説明

壁構造

【課題】省エネルギー化を可能としたダブルスキン構造の壁構造について、簡易かつ安価に構成することができ、かつ、居住空間を最大限に確保することができる壁構造を提供する。
【解決手段】市松模様を呈するように配設された複数の壁柱構成材2,2,…と、壁柱構成材2同士の間に形成された窓部3の表面側と背面側にそれぞれ配設された面材31,33とを備える壁構造1であって、壁柱構成材2は、壁部21と、壁部一体に形成された左右一対の柱部22,22と、壁部21と対向するように配設された板材23とを有し、上段の壁柱構造材2の柱部22を下段の壁柱構成材2の柱部22と上下に連続するように配設することで通し柱構造を形成しているとともに、面材31,33同士の間に形成された通気層34が壁部21と板材23との間に形成された通気層24と上下に連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁構造として、内部に通気層を備えた2重構造(ダブルスキン)とすることで、空調負荷を低減させて省エネルギー化を図る場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、屋外側に配置される外側面体と、この外側面体に対向して屋内側に配置される内側面体と、外側面体および内側面体の間に形成された中間空間と、を備えたカーテンウォールが開示されている。
【0004】
このような従来のカーテンウォールは、建物の梁柱等の構造体の外面に組みつけられるのが一般的である。また、外側面体および内側面体には、それぞれ支持部材が配設されることで、窓枠等が支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−138546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のカーテンウォールは、建物の構造体の外側に組み付ける構成であるため、施工時に手間がかかるとともに高価であった。
また、外側面体および内側面体がそれぞれ支持部材を有していることにより壁厚が大きくなるため、建物の内部の居住空間が狭くなる場合があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、省エネルギー化を可能としたダブルスキン構造の壁構造について、簡易かつ安価に構成することができ、かつ、居住空間を最大限に確保することができる壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る壁構造は、市松模様を呈するように配設された複数の壁柱構成材と、前記壁柱構成材同士の間に形成された窓部の表面側と背面側にそれぞれ配設された面材と、を備える壁構造であって、前記壁柱構成材は、壁部と、前記壁部一体に形成された左右一対の柱部と、前記壁部と対向するように配設された板材とを有し、上段の壁柱構造材の前記柱部を下段の前記壁柱構成材の柱部と上下に連続するように配設することで通し柱構造を形成し、前記面材同士の間に形成された通気層が前記壁部と前記板材との間に形成された通気層と上下に連通していることを特徴としている。
【0009】
かかる壁構造によれば、二重に配設された面材によって形成された通気層および壁柱構成材と板材によって形成された通気層により上下に連続する通気路が形成されるため、断熱性に優れたダブルスキン構造を形成することができる。
また、ダブルスキンを構成する壁構造自体が構造体を形成するため、建物の居住空間を最大限に広く確保ことができる。
【0010】
また、壁柱構成材により、従来のダブルスキン構造よりも断熱性が向上し、空調負荷の低減化が可能となる。
さらに、梁柱架構と内側窓と外側窓とにより構成される従来のダブルスキン構造と比較して簡易な構造なため、施工性に優れているとともに安価に構成することができる。
【0011】
また、前記壁構造において、前記通気層に通じる吸気口および排気口が、前記通し柱構造に形成されている場合には、壁構造内の空気の流動性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁構造によれば、簡易かつ安価に構成することができ、居住空間を最大限に確保することができるダブルスキン構造の壁構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る壁構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す壁構造の横断面図である。
【図3】図1に示す壁構造の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の壁構造1は、図1に示すように、市松模様を呈するように配置された複数の壁柱構成材2,2,…を主体に形成されている。
【0015】
