説明

変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマー、これを含有する組成物、これを調製する方法、及び硬化製品

ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーのアセチレン結合への、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の選択的付加によって得ることができるポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプの被毒変性ポリマー。これらの変性ポリマーを含有する組成物。これらの変性ポリマーを調製する方法。ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプの新規な自己被毒ポリマー。前記変性ポリマー又は自己被毒ポリマーの熱処理によって得ることができる硬化製品。ポリマー及び硬化製品は、優れた熱特性を保持しながら、改善された機械特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプの変性ポリマーに関する。
【0002】
また、本発明は、この変性ポリマーを含有する組成物に関する。
【0003】
また、本発明は、この変性ポリマーを調製する方法に関する。
【0004】
また、本発明は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプの新規な自己被毒(self-poisoned)ポリマーに関する。
【0005】
最後に、本発明は、上記変性ポリマー又は自己被毒ポリマーの熱処理によって得ることができる硬化製品に関する。
【0006】
本発明の技術分野は、熱安定性プラスチック、すなわち、例えば、600℃までの高温に耐え得るポリマーの技術分野と定義することができる。
【背景技術】
【0007】
この数十年の間に、かかる熱安定性プラスチックに対する産業界、特に電子分野及び航空宇宙分野からのニーズがますます強くなってきている。
【0008】
かかるポリマーは、同様の用途で従来使用されてきた材料の欠点を克服するために開発が進められてきた。
【0009】
具体的には、鉄、チタン及びスチールなどの金属は耐熱性が非常に高いが、それらは重いことでよく知られている。アルミニウムは軽量であるが、耐熱性が低い(すなわち、約300℃までである)。SiC、Si及びシリカなどのセラミックスは、金属より軽く、耐熱性も非常に高いが、成形することができない。軽量で、成形可能で、且つ良好な機械特性を有する多くのプラスチックが合成されてきたのは、このような理由からであって、それらのプラスチックは実質的に炭素系ポリマーである。
【0010】
ポリイミド類は、全てのプラスチックの中でも耐熱性が最も高く、その熱変形温度は460℃にもなるが、現在知られている中で最も安定なものであるとして挙げられるこれらの化合物は、非常に使いにくい。ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾチアゾール及びポリベンズオキサゾールなどの他のポリマーもポリイミドと同等に耐熱性がより高いが、それらは成形不能であるし、可燃性である。
【0011】
シリコーン又はカルボシランなどのケイ素系ポリマーについても精力的に研究されてきた。ポリ(シリレンエチニレン)化合物などのそれらのポリマーは、炭化ケイ素SiCタイプのセラミックスの前駆体、貯蔵化合物(reserve compound)及び導電材料として一般に使用される。
【0012】
文献[4]において、フェニルシランとm−ジエチニルベンゼンとの間の脱水素カップリングによる重合反応を含む合成方法により調製されるポリ[(フェニルシリレン)エチニレン−1,3−フェニレンエチニレン](又はMSP)が、著しく高い熱安定性を有していることが最近になって示された。このことは、文献[1]において確認され、そこでは、以下の式(A)で表される繰り返し単位を含むポリ(シリレンエチニレンフェニレンエチニレン)が有機化合物にとって優れた熱安定性を有することをさらに一般的に示している。
【0013】
【化1】

【0014】
金属触媒を使用した標準的な方法を経由してシラン官能基とジエチニルベンゼンとを含むポリカルボシランを合成すると、大量の金属触媒残分(trace)を含む純度の低いポリマーが得られ、その金属触媒がポリマーの熱特性を大きく損なってしまう。
【0015】
また別の改良された合成方法が文献[2]に紹介されている。それらはパラジウム触媒を用いた合成であるが、実際は非常に限定された数の特定のポリマー、例えば、ケイ素が2つのフェニル又はメチル基を有しているものにしか適用できない。
【0016】
具体的には、繰り返し単位が上記の式(A)で表されるような化合物は、この方法では合成することができないということに注目されたい。かかる化合物のSiH結合は、反応性が極めて高く、多くの転位及び反応を起こし得るので、非常に好都合であることが見出された。
【0017】
式(A)の繰り返し単位を含む化合物を得ることは、特に困難である。
【0018】
塩化銅及びアミンをベースにした触媒系の存在下で、シランとアルキンとをクロス脱水素カップリング(cross-dehydrocoupling)又は重縮合させる別の方法が、文献[3]に記載されている。しかし、この方法でも、幾つかのポリマーに限定され、部分的に架橋された構造で、質量平均分子量が非常に高い(10〜10)化合物になってしまう。これらの構造的な欠陥は、それらポリマーの溶解性及び熱特性の両方を大きく損なわせる。
【0019】
上記の方法の欠陥を克服し、特に熱安定性の面で優れ、そして明瞭に区別できる特性を有し、微量の金属も含まない純粋な化合物を調製することを目的とした別の合成方法が、上記の文献[4]で提案された。この方法では、ケイ素が水素原子を有する上記の式(A)の化合物を本質的に合成することが可能となる。文献[4]による方法は、MgOなどの金属酸化物の存在下で、官能化ヒドロシランをジエチニルタイプの化合物で脱水素させることによる重縮合であって、以下の反応スキーム(B)に従う。
【0020】
【化2】

【0021】
この方法によれば、先に説明したように優れた熱安定性を有する弱く架橋したポリマーが得られるが、その質量分布は非常に広い。
【0022】
また別の、より最近の刊行物[1]では、同じ著者等が、方法(B)や、他のさらに有利な方法を経由して−Si(H)−C≡C−単位を含む一連のポリマーを調製している。他のさらに有利な方法は、ジクロロシランとジエチニレン有機マグネシウム試薬とを縮合反応させ、次いで得られた生成物をモノクロロシランと反応させ、さらに加水分解させるものであり、以下の反応スキーム(C)に従う。
【0023】
【化3】

【0024】
方法(B)とは対照的に、方法(C)では、構造的欠陥がなく、良好な収率及び狭い質量分布を有するポリマーを得ることが可能となる。
【0025】
このプロセスにより得られる化合物は、全体的に純度が高く、十分に特徴的な熱特性を有している。それらは熱硬化性ポリマーである。
【0026】
また、上記の文献には、ガラス、炭素又はSiC繊維で強化された上述のポリマーの調製についても開示されている。
【0027】
極めて一般的な繰り返し単位(D):
【0028】
【化4】

【0029】
(ここで、R及びR’は有機化学において公知の多種の基である)を含むポリマーに関連する特許が、文献[1]及び[4]の著者等に付与されている。これは文献:欧州特許第0 617 073 B1号(米国特許第5 420 238 A号に対応する)である。
【0030】
これらポリマーは、スキーム(C)の方法によって本質的に調製され、場合によってはスキーム(B)の方法によって調製され、それらは500〜1,000,000の重量平均分子量を有している。また、上記文献には、これらのポリマーをベースとした硬化製品、及び熱処理によるそれらの調製についても記載されている。上記文献におけるポリマーは、熱安定性ポリマー、耐火性ポリマー、導電性ポリマー、及びエレクトロルミネセンス素子用の材料として使用できることが示されている。事実、そのようなポリマーは、セラミックスの有機前駆体として本質的に使用されると考えられる。
【0031】
特に文献:欧州特許第0 617 073 B1号において調製されたポリマーの優れた熱安定性、該ポリマーを、熱安定性複合材料の有機マトリックスを形成する樹脂を構成することができるようにさせる。
【0032】
複合材料を製造する多くの技法がある。
【0033】
非常に一般的な条件(term)としては、各種の方法に射出法(特にRTM)又はプリプレグ圧縮法が含まれる。
【0034】
プリプレグとは、薄い厚さの、樹脂を含浸させた繊維から成る半仕上げ製品である。高性能複合材料構造を製造する目的のプリプレグには、少なくとも50容積%の繊維が含まれる。
【0035】
また、使用時には、強化用シートに浸透して繊維を適切に含浸し、それによって繊維の歪みを防ぎ、その完全性を保持するようにするために、このマトリックスは低粘度でなければならない。強化用繊維は、適切な溶媒に樹脂を溶解させた溶液又は純粋な樹脂溶融物のいずれかで含浸するが、後者は「ホットメルト」法である。熱可塑性マトリックスを用いてプリプレグを製造する技法は、ポリマーの形態学及びレオロジー特性によって実質的に支配される。
【0036】
射出成形は、金型と対向金型(counter-mould)とから成るインプリント(imprint)中に予め配置した織物強化材の中に、液状樹脂を射出することから成る方法である。最も重要なパラメータは粘度であって、一般に50〜250℃射出温度で100〜1,000mPa・sの間でなければならない。
【0037】
これら2通りの技法では、このように粘度が決定的なパラメータであって、それによって使用するポリマーの性能が左右される。
【0038】
非晶質ポリマーは、完全に秩序が乱れた骨格構造を持つ高分子(macromolecule)に相当する。それらは、ガラス状態からゴム状態への変化に相当するガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられる。しかし、Tgを超える温度では、熱可塑性プラスチックは、大きなクリープ強度により特徴付けられる。
【0039】
文献:欧州特許第0 617 073 B1号において調製されたポリマーは、粉体形状の化合物である。本発明者等は、上記文献に記載された合成を再現することによって、調製されたポリマーが50℃の領域のガラス転移温度を有しているであろうことを確かめた。
【0040】
この温度未満では、このポリマーの粘度は無限であり、この温度を超えると、温度が高くなるにつれて粘度が徐々に低下する。
【0041】
しかし、この粘度低下は、上記で既に述べたRTMや予備含浸などの、複合材料の分野で従来用いられている方法で、ポリマーを使用することを可能とするには充分ではない。
【0042】
Buvat等による文献:フランス特許第2 798 662 A号には、特許:欧州特許第0 617 073 B1号に記載されているポリマーの構造と同様の構造を有するポリマーが記載されている。すなわち、該ポリマーは、特に、熱安定性を有していながら、例えば、100〜120℃の温度(この温度は、射出成形又は含浸法において一般に使用される温度である)で、使用可能、操作可能又は「加工可能」なくらい粘度が十分に低いという有利な特性を有している。
【0043】
文献:フランス特許第2 798 622A号に記載されているこれらのポリマーは、以下の式(I):
【0044】
【化5】

