説明

壁用伸縮継手装置

【課題】 2つの建物間に設けられる通路に好適に用いることができる壁用伸縮継手装置を提供する。
【解決手段】 壁用伸縮継手装置1を、第1カバー体10と、第2カバー体11と、第1ヒンジ手段12と、第2ヒンジ手段13と、第1および第2カバー体10,11を、一平面を形成するように隣接した状態で支持するリンク手段14と、2つの建物A,Bが近接および離反する方向の変位を許容し、第1可動片12aと第2可動片13aを連結する連結手段15と、第2カバー体11を該第2カバー体11の厚み方向に変位自在に保持する保持手段16と、2つの建物A,Bが互いに近接する方向への変位によって、前記第2カバー体10を前記リンク手段14から離反する方向に案内する案内手段44と、第1ばね手段17と、第2ばね手段18とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に間隔をあけて隣接する2つの建物間に、水平方向に前記間隔を介して対向する各壁体に設置される壁用伸縮継手装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の従来技術としては、たとえば特許文献1記載の壁用目地カバー装置を挙げることができる。この発明では、壁用目地カバー装置は、2枚のパネル体をヒンジ部材で連結してなる目地カバーであって、一端部が一方の建物の壁面に鉛直な軸線まわりに回動可能に取付けられ、他端部にローラが取付けられる目地カバーと、一方の建物の目地空間に臨む壁面に水平方向に延びて固定されるガイドレールと、一端部が目地カバーの他端部に鉛直な軸線まわりに回動可能に取付けられ、他端部が前記ガイドレールにスライド移動可能に設けられる支持アームと、一端部が支持アームの中間部に連結され、他端部が一方の建物の前記壁面に回動自在に取付けられる支承アームと、一端部が支承アームに取付けられ、他端部が目地カバーに当接するストッパーアームと、を含んで構成される。
【0003】
上記構成からなる壁用目地カバー装置は、地震などによって2つの建物が相互に近接する方向に相対変位したとき、目地カバーの中央部を折り曲げて前記相対変位を許容し、また2つの建物が相互に離反する方向に相対変位したとき、目地カバーの他端部を、他方の建物から離反させて前記相対変位を許容することによって、目地空間を覆うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−17131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術では、目地カバーを中間部で折り曲げて相対変位を許容する構成であるので、前記相対変位を許容する際に、目地カバーが大きく外方に突出する。
【0006】
このことから、2つの建物間に設けられる通路の内壁として、前記従来技術を、目地カバーの突出方向を通路内に向かう方向にして用いると、2つの建物が相互に近接する方向に相対変位した際、目地カバーが通路内に突出してしまい、通路の有効面積が大きく減少して通行の妨げになるばかりか、通路内の通行人と接触するおそれがある。
【0007】
また反対に、2つの建物間に設けられる通路の内壁として、前記従来技術を、目地カバーの突出方向を渡り通路外に向かう方向にして用いると、2つの建物が相互に近接する方向に相対変位する際、目地カバーが通路の外方に突出するので、通路の床面と壁用目地カバー装置とが交差する部分に大きな開口が生じてしまい、該開口に通行人が足を挿入してしまうおそれがある。
【0008】
したがって、前記従来技術は、2つの建物間に設けられる通路を構成する壁体の一部として用いることができない。
【0009】
本発明の目的は、2つの建物間に設けられる通路の壁体の一部として好適に用いることができる壁用伸縮継手装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水平方向に間隔をあけて隣接する2つの建物のいずれか一方に、鉛直な第1軸線まわりに回動自在に保持される第1カバー体と、前記2つの建物のいずれか他方に、鉛直な第2軸線まわりに回動自在に保持される第2カバー体と、前記第1カバー体を保持し、前記第1軸線まわりに回動自在な第1可動片を有する第1ヒンジ手段と、前記第2カバー体を保持し、前記第2軸線まわりに回動自在な第2可動片を有する第2ヒンジ手段と、前記第1可動片に連結され、前記一方の建物寄りに配置される一端部と、前記第2可動片に連結され、前記他方の建物寄りに配置される他端部とを有し、前記一端部および他端部が互いに近接および離反自在なリンク機構を構成するリンク手段であって、前記第1および第2カバー体を一平面を形成するように隣接した状態で支持するリンク手段と、前記第1可動片および第2可動片が互いに近接および離反する方向の変位を許容し、前記第1可動片および前記第2可動片を連結する連結手段と、前記第2可動片に設けられ、前記第2カバー体を該第2カバー体の厚み方向に変位自在に保持する保持手段と、前記2つの建物が互いに近接する方向への変位によって、前記第2カバー体を前記リンク手段から離反する方向に案内する案内手段と、前記第1カバー体を、前記リンク手段に近接する方向にばね付勢する第1ばね手段と、前記第2カバー体を、前記リンク手段に近接する方向にばね付勢する第2ばね手段とを含むことを特徴とする壁用伸縮継手装置である。
【0011】
また本発明は、前記連結手段は、基端部が前記第1可動片に固定され、第1軸線に垂直な第1水平軸線に沿って延びる第1案内部材と、基端部が前記第2可動片に固定され、第2軸線に垂直な第2水平軸線に沿って延びる第2案内部材と、前記リンク手段に連結され、前記第1案内部材および第2案内部材を、第1水平軸線と第2水平軸線とが平行となるように案内する第3案内部材とを含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記第2可動片に固定され、前記第2カバー体の厚み方向に沿って延びる案内レール部材をさらに含み、前記保持手段は、前記案内レール部材によって前記第2カバー体の厚み方向に移動自在に支持される案内ローラを有することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記リンク手段には、前記第1カバー体と第2カバー体とにわたる中間領域に配置される第3カバー体が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1カバー体は、一方の建物に第1軸線まわりに回動自在に保持され、第2カバー体は、他方の建物に第2軸線まわりに回動自在に保持される。第1ヒンジ手段は、第1カバー体を保持し、前記第1軸線まわりに回動自在な第1可動片を有し、第2ヒンジ手段は、第1カバー体を保持し、前記第2軸線まわりに回動自在な第2可動片を有する。リンク手段は、一端部が第1可動片に連結され、他端部が第2可動片に連結され、第1カバー体および第2カバー体を一平面を形成するように隣接した状態で支持する。
