説明

壁用目地カバー装置

【課題】地震で目地部が狭くなるように揺れ動いた場合に、目地カバーがスムーズに折りたたむように移動し、大きな風圧が加わっても、目地カバーが必要以上に曲がったりするのを効率よく阻止することができる壁用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】左右の建物の壁面間の一方の建物3の外壁躯体に一端部が回動可能に取付けられ、かつ目地部が狭くなると折りたたみできる目地カバー6と、この目地カバーの先端部に一端部が枢支され、他端部が一方の建物に固定されたガイドレール8に移動可能に取付けられた支持アーム9と、この支持アームのほぼ中央部に一端部が枢支され、他端部が外壁躯体に枢支された支承アーム12と、支持アームの他端部を目地カバーがほぼ直線状態となるように付勢する支持アーム付勢機構15と、目地部が狭くなると該目地カバーの中央部を前方へ突出させることができる目地カバー保持機構22とで壁用目地カバー装置1を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して建てられた左右の建物の外壁間の目地部を覆う壁用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目地部を介して建てられた左右の建物の目地部に位置する一方の建物の躯体に回動可能に取付けられた目地部が狭くなると折りたたみできるようにほぼ中央部で枢支された目地部を覆う目地カバーと、この目地カバーを該目地カバーで前記目地部を覆う位置に常時位置させる目地カバー保持機構と、前記左右の建物の目地部が狭くなるように地震等によって揺れ動いた場合に、前記目地カバーを折りたたみながら回動させるリンクを用いた目地カバー回動機構とからなる壁面用目地カバー装置が考えられている。
【0003】
しかしながら、目地カバーに風圧が加わると、折りたたみできるように枢支されている部位の中央部に大きな圧力が加わり、損傷しやすいとともに、中央部が内側へ回動した状態となると折りたためなくなり、動作不良や目地カバーを損傷させるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3154963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、地震で目地部が狭くなるように揺れ動いた場合に、目地カバーがスムーズに折りたたむように移動することができるとともに、目地カバーに大きな風圧が加わっても、目地カバーが必要以上に曲がったりするのを効率よく阻止することができる壁用目地カバー装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0007】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は目地部を介して建てられた左右の建物の壁面間の目地部を覆うように位置する一方の建物の外壁躯体に一端部がほぼ水平方向に回動可能に取付けられ、かつ目地部が狭くなるとほぼ中央部の枢支部が前方へ突出するように折りたたみできる中央部がわずかに前方へ突出する目地カバーと、この目地カバーの先端部に一端部が枢支され、他端部が前記一方の建物の目地部側外壁面にほぼ水平方向に位置するように固定されたガイドレールに沿って移動可能に取付けられた支持アームと、この支持アームのほぼ中央部に一端部が枢支され、他端部が前記目地カバーの一端部が取付けられた部位近傍の外壁躯体に枢支された支承アームと、前記支持アームの他端部を前記目地カバーがほぼ直線状態となるように付勢する支持アーム付勢機構と、前記目地カバーの中央部がわずかに前方へ突出するように保持でき、かつ目地部が狭くなると該目地カバーの中央部を前方へ突出させることができる目地カバー保持機構とで壁用目地カバー装置を構成している。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)左右の建物の壁面間の目地部を覆うように位置する一方の建物の外壁躯体に一端部がほぼ水平方向に回動可能に取付けられ、かつ目地部が狭くなるとほぼ中央部の枢支部が前方へ突出するように折りたたみできる中央部がわずかに前方へ突出する目地カバーと、この目地カバーの先端部に一端部が枢支され、他端部が前記一方の建物の目地部側外壁面にほぼ水平方向に位置するように固定されたガイドレールに沿って移動可能に取付けられた支持アームと、この支持アームのほぼ中央部に一端部が枢支され、他端部が前記目地カバーの一端部が取付けられた部位近傍の外壁躯体に枢支された支承アームと、前記支持アームの他端部を前記目地カバーがほぼ直線状態となるように付勢する支持アーム付勢機構と、前記目地カバーの中央部がわずかに前方へ突出するように保持でき、かつ目地部が狭くなると該目地カバーの中央部を前方へ突出させることができる目地カバー保持機構とで構成されているので、目地カバー保持機構によって目地カバーに風圧が加わっても、目地カバーのほぼ中央部がわずかに前方へ突出する状態を保持することができる。
