壁用目地カバー装置
【課題】地震時にカバー板と建造物の壁面との間に開口が生じることがなく、また、コストを低減し得る壁用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】隣接する左右の建造物A,Bの側壁面x,x間の目地sを遮蔽する壁用目地カバー装置1Aにあって、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板5を、その両側縁を左右の建造物A,Bの側壁面x,xに夫々固定することによって目地sの幅方向に伸縮可能に配設した。
【解決手段】隣接する左右の建造物A,Bの側壁面x,x間の目地sを遮蔽する壁用目地カバー装置1Aにあって、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板5を、その両側縁を左右の建造物A,Bの側壁面x,xに夫々固定することによって目地sの幅方向に伸縮可能に配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の壁用目地カバー装置aにあって、図12に示すように、目地sを介して隣接する一方の建造物Bの側壁面bに矩形枠状に形成されたホルダーcの一端をヒンジdを介して回動可能に枢結し、該ホルダーcの他端を他方の建造物Aの壁面eに差し渡すとともに、引張バネfからなる付勢手段によって前記ホルダーcを目地sの内方に付勢することにより、ホルダーcの他端を建造物Aの壁面eに弾接させ、該ホルダーcに被着したカバー板gによって、目地sを遮蔽するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記ホルダーcの枢結端側には、該ホルダーcに裏面から当接するストッパーhが配設され、該ストッパーhによってホルダーcの内方への回動を規制し、目地sの外方にのみ回動させ得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160706号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来構成の壁用目地カバー装置aにあっては、地震時に建造物A,Bが前後方向あるいは左右方向に離隔するように相対変位すると、図13(A),(B)に示すように、カバー板gの端部と建造物Aの壁面eとの間に開口が生じるという問題点があった。
【0006】
また、カバー板gを被着するためのホルダーcや該ホルダーcを目地sの内方に付勢する引張バネf、或いはホルダーcの内方回動を規制するストッパーh等が必要であるため、部品点数が多く、製作や組み立てに手間が掛かり、それなりにコストが高いものとなっていた。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、地震時にカバー板と建造物の壁面との間に開口が生じることがなく、また、コストを低減し得る壁用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置において、目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されていることを特徴とする壁用目地カバー装置である。
【0009】
前記壁用目地カバー装置にあって、カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成が提案される。
【0010】
また、前記伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成が提案される。
【0011】
また、前記伸縮性支持体が、引張バネからなるものである構成が提案される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように、目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されている壁用目地カバー装置であるので、地震時に、隣接する左右の建造物が前後方向に、または左右方向に離隔するように相対変位すると、蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その伸縮性によって前記相対変位に追従する。これにより、如何なるときでもカバー板と建造物の側壁面との間に開口が生じることがなく、該カバー板によって目地を確実に遮蔽することができる。
【0013】
また、従来構成に比して、カバー板gを被着するためのホルダーc(図12参照)や該ホルダーcを目地sの内方に付勢する引張バネf、或いはホルダーcの内方回動を規制するストッパーh等が不要であるため、部品点数が減少し、製作や組み立てに手間が掛からないため、コストを低減することができる。
【0014】
前記壁用目地カバー装置にあって、カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成にあっては、カバー板の幅方向中央部に連結された伸縮性支持体によってカバー板が支持され、該カバー板の前後方向の揺動を抑制することができるとともに、地震時にカバー板を支持した状態で、伸縮性支持体を左右の建造物の相対変位に追従させることができる。
【0015】
また、前記伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に枢結されている構成にあっては、硬性を備えたパイプによってカバー板の前後方向の揺動抑制を確実に行わせることができるとともに、優れた伸縮性を得ることができる。
