説明

変性ブチルゴム組成物

【課題】ブチルゴムにニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物をグラフトさせ、更に多官能アクリレートを反応させて得られる過酸化物架橋可能な変性ブチルゴムの架橋物の機械的強度を向上させる。
【解決手段】ブチルゴムを、(a)酸素の存在下に常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(b)ラジカル開始剤及び(c)二官能性以上のラジカル重合性モノマーと加熱混合することにより変性し、更に(d)成分(c)とは異なる二官能性以上のラジカル重合性モノマーを配合してなる変性ブチルゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性ブチルゴム組成物に関し、更に詳しくは架橋物の機械的強度、耐溶媒透過性及び耐熱性が改良された変性ブチルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは先きにブチルゴムにニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物をグラフトさせ、更に多官能アクリレートを反応させることにより得られた変性ブチルゴムが過酸化物架橋可能であることを見出した(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特願2006−131780号出願(平成18年5月10日出願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は前記変性ブチルゴムにおいて、その架橋物の機械的強度を向上させ、更に耐溶媒透過性及び耐熱性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、ブチルゴムを、(a)酸素の存在下に常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(b)ラジカル開始剤及び(c)二官能性以上のラジカル重合性モノマーと加熱混合することにより変性し、更に(d)成分(c)とは異なる二官能性以上のラジカル重合性モノマーを配合してなる変性ブチルゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本発明者らが先きに開発したブチルゴムにニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物をグラフトさせ、更に多官能アクリレートを反応させることにより得られた過酸化物架橋可能である変性ブチルゴムに対して、ブチルゴムの変性時に用いたアクリレートとは異なる多官能アクリレートを配合することにより、その架橋物の機械的強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、ブチルゴムに、ニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物をグラフトさせ、更に多官能アクリレートを反応させることにより得られた過酸化物架橋可能な変性ブチルゴムに対して、変性時に用いたアクリレートとは異なる多官能アクリレートを配合することにより、その架橋物の機械的強度を向上させることができることを見出し、更に耐溶媒透過性及び耐熱性を向上させることができることを見出した。
【0008】
本発明によって変性するブチルゴムは、いわゆるブチルゴム(IIR)と呼ばれるイソブチレンと少量(ゴム全体の例えば0.6〜2.5モル%)のイソプレンとの共重合体ゴム又は塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのその誘導体で、これらは業界においてよく知られており、多数の市販品もある。
【0009】
本発明において使用する酸素の存在下に常温で安定なニトロキシドラジカルを分子中に有する化合物(a)としては、これらに限定するわけではないが、以下の化合物を例示することができる。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
(上記式(1)〜(6)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、チオール基、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、カルボキシル基、カルボニル基含有基(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタン酸、無水フタル酸などの環状酸無水物)、アミド基、エステル基、イミド基、ニトリル基、チオシアン基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、ニトロ基などの官能基を含む有機基を示す。)
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
その他の例をあげれば以下の通りである。
【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

