の振幅の変動に応じて利得を制御可能な増幅回路を提供する。
【解決手段】 入力された第1信号S1を増幅して第2信号S2を出力する可変利得増幅回路10と、第1信号S1を検波して第3信号S3を出力する検波回路20と、第3信号S3が入力されて、第3信号S3の電圧に対して指数関数的に変化する電圧を有する第4信号S4を出力する変換回路30とを備え、第4信号S4を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御する増幅回路とする。入力された第1信号S1の振幅の変動が大きいときにも、第1信号S1の振幅の変動に応じて利得を制御可能な増幅回路を得ることができる。これにより、第1信号S1の振幅が大きく変動しても第2信号S2の振幅の変動を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路ならびにそれを用いた受信装置および通信装置に関するものであり、特に利得が自動的に制御される増幅回路ならびにそれを用いた受信装置および通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、受信回路において、復調器への入力信号のレベルを一定に保つために、利得が自動的に制御される増幅回路が用いられている。このような増幅回路としては、増幅回路への入力信号を検波回路で検波して、検波回路からの出力信号を利用して可変利得増幅回路の利得を制御するフィードフォワード回路を使用するものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−333111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィードフォワード回路を用いた従来の増幅回路においては、検波回路が有している寄生容量等の影響によって、検波回路からの出力信号の電圧の変化が、入力信号の振幅の急激な変化に追従できないことがあるという問題があった。そして、これによって、可変利得増幅回路の利得の変化が入力信号の振幅の変化に追従できず、増幅回路からの出力信号の振幅が大きく変動してしまうという問題が発生することがあった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、入力信号の振幅の変動に応じて利得を制御可能な増幅回路ならびにそれを用いた受信装置および通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の増幅回路は、入力された第1信号を増幅して第2信号を出力する可変利得増幅回路と、前記第1信号を検波して第3信号を出力する検波回路と、前記第3信号が入力されて、該第3信号の電圧に対して指数関数的に変化する電圧を有する第4信号を出力する変換回路とを備え、前記第4信号を用いて前記可変利得増幅回路の利得を制御することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の増幅回路は、前記第1の増幅回路において、前記変換回路は、NMOSトランジスタと、第1および第2のPMOSトランジスタとを備えており、前記NMOSトランジスタは、ソース端子が基準電位に接続され、ゲート端子が電圧源を介して基準電位に接続されるとともに、バックゲート端子に前記第3信号が入力され、前記第1のPMOSトランジスタは、ゲート端子およびドレイン端子が前記NMOSトランジスタのドレイン端子に接続されているとともに、ソース端子が電源電位に接続され、前記第2のPMOSトランジスタは、ゲート端子が前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に接続されており、ソース端子が電源電位に接続され、ドレイン端子が抵抗を介して基準電位に接続されるとともに、前記ドレイン端子から前記第4信号を出力することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の受信回路は、前記第1の増幅回路と、受信信号の周波数を変換して前記第1信
号として出力する周波数変換回路と、前記第2信号を復調する復調回路とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の受信装置は、前記受信回路と、該受信回路に接続されたアンテナとを備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の通信装置は、前記受信回路と、該受信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された送信回路とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の増幅回路によれば、入力信号の振幅の変動に応じて利得を制御可能な増幅回路を得ることができる。
【0012】
本発明の受信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な受信装置を得ることができる。
【0013】
本発明の通信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路を示すブロック図である。
【図2】図1における変換回路の回路図である。
【図3】本発明の実施の形態の第2の例の受信装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の第3の例の通信装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】比較例の増幅回路のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】シミュレーションにおける入力信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の増幅回路を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路を示すブロック図である。図2は図1における変換回路の構成を示す回路図である。
【0017】
本例の増幅回路は、図1に示すように、端子1と、端子2と、可変利得増幅回路10と、検波回路20と、変換回路30とを備えている。
【0018】
端子1には、図示せぬ外部回路から第1信号S1が入力される。可変利得増幅回路10は、端子1および端子2に接続されており、端子1から入力された第1信号S1を増幅した第2信号S2を端子2へ出力する。
【0019】
