説明

壊死性骨状態の予防又は治療用のストロンチウム含有化合物

ストロンチウム含有化合物(a)の有効投与量を、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物における該骨壊死性骨疾患の治療及び/又は予防の方法。ストロンチウム化合物(a)を、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると知られているか又は推測される治療剤(b)との組み合わせで投与することを含む、該治療剤(b)で治療されるか又は治療されている哺乳動物において骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死及び大腿骨骨頭壊死を治療及び/又は予防する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、壊死性骨状態(necrotic bone conditions)の治療及び/又は予防の方法、並びにそのような治療に用いられる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
壊死性骨状態、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死(glucocorticoid induced bone ischemia/osteonecrosis)、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死は、重篤な衰弱状態である。これらの状態は、医療介入、例えば高投与量グルココルチコイド療法及びHIV/AIDSのための種々の治療に関連し得るか、又は感受性の高い個体において、又は他の疾患、例えばクッシング病、蓄積症(例えばゴーシェ病)、異常血色素症(例えば鎌状赤血球病)、膵炎、減圧性状態又は外傷(例えば脱臼又は骨折)の結果として自発的に上昇し得る。
【0003】
骨壊死(osteonecrosis)は、放射線写真又は骨スキャンに現れる明確な組織病理学的特徴により特徴付けられる。その同定のための診断方法は、近年、新規な感度の高い高解像度MRI及びその他のイメージング技術の導入により改善されているが、この状態の予防及び/又は治療のための有効な治療剤又は医療介入は開発されていない。
【0004】
いくつかの病理学的状況は骨壊死性状態を誘導し得るが、最も一般的な臨床状況のうち、高投与量グルココルチコイドの使用及びアポトーシス誘導化合物、例えばHIV感染患者に投与される高投与量抗レトロウイルス治療がある。
【0005】
ほとんどの骨格部位は骨壊死により影響され得るが、この状態は、股関節の関節面の下の大腿骨骨頭の骨に最も一般的に見出される。残る医療介入の選択は整形外科手術であり、ここでは壊死骨領域及び影響を受けた関節構造は除去されて、適切なインプラントで置き換えられる。例えば若年性の壊死性骨疾患患者又は重篤な医療状態の患者のいくらかにおいては、この種の整形手術を行うことは大きい問題を伴うので、壊死性骨状態の予防及び/又は治療のための新規な医療上の治療に対するまだ検討されていない医療上の必要性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
よって、本発明は、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物における該骨壊死性骨疾患の治療及び/又は予防の方法に関し、該方法は、ストロンチウム含有化合物(a)の有効投与量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0007】
上記のように、骨壊死性骨疾患の一般的な原因の一つは、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導し、それにより骨壊死性骨疾患を導くと知られているか又は推測される治療剤を用いる治療である。よって、本発明は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると知られているか又は推測される治療剤(b)を用いて治療されるか又は治療されている哺乳動物において、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死及び大腿骨骨頭壊死を治療及び/又は予防する方法に関し、該方法は、ストロンチウム化合物(a)を、(b)との組み合わせで投与することを含む。
【0008】
本発明は、骨壊死性骨状態の治療及び/又は予防における使用のための医薬組成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
骨壊死は、疾患の病態生理学が、例えば骨粗鬆症において見られる以外の血管性の要素及び骨格代謝の調節を伴う点において、その他のほとんどの代謝性骨疾患とは区別される。ある骨粗鬆症の療法、例えばビスホスホネートの投与が、実際に、骨壊死の発生の危険性の増加と関連し得ることが報告されている(Robinson NA及びYeo JF. Ann Acad Med Singapore. 2004; 33 (4 Suppl):48〜9; Greenberg, MS. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2004;98:259〜60)。よって、一般的に用いられている骨粗鬆症の療法の全てが骨壊死の治療において有用であるとは考えられない。
【0010】
しかし、本発明者らは、骨壊死のモデルにおいて非放射活性ストロンチウム塩の治療効果を証明し、よって、非放射活性ストロンチウム含有化合物の投与が実際に、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死の予防及び治療を必要とする哺乳動物における該疾患の予防及び治療に対する新規で重要なアプローチに相当し得る。
【0011】
