説明

変換装置およびバイアス電圧生成回路

【課題】バイアス電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかにバイアス電圧を所望の直流電圧に収束することができる変換装置およびバイアス電圧生成回路を提供する。
【解決手段】バイアス電圧生成回路10から出力されたバイアス電圧がオーバーシュートを起こし、所望の直流電圧以上になったときに、クランプ回路11のMOSトランジスタ14の導通状態がオン状態になり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ14の方向に電流を流すことができる。このため、バイアス電圧生成回路10から出力された電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかに出力端子VOUTの電圧を所望の直流電圧に収束することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換装置およびバイアス電圧生成回路に関し、特にコンデンサマイクロフォンを用いて音声をアナログ電気信号に変換する変換装置およびそれに用いられるバイアス電圧生成回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いてシリコンチップ上にコンデンサマイクロフォンを形成するMEMSマイクロフォンが、集積性が高いことや、リフローでの実装のし易さ等の点から注目されている。
一般に、MEMSマイクロフォンは、音声を電気信号に効率よく変換するために、電源電圧よりも高い直流電圧を安定して供給する必要がある。このため、直流電圧もしくは交流電圧を昇圧して出力する昇圧回路が設けられる。
【0003】
上記の一例として、特許文献1に記載されるような電圧ポンプを有するマイクロフォンが提案されている。図3は、特許文献1に記載された電圧ポンプを有するマイクロフォンと同様の回路構成を有する変換装置30の構成を示す回路図である。
図3に示す変換装置30は、バイアス電圧生成回路32、コンデンサマイクロフォン31および増幅器33を備えて構成される。
【0004】
バイアス電圧生成回路32は、コンデンサマイクロフォン31の電荷量を一定に保持させるために、その内部で生成される信号を昇圧して直流電圧を生成する回路である。
コンデンサマイクロフォン31は、音圧に応じて容量値が変化するように構成される素子である。このコンデンサマイクロフォン31に、バイアス電圧生成回路32によって生成された直流電圧が印加される。コンデンサマイクロフォン31の音圧に応じてコンデンサマイクロフォン31の容量値が変化するため、音圧が電気信号に変換されてコンデンサマイクロフォン31から出力される。
増幅器33は、コンデンサマイクロフォン31から出力される電気信号を増幅する回路である。また、増幅器33の入力側を高インピーダンスに設定しておくことにより、音声を電気信号に効率良く変換して出力信号Voutを得ることができる。
【0005】
図4は、バイアス電圧生成回路32の構成を示す回路図である。図4に示すバイアス電圧生成回路32は、特にDickson型チャージポンプ回路と呼ばれている。
図4に示したチャージポンプ回路は、4段の昇圧ステージを有している。1段目の昇圧ステージは、ダイオード素子41とキャパシタ46とによって構成されている。また、2段目の昇圧ステージはダイオード素子42とキャパシタ47とによって構成され、3段目の昇圧ステージはダイオード素子43とキャパシタ48とによって構成され、4段目の昇圧ステージはダイオード素子44とキャパシタ49とによって構成されている。
【0006】
各昇圧ステージにおいて、ダイオード素子のカソード端子はキャパシタの一端に接続されている。また、ダイオード素子41〜45は、隣接する昇圧ステージのダイオード素子と直列に接続されている。ダイオード素子45の出力は、チャージポンプ回路の出力端子VOUTに接続されている。そして、奇数段の昇圧ステージのキャパシタ46、48には、クロック信号生成回路40から出力されたクロック信号φ1が直接入力されている。また、偶数段の昇圧ステージのキャパシタ47、49には、クロック信号生成回路40から出力されたクロック信号φ1と逆位相のクロック信号φ2が直接入力されている。
図4に示したチャージポンプ回路によれば、入力電圧VINを効率的に昇圧して、コンデンサマイクロフォン31に印加される直流電圧を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−512793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に示したチャージポンプ回路の出力端子VOUTには、所望の直流電圧が出力され、静電容量性のコンデンサマイクロフォン31が接続されるので、コンデンサマイクロフォン31からみるとハイインピーダンスであって、電流が流れるパスも存在しない構成になっている。そして、チャージポンプ回路は、複数の昇圧ステージを複数段かさねた構成により高い直流電圧を生成するものであるから、低い電圧を上に持ち上げる駆動能力はあるものの、高い電圧を下に引き抜く能力はない。
【0009】
このため、コンデンサマイクロフォン31に通常の入力レンジよりもはるかに大きな音圧を加え続けると、チャージポンプ回路の出力端子VOUTに高い電圧がキックバックされ、出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こし、出力端子VOUTに所望の直流電圧以上の電圧が出力される不安定な時間が長時間継続するという問題点があった。
