説明

壁パネルおよびこれを用いた建物

【課題】壁パネルの製造コストおよび組立工数を削減できる壁パネルおよびこれを用いた建物を提供すること。
【解決手段】壁パネル5は、縦に約3.6m(12尺)の長さで収納区画32のある一階の壁面と中二階33の壁面とが一体で形成され、下端から約1.2mの位置に、収納区画32と中二階33との境界部分に配置される収納区画天井パネル331を支持する埋木51が内部に設けられている。また、壁パネル5の上端から約1.2mの位置には、埋木52が内部に設けられており、埋木51から埋木52までの寸法と、壁パネル5の上端から埋木52までの寸法と、壁パネル5の下端から埋木51までの寸法とがそれぞれ約1.2mとなるように構成されている。また、埋木51に対応する位置に係止部53が設けられており、収納区画天井パネル331を載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネルおよびこれを用いた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の構築においては、あらかじめ工場などで製造された木質パネルを現場で組み立てて、建物の床、壁、屋根等を構築するパネル工法が知られている(たとえば特許文献1参照)。このようなパネル工法による二階建ての住宅においては、例えば、図7のように一階壁用パネル61上に二階床パネル62を設置して床を構築し、その床パネル61上に二階用壁パネル63を設置して二階壁を形成する。
また、特許文献2に示される建物には、二階に天井高さが規定寸法より低い収納区画が形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−54304号公報(図1参照)
【特許文献2】特開平6−323007号公報(図3および図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した図7に記載のパネル工法では、一階用壁パネル61、二階用壁パネル63のように各階毎に壁パネルを製造する必要がある。特に、収納区画を有する二階では、収納区画の一階よりも高さ寸法の高い壁パネルを用いる必要がある。しかも、収納区画を外壁パネルに隣接して形成する場合では、収納区画用天井パネルを外壁パネルに支持するための収納区画用支持部材を設けなければならない。そのため、壁パネルでは、各階毎に形状、大きさがなど異なることから、製造コストが高いという課題があり、実際の組み立て作業においても、組み立て工程が増えて作業が煩雑となるという課題もある。
【0005】
本発明の目的は、製造コストおよび組立工数を削減できる壁パネルおよびこれを用いた建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁パネルは、図面を参照して説明すると、下階と上階との少なくとも一方に天井高が規定寸法より低くなった収納区画32が形成される建物1に設けられる壁パネル5であって、前記下階に対応する部分と前記上階に対応する部分とが一体形成され、前記下階と前記上階との境界部分に配置される床パネル342を支持する床用支持部材52と、前記収納区画32を形成する収納区画用天井パネル331を支持する収納区画用支持部材51との少なくとも一方を内部に設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、壁パネル5を下階部分から上階部分まで一体で形成し、さらにこの壁パネル5に床用支持部材52および収納区画用支持部材51を少なくとも一方に設けたので、床パネル342を接合する場合でも収納区画32を形成する場合でも、壁パネル5を兼用できる。そのため、下階用と上階用とで壁パネル5を別々に製造したり、あるいは、収納区画32を形成する場合と形成しない場合とで別々に壁パネル5を製造する場合に比べて部品点数を減少することができる。
【0008】
本発明の壁パネルでは、前記床用支持部材52と前記収納区画用支持部材51とは上下方向に配置されており、これらの床用支持部材52と収納区画用支持部材51との間の寸法と、パネル上端とパネル下端のいずれか一方と前記床用支持部材52が配置される位置との間の寸法と、パネル上端とパネル下端のいずれか他方と前記収納区画用支持部材51が配置される位置との間の寸法とは、略同じである構成が好ましい。
この発明によれば、上端および下端のどちらの位置からも同じ寸法距離でこれらの支持部材が配置されるように構成しているので、上下の向きに注意を払う必要もなく使用することができる。
【0009】
本発明の壁パネルでは、前記床用支持部材52と前記収納区画用支持部材51とのいずれかに対応する位置にパネルを係止する係止部53が突出して設けられている構成が好ましい。