以前の研究は、種々のストロンチウム化合物が骨粗しょう症において骨損失(bone loss)を調整する(modulate)ことを示している。インビトロの研究は、ストロンチウムが前骨芽細胞(pre-osteoblastic)の細胞分裂及び成熟、並びに破骨細胞活性の直接又はマトリックス媒介阻害に対する直接の刺激効果を有することを示す(Reginster, JY, Curr Pharm Des 2002:8 (21): 1907〜16)。言い換えると、インビトロデータは、ストロンチウムが吸収抑制及びアナボリック剤の両方として働くことを示す。従来技術から種々のストロンチウム塩、例えばEP-B 0415850に記載されるストロンチウムラクテート、ストロンチウムクロリド及びストロンチウムラネレート(2-[N,N-ジ(カルボキシメチル)アミノ]-3-シアノ-4-カルボキシメチルチオフェン-5-カルボン酸の二ストロンチウム塩)が知られている。その他の既知のストロンチウム塩は、例えばストロンチウムタルトレート、ストロンチウムラクテート、ストロンチウムホスフェート、ストロンチウムカーボネート、ストロンチウムナイトレート及びストロンチウムサルフェートである。
【0012】
骨は、主にI型コラーゲンを含む有機マトリックスと、リン酸カルシウム及び炭酸カルシウムを含む無機相とからなる。骨マトリックスタンパク質は、骨芽細胞により合成される。有機骨マトリックスの形成は、次いで、骨ミネラルマトリックスの無機カルシウム塩の沈降の足場として働き、骨にその構造強度を与える。骨の分解は、ほぼ独占的に多核破骨細胞により媒介され、この細胞は無機骨マトリックスの溶解の原因である酸と有機骨マトリックスのタンパク質を分解する原因である酵素とを分泌する。
【0013】
通常、骨吸収と骨形成とは密に関連する。よって、例えば骨吸収抑制剤、例えばビスホスホネートにより骨吸収が減少するときには、骨形成もほぼ同じ程度に減少される。逆に、骨形成が、例えばアナボリック治療、例えばホルモンPTHにより増大されるときには、破骨細胞の漸増及び活性も上方に調節される。ストロンチウムは、骨形成と吸収とのプロセスの連結を切り離し、よって正味で正の骨バランスを維持する能力を有すると報告されている。このことは、骨吸収を減少させかつ骨形成を増大させるか又は安定させるストロンチウムイオンの組み合わさった作用による。
【0014】
本発明者らの観察によると、骨に対するストロンチウムのアナボリック効果は、骨壊死性の損傷の治療に特に適切であることが考えられる。なぜなら、この特性は、ストロンチウムが、壊死損傷内への新しく無機質化した骨の内殖(in-growth)を促進して、状態の修復を導くことを可能にするからである。
【0015】
ストロンチウムのこの有利な効果に加えて、本発明者らは、驚くべきことに、ストロンチウムイオンが骨細胞に対して抗アポトーシス効果を有することを見出している。この効果は、アポトーシスを誘導する状態、例えば高投与量のグルココルチコイド治療又はアポトーシス促進剤の全身投与、例えば抗レトロウイルス若しくは抗悪性腫瘍治療のある形態から細胞を防御することができる。壊死性骨状態の多くが骨細胞及び/又は骨芽細胞のアポトーシスと関連し得るので、抗アポトーシス効果を有する化合物の投与は、このような状態の治療及び/又は予防において治療価値があり得る。よって、上記のような治療剤の投与により誘導される壊死性骨状態について、ストロンチウム含有化合物の投与は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死、その結果、骨壊死性骨疾患を導くことを防止し、かつ骨細胞のアポトーシス/壊死により引き起こされた壊死性骨損傷がすでに起こっている場合に、新しい骨の内殖を促進するという二重の効果を有し得る。
【0016】
骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると知られているか又は推測される治療剤を用いる治療を必要とするか又はすでにその治療を受けている哺乳動物について、ストロンチウム含有化合物(a)の有効量を、治療剤(b)の投与と同じ治療レジメンの一部分として受けることは、非常に価値があるだろう。
【0017】
よって、本発明は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると知られているか又は推測される治療剤(b)を用いて治療されるか又は治療されている哺乳動物において、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死及び大腿骨骨頭壊死を治療及び/又は予防する方法に関し、該方法は、ストロンチウム化合物(a)の有効投与量を、(b)との組み合わせで投与することを含む。
【0018】
本発明者らは、治療剤(b)との組み合わせでのストロンチウム含有化合物(a)の投与が、以下の1又はそれより多くの有利な効果を得ることができる点において予防的及び/又は治療的価値を有することを見出している。
i) (a)及び(b)の組み合わせで治療される患者において、組み合わせ治療における(b)と同じ投与量の(b)単独で治療される患者に比べて、骨壊死性骨疾患の発生率又は重篤度が少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%減少する骨壊死性骨疾患の発生率又は重篤度の減少、及び/又は
ii) (a)及び(b)の組み合わせで治療される患者において、組み合わせ治療における(b)と同じ投与量の(b)単独で治療される患者に比べて、患者における疾患又は状態に関係するいずれの臨床上関連する所見、例えば骨痛、関節痛、不動症、機能障害、体重減少又は骨ミネラル密度(BMD)減少として定義される副作用の頻度及び/又は重大さが少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%減少する(b)の副作用の頻度及び/又は重大さの減少。
【0019】
上記のように、高投与量でのグルココルチコイドは、骨細胞アポトーシスによる骨壊死性骨疾患を誘導することが知られている治療剤(b)の一つである。グルココルチコイド及びその他の関係するステロイドホルモンは、いくつかの臨床状況、例えば臓器又は骨髄移植、炎症及び/又は自己免疫疾患並びに慢性遷延性炎症状態における免疫系応答を調整するように高投与量で与えられる。骨髄移植の被移植者のうち、無血管性骨壊死の発生率は5年間で8%を超えると見積もられている(Socie Gら、Br J Haematol. 1994:86(3): 624〜628)。よって、治療剤(b)は、グルココルチコイド及び/又は別のステロイドホルモンであり得る。
【0020】