【0045】
又は、以下の式(Ia):
【0046】
【化6】

【0047】
に相当する。
これらのポリマーは、基本単位部分としてジエチニルベンゼンに結合した官能基化シランを含有し、鎖の端部に特定のフェニルアセチレン官能基を有する低質量のポリマーであると定義される。
【0048】
これらの式で使用されている各種記号の意味については、文献:フランス特許第2 798 662 A号を参照されたい。フランス特許第2 798 662 A号によるポリマーは、鎖制限剤(chain-limiting agent)に由来する基Yが鎖末端に存在することを基本的に除いて、文献:欧州特許第0 617 073 B1号のポリマーと実質的に同様の構造を有していることに注目することが重要である。フランス特許第2 798 622 A号の熱安定性ポリマーは、完全に規定され且つ調節可能なレオロジー特性を有しているので、熱安定性複合材料用のマトリックスとして使用することができる。これらポリマーの一連の特性については、フランス特許第2 798 622 A号に記載されているので参照されたい。
【0049】
また、文献:フランス特許第2 798 622 A号には、これら熱安定性ポリマーの合成方法も記載されている。この開発された技法によって、複合材料の技術的な作業制約の要因としてのポリマーの粘度を要望通りに調節することが可能となる。この特性は、ポリマーの分子量と密接に関係している。低分子量のポリマーでは、低粘度が観察される。分子量の調節は、全体の反応収率には影響を及ぼすことなく重合反応をブロックする反応種(reactive species)を反応媒体に添加することによって達成できる。この種は、ポリマーを合成するために使用する2つの試薬のうちの1つの類似体であるが、カップリングを可能とする官能基を1つしか有していないものである。この種をポリマー鎖中に導入すると、成長が停止する。したがって、鎖制限剤(chain limiter)の計測された添加によって、ポリマーの長さを容易に調節することができる。上記ポリマーの合成方法の詳細については、文献:フランス特許第2 798 622 A号に記載されているので参照されたい。
【0050】
さらに、イトウ(Itoh)による文献:欧州特許第0 617 073 B1号、及びBuvatによる文献:フランス特許第2 798 622 A号の両方で調製されたプレポリマーは、熱硬化性であるので、これらの材料の架橋は、加熱により活性化される。
【0051】
この現象に含まれる反応は2つの機構に主に従っており、それについては、イトウにより公表された記事[5]に記載されている。
【0052】
第1の機構はディールス・アルダー反応であって、一方は芳香核に結合したアセチレン結合、及び他方は別の芳香族の結合を含む。この反応は、次の様式で説明される。
【0053】
【化7】

【0054】
この反応によってナフタレン単位が形成される。この反応は、R、R、R又はRの性質とは無関係に起こる。
【0055】
したがって、この機構によって得られる構造は芳香族性が高く、多くの不飽和結合を含んでいる。これらの特徴は、これらのポリマーに観察される優れた熱特性の要因となる。
【0056】
第2の機構は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)プレポリマーの架橋反応の間に起きるヒドロシリル化反応であり、SiH結合とアセチレン三重結合とが関与する。この反応は、次の様式で説明される。
【0057】
【化8】