【0015】
また連結手段は、第1可動片および第2可動片が互いに近接および離反する方向の変位を許容し、第1可動片および第2可動片を連結する。保持手段は、第2可動片に設けられ、第2カバー体を該第2カバー体の厚み方向に変位自在に保持する。
【0016】
案内手段は、2つの建物が互いに近接する方向への変位によって、第2カバー体をリンク手段から離反する方向に案内する。第1ばね手段は、第1カバー体を、リンク手段に近接する方向にばね付勢する。第2ばね手段は、第2カバー体を、リンク手段に近接する方向にばね付勢する。
【0017】
これによって、壁用伸縮継手装置は、2つの建物が互いに近接する方向へ相対変位したとき、案内手段および保持手段によって、第2カバー体をリンク手段から離反する方向である第2カバー体の厚み方向に円滑に案内するとともに、連結手段によって、第1カバー体と第2カバー体とを互いに近接する方向に円滑に案内して、第1カバー体と第2カバー体とを、互いに重なる位置まで相対変位させて、各建物の相対変位を許容することができる。
【0018】
さらに、第1カバー体は、第1ばね手段によってリンク手段に近接する方向にばね付勢され、第2カバー体は、第2ばね手段によってリンク手段に近接する方向にばね付勢されるので、第1カバー体および第2カバー体が変位するとき、第1カバー体がリンク手段から離反する方向に大きく回動することを防ぐことができるとともに、第2カバー体のリンク手段から離反する方向への変位量を最小限に抑えることができる。
【0019】
これによって、壁用伸縮継手装置は、地震などによる2つの建物の互いに近接する方向への相対変位を、第2カバー体のリンク手段から離反する方向への変位を最小限に留めて許容することができるので、通路の壁体として用いても通路内への第2カバー体の突出量を可及的に小さくすることができ、通路の有効面積が大きく減少して通行の妨げになることはない。したがって、通路の壁体として好適に用いることができる壁用伸縮継手装置を実現することができる。
【0020】
また本発明によれば、連結手段は、基端部が第1可動片に固定され、第1軸線に垂直な第1水平軸線に沿って延びる第1案内部材と、基端部が第2可動片に固定され、第2軸線に垂直な第2水平軸線に沿って延びる第2案内部材と、リンク手段に連結され、第1案内部材および第2案内部材を、第1水平軸線と第2水平軸線とが平行となるように案内する第3案内部材とを含む。
【0021】
これによって、地震などによって、各建物が相対変位し、第1カバー体が一方の建物に対して第1軸線まわりに回動し、第2カバー体が他方の建物に対して第2軸線まわりに回動しても、第1カバー体と第2カバー体とを一平面を形成するように隣接した状態で維持し、各建物の相対変位を許容することができる。
【0022】
また本発明によれば、第2可動片には、第2カバー体の厚み方向に沿って延びる案内レール部材が固定され、保持手段は、案内レール部材によって第2カバー体の厚み方向に移動自在に支持される案内ローラを有する。
【0023】
これによって、地震などによって、各建物が相対変位し、第2カバー体が第1軸線まわりに回動する方向に力が作用しても、第2カバー体を第2カバー体の厚み方向と平行な方向への移動を許容し、第2カバー体の角変位量を少なくし、第2カバー体の突出量を抑制することができる。
【0024】
また本発明によれば、リンク手段には、第1カバー体と第2カバー体とにわたる中間領域に配置される第3カバー体が設けられる。
【0025】
これによって、第1カバー体と第2カバー体とにわたる中間領域を、第3カバー体によってリンク手段側から塞ぐことができるので、地震などによって各建物が相対変位し、第1カバー体および第2カバー体が離反する方向に変位しても、中間領域を塞いだ状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の壁用伸縮継手装置1の水平断面図である。
【図2】壁用伸縮継手装置1を図1の下方から見た背面図である。
【図3】図1の切断面線III−IIIから見た断面図である。
【図4】図1の切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】第1ヒンジ手段12の近傍を示す拡大水平断面図である。
【図6】第2ヒンジ手段13の近傍を示す拡大水平断面図である。
【図7】連結手段15の構成を示す拡大断面図である。
【図8】上部保持手段60を図6の上方から見た断面図である。
【図9】下部保持手段61の具体的構成を示す断面図である。
【図10】下部保持手段61を図9の左方から見た断面図である。
【図11】図9の切断面線XI−XIから見た図である。
【図12】各建物A,Bが近接/離反する方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図である。
【図13】各建物A,Bが前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図である。
【図14】各建物A,Bが近接しかつ前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図である。
【図15】各建物A,Bが離反しかつ前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態の壁用伸縮継手装置1の水平断面図であり、図2は、壁用伸縮継手装置1を図1の下方から見た背面図である。図3は、図1の切断面線III−IIIから見た断面図であり、図4は、図1の切断面線IV−IVから見た断面図である。図3および図4は、理解を容易にするためにリンク部材14a、および第1ばね手段17、第2ばね手段18を省略して示している。また図3では、壁用伸縮継手装置1をマッチングラインA−Aで分割して示し、図4では、壁用伸縮継手装置1をマッチングラインB−Bで分割して示している。
【0028】
図1に示すように、水平方向に間隔をあけて隣接する2つの建物A,B間には、目地として空間3が存在する。そして各建物A,B間を通行可能にするために、2つの建物A,B間には通路2が設けられる。この通路2内に屋外から雨水や風などが浸入することを防止するために、通路2を構成する壁体として、本実施形態に係る壁用伸縮継手装置1が設けられる。壁用伸縮継手装置1は、地震などによる各建物A,Bの相対変位を許容しながら、通路2の壁体として機能し、空間3を塞いだ状態に維持する。
【0029】
建物Aの壁体4と、建物Bの壁体5とは、相互に第1水平方向(図1の左右方向)Xに空間3を介して対向し、上下方向(図1の紙面に垂直方向)Zに延びる対向壁面4a,5aと、屋内に臨んで上下方向に延びる内部壁面4b,5bとを有する。
【0030】