したがって、目地カバーが直線状態となったり、ほぼ中央部の枢支部が内側へ位置することなく、確実に目地カバーの折りたたみを行なえる状態を保つことができ、長期間目的の動作が可能な状態を保つことができる。
(2)前記(1)によって、目地部の寸法よりもわずかに小さな目地カバーを使用することができ、取付けが容易で、安価に設置することができるとともに、支持アーム、支承アームおよび支持アーム付勢機構を用いているので、左右の建物が異なる左右方向に揺れ動いた場合の目地部間に位置する幅寸法を小さくすることができ、左右の建物が異なる前後方向に揺れ動いた状態で目地部が狭くなるような揺れ動きが生じても、目地カバーを確実に折りたたみ、ガタ付きを防止し、かつ損傷を効率よく防止することができる。
(3)請求項2、3も前記(1)、(2)と同様な効果が得られる。
(4)請求項4も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、支持アームを一方の建物の外壁躯体と平行になるように、移動可能に位置させることができる。
【0010】
したがって、目地部が狭くなる場合に、最小幅となるようにたたむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の正面図。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図。
【図4】本発明を実施するための第1の形態の目地カバーの説明図。
【図5】本発明を実施するための第1の形態の支持アームの説明図。
【図6】本発明を実施するための第1の形態の目地部が狭くなった動作説明図。
【図7】本発明を実施するための第1の形態の目地部が広くなった動作説明図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の正面図。
【図9】図8の9−9線に沿う断面図。
【図10】図8の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の正面図。
【図12】図11の12−12線に沿う断面図。
【図13】本発明を実施するための第3の形態の要部拡大断面図。
【図14】本発明を実施するための第4の形態の正面図。
【図15】図14の15−15線に沿う断面図。
【図16】本発明を実施するための第4の形態の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1ないし図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して建てられた左右の建物3、3の壁面3a、3a間の目地部を覆う本発明の壁用目地カバー装置で、この壁用目地カバー装置1は前記左右の建物3、3の一方の建物3の目地部側外壁躯体3bに一端部がほぼ水平に回動可能にヒンジ部材4で取付けられ、かつ目地部2が狭くなるとほぼ中央部のヒンジ部材4の枢支部4aが前方へ突出するように折りたたみできる中央部がわずかに前方へ突出する先端部にローラー5が取付けられた目地カバー6と、この目地カバー6のほぼ中央部の先端部に一端部がヒンジ部材7で枢支され、他端部が前記一方の建物3の目地部側外壁面3aにほぼ水平方向に位置するように固定されたガイドレール8に沿って移動可能に取付けられた支持アーム9と、この支持アーム9のほぼ中央部に一端部がヒンジ部材10で枢支され、他端部が前記ガイドレール8の高さ寸法だけ突出したところで枢支される、前記目地カバー6の一端部が取付けられた部位近傍の外壁躯体3bに取付けられた支承アーム取付けヒンジ部材11を介して設けられた支承アーム12と、前記支持アーム9の他端部を前記目地カバー6がほぼ直線状態となるように付勢する付勢スプリング13を介装したワイヤー14で構成された支持アーム付勢機構15と、前記支承アーム12の他端部寄りの部位に一端部がヒンジ部材16で枢支され、他端部が前記目地カバー6の躯体取付側の一方の目地カバー6aのほぼ中央部に当接するストッパーアーム17、このストッパーアーム17を常時前記目地カバー6の一方の目地カバー6aに当接させ、該目地カバー6の中央部をわずかに前方へ突出するように保持するワイヤーを用いたストッパー紐18および、このストッパー紐18を常時伸長するように付勢する一端部が前記ストッパーアーム17に接続され、他端部が前記支持アーム9に取付けられたスプリング19を介装したワイヤー20を用いたストッパーアーム付勢機構21とからなる目地カバー保持機構22とで構成されている。