そこで、本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであって、バイアス電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかにバイアス電圧を所望の直流電圧に収束することができる変換装置およびバイアス電圧生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による変換装置およびバイアス電圧生成回路は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
本発明のある態様による第1の変換装置は、コンデンサマイクロフォンを用いて音声を電気信号に変換する変換装置であって、バイアス電圧を生成し、前記バイアス電圧を前記コンデンサマイクロフォンに出力するバイアス電圧生成回路を備え、前記バイアス電圧生成回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧の電圧を下げるクランプ回路を有することを特徴とする。
【0011】
上記の変換装置によれば、バイアス電圧生成回路から出力された電圧がオーバーシュートを起こし、所望の直流電圧以上になったときに、バイアス電圧生成回路内の出力側に設けられているクランプ回路が、バイアス電圧の電圧を下げる。これにより、変換装置において、所望の直流電圧以上の電圧が出力されている不安定な状態が長時間継続することなく、速やかに出力端子の電圧を所望の直流電圧に収束することが可能となる。
本発明のある態様による第2の変換装置は、前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧が出力される出力端子から電流が引き抜かれるような動作状態にするためのスイッチング素子を有することを特徴とする。
【0012】
上記の変換装置によれば、バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、スイッチング素子の導通状態がオン状態になり、バイアス電圧生成回路の出力端子からスイッチング素子の方向に電流を流すことができる。このため、バイアス電圧生成回路から出力された電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかに出力端子の電圧を所望の直流電圧に収束することが可能となる。
【0013】
本発明のある態様による第3の変換装置は、前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が出力される少なくとも1つのバイアス電圧出力用ダイオード素子と並列に接続された第1のダイオード素子と、
前記第1のダイオード素子に電流を供給する電流源と、を有し、前記スイッチング素子は、前記バイアス電圧と前記第1のダイオード素子の出力電圧とに基づいて、導通状態がオン状態またはオフ状態に切り替わるように制御されることを特徴とする。
【0014】
上記の変換装置によれば、スイッチング素子には、バイアス電圧と第1のダイオード素子の出力電圧とが入力されている。電流源が、第1のダイオード素子に微小な電流を供給しており、バイアス電圧が所望の電圧以上でないときは、スイッチング素子に入力される上記の2つの電圧が等電位になる。このとき、スイッチング素子の導通状態はオフ状態になっている。
そして、バイアス電圧が所望の電圧以上になったときにだけ、バイアス電圧が変化することにより、スイッチング素子の導通状態をオフ状態からオン状態に切り替えることが可能となる。
【0015】
本発明のある態様による第4の変換装置は、前記第1のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする。
上記の変換装置によれば、第1のダイオード素子は、具体的に、ダイオード接続されたMOSトランジスタであって、スイッチング素子に入力される上記の2つの電圧が等電位になるようにすることが可能となる。
【0016】
本発明のある態様による第5の変換装置は、前記スイッチング素子は、ソースまたはドレイン端子に前記バイアス電圧が供給され、ゲート端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給されるMOSトランジスタであることを特徴とする。
上記の変換装置によれば、スイッチング素子は、具体的に、ソースまたはドレイン端子にバイアス電圧が供給され、ゲート端子に第1のダイオード素子の出力電圧が供給されるMOSトランジスタである。バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、MOSトランジスタに供給されたバイアス電圧が変化することにより、スイッチング素子の導通状態をオフ状態からオン状態に切り替わり、バイアス電圧生成回路の出力端子からスイッチング素子の方向に電流を流すことができる。このため、バイアス電圧生成回路から出力された電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかに出力端子の電圧を所望の直流電圧に収束することが可能となる。
【0017】
本発明のある態様による第6の変換装置は、前記スイッチング素子は、入力端子に前記バイアス電圧が供給され、出力端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給される第2のダイオード素子であることを特徴とする。
上記の変換装置によれば、バイアス電圧と第1のダイオード素子の出力電圧とが入力される。そして、上記で説明したように、バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、スイッチング素子の導通状態をオフ状態からオン状態に切り替えることが可能となる。
【0018】
本発明のある態様による第7の変換装置は、前記第2のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする。