骨細胞のアポトーシス/壊死を誘導し、結果として骨壊死性骨疾患を導く役割を有すると知られているか又は推測されるその他の治療剤の例は、抗レトロウイルス化合物、例えばエファビレンツ(サスティバ(登録商標))、ジドブジン(レトロビル(登録商標))、ラミブジン(エピビル(登録商標))、アバカビル(ザイアジェン(登録商標))、ザルシタビン(ハイビッド(登録商標))、ジダノシン(ヴァイデックス(登録商標))、スタブジン(ゼリット(登録商標))、テノフォビルジソプロキシルフマレート(ビリアード(登録商標))、エムトリシタビン(エムトリバ(登録商標))、ホスアンプレナビル(レキシーバ(登録商標))、ネビラピン(ビラミューン(登録商標))、デラビルジン(レスクリプター(登録商標))、カプラビリン、エンフュービルタイド(フューゼオン(登録商標))、サキナビル(インビラーゼ(登録商標)、フォートベイス(登録商標))、リトナビル(ノービア(登録商標))、インジナビル(クリキシバン(登録商標))、チプラナビル、アムドキソビル、エルブシタビン、アタザナビル(レイアタッツ(登録商標))、ネルフィナビル(ビラセプト(登録商標))、アンプレナビル(アジェネラーゼ(登録商標))、PRO-542、TMC-114、TMC-125、BMS-56190、DPC-0830である。
【0021】
骨壊死に関連するその他のアポトーシス促進性治療は、癌の予防及び治療に用いられる細胞増殖抑制性及び腫瘍性の剤である。
【0022】
骨粗鬆症の治療に用いられる治療剤のいくつかは、骨壊死を誘導することも知られている。そのようなクラスの治療剤のある例は、ビスホスホネートである。
【0023】
本発明のある特定の実施形態において、ストロンチウム含有化合物(a)と治療剤(b)とは、別々の組成物として投与される。(a)及び(b)の投与は、治療剤(b)の種類、(b)の治療レジメン、(b)が投与される疾患の性質及び(b)を受容する哺乳動物の骨細胞に対する(b)の影響に応じて、同時又は逐次的に行うことができる。
【0024】
ある状況において、治療剤(b)は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導することが知られ、(b)が投与される特定の疾患のための(b)の通常の治療レジメンに従って投与される。このような状況において、ストロンチウム含有化合物(a)は、(b)の投与の前又は(b)と同時に投与され得る。(a)が(b)の前に投与される場合、(a)の投与は、(b)の投与の例えば数時間、数日若しくは数週間又はそれより前に行うことができる。
【0025】
例えば自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)のための高投与量のグルココルチコイド治療の場合、ストロンチウム化合物(a)の投与は、高投与量のグルココルチコイド(b)と同時に開始できる。グルココルチコイド治療を先に行うことができる場合、例えば腎臓移植を受ける患者に対する治療において、ストロンチウム化合物(a)は、グルココルチコイド(b)に先立って、例えば1ヶ月、2週間若しくは1週間又はそれより前に投与できる。
【0026】
別の状況において、治療剤(b)は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると推測されるのみである。この状況において、ストロンチウム含有化合物の投与は、骨細胞に対する(b)の影響が証明できるまで開始されなくてもよい。よって、このような状況において、(a)の投与は、(b)の投与の開始から、例えば数日又は数週間の実質的な時間遅延を伴って開始できる。
この例は、HIVにおける抗レトロウイルス療法(b)と関連する骨壊死であり、ここで、治療期間の長さは、骨壊死発生の重要な危険因子である。ストロンチウム化合物(a)を用いる治療は、抗レトロウイルス療法(b)を用いる治療を開始して5年まで又はそれより後に開始できる。
【0027】
ストロンチウム含有化合物(a)及び治療剤(b)を逐次的に、例えば数時間、数日、数週間、数ヶ月又は数年の時間間隔の間に投与しても、これらは同じ治療の一部分であるとみなされる。
【0028】
ストロンチウム含有化合物(a)の投与は、1日当たり1又はそれより多い回数、例えば1日当たり2〜5回行うことができる。投与は、1週当たり1又はそれより多い回数、例えば1週当たり1〜3回行うこともできる。
必要な(a)の全1日又は1週投与量に応じて、ストロンチウム化合物(a)は、1日若しくは例えば1週当たり(b)と同じ回数投与できるか、あるいは(a)は、1日若しくは例えば1週当たり(b)より少ない回数又は1日若しくは例えば1週当たり(b)より多い回数投与できる。(a)と(b)とが1日又は例えば1週当たり同じ回数投与されなくても、これらは同じ治療の一部分であるとみなされる。
【0029】
ストロンチウム含有化合物(a)の投与は、経腸若しくは非経口経路によるか又は局所投与によることができる。本発明の具体的な実施形態において、投与は経口経路による。
【0030】
本発明による具体的な方法において、ストロンチウム含有化合物(a)及び治療剤(b)は、単一組成物として投与される。
骨壊死性骨状態の治療及び/又は予防に用いられる方法には関係なく、すなわちストロンチウム化合物が単独で投与されるか又は上記のように治療剤(b)と共に組み合わせ治療に用いられるかに関係なく、次のことが当てはまる。
ストロンチウム化合物(a)は、有機又は無機酸のストロンチウム塩からなる群より選択され、該塩は水和物、無水物、溶媒化物、多形、無晶形、結晶形、微結晶形またはポリマー形であり得る。本発明のある実施形態において、ストロンチウムの非放射活性同位体のみが用いられる。
【0031】
ストロンチウム塩をつくる無機酸は、ホウ酸、亜臭素酸、炭酸、塩素酸、二リン酸、二硫酸、二チオン酸、亜ジチオン酸、雷酸、アジ化水素酸、臭化水素酸、塩化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、硫化水素、次リン酸、次亜リン酸、ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、メタホウ酸、メタリン酸、メタ亜リン酸、メタケイ酸、硝酸、亜硝酸、オルトリン酸、オルト亜リン酸、オルトケイ酸、リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、セレン酸、スルホン酸、硫酸、亜硫酸、チオシアン酸及びチオ硫酸からなる群より選択することができる。
【0032】
