説明

壁装用化粧シート

【課題】塩化ビニル系材料を用いることなく、優れた表面強度を有する壁装用化粧シートを提供する。
【解決手段】紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層、絵柄模様層及び保護層が順に形成されている壁装用化粧シートであって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成された層であり、
(2)保護層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする壁装用化粧シートに係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁装用化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙等の壁装用化粧シート(発泡化粧シート)としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮し、発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等のハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
【0003】
例えば、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションに、マイクロカプセル型発泡剤を添加した塗料を、紙質基材に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に熱分解型発泡剤を添加した樹脂組成物からなる未発泡樹脂層を、Tダイ押出し機を用いて紙質基材上に形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、壁紙では、表面の保護のために塩化ビニル系ヒートシール剤を用いて保護層が形成されているものもある。また、従来の壁紙で形成されている保護層は、表面強度(例えば耐スクラッチ性)という点においてもなお改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明は、塩化ビニル系材料を用いることなく、優れた表面強度を有する壁装用化粧シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を保護層として用いることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の壁装用化粧シートに関する。
1. 紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層、絵柄模様層及び保護層が順に形成されている壁装用化粧シートであって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成された層であり、
(2)保護層が、樹脂成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする壁装用化粧シート。
2. 前記発泡剤が、熱分解型発泡剤である、前記項1に記載の壁装用化粧シート。
3. 前記発泡剤含有樹脂層が、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1又は2に記載の壁装用化粧シート。
4. 前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1〜3のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
5. 発泡樹脂層が電子線照射により架橋されている、前記項1〜4のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
6. シート最表面層の上からエンボス加工がなされている、前記項1〜5のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
7. 保護層が、接着剤層を介して絵柄模様層上に積層されている、前記項1〜6のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁装用化粧シートによれば、特定の樹脂を保護層として用いているので、ダイオキシン発生の問題を回避できると同時に、良好な表面強度を達成することができる。特に、耐スクラッチ性に優れたシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<壁装用化粧シート>
本発明の壁装用化粧シート(本発明シート)は、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層、絵柄模様層及び保護層が順に形成されている壁装用化粧シートであって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成された層であり、
(2)保護層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
紙質基材
紙質基材の材質は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0012】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0013】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0014】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層が加熱されることにより発泡形成された層である。発泡剤含有樹脂層は、発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば限定でないが、特に樹脂成分としてEVA樹脂を含む樹脂組成物により形成されていることが望ましい。例えば、EVA樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
【0015】
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂の酢酸ビニル含有量(共重合比率)は限定的ではないが、特に5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。
【0016】
樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
【0017】
熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。
【0018】
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。
【0019】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
【0020】
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい。
【0021】
発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すれば良い。発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
【0022】
絵柄模様層
発泡樹脂層のおもて面に絵柄模様層が形成されている。絵柄模様層は、本発明シートに意匠性を付与するものである。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0023】
絵柄模様層は、例えば、基材シートのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0024】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0025】
ビヒクルは、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0026】
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0027】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0028】
保護層
本発明シートでは、絵柄模様層上に保護層が形成されている。保護層を形成する樹脂は限定的ではないが、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含むものを好適に用いることができる。
【0029】
保護層は、単層であっても良いし、多層であっても良い。多層の場合は、上記で掲げた樹脂からなる層の2種以上が積層された構成を採用することもできる。多層保護層とする場合は、例えばマルチマニホールドTダイを有する押出機を用いて2層以上が積層された保護層用フィルムを作製し、これを絵柄模様層に積層すれば良い。単層又は多層の保護層用フイルムを発泡樹脂層に積層する方法は限定的でなく、例えば発泡樹脂層上に接着剤を付与して前記フイルムを積層することができる。接着剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。
【0030】
保護層の厚みは限定的ではないが、一般的には5〜50μm程度が好ましく、10〜20μm程度がより好ましい。
【0031】
<壁装用化粧シートの製造方法>
本発明シートの製造方法は特に限定されない。例えば、Tダイ押出し機による同時押出しが好適である。具体的には、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物をシリンダー中に入れ、押出すことにより成膜・積層すれば良い。この方法では、発泡剤含有樹脂層が紙質基材上に積層(成膜)される。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため、紙質基材と接着される。
【0032】
なお、本発明では、他の層(例えば非発泡樹脂層)の1又は2以上と発泡剤含有樹脂層とを積層する場合も同時押し出しで積層できる。例えば、非発泡樹脂層/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層からなる積層体をつくる場合は、それぞれ3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いれば良い。この場合には、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し、成膜・積層することができる。
【0033】
次に、発泡させる前に、各樹脂層に電子線照射を行っても良い。これにより、各層に含まれるEVAを架橋できるため、発泡壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0034】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋助剤を含有しても良い。架橋助剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであれば良い。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋助剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0035】
次に、絵柄模様層を形成する。絵柄模様層の形成方法は、例えば前記のような印刷方法により実施することができる。
【0036】
絵柄模様層を形成した後、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましい。加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0037】
次いで、絵柄模様層上に保護層を形成する。保護層の形成方法は特に限定されないが、例えば別途に作製された保護層用フィルムを絵柄模様層上に積層する方法を好適に採用することができる。この場合、保護層用フィルムを絵柄模様層上に積層する方法は限定的でなく、例えば発泡樹脂層上に接着剤を付与してシートを積層することができる。接着剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。
【0038】
保護層を形成した後、必要に応じて保護層の上からエンボス加工を施すこともできるエンボス加工は、エンボス版等の公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層(保護層)のおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0040】
実施例1
Tダイ押出し機を用い、シリンダー温度100℃、ダイス温度100℃にて発泡剤含有樹脂層を厚み110μになるように製膜し、発泡剤含有樹脂層を裏打紙面上に形成した。次に、前記樹脂層上から電子線(175KV 3Mrad)を照射して、樹脂架橋させた。そ
の後、コロナ放電処理を行い、さらにグラビア印刷機によりプライマー処理としてEVA系水性エマルジョンを2g/mコートし、その上に絵柄印刷として水性インキ「ハイド
リック(大日精化工業製)」を用いて布目絵柄を印刷した。次に、ギアオーブンにて加熱(220℃×30秒)し、発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させて発泡樹脂層とした。
【0041】
発泡剤含有樹脂層は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20%):住友化学製」100重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH:東洋ファインケミカル製」30重量部、二酸化チタン「R−108:デュポン製」25重量部、発泡剤「ビニホールAC#3:永和化成工業製」4重量部、安定剤「アデカスタブOF−102:旭電化工業製」5重量部及び架橋助剤「オプスターJUA−702:JSR製」を含む樹脂
組成物により形成した。
一方、保護層用フィルムを作製した。2種2層マルチマニホールドTダイを有する押出機を用い、エチレン−ビニルアルコール共重合体/エチレン−酢酸ビニル共重合体が厚み15μ/5μとなるように製膜した。
【0042】
次いで、前記の発泡樹脂層上に保護層用フィルムを重ね、その上から布目パターンの凹凸エンボスロールを用いて凹凸パターンを付与する同時に貼り合わせて一体化し、所望の壁紙を得た。
【0043】
実施例2
保護層用フィルムとしてアイオノマー樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フイルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。なお、アイオノマー樹脂としては「ハイミラン」三井・デュポンケミカル製を用いた。
【0044】
実施例3
保護層用フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フィルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。
【0045】
実施例4
保護層用フィルムとしてポリブチレンテレフタレート/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フィルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。
【0046】
実施例5
保護層用フィルムとしてポリエチレンテレフタレート/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フィルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。
【0047】
実施例6
保護層用フィルムとしてポリエチレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フィルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。なお、実施例6では、ポリエチレン面に電子線(125KV 3Mrad)を照射した。
【0048】
実施例7
保護層用フィルムとしてポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体(厚み15μ/5μ)の多層フィルムを用いたほかは、実施例1と同様にして壁紙を作製した。なお、実施例7では、ポリプロピレン面に電子線(125KV 3Mrad)を照射した。
【0049】
比較例1
コンマコーターを用いて、発泡剤含有塩化ビニル樹脂層を厚み110μmになるように裏打紙上にコーティングし、加熱して樹脂をゲル化させた。次に、グラビア印刷機によりプライマー処理としてEVA系水性エマルジョンを2g/m2コートし、その上に絵柄印刷として水性インキ「ハイドリック(大日精化工業製)」を用いて布目絵柄を印刷した。…(A´)
※発泡樹脂層の配合
塩化ビニル樹脂「PQB83:新第一塩ビ製」:100部
炭酸カルシウム「ホワイトンH:東洋ファインケミカル製」:100部
二酸化チタン「DE−24:日弘ビックス製」: 25部
発泡剤「ユニフォームAZルトラ#3050:大塚化学製」: 4部
安定剤「アデカスタブFL−47:旭電化工業製」:5部
可塑剤「DINP:大日本インキ化学工業製」: 55部
【0050】
一方、2種2層マルチマニホールドTダイを持つ押出し機を用い、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を15μになるように製膜し、その片方の面に、塩酢ビ樹脂系ヒートシール剤「ディックシール(大日本インキ化学工業製)」をグラビアコートにて2g/
2塗工した。…(B´)
次に上記(A)をギアオーブンにて加熱(220℃×30秒)し発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させ、その発泡体に対して布目パターンの凹凸エンボスを施す際に、(B´)フィルムの「塩酢ビ樹脂系」ヒートシール剤が(A´)の樹脂面にくるようにして重ね、布目パターン凹凸エンボスロールを通して、凹凸パターンを付与すると同時に貼り合せて一体化し、所望の壁紙を得た。
【0051】
試験例1
各実施例及び比較例で得られたシートについて、1)燃焼時におけるガス中の塩化水素の有無、2)耐スクラッチ性を調べた。
【0052】
耐スクラッチ性は、日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。学振摩耗試験機(JIS L0849 摩耗試験機II型)に試験片を
取り付け、その試験機の摩擦子に同部会指定の金属製爪を用いて、金属爪先端に200g荷重をかけ、試験片上を5往復させて、試験片の試験後の表面状態を観察し、表面の傷付き具合で判断する。評価としては1級〜5級の5段階で評価され、5級:変化なし 4級:表面に少し変化あり 3級:表面が破けて見える 2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満) 1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)となっています。本評価においてはそれを◎、○、△、×とし、◎:5級 ○:4級 △:3級 ×:2〜1級とした。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層、絵柄模様層及び保護層が順に形成されている壁装用化粧シートであって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成された層であり、
(2)保護層が、樹脂成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を含み、電子線照射されている層である、
ことを特徴とする壁装用化粧シート。
【請求項2】
前記発泡剤が、熱分解型発泡剤である、請求項1に記載の壁装用化粧シート。
【請求項3】
前記発泡剤含有樹脂層が、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1又は2に記載の壁装用化粧シート。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項5】
発泡樹脂層が電子線照射により架橋されている、請求項1〜4のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項6】
シート最表面層の上からエンボス加工がなされている、請求項1〜5のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項7】
保護層が、接着剤層を介して絵柄模様層上に積層されている、請求項1〜6のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項8】
保護層が、二層からなり、前記保護層の下層の樹脂成分がエチレン共重合体である、請求項1〜7のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項9】
前記エチレン共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項8に記載の壁装用化粧シート。
【請求項10】
保護層が、二層からなり、前記保護層の上層の樹脂成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはアイオノマー樹脂である、請求項1〜9のいずれかに記載の壁装用化粧シート。
【請求項11】
以下の工程を含む、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層、絵柄模様層及び保護層が順に形成されている壁装用化粧シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を紙質基材上に積層する工程、
(2)前記発泡剤含有樹脂層上に絵柄模様層を形成する工程、
(3)前記発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する工程、
(4)前記絵柄模様層上に、樹脂成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を含む保護層を形成する工程、並びに
(5)前記保護層に電子線を照射する工程。
【請求項12】
前記発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する前に、当該発泡剤含有樹脂層に電子線照射を行う工程を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記保護層を形成した後に、当該保護層の上からエンボス加工を施す工程を含む、請求項11又は12に記載の製造方法。


【公開番号】特開2011−230518(P2011−230518A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176613(P2011−176613)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2005−93720(P2005−93720)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】