上記の変換装置によれば、第2のダイオード素子は、具体的に、ダイオード接続されたMOSトランジスタであって、バイアス電圧と第1のダイオード素子の出力電圧とが入力される。そして、上記で説明したように、バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、スイッチング素子の導通状態をオフ状態からオン状態に切り替えることが可能となる。
【0019】
本発明のある態様による第8の変換装置は、前記電流源は、スイッチトキャパシタ型電流源で構成されることを特徴とする。
上記の変換装置によれば、電流源は、例えば、MOSトランジスタやキャパシタによって構成されるスイッチトキャパシタ型電流源である。このスイッチトキャパシタ型電流源によって、第1のダイオード素子に微小な電流を供給しており、バイアス電圧が所望の電圧以上でないときは、スイッチング素子に入力される上記の2つの電圧が等電位になるようにしている。このときに、スイッチング素子の導通状態はオフ状態にすることが可能となる。
【0020】
本発明のある態様による第1のバイアス電圧生成回路は、バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路であって、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧の電圧を下げるクランプ回路を有することを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第1の変換装置と同様に、バイアス電圧生成回路から出力された電圧がオーバーシュートを起こし、所望の直流電圧以上になったときに、バイアス電圧生成回路内の出力側に設けられているクランプ回路が、バイアス電圧の電圧を下げる。これにより、所望の直流電圧以上の電圧が出力されている不安定な状態が長時間継続することなく、速やかに出力端子の電圧を所望の直流電圧に収束することが可能となる。
【0021】
本発明のある態様による第2のバイアス電圧生成回路は、前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧が出力される出力端子から電流が引き抜かれるような動作状態にするためのスイッチング素子を有することを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第2の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【0022】
本発明のある態様による第3のバイアス電圧生成回路は、前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が出力される少なくとも1つのバイアス電圧出力用ダイオード素子と並列に接続された第1のダイオード素子と、前記第1のダイオード素子に電流を供給する電流源と、を有し、前記スイッチング素子は、前記バイアス電圧と前記第1のダイオード素子の出力電圧とに基づいて、導通状態がオン状態またはオフ状態に切り替わるように制御されることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第3の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【0023】
本発明のある態様による第4のバイアス電圧生成回路は、前記第1のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第4の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【0024】
本発明のある態様による第5のバイアス電圧生成回路は、前記スイッチング素子は、ソースまたはドレイン端子に前記バイアス電圧が供給され、ゲート端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給されるMOSトランジスタであることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第5の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【0025】
本発明のある態様による第6のバイアス電圧生成回路は、前記スイッチング素子は、入力端子に前記バイアス電圧が供給され、出力端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給される第2のダイオード素子であることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第6の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【0026】
本発明のある態様による第7のバイアス電圧生成回路は、前記第2のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第7の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
本発明のある態様による第8のバイアス電圧生成回路は、前記電流源は、スイッチトキャパシタ型電流源で構成されることを特徴とする。
上記のバイアス電圧生成回路によれば、上記の第8の変換装置と同様の作用が得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バイアス電圧生成回路の出力端子のバイアス電圧がオーバーシュートを起こしたときに、クランプ回路により出力端子から電流を流すことができる。このため、バイアス電圧生成回路の出力端子のバイアス電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかに出力端子のバイアス電圧を所望の直流電圧に収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1のバイアス電圧生成回路を説明するための回路図である。