有機酸は、酢酸、C2H5COOH、C3H7COOH、C4H9COOH、(COOH)2、CH2(COOH)2、C2H4(COOH)2、C3H6(COOH)2、C4H8(COOH)2、C5H10(COOH)2、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、安息香酸、サリチル酸、ピルビン酸、L-及びD-アスパラギン酸、フタル酸、カルボン酸、ギ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、樟脳酸、グルコン酸、L-及びD-グルタミン酸、トリフルオロ酢酸、ラネル酸(ranelic acid)、2,3,5,6-テトラブロモ安息香酸、2,3,5,6-テトラクロロ安息香酸、2,3,6-トリブロモ安息香酸、2,3,6-トリクロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、アビエチン酸、アセト酢酸、アセトンジカルボン酸、アコニチン酸、アクリル酸、アジピン酸、アラニン、α−ケトグルタル酸、アントラニル酸、ベンジル酸、アラキジン酸、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アゼライン酸、ベヘン酸、ベンゼンスルホン酸、β−ヒドロキシ酪酸、ブラシジン酸、カプリン酸、クロロアクリル酸、桂皮酸、シトラコン酸、クロトン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シスタチオニン、ラネル酸、デカン酸、エルカ酸、エチレンジアミン四酢酸、フルボ酸、フマル酸、没食子酸、グルタコン酸、グルタミン酸、グルタミン、グルタル酸、グロン酸、グリシン、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒスチジン、フミン酸、ヒドロキシステアリン酸、イソロイシン、イソフタル酸、イタコン酸、ランチオニン、ラウリル酸(ドデカン酸)、ロイシン、レブリン酸、リノール酸(cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸)、リシン、リンゴ酸、m-クロロ安息香酸、メリシン酸、メサコン酸、メタアクリル酸、モノクロロ酢酸、ミリスチン酸、(テトラデカン酸)、ノナン酸、ノルバリン、オクタン酸、オレイン酸(cis-9-オクタデカン酸)、オルニチン、オキサロ酢酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、p-アミノ安息香酸、p-クロロ安息香酸、ペトロセリン酸、フェニル酢酸、フェニルアラニン、p-ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、プロピオール酸、プロピオン酸、プロリン、セリン、p-tert-ブチル安息香酸、p-トルエンスルホン酸、スレオニン、トリプトファン、チロシン、ピルビン酸、サルコシン、セバシン酸、セリン、ソルビン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、スベリン酸、コハク酸、テレフタル酸、テトロル酸、スレオニン、チロニン、トリカルバリル酸、トリクロロ酢酸、トリメリト酸、トリメシン酸、チロシン、ウルミン酸(ulmic acid)、バリン及びシクロヘキサンカルボン酸からなる群より選択できる。
【0033】
米国食品医薬局(FDA)が経口摂取用組成物における使用について安全であると認めた全ての酸は、本発明において用いることができる。本発明のある実施形態において、酸はモノプロトン酸又はジプロトン酸であり得る。本発明の別の実施形態において、酸はL-型若しくはD-型のいずれか又はそれらのいずれの混合物でもあり得る。
【0034】
本発明による使用のためのストロンチウム塩の具体例は、ストロンチウムクロリド、ストロンチウムクロリド六水和物、ストロンチウムシトレート、ストロンチウムマロネート、ストロンチウムスクシネート、ストロンチウムフマレート、ストロンチウムアスコルベート、L及び/又はD型のいずれかのストロンチウムアスパルテート、L及び/又はD型のいずれかのストロンチウムグルタメート、ストロンチウムα-ケトグルタレート、ストロンチウムピルベート、ストロンチウムタルトレート、ストロンチウムグルタレート、ストロンチウムマレエート、ストロンチウムメタンスルホネート、ストロンチウムベンゼンスルホネート、ストロンチウムラネレート及びそれらの混合物である。
【0035】
本発明の具体的な実施形態において、ストロンチウム塩は、ジカルボン有機酸と錯体化したストロンチウムイオンで構成される。このような塩は、アミン若しくはアミノ酸又はそれらの混合物の塩でもあり得る。ジカルボン酸のストロンチウム塩は、組成物のジカルボン酸部分が、生理条件下でカルシウムイオンに比べてストロンチウムイオンに対してより高い溶解定数を有するように選択される。よって、溶解された塩は、遊離のカルシウムイオンの優先的な結合を有する溶液を提供し、これはストロンチウムイオンの腸内吸収を促進し、よって治療効果を改善するか及び/又は骨壊死状態における予防及び/又は治療効果を達成するために必要な要求される投与量を減少させることについての利点を提供し得る。
【0036】
イオン性ストロンチウムの1日当たりの投与量は、少なくとも約0.01 g、例えば少なくとも約0.025 g、少なくとも約0.050 g、少なくとも約0.075 g、少なくとも約0.1 g、少なくとも約0.2 g、少なくとも約0.3 g、少なくとも約0.4 g若しくは少なくとも約0.5 g、又は約0.01〜約2 g、例えば約0.1〜約2 g、約0.1〜約1 g、約0.15〜約0.5 g、約0.3〜約2 g若しくは約1〜約2 gであり得る。
【0037】
ストロンチウム含有化合物がストロンチウムマロネートである場合、無水塩として計算して1日当たり約0.1〜約10 gに相当する投与量で投与することができる。より具体的には、該塩は、無水塩として計算して、1日当たり約0.2〜約8 g、例えば1日当たり約0.4〜約5 g、1日当たり約0.6〜約3 g、1日当たり約0.7〜約2 gに相当する投与量で投与できる。
別のストロンチウム塩を用いる場合、当業者は、対イオン及びイオン性ストロンチウムの所望の1日当たりの投与量に応じて、ストロンチウム塩の1日当たりの全投与量を計算することができる。
【0038】
上記のように、ストロンチウム含有化合物(a)の投与は、1日当たり1又はそれより多い回数、例えば1日当たり2〜5回行うことができる。投与は、1週当たり1又はそれより多い回数、例えば1週当たり1〜3回行うことができる。
(a)の投与は、経腸若しくは非経口経路又は局所投与によることができる。好ましい実施形態において、投与は経口経路による。
【0039】