検波回路20は、端子1および変換回路30に接続されており、端子1から入力された第1信号S1を検波して、第3信号S3を変換回路30へ出力する。本例の増幅回路においては、検波回路20は、第1信号S1の振幅の増減と逆に増減する電圧を有する第3信号S3を出力する。
【0020】
変換回路30は、検波回路20および可変利得増幅回路10に接続されており、検波回路20から第3信号S3が入力されて、第3信号S3の電圧に対して指数関数的に変化す
る電圧を有する第4信号S4を、可変利得増幅回路10へ出力する。そして、第4信号S4は、可変利得増幅回路10の図示せぬ制御端子に入力され、第4信号S4によって可変利得増幅回路10の利得が制御される。
【0021】
このように、本例の増幅回路では、変換回路30から出力された第4信号S4を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御する。第4信号S4の電圧は、第3信号S3の電圧と同様に、第1信号S1の振幅の増減と逆に増減する。このため、第4信号S4を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御することにより、可変利得増幅回路10の利得は第1信号S1の振幅の増減と逆に増減する。これにより、増幅回路に入力される第1信号S1の振幅が大きく変動したときにおいても、増幅回路から出力される第2信号S2の振幅の変動を小さくすることができる。
【0022】
従来の増幅回路のように、検波回路20から出力される第3信号S3をそのまま可変利得増幅回路10に入力して、第3信号S3によって可変利得増幅回路10の利得を制御する場合においては、次のような問題が生じる場合がある。すなわち、検波回路20が有する寄生容量等に起因して、検波回路20から出力される第3信号S3の波形が鈍ってしまうという問題である。これにより、第1信号S1の振幅が急激に変化したときに、第1信号S1の振幅の変化に第3信号S3の電圧の変化が追従できなくなり、第1信号S1の振幅の変化に可変利得増幅回路10の利得の変化が追従できなくなる。そして、入力された第1信号S1の振幅の急激な変化を可変利得増幅回路10の利得の変化で相殺することができず、増幅回路から出力される第2信号S2の振幅の変化が大きくなってしまう。
【0023】
本例の増幅回路は、検波回路20から出力される第3信号S3を変換回路30に入力し、変換回路30から出力される第4信号S4を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御する。第4信号S4は、第3信号S3の電圧に対して指数関数的に変化する電圧を有しているため、第3信号S3の波形が鈍った場合においても、第4信号S4の波形の鈍りは小さくなる。よって、第4信号S4の電圧は、第3信号S3の電圧よりも、第1信号S1の振幅の急激な変化に追従して変化する。このため、第4信号S4を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御することにより、第1信号S1の急激な変化に応じて可変利得増幅回路10の利得を変化させることができるので、出力される第2信号S2の振幅の変化を小さくすることができる。
【0024】
このようにして、本例の増幅回路によれば、入力される第1信号S1の振幅の変化に応じて利得を制御可能な増幅回路を得ることができる。
【0025】
なお、本例の増幅回路において、検波回路20としては、例えば、ミキサーを使用した検波回路など、既知の検波回路を好適に用いることができる。
【0026】
また、本例の増幅回路においては、検波回路20が、第1信号S1の振幅の増減に対して逆に増減する電圧を有する第3信号S3を出力する例を示したが、これに限定されるものではない。検波回路20が、第1信号S1の振幅の増減と同じように増減する電圧を有する第3信号S3を出力するようにしても構わない。このような場合には、例えば、第4信号S4を基準信号から減算して第5信号を生成する。この第5信号の電圧は、第1信号S1の振幅の増減と逆に増減するので、第5信号を用いて可変利得増幅回路10の利得を制御することにより、第1信号S1の振幅の増減と逆に利得が増減するように可変利得増幅回路10を制御することができる。
【0027】
図2は図1における変換回路30の一例を示す回路図である。変換回路30は、図2に示すように、NMOSトランジスタ33と、PMOSトランジスタ35,36と、電圧源34と、抵抗37と、端子31,32とを備えている。
【0028】
NMOSトランジスタ33は、ソース端子が基準電位(グランド電位)に接続されており、ゲート端子が電圧源34を介して基準電位(グランド電位)に接続されている。そして、バックゲート端子が端子31に接続されており、第3信号S3が端子31からバックゲート端子に入力される。
【0029】
PMOSトランジスタ35は、ゲート端子およびドレイン端子がNMOSトランジスタ33のドレイン端子に接続されているとともに、ソース端子が電源電位Vddに接続されている。
【0030】
PMOSトランジスタ36は、ゲート端子がPMOSトランジスタ35のゲート端子に接続されており、ソース端子が電源電位Vddに接続されており、ドレイン端子が抵抗37を介して基準電位(グランド電位)に接続されている。また、PMOSトランジスタ36のドレイン端子は端子32に接続されており、PMOSトランジスタ36のドレイン端子から端子32へ第4信号S4が出力される。
【0031】
このような構成を備える変換回路30の動作について説明する。NMOSトランジスタのバックゲート端子に加わる電圧が充分に小さいときには、NMOSトランジスタのドレイン電流はバックゲート端子に加わる電圧に対して指数関数的に変化することを本発明者らが見出した。よって、第3信号S3が端子31からNMOSトランジスタ33のバックゲート端子に入力されると、NMOSトランジスタ33のドレイン電流は、第3信号S3の電圧に対して指数関数的に変化する電流となる。
【0032】
NMOSトランジスタ33のドレイン端子はPMOSトランジスタ35のドレイン端子に接続されており、PMOSトランジスタ35のドレイン電流もNMOSトランジスタ33のドレイン電流に等しくなる。そして、PMOSトランジスタ35,36のドレイン端子同士が接続されてカレントミラー回路が構成されているため、NMOSトランジスタ33のドレイン電流がPMOSトランジスタ36のドレイン電流にコピーされる。
【0033】
そして、PMOSトランジスタ36のドレイン電流が抵抗37に流れることによって、抵抗37の両端に電圧が発生する。この電圧は、端子31から入力された第3信号S3の電圧に対して指数関数的に変化する電圧となり、この電圧を有する第4信号S4が端子32から出力される。
【0034】