【0023】
【化12】

【0024】
【化13】

【0025】
本発明において使用する化合物(a)の使用量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対し0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.005〜0.1モルであるのが更に好ましい。この使用量が少ないとブチルゴムの変性量が低くなるおそれがあり、逆に多いと後の架橋が進行しなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0026】
本発明において使用することができるラジカル開始剤(b)としては、上記化合物(a)をブチルゴムの分子鎖に導入することができる任意のラジカル開始剤を用いることができ、具体的にはベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピパレート、t−ブチルパーオキシピパレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジサクシン酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジベンゾイルパーオキサイドの混合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレートなどを例示することができる。また、レドックス触媒の作用により低温で分解が可能なもののうち代表的なものとしては、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどを例示することができる。これらを反応系(混合系、接触系)に添加することによってブチルゴムに炭素ラジカルを発生させることができ、安定なフリーラジカルを有する化合物(a)がその炭素ラジカルと反応することにより、変性ブチルゴムが得られる。
【0027】
本発明において使用するラジカル開始剤(b)の添加量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対し、好ましくは0.001〜0.5モル、更に好ましくは0.005〜0.2モルである。この配合量が少な過ぎるとブチルゴム鎖からの水素原子引抜き量が低くなるおそれがあり、逆に多過ぎるとブチルゴムの主鎖が分解し、分子量が大きく低下するおそれがあるので好ましくない。
【0028】
本発明において使用する二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)としては特に限定はないが例えばエチレンジ(メタ)アクリレート(ここでエチレンジ(メタ)アクリレートという表記はエチレンジメタアクリレート及びエチレンジアクリレートの両方を含んでいる。以下、化合物が変わっても同様)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリル(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンジ(メタ)アクリレート、各種ウレタン(メタ)アクリレート、各種金属(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−フェニレンジマレイミド、ビスマレイミドジフェニルメタン、N,N’−フェニレンジアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートなどをあげることができる。これらのうち分子中に電子吸引基(例えばカルボニル基(ケトン、アルデヒド、エステル、カルボン酸、カルボン酸塩、アミド)、ニトロ基、シアノ基など)を含むモノマーが変性率を高めるという観点から好ましい。
【0029】
前記二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)の使用量には特に限定はないが、変性しようとするブチルゴム100gに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.005〜0.2モルであるのが更に好ましい。この使用量が少な過ぎると後の架橋が進行しないおそれがあり、逆に多過ぎると架橋物の物性が悪化するおそれがあるので好ましくない。
【0030】
本発明において使用する二官能性以上のラジカル重合性モノマー(d)としては、特に限定はないが、前述のラジカル重合性モノマー(c)と同じものをあげることができるが、本発明では後の架橋物の機械的強度を向上させるために二官能性以上のラジカル重合性モノマー(d)は二官能性以上のラジカル重合性モノマー(c)とは異なるものを使用するのが好ましい。
【0031】
前記二官能性以上のラジカル重合性モノマー(d)の使用量には特に限定はないが、ブチルゴム100gに対して0.001〜0.5モルであるのが好ましく、0.005〜0.2モルであるのが更に好ましい。この使用量が少な過ぎると所望の機械的強度の向上が発現しないおそれがあるので好ましくなく、逆に多過ぎると架橋物の物性が悪化するおそれがあるので好ましくない。
【0032】
本発明において、ブチルゴムを、前記化合物(a)、開始剤(b)及びモノマー(c)で変性する方法には特に限定はないが、例えば以下のようにして変性することができる。予備混合したブチルゴム、化合物(a)、開始剤(b)の混合物を窒素置換した密閉式混練機中で、150〜220℃の温度で反応させ、一旦温度を下げた後、モノマー(c)を添加した後、再度窒素置換を行い、120〜220℃の温度にて混練、反応させることにより所望の変性ブチルゴム組成物を得ることができる。また、ブチルゴム、化合物(a)、開始剤(b)、モノマー(c)を同時に混練して反応を行うこともできる。本発明によれば、次いでモノマー(d)を混練して反応させることができる。なお、上記反応混練は二軸押出型混練機、一軸押出型混練機、ロールなどを用いて行なうこともできる。
【0033】
本発明の変性ブチルゴム組成物には前記変性ブチルゴムを含むゴム成分100重量部に対し、架橋剤(例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどの有機過酸化物及びアゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、アゾビス−シアン吉草酸、1,1’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ系ラジカル開始剤など)を、好ましくは0.05〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部配合するのが好ましい。
【0034】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0036】
使用原料
IIR:ブチルゴム〔ランクセス(株)製、BUTYL301〕
1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:〔化薬アクゾ(株)製、パーカドックス14−G〕
OH−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル〔旭電化工業(株)製、LA7RD〕
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:〔サートマー(株)製、SR−355〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:〔新中村化学工業(株)製、A−DPH〕
