説明

増強されたビマトプロスト眼科用溶液

【課題】ビマトプロストを含み、ビマトプロストの膜透過性を向上させる眼投与用製剤、並びに緑内障またはこれに関連する高眼圧症の治療のために有用な方法を提供する。
【解決手段】0.005wt%〜0.02wt%のビマトプロストと、100ppm〜250ppmの塩化ベンザルコニウムとを含む組成物であって、眼投与用に製剤化された水性液である組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビマトプロストを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示すビマトプロストは、緑内障および高眼圧症の治療のために市販されているプロスタミドである。
【0003】
【化1】

【0004】
塩化ベンザルコニウム(BAK)は、多用途製品における微生物汚染を防止するために、多くの市販の眼用薬で使用されている防腐剤である。市販の目薬(ビマトプロスト、アラガン社、カリフォルニア州アーバイン)は0.03%のビマトプロストと、0.005%のBAKとを含む。現在、緑内障の治療用に市販されている他のプロスタミドはないが、BAKを防腐剤として使用した、数種のプロスタグランジン類縁体が市場で入手可能である。これらには、ラタノプロスト(キサラタン)、トラボプロスト(トラバタン)およびウノプロストンイソプロピル(レスキュラ)が含まれるが、米国および欧州における抗菌有効性テストを満足するためには、150〜200ppmというより多量のBAKを必要とする。
【0005】
米国特許第6,596,765号明細書は、0.005%または0.0005%のラタノプロストと0.2mg/mLのBAKとを含む組成物を開示する。
【0006】
米国特許第6,646,001号明細書は、0.03%のビマトプロストと、0.01%のBAKまたは「0.01%+5%過剰」のBAKとを含む組成物を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、0.005wt%〜0.02wt%のビマトプロスと、100ppm〜250ppmの塩化ベンザルコニウムとを含む組成物であって、眼投与用に製剤化された水性液である組成物を開示する。
【0008】
また、緑内障またはこれに関連する高眼圧症の治療に有用な方法も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】数種の製剤の局所投与後のビマトプロストの基礎の酸の房水濃度を示すプロット図である。
【図2】数種の異なる製剤におけるビマトプロストの膜透過性を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
眼投与用に製剤化された水性液は、眼に局所的に投与できるように製剤化されている。時には製剤に関する考慮(例えば薬品安定性)のほうが最適な快適性より必要とされる場合もあるが、快適性はできるだけ最大にすべきである。
【0011】
ある組成物では、ビマトプロストの濃度は0.01%〜0.02%である。また他の組成物のビマトプロストの濃度は、0.015%〜0.02%である。
【0012】
ある組成物では、BAKの濃度は150ppm〜200ppmである。他の組成物のBAKの濃度は150ppm〜200ppmである。他の組成物のBAKの濃度は、150ppm〜250ppmである。
【0013】
眼用組成物で、防腐剤の実効性を上げるためにキレート剤が使用されてもよい。適切なキレート剤は当業者に既知のものであり、エデト酸塩類(EDTA)が有用なキレート剤であるが、これに限定されるものではない。
【0014】
ある組成物では、EDTAの濃度は少なくとも0.001%である。他の組成物のEDTAの濃度は少なくとも0.01%である。他の組成物のEDTAの濃度は0.15%以下である。他の組成物のEDTAの濃度は0.1%以下である。他の組成物のEDTAの濃度は0.05%以下である。
【0015】
ある組成物は、150〜250ppmのBAKと有効量のEDTAとを含む。
【0016】
当業者に知られているように、眼用に望ましい範囲のpHに調整するために、緩衝剤が一般に用いられる。一般的に6〜8程度のpHが望ましく、ある組成物では、7.4のpHが望ましい。リン酸塩、ホウ酸塩および硫酸塩のような無機酸の塩を含む多くの緩衝剤が公知である。
【0017】
眼用組成物において一般に使用される他の賦形剤として、粘度増加剤または増粘剤がある。増粘剤は、使いやすく投与するために製剤の形状を改良するようなことから、生体有効性を向上するために眼との接触を改善するようなことまで、種々の理由で使用される。粘度増加剤は、単糖類、多糖類、エチレンオキサイド基、水酸基、カルボン酸または他の荷電官能基などの親水性基を含有するポリマーを含んでよい。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な粘度増加剤のいくつか例として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0018】
眼科用溶液では、望ましい等張範囲に製剤組成物を調整するために、等張化剤がしばしば使用される。等張化剤は当業者によく知られており、いくつかの例として、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質が挙げられる。
【0019】
一組成物は、pHが7.4であり、本質的に0.015%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClと、水とからなる。
【0020】