この発明によれば、壁パネル5に埋設された支持部材に係止部53を釘打ちなどで固定し、この係止部53に床パネル342や収納区画用天井パネル331を支持する。
そのため、係止部53で床パネル342や収納区画用天井パネル331を確実に取り付けることができる。さらに、床パネル342などを取り付ける必要のない場所では、係止部53を設ける必要がないから、外観が良好となる。
【0010】
本発明の壁パネルでは、前記床用支持部材52および前記収納区画用支持部材51と、パネル上端部とパネル下端部とにそれぞれ配置され前記床用支持部材52および前記収納区画用支持部材51にそれぞれ略平行に配置された枠材501,502と、これらのうち1つの枠材501の端部と前記床用支持部材52の端部との間に斜めに配置された斜材504と、残り1つの枠材502の端部と前記収納区画用支持部材51の端部との間に斜めに配置された斜材504と、前記床用支持部材52の端部と前記収納区画用支持部材51の端部との間に斜めに配置された斜材504とを備え、これらの斜材504の端部同士が互いに連結された構成が好ましい。
この発明によれば、複数の斜材、床用支持部材及び収納区画用支持部材からトラス構造が構成されることになり、地震等に対して十分な補強を図れるだけでなく、床用支持部材や収納区画用支持部材に大きな荷重がかかっても、その荷重をトラス構造により無理なく支持することができる。
【0011】
本発明の建物は、上述のいずれかに記載された壁パネル5を備えたことを特徴とする。
この発明によれば、前述の効果を有する建物1を提供することができる。
【0012】
本発明の建物では、前記床パネル342は上面と下面とにそれぞれ面材が配置されている構成が好ましい。
この発明によれば、床パネル342の上面と下面とにそれぞれ面材が配置されているので、床パネル342自体の強度を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る壁パネルが適用された建物1の全体斜視図が示されている。
建物1は、基礎2と、この基礎2の上に設けられた建物本体3と、この建物本体3の上に設けられた屋根4とを備えている。
屋根4は、切妻屋根とされ、互いに反対方向に傾斜した傾斜屋根部41,42を備えている。
【0014】
建物本体3は、二階建てとされ、その一部は、一階床パネル311から屋根4の下面に設けられた天井312まで吹抜け構造とされている。また、この一階31の吹き抜け部分の空間に隣接する形で、天井高が約1.1〜1.4mの収納区画32が形成されており、収納区画32の天井面として収納区画天井パネル331が設けられている。この収納区画天井パネル331の上面側を床面として中二階33が形成されている。収納区画32へは、一階31から収納区画出入り口321を通ることで入ることができ、また、中二階33へは、一階階段313を上り、中二階廊下332を通り、中二階出入り口333を通ることで入ることができるように構成されている。そこからさらに中二階廊下332を通り、中二階階段334を上り、二階出入り口341を通ることで二階34へ入ることができるように構成されている。また、二階334は、一階居室35の上面に設けられている。
【0015】
図2は図1のII−II断面図である。
一階には収納区画32が形成されており、その壁面を壁パネル5の一部で構成されている。
壁パネル5は、枠体(図示省略)の外面に外壁面材5A取り付け、内面に内壁側面材5Bを取り付け、内部には図示しない桟が設けられたもので、縦に約3.6m(12尺)の長さで収納区画32のある一階の壁面と中二階33の壁面とが一体で形成され、下端から約1.1〜1.4mの位置に、収納区画32と中二階33との境界部分に配置される収納区画天井パネル331を支持する収納区画用支持部材としての埋木51が内部に設けられている。また、壁パネル5の上端から約1.2mの位置には、床用支持部材としての埋木52が内部に設けられており、埋木51から埋木52までの寸法と、壁パネル5の上端から埋木52までの寸法と、壁パネル5の下端から埋木51までの寸法とがそれぞれ約1.1〜1.4mとなるように構成されている。また、収納区画天井パネル331を埋木51に対応する位置に載置するために係止部53が設けられている(図3参照)。
【0016】
係止部53は、壁パネル5の内壁側から埋木51に対して釘54を使用して固定され、収納区画天井パネル331を載置できるように内側へ向かって突出している。また、この場合は床パネルが載置されない埋木52の部分には係止部53は設けられていない。
【0017】
収納区画天井パネル331は、係止部53と接触する位置に下面から上方に向けて収納区画天井パネル331の略半ばまで切り欠き335が形成され、係止部53に対して載置し易い形状になっている。なお、収納区画天井パネル331の厚みが薄い場合には切り欠き335は不要である。