【0058】
この反応は、ケイ素がSiH結合を有する化合物の場合にのみ起きる。
【0059】
後者の化合物に関し、ヒドロシリル化反応は、ディールス・アルダー反応よりも低い温度(例えば、150〜250℃)で活性化される。
【0060】
ポリマー又は高分子ネットワークは、とりわけ、架橋密度と、2つの架橋点又は結合点(node)を分離する鎖単位の長さとによって定義される。これらの特性が、ポリマーの機械特性の大部分を支配している。したがって、鎖単位が短く、高度に架橋されたネットワークは、低変形能を有する材料の範囲に分類される。フェノール樹脂又はフェノールシアネートエステル樹脂は、このカテゴリーの材料の一部を特に形成する。
【0061】
ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)の場合、架橋には、芳香核によって単に分離されただけのアセチレン三重結合が含まれる。したがって、架橋密度は非常に高く、結合点間(inter-node)の鎖単位は非常に短い。したがって、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)をベースとした硬化材料は、低変形能を有するポリマーマトリックスに分類される。
【0062】
架橋密度は、ポリマーの使用時に適切な熱処理をすることによって調節することができる。具体的には、高分子の鎖の移動度がもはや充分ではなくなったときに、ポリマーの架橋が停止する。この移動度は、作業温度がそのネットワークのガラス転移温度よりも高くなれば充分であると理解されたい。したがって、そのガラス転移温度は作業温度を超えることができず、そのため、架橋密度は、ポリマーの硬化温度によって調節される。
【0063】
しかし、架橋不足の材料は、作業温度より高い温度で使用すると構造に変化が起きる不安定な材料である。
【0064】
したがって、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)の機械特性は、熱処理で調整することが困難である。
【0065】
しかし、ケイ素によって支持された化学基の性質によって、これらの特性を調整することが可能である。特に、長い鎖は、可塑剤として働き、そして関連材料の剛性を減少させる。しかし、この原則も、熱安定性が影響を受けるため、ポリマーの熱安定性の点で制限に直面する。
【0066】
文献:フランス特許第2 816 624 A号は、繰返し単位として、とりわけ、2つのアセチレン単位と、少なくとも1つのケイ素原子と、架橋プロセスに関与しない不活性スペーサーとを含むポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーについて記載している。スペーサーの役割は、結合点間の架橋鎖の長さを増大させて、ネットワーク内でのより大きな移動度と、したがって、得られる硬化材料のより大きな可撓性とに寄与することである。また、スペーサーの性質は、熱特性を著しく変更することなく、機械特性を変更することを可能にする。この文献で定義されるポリマーは、文献:フランス特許第2 798 662 A号に従って、鎖の端部にアセチレン官能基を任意に含むことができる。この文献の繰返し単位及びポリマーを表すことができる様々な式に関して、文献:フランス特許第2 816 624 A号の説明を参照することができる。
【0067】
しかし、文献:フランス特許第2 816 624号のポリマーを含むネットワークの歪容量(strain capacity)は顕著に増大されることが分かるが、これらのポリマーの熱安定性は頻繁に低下する。さらに、対応する硬化材料の機械特性は、300℃以上の温度における熱処理の間に低下する。
【0068】
文献:フランス特許第2 836 922 A号は、少なくとも1つのポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーと、ブレンドを硬化させたときにブレンド中で可塑化効果を発揮することが可能な少なくとも1つの化合物とのブレンドを含む組成物について記載している。
【0069】
ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーに加えて、ブレンドを硬化させた時にブレンド中で可塑化効果を発揮することが可能な化合物を含む特定のブレンドを調製することによって、例えば、文献:欧州特許第0 617 073 B1号及びフランス特許第2 798 622 A号に記載されているような、上記文献に先立って調製された硬化製品と比較すると、機械特性が著しく改良され、しかも影響を受ける熱特性がなく、熱特性が依然として優れたままの、化合物又は硬化製品が得られる。
【0070】
特に、文献:フランス特許第2 836 922 A号による組成物を熱処理することによって調製される硬化製品は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)を含むが可塑化効果を発揮することが可能な化合物を含まない組成物を熱処理することによって調製される硬化製品よりも、より柔軟で、より可撓性があり、且つ脆さが少ない。
【0071】
この文献の組成物のブレンド中に含まれる基本的な化合物は、このブレンドを硬化させたときに、ブレンド中で可塑化効果を発揮することが可能な化合物であると定義される。
【0072】
一般に、「ブレンドを硬化させたときに、ブレンド中で可塑化効果を発揮することが可能な化合物」という表現は、上記化合物を含まない硬化製品と比較して、硬化製品の「可塑的な」性質を(たとえ最小限の増加であっても)増加させる、すなわち、応力下で硬化製品から成る材料の変形能を増大させる各種化合物を意味する。
【0073】
これは、この文献による組成物から調製した硬化製品においては、同一のポリマーを含むが可塑化効果を発揮することが可能な上記化合物は含まない硬化製品と比較して、その化合物が、硬化製品の剛性及び硬度を下げ、且つ一方ではその柔軟性及び可撓性を上げる効果を発揮することを特に意味する。
【0074】
この文献によれば、「可塑化効果を発揮することが可能な」化合物は、特にプラスチック及びプラスチック加工の分野において一般に定義されているような「可塑剤」である必要はないということに注目することが重要である。
【0075】
特に、この化合物は、一般には、可塑剤であるとは一般に定義されないが、この文献の組成物の場合では、硬化製品中で可塑化効果を発揮するという意味で適正な化合物であるような数多くの化合物から選択することが可能である。
【0076】
しかし、可塑剤として本来知られているようなものも、上記化合物として使用することもできる。
【0077】
すなわち、先に述べたように、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーから調製された硬化製品は、極端に堅く、剛性で、且つ脆いので、そのポリマーよりは相対的に柔軟ではあるが「可塑剤」には従来分類されない化合物をかかる製品中に加えることで、そのポリマーネットワークの移動度を増大させ、その結果、可塑化効果を充分に発揮させることができる。
【0078】
ブレンド中に含まれる化合物は、本質的に「可塑剤」ではないが、最終硬化材料中では「可塑剤」としての機能を実際には示している。
【0079】
この文献において可塑化効果を発揮することが可能な化合物は、有機及び無機樹脂、並びにポリマーから一般に選択される。
【0080】
有機ポリマーは、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから一般に選択される。
【0081】
熱可塑性ポリマーは、例えば、フルオロポリマーから選択することができる。
【0082】
熱硬化性ポリマーは、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド(ポリ(ビスマレイミド))、ポリイソシアネート、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン又はポリシロキサン、並びにその他の芳香族及び/又は複素環ポリマーから選択することができる。
【0083】
好ましくは、ポリマーなどの可塑化効果を発揮することが可能な化合物は、反応性化合物、すなわち、それ自体で反応することができるか、又は可塑化効果を発揮することが可能な他の化合物若しくはポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーと反応することができる化合物である。ポリマーなどの該反応性化合物は、アセチレン官能基及び水素添加シラン官能基から選択された、少なくとも1つの反応性官能基を一般に含む。
【0084】
好ましくは、反応性化合物は、水素添加シリコーン樹脂及びポリマー並びに/又は少なくとも1つのアセチレン官能基を含むシリコーン樹脂及びポリマーから選択される。シリコーンは、その高い耐熱性と、機械応力下でのその高い歪容量とで知られている。これらのシリコーン樹脂及びポリマーの詳細な定義については、文献フランス特許第2 836 922 A号の説明を参照することができる。
【0085】
この文献の組成物、すなわち、少なくとも1つのポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーと、ブレンドを硬化させたときにブレンド中で可塑化効果を発揮することが可能な少なくとも1つの化合物とのブレンドを含む組成物、換言すると「可塑化された」ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)樹脂は、ディールス・アルダー反応及びヒドロシリル化反応のための触媒の作用下で、(熱)架橋温度未満の温度で硬化させることもできる。特に、HPtCl、Pt(DVDS)、Pt(TVTS)及びPt(dba)など(DVDSはジビニルジシロキサンを表し、TVTSはトリビニルトリシロキサンを表し、dbaはジベンジリデンアセトンを表す)の白金ベースの触媒、並びにRh(CO)16又はRh(CO)12、ClRh(PPh)、Ir(CO)12及びPd(dba)などの遷移金属錯体は、ヒドロシリル化反応を触媒するために使用することができる。
【0086】
TaCl、NbCl又はMoClなどの遷移金属の五塩化物に基づく触媒はそれ自体で、ディールス・アルダータイプの反応を触媒するために有利に使用され得る。
【0087】
これらの反応の触媒は、低分子量、従って低沸点の「可塑化」化合物を使用することを可能にする。これらの化合物は、上記の可塑化効果を発揮することができる化合物から、当業者により容易に選択される。これらの「可塑剤」は、加工前にブレンドの粘度を低下させるために有利に使用される。
【0088】
上記文献:フランス特許第2 836 922 A号の組成物を硬化して得られる材料は、未変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーを硬化して得られる製品と比較して改善された機械特性を有する。このようにして硬化さてたネットワークの歪容量は、特に、かなり改善される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0089】
しかし、上記文献で得られる硬化材料の機械特性は、特にその変形能に関して、未だに不十分であり、これらの材料は高温にさらされると弱化(weakening)及び劣化(degradation)も被る。
【0090】
従って、これらのポリマーの有利な特性(特に、熱安定性)を全て有しながら、改善され、そして変性可能な機械特性も有するポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーが必要とされている。
【0091】
また、熱処理によって、特に破断歪み、さらに弾性係数(module of elasticity)及び破断(破壊)応力に関してその機械特性が改善された硬化製品を与えるポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプのポリマーが必要とされている。
【0092】
これらの改善された機械特性は、これらの硬化製品のその他の有利な特性、特に熱安定性及び加工性関して影響することなく獲得されなければならない。
【0093】
さらに、これらの機械特性は、弱化又は劣化を被ってはならず、硬化材料又はポリマーが、高温、例えば、300℃より高い温度にさらされる場合にも保持されなければならない。
【0094】
さらに、好ましくは、ポリマー及びそれを含む組成物は、射出成形法及び含浸法で通常使用される温度、例えば、100〜120℃の温度で、それらを加工可能及び取り扱い可能な程度に十分に低い粘度を有していなければならない。
【0095】
本発明の目的は、とりわけ上記の必要性を満足し、上記の要件を満たし、特に文献:欧州特許第0 617 073 B1号、フランス特許第2 798 622 A号、フランス特許第2 816 624 A号、フランス特許第2 816 623A号、及びフランス特許第2 836 922 A号によって表されるような従来技術の硬化製品、組成物及びポリマーの欠点、欠陥、制限及び不利益を有することのないポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)タイプの変性ポリマー、これらのポリマーの組成物、及びこれらのポリマーから作製された硬化製品を提供することである。
【0096】
また、本発明の目的は、従来技術の問題を解決する硬化製品、組成物及びポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0097】
この目的及びその他の目的は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーのアセチレン結合への、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の選択的付加により得ることができる(入手可能な)変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーによって、本発明に従って達成される。
【0098】
本発明によるポリマーは、変性又は「被毒」ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(「PEPES」)ポリマーと定義され得る。
【0099】
本発明によるポリマーは、上記必要性を全て満足し、先に定義された要件及び基準を満たし、且つ従来技術の未変性PEPESポリマーによりもたらされる問題を解決する。
【0100】
特に、本発明による変性ポリマー、さらにこれらの変性ポリマーから得られる硬化製品は、例えば、文献:欧州特許第0 617 073 B1号、フランス特許第2 798 622 A号、フランス特許第2 816 624 A号、フランス特許第2 816 623 A号、及びフランス特許第2 836 922 A号により表される従来技術の未変性ポリマーと比較した場合に、改善及び向上された機械特性を有するが、その熱特性は保持される。
【0101】
機械特性の改善は、硬化又は架橋材料の変形能に特に関係し、かなり向上される。
【0102】
ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーのアセチレン結合への、ただ1つの反応性官能基を含有する特定の化合物の選択的付加により得られる本発明による変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーは、従来技術では記載されていない。
【0103】
この付加は、PEPESポリマーの製造プロセス中、すなわち、PEPESポリマーをもたらす重合反応中よりも、調製済のPEPESポリマーにおいて起こる。ただ1つの反応性官能基を含有する化合物は、(未変性)PEPESポリマーと事後に反応し、これをもたらす重合プロセスには全く関与しない。
【0104】
本発明者等は、文献:フランス特許第2 836 922 A号に記載されるように、特にSi−H官能基化オリゴマーを用いた場合には、(未変性)PEPESポリマーの可塑化はアセチレン結合のいくつかを消費することを可能にするが、しかし、ディールス・アルダー反応を防止しないことを実証した。これらの反応は、高温、例えば、300℃以上で起こり、ポリマーから得られる硬化ネットワークの特性の弱化を助長する。
【0105】
本発明によるポリマーは、単官能性反応種の付加により調製される。
【0106】
驚くことに、この反応種の毒(poison)は、アセチレン結合により構成される全て又はいくつかの活性部位(これらのアセチレン活性部位は、ポリマーの架橋機構のうちの1つ、すなわちディールス・アルダー機構に必要な活性部位である)を選択的にブロックすることを可能にすることが分かる。
【0107】
より具体的には、本発明によるポリマーは、驚くことに、選択的付加によってアセチレン結合を排他的に、特に被毒させることが見出された単官能性化合物を用いて調製される。
【0108】
この被毒は、使用される単官能性化合物の量に、完全又は部分的に依存し得る。
【0109】
さらに、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物をPEPESポリマーに添加すると、驚くことに、アセチレン結合の消費により、架橋中に生じるディールス・アルダー機構の阻害がもたらされる。このタイプの反応は、例えば、PEPESポリマーの可塑化によっては防止されなかった。これらの反応の阻害は、架橋密度の制御につながることが分かる。
【0110】
本発明によると、反応点の濃度と、ひいては硬化ネットワークの最終架橋密度とが、こうして減少し、これは驚くことに、機械特性の全て、特に架橋材料の変形能及び破断応力を増大させる。
【0111】
さらに、架橋密度が低下するので、硬化材料の変性ネットワークの高分子移動度が増大し、系は、より急速にその最大転化率(conversion)に到達する。これは、その後に、高温、例えば、300℃よりも高い温度でのこれらネットワークの特性、特に機械特性の変化及び低下を制限する。この低下は、従来技術の、可塑剤が任意で添加されたポリマーの根本的な欠点の1つであった。
【0112】
本発明は、ネットワークの架橋密度の制御と、改善された機械特性に結び付けられる、ネットワークの有利な構造をもたらす特定の反応の促進/阻害とに基づいていると言うことができる。
【0113】
ただ1つの反応性官能基を含有する化合物は、唯一の反応性官能基が水素である化合物から有利に選択され、この化合物は、モノ水素添加シリカ系化合物(monohydrogenated siliceous compound)から好ましくは選択される。
【0114】
これらモノ水素添加シリカ系化合物は、以下の式に相当するモノ水素添加シランから選択され得る。
【0115】
【化9】

【0116】
式中、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表す。
【0117】
ただ1つの反応性官能基を含有する化合物が、上記で与えられる式に相当するモノ水素添加シランから選択される本発明による変性ポリマーは、特に、驚くべき効果を有する。これらの驚くべき効果は、後で与えられる実施例1及び3において特に詳述される。
【0118】
具体的には、さらに特にこれらのポリマーでは、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物によるその変性と本質的に関連して適用される処理は、硬化材料のヤング率及び破断(破壊)歪みの両方を増大させることを可能にし、これは、破断(破壊)応力の実質的な増大をもたらす。
【0119】
ヤング率及び破断歪みの両方におけるこのような同時増大は、従来技術では決して得られず、これらパラメータの一方のいくらかの増大は、これらパラメータの他方の低下によって達成される。
【0120】
したがって、従来技術では、例えば、破断時の伸びの増大は、ヤング率に関する損失によって常に達成される。
【0121】
本発明によって初めて、特に、上記の式に相当するモノ水素添加シリカ系化合物で変性されたポリマーから誘導された硬化製品に関して、2つのパラメータは同時に改善及び増大される。
【0122】
したがって、例えば、本発明によるポリマー及び硬化製品の挙動は、文献:フランス特許第2 636 922 A号で観察されたものとは非常に異なり、該文献では、可塑化効果の下で破断時の伸びが増大したときにヤング率(modulus)が実質的に低下され、破断応力のわずかな増大がもたらされる。
【0123】
また、シリカ系/モノ水素添加化合物は、以下の式に相当するモノ水素添加シロキサンから選択され得る。
【0124】
【化10】

【0125】
式中、R、R、R、R、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表し、n及びmは0〜1,000の整数を表す。
【0126】
また、モノ水素添加シリカ系化合物は、以下の式に相当するモノ水素添加シルセスキオキサンから選択され得る。
【0127】
【化11】