本実施の形態の壁用伸縮継手装置1は、対向壁面4a,5aと内部壁面4b,5bとがほぼ直角に交差する各角隅部間にわたって、上下方向Z方向に延在して設置される。各壁体4,5は、各建物A,Bの外壁の躯体を構成するコンクリート構造体から成る。
【0031】
ここで、上下方向Zとは、各建物A,Bの施工誤差などによって各壁体4,5の各壁面4a,4b,5a,5bには鉛直方向に対する誤差が不可避的に生じるため、鉛直方向および実質的に鉛直方向とみなすことができる略鉛直方向を含むものとし、第1水平方向Xおよびそれに直交する第2水平方向Yに関してもまた同様に、水平方向および実質的に水平方向とみなすことができる略水平方向を含むものとする。
【0032】
以下の説明においては、第1水平方向Xを、各建物A,Bが近接/離反方向という場合があり、第2水平方向Yを前後方向という場合がある。
【0033】
壁用伸縮継手装置1は、鉛直な第1軸線L1まわりに回動自在に建物Aに保持される第1カバー体10と、鉛直な第2軸線L2まわりに回動自在に建物Bに保持される第2カバー体11と、前記第1軸線L1まわりに回動自在な第1可動片12aを有する第1ヒンジ手段12と、前記第2軸線L2まわりに回動自在な第2可動片13aを有する第2ヒンジ手段13と、第1および第2カバー体10,11を2つの建物A,B間の空間3側から、一平面を形成するように支持するリンク手段14と、第1可動片12aおよび第2可動片13aが互いに近接および離反する方向の変位を許容し、第1可動片12aおよび第2可動片13aを連結する連結手段15と、前記2つの建物が互いに近接する方向への変位によって、前記第2カバー体11をリンク手段14から離反する方向に案内する案内手段44と、を含んで構成される。
【0034】
図5は、第1ヒンジ手段12の近傍を示す拡大水平断面図である。
壁体4の対向壁面4aには、複数のアンカー体6によって上下方向Zに延びる断面略L字状のブラケット7が固定される。また壁体5の対向壁面5aには、複数のアンカー体6によって上下方向Zに延びる断面略L字状のブラケット8が固定される。
【0035】
ブラケット7には、上下方向Zに間隔をあけて、鉛直な第1軸線L1まわりに回動自在な複数(本実施形態では3)の第1ヒンジ手段12が取付けられる。第1ヒンジ手段12は、第1可動片12aと、固定片12bと、ヒンジピン12cとを有する。
【0036】
各第1ヒンジ手段12の第1可動片12aには、上下方向Zに延びる断面略L字状の第1吊元縁材25が複数のビスによって固定される。各第1ヒンジ手段12の固定片12bは、ブラケット7にボルトによって固定される。
【0037】
第1カバー体10は、板状のパネル部材であり、たとえばアルミパネル、アルミ嵌合形材またはステンレスパネルなどによって実現される。本実施形態では、板状のアルミパネルによって実現される。第1カバー体10には、複数の補強部材40が第1水平方向Xに沿って配置され、第1カバー体10の剛性を高めている。第1カバー体10は、幅方向一端部が複数のビスによって第1吊元縁材25に固定される。これによって、第1カバー体10は、第1軸線L1を回動中心軸線として、矢符F1,F2方向に回動可能に連結される。第1カバー体10の先端部には、戸先部材46が取付けられる。
【0038】
図6は、第2ヒンジ手段13の近傍を示す拡大水平断面図である。なお、図6では、理解を容易にするため、第2ばね手段18を省略して示す。
【0039】
ブラケット8には、上下方向Zに間隔をあけて、鉛直な第2軸線L2まわりに回動自在な複数(本実施形態では3)の第2ヒンジ手段13が取付けられる。第2ヒンジ手段13は、第2可動片13aと、固定片13bと、ヒンジピン13cとを有する。各第2ヒンジ手段13の第2可動片13aには、上下方向Zに延びる断面略L字状の第2吊元縁材26が複数のビスによって固定される。各第2ヒンジ手段13の固定片13bは、ブラケット8にボルトによって固定される。
【0040】
第2カバー体11は、板状のパネル部材であり、たとえばアルミパネル、アルミ嵌合形材またはステンレスパネルなどによって実現される。本実施形態では、板状のアルミパネルによって実現される。第2カバー体11には、複数の補強部材40が第1水平方向Xに沿って配置され、第2カバー体11の剛性を高めている。第2カバー体11は、幅方向一端部が第2吊元縁材26に複数のビスによって固定される。これによって、第2カバー体11は、第2軸線L2を回動中心軸線として、矢符F1,F2方向に回動可能に連結される。第2カバー体11の先端部には、戸先部材47が取付けられる。
【0041】
リンク手段14は、複数のリンク部材14aと、各リンク部材14aを枢支する複数のリンクピン14bとを有する。リンク部材14aは、たとえば四角筒状の構造用鋼材、または断面がC字状の構造用鋼材によって実現される。また、リンクピン14bは、ボルトおよびナットの組によって実現される。
【0042】
リンク手段14は、一端部が建物A寄りに配置され、他端部が建物B寄りに配置される。リンク手段14は、第1カバー体10と第2カバー体11とを一平面を形成するように、隣接した状態で、空間3側から支持する。リンク手段14は、第1カバー体10に取付けられる断面略U字状の取付部材41に、一端部がリンクピン14bによって回動自在に取付けられる。またリンク手段14は、第2カバー体11に取付けられる断面略U字状の取付部材41に、他端部がリンクピン14bによって回動自在に取付けられる。したがって、リンク手段14は、各取付部材41に対して回動自在に取付けられる。このようなリンク手段14は、パンタグラフ状のリンク機構を構成し、各対向壁面4a,5a間に伸縮可能に設けられる。
【0043】
再び図1および図2を参照して、壁用伸縮継手装置1は、第1カバー体10と第2カバー体11とにわたる中間領域に配置される第3カバー体20をさらに含む。第3カバー体20は、第1カバー体10および第2カバー体11の空間3側表面部に設けられる。
【0044】
第3カバー体20の長手方向寸法は、第1および第2カバー体10,11と同一に設定される。第3カバー体20は、板状に形成され、たとえばアルミニウム製の板材によって実現される。第3カバー体20の幅方向中央部は、空間3に向かって退避して形成される。
【0045】
図7は、連結手段15の構成を示す拡大断面図である。
連結手段15は、基端部が前記第1可動片12aに連結され、第1水平方向X、すなわち第1および第2カバー体10,11の幅方向に沿って延びる第1案内部材30と、基端部が前記第2可動片13aに連結され、第1水平方向Xに沿って延びる第2案内部材31と、第1案内部材30の遊端部が挿通される第1ホルダ部分32aと第2案内部材31の遊端部が挿通される第2ホルダ部分32bとを含む第3案内部材32と、第2カバー体11の第2水平方向Y、すなわち第2カバー体11の厚み方向への変位を案内する第4案内部材33とを含んで構成される。
【0046】