【0016】
また、前記伸縮性支持体が、引張バネからなる構成にあっては、簡単な構成であるにも拘わらず、カバー板に対する所定の揺動抑制作用を得ることができ、前記パイプ製の伸縮性支持体に比して安価なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施例にかかる壁用目地カバー装置1Aの施工状態を示す横断面図である。
【図2】同上の壁用目地カバー装置1Aの施工状態を示す正面図である。
【図3】建造物A,Bが常態から左右方向に離隔するように相対変位したときのカバー板5の作用説明図である。
【図4】建造物A,Bが常態から前後方向に相対変位したときのカバー板5の作用説明図である。
【図5】第二実施例にかかる壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す横断面図である。
【図6】同上の壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す正面図である。
【図7】伸縮性支持体8Aと連結手段16Aとを示す拡大横断面図である。
【図8】第二実施例の変形実施例にかかる連結手段16Bを備えた壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す横断面図である。
【図9】同上の連結手段16Bを示す拡大横断面図である。
【図10】第三実施例にかかる壁用目地カバー装置1Cの施工状態を示す横断面図である。
【図11】同上の壁用目地カバー装置1Cの施工状態を示す正面図である。
【図12】従来構成の壁用目地カバー装置aの施工状態を示す横断面図である。
【図13】従来構成の壁用目地カバー装置aの地震時における作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第一実施例を、図1〜図4に基づいて説明する。
本発明にかかる壁用目地カバー装置1Aは、図1に示すように、目地sを介して隣接する左右の建造物A,Bの側壁面x,x間に配設される。ここで、一方の建造物Aは、図示しない免震装置によって下部が支持されており、免震構造となっている。これにより、地震時には、免震装置の免震作用によって建造物Aが水平方向に大きく揺れることとなる。
【0019】
建造物A,Bの対向する両側壁面x,xには、壁用目地カバー装置1Aを構成する左右の固定枠2,2が上下方向に延在させて夫々配設されている。該固定枠2,2は、側壁面x,xに固定される固定片部2aと該固定片部2aの後端から内方に突出する連結片部2bとを備えた断面L形のステンレス製アングル材からなり、各固定片部2aが、側壁面x,xから突出された複数のアンカーボルト3(図2参照)と各アンカーボルト3に螺合されたナット4とによって両側壁面x,xに夫々固定されている。
【0020】
前記固定枠2,2の連結片部2b,2bには、両建造物A,Bの側壁面x,x間の目地sを遮蔽するカバー板5の左右両側縁6,6が複数のピアスビス7によって連結されている。これにより、固定枠2,2を介してカバー板5の左右両側縁6,6が両建造物A,Bの側壁面x,xに固定されている。カバー板5は、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなり、これには厚み0.2mm程度のステンレスバネ鋼(SUS304H)をプレス加工したものが好適に用いられ得る。そして、この蛇腹状に形成されたカバー板5の左右両側縁6,6を両建造物A,Bの側壁面x,xに固定することにより、該カバー板5が目地sの幅方向に伸縮可能に配設されている。
【0021】
かかる構成にあって、地震時に、隣接する左右の建造物A,Bが前後方向に、または左右方向に離隔するように相対変位すると、蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板5が、その伸縮性によって前記相対変位に追従する。即ち、図3(A)に示す常態から建造物A,Bが左右方向に離隔するように相対変位すると、図3(B)に示すように、カバー板5が左右方向に伸長してその相対変位に追従し、また、図4(A)に示す常態から建造物A,Bが前後方向に相対変位すると、図4(B)に示すように、カバー板5が斜めに伸長してその相対変位に追従する。尚、図示省略するが、左右の建造物A,Bが近接するように相対変位した場合には、カバー板5が収縮してその相対変位に追従することとなる。これにより、如何なるときでもカバー板5と建造物A,Bの側壁面x,xとの間に開口が生じることがなく、該カバー板5によって目地sを確実に遮蔽することができる。
【0022】
また、第一実施例にかかる壁用目地カバー装置1Aは、カバー板5と左右の固定枠2,2とを主要部品として構成されているため、従来構成(図12参照)に比して、部品点数が減少し、製作や組み立てに手間が掛からないため、コストを低減することができる。
【0023】
図5〜図7は第二実施例にかかる壁用目地カバー装置1Bを示し、この壁用目地カバー装置1Bは、カバー板5の背面側に、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制する伸縮性支持体8Aを備えてなるものである。該伸縮性支持体8Aは、図7に示すように、径の異なる複数本のパイプ9からなり、その最も径大なパイプ9(9a)の両端に、夫々径大なパイプ9に径小なパイプ9が順次進退可能に内嵌されるとともに、径大なパイプ9の先端内周部と径小なパイプ9の後端外周部とに配設された相互に当接可能が環状のストッパー部材10a,10bによって各パイプ9が脱出不能に連結されている。