【0014】
前記支持アーム9は図5に示すように棒状の支持アーム本体23と、この支持アーム本体23の一端部に取付けられた前記目地カバー6のほぼ中央部の先端部に取付けられるヒンジ部材7と、前記支持アーム本体23の他端部に固定されたほぼ直角方向に突出するアーム24と、このアーム24の先端部に取付けられたガイドレール8に沿って移動するローラー25とで構成されている。
【0015】
前記支承アーム取付けヒンジ部材11は、外壁躯体3bに固定される固定側ヒンジ部材11aは高さが前記ガイドレール8の高さ寸法とほぼ同じになるようにL字状に形成され、この固定側ヒンジ部材11aの先端部に枢支部26を介して前記支承アーム12に取付けられる可動側ヒンジ部材11bが取付けられている。
【0016】
上記構成の壁用目地カバー装置1は地震によって左右の建物3、3が、目地部2が狭くなるように揺れ動いた場合、図6に示すように目地カバー6の先端部が他方の建物3の外壁面3aによって押し圧される。
【0017】
この押し圧によって、ほぼ中央部がわずかに前方へ突出している目地カバー6は中央部のヒンジ部材4の枢支部4aが前方へ押し出され、折りたたまれる状態になるとともに、支持アーム9の他端部は支持アーム付勢機構15の付勢スプリング13の付勢力に抗して、ガイドレール8に沿って移動する。
【0018】
なお、支持アーム9の移動は、該支持アーム9が一方の建物3の外壁面3aとほぼ平行となる位置まで移動させることができる。この時、目地カバー保持機構22のストッパーアーム17は支承アーム12に当接するように回動する。
【0019】
地震によって目地部2が広くなるように左右の建物3、3が揺れ動いた場合、図7に示すように他方の建物3の外壁面3aが目地カバー6の先端部のローラー5より離れた状態となって、その揺れ動きを吸収する。
【0020】
なお、通常時には支持アーム付勢機構15の付勢力によって目地カバー6は支承アーム12に支承された支持アーム9の矢印方向の回動によって最大(中央部がわずかに前方へ突出した状態)に伸びた状態となるとともに、目地カバー保持機構22のストッパーアーム17によって保持されているため、目地カバー6に風圧が加わったとしても、目地カバー6が一直線の状態となるような曲げ力や中央部のヒンジ部材4を損傷させるような力が加わるのを防止することができる。
【0021】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8ないし図16に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図8ないし図10に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、目地カバー6の上部寄りの部位と下部寄りの部位とに2組の支持アーム9、9、ガイドレール8、8、支承アーム12、12、支持アーム付勢機構15、15および目地カバー保持機構22、22を設置して目地カバー6を支持した点で、このように構成した壁用目地カバー装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0023】
なお、目地カバー6の高さ寸法に応じて、3組、4組等の複数組を設けて目地カバーを支持してもよい。
【0024】
図11ないし図13に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、中央部が当接した状態でわずかに前方へ突出した状態となるように当接面を傾斜面27、27に形成してヒンジ部材4で取付けた取付け手段28を用いた目地カバー6Aを用いるとともに、目地カバー6Aの中央部が常時当接するように付勢するスプリング19とワイヤー20を用いた付勢機構29を、一端部を支持アーム9に取付け、他端部を中央部寄りの一方の外壁躯体3bに取付けられ一方の目地カバー6aに取付けた目地カバー保持機構22Aを用いた点で、このような目地カバー保持機構22Aを用いた壁用目地カバー装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1形態と同様な作用効果が得られる。