【0128】
式中、R、R、R、R、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表す。
【0129】
有利に、付加は、触媒の存在下で実行される。
【0130】
この触媒は、一般に、HPtCl、Pt(DVDS)、Pt(TVTS)又はPt(dba)のような(DVDSはジビニルジシロキサンを表し、TVTSはトリビニルトリシロキサンを表し、及びdbaはジベンジリデンアセトンを表す)白金ベースの触媒、並びにRh(CO)16又はRh(CO)12、ClRh(PPh)、Ir(CO)12及びPd(dba)のような遷移金属錯体から好ましくは選択されるヒドロシリル化反応触媒である。
【0131】
付加は、−20℃〜200℃、好ましくは30〜150℃の温度で、変性すべきポリマーの粘度及び反応性の関数として一般に行われる。
【0132】
使用されるただ1つの官能基を含有する化合物(化合物、被毒剤)の構造及び量は、本発明による変性ポリマーから得られる硬化ネットワークの性質及び特性、特に、機械特性を変更することを可能にする。以下に与えられる実施例、特に、実施例3は、300℃で2時間架橋させた材料において、例えば、3点曲げにおける機械特性の改善が得られることを実証する。
【0133】
化合物は、変性ポリマーの質量に対して、0.1質量%〜75質量%、好ましくは1質量%〜50質量%、さらに好ましくは10質量%〜40質量%を一般に示す。すなわち、被毒の度合いは、一般に、ポリマー及び被毒剤の性質の関数として、0.1%〜100%、好ましくは10%〜50%の間である。
【0134】
有利に、付加は、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0135】
付加を受けるポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(「PEPES」)ポリマー、すなわち付加前のポリマー、未変性ポリマーは、特に制限されず、既知のタイプのポリマーでよい。特に、文献:欧州特許第0 617 073 B1号、フランス特許第2 798 662 A号、フランス特許第2 816 624 A号、フランス特許第2 816 623 A号及びフランス特許第2 836 922 A号に記載されるポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)でよく、これらのポリマーに関するこれらの文献の関連部分は、本明細書中に含まれる。
【0136】
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、ポリマーは、以下の式(I):
【0137】
【化12】

【0138】
又は、以下の式(Ia)に相当してもよい:
【0139】
【化13】

【0140】
式中、中央の繰り返し単位のフェニレン基は、o−、m−又はp−の形態であってよく;Rは、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基(直鎖状若しくは分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基(直鎖状若しくは分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル、シクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル、プロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基のような)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基又はシラニル基で置換されていてもよく;nは0〜4の整数であり、qは1〜1,000の整数、例えば、1〜40の整数であり;R’及びR”は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R’及びR”の炭素原子に結合した水素原子の1つ以上が、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基と置換されていてもよく;これらの基の例は、上記Rのところで既に述べられており;且つYは、鎖制限剤に由来する基を表す。
【0141】
本発明のこの実施形態によるポリマーは、文献:フランス特許第2 798 662 A号に記載されているポリマーであり、文献:欧州特許第0 617 073 B1号のポリマーの構造と実質的に類似する構造を有しているが、基本的な違いは、鎖制限剤に由来する基Yが鎖末端に存在している点である。
【0142】
この構造的な違いは、これらポリマーの有利な特性にはほとんど影響を与えることなく、特にポリマーの熱安定性には実質的に影響がない。その一方で、具体的には、この基が鎖末端に存在することによって、式(I)又は(Ia)のポリマーが、所定の及び完全に規定された長さと、これによる分子量とを有するという効果が得られる。
【0143】
その結果、このポリマー(I)又は(Ia)もまた、完全に規定され、修正可能なレオロジー特性を有する。
【0144】
基Yの性質は、それが導入される元となった鎖制限剤の性質に依存し、式(I)のポリマーの場合には、Yは式(III)の基を表すことができる:
【0145】
【化14】

【0146】
式中、R’’’は、Rと同じ意味を有し、後者と同じであっても異なっていてもよく、n’はnと同じ意味を有し、後者と同じであっても異なっていてもよい。
【0147】
あるいは、式(Ia)のポリマーの場合には、Yは式(IV)の基を表すことができる:
【0148】
【化15】

【0149】
式中、R’、R”及びR’’’は、同一であっても異なっていてもよく、上記で既与えられた意味を有する。
【0150】
式(I)のポリマーの1つで特に好適なものは以下の式に相当するものである:
【0151】
【化16】

【0152】
式中、qは1〜1,000の整数、例えば、1〜40の整数である。
【0153】
本発明において使用されてもよいその他のポリマーは、所定の分子量のポリマーであって、式(Ia)のポリマーを加水分解することによって得られてよく、以下の式(Ib)に相当するものである:
【0154】
【化17】

【0155】
式中、R、R’、R”、n及びqは、上記で既に与えられた意味を有する。
【0156】
本発明のこの実施形態によるポリマー(I)、(Ia)及び(Ib)の分子量は、完全に規定されており、ポリマーの長さ、及びしたがってその分子量は、反応混合物への鎖制限剤の添加量を調節することによって容易に制御することが可能であり、ポリマー中の基Yの可変割合によって反映される。
【0157】
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、エチニレンフェニレンエチニレンシリレン繰り返し単位に対する、鎖末端における基Yのモル比は、一般に、0.002〜2である。この比は、好ましくは0.1〜1である。
【0158】
本発明のこの第1の実施形態によるポリマー(I)、(Ia)及び(Ib)の数平均分子量は、完全に規定されており、一般に400〜10,000、好ましくは400〜5,000であり、及びその重量平均分子量は、600〜20,000、好ましくは600〜10,000である。
【0159】
本発明の第2の実施形態によれば、変性前のポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーは、少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマーであって、前記繰り返し単位が2つのアセチレン結合、少なくとも1個のケイ素原子、及び少なくとも1つの不活性スペーサー基を含むポリマーであってよい。
【0160】
また、有利に、上記ポリマーは、鎖制限剤に由来する基(Y)を鎖末端に含む。
【0161】
「不活性スペーサー基」という用語は、架橋に関与せず、且つ架橋中に反応しない基を一般に意味する。
【0162】
このポリマーの繰り返し単位は、n回繰り返されてよい。ここで、nは、例えば、2〜1,000、あるいは2〜100の整数である。
【0163】
基本的には、本発明のこの実施形態におけるポリマーは、該ポリマーが後に関わる架橋プロセスに関与しない少なくとも1つのスペーサー基を含む少なくとも1つの繰り返し単位を含む。
【0164】
スペーサーの役割は、特に、ネットワーク内部における移動を可能とするのに充分な大きさの結合点間の(inter-node)架橋鎖単位として機能することである。
【0165】
すなわち、ポリマーの三重結合が同一の繰り返し単位に属していても、又は2つの異なる連続した繰り返し単位に属していても、少なくとも1つのスペーサー基が、ポリマーの三重結合を空間的に離すのに役立っているスペーサー基によって提供される、2つの三重結合又はアセチレン官能基の間の空間は、直鎖分子及び/又は単結合によって任意に分離された幾つかの結合した芳香核から一般的に成る。
【0166】
上記のように定義されたスペーサー基は、当業者によって容易に選択することができる。
【0167】
また、スペーサー基の性質を選択することによって、熱特性を顕著に変化させることなく、ポリマーの機械特性を調節することが可能となる。
【0168】
スペーサー基(複数であってよい)は、例えば、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基、ポリシロキサン基、ポリシラン基などを介して結合されている幾つかの芳香核を含む基から選択することができる。
【0169】
幾つかのスペーサー基がある場合には、それらが2つであることが好ましく、それらは同一のものであってもよいし、又は上記基の2つ以上の可能な全ての組合せから選択してもよい。
【0170】
したがって、選択したスペーサー基に依存して、本発明の組成物の第2の実施形態によるポリマーの繰り返し単位は、幾つかの式にあてはめることができる。
【0171】
本発明のこの第2の実施形態によるポリマーは、式(V)の繰り返し単位を含むポリマーであってよい:
【0172】
【化18】

【0173】
式中、中央の繰り返し単位のフェニレン基は、o−、m−又はp−の形態であってよく;Rは、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基(直鎖状若しくは分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基(直鎖状又は分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル又はシクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル又はプロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基、又はシラニル基で置換されていてもよく;R、R、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R、R、R及びRの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基で置換されていてもよく;これらの基の例は、既に先にRについて述べたものであり;nは、1〜4の整数であり、nは1〜10の整数、好ましくは1〜4の整数であり;この繰り返し単位は、n回一般に繰り返され、ここで、nは、例えば、2〜1,000の整数、あるいは2〜100の整数である。
【0174】
あるいは、本発明の第2の実施形態によるポリマーは、以下の式の繰り返し単位を含むポリマーであってもよい:
【0175】
【化19】

【0176】
式中、フェニレン基は、o−、m−又はp−の形態であってよく、R、R、R及びnは、上記で既に与えられた意味を有し、nは2〜10の整数である。
【0177】
この繰り返し単位は、n回一般に繰り返され、nは、例えば、2〜1,000の整数である。
【0178】
あるいは、本発明の組成物のこの第2の実施形態によるポリマーは、以下の式の繰り返し単位を含むポリマーであってもよい:
【0179】
【化20】

【0180】
式中、R及びRは、上記で既に与えられた意味を有し、Rは、例えば、6〜20個のCを含み、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基を介して結合された少なくとも2つの芳香核を含む基を表し、この繰り返し単位は、n回一般に繰り返され、nは上記で定義したものである。
【0181】
そあるいは、本発明のこの第2の実施形態によるポリマーは、以下の式の繰り返し単位を含むポリマーであってもよい:
【0182】
【化21】

【0183】
式中、R、R、R、R、R及びnは、上記で既に与えられた意味を有し、この繰り返し単位も同様にn回繰り返すことができる。
【0184】
最後に、本発明のこの第2の実施形態によるポリマーは、以下の式の繰り返し単位を含むポリマーであってもよい:
【0185】
【化22】

【0186】
式中、R、R、R及びnは、上記で既に与えられた意味を有し、この単位はn回繰り返すことができる。
【0187】
特に、上記の式(III)、(IV)及び(V)において、Rは、少なくとも1つの共有結合及び/又は二価の基によって分離された少なくとも2つの芳香核を含む基を表す。
【0188】
基Rは、例えば、以下の基から選択することができる:
【0189】
【化23】

【0190】
【化24】

【0191】
【化25】

【0192】
【化26】

【0193】
式中、Xは、水素原子又はハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)を表す。
【0194】
あるいは、本発明のこの第2の実施形態によるポリマーは、少なくとも1つの不活性スペーサー基を含む幾つかの異なる繰り返し単位を含んでもよい。
【0195】
上記の繰り返し単位は、上記で既に記載された式(V)、(Va)、(Vb)、(Vc)及び(Vd)の繰り返し単位から好ましくは選択される。
【0196】
上記の繰り返し単位は、それぞれx、x、x、x及びx回繰り返される。ここで、x、x、x、x及びxは、0〜100,000の整数を一般に表すが、ただし、x、x、x、x及びxの中の少なくとも2つは0以外である。
【0197】
また、幾つかの異なる繰り返し単位を含むこのポリマーは、式(Ve)の単位などの不活性スペーサー基を含まない1つ以上の繰り返し単位を任意に含んでいてもよい:
【0198】
【化27】