【0024】
伸縮性支持体8Aの長手方向の両端部となる最も径小なパイプ9(9b),9(9b)の先端部は、夫々前後方向に回動可能なヒンジ11,11の回動片部11aにボルト12とナット13を介して上下方向に回動可能に連結されている。また、両ヒンジ11,11の固定片部11bは、その高さ位置を相違させて左右の建造物A,Bの側壁面x,xにアンカーボルト14とナット15によって固定されている。これにより、図6に示すように、伸縮性支持体8Aが左右の建造物A,Bの側壁面x,x間に斜めに配設されており、地震時に建造物A,Bが近接する方向に相対変位すると、伸縮性支持体8Aの両端部が上下方向に回動してその相対変位に追従するようになっている。
【0025】
また、前記伸縮性支持体8Aの長手方向中央部は、カバー板5の幅方向中央部に連結手段16Aを介して回動可能に連結されている。この連結手段16Aは、図7に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)の長手方向中央部に、前方から後方に向けて回動可能に挿通された連結ボルト17と、該連結ボルト17の後端突出部に螺着された袋ナット18と、前記連結ボルト17の頭部17aに装着された連結片19とによって構成されており、該連結片19の先端部が溶接またはリベット止めを介してカバー板5の幅方向中央部に固着されている。
【0026】
かかる構成にあって、カバー板5の幅方向中央部に連結された伸縮性支持体8Aによってカバー板5が支持されていることにより、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制することができる。また、地震時にカバー板5を支持した状態で、伸縮性支持体8Aをその伸縮作用及び両端部の回動作用を介して左右の建造物A,Bの相対変位に追従させることができる。特に、この伸縮性支持体8Aは、径の異なる複数本のパイプ9の、その最も径大なパイプ9(9a)の両端に、夫々径大なパイプ9に径小なパイプ9を順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結したものであるため、硬性を備えたパイプ9によってカバー板5の前後方向の揺動抑制を確実に行わせることができるとともに、優れた伸縮性を得ることができる。
【0027】
図8,図9は第二実施例の変形実施例を示し、この変形実施例では、伸縮性支持体8Aの長手方向中央部と、カバー板5の幅方向中央部とが前記とは異なる構成の連結手段16Bによって回動可能に連結されている。この連結手段16Bは、図9に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)の長手方向中央部に、前方から後方に向けて回動可能に挿通された螺子杆20と、該螺子杆20の後端突出部に螺着された袋ナット18と、前記螺子杆20の前端に固着された左右一対の薄肉状L形連結片21,21とによって構成されており、該連結片21,21の対向する先端部が溶接またはリベット止めを介してカバー板5の幅方向中央部に固着されている。
【0028】
かかる構成にあっては、図8に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)にカバー板5の背面側に位置する大部分の屈曲部を当接させることができるため、カバー板5の前後方向の揺動抑制をより確実に行わせることができる。
【0029】
図10,図11は第三実施例にかかる壁用目地カバー装置1Cを示し、この壁用目地カバー装置1Cは、カバー板5の背面側に、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制する伸縮性支持体8Bを備えてなるものである。該伸縮性支持体8Bは、引張バネからなり、その両端を、図11に示すように、高さ位置を相違させて左右の建造物A,Bの側壁面x,xに固定されたブラケット22,22に係合させることにより、建造物A,Bの側壁面x,x間に適宜の引張状態で斜めに配設されている。また、伸縮性支持体8Bの長手方向中央部は、カバー板5の幅方向中央部に円環状のワイヤ23を介して回動可能に連結されている。
【0030】
かかる構成にあっては、簡単な構成であるにも拘わらず、カバー板5に対する所定の揺動抑制作用を得ることができ、前記パイプ製の伸縮性支持体8Aに比して安価となる利点がある。
【符号の説明】
【0031】
A 建造物
B 建造物
s 目地
x 側壁面
1A,1B,1C 壁用目地カバー装置
5 カバー板
8A,8B 伸縮性支持体
9 パイプ
9a 最も径大なパイプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の壁用目地カバー装置aにあって、図12に示すように、目地sを介して隣接する一方の建造物Bの側壁面bに矩形枠状に形成されたホルダーcの一端をヒンジdを介して回動可能に枢結し、該ホルダーcの他端を他方の建造物Aの壁面eに差し渡すとともに、引張バネfからなる付勢手段によって前記ホルダーcを目地sの内方に付勢することにより、ホルダーcの他端を建造物Aの壁面eに弾接させ、該ホルダーcに被着したカバー板gによって、目地sを遮蔽するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記ホルダーcの枢結端側には、該ホルダーcに裏面から当接するストッパーhが配設され、該ストッパーhによってホルダーcの内方への回動を規制し、目地sの外方にのみ回動させ得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160706号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来構成の壁用目地カバー装置aにあっては、地震時に建造物A,Bが前後方向あるいは左右方向に離隔するように相対変位すると、図13(A),(B)に示すように、カバー板gの端部と建造物Aの壁面eとの間に開口が生じるという問題点があった。
【0006】
また、カバー板gを被着するためのホルダーcや該ホルダーcを目地sの内方に付勢する引張バネf、或いはホルダーcの内方回動を規制するストッパーh等が必要であるため、部品点数が多く、製作や組み立てに手間が掛かり、それなりにコストが高いものとなっていた。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、地震時にカバー板と建造物の壁面との間に開口が生じることがなく、また、コストを低減し得る壁用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置において、目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されていることを特徴とする壁用目地カバー装置である。
【0009】
前記壁用目地カバー装置にあって、カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成が提案される。
【0010】
また、前記伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成が提案される。
【0011】
また、前記伸縮性支持体が、引張バネからなるものである構成が提案される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように、目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されている壁用目地カバー装置であるので、地震時に、隣接する左右の建造物が前後方向に、または左右方向に離隔するように相対変位すると、蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その伸縮性によって前記相対変位に追従する。これにより、如何なるときでもカバー板と建造物の側壁面との間に開口が生じることがなく、該カバー板によって目地を確実に遮蔽することができる。
【0013】
また、従来構成に比して、カバー板gを被着するためのホルダーc(図12参照)や該ホルダーcを目地sの内方に付勢する引張バネf、或いはホルダーcの内方回動を規制するストッパーh等が不要であるため、部品点数が減少し、製作や組み立てに手間が掛からないため、コストを低減することができる。
【0014】
前記壁用目地カバー装置にあって、カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されている構成にあっては、カバー板の幅方向中央部に連結された伸縮性支持体によってカバー板が支持され、該カバー板の前後方向の揺動を抑制することができるとともに、地震時にカバー板を支持した状態で、伸縮性支持体を左右の建造物の相対変位に追従させることができる。
【0015】
また、前記伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に枢結されている構成にあっては、硬性を備えたパイプによってカバー板の前後方向の揺動抑制を確実に行わせることができるとともに、優れた伸縮性を得ることができる。
【0016】
また、前記伸縮性支持体が、引張バネからなる構成にあっては、簡単な構成であるにも拘わらず、カバー板に対する所定の揺動抑制作用を得ることができ、前記パイプ製の伸縮性支持体に比して安価なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施例にかかる壁用目地カバー装置1Aの施工状態を示す横断面図である。
【図2】同上の壁用目地カバー装置1Aの施工状態を示す正面図である。
【図3】建造物A,Bが常態から左右方向に離隔するように相対変位したときのカバー板5の作用説明図である。
【図4】建造物A,Bが常態から前後方向に相対変位したときのカバー板5の作用説明図である。
【図5】第二実施例にかかる壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す横断面図である。
【図6】同上の壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す正面図である。
【図7】伸縮性支持体8Aと連結手段16Aとを示す拡大横断面図である。
【図8】第二実施例の変形実施例にかかる連結手段16Bを備えた壁用目地カバー装置1Bの施工状態を示す横断面図である。
【図9】同上の連結手段16Bを示す拡大横断面図である。
【図10】第三実施例にかかる壁用目地カバー装置1Cの施工状態を示す横断面図である。
【図11】同上の壁用目地カバー装置1Cの施工状態を示す正面図である。
【図12】従来構成の壁用目地カバー装置aの施工状態を示す横断面図である。
【図13】従来構成の壁用目地カバー装置aの地震時における作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第一実施例を、図1〜図4に基づいて説明する。
本発明にかかる壁用目地カバー装置1Aは、図1に示すように、目地sを介して隣接する左右の建造物A,Bの側壁面x,x間に配設される。ここで、一方の建造物Aは、図示しない免震装置によって下部が支持されており、免震構造となっている。これにより、地震時には、免震装置の免震作用によって建造物Aが水平方向に大きく揺れることとなる。
【0019】
建造物A,Bの対向する両側壁面x,xには、壁用目地カバー装置1Aを構成する左右の固定枠2,2が上下方向に延在させて夫々配設されている。該固定枠2,2は、側壁面x,xに固定される固定片部2aと該固定片部2aの後端から内方に突出する連結片部2bとを備えた断面L形のステンレス製アングル材からなり、各固定片部2aが、側壁面x,xから突出された複数のアンカーボルト3(図2参照)と各アンカーボルト3に螺合されたナット4とによって両側壁面x,xに夫々固定されている。
【0020】
前記固定枠2,2の連結片部2b,2bには、両建造物A,Bの側壁面x,x間の目地sを遮蔽するカバー板5の左右両側縁6,6が複数のピアスビス7によって連結されている。これにより、固定枠2,2を介してカバー板5の左右両側縁6,6が両建造物A,Bの側壁面x,xに固定されている。カバー板5は、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなり、これには厚み0.2mm程度のステンレスバネ鋼(SUS304H)をプレス加工したものが好適に用いられ得る。そして、この蛇腹状に形成されたカバー板5の左右両側縁6,6を両建造物A,Bの側壁面x,xに固定することにより、該カバー板5が目地sの幅方向に伸縮可能に配設されている。
【0021】
かかる構成にあって、地震時に、隣接する左右の建造物A,Bが前後方向に、または左右方向に離隔するように相対変位すると、蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板5が、その伸縮性によって前記相対変位に追従する。即ち、図3(A)に示す常態から建造物A,Bが左右方向に離隔するように相対変位すると、図3(B)に示すように、カバー板5が左右方向に伸長してその相対変位に追従し、また、図4(A)に示す常態から建造物A,Bが前後方向に相対変位すると、図4(B)に示すように、カバー板5が斜めに伸長してその相対変位に追従する。尚、図示省略するが、左右の建造物A,Bが近接するように相対変位した場合には、カバー板5が収縮してその相対変位に追従することとなる。これにより、如何なるときでもカバー板5と建造物A,Bの側壁面x,xとの間に開口が生じることがなく、該カバー板5によって目地sを確実に遮蔽することができる。
【0022】
また、第一実施例にかかる壁用目地カバー装置1Aは、カバー板5と左右の固定枠2,2とを主要部品として構成されているため、従来構成(図12参照)に比して、部品点数が減少し、製作や組み立てに手間が掛からないため、コストを低減することができる。
【0023】
図5〜図7は第二実施例にかかる壁用目地カバー装置1Bを示し、この壁用目地カバー装置1Bは、カバー板5の背面側に、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制する伸縮性支持体8Aを備えてなるものである。該伸縮性支持体8Aは、図7に示すように、径の異なる複数本のパイプ9からなり、その最も径大なパイプ9(9a)の両端に、夫々径大なパイプ9に径小なパイプ9が順次進退可能に内嵌されるとともに、径大なパイプ9の先端内周部と径小なパイプ9の後端外周部とに配設された相互に当接可能が環状のストッパー部材10a,10bによって各パイプ9が脱出不能に連結されている。
【0024】
伸縮性支持体8Aの長手方向の両端部となる最も径小なパイプ9(9b),9(9b)の先端部は、夫々前後方向に回動可能なヒンジ11,11の回動片部11aにボルト12とナット13を介して上下方向に回動可能に連結されている。また、両ヒンジ11,11の固定片部11bは、その高さ位置を相違させて左右の建造物A,Bの側壁面x,xにアンカーボルト14とナット15によって固定されている。これにより、図6に示すように、伸縮性支持体8Aが左右の建造物A,Bの側壁面x,x間に斜めに配設されており、地震時に建造物A,Bが近接する方向に相対変位すると、伸縮性支持体8Aの両端部が上下方向に回動してその相対変位に追従するようになっている。
【0025】
また、前記伸縮性支持体8Aの長手方向中央部は、カバー板5の幅方向中央部に連結手段16Aを介して回動可能に連結されている。この連結手段16Aは、図7に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)の長手方向中央部に、前方から後方に向けて回動可能に挿通された連結ボルト17と、該連結ボルト17の後端突出部に螺着された袋ナット18と、前記連結ボルト17の頭部17aに装着された連結片19とによって構成されており、該連結片19の先端部が溶接またはリベット止めを介してカバー板5の幅方向中央部に固着されている。
【0026】
かかる構成にあって、カバー板5の幅方向中央部に連結された伸縮性支持体8Aによってカバー板5が支持されていることにより、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制することができる。また、地震時にカバー板5を支持した状態で、伸縮性支持体8Aをその伸縮作用及び両端部の回動作用を介して左右の建造物A,Bの相対変位に追従させることができる。特に、この伸縮性支持体8Aは、径の異なる複数本のパイプ9の、その最も径大なパイプ9(9a)の両端に、夫々径大なパイプ9に径小なパイプ9を順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結したものであるため、硬性を備えたパイプ9によってカバー板5の前後方向の揺動抑制を確実に行わせることができるとともに、優れた伸縮性を得ることができる。
【0027】
図8,図9は第二実施例の変形実施例を示し、この変形実施例では、伸縮性支持体8Aの長手方向中央部と、カバー板5の幅方向中央部とが前記とは異なる構成の連結手段16Bによって回動可能に連結されている。この連結手段16Bは、図9に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)の長手方向中央部に、前方から後方に向けて回動可能に挿通された螺子杆20と、該螺子杆20の後端突出部に螺着された袋ナット18と、前記螺子杆20の前端に固着された左右一対の薄肉状L形連結片21,21とによって構成されており、該連結片21,21の対向する先端部が溶接またはリベット止めを介してカバー板5の幅方向中央部に固着されている。
【0028】
かかる構成にあっては、図8に示すように、伸縮性支持体8Aの最外部に位置する最も径大なパイプ9(9a)にカバー板5の背面側に位置する大部分の屈曲部を当接させることができるため、カバー板5の前後方向の揺動抑制をより確実に行わせることができる。
【0029】
図10,図11は第三実施例にかかる壁用目地カバー装置1Cを示し、この壁用目地カバー装置1Cは、カバー板5の背面側に、該カバー板5の前後方向の揺動を抑制する伸縮性支持体8Bを備えてなるものである。該伸縮性支持体8Bは、引張バネからなり、その両端を、図11に示すように、高さ位置を相違させて左右の建造物A,Bの側壁面x,xに固定されたブラケット22,22に係合させることにより、建造物A,Bの側壁面x,x間に適宜の引張状態で斜めに配設されている。また、伸縮性支持体8Bの長手方向中央部は、カバー板5の幅方向中央部に円環状のワイヤ23を介して回動可能に連結されている。
【0030】
かかる構成にあっては、簡単な構成であるにも拘わらず、カバー板5に対する所定の揺動抑制作用を得ることができ、前記パイプ製の伸縮性支持体8Aに比して安価となる利点がある。
【符号の説明】
【0031】
A 建造物
B 建造物
s 目地
x 側壁面
1A,1B,1C 壁用目地カバー装置
5 カバー板
8A,8B 伸縮性支持体
9 パイプ
9a 最も径大なパイプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置において、
目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されていることを特徴とする壁用目地カバー装置。
【請求項2】
カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1記載の壁用目地カバー装置。
【請求項3】
伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項2記載の壁用目地カバー装置。
【請求項4】
伸縮性支持体が、引張バネからなるものであることを特徴とする請求項2記載の壁用目地カバー装置。
【請求項1】
隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置において、
目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなるカバー板が、その両側縁を左右の建造物の側壁面に夫々固定することによって目地の幅方向に伸縮可能に配設されていることを特徴とする壁用目地カバー装置。
【請求項2】
カバー板の背面側で、隣接する左右の建造物の側壁面に両端部が前後方向及び上下方向に回動可能に連結された伸縮性支持体が、その両端部の高さ位置を相違させて斜めに配設され、該伸縮性支持体の長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1記載の壁用目地カバー装置。
【請求項3】
伸縮性支持体が、径の異なる複数本のパイプの、その最も径大なパイプの両端に、夫々径大なパイプに径小なパイプを順次進退可能に内嵌させて脱出不能に連結されたものであり、最外部に位置する最も径大なパイプの長手方向中央部がカバー板の幅方向中央部に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項2記載の壁用目地カバー装置。
【請求項4】
伸縮性支持体が、引張バネからなるものであることを特徴とする請求項2記載の壁用目地カバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−72602(P2012−72602A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218361(P2010−218361)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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