第1案内部材30は、断面が略C字状の形材によって実現される。第1案内部材30は、基端部が第1吊元縁材25にボルトによって固定される。第1案内部材30は、第1軸線L1に垂直な第1水平方向Xに沿って、第2カバー体11に向かって延びる。第1案内部材30の遊端部は、第3案内部材32の第1ホルダ部分32aに挿通される。
【0047】
第2案内部材31は、断面が略C字状の形材によって実現される。第2案内部材31は、基端部が第2吊元縁材26にボルトによって固定される。第2案内部材31は、第1水平方向Xに沿って、第1カバー体10に向かって延びる。第2案内部材31の遊端部は、第3案内部材32の第2ホルダ部分32bに挿通される。
【0048】
第3案内部材32は、第1案内部材30が挿通される第1ホルダ部分32aと、第2案内部材31が挿通される第2ホルダ部分32bと、第1取付部分32cと、第2取付部分32dとを含んで構成される。
【0049】
第1ホルダ部分32aは、断面が略コの字状に形成され、第1案内部材30を収容可能な収容空間を有する。第1ホルダ部分32aの内部には、第1案内ローラ50が設けられる。第1案内ローラ50は、断面が略コの字状の取付部材50aと、4つのローラ部材50bとを含む。取付部材50aは、第1ホルダ部分32aにビスによって固定される。各ローラ部材50bは、取付部材50aの各端部に回転自在に設けられる。
【0050】
第1案内部材30の遊端部は、内部空間に第1案内ローラ50の各ローラ部材50bが当接した状態で、第1ホルダ部分32aに挿通される。このような構成を採用することによって、第1案内部材30を、第1案内ローラ50によって、第1水平方向Xに円滑に案内することができるとともに、第1案内部材30の上下方向Zへの変位を第1ホルダ部分32aによって規制することができる。
【0051】
第2ホルダ部分32bは、断面が略コの字状に形成され、第2案内部材31を収容可能な収容空間を有する。第2ホルダ部分32bの内部には、第2案内ローラ51が設けられる。第2案内ローラ51は、断面が略コの字状の取付部材51aと4つのローラ部材51bとを含む。取付部材51aは、第2ホルダ部分32bにビスによって固定される。各ローラ部材51bは、取付部材50aの各端部に回転自在に設けられる。
【0052】
第2案内部材31の遊端部は、内部空間に第2案内ローラ51の各ローラ部材51bが当接した状態で、第2ホルダ部分32bに挿通される。このような構成を採用することによって、第2案内部材31を、第2案内ローラ51によって、第1水平方向Xに円滑に案内することができるとともに、第2案内部材31の上下方向Zへの変位を第2ホルダ部分32bによって規制することができる。
【0053】
第2ホルダ部分32bの第2カバー体11に臨む表面部であって、第2案内ローラ51に対応する位置には、第3案内ローラ52が設けられる。第3案内ローラ52は、断面が略コの字状の取付部材52aと、4つのローラ部材52bとを含む。取付部材52aは、第2案内ローラ51の取付部材51aと同じビスによって第2ホルダ部分32bに固定される。各ローラ部材52bは、取付部材52aの各端部に回転自在に設けられる。
【0054】
第1取付部分32cは、断面が逆コの字状の本体部分32c1と、本体部分32c1から上下方向Zに屈曲して連なるフランジ部分32c2とを有する。第1取付部分32cは、第1ホルダ部分32aおよび第2ホルダ部分32bの第2水平方向Y一方側に形成され、フランジ部分32c2がビスによって第3カバー体20に固定される。
【0055】
第2取付部分32dは、板状に形成され、第2水平方向Y他方側に設けられる。第2取付部分32dは、第1および第2ホルダ部分32a,32bの開口を塞ぐ。第2取付部分32dは、ビスによって中間連結部材21に固定される。第1案内部材30、第2案内部材31および第3案内部材32によって、連結手段15を構成する。
【0056】
以上の構成を採用することによって、第3案内部材32は、第1案内部材30および第2案内部材31を、第1水平方向Xに沿って案内し、かつ、リンク手段14の伸縮動作に追従することができる。
【0057】
連結手段15には、上下方向Zに延びる中間連結部材21が取付けられる。中間連結部材21は、断面が略U字状の鋼材によって実現される。中間連結部材21には、リンク手段14の中央部に配置されるリンクピン14bのボルトを挿通するための、上下方向Zに延びる長孔21aが形成される。連結手段15と中間連結部材21とは、リンク手段14の中央部に配置されるリンクピン14bによって連結される。第3カバー体20、リンク手段14および中間連結部材21は、この順で第2水平方向Yに連結される。
【0058】
第2カバー体11の空間3に臨む表面側であって、かつ、第2案内部材31の下面と対向する位置には、第4案内部材33が設けられる。第4案内部材33は、上下方向Zに垂直な断面が台形の四角筒状部材である。第4案内部材33は、四角筒状のホルダ部材を、長手方向に対して傾斜した方向に切断し、各端面に露出する開口を単板で塞ぐことによって形成することができる。
【0059】
第4案内部材33は、第1案内面部33aと、第2案内面部33bとを有する。第1案内面部33aは、対向壁面4aに対向して形成され、空間3側から通路2方向に進むにつれて、対向壁面5aから遠ざかるように傾斜する面である。第1案内面部33aは、設置状態において第3案内ローラ52と対向する。
【0060】
第2案内面部33bは、第1案内面部33aの空間3側の端部に連なり、設置状態において、第1水平方向Xに平行に延びる。第4案内部材33は、ビスによって第2カバー体11の背面に取付けられる。各建物A,Bが近接する方向に相対変位すると、第4案内部材33は、先ず第1案内面部33aが第3案内ローラ52に当接し、第3案内ローラ52によって第1案内面部33aに沿って案内されることで、リンク手段14から離反する方向、すなわち通路2側に第2カバー体11を変位させる。
【0061】
そして、さらに各建物A,Bが近接する方向に相対変位すると、第4案内部材33は、第2案内面部33bが第3案内ローラ52に当接し、第3案内ローラ52によって第2案内面部33bに沿って案内されることで、第2カバー体11を建物A側へ変位させる。
【0062】
このように第3案内ローラ52と第4案内部材33を設けることによって、壁用伸縮継手装置1は、第2カバー体11を通路2側へ円滑に変位させ、さらに第1カバー体10と第2カバー体11を相互に近接する方向に変位させて各建物A,Bの近接する方向への相対変位を許容することができる。第3案内ローラ52と第4案内部材33とは、案内手段44を構成する。
【0063】
壁用伸縮継手装置1は、第2カバー体11を該第2カバー体11の厚み方向に変位自在に保持する保持手段16と、第1カバー体10をリンク手段14に近接する方向にばね付勢する第1ばね手段17と、第2カバー体11をリンク手段14に近接する方向にばね付勢する第2ばね手段18とをさらに含む。