本発明による方法において治療される哺乳動物は、ヒト又は家畜、例えばネコ、イヌ、ウマ、カウ又はヒツジであり得る。好ましい実施形態において、治療される対象は、ヒト、例えばヒトの女性又は男性、成人、青年又は子供である。
【0040】
治療を必要とする哺乳動物は、骨壊死の危険性が疑われる骨格部位のイメージング技術、例えばX線、超音波、磁気共鳴イメージングにより、及び/又は骨交替の特異的生化学マーカーを用いて骨交替の変化を評価することにより同定及び/又は監視できる。
【0041】
上記で記載した詳細及び具体例は、必要な変更を加えて、次に適用される。
【0042】
上記で記載した方法に加えて、本発明は、ストロンチウム含有化合物(a)の、哺乳動物における骨壊死性骨状態、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死を治療及び/又は予防するための医薬の製造のための使用にも関する。
【0043】
本発明は、ストロンチウム含有化合物(a)及び治療剤(b)の、哺乳動物において骨壊死性骨状態を治療及び/又は予防するための医薬を製造するための使用にも関し、ここで、(b)は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態に導くと知られているか又は推測される。
【0044】
さらに、本発明は、ストロンチウム含有化合物(a)と、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態に導くと知られているか又は推測される治療剤(b)と、任意に、1又はそれより多い医薬的に許容される賦形剤、すなわち治療的に不活性な物質又は担体を含む医薬組成物に関する。
上記の担体は、所望の剤形及び投与経路に応じて広い種類の形をとり得る。
医薬的に許容される賦形剤は、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤(glidants)、溶剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、エンハンサー、香料、着色料、pH調整剤、遅延剤(retarding agent)、湿潤剤、界面活性剤、防腐剤、抗酸化剤などであり得る。詳細は、薬学のハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Science又はPharmaceutical Excipient Handbookに見出すことができる。
【0045】
投与される化合物の量の具体例を上述している。しかし、実際に投与される化合物の量は、治療される状態、投与される化合物の選択、個々の患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重篤度及び選択した投与経路を含む関連する情況を考えて医師により決定されることが理解される。本発明の組成物は経口投与されるのが好ましいが、化合物は、他のいずれの適切な経路によっても投与できる。
【0046】
本発明による医薬組成物は、固形、半固形又は液体組成物の形態にあり得る。本発明のある実施形態において、医薬組成物は錠剤の形態であり得る。錠剤は、小腸の近位で、例えば十二指腸及び/又は近位空腸で、塩の少なくとも一部分、例えば錠剤に含有される塩の全量の少なくとも50% w/w、少なくとも60% w/w、少なくとも65% w/w、少なくとも70% w/w、少なくとも80% w/w又は少なくとも90% w/wを放出可能にするコーティングで被覆されていてもよい。
【0047】
本発明の別の実施形態において、化合物は、室(ventricle)における完全又は主要な溶解性、例えば錠剤に含有される塩の全量の少なくとも50% w/w、少なくとも60% w/w、少なくとも65% w/w、少なくとも70% w/w、少なくとも80% w/w又は少なくとも90% w/wを有して選択されることができる。
【0048】
錠剤は、患者が容易にかつ適切に嚥下できる形状を有し得る。よって、錠剤は、例えば鋭利な端を有さない丸い又は紡錘状の形状を有し得る。さらに、錠剤は、2又はそれより多い部分に分割されるように設計され得る。
【0049】
組成物の半固形形態は、ペースト、ゲル又はヒドロゲルであり得る。
組成物の液体形態は、溶液、ナノエマルションを含むエマルション、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、スプレー、混合液、シロップ又はエリキシルであり得る。
本発明による医薬組成物のその他の適切な剤形は、カプセル、サッシェ、トローチ、デバイスなどであり得る。
【0050】
医薬組成物は、医薬処方の当業者に公知のいずれの方法を用いて製造することができる。
【0051】
本発明は、2つ又はそれより多い成分を含むキットにも関し、第一成分はストロンチウム含有化合物(a)を含み、第二成分は、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態に導くと知られているか又は推測される治療剤(b)を含む。
【0052】
本発明による方法、医薬組成物又はキットには、1又はそれより多いさらなる活性物質を含むのが有利であり得る場合がある。1又はそれより多いさらなる活性物質は、骨壊死性骨疾患、例えば骨壊死に対して治療及び/又は予防の効果を有し得る。「骨壊死性骨疾患に対して治療及び/又は予防の効果を有する活性物質」の用語は、特定の医療上の結果、例えば骨壊死の発生率の低減、骨壊死性損傷に関連する骨痛の低減、骨密度の増加、及び/又は骨の治癒の改善若しくは骨壊死性状態を発生する危険性のある対象における骨折の発生の防止を達成できる活性物質を含む。このような物質の例は、骨吸収抑制及びアナボリック剤である。しかし、上述した以外のその他の効果を有する1又はそれより多い活性物質も、本発明の方法又は医薬組成物に含んでもよい。このような活性物質は、例えば疼痛寛解剤(pain relievers)(鎮痛剤)、抗炎症薬、抗レトロウイルス薬、抗悪性腫瘍薬、疾患変性(disease modifying)抗リウマチ薬又はその他の抗リウマチ薬であり得る。
【0053】
本発明による方法又は医薬組成物に用い得る活性物質の具体例は、カルシウム-α-ケトグルタレート、カルシウム及び/又はその塩、ビタミンD、例えばビタミンD3及び/又はビタミンD3の機能的等価物、グルカゴン様ペプチド-2、グルカゴン様ペプチド-2放出組成物、非ステロイド抗炎症薬、疼痛寛解剤、腫瘍壊死因子α(TNF-α)阻害剤、IL-15放出又は機能の阻害剤、IL-1放出又は機能の阻害剤である。