また、収納区画天井パネル331の上面には床面材331Aが、下面には床面材331Bがそれぞれ配置されている。
【0018】
図4は図1におけるIV−IV断面図である。
図4には、床用支持部材である埋木52に対して二階床パネル342を載置した構成が示されている。また、図4の壁パネル5は、図2に用いられている壁パネル5の上下の向きを逆にしたものを用いている。
この場合、二階部分は規定寸法よりも天井高が低く構成される。その寸法は、一番低い部分で約1.1〜1.4mとなり、そこから天井の形状に沿って高くなっている。また、埋木51と同様に、係止部53が壁パネル5の内壁側から埋木52に対して釘(図3と同様のため図示省略)を使用して固定され、二階床パネル342を載置できるように内側へ向かって突出している。また、この場合は床パネルが載置されない埋木51の部分には係止部53は設けられていない。
【0019】
二階床パネル342は、係止部53と接触する位置に下面から上方に向けて二階床パネル342の略半ばまで切り欠き343が形成され、係止部53に対して載置し易い形状になっている。また、二階床パネル342の上面には床面材342Aが、下面には床面材342Bがそれぞれ配置されている。
【0020】
このような第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)壁パネル5を一階部分から二階部分まで一体で形成し、さらに壁パネル5に埋木51,52および係止部53を設けたので、収納区画天井パネル331によって収納区画32を形成する場合でも、二階床パネル342によって二階34を形成する場合でも、壁パネル5を兼用できるので、一階用と二階用とで壁パネルを別々に製造したり、あるいは、収納区画32を形成する場合と形成しない場合とで別々に壁パネルを製造する場合に比べて部品点数を減少することができる。
【0021】
(2)下端から上端まで約3.6mの壁パネル5に対して、埋木51から埋木52までの寸法と、壁パネル5の上端から埋木52までの寸法と、壁パネル5の下端から埋木51までの寸法とがそれぞれ約1.1〜1.4mの範囲で等しくなるように構成した。そのため、パネル端部と埋木51,52との間が三等分されることによって、上下の向きに注意を払う必要もなく使用することができる。
【0022】
(3)収納区画天井パネル331または二階床パネル342などを取り付ける必要のない場所では、係止部53を設ける必要がないから、外観が良好となる。
(4)収納区画天井パネル331および二階床パネル342は、両面に床面材がそれそれ配置されているので、パネル自体の剛性を強化することができる。
【0023】
(5)収納区画天井パネル331および二階床パネル342の係止部53と接触する部位に切り欠き335,342を備えることで、より安定してこれらのパネルを支持することができる。
(6)収納区画天井パネル331および二階床パネル342の係止部53と接触する部位に切り欠き335,342を備えることで、係止部53が下面に突出することもなく、外観が良好となる。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態について図5および図6に基づいて説明する。
図5は第2実施形態の建物の全体を示す概略斜視図である。第2実施形態は第1実施形態とは建物本体30の外壁の構造が主に相違するものであり、他の構造は第1実施形態と略同じである。なお、第2実施形態の説明において第1実施形態と同じ構成は同一の符号を付して説明を省略する。
図5において、建物の外壁部は、壁パネル5および壁パネル50を備えて構成されている。壁パネル50は、主に補強が必要な部分、例えば、建物の隅部にL字型となるように複数が並べて配置されている。
【0025】
壁パネル50の具体的な構造が図6に示されている。
図6において、壁パネル50は、パネル上端部とパネル下端部とにそれぞれ配置された枠材501,502と、これらの枠材501,502の端部同士を接続する縦枠材503と、隣合う縦枠材503の間に設けられた埋木51,52と、これらの枠材501,502および埋木51,52のうち隣合う部材間に斜めに配置される斜材504と、パネル表裏面を覆う図示しない面材とを備えた構造である。この壁パネル50は壁パネル5と同様にパネル端部と埋木51,52との間が三等分される。なお、枠材501〜503、埋木51,52および斜材504は鋼材から形成してもよく、木材から形成してもよい。
複数の斜材504は、その端部同士が連結されており、埋木51,52とともにトラス構造を構成する。
【0026】
従って、第2実施形態では第1実施形態の作用効果を奏する他、次の作用効果を奏することができる。