【図2】本発明の実施形態2のバイアス電圧生成回路を説明するための回路図である。
【図3】特許文献1に記載された電圧ポンプを有するマイクロフォンと同様の回路構成を有する変換装置の構成を示す回路図である。
【図4】一般的なチャージポンプ回路を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態1、実施形態2を説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一符号によって示す。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のバイアス電圧生成回路を説明するための回路図である。図1に示す実施形態1のバイアス電圧生成回路10は、チャージポンプ回路32´と、ダイオード素子16、18と、キャパシタ17、19と、さらに、クランプ回路11によって構成されている。このバイアス電圧生成回路10は、図3に示した変換装置30のバイアス電圧生成回路32に相当するものである。つまり、バイアス電圧生成回路10を有する変換装置においても、図3に示した変換装置30と同様に、バイアス電圧生成回路10の他に、コンデンサマイクロフォン31および増幅器33を備えて構成される。
【0030】
チャージポンプ回路32´は、図4に示したバイアス電圧生成回路32と同様の各部を備えて構成される。
ダイオード素子16及びキャパシタ17、ダイオード素子18及びキャパシタ19は、低域通過フィルタ(整流器)を構成し、チャージポンプ回路32´から出力される出力信号に含まれる雑音を低減させるために、雑音成分の帯域を制限するフィルタリング処理を行うための回路である。ダイオード素子16のアノード端子は、チャージポンプ回路32´の出力に接続され、カソード端子は、一方の端子が接地されているキャパシタ17に接続される。ダイオード素子18のアノード端子は、ダイオード素子16のカソード端子に接続され、カソード端子は、一方の端子が接地されているキャパシタ19及び出力端子VOUTに接続される。
【0031】
クランプ回路11は、電流源12、ダイオード素子(第1のダイオード素子)13、MOSトランジスタ14、15によって構成されている。ダイオード素子13のアノード端子は、ダイオード素子16のカソード端子に接続され、カソード端子は、電流源12、MOSトランジスタ14のゲート端子に接続される。MOSトランジスタ14のドレイン端子およびソース端子のうちの一方の端子は、ダイオード素子18のカソード端子、出力端子VOUTに接続され、他方の端子は、ドレイン端子およびソース端子のうちの一方の端子が接地されているMOSトランジスタ15の他方の端子に接続される。このダイオード素子13は、ダイオード素子18に対して並列接続されている。よって、ダイオード素子13とダイオード素子18とは並列接続の関係にある。また、ダイオード素子18は、チャージポンプ回路32´と出力端子VOUTとの間のバイアス電圧が出力されるライン上に接続されると共に、そのライン上の最も最終段に接続されるバイアス電圧出力用ダイオード素子として機能する。MOSトランジスタ15のゲート端子は、チャージポンプ回路32´内の昇圧途中のノードN5に接続されている。尚、ダイオード素子、MOSトランジスタ、の各接続ノードを、各々N1、N2、N3、N4、N5と記す。
【0032】
次に、クランプ回路11の動作を説明する。
出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こしていない通常時は、電流源12によりダイオード素子13に微小な電流が流れている。このダイオード素子13は、ダイオード素子16とダイオード素子18との間で分岐して、グランドに接続されているライン上に、電流源12と共にダイオード素子16と直列に接続されている。一方、ダイオード素子13のカソード端子に接続されるノードN3の電位とダイオード素子18のカソード端子に接続されるノードN2の電位とは、ダイオード素子16のカソード端子に接続されるノードN1の電位からダイオード素子1個分の電位だけ夫々加算された電位であるので、等電位である。よって、MOSトランジスタ14はオフ状態のままであり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ14には電流は流れない。このように、通常時は、出力端子VOUTから電流が流れないので、コンデンサマイクロフォン31には所望の直流電圧が供給され、ノイズ特性が劣化することはない。
【0033】
コンデンサマイクロフォン31に大きな音圧が加えられ、出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こした時は、ノードN2の電位が一時的に上昇する。このとき、ノードN3の電位は変わらないので、MOSトランジスタ14はオン状態になり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ14に電流が流れる。出力端子VOUTからMOSトランジスタ14に電流が流れ始めると、出力端子VOUTの電圧が徐々に下げられ、ノードN2の電位は所望の電位に近づく。そして、ノードN2の電位とノードN3の電位が等電位になり、MOSトランジスタ14はオフ状態となり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ14には電流は流れなくなる。
【0034】