【0054】
次の実施例は、限定することなく本発明を説明することを意図する。
【実施例】
【0055】
実施例
実施例1
骨壊死動物モデルにおけるストロンチウムマロネートの効果
この研究の根本的な理由は、骨壊死動物モデルにおいて、治療及び骨成長促進(アナボリック促進性)の剤として作用するストロンチウムの能力を評価することであった。このモデルにおいて、受容ラットの大腿部に同系の壊死骨移植片を移植した。壊死移植片は分解され、その間に新しい骨の内殖が発生した。実験の終点に、構造移植片を回収し、組織学により分析して壊死移植片の分解及び新しい骨の内殖の両方を定量した。壊死移植片の挿入の後に、アナボリック及び/又は吸収抑制剤を用いる治療を伴ってもよく、その効果を実験の終了後に監視した。このラットモデルは、以前に記載されている(Astrand J, Aspenberg P. BMC Musculoskelet Disord. 2002;3(1):19)。
【0056】
方法及び材料
化合物(活性ストロンチウム試験品:Sr-マロネート、189.6 g/mol;プラセボ物質、カルシウムマロネート、142.1 g/mol)をラット用の飲料水に懸濁した。塩を、1.6 g/lの溶液で製造し、これは飽和に近い(22〜25℃)。よって、物質を完全に溶解させるには長い撹拌が必要であった。飲料水の新たなバッチを毎週、実験期間の間新鮮にした。使用しないときは、溶液は室温で密閉容器内に貯蔵した。予備実験は、各動物が60〜90 ml/24 hを飲み、1日当たりのおおよそのストロンチウム投与量が120 mgのストロンチウムマロネート(イオン性ストロンチウム55.4 mgに等しい)となったことを示した。
【0057】
研究は、体重350 g(9〜10週齢に相当)の20匹の雄のスプラーク-ドーリーラット、Taconic M&B, Lille Skensved, Denmarkにおいて行った。動物は、実験の開始前に2週間環境順化させ、よって、壊死骨移植片の移植時には約12週齢であった(週0)。
【0058】
研究は、各10匹のラットの2群からなった。ラットを、研究の開始前に無作為に群に配分した。骨壊死のこのモデルにおける治療介入を用いる以前の研究(Astrand J、Aspenberg P. BMC Musculoskelet Disord. 2002;3(1):19)では、研究は6週間続いた。週0では、これらのラットを、雌のスプラーク-ドーリーラットに由来する壊死骨移植片を海綿(骨梁)骨移植片と共に挿入する手術に供した。骨移植片を剖検の後に雌のラットから切除し、-80℃で凍結させて骨移植片内の全ての細胞を死滅させた。次いで、移植片を、完全麻酔の手術で、右後肢の脛骨内に入れたチタンチャンバ内に入れた。ストロンチウムマロネート又はコントロール(カルシウムマロネート)での処置を、週0から開始した。懸濁させた試験物質を含有する食物及び水は、自由に摂取させた。ラットを6週間後に安楽死させ、壊死骨移植片を含むチタンチャンバを取り出して、組織学評価のために処理した。
【0059】
チタンチャンバから慎重に取り出して、移植片を10 %ギ酸、2 %ホルムアルデヒド中で14日間脱石灰させた。脱石灰させた骨格組織をパラフィンに包埋し、移植片の長軸に平行に1μmの切片に切断した。続いて、各切片をヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色し、壊死移植片の分解及び新しい骨の内殖の出現について視覚的に採点した。
【0060】
結果
20匹全ての動物が6週間の研究期間を完了し、組織学的分析に用いることができた。組織学的分析は、全てのラットにおいて、軟組織が移植片に侵入したことを示した。新しい骨は、骨内殖境界(frontier)を形成した。分析の主なパラメータは、この内殖距離の測定であった。2つの群の動物は、新しい骨の内殖の程度にかなりの違いを示した。ストロンチウムマロネート処理群は、平均内殖2.24 (±1.00) p=0.038に比べて3.43 (±1.35 (SD)) mmの平均内殖であった。このことは、ストロンチウムマロネートがかなりのアナボリック効果を有することを示し、よって骨壊死の予防及び治療の両方におけるこの化合物の使用の可能性を示している。
【0061】
本明細書の実施例において用いられるストロンチウムマロネートは、以下に記載のようにして製造される。
100℃での合成によるストロンチウムマロネート無水物の製造
最初に、マロン酸の懸濁液(白色)を、ミリポア水100 mLを固体マロン酸(Fluka, MW 104.06 g/モル, CAS no. 141-82-2, lot. no. 449503/1, フィリングコード44903076) 10.406 g (0.1モル)に250 mLビーカー中で加えることにより作製する。この懸濁液に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma Aldrich, Sr(OH)2*8H2O, MW 265.71, CAS no. 1311-10-0) 26.571 g (0.1モル)を加えた。次いで、磁気撹拌棒を入れ、懸濁液の沸点まで撹拌及び加熱を開始した。最終の懸濁液も白色であり、撹拌は、撹拌装置の中程度の回転を維持することにより継続した。溶液に二酸化炭素が侵入するのを防ぐために、ビーカーをカバーガラスで覆った。
【0062】
沸騰及び撹拌の数分後、溶液は清澄化し、全ての固形物が溶解した。沸騰を維持し、沸騰による水分損失を置き換えるために、必要に応じてさらなる水を加えた。3時間の沸騰後、沸騰させながら溶液をブフナー漏斗でろ過した。非常に少量の不純物がろ紙上に残った。続いて、ろ液を室温まで冷却させると、ストロンチウムマロネートの細粉結晶が成長した。最終産物の沈殿は、ろ過の間に迅速に進行し、産物の大部分はろ紙内に見出された(非加熱)。沈殿がろ液で進行したのは、希な場合のみであった。産物をろ過し、30分間オーブン中で110℃で乾燥させ、次いでシリカオレンジ上でデシケータ内で12時間乾燥させた。X線結晶学及びフレーム原子吸光分光法(F-AAS)による分析の前に、塩を乳鉢で粉砕して細粉にした。
【0063】
ストロンチウムマロネートの全収率は、再結晶化前で約98%であり、不純物の大部分は試薬及びストロンチウムカーボネートの残渣(reminisces)からなった。産物は、X線結晶学及びケンブリッジの結晶学データベースの結果とのデータの比較により、ストロンチウムマロネート(無水物)であると明白に同定された。