壁柱構成材2は、上下左右に隣接する他の壁柱構成材2,2,…と間隔を開けて配設されることで開口部(窓部3)を形成している。
窓部3には、表面側(屋外側)に面材31、背面側(屋内側)に面材33がそれぞれ配設されている。
【0016】
壁柱構成材2は、壁部21と、壁部21と一体に形成された左右一対の柱部22,22と、壁部21と対向するように配設された板材23と、を有している。
【0017】
壁部21および柱部22,22は、一体に形成されたプレキャストコンクリート部材である。本実施形態では、板状の壁部21の両端に四角柱状の柱部22,22が形成されている。
壁部21の寸法等は限定されるものではないが、柱部22,22間での応力の伝達が可能な強度を発現可能な厚みとする。
【0018】
柱部22は、壁部21の部材厚よりも大きな幅(壁構造1の壁厚方向の長さ)を備えた四角柱状の部材である。柱部22は、背面側(室内側)が壁部21の背面と平面をなすとともに、表面側(室外側)が壁部21から突出するように配設されている。このように構成することで、壁部21および柱部22,22からなるプレキャストコンクリート部材は、断面視コ字状を呈している。
なお、本実施形態では、柱部22を断面矩形状に形成したが、柱部22の断面形状は限定されるものではない。
【0019】
板材23は、ガラス板により構成されており、図2に示すように、左右の柱部22,22により挟持されている。板材23は、壁部21との間に隙間を有した状態で、柱部22,22の壁部21から表面側に突出した部分に固定する。
なお、板材23を構成する材料は、開口部分を遮蔽することが可能な材料であれば、ガラス板に限定されるものではない。
【0020】
板材23と壁部21との間に形成された隙間は、上下が開口しており、空気を上下方向に流通可能な通気層24として機能する。
なお、板材23は、サッシュを介して柱部22に配設してもよい。また、板材23は、表面側(室外側)に開閉可能に配設してもよい。板材23を開閉可能に構成することで、壁柱構造体2の内部の清掃やメンテナンスを行うことが可能となる。
また、板材23を開閉可能に構成しないで壁柱構造体2の内部の清掃やメンテナンスを行う場合は、上下階のサッシュ32を開いて、上下階から行う構成としてもよい。
【0021】
図3に示すように、上段の壁柱構造体2は、下段の壁柱構成材2と、互いの柱部22同士が重なるように配設されている。
つまり、上段の壁柱構造材2の右側の柱部22は、右斜め下に位置する下段の壁柱構成材2の左側の柱部22と上下に連続するように配設されていることで通し柱構造を形成している。また、上段の壁柱構造材2の左側の柱部22は、左斜め下に位置する下段の壁柱構成材2の右側の柱部22と上下に連続するように配設されていることで、通し柱構造を形成している。
【0022】
また、最下段に配設された壁柱構成材2の柱部22には、図1に示すように、柱部22の表面から通気層24(通気路4)に連通する吸気口25,25,…が形成されている。
さらに、図示は省略するが、最上段に配設された壁柱構成材2の柱部22には、通気層24(通気路4)から柱部22の表面に連通する排気口が形成されている。
なお、吸気口25および排気口は、通気路4内への水分(雨水等)の流入防止や、通気路4内の水分の排出等を目的として、水勾配を有して形成されている。
【0023】
面材31は、図2に示すように、窓部3の表面側を遮蔽するように配設されている。
なお、本実施形態では、面材31としてガラス板を採用するが、面材31を構成する材料は、窓部3を遮蔽することが可能で、かつ、透光性を備えていれば限定されるものではない。
【0024】
サッシュ32は、図3に示すように、面材33を保持する窓枠であって、窓部3の背面側に配設されている。なお、サッシュ32は、図2に示すように、屋内側に開扉するように構成されている。サッシュ32の開扉機構は、開き扉、ひき違い扉などでも良く、メンテナンス性を考慮した適切な構造とすれば、限定されるものではない。
【0025】
本実施形態では、面材33として、ガラス板を採用するが、面材33を構成する材料は、窓部3を遮蔽することが可能で、かつ、透光性を備えていれば、限定されるものではない。なお、板材23、面材31および面材33を構成するガラス板は、無色、有色、透明、鏡面状、くもりガラスであってもよく、その材質は限定されるものではない。
【0026】
面材31、33の間に形成された隙間は、上下に開口しており、空気を上下方向に流通可能な通気層34として機能する。
窓部3に形成された通気層34は、上下に配設された壁柱構成材2の通気層24と連続していて、上下に連続した通気路4を形成している。
【0027】
以上、本実施形態の壁構造1は、通気路4(通気層24、34)を備えたダブルスキン構造を構成しているため、断熱性に優れており、建物内部の冷暖房効率を向上させることが可能となる。
また、通気路4(通気層24、34)は、上下に連続して形成されているため、通気性に優れている。
