説明

壁暖房パネル

【課題】現場毎に柱や間柱、胴縁等の躯体の位置関係が異なる場合であっても良好に施工対応でき、釘やねじ等の締結具により壁面への良好な固定が可能な壁暖房パネル壁暖房パネルを提供する。
【解決手段】壁面7に締結具により固定される下地パネル1と、表面に化粧層を有するとともにその裏面側に発熱体3が過半面積を占めるよう配設された基材層を有する化粧パネル2とを重合固定してなる壁暖房パネルAであって、下地パネル1の表面には、当該表面に化粧パネル2を重合したときに発熱体3が投影される発熱体対応位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられ、化粧パネル2の表面には、発熱体3の配設位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は壁暖房パネルに関し、さらに詳しくは、建築物の壁面に締結具を用いて取り付けられる壁暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅のリビングルームやトイレルームを暖房する方法のひとつとして、壁面にパネルヒーター等の発熱体を埋め込んで壁全体を発熱させる壁暖房パネルを用いる方法が知られている。上記パネルヒーター等の発熱体は、一般的に壁本体、例えば石膏ボード等に直接固定され、その上面に化粧用の突き板が貼着された合板等の表面化粧材を施工することが行われている。
【0003】
この壁暖房パネルの施工は、釘やねじ等の締結具を壁暖房パネルの表面から壁面に対して打ち込むことで行われているが、このとき、十分な固定強度を得るため、締結具を壁内部の柱や間柱、胴縁の位置にて打ち込む必要がある。その一方で、締結具は壁暖房パネルの発熱体を外した打込み可能位置にて打ち込む必要があるという制約もある。これに対して、例えばリフォーム等での壁暖房パネルの施工にあっては、現場によって壁内の柱や間柱の位置関係は異なるため、締結具の打込み可能位置と壁内の柱や間柱の位置がいつも都合よく一致するとは限らず、良好な施工が行えない場合も発生するという問題があった。
【0004】
このような場合、現場での応急対応として石膏用アンカー等を用いることで、柱や間柱の無い位置での固定を行っていたが、石膏用アンカーの頭はサイズが大きいため壁暖房パネルの表面に露出すると外観上、見栄えが悪くなるという問題があった。
【0005】
また、壁暖房パネルの発熱体は表面から見えないにため、誤って締結具を発熱体の位置に打ち込んで、発熱体を傷付けてしまうという不具合が起こりやすいという問題もある。
【0006】
ところで、特開2002―276961号公報には、電気ヒーター等の放熱部材が収納されてなる暖房パネル本体の上面に床表面材を積層して床暖房パネルが構成されるとともに、上記暖房パネル本体の幅方向には一定間隔で小根太が配置され、床表面材はその長手方向を上記小根太と直交する方向に向けて配置された構造が開示されており、ここで床表面材の長手方向と平行に、かつこの長手方向と直交する方向に複数列で釘打ち防止用の注意書きが列設された床暖房パネルの構造が開示されている。そして、小根太の上方に複数列の釘打ち防止用の注意書きを設けることによって、誤って上記放熱部材として用いられる温水パイプや電気ヒーター等に釘を打ち込んでしまうことのないようにしている。
【0007】
しかしこのものは、床表面材ではなく、床表面材を取り付ける際にその下に隠れることとなる小根太において放熱部材が横断する部位の上側に注意書きを設けることで、この位置に床表面材への釘打ち防止を図ろうとするものであって、上述のように、既に発熱体が内部に埋め込まれた壁暖房パネルを施工する際の問題の解決策を示唆するものではない。
【特許文献1】特開2002−276961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、リフォーム工事等ように、現場毎に柱や間柱、胴縁等の躯体の位置関係が異なる場合であっても良好に施工対応でき、釘やねじ等の締結具により壁面への良好な固定が可能な壁暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る壁暖房パネルは、壁面に締結具により固定される下地パネルと、表面に化粧層を有するとともにその裏面側に発熱体が過半面積を占めるよう配設された基材層を有する化粧パネルとを重合固定して構成される。上記下地パネルの表面には、当該表面に上記化粧パネルを重合したときに上記発熱体が投影される発熱体対応位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられている。また、上記化粧パネルの表面には、発熱体の配設位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられている。
【0010】
本発明の壁暖房パネルにあっては、上記構成を有することにより、次の作用効果を奏する。まず、下地パネルを締結具により壁面に固定し、この下地パネルに対して化粧パネルを重合固定する構造なので、発熱体による締結具打込みの制約を受けない下地パネルは締結具の打込み位置に関して自由度が大きく、現場毎に柱や間柱、胴縁等の躯体の位置関係が異なる場合であっても、これに対応して躯体の位置にて締結具を打ち込むことができる。また、施工者は、化粧パネルの表面において発熱体の配設位置を認知し、それ以外の位置にて打ち込み可能位置と認識できる。同様に、下地パネルの表面において発熱体対応位置を認識できるので、この発熱体対応位置にて壁固定のための締結具を打ち込めば、化粧パネル固定用の締結具の打込み位置と干渉することが無い。このとき、発熱体は化粧パネルの過半面積を占めるものであり、これに対応する発熱体対応位置の面積も下地パネルの過半面積を占めるものとなるため、現場毎での躯体の位置変化にも十分対応可能となる。
