説明

壁パネル取付構造

【課題】 壁パネルへの傷付きを防止でき、しかも締め易く、安定且つ確実強固に固定できる壁パネル取付構造を提供する。
【解決手段】 取付金具3の第1フランジ10はパネル支持フレーム1の第1フランジ7に対向するよう配置され、第2フランジ8はウェブ6に沿うように配置される。第1フランジ7,10間に壁パネル2の側端部2aを落し込んだ状態で、予め第2フランジ11の山頂部11a及びウェブ6に貫通させたボルト4、及びナット5を本締めする。すると取付金具3はウェブ6に当接する当接部12を支点にして第2フランジ11がウェブ6側に回転するよう引き寄せられると同時に、ボルト頭4a及びナット5の押付けにより取付金具3の第2フランジ12がこれの一片部11bと他片部11cの成す角度を大きくしてウェブ6側に接近するよう弾性変形し第1フランジ11が壁パネル2側に近づき、壁パネル2の側端部2aが第1フランジ7側に押圧固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式立体駐車場など建物の壁パネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の壁パネル取付構造として、たとえば、図5に示すように、H形状のパネル支持フレーム20のウェブ21の両側に断面略山形状の取付金具22,22が配置される。その際、取付金具22の第1フランジ23がパネル支持フレーム20の第1フランジ24に対し間隔を置いて平行に配置され、第2フランジ25がウェブ21に沿うように配置される。第1フランジ23,24間に壁パネル(外壁パネル)26の側端部26aを挿入した状態で、第2フランジ25及びウェブ21にボルト27を貫通してナット28に締結する。これにより、取付金具22の第2フランジ25先端の当接部29をウェブ21に圧接させつつ、両取付金具22,22をウェブ21側に押圧させることにより、取付金具22の第1フランジ23により壁パネル26の側端部26aをパネル支持フレーム20の第1フランジ24側に押圧して固定する、というものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−146956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記壁パネル取付構造では、ボルト27・ナット28を締付けることにより取付金具22はウェブ21に圧接する当接部29を支点にして第2フランジ25がウェブ21側に少量回転するよう引き寄せられるが、その回転に伴い、第1フランジ23の先端のエッジ部23aが第1フランジ23の他の箇所よりも壁パネル26の側端部26aの内面側に局部的に強く圧接するため、その第1フランジ23のエッジ部23aで壁パネル26の内面に傷付きが生じやすく、この傷付き箇所に雨水が浸入して錆発生の原因になる。また、ボルト27・ナット28の締付けにより第1フランジ23が壁パネル26の側端部26aの内面側に一様な押圧力で面接触し難いため、パネル支持フレーム20の第1フランジ24との間での壁パネル26の挟持力を欠きやすい憂いがある。
【0005】
また、ボルト27・ナット28を締めるにつれて取付金具22の第2フランジ25が傾いてこの第2フランジ25の締付ける面が平らでなくなり、このためボルト頭27aの座面27b上の外周縁の一点27cのみ、ナット28の座面28b上の外周縁の一点28cのみが第2フランジ25に局部的に強く食込むようになるため締め難くなり、無理やりに締め過ぎるとボルト27の軸部が変形したり、ボルト27やナット28のねじ山部が潰れたりする不具合が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、I形状もしくはH形状のパネル支持フレームに対し壁パネルの側端部を断面略山形状の取付金具をもって固定する壁パネル取付構造において、取付金具の第2フランジの断面形状と該第2フランジに対するボルト締結箇所とに改善を加えることにより取付金具の第1フランジを壁パネルの側端部に対し均等かつ強い押圧力で面接触できるようにして壁パネルへの傷付きを防止でき、しかも締め易く、安定かつ確実強固に固定できる壁パネル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の壁パネル取付構造は、その発明の内容を理解しやすくするために図2〜図4に示した符号を参照して説明すると、ウェブ(6)の両端に第1,2フランジ(7),(8)を有する断面I形状もしくはH形状に形成され、水平方向に所定間隔置きに立設される複数のパネル支持フレーム(1)と