【0199】
この単位は、x回一般に繰り返され、xは0〜100,000の整数を表す。
【0200】
好適なポリマーは、例えば、以下の式に相当するものである:
【0201】
【化28】

【0202】
式中、x、x、x及びxは、上記で定義したものであるが、ただし、x、x及びxのうちの2つは0以外である。
【0203】
本発明のこの第2の実施形態による初期の未変性ポリマーは、鎖限定剤から誘導される(末端)基(Y)を鎖末端に有利に含み、これは、ポリマーの長さ、その分子量、及びしたがってその粘度を制御及び調節することが可能である。
【0204】
任意の鎖制限基Yの性質は、それを誘導する鎖制限剤の性質に依存し、Yは、上記で与えられる式(III)又は(IV)に相当し得る。
【0205】
本発明によるポリマーの分子量は、それらが鎖制限基を含むという事実のために、完全に規定されており、ポリマーの長さ、したがってその分子量は、反応混合物への鎖制限剤の添加量を調節する手段によって容易に制御することが可能であり、ポリマー中の鎖制限基Yの可変割合によって反映される。
【0206】
したがって、エチニレンフェニレンエチニレンシリレンタイプの繰り返し単位に対する、鎖末端における鎖制限基Yのモル比は、一般に0.002〜2である。この比は、好ましくは0.1〜1である。
【0207】
本発明によるこの第2の実施形態に使用されるポリマーの数平均分子量は、一般に400〜100,000であり、その重量平均分子量は500〜1,000,000である。
【0208】
この実施形態におけるポリマーの数平均分子量は、それらが鎖制限基を好ましくは含むという事実のために、有利に、完全に規定されており、一般に400〜10,000であり、その重量平均分子量は、600〜20,000である。
【0209】
これらの質量は、ポリスチレンを用いて較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0210】
この第2の実施形態における未変性ポリマーは、一般に上記の範囲内にポリマーの分子量を制御するための鎖制限基を有利に含むという事実の効力により、ポリマーの粘度を完全に制御することが可能となる。
【0211】
したがって、本発明のこの第2の実施形態で使用される未変性ポリマーの粘度は、分子量が上記の範囲内、温度範囲が20〜160℃で、0.1〜1,000mPa・sの値の範囲である。
【0212】
また、粘度は、芳香族環及びケイ素に支持されている基の性質に依存する。これらの粘度は、複合材料を調製するための標準的な技術に完全に適合する。
【0213】
したがって、複合材料の技術的な作業制約の要因としてのポリマーの粘度を所望の値に修正することが可能となる。
【0214】
さらに、粘度は、ガラス転移温度(Tg)にも関連する。したがって、本発明によるポリマーのガラス転移温度は、一般に−150〜+100℃であり、より有利には−100〜+20℃である。
【0215】
本発明の出発原料として使用されるポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)は、例えば、文献:欧州特許第0 617 073 B1号及びフランス特許第2 798 662 A号に記載されている方法のような、これらのポリマーを調製するための公知の各種方法によって調製することが可能である。
【0216】
特に、ポリマー(I)及び(Ia)は、文献:フランス特許第2 798 662 A号の方法によって調製することができ、そして不活性スペーサー基を有するポリマーは、それらが鎖制限基を含んでいるなら、文献:欧州特許第0 617 073 B1号及びフランス特許第2 798 662 A号の方法と類似の方法によって調製することができる。
【0217】
これらの方法の詳細な説明を得るために、これらの文献及び上記のその他の従来技術の文献を参照することができる。
【0218】
また、本発明は、上記の変性PEPESポリマーの調製方法にも関し、以下の連続工程が行われる。
a)ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(PEPES)ポリマーを反応器内に導入する。
b)ただ1つの反応性官能基を含有する化合物を前記PEPESポリマーに添加する。
c)前記PEPESポリマー及び前記化合物を一緒に均一に混合する。
触媒は、触媒とただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物の形態で工程b)の間に反応器に任意で添加されるか(その後に、工程c)において、前記PEPESポリマーと、化合物及び触媒の前記混合物とが一緒に均一に混合されることは明らかである)、又は工程c)の後に反応器に任意で添加され得る。
d)前記PEPESポリマーのアセチレン結合への、前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の選択的付加が完了するまで、前記化合物、前記PEPESポリマー及び前記任意の触媒を接触させたままにする。
e)こうして形成された変性ポリマーを回収する。
【0219】
「完了」という用語は、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の量に関係なく、この化合物が完全に消費され、完全に反応したことを意味する。「完了」という用語は、アセチレン結合の全部の消費を必ずしも暗示するとは限らない。
【0220】
ただ1つの反応性官能基を含有する化合物は、上記で既に説明されている。
【0221】
有利に、触媒は、触媒とただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物の形態で工程b)の間に反応器に添加されるか、又はPEPESポリマーと化合物との混合物に対して工程c)の後に反応器に添加される。
【0222】
触媒を使用する場合、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物として工程b)の間に反応器内に導入するのが好ましい。何故なら、この方法での進行は、反応がより均一且つより連続的であること、及び「ホットスポット」が生じないことを保証し、その結果、得られる最終材料の品質が、化合物と混合しないで工程c)の後に触媒単独で導入したものよりも著しく優れているからである。
【0223】
この触媒は、上記で既に列挙した化合物から一般に選択される。
【0224】
工程a)のポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(PEPES)ポリマー(付加の前の未変性ポリマー)は、上記で既に記載したポリマーから一般に選択される。
【0225】
方法における工程b)〜c)及びd)は、攪拌しながら一般に行われる。
【0226】
方法は、−20℃〜200℃の温度で一般に行われる。
【0227】
例えば、工程a)の間に、丸底フラスコなどの反応器は、変性すべきポリマーの粘度を低下させるために、30〜140℃の温度に加熱されてもよい。混合及び均一化工程は、室温で行われ得るが、困難であることが判れば、混合を容易にするために30〜140℃の温度での加熱を行ってもよい。次に、系は、触媒を添加する前に、室温まで戻すための時間が一般に与えられる。接触させる工程c)は、例えば、30〜140℃の温度で加熱しながら一般に行われる。混合物は、一般に、室温まで戻され、形成された変性ポリマーの回収が行われる。
【0228】
方法、好ましくは全体の方法は、特に工程d)ではアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で一般に行われる。
【0229】
工程d)において、PEPES、単官能性化合物及び任意の触媒を接触させる時間は、一般に0.1〜24時間であり、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは2〜6時間であり、このように接触させることは、加熱及び攪拌しながら不活性雰囲気下で好ましくは行われる。
【0230】
変性ポリマーは、適切な分離方法、例えば、ろ過によって反応媒体から分離して回収される。
【0231】
また、本発明は、ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマー、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物及び任意の触媒を含む組成物に関する。
【0232】
この組成物に含有される、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物、ポリマー及び任意の触媒は、上記で定義したとおりである。
【0233】
組成物は、1質量%〜99質量%のPEPESポリマーと、1質量%〜50質量%の、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物と、任意に、0〜1質量%の触媒とを一般的に含む。
【0234】
本発明よる「被毒された」変性ポリマーは、必ずしも式により明白に定義することができない構造を有し、これが、PEPESポリマーへの単官能性化合物の選択的付加によって「調製することができる」(入手可能である)と上記で定義した理由である。
【0235】
本発明よる「被毒された」変性ポリマーは、以下の式により表すことができる:
【0236】
【化29】

【0237】
式中、R’及びR’は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R’及びR’の炭素原子に結合した1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基で置換されてもよく、
’は、メチル基などの1〜20個のCのアルキル基、10〜20個のCのアルケニル基又はフェニル基などの6〜20個のCのアリール基を表し、及び
’は、以下の式:
【0238】
【化30】

【0239】
[式中、フェニレン基はo−、m−又はp−の形態であってよく、R’は、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有する(直鎖状若しくは分枝状)アルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有する(直鎖状若しくは分枝状)アルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル、シクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル若しくはプロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ若しくは2つの置換基で置換されたアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基のような)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換されたアミノ基又はシラニル基で置換される可能性があり;nは0〜4の整数である]を表すか、又はR’は、例えば6〜20個のCを含み、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基を介して結合された少なくとも2つの芳香核を含有する基を表し;x及びy及びzは、0〜1,000の整数をそれぞれ表す。
【0240】
上記の式で記載される、本発明による被毒された変性ポリマーは、以下の(付加)反応から誘導されるポリマーである:
【0241】
【化31】

【0242】
式中、kは0〜1,000の整数である。
【0243】
上記の様々なPEPESポリマーと、ただ1つの反応性官能基を含有する様々な化合物との反応から誘導される変性ポリマーについて、類似の式を任意に推定することができる。
【0244】
また、本発明は、新規なポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーに関し、これは、その高分子構造の効力によって、硬化材料又は製品の最終ネットワークの形成に対するディールス・アルダー機構の寄与を制御し、従って上記硬化材料又は製品の架橋密度、及びその結果として材料の特性、特に機械特性を制御することを本質的に可能にする。これらの新規のポリマーは、上記の変性「被毒」ポリマーと区別するために「自己被毒」ポリマーと呼ばれる。
【0245】
PEPESから誘導されるこれら新規な「自己被毒」ポリマーは、まさにその構造の効力によって、ディールス・アルダー反応を不可能にするように設計される。
【0246】
これら新規な「自己被毒」ポリマーは、上記の変性ポリマーと同じ発明の概念、すなわち、ポリマーの架橋中にディールス・アルダー反応を根本的に制御、禁止及び抑制することに基づいている。
【0247】
したがって、これら新規な自己被毒ポリマーは、従来技術のポリマーでもたらされた問題に対して、上記の変性ポリマーと同じ原理に基づいて同じ性質の解決法を提供する。
【0248】
ディールス・アルダー反応の禁止は、上記の本発明による変性ポリマーの場合と同様に、PEPESへの単官能性化合物の選択的付加によって生じ得るが、その初期構造、その基本構造の一部を本質的に形成する、ポリマー中に既に存在する構造単位によっても達成され得る。これらの構造単位は、重合反応から直接得られ、重合に続く構造的修飾から、及び例えば、既に合成されたポリマーにおける単官能性反応剤の作用から誘導されるのではない。
【0249】
したがって、これら新規な自己被毒ポリマーでは、ディールス・アルダー反応は、例えば、芳香核からアセチレン結合を隔離することによって、この核を官能基化する(プロトンの置換により)ことによって、又は芳香核を複素環で置換することによって、その高分子構造(その他の修飾を行なわずに重合から直接誘導される構造)内で本質的に防止され得る。
【0250】
これら新規な「自己被毒」ポリマーは、以下の式により表され得る:
【0251】
【化32】