【0011】
本発明において、上記化粧パネルの表面にて、発熱体の配設位置への締結具打込み防止に関する注意書きが表示されていると好ましい。これにより、施工者に対して注意を喚起し、発熱体の配設位置への締結具打込み禁止をより確実に実行させることができる。
【0012】
この場合において、上記下地パネルの表面にて、発熱体対応位置以外への締結具打込み防止に関する注意書きが表示されていると好ましい。これにより、施工者に注意喚起し、施工者は発熱体対応位置にて締結具の打込みを行うこととなり、化粧パネルを固定するときの締結具の打込み位置と干渉することが防止される。
【0013】
また、本発明において、上記化粧パネルの表面において、発熱体の配設位置とそれ以外の位置とを識別可能に表示する手段として、貼り付け跡を残さず剥離可能な表示シールが貼着されていると好ましい。この場合、締結具を打込んだ後に表示シールを除去すれば、当該表示の痕跡を容易に除去できるので、化粧パネル表面の良好な外観を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リフォーム工事等ように、現場毎に柱や間柱、胴縁等の躯体の位置関係が異なる場合であっても良好に施工対応でき、釘やねじ等の締結具により壁面への良好な固定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る壁暖房パネルの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、柱、間柱に石膏ボードを壁本体として取り付けた例を示す。また、説明を容易にするため、発熱体への電源線の配線、電源線と発熱体との接続等についての図示、説明は省略する。
【0016】
図1は、石膏ボードを壁本体7として柱8、間柱9に固定し、上記壁本体7に本実施形態に係る壁暖房パネルを取り付ける状態を示す分解説明図である。
【0017】
本実施形態において、下地パネル1としては、木質材料等からなる板材が用いられる。例えば、下地パネル1を形成する木質材料としては、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、またはWPB(ウッドプラスチックボード)等、種々の基材をあげることができる。外形寸法等は特に限定されないが、例えば幅750mm、高さ1900mm、厚さ12mmの合板が例示される。
また化粧パネル2としては、下地パネル1と略同寸の面積を有する板状基材の表面に化粧層を設けたものが用いられる。例えば、基材としては、下地パネル1を形成する木質材料と同様のものを用いることができる。また、化粧層としては、基材の表面や小口面に天然木の表面を薄くスライスして得られた突き板を貼着したもの、または木目の意匠や色彩が印刷された合成樹脂シートや強力紙が貼着されたもの等が用いられる。基材しは、その過半面積を占めるよう発熱体3が配設されている。本実施形態においては、基材の裏面に凹陥部を設け、この凹陥部に発熱体3が面状に埋設されているものが例示される。この発熱体3としては、面ヒーター、電熱ヒーター、温水パイプ等をあげることができる。
【0018】
図1の下地パネル1に斜線で示す部分は、化粧パネル2の裏面に埋設された発熱体3の対応位置を示し、下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11として表示されている。表示の方法は特に限定されず、発熱体3の輪郭に沿って着色領域を設ける、あるいは斜線で表示する等したうえ、上端から下端まで「釘打ち許可」の注意書きを列記することによって表示することができる。
【0019】
あるいは、上記下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11全面に図2に示すように、上端から下端まで「釘打ち許可」等の注意書き表示を列設したシールを貼ってもよい。また、上記したように、下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11を「釘打ち許可」として表示するのみならず、上記下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11を除く領域を釘打ち禁止領域12とし、「釘打ち禁止」とする注意書き表示を設けてもよい。このとき、文字だけで構成する場合に限定されず、例えば、「釘打ち×」のように、文字と記号の組み合わせを用いて表示してもよい。なお、図1において符号21は後記する化粧パネル2を下地パネル1に固定するための釘打ち可能領域を示す。
【0020】
図3は、壁本体7に固定された下地パネル1に、化粧パネル2を重ね合わせて固定する状態を示す分解説明図である。図3に示すように、下地パネル1に表示された下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11において釘4を打ち込むことで、下地パネル1は壁本体7に固定される。ここで、釘4は下地パネル1と壁本体7として用いた石膏ボードとを貫通して柱8、間柱9に打ち込まれる。なお、柱8、間柱9の状況に応じ、さらに補強が必要などの事情に応じて、石膏ボードアンカー5を用いて柱8、間柱9の無い位置でも下地パネル1を壁本体7に固着させることができる。このとき、釘頭の大きい石膏ボードアンカー5は、下地パネル1に重ね合わせて固定される化粧ボード2によって目隠しされるため、外観的に影響ないものとなる。