【0064】
壁用伸縮継手装置1は、上下方向Zの上方側に設けられる上部保持手段60と、上下方向Zの下方側に設けられる下部保持手段61とを含んで構成される。上部保持手段60または下部保持手段61は、保持手段16である。
【0065】
図8は上部保持手段60を図6の上方から見た断面図である。以下では図6も参照して説明する。なお、図8では、理解を容易にするため、第2ばね手段18を省略して示す。
【0066】
上部保持手段60は、第2カバー体11の厚み方向に延びる案内レール部材70と、第4案内ローラ53と、第3ばね手段19とを含む。案内レール部材70は、第2カバー体11の厚み方向に延び、断面が略C字状のレール部70aと、レール部70aの長手方向一端部に形成され、レール部70aが延びる方向に垂直に延びる板状の固定部70bとを有する。案内レール部材70は、固定部70bが、第2カバー体11の背面に当接した状態で、第2カバー体11にビスによって固定される。
【0067】
第4案内ローラ53は、断面が略コの字状の取付部材53aと4つのローラ部材53bとを含む。取付部材53aは、第2吊元縁材26にビスによって固定される。各ローラ部材53bは、取付部材53aの各端部に回転自在に設けられる。
【0068】
案内レール部材70は、内部空間に第4案内ローラ53の各ローラ部材53bが移動可能に当接した状態で、第4案内ローラ53を保持する。このような構成を採用することによって、案内レール部材70は、第4案内ローラ53を円滑に案内し、第4案内ローラ53を第2カバー体11の厚み方向に、すなわち第2水平方向Yに移動可能にする。
【0069】
案内レール部材70の上方には、規制部材71が設けられる。規制部材71は、断面が略L字上の形材によって実現され、ビスによって第2吊元縁材26に固定される。規制部材71を設けることによって、案内レール部材70の上方への変位を規制することができる。
【0070】
また案内レール部材70の空間3側端部には、第4案内ローラ規制部材72が設けられる。第4案内ローラ規制部材72は、ボルトおよびナットによって実現される。第4案内ローラ規制部材72は、ボルトの軸部が案内レール部材70の厚み方向中間部を、上下方向Zに沿って貫通して設けられる。
【0071】
これによって、第4案内ローラ53が案内レール部材70から離脱してしまうことが防がれる。したがって、第4案内ローラ53は、案内レール部材70の内部空間においてのみ案内レール部材70が延びる方向、すなわち第2カバー体11の厚み方向に沿って移動可能である。
【0072】
第2吊元縁材26には、ばね取付部材73が取付けられる。ばね取付部材73は、軸部73aと、軸部73aに連なって形成される環状の取付部73bとを有し、軸部73aが第2吊元縁材26に挿通されて、ナットによって固定される。
【0073】
案内レール部材70の中間連結部材21に望む外表面部には、ばね取付部材74が取付けられる。ばね取付部材74は、断面が略L字状に形成され、第3ばね手段19の係止部が係止する孔を有する。
【0074】
第3ばね手段19は、一端部がばね取付部材74の孔に係止し、他端部がばね取付部材73の取付部73bに係止して、第2カバー体11の厚み方向と平行に設けられる。第3ばね手段19は、案内レール部材70を通路2から空間3に向かう方向にばね付勢する。第3ばね手段19は、引張コイルばねによって実現される。
【0075】
第3ばね手段19によって、上部保持手段60は、第4案内ローラ53が最も第2カバー体11寄りに配置された状態で第4案内ローラ53を保持し、第2カバー体11を空間3側にばね付勢した状態で保持する。
【0076】
図9は、下部保持手段61の具体的構成を示す断面図であり、図10は下部保持手段61を図9の左方から見た断面図であり、図11は、図9の切断面線XI−XIから見た図である。
【0077】
下部保持手段61は、第2カバー体11の厚み方向に延びる案内レール部材80と、案内レール部材81と、第5案内ローラ54と、第6案内ローラ55と、第4ばね手段22とを含んで構成される。案内レール部材80は、第2カバー体11の厚み方向に延び、断面が略C字状のレール部80aと、レール部80aの長手方向一端部に形成されレール部80aが延びる方向に垂直に延びる板状の固定部80bとを有する。案内レール部材80は、固定部80bが、第2カバー体11の背面に当接した状態で、第2カバー体11にビスによって固定される。
【0078】
第5案内ローラ54は、断面が略コの字状の取付部材54aと、4つのローラ部材54bとを含む。取付部材54aは、第2吊元縁材26にビスによって固定される。各ローラ部材54bは、取付部材54aの各端部に回転自在に設けられる。
【0079】
案内レール部材80は、内部空間に第5案内ローラ54の各ローラ部材54bが移動可能に当接した状態で、第5案内ローラ54を保持する。このような構成を採用することによって、案内レール部材80は、第5案内ローラ54を円滑に案内し、第2水平方向Yに移動可能にする。
【0080】
案内レール部材80の空間3側端部には、第5案内ローラ規制部材75が設けられる。第5案内ローラ規制部材75は、ボルトおよびナットによって実現される。第5案内ローラ規制部材75は、ボルトの軸部が案内レール部材80の厚み方向中間部を、上下方向Zに沿って貫通して設けられる。
【0081】
これによって、第5案内ローラ54が案内レール部材80から第2水平方向Y外方に離脱してしまうことが防がれる。したがって、第5案内ローラ54は、案内レール部材80の内部空間においてのみ案内レール部材80が延びる方向に沿って移動可能である。
【0082】
案内レール部材80の下部には、第6案内ローラ55が設けられる。第6案内ローラ55は、断面が略U字状の取付部55aと、ローラ部材55bと、ボールローラ55cとを含む。取付部55aは、案内レール部材80の下方の外表面部に固定される。ローラ部材55bは、取付部55aに回転自在に設けられる。ボールローラ55cは、ボールが下方に望むように取付部55aに設けられる。
【0083】
第6案内ローラ55の下部には、案内レール部材81が設けられる。案内レール部材81は、断面が略C字状の形材によって実現される。案内レール部材81の下部には、断面が略L字形状のブラケット82がビスによって第2吊元縁材26に取付けられる。案内レール部材81は、ブラケット82に支持されて、第6案内ローラ55の上下方向Z下方に設けられる。案内レール部材81は、第2水平方向Yに沿って延びる。
【0084】
案内レール部材81の溝空間には、第6案内ローラ55のローラ部材55bおよびボールローラ55cが挿入される。第6案内ローラ55のローラ部材55bは、案内レール部材81の各側壁と僅かに隙間を空けて設けられる。また第6案内ローラ55のボールローラ55cは、案内レール部材81の底部に当接して設けられる。これによって、第6案内ローラ55は、案内レール部材81に円滑に案内され、案内レール部材81が延びる方向に沿って移動可能である。