つまり、第2実施形態では、壁パネル50は埋木51,52と、パネル上端部とパネル下端部とにそれぞれ配置され埋木51,52にそれぞれ略平行に配置された枠材501,502と、これらの部材のつち隣り合う部材間にそれぞれ斜めに配置された斜材504とを備え、これらの斜材504の端部同士が互いに連結されたトラス構造としたので、地震等に対して十分な補強を図れるだけでなく、埋木51,52に大きな荷重がかかっても、その荷重をトラス構造により無理なく支持することができる。
【0027】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、埋木51および埋木52の位置は、下端から約1.1〜1.4mの範囲の所定位置ごとに内部に設けられていたが、もっと数を増やし、例えば、約0.6mごとに埋木を設け、より床パネルの配置位置を柔軟に行えるようにしてもよい。
また、係止部53は、埋木51および埋木52に対して釘を用いて固定されているが、これに限らず、例えば、接着剤等を用いて固定してもかまわない。
【0028】
また、収納区画天井パネル331および二階床パネル342の係止部53と接触する部位には切り欠きが形成されているが、例えば、コ字状にくり貫いて嵌合させる構成でもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、一般的なパネル工法の建物に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建物を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】本実施形態の要部を示す拡大断面図。
【図4】図1のIV−IV線断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る建物の全体を示す概略斜視図。
【図6】第2実施形態の壁パネルを示す正面図。
【図7】従来例を示す建物の断面図。
【符号の説明】
【0031】
1…建物
2…基礎
3…建物本体
4…屋根
5…壁パネル
51…埋木
52…埋木
53…係止部
331…収納区画天井パネル
331A…床面材
331B…床面材
335…切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階との少なくとも一方に天井高が規定寸法より低くなった収納区画が形成される建物に設けられる壁パネルであって、
前記下階に対応する部分と前記上階に対応する部分とが一体形成され、前記下階と前記上階との境界部分に配置される床パネルを支持する床用支持部材と、前記収納区画を形成する収納区画用天井パネルを支持する収納区画用支持部材との少なくとも一方を内部に設けたことを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の壁パネルにおいて、前記床用支持部材と前記収納区画用支持部材とは上下方向に配置されており、これらの床用支持部材と収納区画用支持部材との間の寸法と、パネル上端とパネル下端のいずれか一方と前記床用支持部材が配置される位置との間の寸法と、パネル上端とパネル下端のいずれか他方と前記収納区画用支持部材が配置される位置との間の寸法とは、略同じであることを特徴とする壁パネル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の壁パネルにおいて、前記床用支持部材と前記収納区画用支持部材とに対応する位置にパネルを係止する係止部が突出して設けられていることを特徴とする壁パネル。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された壁パネルにおいて、前記床用支持部材および前記収納区画用支持部材と、パネル上端部とパネル下端部とにそれぞれ配置され前記床用支持部材および前記収納区画用支持部材にそれぞれ略平行に配置された枠材と、これらのうち1つの枠材の端部と前記床用支持部材の端部との間に斜めに配置された斜材と、残り1つの枠材の端部と前記収納区画用支持部材の端部との間に斜めに配置された斜材と、前記床用支持部材の端部と前記収納区画用支持部材の端部との間に斜めに配置された斜材とを備え、これらの斜材の端部同士が互いに連結されたことを特徴とする壁パネル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載された壁パネルを備えた建物。
【請求項6】
請求項5に記載された建物であって、前記床パネルは上面と下面とにそれぞれ面材が配置されていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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