他の組成物は、pHが7.4で、0.02%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClと、水とを含む。
【0021】
他の組成物は、pHが7.4で、0.01%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClと、水とからなる。
【0022】
本発明の製造および用途に関する最良の形態を以下に例示する。これらの例は、本発明をどのように製造および使用するかについての説明および指針のためにのみ提供されるものであり、本発明の範囲をどのようにも限定するものではない。
【0023】
一実施形態は、0.01%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム(二塩基性リン酸ナトリウム)・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とを含み、pHは7.3である。
【0024】
他の実施形態は、0.015%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とを含む、pHは7.3である。
【0025】
他の実施形態は、0.015%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、0.03%のEDTAと、水とを含み、pHは7.3である。
【0026】
他の実施形態は、0.02%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とを含み、pHは7.3である。
【0027】
他の実施形態は、本質的に、0.01%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0028】
他の実施形態は、本質的に、0.015%のビマトプロスト、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0029】
他の実施形態は、本質的に、0.015%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、0.03%のEDTAと、水とからなり、pHは7.3である。
【0030】
他の実施形態は、本質的に、0.02%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0031】
他の実施形態は、0.01%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0032】
他の実施形態は、0.015%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0033】
他の実施形態は、0.015%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、0.03%のEDTAと、水とからなり、pHは7.3である。
【0034】
他の実施形態は、0.02%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、水とからなり、pHは7.3である。
【0035】
他の実施形態は、0.0125%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、pHを7.3に調整するのに十分な量の水素化ナトリウムおよび/または塩酸と、水とを含む。
【0036】
他の実施形態は、本質的に、0.0125%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、pHを7.3に調整するのに十分な量の水素化ナトリウムおよび/または塩酸と、水とからなる。
【0037】
他の実施形態は、0.0125%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、pHを7.3に調整するのに十分な量の水素化ナトリウムおよび/または塩酸と、水とからなる。
【実施例1】
【0038】
0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸と、0.83%の塩化ナトリウムと、水をpH7.3に調整するもの、以下の表1に挙げられたビマトプロスト、BAKおよびEDTAとを含む製剤を、当業者によく知られている常套の方法によって製造した。
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
インビボでのビマトプロスト眼吸収における塩化ベンザルコニウム(BAK)とd-αトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)の影響を調べる試験を行った。インビボ試験として、18匹の雌のウサギに1滴28μLの目薬を両眼に点眼し、点眼から60分後に房水試料を集めた(1製剤あたりn=3匹で、6個の眼)。2匹のウサギ(4個の眼)は処置せずに残し、投与前の生物分析コントロールとした。房水およびインビトロ試料から抽出したビマトプロストおよびその基礎となるカルボン酸を、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC-MS/MS)法によって、0.25-60ng/mLの計量範囲で分析した。
【0041】
ウサギの眼の中でのビマトプロストの過剰な代謝のため、ビマトプロストの眼吸収を測定するために、基礎の酸をサロゲート(代替)として使用した。6種の異なるビマトプロスト製剤の一回投与後のウサギ房水中の酸の濃度を、図1および以下の表2にまとめる。
【0042】
【表2】