【0085】
第2吊元縁材26には、ばね取付部材85が取付けられる。ばね取付部材85は、軸部85aと、軸部85aに連なって形成される環状の取付部85bとを有し、軸部85aが第2吊元縁材26に挿通されて、ナットによって固定される。
【0086】
案内レール部材81の中間連結部材21に臨む外表面部には、ばね取付部材86が取付けられる。ばね取付部材86は、断面が略L字状に形成され、第4ばね手段22の係止部が係止する孔を有する。
【0087】
第4ばね手段22は、一端部がばね取付部材86の孔に係止し、他端部がばね取付部材85の取付部85bに係止して、案内レール部材81の長手方向と平行に、かつ、第2水平方向Yと平行に設けられる。第4ばね手段22は、案内レール部材81を通路2から空間3に向かう方向にばね付勢する。第4ばね手段22は、引張コイルばねによって実現される。
【0088】
これによって、下部保持手段61は、第5案内ローラ54および第6案内ローラ55が最も第2カバー体11寄りに配置された状態で第5案内ローラ54を保持し、第2カバー体11を空間3側にばね付勢した状態で保持する。
【0089】
上部保持手段60および下部保持手段61は前述のように構成されるので、保持手段16は、第2カバー体11を、通路2から空間3方向にばね付勢して保持する。これによって、各建物A,Bの相対変位によって、第2カバー体11が通路2側に移動した後に、各建物A,Bが元の位置に復帰した場合に、第4ばね手段22のばね力によって、第2カバー体11を当初の位置に案内して復帰させることができる。
【0090】
再び図1および図2を用いて説明する。第1カバー体10の背面には、ばね取付部材23が取付けられる。ばね取付部材23には、第1ばね手段17が係止するための、係止孔が形成される。またブラケット7の空間3側端部には、断面が略L字状のばね取付部材24が取付けられる。ばね取付部材24は、壁体5の対向壁面部5aに向かって突出し、その先端部に取付部24aが形成される。
【0091】
第1ばね手段17は、一端部がばね取付部材23の孔に係止し、他端部がばね取付部材24の取付部24aに係止されて設けられる。第1ばね手段17は、第1カバー体10をリンク手段14に近接する方向にばね付勢する。第1ばね手段17は、引張コイルばねによって実現される。
【0092】
第1ばね手段17を設けることによって、第1カバー体10は、リンク手段14に近接する方向(矢符F2方向)にばね付勢された状態で、対向壁面4aに取付けられる。これによって、空間3側から流れ込んだ風の風圧によって、第1カバー体10がリンク手段14から離反する方向(矢符F1方向)に、不所望に回動し、第1カバー体10と第3カバー体20との間に隙間ができることを防ぐことができる。
【0093】
第2吊元縁材26の先端部には、第2ばね手段18が取付けられる。第2ばね手段18は、一端部が第2吊元縁材26に固定され、他端部が第2カバー体11の背面部に取付けられる。第2ばね手段18は、第2カバー体11をリンク手段14に近接する方向にばね付勢する。第2ばね手段18は、定トルクばねによって実現される。
【0094】
これによって、空間3側から流れ込んだ風などの外圧によって、第2カバー体11がリンク手段14から離反する方向(矢符F2方向)に、不所望に回動し、第2カバー体11と第3カバー体20との間に隙間ができることを防ぐことができる。
【0095】
図12は、各建物A,Bが近接/離反する方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図であり、図12(1)は壁用伸縮継手装置1の設置当初の状態を示し、図12(2)は各建物A,Bが近接する方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示し、図12(3)は各建物A,Bが離反する方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示す。
【0096】
地震などによって2つの建物A,Bが相対変位し、建物A,B間の離間距離W1が小さくなると、図12(2)に示すように、第1カバー体10と第2カバー体11は、それぞれ第1案内部材30、第2案内部材31に案内されて、相互に近接する方向に移動する。
【0097】
そして、第4案内部材33の第1案内面部31aが第3案内ローラ52当接し、第4案内部材33が第1案内面部33a沿って案内されることによって、第2カバー体11は、通路2に向かって移動する。このとき、第4案内ローラ53は、案内レール部材70に案内されて、空間3側へ移動する。同様に第5案内ローラ54は、案内レール部材80によって、第6案内ローラ55は、案内レール部材81によってそれぞれ案内され、空間3側へ移動する。
【0098】
そして、第4案内部材33が第3案内ローラ52によって第2案内面部33bに沿って案内されることによって、第1カバー体10と第2カバー体11は、さらに相互に近接する方向に移動し、第1カバー体10と第2カバー体11とがほぼ重なった状態まで移動する。
【0099】
このとき、リンク手段14は、第1カバー体10と第2カバー体11とが移動することによって、各リンク部材14aがリンクピン14bに対して回動して縮退し、第1カバー体10と第2カバー体11の移動に追従する。
【0100】
第1カバー体10は、第1ばね手段17によってばね付勢され、第2カバー体11は、第2ばね手段18によってばね付勢されているので、第1カバー体10と第2カバー体11とは、密接した状態で相互に近接する方向に移動する。
【0101】
これによって、壁用伸縮継手装置1は、通路2側に第2カバー体11を大きく突出させることなく、建物A,Bが近接する方向への相対変位を許容し、空間3を塞いだ状態に維持することができる。
【0102】
設置当初の状態では、第1案内部材30は、遊端部が第1ホルダ部分32aに挿通されている。また第2案内部材31は、遊端部が第2ホルダ部分32bに挿通されている。地震などによって2つの建物A,Bが相対変位し、建物A,B間の離間距離W1が大きくなると、図12(3)に示すように、第1案内部材30と第2案内部材31は、それぞれ第1案内ローラ50、第2案内ローラ51に案内されて平行に、かつ、相互に離反する方向に移動し、これに併せて、第1カバー体10と第2カバー体11とが相互に離反する方向に平行移動する。
【0103】
このとき、リンク手段14は、第1カバー体10と第2カバー体11との移動によって、各リンク部材14aがリンクピン14bに対して回動して伸長し、第1カバー体10と第2カバー体11の移動に追従する。
【0104】