【0252】
式中:
‐r及びsは1〜1,000の整数であり;
‐X及びZは、同じでも異なっていてもよく、基α、基α又はこれらの基の組み合わせをそれぞれ独立して表し:
・ここで、αは:
【0253】
【化33】

【0254】
を表し、αは:
【0255】
【化34】

【0256】
を表し、式中:
・m及びnは、一般に1〜1,000、好ましくは1〜10の整数であり;
・R、R11、R12、R’、R’10、R’11及びR’12は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基又は6〜20個の炭素原子を含有するアリール基をそれぞれ独立して表し、R、R10、R11及びR12、並びにR’、R’10、R’11及びR’12の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で部分的又は完全に置換される可能性がある;
‐W及びYは、同じでも異なっていてもよく、基B、基B、基B又はこれらの基B、B及びBの組み合わせをそれぞれ独立して表す。
【0257】
したがって、アセチレン結合を隔離するために、新規の「自己被毒」ポリマーが選ばれるなら;
‐W及びYは、式Bの基を表す:
【0258】
【化35】

【0259】
式中、iは、0又は1に等しい整数であり、基R13は、1つ以上の芳香環若しくは芳香核又は複素環若しくは複素環核(heterocyclic nuclear)を含む二価の化学基を表す。
【0260】
基R13を表すことができる構造の例は、以下の通りである。
【0261】
【化36】

【0262】
式中、Xは、水素原子又はハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)を表し;
【0263】
14、R15及びR16は、同じでも異なっていてもよく、Rと同じ意味を有し、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基又は6〜20個の炭素原子を含有するアリール基をそれぞれ独立して表し、R14、R15及びR16の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で部分的又は完全に置換される可能性がある;
【0264】
‐又は、W及びYは、基Bを表すことができ;芳香環の官能基化によるディールス・アルダー機構の阻害方法が用いられる場合、Bは以下を表す:
【0265】
【化37】

【0266】
式中、R17、R18、R19及びR20は、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するフェノキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、2〜20個の炭素原子を含有する置換アミノ基又は1〜10個の炭素原子を含有するシラニル基をそれぞれ独立して表し、置換基R17、R18、R19及びR20の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で完全又は部分的に置換される可能性がある;
【0267】
‐あるいは、W及びYは、二価の複素環から選択される基Bを表すことができる。
【0268】
これら複素環の例は、Bの基R13の定義との関連で上記に既に与えられている。
【0269】
異なる基B、B及びBからW及びYを選択することによって、幾つかの方策を同じポリマー内で組み合わせることができる。
【0270】
特に有利である「自己被毒」ポリマーは、以下の式:
【0271】
【化38】

【0272】
にその繰返し単位が相当するポリ(エチニレンメシチレンエチニレンシリレン)又は以下の式:
【0273】
【化39】

【0274】
にその繰返し単位が相当するポリ(エチニレンテトラフルオロフェニレンエチニレンシリレン)である。
これらのポリマーは、1,3−ジエチニルメシチレン:
【0275】
【化40】

【0276】
及び1,3−ジエチニル−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン:
【0277】
【化41】

【0278】
からそれぞれ得られる。
これら自己被毒ポリマーは、出発化合物を適切に選択してこれら硬化ポリマーの構造内に取り込まれた特定の基W、X、Y及びZを得ることによって、上記の従来技術文献に記載されるこのタイプのポリマーを調製するための既知の方法により調製することができる。しかし、これらの「自己被毒」ポリマーは、触媒を必要とせずに一般に調製されて、その構造を制御することができることに注意すべきである。
【0279】
また、本発明は、ディールス・アルダー及び/又はヒドロシリル化反応触媒などの触媒の任意の存在下、一般に50〜500℃の温度での上記本発明による変性被毒ポリマー又は新規な「自己被毒」ポリマーの熱処理により得ることができる硬化製品にも関する。
【0280】
本発明による「自己被毒」ポリマーは、触媒を用いずに有利に硬化させることができる。本発明による自己被毒ポリマーを硬化させるために無触媒系を一般に使用することができるというこの事実は、その利点の1つである。触媒がないことは、加工がより容易であること、及び硬化前の保存がより容易であることを保証し、使用者は、触媒がないことの効力によって、硬化反応をより良く制御することができる。
【0281】
すなわち、本発明による「自己被毒」ポリマーは、本発明による変性ポリマーと比較して、その合成との関連だけでなく、その硬化との関連においても幾つかの顕著な利点を有する。具体的には、その無触媒合成はより良く制御され、その構造は被毒の程度のより良い制御を保証し、また、硬化中に触媒がないことにより、この硬化のより良い制御及び使用者による容易な加工も可能となる。
【0282】
最後に、また、本発明は、上記変性ポリマー又は新規な自己被毒ポリマーを含む複合体マトリックスに関する。
【0283】
本発明による被毒変性ポリマー又は新規な自己被毒ポリマーの熱処理により調製される硬化製品は、例えば、一般に30〜200℃の温度にしてポリマーを溶融させることによって製造される。
【0284】
次に、ポリマー溶融物は、例えば、所望の形状を有するモールド内にポリマー溶融物を注入することによって、所望されるように形成される。
【0285】
次に、モールド内のポリマー鋳造物は、例えば、10分〜6時間の時間、30〜200℃の温度において、例えば、0.1〜10ミリバールの真空下でガス抜きされる。
【0286】
ガス抜き後、同じ温度を一般に維持しながら系を大気圧まで戻し、そして気体雰囲気下、例えば、空気、窒素又はアルゴン若しくはヘリウムなどの不活性ガスの気体雰囲気下でモールド及びポリマーを加熱することによって実際の架橋が行なわれる。
【0287】
処理温度は、一般には50〜500℃、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜350℃の範囲であり、加熱は、1分〜100時間、好ましくは2〜12時間で一般に行われる。
【0288】
本発明によるポリマーの構造及び文献:欧州特許第0 617 073 B1号のポリマーの類似構造の結果として、それらの硬化プロセスも実質的には同じであり、さらなる詳細については、上記文献の第17頁及び文献:フランス特許第2 798 622 号を参照されたい。
【0289】
得られる硬化製品又は材料の性質及び構造は、使用される変性(「被毒」)又は自己被毒ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーに依存する。架橋処理は、一般にガス抜きが行なわれる温度である出発温度から、架橋温度である最終温度までの一連の温度上昇から成る特定数の工程を含んでいてよい。各温度上昇の後に定常温度段階が観察され、最終定常段階は架橋温度で観察され、これは、例えば、250〜450℃であり、1(又は2)〜12時間維持される。
【0290】
最終定常段階の後、例えば、0.1〜5℃/分の速度で、一般に、室温まで温度を徐々に低下させる。
【0291】
典型的な架橋サイクルは、例えば、次の通りであり得る。
‐室温から180℃まで温度を上昇させ、180℃で2時間の定常段階又は等温線を観察する;
‐180℃から240℃まで温度を上昇させ、240℃で2時間の定常段階又は等温線を観察する;
‐240℃から300℃まで温度を上昇させ、300℃で2時間の定常段階又は等温線を観察する;
‐300℃から室温まで温度を低下させる。
【0292】
全ての温度上昇及び降下勾配は、1℃/分の速度で行なわれる。
【0293】
本発明による架橋された硬化製品により示される利点は、上記で既に説明された。これらの利点は、これらの硬化製品を誘導する本発明による変性又は自己被毒ポリマーと本質的に関連する。
【0294】
これらの硬化製品は、従来技術のポリマー(例えば、未変性、非被毒、非自己被毒ポリマー)から同一条件下で得られる硬化製品と少なくとも同等の優れた熱特性と、従来技術のポリマー(例えば、未変性ポリマー)から得られる硬化製品の機械特性と比較して著しく改善された機械特性とを有する。
【0295】
さらに、これら硬化製品の特性は、ポリマーを変性又は被毒させることにより、又は「自己被毒」ポリマーの場合にはこのポリマーの特定の構造により生じる架橋密度を制御することによって完全及び正確に変更され得る。
【0296】
改善された機械特性は、実質的に優れた弾性率、破断応力及び破断歪みの値によって特に実証される。
【0297】
本発明のポリマーを含む有機マトリックスを有する複合体の調製は、多数の技法により行うことができる。
【0298】
各使用者は、それを自分の制約に適合させる。その原理は、一般に常に同じであり、すなわち、繊維補強剤(textile reinforcing agent)の樹脂による含浸と、その後に行なわれる、数度/分の温度上昇速度及びその次の架橋温度に近い定常段階を含む熱処理による架橋とである。
【0299】
本発明は、非限定的な説明として与えられる以下の実施例を参照してこれから説明されるであろう。
【実施例】
【0300】
[実施例1:20質量%のジメチルフェニルシランで被毒されたポリ(ジメチルシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)の調製]
アルゴン下にて、設置された1リットルの三つ口丸底フラスコ内に100gのポリ(ジメチルシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)を導入する。フラスコを100℃に加熱し、ポリマーの粘度を低下させる。次に、25gのジメチルフェニルシランをフラスコ内に導入する。混合物が均一になったら、THF中で0.1Mの0.5mlのPt−TVTSを滴下して添加する。アルゴン下で2時間、系を同じ温度に維持する。次に、変性したポリマーをロータリーエバポレータに移し、遊離被毒剤が残っていないことを確認する(90℃、0.1ミリバール)。グラフトは定量的であり、H NMRにより確認され得る。
【0301】
[実施例2:20質量%のジメチルフェニルシランで被毒されたポリ(メチルヒドロシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)の調製]
アルゴン下にて、設置された1リットルの三つ口丸底フラスコ内に100gのポリ(メチルヒドロシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)を導入する。次に、25gのジメチルフェニルシランをフラスコ内に導入する。ポリマーの粘度により可能であれば、室温で均一化を行う。これが困難であれば、フラスコの温度を50℃まで上昇させて混合を容易にし、次に、室温まで冷却しながら系を攪拌し続ける。次に、THF中で0.1MのPt−TVTS触媒250μlを、激しく攪拌しながらフラスコ内に滴下して導入する。
次に、系をわずかにガス抜きし(50℃、10ミリバールで10分間)、次に以下に詳述される架橋サイクル(実施例4)を行なうことができる。
【0302】
[実施例3:20質量%のジメチルフェニルシランで被毒されたポリ(ジメチルシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)の架橋]
実施例1で得られた被毒ポリマーを120℃にして、金属又はシリコーン製モールドのキャビティ内に注入し、次に、120℃で15分間、0.2ミリバールでガス抜きをする。大気圧まで戻した後、以下の架橋サイクルを空気中で開始する:8分間かけて120℃から200℃にし、次に200℃で1時間、次に25分間かけて200℃から250℃にし、次に250℃で2時間、次に25分間かけて250℃から300℃にし、次に300℃で2時間、次に3時間かけて300℃から25℃にする。
【0303】
このような材料は、20℃の曲げにおいて、約2.7GPaの弾性率、約60MPaの破断応力及び約2.2%の破断歪みを有する。
【0304】
曲げ試験は、70×15×3mmの試験片、48mmの中心間距離、1mm/分の移動速度を有する3点曲げ試験である。
【0305】
比較として、同一条件下で架橋させた同一の未変性、非被毒ポリマーから得られた材料は、20℃の曲げにおいて、約2.2GPaの弾性率、約19MPaの破断応力及び約0.9%の破断歪みを有する。
【0306】
[実施例4:20質量%のジメチルフェニルシランで被毒されたポリ(メチルヒドロシリレン−エチニレン−フェニレン−エチニレン)の架橋]
実施例2で得られた被毒ポリマーを40〜50℃にして、金属又はシリコーン製モールドのキャビティ内に注入し、次に、50℃で10分間、40ミリバールでガス抜きをする。大気圧まで戻した後、以下の架橋サイクルを空気中で開始する:50分間かけて50℃から100℃にし、次に100℃で1時間、次に50分間かけて100℃から150℃にし、次に150℃で1時間、次に25分間かけて150℃から200℃にし、次に200℃で1時間、次に25分間かけて200℃から250℃にし、次に250℃で1時間、次に25分間かけて250℃から300℃にし、次に300℃で2時間、次に3時間かけて300℃から25℃にする。
【0307】
このような材料は、20℃の曲げにおいて、約2.8GPaの弾性率、約50MPaの破断応力及び約1.8%の破断歪みを有する。
【0308】
曲げ試験の条件は、上記に詳述される(実施例3)。
【0309】
比較として、同一条件下で架橋させた同一の未変性、非被毒ポリマーから得られた材料は、20℃の曲げにおいて、約2.8GPaの弾性率、約22MPaの破断応力及び約0.9%の破断歪みを有する。
【0310】
[実施例5:本発明による「自己被毒」ポリマーであるポリ(エチニレン−メシチレン−エチニレン−シリレン)の調製]
ポリマーは、ジエチニルベンゼンをジエチニルメシチレンで置き換えることによって、例えば、文献:フランス特許第2 798 662 A号に記載される方法によって得られる。後者の化合物は1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)メシチレンの脱保護によって得られ、これ自体は、1,3−ジイソビスメシチレンと、2当量のトリメチルシリルアセチレンとの触媒カップリングによって得られる。
【0311】
(参考文献)
[1]「New Highly Heat-Resistant Polymers containing Silicon: Poly (Silyleneethynylenephenyleneethynylene)s」、ITOH M., INOUE K., IWATA K., MITSUZUKA M.及びKAKIGANO T.著、Macromolecules、1997年、第30巻、第694頁〜第701頁
[2]CORRIU Robert J.P.等著、Journal of Polymer Science: Part C: Polymer Letters、1990年、第28巻、第431頁〜第437頁
[3]「Copper [1] chloride catalyzed cross dehydrocoupling reactions between silanes and ethynyl compounds. A new method for the copolymerization of silanes and alkynes」、Liu H.Q.; HARROD J.F.著、The Canadian Journal of Chemistry、1990年、第68巻、第1100頁〜第1105頁
[4]「A novel synthesis and extremely high Thermal stability of Poly [(phenylsilylene)-(ethynylene-1,3-phenylene ethynylene)]」、ITOH M., INOUE K., IWATA K., MITSUZUKA M.及びKAKIGANO T.著、Macromolecules、1994年、第27巻、第7917頁〜第7919頁
[5]KUROKI S.; OKITA K.; KAKIGANO T.; ISHIKAMA J.及びITOH M.著、Macromolecules、1998年、第31巻、第2804頁〜第2808頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーのアセチレン結合における、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の選択的付加によって得られる変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマー。
【請求項2】
前記単官能性化合物は、ただ一つの反応性官能基が水素である化合物から選択される請求項1に記載の変性ポリマー。
【請求項3】
前記化合物は、モノ水素添加シリカ系化合物から選択される請求項2に記載の変性ポリマー。
【請求項4】
前記モノ水素添加シリカ系化合物は、以下の式:
【化1】