、相隣るパネル支持フレーム(1),(1)間に配置される壁パネル(2)と、パネル支持フレーム(1)の第1フランジ(7)に壁パネル(2)の側端部(2a)を介して対向する第1フランジ(10)と、この第1フランジの一端縁に折り曲げ連設されパネル支持フレーム(1)のウェブ(6)に対向する第2フランジ(11)、及びこの第2フランジの先端縁に設けられ前記ウェブ(6)に当接する当接部(12)とを有する断面略山形状に形成され、前記パネル支持フレーム(1)のウェブ(6)を挟んで両側に、前記パネル支持フレーム(1)の縦長方向に沿って配置される一対の取付金具(3),(3)と、前記ウェブ(6)を挟む前記一対の取付金具(3),(3)の各第2フランジ(11)と前記ウェブ(6)に貫通されるボルト(4)、およびこのボルトにはめ合わされるナット(5)とを備えている壁パネル取付構造において、前記取付金具(3)の第2フランジ(11)が、前記ウェブ(6)から最も離間する山頂部(11a)を有する弾性変形可能な断面山形状に形成され、前記山頂部に前記ボルト(4)が貫通するよう構成されていることに特徴を有するものである。
【0008】
一つの好適な態様として、本発明による壁パネル取付構造は、前記第2フランジの断面山形状は「く」の字形状に形成しており、この断面「く」の字形状の第2フランジの山頂部である屈曲部に前記ボルトが貫通するよう構成することができる。また、前記第2フランジの断面山形状は円弧形状を形成しており、この断面円弧形状の第2フランジの前記ウェブから最も離間する山頂部に前記ボルトが貫通するよう構成することもできる。さらに、前記第2フランジの断面山形状は平底皿形状を形成しており、この断面平底皿形状の第2フランジの前記ウェブから最も離間する山頂部である平底部に前記ボルトが貫通するよう構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による壁パネル取付構造によれば、パネル支持フレームのウェブの両側に配置される一対の取付金具の各第2フランジが、ウェブから最も離間する山頂部を有する弾性変形可能な断面山形状に形成され、その山頂部にボルトが貫通するよう構成されている。したがって、ボルト・ナットを締付けると、一対の取付金具はウェブに当接する当接部を支点にして各第2フランジがウェブ側に回転するよう互いに引き寄せられると共に、ボルト頭及びナットの押付けに伴い両取付金具の各第2フランジが断面山形状を平らにするよう弾性変形し、この弾性変形に伴い各第1フランジが壁パネル側に向かって近づくようほぼ平行移動する。このように一対の取付金具が各当接部を支点にしてウェブ側に回転する各第2フランジの回転作用と、各第2フランジの弾性変形に伴い各第1フランジの壁パネル側に近づくほぼ平行な移動との相乗作用によって両取付金具の各第1フランジが壁パネルの側端部の内面側に略均等圧で面接触状態に押圧して固定することができる。このため、壁パネルを安定かつ確実強固に固定でき、また図5に示す従来例のような第1フランジ23の先端のエッジ部23aによる壁パネル26への傷付け問題を解消できる。
【0010】
また、上記のようにボルトは断面山形状の第2フランジの山頂部に貫通させておくと、ボルト・ナットの締付け時にボルト頭及びナットはそれぞれの座面上の直径方向の線上で第2フランジの山頂部を縦走方向に沿って安定よく踏む状態が得られるためボルト・ナットを締め易く、この結果無理やりに締め過ぎることもなくなるためボルトの軸部を変形させたりボルトやナットのねじ山部を潰したりする憂いもない。
【0011】
また、第2フランジの山頂部においてボルト頭及びナットは第2フランジを安定よくかつ効果的に押圧して弾性変形させることができる。第2フランジはばね作用を有効に発揮するので、ボルト・ナットの締付け時にナットと第2フランジの山頂部との接触面間に摩擦力が生じてナットが空回りするのを阻止し、また締付け後にはボルト・ナットのゆるみ止め機能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示す壁パネル取付構造を適用した自走式立体駐車場の壁パネル納まり状態の一部斜視図、図2は図1におけるA−A線拡大断面図、図3は他の実施例の壁パネル取付構造を図2に相応して示す断面図、図4は更に他の実施例の壁パネル取付構造を図2に相応して示す断面図である。
【0013】
