説明

変性ジエン系重合体ゴムの製造方法

【課題】 高分子量成分の生成量を制御できる優れた反撥弾性を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法。
【解決手段】 変性ジエン系重合体ゴムを得る際、工程2の前に環状、脂肪族又は芳香族エーテルを添加することにより工程2の反応を速やかに進行させ、得られる変性ジエン系重合体ゴムの高分子量成分の生成量を制御する。
工程1:アルカリ金属触媒の存在下、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させ、アルカリ金属末端を有する活性重合体を得る
工程2:該活性重合体と、下式(1)(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立の炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基またはアルコキシ基、nは0又は1〜10の整数、Aは活性水素を持たない極性官能基を表す。)で表される化合物を反応させて、変性重合体ゴムを製造する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性重合体ゴムの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、優れた反撥弾性を有する(したがって、優れた省燃費性を有する自動車タイヤを製造し得る)変性ジエン系重合体ゴムの製造方法であって、変性ジエン系重合体ゴムの合成時に、高分子量成分の生成量を制御できるという優れた特徴を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
優れた反撥弾性を有する自動車タイヤ用ゴムを得る方法として、特許文献1には、ブタジエンとスチレンとを、有機リチウム化合物を重合開始剤とし、エ−テルのようなルイス塩基をミクロ構造調節剤とし、炭化水素溶媒中で共重合させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、ジエン重合体ゴムのアルカリ金属末端に特定のアクリルアミドを反応させて、反撥弾性の改良された変性ジエン共重合体ゴムを得る方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献3には、ジエン重合体ゴムのアルカリ金属末端に特定のアルコキシシランを反応させて、さらに反撥弾性の改良された変性ジエン共重合体ゴムを得る方法が提案されている。しかしながら特許文献3に示した方法では、変性反応が過去の通常の変性反応に比べて非常に早く、かつ式(1)で表されるアルコキシシラン化合物には複数の反応点があるため、少しの状況変化にも影響を受けやすく、一次構造が同一の、すなわち高分子量成分量が一定の、優れた反撥弾性を有する変性重合体ゴムを安定的に製造することは難しかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−72907号公報
【特許文献2】特許第2540901号公報
【特許文献3】特開平6−53768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、優れた反撥弾性を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法であって、変性ジエン系重合体ゴムの合成時に、高分子量成分の生成量を制御できるという優れた特徴を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の工程により、変性ジエン系重合体ゴムを得る際、工程2の前に環状、脂肪族又は芳香族エーテルを添加すること、もしくは工程2で用いる式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を環状、脂肪族又は芳香族エーテルを含む溶液として加えること、により工程2の反応を速やかに進行させ、得られる変性ジエン系重合体ゴムの高分子量成分の生成量を制御する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法に係るものである。
工程1:アルカリ金属触媒の存在下、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させ、アルカリ金属末端を有する活性重合体を得る工程
工程2:該活性重合体と、下式(1)(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は炭素数が1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、nは0又は1〜10の整数を表し、Aは活性水素を持たない極性官能基を表す。)で表される化合物を反応させて、変性重合体ゴムを製造する工程

【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた反撥弾性を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法であって、変性ジエン系重合体ゴムの合成時に、高分子量成分の生成量を制御できるという優れた特徴を有する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられる共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンおよび1,3−ヘキサジエンを例示することができる。中でも、入手容易性や、得られる変性重合体ゴムの物性の観点から、1,3−ブタジエンやイソプレンが好ましい。
【0009】
本発明で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、及び、ジビニルナフタレンを例示することができる。中でも、入手容易性や、得られる変性重合体ゴムの物性の観点から、スチレンが好ましい。
【0010】
本発明で用いられる炭化水素溶媒は、アルカリ金属触媒を失活させない溶媒である。適した溶剤として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および脂環族炭化水素を例示することができる。特に適した溶媒は炭素数2〜12の溶媒である。溶媒として、プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼン、ならびに、これらの少なくとも2種の組合せを例示することができる。
【0011】
本発明で用いられるアルカリ金属触媒として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムのような金属や、該金属を含有する炭化水素化合物や、該金属と極性化合物との錯体を例示することができる。中でも、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物が好ましい。
【0012】
アルカリ金属触媒として、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−ブテン−2、ナトリウムナフタレン、ナトリウムビフェニル、カリウム−テトラヒドロフラン錯体、カリウムジエトキシエタン錯体、および、α−メチルスチレンテトラマーのナトリウム塩を例示することができる。