【0037】
変性IIR組成物の調製例1(IIR−GTS)
IIR 350.0g、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン24.2g、OH−TEMPO32.2gを60℃に温度を設定した密閉型バンバリーミキサーに入れ10分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリーミキサー中で混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を165℃まで上昇させ20分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行うことにより、TEMPO部位の導入を確認した。その導入率は0.360mol%であった。一旦反応系を150℃にし、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(SR−355)44.9gを添加して混練しながら、5分間窒素置換した。混練しながら温度を185℃まで上昇させ15分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いてIR分析並びに1H−NMR分析を行った。1720cm−1付近にエステルのカルボニル由来の吸収が観測され、1H−NMRからは、6.39、6.10、5.96、4.12並びに3.30ppm付近にSR−355由来のシグナルが観測され、SR−355が3個のオレフィンを残す構造で導入されていることが確認された。その導入率は0.190mol%であった。
【0038】
変性IIR組成物の調製例2(IIR−GTH)
IIR 350.0g、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン24.2g、OH−TEMPO32.2gを60℃に温度を設定した密閉型バンバリーミキサーに入れ10分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリーミキサー中で混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を165℃まで上昇させ20分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行うことにより、TEMPO部位の導入を確認した。その導入率は0.360mol%であった。一旦反応系を150℃にし、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A−DPH)18.0gを添加して混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を185℃まで上昇させ15分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いてIR分析並びに1H−NMR分析を行った。1720cm−1付近にエステルのカルボニル由来の吸収が観測され、1H−NMRからは、6.40、6.09、5.82、4.11並びに3.32ppm付近にA−DPH由来のシグナルが観測され、A−DPHが5個のオレフィンを残す構造で導入されていることが確認された。その導入率は0.0564mol%であった。
【0039】
実施例1〜4、参考例1〜2及び比較例1〜3
サンプルの調製
表Iに示す配合(重量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を150ccのニーダーで6分間混練し、これに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練して、ゴム組成物を得た。
【0040】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で180℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0041】
ゴム物性評価試験法
架橋ゴムシートの状態:目視により判定した。
【0042】
50%モジュラス(MPa):シートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K 6251に準拠して50%モジュラスを測定した。
破断強度(MPa):シートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K 6251に準拠して破断時の強度を測定した。
圧縮永久歪(%):JIS K 6251に準拠して、D硬度測定サンプルと同様の成型条件で所定形状のサンプルを作製し、105℃で72時間、25%圧縮後の圧縮永久歪(%)を測定した。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、ブチルゴムにニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物をグラフトさせ、更に多官能アクリレートを反応させることにより得られた過酸化物架橋可能である変性ブチルゴムに対して、ブチルゴムの変性時に用いたアクリレートとは異なる多官能アクリレートを配合することにより、その架橋物の機械的強度を向上させることができるので、耐熱性、低圧縮永久歪に優れたタイヤチューブ、自動車用部品、キュアリングバッグ類、薬栓、ホース類、電線、電気部品、電気部品の封止材などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴムを、(a)酸素の存在下に常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(b)ラジカル開始剤及び(c)二官能性以上のラジカル重合性モノマーと加熱混合することにより変性し、更に(d)成分(c)とは異なる二官能性以上のラジカル重合性モノマーを配合してなる変性ブチルゴム組成物。
【請求項2】
成分(a)及び(b)を先ずブチルゴムに添加して加熱混合した後、成分(c)を更に加熱混合する請求項1に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項3】
前記二官能以上のラジカル重合性モノマー(c)が電子吸引基を有する請求項1に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項4】
架橋剤を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100重量部に対して架橋剤0.05〜15重量部を含む請求項1〜4項のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100重量部に対して補強充填剤5〜300重量部を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ブチルゴム組成物。

【公開番号】特開2009−84475(P2009−84475A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257532(P2007−257532)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】