【0064】
合成のさらなる改良において、無水ストロンチウムマロネートを、大規模合成のための方法の適用可能性を示すように、本発明による方法において10 kg規模で製造した。Sr(OH)2*8H2O 15.80 kgを、純水63.2 lに溶解して95〜100℃に加熱した。マロン酸5.63 kgを純水4.1 lに溶解し、ろ過し、その後、さらに1.4 lの水を加えて溶液を95〜100℃に加熱した。2つの溶液を、不活性窒素雰囲気下に密閉反応容器内で混合し、還流下に20分間撹拌した。続いて、加熱を停止し、溶液を2〜4時間かけて40〜50℃に冷却させ、その間にストロンチウムマロネートを沈殿させた。沈殿物をろ過し、塩をさらに13.2 lの水で洗浄し、その後、真空で70℃の温度で完全に乾燥させた。無水の高純度のストロンチウムマロネート9.4 kgを、均質な微結晶白色粉末として得て、収率94%に相当した。産物は、X線結晶学及びケンブリッジの結晶学データベースの結果とのデータの比較により、ストロンチウムマロネート(無水物)であると明白に同定された。
【0065】
本発明による方法において用いられる錠剤は、以下のようにして製造できる。
錠剤へのストロンチウムマロネートの処方
ストロンチウムマロネートは、経口投与用の簡便な錠剤での医薬用途に処方できる。錠剤は、上記のようにして製造した微結晶ストロンチウムマロネートを用いて製造されるべきである。錠剤の製造のために、以下の手順を行うことができ、これは約12000個の錠剤を与える。
上記のようにして製造したストロンチウムマロネート3600gを、アビセルPH102 (微結晶セルロース) Ph. Eur 180 gと混合する。混合後、ポリビドン(Polyvidone)A Ph. Eur. 144g及び純水Ph. Eur. 450 g を混合物に加える。
【0066】
混合物の重量を調節する(理論重量3924 g)。混合プロセスが完了した後、粒状化物質を、孔サイズ1.2 mmの網を通してふるいにかけ、適切な乾燥オーブン中のトレイの中で40℃で乾燥させる。顆粒に無水コロイダルシリカ(Aerosil 200) Ph. Eur 23 g、アビセルPH102 (微結晶セルロース) Ph. Eur 284 g及びステアリン酸マグネシウムPh. Eur 23 gを加える。完全に混合し、物質を孔サイズ0.7 mmの網を通してふるいにかける。この物質を、打錠機にかける。
【0067】
刻み線のない9 mmの白色の丸い錠剤(φ9 mm) を製造し、それぞれ以下の成分を含有する。
ストロンチウムマロネート 300 mg
微結晶セルロースPh.Eur. 43.5 mg
ポリビドンPh.Eur. 12 mg
無水コロイダルシリカPh.Eur. 2.25 mg
ステアリン酸マグネシウムPh.Eur. 2.25 mg
【0068】
ストロンチウムマロネート1.2 g投与量を投与する医薬用途において、必要とする対象に4つの錠剤を投与することができる。より大きいプレス頭部を有する打錠機を用いることにより、当業者は、列挙した成分のより多くを同じ相対的な量で含有するより大きい錠剤を製造できることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロンチウム含有化合物(a)の有効投与量を、骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物における該骨壊死性骨疾患の治療及び/又は予防の方法。
【請求項2】
ストロンチウムの1日当たりの投与量が少なくとも約0.01 g、例えば少なくとも約0.025 g、少なくとも約0.050 g、少なくとも約0.075 g、少なくとも約0.1 g、少なくとも約0.2 g、少なくとも約0.3 g、少なくとも約0.4 g若しくは少なくとも約0.5 g、又は約0.01〜約2 g、例えば約0.1〜約2 g、約0.1〜約1 g、約0.15〜約0.5 g、約0.3〜約2 g若しくは約0.5〜約2 gである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与が1日当たり1又はそれより多い回数行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
投与が1日当たり2〜5回行われる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
投与が、経腸若しくは非経口経路によるか又は局所投与による請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
投与が経口経路による請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ストロンチウム化合物(a)を、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導すると知られているか又は推測される治療剤(b)との組み合わせで投与することを含む、該治療剤(b)で治療されるか又は治療されている哺乳動物における骨壊死性骨疾患、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死及び大腿骨骨頭壊死の治療及び/又は予防の方法。
【請求項8】
骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死が骨壊死性骨疾患を導く請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ストロンチウム含有化合物(a)及び前記治療剤(b)の投与が:
i) (a)及び(b)の組み合わせで治療される患者において、組み合わせ治療における(b)と同じ投与量で(b)単独で治療される患者に比べて、骨壊死性骨疾患の発生率又は重篤度が少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%減少する骨壊死性骨疾患の発生率又は重篤度の減少、
ii) (a)及び(b)の組み合わせで治療される患者において、組み合わせ治療における(b)と同じ投与量の(b)単独で治療される患者に比べて、患者における疾患又は状態に関係するいずれの臨床上関連する所見、例えば骨痛、関節痛、不動症、機能障害、体重減少又は骨ミネラル密度(BMD)減少として定義される副作用の頻度及び/又は重大さが少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%減少する(b)の副作用の頻度及び/又は重大さの減少