【0013】
工程2の前に添加する、または工程2で用いる式(1)化合物を溶かすエーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,4−ジオキサンのような環状エーテル;ジエチルエーテルおよびジブチルエーテルのような脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルのような脂肪族ジエ−テル;ならびにジフェニルエーテルおよびアニソールのような芳香族エーテル、を例示することができる。好ましいエーテルとして、テトラヒドロフランが挙げられる。エーテルの添加量は、活性重合体の会合状態を解くのに十分であり、かつ添加温度にて副反応を併発しない量が好ましい。具体的には活性重合体に対して等量以上、用いた重合溶媒量以下が好ましい。添加量が少ないと十分な添加効果が得られないため、高分子量体の生成量を制御することができない。また添加量が多すぎると、活性重合体が副反応により失活する可能性がある。
【0014】
工程2の前にエーテルを添加する場合、添加温度や添加時間は制限されず、それぞれ一般に、室温〜80℃、数秒〜数時間である。工程2で用いる式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を、エーテルを含む溶液として加える場合には、式(1)化合物と活性重合体との反応が迅速に進行するため、迅速に(1)のエーテルを含む溶液を添加することが好ましい。該反応の温度は一般に、室温〜80℃、数秒〜数時間である。
【0015】
式(1)中、省燃費性の観点から好ましいR1およびR2はメチル基、又はエチル基であり、R3およびR3はメチル基、エチル基、メトキシ基、又はエトキシ基である。
【0016】
式(1)中、省燃費性の観点から好ましいnは2〜4である。1以下の場合には副反応が起こりやすく、5以上の場合には分子量が大きくなるため、使用量が増加する。
【0017】
式(1)中、省燃費性の観点から好ましいAは、N置換の活性水素を持たない官能基である。好ましいAとしてジエメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、エチルメチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、イミダゾリノ基である。
【0018】
式(1)で表される化合物としては、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジメチルメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジエチルメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ジメチルメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ジエチルメトキシシラン、 [(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジメチルエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジエチルエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ジメチルエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ジエチルエトキシシラン、 [(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジメトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジエトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジメトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジエトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}ジメチルメトキシシラン、{3−[ジ(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}ジメチルエトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}ジメチルメトキシシラン、{3−[ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}、3−エチルメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−エチルメチルアミノメチルジメトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3−モルホリノプロピルトリエトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルエチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジエトキシシラン、3−モルホリノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルエチルジエトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルトリメトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルトリエトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルメチルジメトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルエチルジメトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルメチルジエトキシシラン、3−イミダゾリジノプロピルエチルジエトキシシラン、等を例示することができる。中でも、省燃費性を著しく改良できるという観点から、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシランが好ましい。
【0019】
本発明において共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとの組合せを用いる場合、共役ジエンモノマー/芳香族ビニルモノマーの重量比は50/50〜90/10が好ましく、55/45〜85/15がさらに好ましい。該比が50/50未満であると、得られる変性重合体ゴムが炭化水素溶媒に不溶となり、その結果、均一な重合ができない場合がある。該比が90/10を超えると、得られる変性重合体ゴムの強度が低下する場合がある。該組合せで得られる共重合体は、省燃費性改良の観点から、ランダム共重合体であることが望ましい。ブロック共重合体の場合には、加硫ゴムとした時の省燃費性が低下することがある。
【0020】