(式中、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基、又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表す)に相当するモノ水素添加シランである請求項3に記載の変性ポリマー。
【請求項5】
前記モノ水素添加シリカ系化合物は、以下の式:
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基、又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表し、n及びmは、0〜1,000の整数を表す)に相当するモノ水素添加シロキサンである請求項3に記載のポリマー。
【請求項6】
前記モノ水素添加シリカ系化合物は、以下の式:
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、同じでも異なっていてもよく、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、2〜20個のCのアルケニル基、又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基をそれぞれ独立して表す)に相当するモノ水素添加シルセスキオキサンである請求項3に記載のポリマー。
【請求項7】
前記付加は、触媒の存在下で行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記触媒は、HPtCl、Pt(DVDS)、Pt(TVTS)、Pt(dba)のような白金ベースの触媒(ここで、DVDSはジビニルジシロキサンを表し、TVTSはトリビニルトリシロキサンを表し、dbaはジベンジリデンアセトンを表す)、並びにRh(CO)16又はRh(CO)12、ClRh(PPh)、Ir(CO)12及びPd(dba)のような遷移金属錯体から好ましくは選択されるヒドロシリル化反応触媒である請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
前記付加は、−20℃〜200℃の温度、好ましくは30〜150℃の温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記化合物は、変性ポリマーの0.1質量%〜75質量%、好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%を示す請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項11】
前記付加は、アルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項12】
前記ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)PEPESポリマーは、以下の式(I):
【化4】

又は以下の式(Ia):
【化5】

(式中、中央の繰り返し単位のフェニレン基は、o−、m−又はp−の形態のどれでもよく;Rは、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基(直鎖状若しくは分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基(直鎖状若しくは分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル、シクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル又はプロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基のような)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基、又はシラニル基で置換されていてもよく;nは0〜4の整数であり、qは1〜1,000の整数、例えば1〜40の整数であり;R’及びR”は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R’及びR”の炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基で置換されていてもよく;これらの基の例はRのところで既に上述しており;並びにYは、鎖制限剤に由来する基を表す)に相当する請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項13】
前記PEPESポリマーは式(I)に相当し、且つYは以下の式(III):
【化6】

(式中、R’’’は、Rと同じ意味を有し、後者と同じであっても異なっていてもよく、n’はnと同じ意味を有し、後者と同じであっても異なっていてもよい)の基を表す請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
前記PEPESポリマーは式(Ia)に相当し、且つYは以下の式(IV):
【化7】

(式中、R’、R”及びR’’’は、同一であっても異なっていてもよく、請求項12及び請求項13で既に与えられた意味を有する)の基を表す請求項12に記載のポリマー。
【請求項15】
前記PEPESポリマーは、以下の式:
【化8】

(式中、qは1〜1,000の整数である。)に相当する請求項12に記載のポリマー。
【請求項16】
前記PEPESポリマーは、所定の分子量のポリマーであり、式(Ia)のポリマーを加水分解することにより得られてよく(得ることができ)、以下の式(Ib):
【化9】

(式中、R、R’、R”、n及びqは、請求項12及び請求項15で既に与えられた意味を有する)に相当する、請求項12に記載のポリマー。
【請求項17】
前記PEPESポリマーは、0.002〜2、好ましくは0.1〜1の、エチニレンフェニレンエチニレンシリレン繰り返し単位に対する、鎖末端における基Yのモル比を有する請求項12に記載のポリマー。
【請求項18】
前記ポリマー(I)、(Ia)及び(Ib)の数平均分子量は、400〜10,000、好ましくは400〜5,000であり、及びその重量平均分子量は、600〜20,000、好ましくは600〜10,000である請求項12及び16に記載のポリマー。
【請求項19】
前記ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(PEPES)ポリマーは、少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマーであり、前記繰り返し単位が、2つのアセチレン結合、少なくとも1個のケイ素原子、及び少なくとも1つの不活性スペーサー基を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の変性ポリマー。
【請求項20】
前記ポリマーは、鎖制限剤に由来する基(Y)も含む請求項19に記載のポリマー。
【請求項21】
前記ポリマーの不活性スペーサー基は、架橋中に関与しない請求項19に記載のポリマー。
【請求項22】
前記ポリマーのスペーサー基(複数可)は、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基、ポリシロキサン基、ポリシラン基を介して結合された幾つかの芳香核を含む基、並びにこれらの基の2つ以上のあらゆる可能な組み合わせから選択される請求項19に記載のポリマー。
【請求項23】
前記PEPESポリマーは、以下の式(V):
【化10】

(式中、中央の繰り返し単位のフェニレン基は、o−、m−又はp−の形態のどれでもよく;Rは、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基(直鎖状又は分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基(直鎖状又は分枝状)、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル又はシクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル、プロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基のような)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基、又はシラニル基で置換されていてもよく;R、R、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R、R、R及びRの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基で置換されていてもよく;これらの基の例はRのところで既に上述しており;nが、0〜4の整数であり、nが1〜10、好ましくは1〜4の整数であり;この繰り返し単位がn回一般に繰り返され、このnは、例えば2〜1,000の整数である)の繰り返し単位を含むポリマーである請求項19に記載のポリマー。
【請求項24】
前記PEPESポリマーは、以下の式:
【化11】

(式中、フェニレン基は、o−、m−又はp−の形態であってよく、R、R、R及びnは請求項23で既に与えられた意味を有し、nは2〜10の整数である)の繰り返し単位を含むポリマーである請求項19に記載のポリマー。
【請求項25】
前記PEPESポリマーは、以下の式:
【化12】