a 平均±SD 1製剤当たりN=3匹のウサギ(6個の眼)
* 0.03%のビマトプロストと比較して有意差がある(p<0.05)。
【0043】
0.015%、0.2%、0.4%および1.0%のTPGSを含むテスト製剤は、ビマトプロストと比較して、それぞれ、52%、59%、62%および72%低い房水カルボン酸濃度を示す結果となった。これに対して、200ppmのBAKを含む0.03%ビマトプロストは、ビマトプロスト(50ppmBAK)と比較して、57%高い房水AGN191522濃度を示す結果となった。
【0044】
本発明の範囲をどのようにも限定するものではなく、またいかなる理論によっても拘束されることを意図しないが、ビマトプロストコントロールと比較すると、TPGSを含む製剤は、ビマトプロストの透過性を下げる結果となった。これに対し、BAKを多く含む製剤は、高い透過性を示す結果となった。
【実施例3】
【0045】
0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸と、0.83%の塩化ナトリウムと、水をpH7.3に調整するもの、以下の表3に挙げられたビマトプロスト、BAKおよびEDTAとを含む製剤を、当業者によく知られている従来の方法によって製造した。
【0046】
【表3】

【実施例4】
【0047】
ウサギ角膜上皮細胞層(RCECL)の一次培養物を横切るビマトプロスト透過性における塩化ベンザルコニウム(BAK)とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の影響。角膜上皮細胞は、ニュージーランド・ホワイトウサギから採取し、TranswellTMフィルター上で、前面成長するまで(5日目)培養した。移動実験のために、細胞を先ず、移動緩衝剤中で37℃、1時間平衡化した。次いで、0.015%または0.03%のビマトプロストと種々の濃度のBAKおよびEDTAとを含む投与溶液を、TranswellTMの成長点区画に塗布し(2培養物;1培養物につきn=3〜4)、細胞を37℃で培養した。点眼から30分、60分、90分および120分後に点眼し、200μLの試料を、尖端用側底チャンバーから取り出し側底(AB)輸送した。試料を、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC-MS/MS)方法によって1〜600ng/mLの計量範囲で分析した。
【0048】
結果を図2に示す。
【実施例5】
【0049】
製剤Jを、緑内障を患う人の目に毎日1滴局所的に投与する。数時間後、製剤Aに関して観察されるのより、眼内圧が下がり、充血が減ったのが観察される。眼圧の低下は処置が続く限り存続する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.005wt%〜0.02wt%のビマトプロストと、100pm〜250ppmの塩化ベンザルコニウムとを含む組成物であって、眼用投与のために製剤化された水性液である組成物。
【請求項2】
さらに有効量のEDTAを含む請求項1に記載の組成物
【請求項3】
塩化ベンザルコニウムの濃度が150ppm〜200ppmである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
pHが7.4であって、本質的に、0.015%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClと、水とからなる請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ビマトプロストの濃度が0.01%〜0.02%である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ビマトプロストの濃度が0.015%〜0.02%である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
塩化ベンザルコニウムの濃度が150ppm〜200ppmである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
塩化ベンザルコニウムの濃度が200ppmである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに有効量のEDTAを含む請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
pHが7.4であり、0.015%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClとを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
pHが7.4であり、0.015%のビマトプロストと、200ppmの塩化ベンザルコニウムと、0〜0.03%のEDTAと、リン酸緩衝剤と、NaClと、水とからなる請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
緑内障または高眼圧を患う哺乳類に、0.005wt%〜0.02wt%のビマトプロストと、100ppm〜250ppmの塩化ベンザルコニウムとを含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項13】
0.001%〜0.15%のEDTAを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
0.01%〜0.1%のEDTAを含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
0.01%〜0.05%のEDTAを含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
150〜250ppmのBAKを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
0.0125%のビマトプロストと、0.02%の塩化ベンザルコニウムと、0.268%のリン酸2ナトリウム・七水和物と、0.014%のクエン酸・一水和物と、0.81%の塩化ナトリウムと、pHを7.3に調整するのに充分な量の水素化ナトリウムおよび/または塩酸と、水とを含む請求項5に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148827(P2011−148827A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99657(P2011−99657)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2006−527201(P2006−527201)の分割
【原出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】