本発明で用いられる共役ジエンモノマーや芳香族ビニルモノマーは、ランダマイザーや、得られる変性重合体ゴム中の、共役ジエンモノマーから誘導されるビニル結合の含有量を調節する化合物と組合せて用いてもよい。本発明における重合様式は、特に制限されない。
【0021】
上記の、ビニル結合の含有量を調節する化合物として、ルイス塩基性化合物を例示することができる。該化合物として、工業的に実施する際の入手容易性の観点から、エーテルまたは第三級アミンが好ましい。
【0022】
上記エーテルとして、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,4−ジオキサンのような環状エーテル;ジエチルエーテルおよびジブチルエーテルのような脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルのような脂肪族ジエ−テル;ならびにジフェニルエーテルおよびアニソールのような芳香族エーテル、を例示することができる。
上記第三級アミンとして、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、およびキノリンを例示することができる。
【0023】
式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の使用量は、アルカリ金属触媒1モル当たり、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2モルである。該使用量が0.5モル未満であると、省燃費性の改良効果が少なく、2モルを超えると、未反応の式(1)化合物が溶媒中に残存するので、経済的に好ましくない。なぜなら、該溶媒をリサイクルして再使用する場合、該溶媒中の式(1)化合物を分離する工程が必要であるからである。
【0024】
得られる変性重合体ゴムの混練加工性の観点から、式(1)化合物と活性重合体との反応の前または後に、活性重合体に対して下式(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基を表し;Mはケイ素原子またはスズ原子を表し;Xはハロゲン原子を表し;aは0〜2の整数を表す)で示されるカップリング剤を添加するのが好ましい。
aMX4-a
【0025】
上記カップリング剤の添加量は、アルカリ金属触媒1モル当たり、通常0.03〜0.4モル、好ましくは0.05〜0.3モルである。該添加量が0.03モル未満であると、変性重合体ゴムの加工性の改良効果が少ない。該添加量が0.4モルを超えると、式(1)で表される化合物と反応する活性重合体の割合が少なくなるので、省燃費性の改良効果が低下する。
【0026】
工程2で得られる反応混合物中の変性重合体ゴムは、溶液重合法によるゴムの製造において通常実施されている(1)凝固剤を添加する方法、または、(2)スチームを添加する方法のような凝固法によって、凝固される。凝固温度は特に制限されない。
【0027】
凝固された変性重合体ゴムは、バンドドライヤーや押出型ドライヤーのような、合成ゴムの製造で用いられている公知の乾燥機で乾燥される。乾燥温度は特に制限されない。
得られる変性重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは10〜200、更に好ましくは20〜150である。該粘度が10未満であると、その加硫物の引張り強度のような機械物性が低下する場合がある。該粘度が200を超えると、それを他のゴムと組合せた組成物として使用する場合の混和性が悪化するので加工しにくくなり、その結果、得られるゴム組成物の加硫物の機械物性が低下する場合がある。
【0028】
得られる変性重合体ゴムの、共役ジエンモノマー単位に由来するビニル結合の含有量は、好ましくは10〜70%、更に好ましくは15〜60%である。該含有量が10%未満であると、該重合体ゴムのガラス転移温度が低下し、その結果、該重合体ゴムからなるタイヤのグリップ性能が劣る場合がある。該含有量が70%を超えると、該重合体ゴムのガラス転移温度が上昇し、その結果、該重合体ゴムの反撥弾性が劣る場合がある。
【0029】
得られる変性重合体ゴムは、他のゴムや添加剤のような成分と組合せて、組成物として用いてもよい。
【0030】
上記他のゴムとして、乳化重合法で得られるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム;アニオン重合触媒やZiegler型触媒のような触媒を用いる溶液重合法で得られる、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム共重合体ゴム、および、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム;天然ゴム;ならびに、これらゴムの少なくとも2種の組合せ、を例示することができる。
【0031】
他のゴムと変性重合体ゴムとからなるゴム組成物中の後者の割合は、両者の合計量を100重量%として、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。該割合が10重量%未満であると、得られるゴム組成物の反撥弾性が改良され難く、加工性も良くない。
【0032】
上記添加剤の種類や添加量は、得られるゴム組成物の使用目的に応じて決めればよい。添加剤として、ゴム工業で常用されている、硫黄のような加硫剤;ステアリン酸;亜鉛華;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤のような加硫促進剤;有機過酸化物;HAF及びISAFのようなグレードのカーボンブラックの如き補強剤;シリカ;炭酸カルシウム及びタルクのような充填剤;伸展油;加工助剤;並びに、老化防止剤、を例示することができる。カーボンブラックやシリカの添加量は、変性重合体ゴム、または、変性重合体ゴムと他のゴムとの合計量100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部である。該添加量が10重量部未満であると、ゴム成分に対する補強効果が不十分であり、150重量部を越えると、得られる組成物の伸びが低下することがある。
【0033】
上記ゴム組成物の製造方法は制限されない。該製造方法として、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を例示することができる。得られるゴム組成物は通常加硫され、加硫されたゴム組成物として使用される。
【0034】
本発明の製造方法によって得られる変性重合体ゴムは反撥弾性および加工性に優れているので、該ゴムからなるゴム組成物は、省燃費性に優れた自動車タイヤ用ゴムとして最適である。該ゴム組成物はまた、靴底用、床剤用および防振ゴム用のような用途として使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、これに1,3−ブタジエン1500g、スチレン500g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、および、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液)11.3mmolを添加し、攪拌下に65℃で3時間重合し、重合混合物を得た。