【0025】
図14ないし図16に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、接続部分の一方の端部に傾斜面30が形成された支持金具31を固定した取付け手段28Aを用いた目地カバー保持機構22Bを用いた点で、このような目地カバー保持機構22Bを用いて構成した壁用目地カバー装置1Cにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られる。
【0026】
なお、前記本発明の各実施の形態では左右の建物3、3の前部より内側に位置した所の壁面3a、3a間に目地カバー6、6Aを配置したものに付いて説明したが、本発明はこれに限らず、左右の建物3、3の前部の壁面3a、3a間に目地カバーを位置させ目地部が狭くなると左右の建物3、3の前方へ突出するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は目地部を介して建てられた左右の建物の外壁間の目地部を覆う壁用目地カバー装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0028】
1、1A、1B、1C:壁用目地カバー装置、
2:目地部、 3:建物、
4:ヒンジ部材、 5:ローラー、
6、6A:目地カバー、 7:ヒンジ部材、
8:ガイドレール、 9:支持アーム、
10:ヒンジ部材、
11:支承アーム取付けヒンジ部材、
12:支承アーム、 13:付勢スプリング、
14:ワイヤー、 15:支持アーム付勢機構、
16:ヒンジ部材、 17:ストッパーアーム、
18:ストッパー紐、 19:スプリング、
20:ワイヤー、 21:ストッパーアーム付勢機構、
22、22A、22B:目地カバー保持機構、
23:支持アーム本体、 24:アーム、
25:ローラー、 26:枢支部、
27:傾斜面、 28、28A:取付け手段、
29:付勢機構、 30:傾斜面、
31:支持金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を介して建てられた左右の建物の壁面間の目地部を覆うように位置する一方の建物の外壁躯体に一端部がほぼ水平方向に回動可能に取付けられ、かつ目地部が狭くなるとほぼ中央部の枢支部が前方へ突出するように折りたたみできる中央部がわずかに前方へ突出する目地カバーと、この目地カバーの先端部に一端部が枢支され、他端部が前記一方の建物の目地部側外壁面にほぼ水平方向に位置するように固定されたガイドレールに沿って移動可能に取付けられた支持アームと、この支持アームのほぼ中央部に一端部が枢支され、他端部が前記目地カバーの一端部が取付けられた部位近傍の外壁躯体に枢支された支承アームと、前記支持アームの他端部を前記目地カバーがほぼ直線状態となるように付勢する支持アーム付勢機構と、前記目地カバーの中央部がわずかに前方へ突出するように保持でき、かつ目地部が狭くなると該目地カバーの中央部を前方へ突出させることができる目地カバー保持機構とからなることを特徴とする壁用目地カバー装置。
【請求項2】
目地カバー保持機構は支承アームの他端部寄りの部位に一端部が枢支され、他端部が前記目地カバーの躯体取付側パネルのほぼ中央部に当接するストッパーアーム、このストッパーアームを常時前記目地カバーの躯体取付側パネルに当接させ、該目地カバーの中央部がわずかに前方へ突出するように保持するストッパー紐および、このストッパー紐を常時伸長するように付勢する一端部が前記ストッパーアームに接続され、他端部が前記支持アームに取付けられたストッパーアーム付勢機構とからなる目地カバー支持機構とからなることを特徴とする請求項1記載の壁用目地カバー装置。
【請求項3】
目地カバー保持機構は目地カバーの中央部がわずかに前方へ突出するように取付ける取け手段と、目地カバーの中央部寄りの部位を常時内側方向へ付勢する付勢機構とからなることを特徴とする請求項1記載の壁用目地カバー装置。
【請求項4】
支持アームの他端部にアームを介してガイドレールにスライド移動可能なローラーが設けられるとともに、支承アームの他端部は前記支持アームのアームとほぼ同じ寸法のアームを介して外壁躯体に固定されていることを特徴とする請求項1記載の壁用目地カバー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate