説明

壁紙用裏打ち紙

【課題】 壁紙用裏打ち紙を製造する際の操業性が良好で、塩化ビニルペースト等の塗工時、あるいはその後のゲル化工程において毛羽立ちの発生が少なく、適度な紙力を有し、ブリスター状の面荒れが少ない壁紙裏打ち紙を提供する。
【解決手段】 片面に化粧層を設けて壁紙とするための壁紙用裏打ち紙であって、前記壁紙用裏打ち紙は、少なくとも木材パルプを含有する基紙に、バインダーとノニオン性界面活性剤とを含有する塗工液を塗布又は含浸してなり、前記壁紙用裏打ち紙はノニオン性界面活性剤を0.02質量%以上2.0質量%未満の範囲で含有する。前記ノニオン性界面活性剤はグリセリンにエチレンオキサイドを平均で1〜7モル付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル壁紙等に使用される壁紙用裏打ち紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は、一般住居、ホテル、病院等において室内の美麗化のために、長期間壁に貼付される。壁紙には塩化ビニル壁紙(以下、ビニル壁紙と称す)、オレフィン壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙等があるが、これらの壁紙は、塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、織物層、紙層、無機質層等の化粧層と、該化粧層を保持するための裏打ち紙により構成されている。
【0003】
ビニル壁紙は、塩化ビニルペーストを裏打ち紙の表面に塗工し、塗工物がゲル化し乾燥した後、印刷、発泡、エンボス等の加工を行って製品化される。ビニル壁紙は織物壁紙に比較して安価であるため広く用いられているが、塩化ビニル樹脂層表面に裏打ち紙のパルプ繊維の毛羽立ちが原因となる突起ができ、この部分に印刷不良(白抜け)が発生するという問題がある。特に近年においては、塩化ビニルペーストを用いる加工工程の高速化により、裏打ち紙に対してより大きなせん断力が加わり、パルプの繊維を起こす力が大きくなるために、このような問題が発生し易くなってきている。
【0004】
そこで、加工工程において発生する表面の毛羽立ちが少なく、また、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が良い上、オープンタイムが長く、施工時の作業性に優れる壁紙用裏打ち紙として、アクリル系樹脂を含有させてなる壁紙用裏打ち紙が提案されている(特許文献1)。
また、特許文献2には、グリセリンにアルキレンオキサイドを平均で4〜16モル付加した化合物を、木材パルプを含む基材中に含有し、湿潤時に紙の伸びの少ない壁紙用基紙を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−97208号公報
【特許文献2】特開2009−024299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の発明においては、ガラス転移温度が20℃〜100℃のアクリル系樹脂を含有させて、ステキヒトサイズ度が20秒〜120秒で、かつJIS P 8139のB法に準じて測定した紙層間強度を20N/m〜35N/mの範囲とすることによって、前記した性質を達成している。しかしながら、この壁紙用裏打ち紙では、高価なアクリル系樹脂を(望ましくは2g/m〜7g/m)含有させるため、生産コストが高くなるという欠点があった。また、特許文献2においては、毛羽立ちを低減することはできない。
従って本発明の目的は、壁紙用裏打ち紙を製造する際の操業性が良好で、塩化ビニルペースト等の塗工時、あるいはその後のゲル化工程において毛羽立ちの発生が少なく、適度な紙力を有し、ブリスター状の面荒れが少ない壁紙裏打ち紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、紙基材に、バインダーとノニオン性界面活性剤とを含有する塗工液を塗布又は含浸し、ノニオン性界面活性剤を一定量含有させることによって良好な結果を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明は、片面に化粧層を設けて壁紙とするための壁紙用裏打ち紙であって、前記壁紙用裏打ち紙は、少なくとも木材パルプを含有する基紙に、バインダーとノニオン性界面活性剤とを含有する塗工液を塗布又は含浸してなり、前記壁紙用裏打ち紙はノニオン性界面活性剤を0.02質量%以上2.0質量%未満の範囲で含有することを特徴とする壁紙用裏打ち紙である。
【0009】
前記ノニオン性界面活性剤はグリセリンにエチレンオキサイドを平均で1〜7モル付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルであることが好ましい。また、前記バインダーは、水溶性高分子であり、かつ、前記壁紙用裏打ち紙は前記バインダーを0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲で含有することが好ましく、壁紙用裏打ち紙は填料を4質量%以上25質量%以下の範囲で含有させることが好ましい。さらに尿素を0.02質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特別高価な材料を使用していないにも関わらず、塩化ビニルペースト等の塗工時、あるいはその後の乾燥工程において、裏打ち紙の表面繊維が起き上がらず、毛羽立ちの発生が少なくなるだけでなく、適度な紙力を有し加工適性に優れた安価な壁紙用裏打ち紙が得られる。また、ブリスター状の面荒れが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施形態について説明する。
本発明の壁紙用裏打ち紙は、その表面に化粧層を設けて壁紙とする。例えば、化粧層として塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、織物層、紙層、無機質層を設け、壁紙とすることができる。何れの場合にも、化粧層には必要に応じて表面印刷、発泡処理、エンボス処理を行うことができる。
【0012】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、木材パルプ繊維を含有する基紙中にノニオン性界面活性剤を0.02質量%〜1.5質量%含有する。ノニオン性界面活性剤としては、エステル型(グリセリン、ソルビトール、ショ糖などの多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造)、エーテル型(高級アルコールやアルキルフェノールなど、水酸基をもつ原料に、主として酸化エチレン(エチレンオキシド)を付加重合する)、エステル・エーテル型(脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加したもので、分子中にエステル結合とエーテル結合の両方を持つ)、等を用いることができるが、特にグリセリンに(ポリ)アルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルが好ましく、中でもグリセリンにアルキレンオキサイドを平均で1〜7モル付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテル(式1に示す)を用いることが好ましく、特にグリセリンにアルキレンオキサイドを平均で4モル以下付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルを用いることが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
アルキレンオキサイドの平均の付加モル数が8以上である場合には、バインダーとノニオン性界面活性剤を含有する塗工液が泡立ちやすくなり、原紙に塗工液を塗布・含浸する際にタンクから塗工液が溢れ作業性が低下したり、均一に塗工されなくなる問題が発生する場合がある。
【0015】
本発明において、ノニオン性界面活性剤を含有することにより、毛羽立ちが抑制できる理由は明らかではないが、ノニオン性界面活性剤を裏打ち紙中に加えることにより、壁紙裏打ち紙のパルプ繊維が柔軟化するか、以下に記述する表面処理剤中の水溶性高分子を柔軟化することにより毛羽立ちが抑制できると考えられる。グリセリンにアルキレンオキサイドを平均で1〜7モル付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルは水溶性高分子(特にポリビニルアルコール)の可塑化効率が高く、好ましく用いることができる。このような(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルとしては、ブラウノンGLシリーズ(青木油脂工業社製)、エマルゲンGEシリーズ(花王製)などを上げることができる。
【0016】
パルプ繊維が柔軟化するかまたは表面処理剤中の水溶性高分子を柔軟化することによると考えられる毛羽立ち抑制効果について、グリセリンはノニオン性界面活性剤と同等の効果を持つが、グリセリンはノニオン性界面活性剤と比較してオキシエチレン基を含有しないために引火点が低く、燃えやすいという欠点がある。壁紙用裏打ち紙は燃えにくい方が好ましいため、グリセリンよりもノニオン性界面活性剤の方が好ましい。
【0017】
本発明のビニル壁紙用裏打ち紙に使用するノニオン性界面活性剤の含有量は、裏打ち紙中に0.02質量%以上2.0質量%未満の範囲で含まれることが必要である。含有量が0.02質量%未満の場合は毛羽立ち抑制の効果が発現せず、2.0質量%以上の場合は裏打ち紙の強度が低下し、塩化ビニルペースト塗工時に断紙が発生しやすくなる上に施工適性が不十分となる。更に裏打ち紙はノニオン性界面活性剤を含有する分だけ透気性が低下するため、塩化ビニルペーストを塗工後、加熱してゲル化する際、またはその後印刷されてエンボス加工直前の発泡(加熱)工程で蒸発した有機溶剤が原紙側を通過しにくくなるためにブリスター状の面荒れ(裏打ち紙とビニル層の間の膨れ)が発生しやすくなり、美麗な塩化ビニル化粧面が得られなくなる。ブリスター状の面荒れの発生を防ぐためには紙中填料を増やす必要がある。ノニオン性界面活性剤のより好ましい含有量は0.1質量%以上1.5質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは0.5質量%未満である。
【0018】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、表面強度を高め、毛羽立ちを抑制するために、バインダー(特に水溶性高分子、水分散性高分子が好ましい)とノニオン性界面活性剤を含有する塗工液を、少なくとも化粧層を設ける側の表面に塗工することが好ましい。例えば、ビニル壁紙の場合には、壁紙用裏打ち紙の表面に塩化ビニルペーストを塗工し、加熱してゲル化させた後、印刷工程に付されて塩化ビニル層が化粧層となる。このとき壁紙用裏打ち紙の表面強度が低いと、化粧層の塗工時に紙表面の繊維が毛羽立ち、ゲル化後に該毛羽立ち部が壁紙表面で突起状となり、印刷不良の原因となる。バインダーとノニオン性界面活性剤との割合は固形分質量比で、バインダー1に対してノニオン性界面活性剤が0.01〜1の範囲であることが好ましい。
【0019】
前記バインダーとしては、水溶性高分子として、酸化澱粉、酵素変性澱粉等の各種変性澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カゼイン等を、また、水分散性高分子として、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン等を適宜単独又は併用して使用することができる。特に、ポリビニルアルコールはノニオン性界面活性剤と混合することにより可塑化され、壁紙用裏打ち紙の表面の繊維の毛羽立ちを抑制する効果が大きくなるために特に好ましい。さらに、ポリビニルアルコールのケン化度は高い方が毛羽立ち抑制効果が大きい。このため、本発明においてはケン化度90以上のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、低いと毛羽立ち抑制効果が小さく、高いと、塗工液粘度があがり、塗工性が悪くなる傾向にある。このため、本発明においてはポリビニルアルコールの重合度は1000〜2000であることが好ましい。
さらに、バインダーとノニオン性界面活性剤を含有する塗工液中に、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ等の各種顔料を混合して使用することもできる。
【0020】
前述したバインダーの含有量は、固形分で0.5質量%以上(より好ましくは0.7質量%以上)4.0質量%以下であることが好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、裏打ち紙表面の繊維を接着するためのバインダーの量が少なくなるために毛羽立ちが多くなり、4.0質量%を超えると裏打ち紙表面が完全に表面処理剤で覆われるため、原紙の透気性が低下するため、裏打ち紙に塩化ビニルペーストを塗工後、加熱してゲル化する際、またはその後印刷されてエンボス加工直前の発泡(加熱)工程で蒸発した有機溶剤が原紙側を通過しにくくなるためにブリスター状の面荒れ(裏打ち紙とビニル層の間の膨れ)が発生しやすくなり、美麗な塩化ビニル化粧面が得られなくなる。
【0021】
ノニオン性界面活性剤とバインダーを紙基材に塗布・含浸させる方法としては、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター等の通常使用される塗工機を用いることができるが、抄紙機のサイズプレスパートでサイズプレスコーター(ポンド式)、ゲートロールコーター、シムサイザー等を用いて、ノニオン性界面活性剤とバインダーを含有する塗工液を塗布または含浸させる方法が好ましい。特に、裏打ち紙の表面の毛羽立ちを効果的に抑制するためにはポンド式のサイズプレスコーターが好ましく、生産効率を上げるためにはゲートロールコーターやシムサイザーが好ましく用いられる。
【0022】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)を単独、または任意の配合率で混合して抄紙したものである。
【0023】
本発明においては、使用するパルプのカナダ標準濾水度(CSF)を450ml〜600mlに調整することが好ましい。パルプのCSFは、前記した少なくとも1種のパルプを叩解して上記範囲に調整すれば良い。2種類以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲にしても、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。パルプのCSFが450mlより低いと、水性の糊を用いて施工する際の壁紙の伸びが大きくなり、また、乾燥時の収縮も大きくなるので、隣同士に貼った壁紙の目開き(隙間)が大きくなって好ましくない。パルプのCSFが600mlより高いと紙力が低くなるために、塩化ビニルペースト等の塗工時に断紙が発生し易くなる上、原紙に毛羽立ちが発生し易くなるので好ましくない。
【0024】
本発明の壁紙用裏打ち紙には、不透明度を向上させるために、さらに填料を1〜30質量%含有させることが好ましい。填料とは一般の抄紙において使用される材料であればいずれのものを用いることができる。例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料を単独使用または併用することができる。通常、填料が無機の場合、含有量は、JIS P 8251や、JIS P 8252に規定される灰分として求められる。
【0025】
本発明においては、ブリスター状の面荒れの発生を抑制するため、上記填料を裏打ち紙中に4質量%以上25質量%以下含有することが好ましい。紙中填料が4質量%未満だとブリスター状の面荒れが発生しやすく、25質量%を超えると裏打ち紙の強度が低下し、塩化ビニルペースト塗工時に断紙が発生しやすくなる上に施工適性が不十分となる。特に好ましい填料含有量は、5質量%以上、20質量%以下である。また、前記填料としてはブリスター状の面荒れを防ぐという点でカオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、(アモルファスシリカを含有する填料)から選択された少なくとも1種の無機填料を原紙中に含有することが好ましい。特に焼成クレーは吸油量が比較的大きく、ビニルペースト中に溶剤を吸収するため、ブリスター状の面あれを防止する効果が大きい。また、不透明度が高く下地の影響を受けにくいため、壁紙用裏打ち紙に適する。
【0026】
本発明においては、壁紙用裏打ち紙に難燃性を付与することもできる。難燃性を付与するために、上述した前記ノニオン性界面活性剤と共に難燃剤を含有する塗工液を塗布または含浸させるか、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを填料として更に裏打ちし中に配合することができる。前記難燃剤としては、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンメチロール化物、リン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等を単独または混合して使用することができる。
【0027】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、通常の紙の場合と同様に、サイズ剤が内添及び/又は外添されていてもよい。サイズ剤としては、酸性抄きの場合、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α−カルボキシルメチル飽和脂肪酸等を使用することができる。また、中性抄きの場合には、中性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、カチオンポリマー系サイズ剤を使用することができる。サイズ剤の添加量は特に限定されるものではないが、ステキヒトサイズ度で10秒以上となるように使用することが好ましい。また、サイズプレス等を用いた外添においても、ロジン系、合成樹脂系等の表面サイズ剤を使用することが可能である。
【0028】
また、本発明の壁紙用裏打ち紙には、製品の品質に影響を与えない範囲で、内添薬品として、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、染料、顔料等を使用することができる。
【0029】
本発明の壁紙用裏打ち紙の坪量は、40g/m以上120g/m以下であることが好ましい。坪量が40g/m未満であると強度が低く、加工時に断紙が発生し易くなる。また、坪量が120g/mを超えると壁紙に加工した時に硬くなりすぎ、施工が困難となるという欠点が生じる。
【0030】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、公知の抄紙機によって適宜製造することができる。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等を挙げることができる。
【0031】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、塩化ビニルペーストを塗工した際等に表面に毛羽立ちが発生しないことが望ましい。毛羽立ちの有無は、アプリケータを用いて塩化ビニルペーストを塗工した時に発生する、塩化ビニル塗工面の毛羽立ち個数(凸部の数)を数えることによって評価することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定さ
れるものではない。なお、実施例及び比較例で作製したビニル壁紙用裏打ち紙については
、下記に示した方法によって毛羽立ち、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。
【0033】
<塗工液の発泡性の評価>
1L用のガラスビーカーに塗工液500mLを入れて液温を20℃に保持した状態で、撹拌機にて2000rpmで1分間撹拌し、撹拌停止してから1分後の泡の高さを測定した。泡の高さが35mm以下である場合を○、35mmを超える場合を×と評価した。
【0034】
<毛羽立ちの評価>
壁紙用裏打ち紙を23℃、50RH%の環境下で24時間調湿した後、32cm(MD方向)×15cm(CD方向)となるように断裁した。なお、サンプリングに際しては、紙面を擦らないように十分注意した。ガラス板上に、坪量150g/mの上質紙を2枚敷き、クリップにて固定した。次に、幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ約400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙の表面を2回擦ってガーゼの面をならした。
別の上質紙表面に、塩化ビニル塗工面となるF面が上になるように、壁紙用裏打ち紙のサンプルをのせ、ガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重により、MD方向の上から下に向かって1回擦った。壁紙用裏打ち紙の上下方向の向きを変え、同様に上から下に向かって1回擦った。
このようにして壁紙用裏打ち紙の擦った場所に、塗工厚が200μmとなるアプリケータを用い、塩化ビニルペーストを塗工した後、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化した塩化ビニル層表面の中央部に、CD方向に5cm×MD方向に10cmの大きさとなるように切り抜いた型紙をのせ、その中に発生した突起物(欠陥)の数を計測した。同様にして作製したサンプル4枚の計測値を合計して、1サンプル当りの突起物の数(200cm当りの個数)とした。計測した突起物の数が10個以下である場合を◎、11〜15個である場合を○、16〜20個である場合を○△、21〜30個である場合を△、31個以上である場合を×と評価した。△以上であれば実用上問題なく使用できる。
なお、塩化ビニルペーストは塩化ビニル樹脂100部、可塑剤(DOP)58部、希釈剤5部を混合して調製した。
【0035】
<引張強度の評価>
JIS P8113に規定された方法で測定した。
【0036】
<ブリスター状の面荒れの評価>
塩化ビニル樹脂100部、可塑剤(DOP)58部、希釈剤10部を混合して塩化ビニルペーストを調製し、壁紙用裏打ち紙に、塗工厚が200μmとなるアプリケータを用いて塩化ビニルペーストを塗工した後、210℃の送風乾燥機中で30秒間加熱することにより塩化ビニルペーストをゲル化させ、塩化ビニルペースト塗工面の表面性および平滑性を目視評価した。△以上であれば実用上問題なく使用できる。
○:ブリスター状の面荒れが見られず、塗工面が平滑
△:ブリスター状の面荒れが一部に見られた
×:ブリスター状の面荒れが全面に見られた
【0037】
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):500ml)を35質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(CSF:500ml)を65質量部配合したパルプスラリー中に、抄紙pHが4.5になるように硫酸バンドを添加した。次に、内添サイズ剤としてアルファーカルボキシメチル飽和脂肪酸塩(商品名:NSP−S、星光PMC(株)製)を、対パルプ絶乾質量あたり0.15質量%となるように添加し、更に湿潤紙力剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(商品名:WS−547、星光PMC(株)製)を0.2質量%、脂肪酸アミン系樹脂(商品名:N−815、星光PMC(株)製)を0.1質量%、及び、填料として焼成クレーを灰分15%となるように添加して抄紙した。抄紙に際し、ポリビニルアルコール(商品名:ポバール117、(株)クラレ製)2質量%、ノニオン性界面活性剤A(ポリオキシエチレン・グリセリンエーテルであって、グリセリンにエチレンオキサイドを平均で3モル付加したもの)0.2質量%の塗工液を調製し、工程中のサイズプレスコーターを用いて、対原紙当たり1.5質量%のポリビニルアルコール及び0.15質量%のノニオン性界面活性剤Aが含まれるように塗工液を含浸させて、坪量65g/mの壁紙用裏打ち紙を製造し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0038】
[実施例2]
塗工液のノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.04質量%で、対原紙あたり0.03質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0039】
[実施例3]
塗工液のノニオン性界面活性剤Aの濃度が1.9質量%で、対原紙あたり1.4質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0040】
[実施例4]
ポリビニルアルコールの代わりに、酸化澱粉(商品名:日本食品化工社製MS3600)を使用し、塗工液の酸化澱粉の濃度が3.2質量%であること以外は実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0041】
[実施例5]
サイズプレスコーターの代わりに、ゲートロールコーターを用いて、対原紙当たり0.8質量%のポリビニルアルコール及び0.08質量%のノニオン性界面活性剤Aが含まれるように塗工液を含浸させて塗工液を塗工した以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。(サイズプレス液は実施例1と同じなので発泡性は評価していない)
【0042】
[実施例6]
塗工液のポリビニルアルコールの濃度が1.4質量%、ノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.26質量%で、ポリビニルアルコールを対原紙当たり0.8質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0043】
[実施例7]
塗工液のポリビニルアルコールの濃度が4質量%、ノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.17質量%で、ポリビニルアルコールを対原紙当たり3.5質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0044】
[実施例8]
填料として焼成クレーを対パルプ絶乾質量あたり8質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。(サイズプレス液は実施例1と同じなので発泡性は評価していない)
【0045】
[実施例9]
填料として焼成クレーを対パルプ絶乾質量あたり18質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。(サイズプレス液は実施例1と同じなので発泡性は評価していない)
【0046】
[実施例10]
塗工液のポリビニルアルコールの濃度が2質量%、ノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.2質量%、尿素の濃度が0.2質量%、対原紙あたりポリビニルアルコールを1.5質量%、ノニオン性界面活性剤Aを0.15質量%、尿素を0.15質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0047】
[実施例11]
塗工液のポリビニルアルコールの濃度が0.9質量%、ノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.27質量%で、ポリビニルアルコールを対原紙当たり0.5質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0048】
[実施例12]
塗工液のポリビニルアルコールの濃度が4.6質量%、ノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.15質量%で、ポリビニルアルコールを対原紙当たり4.5質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0049】
[実施例13]
填料として焼成クレーを対パルプ絶乾質量あたり4質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。(サイズプレス液は実施例1と同じなので発泡性は評価していない)
【0050】
[実施例14]
填料として焼成クレーを対パルプ絶乾質量あたり25質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れを評価した。(サイズプレス液は実施例1と同じなので発泡性は評価していない)
【0051】
[実施例15]
塗工液のノニオン性界面活性剤Bの濃度が0.2質量%で、対原紙あたり、ノニオン性界面活性剤B(ポリオキシエチレン・グリセリンエーテルでグリセリンにエチレンオキサイドを平均で9モル付加したもの)が0.15質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0052】
[実施例16]
塗工液のノニオン性界面活性剤Cの濃度が0.2質量%で、対原紙あたり、ノニオン性界面活性剤C(ポリオキシエチレン・グリセリンエーテルでグリセリンにエチレンオキサイドを平均で20モル付加したもの)が0.15質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0053】
[比較例1]
サイズプレスコーターを用いてポリビニルアルコールのみを原紙に含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0054】
[比較例2]
塗工液のノニオン性界面活性剤Aの濃度が0.0013質量%で、ノニオン性界面活性剤Aを、対原紙あたり0.001質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0055】
[比較例3]
塗工液のノニオン性界面活性剤Aの濃度が2.7質量%で、ノニオン性界面活性剤Aを、対原紙あたり2.0質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0056】
[比較例6]
塗工液のアニオン性界面活性剤の濃度が0.2質量%で、対原紙あたり、アニオン性界面活性剤(商品名:第一工業薬品社製シャロールAN−103P、ポリアクリル酸ナトリウム)が0.15質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0057】
[比較例7]
塗工液のカチオン性界面活性剤の濃度が0.2質量%で、対原紙あたり、カチオン性界面活性剤(商品名:花王社製コータミン86W、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド)が0.15質量%となるようにサイズプレスコーターにて含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
【0058】
[比較例8]
塗工液にポリビニルアルコールを配合しなかった以外は実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作製し、毛羽立ち個数、引張強度、ブリスター状の面荒れおよび前記塗工液の発泡性を評価した。
実施例1〜16、比較例1〜6について評価した結果を表1〜3に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
表1に示されるように、本発明に相当する実施例1〜14は発泡が少ないために操業性に優れ、かつ、塩化ビニルペースト等の塗工時、あるいはその後のゲル化工程において毛羽立ちの発生が少なく、適度な紙力を有し、ブリスター状の面荒れが少ないことが実証された。ただし、グリセリンにエチレンオキサイドを平均で9モル付加したノニオン性界面活性剤、グリセリンにエチレンオキサイドを平均で20モル付加したノニオン性界面活性剤を用いた実施例15、16は塗工液の発泡性に問題があった。
一方、ノニオン性界面活性剤が配合されていない比較例1、ノニオン性界面活性剤の配合量が少ない比較例2では、毛羽立ちが多く見られた。また、ノニオン性界面活性剤の配合が多い比較例3では、ブリスター状の面あれが発生した。また、ノニオン性界面活性剤の代わりにアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を用いた比較例4、5では毛羽立ち抑制効果がなく、塗工液が発泡した。また、ポリビニルアルコールを配合していない比較例6では、毛羽立ちが多く、引張強度が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に化粧層を設けて壁紙とするための壁紙用裏打ち紙であって、前記壁紙用裏打ち紙は、少なくとも木材パルプを含有する基紙に、バインダーとノニオン性界面活性剤とを含有する塗工液を塗布又は含浸してなり、前記壁紙用裏打ち紙はノニオン性界面活性剤を0.02質量%以上2.0質量%未満の範囲で含有することを特徴とする壁紙用裏打ち紙。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤はグリセリンにエチレンオキサイドを平均で1〜7モル付加した(ポリ)オキシエチレン・グリセリンエーテルであることを特徴とする請求項1に記載された壁紙用裏打ち紙。
【請求項3】
前記バインダーは水溶性高分子であり、かつ、前記壁紙用裏打ち紙は前記バインダーを0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1または2に記載された壁紙用裏打ち紙。
【請求項4】
前記壁紙用裏打ち紙は、さらに填料を4質量%以上25質量%以下の範囲で含有する請求項1〜3のいずれかに記載された壁紙用裏打ち紙。
【請求項5】
前記壁紙用裏打ち紙は、さらに尿素を0.02質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに壁紙用裏打ち紙。

【公開番号】特開2010−203017(P2010−203017A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51930(P2009−51930)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】