本発明に係る壁パネル取付構造の全体的構成は、図5に示す従来例のものと同様であって、図1、図2に示すように、自走式立体駐車場等の建物において水平方向に所定間隔置きに立設されるI形鋼またはH形鋼などからなる複数のパネル支持フレーム1と、相隣るパネル支持フレーム1,1間に配置される壁パネル(外壁パネル)2と、各パネル支持フレーム1内に該パネル支持フレーム2の縦長方向に沿って配置される一対の取付金具3,3と、この一対の取付金具3,3及びパネル支持フレーム1に貫通されるボルト4、及び該ボルト4にはめ合わされるナット5とを備えたものである。
【0014】
図2に示すように、各パネル支持フレーム1は、ウェブ6の両端に第1,2フランジ7,8を有する断面I形状もしくはH形状に形成され、建物に対し第1フランジ7を外側に、第2フランジ8を内側にして配置される。ウェブ6にはその長手方向に所定間隔置きにボルト挿通孔9を設けている。
【0015】
一方、各取付金具3は、パネル支持フレーム1の第1フランジ7に対向する第1フランジ10と、この第1フランジ10の一端縁に折り曲げ連設されウェブ6に対向する第2フランジ11、及びこの第2フランジ11の先端縁に設けられウェブ6に当接する当接部12とを有する断面略山形状に形成される通し材からなる。そして、この取付金具3の第2フランジ11はパネル支持フレーム1のウェブ6から最も離間する山頂部11aを有する弾性変形可能な断面山形状、即ち山頂部11aから一方向へ下り傾斜しこの下り側端に当接部12を有する一斜辺部11bと、山頂部11aから他方向へ下り傾斜しこの下り側端に第1フランジ10を連設するもう一つの斜辺部11cとからなる断面「く」の字形状に形成され、その山頂部11aである屈曲部にボルト4の軸部が緩装状態に貫通し得るボルト挿通孔13をその長手方向に所定間隔置きに設けている。
【0016】
次に、図1のように水平方向に所定間隔置きに立設された上記パネル支持フレーム1,1間に壁パネル2を取り付ける施工要領について説明する。
先ず、各パネル支持フレーム1のウェブ6の両側に取付金具3,3が各第1フランジ10をパネル支持フレーム1の第1フランジ7に対向させ、第2フランジ11をパネル支持フレーム1のウェブ6に対向させるとともに、第2フランジ11の先端縁の当接部12をウェブ6に当接させるようにパネル支持フレーム1の縦長方向に沿って配置される。そして、ボルト4がウェブ6を挟む一対の取付金具3,3の各第2フランジ11のボルト挿通孔13とウェブ6のボルト挿通孔9に貫通されるとともに、該ボルト4の先端にナット5がはめ合わされることにより各パネル支持フレーム1のウェブ6の両側に取付金具3,3が仮止めされる。
【0017】
次いで、壁パネル2をこれの側端部2aがパネル支持フレーム1の第1フランジ7と取付金具3の第1フランジ10間の隙間に入り込むよう落し込む。この落し込み作業は建物のフロア−から行える。したがって、無足場で簡単に施工でき、足場を必要とする施工に比し大幅な工期短縮が図れる。
【0018】
最後に、ボルト4・ナット5を本締めすることにより一対の取付金具3の各第1フランジ10が壁パネル2の側端部2aをパネル支持フレーム1の第1フランジ7側に押付け、壁パネル2が固定される。すなわち、ボルト4・ナット5を本締めすると、一対の取付金具3はウェブ6に当接する各当接部12を支点にして各第2フランジ11がウェブ6側に回転するよう互いに引き寄せられて各第1フランジ10が壁パネル2の側端部2aの内面に押圧接当する。それと同時に、ボルト頭4a及びナット5の押付けに伴い一対の取付金具3の各第2フランジ11が断面山形状を平らにするよう、即ち斜辺部11bと斜辺部11cの成す角度θを大きくしてウェブ6側に接近するよう弾性変形し、その斜辺部11cの変形に伴い第1フランジ10が壁パネル2側に近づくようほぼ平行移動する。このように一対の取付金具3が各当接部12を支点にしてウェブ6側に回転する各第2フランジ11の回転作用と、各第2フランジ11の弾性変形に伴い第1フランジ1が壁パネル2側に近づくほぼ平行な移動との相乗作用によって一対の取付金具3の各第1フランジ10が壁パネル2の側端部2aの内面側を略均等圧で面接触状態に押圧する。これにより一対の取付金具3の各第1フランジ10とパネル支持フレーム1の第1フランジ7との間で壁パネル2の側端部2aが安定よくかつ確実強固に固定される。
【0019】
このように取付金具3の第1フランジ10を壁パネル2の側端部2aの内面に対しほぼ均等かつ強い押圧力で面接触させることができるので、壁パネル2の安定した確実強固な固定が可能であり、また図5に示す従来のような第1フランジ23の先端のエッジ部23aによる壁パネル26への傷付きを防止できる。
【0020】