重合混合物に[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン11.3mmolをテトラヒドロフラン10mlに溶解させたものを迅速に添加し、攪拌下に60分間反応させた後、メタノール10mlを加えて、更に5分間攪拌し、反応混合物を得た。
反応混合物を取り出し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(住友化学製、商品名スミライザーBHT)10gを加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、変性重合体ゴムを得た。得られたゴムの高分子量成分は26.5%であった。
【0036】
実施例2
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、これに1,3−ブタジエン1500g、スチレン500g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、および、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液)11.3mmolを添加し、攪拌下に65℃で3時間重合し、重合混合物を得た。
重合混合物に[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン11.3mmolをテトラヒドロフラン5mlとヘキサン5mlの混合溶液に溶解させたものを迅速に添加し、攪拌下に60分間反応させた後、メタノール10mlを加えて、更に5分間攪拌し、反応混合物を得た。
反応混合物を取り出し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(住友化学製、商品名スミライザーBHT)10gを加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、変性重合体ゴムを得た。得られたゴムの高分子量成分は31.1%であった。
【0037】
実施例3
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、これに1,3−ブタジエン1500g、スチレン500g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、および、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液)11.3mmolを添加し、攪拌下に65℃で3時間重合し、重合混合物を得た。
重合混合物にテトラヒドロフラン10mlを添加し、その後[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン11.3mmolをヘキサン10mlに溶解させたものを迅速に添加し、攪拌下に60分間反応させた後、メタノール10mlを加えて、更に5分間攪拌し、反応混合物を得た。
反応混合物を取り出し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(住友化学製、商品名スミライザーBHT)10gを加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、変性重合体ゴムを得た。得られたゴムの高分子量成分は31.6%であった。
【0038】
比較例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、これに1,3−ブタジエン1500g、スチレン500g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、および、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液)11.3mmolを添加し、攪拌下に65℃で3時間重合し、重合混合物を得た。
重合混合物に [3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン11.3mmolをヘキサン10mlに溶解させたものを迅速に添加し、攪拌下に60分間反応させた後、メタノール10mlを加えて、更に5分間攪拌し、反応混合物を得た。
反応混合物を取り出し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(住友化学製、商品名スミライザーBHT)10gを加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、変性重合体ゴムを得た。
得られたゴムの高分子量成分は36.2%であった。
【0039】
実施例1〜3で得た変性重合体ゴム、および、比較例1で得た重合体ゴムについて以下の測定を行い結果を表1にまとめた。
【0040】
1.ムーニー粘度
JIS K−6300に準拠して100℃にて測定した。
2.ビニル含量
赤外分光分析法により測定した。
3.スチレン単位の含量
屈折率法により測定した。
4.カップリング率
ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより、測定曲線における高分子量分の面積と、低分子量分の面積との面積比から求めた。
【0041】
【表1】


*1 変性化合物
A:[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程により、変性ジエン系重合体ゴムを得る際、工程2の前に環状、脂肪族又は芳香族エーテルを添加すること、もしくは工程2で用いる式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を環状、脂肪族又は芳香族エーテルを含む溶液として加えること、により工程2の反応を速やかに進行させ、得られる変性ジエン系重合体ゴムの高分子量成分の生成量を制御する変性ジエン系重合体ゴムの製造方法。
工程1:アルカリ金属触媒の存在下、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させ、アルカリ金属末端を有する活性重合体を得る工程
工程2:該活性重合体と、下式(1)(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は炭素数が1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、nは0又は1〜10の整数を表し、Aは活性水素を持たない極性官能基を表す。)で表されるアルコキシシラン化合物を反応させて、変性重合体ゴムを製造する工程

【請求項2】
請求項1において、用いるエーテルがテトラヒドロフランである請求項1記載の変性重合体ゴムの製造方法。
【請求項3】
1及びR2が独立にメチル基、又はエチル基であり、R3がメチル基、エチル基、メトキシ基、又はエトキシ基であり、nが2、3又は4であり、AがN置換の活性水を持たない官能基である請求項1記載の変性重合体ゴムの製造方法。

【公開番号】特開2006−257261(P2006−257261A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76613(P2005−76613)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】