第1カバー体10と第2カバー体11とが相互に最も離反した状態であっても、第3カバー体20は、第1カバー体10と第2カバー体11との間に位置し、第1カバー体10の遊端部と第2カバー体11の遊端部との間の隙間を塞いだ状態で維持する。したがって、地震などによって建物A,Bが離反する方向に相対変位しても、第1カバー体10、第2カバー体11および第3カバー体20によって空間3は常に塞がれた状態に維持される。
【0105】
図13は、各建物A,Bが前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図であり、図13(1)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが前方に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示し、図13(2)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが後方に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示す。
【0106】
一方の建物Aに対して他方の建物Bが前方に相対変位したとき、壁用伸縮継手装置1は、第1カバー体10が第1ヒンジ手段12を介して矢符F1方向に回動し、第2カバー体11が第2ヒンジ手段13を介して矢符F2方向に回動する。また一方の建物Aに対して他方の建物Bが後方に相対変位したとき、壁用伸縮継手装置1は、第1カバー体10が第1ヒンジ手段12を介して矢符F2方向に回動し、第2カバー体11が第2ヒンジ手段13を介して矢符F1方向に回動する。これによって、壁用伸縮継手装置1は各建物A,Bの前後方向の相対変位を許容する。
【0107】
図14は、各建物A,Bが近接しかつ前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図であり、図14(1)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが近接しかつ前方へ相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示し、図14(2)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが近接しかつ後方へ相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示す。
【0108】
図14(1)に示すように、一方の建物Aに対して他方の建物Bが近接しかつ前方へ相対変位したとき、壁用伸縮継手装置1は、第1ヒンジ手段12および第2ヒンジ手段13が回動することによって、建物Bの前方への相対変位を許容し、かつ、第3案内ローラ52が第4案内部材33の第1案内面部33aおよび第2案内面部33bを転動して案内されることによって、第2カバー体11を通路2側に突出させて、建物Bの近接方向への相対変位を許容する。
【0109】
また壁用伸縮継手装置1は、図14(2)に示すように、一方の建物Aに対して他方の建物Bが近接しかつ後方へ相対変位したとき、第1ヒンジ手段12および第2ヒンジ手段13が回動することによって、建物Bの後方への相対変位を許容し、かつ、第3案内ローラ52が第4案内部材33の第1案内面部33aおよび第2案内面部33bを転動して案内されることによって、第2カバー体11を通路2側に突出させて、建物Bの近接方向への相対変位を許容する。
【0110】
図15は、各建物A,Bが離反しかつ前後方向に相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の動作を説明するための水平断面図であり、図15(1)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが離反しかつ前方へ相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示し、図15(2)は一方の建物Aに対して他方の建物Bが離反しかつ後方へ相対変位したときの壁用伸縮継手装置1の状態を示す。
【0111】
図15(1)に示すように、一方の建物Aに対して他方の建物Bが離反しかつ前方へ相対変位したとき、壁用伸縮継手装置1は、第1ヒンジ手段12および第2ヒンジ手段13が回動することによって、建物Bの前方への相対変位を許容し、かつ、第1案内部材30および第2案内部材31が、それぞれ第1案内ローラ50、第2案内ローラ51に案内されて相互に離反する方向に移動することによって、他方の建物Bの一方の建物Aから離反する方向への相対変位を許容する。
【0112】
また図15(2)に示すように、一方の建物Aに対して他方の建物Bが離反しかつ後方へ相対変位したとき、壁用伸縮継手装置1は、第1ヒンジ手段12および第2ヒンジ手段13が回動することによって、建物Bの後方への相対変位を許容し、かつ、第1案内部材30および第2案内部材31が、それぞれ第1案内ローラ50、第2案内ローラ51に案内されて相互に離反する方向に移動することによって、他方の建物Bの一方の建物Aから離反する方向への相対変位を許容する。
【0113】
本実施形態によれば、第1カバー体10は、建物Aに、第1軸線L1まわりに回動自在に保持され、第2カバー体11は、建物Bに、第2軸線L2まわりに回動自在に保持される。第1ヒンジ手段12は、第1軸線L1まわりに回動自在な第1可動片12aを有し、第2ヒンジ手段13は、第2軸線L2まわりに回動自在な第2可動片13aを有する。リンク手段14は、一端部が第1可動片12aに連結され、他端部が第2可動片13aに連結され、第1カバー体10および第2カバー体11を一平面上に隣接した状態で支持する。
【0114】
また連結手段15は、第1可動片12aおよび第2可動片13aが互いに近接および離反する方向の変位を許容し、第1可動片12aおよび第2可動片13aを連結する。保持手段16は、第2可動片13aに設けられ、第2カバー体11を該第2カバー体11の厚み方向に変位自在に保持する。
【0115】
案内手段44は、2つの建物A,Bが互いに近接する方向への変位によって、第2カバー体11をリンク手段14から離反する方向、すなわち第2カバー体11の厚み方向に案内する。第1ばね手段17は、第1カバー体10を、リンク手段14に近接する方向にばね付勢する。第2ばね手段18は、第2カバー体11を、リンク手段14に近接する方向にばね付勢する。
【0116】
これによって、壁用伸縮継手装置1は、2つの建物A,Bが互いに近接する方向へ相対変位したとき、案内手段44および保持手段16によって、第2カバー体11をリンク手段14から離反する方向、すなわち第2カバー体11の厚み方向に円滑に案内するとともに、連結手段15によって、第1カバー体10と第2カバー体11とを互いに近接する方向に円滑に案内して、第1カバー体10および第2カバー体11を、互いに重なる位置まで変位させ、各建物A,Bの相対変位を許容することができる。
【0117】
さらに、第1カバー体10は、第1ばね手段17によってリンク手段14に近接する方向にばね付勢され、第2カバー体11は、第2ばね手段18によってリンク手段14に近接する方向にばね付勢されるので、第1カバー体10および第2カバー体11が変位するとき、第1カバー体10がリンク手段14から離反する方向に大きく回動することを防ぐことができるとともに、第2カバー体11のリンク手段14から離反する方向への変位量を最小限に抑えることができる。
【0118】
これによって、壁用伸縮継手装置1は、地震などによる2つの建物A,Bの互いに近接する方向への相対変位を、第2カバー体11のリンク手段14から離反する方向への変位を最小限に留めて許容することができるので、通路2の壁体として用いても通路2内への第2カバー体11の突出量を可及的に小さくすることができ、通路2の有効面積が大きく減少して通行の妨げになることはない。したがって、通路2の壁体として好適に用いることができる壁用伸縮継手装置1を実現することができる。
【0119】
また本実施形態によれば、連結手段15は、基端部が第1可動片12aに固定され、第1水平方向Xに沿って延びる第1案内部材30と、基端部が第2可動片13aに固定され、第1水平方向Xに沿って延びる第2案内部材31と、第1案内部材30の遊端部が挿入される第1ホルダ部分32aと第2案内部材31の遊端部が挿入される第2ホルダ部分32bとを有し、リンク手段14に連結される第3案内部材32を含んで構成される。
【0120】
これによって、地震などによって、各建物A,Bが相対変位し、第1カバー体10が一方の建物Aに対して第1軸線L1まわりに回動し、第2カバー体11が他方の建物Bに対して第2軸線L2まわりに回動しても、第1カバー体10と第2カバー体11とを、一平面を形成するように隣接した状態に維持し、各建物A,Bの相対変位を許容することができる。
【0121】
また本実施形態によれば、保持手段16は、上部保持手段60または下部保持手段61によって実現される。上部保持手段60は、第2可動片13aに固定される案内レール部材70と、案内レール部材70に嵌り込む第4案内ローラ53と、第3ばね手段19とを含んで構成される。
【0122】
これによって、地震などによって、各建物A,Bが相対変位し、第2カバー体11が第2軸線L2まわりに回動する方向に力が作用しても、第2カバー体11を第2カバー体11の厚み方向と平行な方向への移動を許容し、第2カバー体11の角変位量を少なくし、第2カバー体11の通路2側への突出量を抑制することができる。
【0123】
また本実施形態によれば、リンク手段14には、第1カバー体10と第2カバー体11とにわたる中間領域に配置される第3カバー体20が設けられるので、第1カバー体10と第2カバー体11とにわたる中間領域を、第3カバー体20によってリンク手段14側から塞ぐことができる。
【0124】
これによって、地震などによって各建物A,Bが相対変位し、第1カバー体10および第2カバー体11が変位しても、中間領域を塞いだ状態に維持することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 壁用伸縮継手装置
2 通路
3 空間
4 壁体
5 壁体
10 第1カバー体
11 第2カバー体
12 第1ヒンジ手段
13 第2ヒンジ手段
14 リンク手段
15 連結手段
16 保持手段
17 第1ばね手段
18 第2ばね手段
19 第3ばね手段
20 第3カバー体
21 中央連結部材
22 第4ばね手段
25 第1吊元縁材
26 第2吊元縁材
30 第1案内部材
31 第2案内部材
32 第3案内部材
33 第4案内部材
33a 第1案内面部
33b 第2案内面部
44 案内手段
50 第1案内ローラ
51 第2案内ローラ
52 第3案内ローラ
53 第4案内ローラ
54 第5案内ローラ
55 第6案内ローラ
60 上部保持手段
61 下部保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔をあけて隣接する2つの建物のいずれか一方に、鉛直な第1軸線まわりに回動自在に保持される第1カバー体と、
前記2つの建物のいずれか他方に、鉛直な第2軸線まわりに回動自在に保持される第2カバー体と、
前記第1カバー体を保持し、前記第1軸線まわりに回動自在な第1可動片を有する第1ヒンジ手段と、
前記第2カバー体を保持し、前記第2軸線まわりに回動自在な第2可動片を有する第2ヒンジ手段と、
前記第1可動片に連結され、前記一方の建物寄りに配置される一端部と、前記第2可動片に連結され、前記他方の建物寄りに配置される他端部とを有し、前記一端部および他端部が互いに近接および離反自在なリンク機構を構成するリンク手段であって、前記第1および第2カバー体を一平面を形成するように隣接した状態で支持するリンク手段と、
前記第1可動片および第2可動片が互いに近接および離反する方向の変位を許容し、前記第1可動片および前記第2可動片を連結する連結手段と、
前記第2可動片に設けられ、前記第2カバー体を該第2カバー体の厚み方向に変位自在に保持する保持手段と、
前記2つの建物が互いに近接する方向への変位によって、前記第2カバー体を前記リンク手段から離反する方向に案内する案内手段と、
前記第1カバー体を、前記リンク手段に近接する方向にばね付勢する第1ばね手段と、
前記第2カバー体を、前記リンク手段に近接する方向にばね付勢する第2ばね手段とを含むことを特徴とする壁用伸縮継手装置。
【請求項2】
前記連結手段は、
基端部が前記第1可動片に固定され、第1軸線に垂直な第1水平軸線に沿って延びる第1案内部材と、
基端部が前記第2可動片に固定され、第2軸線に垂直な第2水平軸線に沿って延びる第2案内部材と、
前記リンク手段に連結され、前記第1案内部材および第2案内部材を、第1水平軸線と第2水平軸線とが平行となるように案内する第3案内部材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の壁用伸縮継手装置。
【請求項3】
前記第2可動片に固定され、前記第2カバー体の厚み方向に沿って延びる案内レール部材をさらに含み、
前記保持手段は、前記案内レール部材によって前記第2カバー体の厚み方向に移動自在に支持される案内ローラを有することを特徴とする請求項2に記載の壁用伸縮継手装置。
【請求項4】
前記リンク手段には、前記第1カバー体と第2カバー体とにわたる中間領域に配置される第3カバー体が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の壁用伸縮継手装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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