ボルト4は断面山形状の第2フランジ11の山頂部11aに貫通させることにより、ボルト4・ナット5の締付け時にボルト頭4aの座面及びナット5の座面は第2フランジ11の山頂部11aを安定よく踏む状態が得られるためボルト4・ナット5を締付け易く、締め過ぎによりボルト4の軸部を変形させたりボルト4やナット5のねじ山部を潰したりすることもない。第2フランジ11はばね作用を発揮するので、ボルト4・ナット5の締付け時にナット5の空回りを阻止することができる。
【0021】
また、ボルト頭4a及びナット5は断面山形状の第2フランジ11の山頂部11aに当接させて締付けるので第2フランジ11を安定かつ確実に弾性変形させることができる。ボルト4・ナット5の締付け後には第2フランジ11のばね作用によりボルト4、ナット5の締付けが振動等によりゆるむのを防止できる。
【0022】
或る壁パネル2が損傷、破損した場合は、ボルト4・ナット5の締付けをゆるめることによりその壁パネル2の取替えを簡単に行なうことができる。
【0023】
上記実施例では取付金具3の第2フランジ11の断面山形状が「く」の字形状になしているが、これに代えて、図3に示すように第2フランジ11の断面山形状は円弧形状に形成し、この断面円弧形状の第2フランジ11のウェブ6から最も離間する山頂部にボルト貫通孔13を設けてボルト4が貫通するよう構成することもできる。また、第2フランジ11の断面山形状は平底皿形状に成し、この断面平底皿形状の第2フランジ11のウェブ6から最も離間する山頂部である平底部にボルト貫通孔13を設けてボルト4が貫通するよう構成することもできる。これら図3、図4に示す実施例においても図2に示す上記実施例の壁パネル取付構造の場合とほぼ同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す壁パネル取付構造を適用した自走式立体駐車場の壁パネル納まり状態の一部斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図である。
【図3】他の実施例の壁パネル取付構造を図2に相応して示す断面図である。
【図4】更に他の実施例の壁パネル取付構造を図2に相応して示す断面図である。
【図5】従来例の壁パネル取付構造の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 パネル支持フレーム
2 壁パネル
3 取付金具
4 ボルト
5 ナット
6 ウェブ
7 パネル支持フレームの第1フランジ
8 パネル支持フレームの第2フランジ
10 取付金具の第1フランジ
11 取付金具の第2フランジ
11a 山頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの両端に第1,2フランジを有する断面I形状もしくはH形状に形成され、水平方向に所定間隔置きに立設される複数のパネル支持フレームと、
相隣るパネル支持フレーム間に配置される壁パネルと、
前記パネル支持フレームの第1フランジに前記壁パネルの側端部を介して対向する第1フランジと、この第1フランジの一端縁に折り曲げ連設され前記パネル支持フレームのウェブに対向する第2フランジ、及びこの第2フランジの先端縁に設けられ前記ウェブに当接する当接部とを有する断面略山形状に形成され、前記パネル支持フレームのウェブを挟んで両側に、前記パネル支持フレームの縦長方向に沿って配置される一対の取付金具と、
前記ウェブを挟む前記一対の取付金具の各第2フランジと前記ウェブに貫通されるボルト、および前記ボルトにはめ合わされるナットと、
を備えている壁パネル取付構造において、
前記取付金具の第2フランジが、前記ウェブから最も離間する山頂部を有する弾性変形可能な断面山形状に形成され、前記山頂部に前記ボルトが貫通するよう構成されていることを特徴とする、壁パネル取付構造。
【請求項2】
前記第2フランジの断面山形状は「く」の字形状を成しており、この断面「く」の字形状の第2フランジの屈曲部に前記ボルトが貫通するよう構成している、請求項1記載の壁パネル取付構造。
【請求項3】
前記第2フランジの断面山形状は円弧形状を成しており、この断面円弧形状の第2フランジの前記ウェブから最も離間する山頂部に前記ボルトが貫通するよう構成している、請求項1記載の壁パネル取付構造。
【請求項4】
前記第2フランジの断面山形状は平底皿形状を成しており、この断面平底皿形状の第2フランジの前記ウェブから最も離間する山頂部である平底部に前記ボルトが貫通するよう構成している、請求項1記載の壁パネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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