(実施の形態の第2の例)
図3は本発明の実施の形態の第2の例の受信装置を示すブロック図である。本例の受
信装置は、図3に示すように、アンテナ71と、該アンテナに接続された受信回路72とを備えている。受信回路72は、高周波増幅回路73と、周波数変換回路74と、本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路75と、復調回路76とを備えている。
【0035】
高周波増幅回路73は、アンテナ71に接続されており、受信信号を増幅して出力する。周波数変換回路74は、増幅された受信信号の周波数を変換して第1信号S1として出力する。増幅回路75は、第1信号S1を増幅して、振幅が一定の第2信号S2を出力する。復調回路76は、入力された第2信号S2を復調する。このような構成を有する本例の受信装置によれば、受信信号の振幅が大きく変動するときにも、復調回路76に入力される信号レベルの変動を小さくすることができるので、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な受信装置を得ることができる。
【0036】
なお、本例の受信回路72においては、アンテナ71からの受信信号が高周波増幅回路73で増幅されてから周波数変換回路74に入力される例を示したが、これに限定される
ものではない。受信信号の強度が充分な場合には、アンテナ71からの受信信号がそのまま周波数変換回路74に入力されるようにしても構わない。また、それぞれの回路の間に他の回路が介在するようにしても構わない。
【0037】
(実施の形態の第3の例)
図4は本発明の実施の形態の第3の例の通信装置を示すブロック図である。なお、本
例においては、前述した実施の形態の第2の例の受信装置と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
本例の通信装置は、図4に示すように、受信回路72と、受信回路に接続されたアンテナ71と、アンテナ71に接続された送信回路77とを備えている。なお、受信回路72および送信回路77とアンテナ71との間には、アンテナ共用回路78が挿入されている。すなわち、受信回路72および送信回路77は、アンテナ共用回路78を介してアンテナ71に接続されている。このような構成を有する本例の通信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な通信装置を得ることができる。
【実施例】
【0039】
図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路における電気特性を回路シミュレーションによって算出した。本シミュレーションにおいては、端子1への入力信号(第1信号S1)は、キャリア周波数が0.7GHzであり、キャリア電力が−10dBmであり、変調周波数が20MHzであり、変調指数が0.99のAM変調波とした。検波回路20は、入力信号(第1信号S1)の振幅の増減と逆に増減する検波電圧を出力するLinear in dB特性を持つ検波回路とした。また、変換回路30は、検波回路20から出力される第3信号S3の最大値および最小値の電圧振幅は変えないで、指数関数的に電圧波形の変換をするようにした。
【0040】
このシミュレーションの結果を図5のグラフに示す。また、図1に示す増幅回路から変換回路30を取り除いた比較例の増幅回路のシミュレーション結果を図6のグラフに示す。そして、それぞれのシミュレーションにおける入力信号(第1信号S1)を図7のグラフに示す。それぞれのグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は電圧を示す。
【0041】
図6のグラフによれば、入力信号(第1信号S1)の振幅の変化に利得の変化が追従できず、出力信号(第2信号S2)の振幅が大きく変動していることがわかる。これに対し、図5に示すグラフによれば、入力信号の振幅の変動に追従して増幅回路の利得が制御できていることにより、出力信号の振幅の変化が小さくなっていることがわかる。これにより、本発明の有効性が確認できた。
【符号の説明】
【0042】
10:可変利得増幅回路
20:検波回路
30:変換回路
33:NMOSトランジスタ
35,36:PMOSトランジスタ
34:電圧源
71:アンテナ
72:受信回路
74:周波数変換回路
75:増幅回路
76:復調回路
77:送信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1信号を増幅して第2信号を出力する可変利得増幅回路と、
前記第1信号を検波して第3信号を出力する検波回路と、
前記第3信号が入力されて、該第3信号の電圧に対して指数関数的に変化する電圧を有する第4信号を出力する変換回路とを備え、
前記第4信号を用いて前記可変利得増幅回路の利得を制御することを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記変換回路は、NMOSトランジスタと、第1および第2のPMOSトランジスタとを備えており、
前記NMOSトランジスタは、ソース端子が基準電位に接続され、ゲート端子が電圧源を介して基準電位に接続されるとともに、バックゲート端子に前記第3信号が入力され、
前記第1のPMOSトランジスタは、ゲート端子およびドレイン端子が前記NMOSトランジスタのドレイン端子に接続されているとともに、ソース端子が電源電位に接続され、前記第2のPMOSトランジスタは、ゲート端子が前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に接続されており、ソース端子が電源電位に接続され、ドレイン端子が抵抗を介して基準電位に接続されるとともに、前記ドレイン端子から前記第4信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載の増幅回路と、
受信信号の周波数を変換して前記第1信号として出力する周波数変換回路と、
前記第2信号を復調する復調回路とを備えていることを特徴とする受信回路。
【請求項4】
請求項3に記載の受信回路と、
該受信回路に接続されたアンテナとを備えることを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項3に記載の受信回路と、
該受信回路に接続されたアンテナと、
該アンテナに接続された送信回路とを備えることを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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