【0021】
このようにして、下地パネル1は、釘4と石膏ボードアンカー5とによって壁本体7にしっかりと固定され、その上面に化粧パネル2が重ね合わせて固定される。図3における化粧パネル2に示すように、上記化粧パネル2の裏面の発熱体3の埋設位置を除く周辺領域の表面側は、化粧パネル2を下地パネル1に固定する釘打ち可能領域とされ、斜線21で示されている。
【0022】
このとき、釘打ち可能領域21の表示は、「釘打ち込み許可」の注意書きを記すことによって行うことができる。あるいは、「釘打ち込み許可」の注意書きを印刷したシールを貼ってもよい。作業者は、上記シールにより、化粧パネル2の表面の釘打ち可能領域21と釘打ち禁止領域とを識別し、釘打ち可能領域21に釘頭の小さいフィニッシュネイル6を打ち込んで化粧パネル2を下地パネル1に重ね合わせて固定することができる。
【0023】
図4は、上記のようにして、化粧パネル2を下地パネル1に重ね合わせて固定した本願発明に係る壁暖房パネルの構造Aを示す外観斜視図である。前記したように、化粧パネル2は下地パネル1と同じ寸法、同じ厚さとされているため、外観上は2枚の合板がぴったりと重ね合わせて固定されているように見え、見映えよく壁暖房パネルの構造Aを壁本体7に施工することができる。また、上記化粧パネル2の表面および木口に化粧シートとして、例えば、木目模様を印刷したPETフィルムを貼着することにより、壁本体7と違和感なく、本願発明に係る壁暖房パネルの構造Aを壁本体7に取り付けることができる。
【0024】
次に、異なった実施例である壁暖房パネルについて説明する。図5の下地パネル1に斜線で示す部分は、図6に示す化粧パネル2の裏面に埋設された発熱体3の対応位置を示しており、下地パネル固定釘の釘打ち可能領域11として表示されている。図6に示す化粧パネル2に点線で示す部分は裏面に埋設された発熱体3の位置を示している。この化粧パネル3にはリモコン13、手すり14、カウンター15が取り付けられるものであり、これらの取り付け位置の下地パネル1の対応位置16は釘打ち禁止領域となる。
【0025】
なお、上記実施形態においては、壁本体7として石膏ボードを用いた例について述べたが、石膏ボードに限られず構造用合板を用いてもよい。また、下地パネル固定釘の釘打ち可能領域を左右に分けて設けた例について説明したが、上記釘打ち可能領域を上下あるいは上下左右に分けて設けてもよい。上記注意書きに関しても、文字に限られず、ローマ字、絵文字、記号によってもよく、これらを併せて用いてもよい。また、着色して目立つようにしてもよい。要するに、これらの標識によって作業者が釘打ち可能領域と釘打ち禁止領域とを識別するように、注意を喚起できるものであれば、特に限定されるものではない。このように本願発明に係る壁暖房パネルの構造は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明に係る壁暖房パネルの構造を柱、間柱に固定された壁本体としての石膏ボードに取り付ける形態を示す分解説明図。
【図2】下地パネル固定釘の釘打ち可能領域全面に貼付する「釘打ち許可」の注意書きを列設したシールを示す説明図。
【図3】壁本体に固定された下地パネルに化粧パネルを重ね合わせて固定する状態を示す分解説明図。
【図4】化粧パネルを下地パネルに重ね合わせて固定した本願発明に係る壁暖房パネルの構造を示す外観斜視図。
【図5】異なった実施例の下地パネルの平面図。
【図6】異なった実施例の化粧パネルの平面図。
【符号の説明】
【0027】
A 壁暖房パネル
1 下地パネル
11 釘打ち可能領域
12 釘打ち禁止領域
2 化粧パネル
21 釘打ち可能領域
3 発熱体
4 釘
5 石膏ボードアンカー
6 フィニッシュネイル
7 壁本体
8 柱
9 間柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に締結具により固定される下地パネルと、表面に化粧層を有するとともにその裏面側に発熱体が過半面積を占めるよう配設された基材層を有する化粧パネルとを重合固定してなる壁暖房パネルであって、
上記下地パネルの表面には、当該表面に上記化粧パネルを重合したときに上記発熱体が投影される発熱体対応位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられ、
上記化粧パネルの表面には、発熱体の配設位置とそれ以外の位置とを視覚的に識別可能とする表示が設けられている壁暖房パネル。
【請求項2】
上記化粧パネルの表面において、発熱体の配設位置への締結具打込み防止に関する注意書きが表示されている請求項1に記載の壁暖房パネル
【請求項3】
上記下地パネルの表面において、発熱体対応位置以外への締結具打込み防止に関する注意書きが表示されている請求項2に記載の壁暖房パネル。
【請求項4】
上記化粧パネルの表面において、発熱体の配設位置とそれ以外の位置とを識別可能に表示する手段として、貼り付け跡を残さず剥離可能な表示シールが貼着されている請求項1から3の何れかに記載の壁暖房パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−78211(P2010−78211A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245959(P2008−245959)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】