【0028】
また、断面視でコ字状を呈する壁柱構成材2のリブ部分(柱部22)について、構造的に問題の無い位置に、構造的に問題の無い大きさと数量で、左右方向に貫通する開口を配置することにより、上下だけでなく、左右にも通気性を持たせることも可能である。
【0029】
通気路4は、下端部に形成された吸気口25から外気が流入し、上端に形成された排気口(図示省略)から通気路4内の空気が排気されるため、通気路4内の空気の換気が効率的に行われる。
なお、通気路4内の外気流入と排気は、壁構造1(通気路4)の下端と上端に限定されるものではなく、適宜必要位置に必要個所数の通気機構(吸気口25や排気口)を設けることで、中間位置での外気流入および排気が可能に構成しても良い。
【0030】
壁構造1は、千鳥状に配設された壁柱構成材2を主体に構成されているため、別途支持部材を要することなく面材31やサッシュ32を配設することができる。
このように、支持部材を省略することで、壁構造1の小断面化が可能となり、壁厚の薄肉化により居住空間を広く確保することが可能となる。
【0031】
また、壁構造1の小断面化により材料費の削減も可能なため、経済性にも優れている。
また、壁柱構成材2を組み合わせることにより形成されるため、施工性にも優れている。
【0032】
また、柱部22が上下に連続した通し柱構造を構成するため、建物の構造体としても優れている。また、壁部21が、柱部22,22間での応力を伝達することで、構造体としての機能がさらに向上する。
つまり、壁構造1は、建物の外装と躯体を兼ねることで、大幅な工事費の低減化を可能としている。また、建物の外装と躯体を兼ねることで、大幅な工期短縮を可能としている。
【0033】
また、プレキャストコンクリート部材を主体とした壁柱構成材2が配設されているため、断熱性能が高い。
また、プレキャストコンクリート部材に断熱処理を施せば(断熱材貼り付け、断熱材吹付、断熱塗装など)、更に高性能な断熱構造となる。また、サッシやガラスとして断熱性能の高い構造のものを使用すれば、更に性能向上を図ることができる。
【0034】
窓部3の室内側にはサッシュ32を介して面材33が配設されているため、サッシュの開閉により窓部3の清掃作業やメンテナンスを実施することができる。
【0035】
板材23と面材31とが、上下に連続したガラス窓を形成するため、意匠的にも優れた外観デザインを構成する。
【0036】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態では、窓部3の背面側の面材33を、サッシュ32を介して配設することで、開閉可能に構成したが、面材33は、サッシュレスで配設してもよい。
また、窓部3の表面側の面材31は、サッシュを介して配設してもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、壁部21と柱部22,22とが、断面視でコ字状を呈している場合について説明したが、壁柱構成材2の断面形状は、コ字状に限定されるものではない。
【0039】
吸気口25および排気口は、必要に応じて形成すればよく、省略してもよい。
また、吸気口25および排気口には、必要に応じて防虫ネット等を配設し、壁構造1の内部への虫等が入り込むことを防止してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 壁構造
2 壁柱構成材
21 壁部
22 柱部
23 板材
24 通気層
25 吸気口
3 窓部
31 面材
32 サッシュ
33 面材
34 通気層
4 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
市松模様を呈するように配設された複数の壁柱構成材と、
前記壁柱構成材同士の間に形成された窓部の表面側と背面側にそれぞれ配設された面材と、を備える壁構造であって、
前記壁柱構成材は、壁部と、前記壁部一体に形成された左右一対の柱部と、前記壁部と対向するように配設された板材と、を有し、
上段の壁柱構造材の前記柱部を、下段の前記壁柱構成材の柱部と上下に連続するように配設することで通し柱構造を形成し、
前記面材同士の間に形成された通気層が、前記壁部と前記板材との間に形成された通気層と上下に連通していることを特徴とする、壁構造。
【請求項2】
前記通気層に通じる吸気口および排気口が、前記通し柱構造に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62632(P2012−62632A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205630(P2010−205630)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】