(式中、R及びRは、請求項23で既に与えられた意味を有し、Rは、例えば、6〜20のCを含み、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基を介して結合された少なくとも2つの芳香核を含む基を表す)の繰り返し単位を含むポリマーである請求項19に記載のポリマー。
【請求項26】
前記PEPESポリマーは、以下の式:
【化13】

(式中、R、R、R、R、R及びnは、請求項23〜25で既に与えられた意味を有する)の繰り返し単位を含むポリマーである請求項19に記載のポリマー。
【請求項27】
前記ポリマーは、以下の式:
【化14】

(式中、R、R、R及びnは、請求項23〜25で既に与えられた意味を有する)の繰り返し単位を含むポリマーである請求19に記載のポリマー。
【請求項28】
前記PEPESポリマーの基Rは、以下の基:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

(式中、Xは、水素原子又はハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)を表す)から選択される請求項25〜27のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項29】
前記PEPESポリマーは、n回繰り返された繰り返し単位を含み、ここでnが、例えば2〜1,000の整数である請求項19〜28のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項30】
前記ポリマーは、少なくとも1つの不活性スペーサー基を含む、幾つかの異なる繰り返し単位を含む請求項19に記載のポリマー。
【請求項31】
少なくとも1つの不活性スペーサー基を含む、前記ポリマーの繰り返し単位は、請求項23、24、25、26及び27でそれぞれ定義された式(V)、(Va)、(Vb)、(Vc)及び(Vd)の繰り返し単位から選択される請求項30に記載のポリマー。
【請求項32】
前記ポリマーの繰り返し単位はそれぞれ、x、x、x、x及びx回繰り返され、ここでx、x、x、x及びxは、0〜100,000の整数を表すが、ただし、x、x、x、x及びxの中の少なくとも2つは0以外である請求項31に記載のポリマー。
【請求項33】
前記ポリマーは、不活性スペーサー基を含まない1つ以上の繰り返し単位も含む請求項19〜32のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項34】
前記不活性スペーサー基を含まない、ポリマーの繰り返し単位は、以下の式:
【化19】

に相当する請求項33に記載のポリマー。
【請求項35】
前記不活性スペーサー基を含まない、ポリマーの繰り返し単位は、x回繰り返され、ここでxが0〜100,000の整数を表す請求項33又は34に記載のポリマー。
【請求項36】
前記ポリマーは、以下の式:
【化20】

(式中、x、x、x及びxは、請求項32及び35でそれぞれ定義したものであるが、ただし、x、x及びxのうちの少なくとも2つは0以外である)に相当する請求項30〜35のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項37】
前記ポリマーは、400〜10,000の数平均分子量及び500〜1,000,000の重量平均分子量を有する請求項30〜36のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項38】
以下の連続工程:
a)ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)(PEPES)ポリマーを反応器内に導入する工程と、
b)ただ1つの反応性官能基を含有する化合物を前記PEPESポリマーに添加する工程と、
c)前記PEPES及び前記化合物を一緒に均一に混合する工程であって、
触媒は、前記触媒と前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物の形態で工程b)の間に任意で添加されるか、又は工程c)の後に任意で添加される工程と、
d)前記PEPESポリマーのアセチレン結合への、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物の選択的付加が完了するまで、前記化合物、前記PEPESポリマー及び前記任意の触媒を接触させたままにする工程と、
e)こうして形成された変性ポリマーを回収する工程と、
を行う請求項1〜37のいずれか1項に記載の変性ポリマーを調製する方法。
【請求項39】
前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物は、請求項2〜6のいずれか1項に定義されたような化合物である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記触媒と前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物の形態で工程b)の間に反応器に触媒を添加するか、又は前記PEPESポリマーと前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物との混合物に対して工程c)の後に反応器に触媒を添加する請求項38又は請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記触媒は、HPtCl、Pt(DVDS)、Pt(TVTS)、Pt(dba)のような白金ベースの触媒(ここで、DVDSはジビニルジシロキサンを表し、TVTSはトリビニルトリシロキサンを表し、及びdbaはジベンジリデンアセトンを表す)、並びにRh(CO)16又はRh(CO)12、ClRh(PPh)、Ir(CO)12及びPd(dba)のような遷移金属錯体から好ましくは選択されるヒドロシリル化反応触媒である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーは、請求項12〜37のいずれか1項に定義されるとおりである請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記工程b)〜c)及びd)は、攪拌しながら行われる請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法は、−20℃〜200℃の温度で行われる請求項38〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記方法は、アルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行われる請求項38〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記工程d)において、前記PEPES、前記化合物および前記任意の触媒は、0.1〜24時間、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは2〜6時間、接触させたままである請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーと、ただ1つの反応性官能基を含有する化合物と、任意で触媒とを含む組成物。
【請求項48】
前記ただ1つの反応性官能基を含有する化合物は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の化合物である請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーは、請求項12〜37のいずれか1項に定義されるものである請求項47又は48に記載の組成物。
【請求項50】
前記触媒は、HPtCl、Pt(DVDS)、Pt(TVTS)、Pt(dba)のような白金ベースの触媒(ここで、DVDSはジビニルジシロキサンを表し、TVTSはトリビニルトリシロキサンを表し、dbaはジベンジリデンアセトンを表す)、並びにRh(CO)16又はRh(CO)12、ClRh(PPh)、Ir(CO)12及びPd(dba)のような遷移金属錯体から好ましくは選択されるヒドロシリル化反応触媒である請求項47〜49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
1質量%〜99質量%のポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマーと、1質量%〜50質量%のただ1つの反応性官能基を含有する化合物と、任意で、0〜1質量%の触媒とを含む請求項47〜50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
以下の式(VII):
【化21】

[式中、R’及びR’は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基を表し、R’及びR’の炭素原子に結合した1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、二置換アミノ基又はシラニル基で置換されてもよく;
’は、メチル基のような1〜20個のCのアルキル基、10〜20個のCのアルケニル基、又はフェニル基のような6〜20個のCのアリール基を表し、
’は、
【化22】

(式中、フェニレン基はo−、m−又はp−の形態であってよく、R’は、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、1〜20個の炭素原子を含有する(直鎖状若しくは分枝状)アルキル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシルのような)、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシのような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基(フェニル基のような)、6〜20個の炭素原子を含有するアリールオキシ基(フェノキシ基のような)、2〜20個の炭素原子を含有する(直鎖状若しくは分枝状)アルケニル基、3〜20個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基(ビニル、アリル、シクロヘキセニルのような)、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基(エチニル、プロパルギルのような)、アミノ基、2〜20個の炭素原子を含有する1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルフェニルアミノのような)、又は1〜10個のケイ素原子を含有するシラニル基(シリル、ジシラニル(−Si)、ジメチルシリル、トリメチルシリル及びテトラメチルジシラニルのような)を表し、Rの炭素原子に結合した1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びIのような)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ及びプロポキシのような)、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基のような)、アミノ基、1つ又は2つの置換基で置換したアミノ基、又はシラニル基で置換される可能性があり;nは0〜4の整数である)を表すか、又はR’は、例えば、6〜20個のCを含み、少なくとも1つの共有結合及び/又は少なくとも1つの二価の基を介して結合された少なくとも2つの芳香核を含有する基を表し、並びに
x、y及びzは、0〜1,000の整数をそれぞれ表す]
に相当する変性ポリ(エチニレンフェニレンエチニレンシリレン)ポリマー。
【請求項53】
以下の式:
【化23】

[式中、:
‐r及びsは1〜1,000の整数であり、
‐X及びZは、同じでも異なっていてもよく、基α、基α又はこれらの基の組み合わせをそれぞれ独立して表し、
・ここで、αは、以下の式を表し:
【化24】

・αは、以下の式を表し:
【化25】

(式中、m及びnは、一般に1〜1,000、好ましくは1〜10の整数であり;R、R11、R12、R’、R’10、R’11及びR’12は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基、又は6〜20個の炭素原子を含有するアリール基をそれぞれ独立して表し、R、R10、R11及びR12、並びにR’、R’10、R’11、及びR’12の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で部分的又は完全に置換される可能性がある)
‐W及びYは、同じでも異なっていてもよく、基B、基B、基B又はこれらの基の組み合わせをそれぞれ独立して表し、
・Bは、以下の式を表し:
【化26】

(式中、iは、0又は1に等しい整数であり、基R13は、1つ以上の芳香環若しくは芳香核又は複素環若しくは複素環核を含む二価の化学基を表し、好ましくは、基R13は、以下の基から選択され:
【化27】

(式中、Xは水素原子又はハロゲン(F、Cl、Br又はI)を表し;R14、R15及びR16は、同じでも異なっていてもよく、Rと同じ意味を有し、水素原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜20個の炭素原子を含有するアルキニル基、又は6〜20個の炭素原子を含有するアリール基をそれぞれ独立して表し、R14、R15及びR16の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で部分的又は完全に置換される可能性がある))
・Bは、以下の式を表し:
【化28】

(式中、R17、R18、R19及びR20は、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を含有するアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するフェノキシ基、6〜20個の炭素原子を含有するアリール基、2〜20個の炭素原子を含有する置換アミノ基、又は1〜10個の炭素原子を含有するシラニル基をそれぞれ独立して表し、置換基R17、R18、R19及びR20の炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、二置換アミノ基又はシラニル基で完全又は部分的に置換される可能性がある)
・Bは、Bの基R13の定義との関連で定義されるような二価の複素環から選択される基である]に相当するポリマー。
【請求項54】
前記繰返し単位が、以下の式:
【化29】

に相当する請求項53に記載のポリマー。
【請求項55】
前記繰返し単位が、以下の式:
【化30】

に相当する請求項53に記載のポリマー。
【請求項56】
任意で触媒の存在下、請求項1〜37及び請求項52〜55のいずれか1項に記載の変性ポリマーを50〜500℃の温度で熱処理することによって得ることができる(すなわち、入手可能である)硬化製品。
【請求項57】
請求項1〜37及び請求項52〜55のいずれか1項に記載のポリマーを含む複合体マトリックス。

【公表番号】特表2007−511632(P2007−511632A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538910(P2006−538910)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050577
【国際公開番号】WO2005/049733
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500348697)コミッサリア ア レネルジー アトミーク (21)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L´ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】