の少なくとも1つを導く請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療剤(b)が、グルココルチコイド及び/又は別のステロイドホルモンである請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記治療剤(b)が、抗レトロウイルス化合物、例えばエファビレンツ(サスティバ(登録商標))、ジドブジン(レトロビル(登録商標))、ラミブジン(エピビル(登録商標))、アバカビル(ザイアジェン(登録商標))、ザルシタビン(ハイビッド(登録商標))、ジダノシン(ヴァイデックス(登録商標))、スタブジン(ゼリット(登録商標))、テノフォビルジソプロキシルフマレート(ビリアード(登録商標))、エムトリシタビン(エムトリバ(登録商標))、ホスアンプレナビル(レキシーバ(登録商標))、ネビラピン(ビラミューン(登録商標))、デラビルジン(レスクリプター(登録商標))、カプラビリン、エンフュービルタイド(フューゼオン(登録商標))、サキナビル(インビラーゼ(登録商標)、フォートベイス(登録商標))、リトナビル(ノービア(登録商標))、インジナビル(クリキシバン(登録商標))、チプラナビル、アムドキソビル、エルブシタビン、アタザナビル(レイアタッツ(登録商標))、ネルフィナビル(ビラセプト(登録商標))、アンプレナビル(アジェネラーゼ(登録商標))、PRO-542、TMC-114、TMC-125、BMS-56190、DPC-0830である請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記治療剤(b)がビスホスホネートである請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
ストロンチウムの1日当たりの投与量が、少なくとも約0.01 g、例えば少なくとも約0.025 g、少なくとも約0.050 g、少なくとも約0.075 g、少なくとも約0.1 g、少なくとも約0.2 g、少なくとも約0.3 g、少なくとも約0.4 g若しくは少なくとも約0.5 g又は約0.01〜約2 g、例えば約0.1〜約2 g、約0.1〜約1 g、約0.15〜約0.5 g、約0.3〜約2 g若しくは約1〜約2 gである請求項7〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
(a)及び(b)が単一組成物として投与される請求項7〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
(a)及び(b)が別個の組成物として投与される請求項7〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
(a)及び(b)の投与が、同時又は逐次に行われる請求項7〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記ストロンチウム含有化合物(a)が、有機又は無機の酸のストロンチウム塩からなる群より選択される請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記塩が、水和物、無水物、溶媒化物、多形、無晶形、結晶形、微結晶形またはポリマー形である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩が、ストロンチウムクロリド、ストロンチウムカーボネート、ストロンチウムシトレート、ストロンチウムマロネート、ストロンチウムスクシネート、ストロンチウムフマレート、ストロンチウムアスコルベート、ストロンチウムピルベート、ストロンチウムL-グルタメート、ストロンチウムD-グルタメート、ストロンチウムL-アスパルテート、ストロンチウムD-アスパルテート、ストロンチウムα−ケトグルタレート、ストロンチウムラクテート、ストロンチウムタルトレート、ストロンチウムグルタレート、ストロンチウムマレエート、ストロンチウムメタンスルホネート、ストロンチウムベンゼンスルホネート、ストロンチウムラネレート及びそれらの混合物を含む群から選択される請求項1〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
ストロンチウム含有化合物(a)の、哺乳動物における骨壊死性骨状態、例えば特発性又は続発性骨壊死、無血管性骨壊死、グルココルチコイド誘発骨虚血/骨壊死、レッグ−カルヴェ−ペルテス病及び大腿骨骨頭壊死を治療及び/又は予防するための医薬の製造のための使用。
【請求項21】
ストロンチウム含有化合物(a)と骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態を導くことが知られているか又は推測される治療剤(b)との、哺乳動物における骨壊死性骨状態を治療及び/又は予防するための医薬の製造のための使用。
【請求項22】
ストロンチウム含有化合物(a)と、骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態を導くことが知られているか又は推測される治療剤(b)と、任意に、1又はそれより多い医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
第一成分がストロンチウム含有化合物(a)を含み、かつ第二成分が骨細胞のアポトーシス及び/又は壊死を誘導して骨壊死性骨状態を導くことが知られているか又は推測される治療剤(b)を含む、2又はそれより多い成分を含むキット。

【公表番号】特表2007−523916(P2007−523916A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500055(P2007−500055)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000140
【国際公開番号】WO2005/082385
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(505403979)
【氏名又は名称原語表記】OSTEOLOGIX A/S
【住所又は居所原語表記】c/o Symbion Science Park,Fruebjergvej 3,DK−2100 Copenhagen O,DENMARK
【Fターム(参考)】