このように、MOSトランジスタ14はスイッチング素子として動作し、出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こし、所望の直流電圧以上になったときに、速やかに出力端子VOUTの電圧を下げ、所望の直流電圧に収束することができる。よって、出力端子VOUTに所望の直流電圧以上の電圧が出力されている不安定な状態が、長時間継続するということがない。
【0035】
尚、MOSトランジスタ15のゲート端子がチャージポンプ回路32´内の昇圧途中の所望のノードN5に接続されるような構成をとっているので、ノードN4を所望の電位とすることができる。よって、MOSトランジスタ14は、その半導体プロセスの絶対最大定格以上の電圧に対しても、耐圧条件違反を起こさないようになっている。また、本実施形態においては、MOSトランジスタ15は1個であるが、複数個であってもよい。MOSトランジスタ14が高耐圧のMOSトランジスタであるときは、MOSトランジスタ15を無くすことができ、MOSトランジスタ14を直接接地してもよい。
【0036】
尚、ダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されていてもよい。また、チャージポンプ回路32´は、Dickson型チャージポンプ回路に限定されず、例えば、Cockcroft−Walton型チャージポンプ回路やそのほか一般的なチャージポンプ回路でもよい。
【0037】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2のバイアス電圧生成回路を説明するための回路図である。図2に示す実施形態2のバイアス電圧生成回路20は、チャージポンプ回路32´と、ダイオード素子16、18と、キャパシタ17、19と、さらに、クランプ回路21によって構成されている。この実施形態2のバイアス電圧生成回路20は、実施形態1のバイアス電圧生成回路10のクランプ回路11を有しておらず、その代わりに、クランプ回路11と回路構成の異なるクランプ回路21を有している点において、実施形態1のバイアス電圧生成回路10と異なる。
【0038】
チャージポンプ回路32´は、図4に示したチャージポンプ回路32´と同様の各部を備えて構成される。
ダイオード素子16及びキャパシタ17、ダイオード素子18及びキャパシタ19は、図1に示した低域通過フィルタ(整流器)を同様に構成する。
クランプ回路21は、電流源22、MOSトランジスタ23、24、25、29によって構成されている。MOSトランジスタ(第1のダイオード素子)23はダイオード接続され、ドレイン端子およびソース端子のうちの一方の端子は、ダイオード素子16のカソード端子に接続され、他方の端子は、MOSトランジスタ25を介し、電流源22に接続される。MOSトランジスタ(第2のダイオード素子)24はダイオード接続され、ドレイン端子およびソース端子のうちの一方の端子は、ダイオード素子18のカソード端子、出力端子VOUTに接続され、他方の端子は、MOSトランジスタ25を介し、電流源22に接続される。電流源22は、ダイオード接続されているMOSトランジスタ29を介して接地されている。ダイオード接続されたMOSトランジスタ23は、ダイオード素子18に対して並列に接続されている。よって、MOSトランジスタ23とダイオード素子18とは、並列接続の関係にある。また、ダイオード素子18は、チャージポンプ回路32´と出力端子VOUTとの間のバイアス電圧が出力されるライン上に接続されると共に、そのライン上の最も最終段に接続されるバイアス電圧出力用ダイオード素子として機能する。MOSトランジスタ25のゲート端子は、チャージポンプ回路32´内の昇圧途中のノードN11に接続されている。尚、ダイオード素子、MOSトランジスタ、の各接続ノードを、各々N6、N7、N8、N9、N10、N11と記す。
【0039】
電流源22は、MOSトランジスタ26、27、キャパシタ28によって構成され、スイッチトキャパシタ型電流源を構成している。MOSトランジスタ26、27は直列接続され、その共通接続点はキャパシタ28に接続される。MOSトランジスタ26のドレイン端子およびソース端子のうちの共通接続点と接続されない端子は、MOSトランジスタ25に接続される。また、MOSトランジスタ26のゲート端子には、チャージポンプ回路32´内のクロック信号φ2が直接入力されている。同様に、MOSトランジスタ27のドレイン端子およびソース端子のうちの共通接続点と接続されない端子は、MOSトランジスタ29に接続される。また、MOSトランジスタ27のゲート端子には、チャージポンプ回路32´内のクロック信号φ1が直接入力されている。
【0040】
この電流源22は、スイッチトキャパシタ型電流源であって、チャージポンプ回路32´内の相補的なクロック信号φ1、φ2を使用し、安定的な微小電流を生成することができる。クロック信号φ1によりMOSトランジスタ26がオン状態、クロック信号φ2によりMOSトランジスタ27がオフ状態のときは、キャパシタ28が充電され、MOSトランジスタ26を介して電流が流れる。逆に、クロック信号φ1によりMOSトランジスタ26がオフ状態、クロック信号φ2によりMOSトランジスタ27がオン状態のときは、キャパシタ28が放電され、MOSトランジスタ27を介して電流が流れる。尚、MOSトランジスタ26、27のゲート端子に供給されるクロック信号は、互いに位相が逆で相補的な信号ならばよい。また、MOSトランジスタ26、27がPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタの組み合わせであれば、クロック信号は1つでよい。
【0041】
次に、クランプ回路21の動作を説明する。
出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こしていない通常時は、電流源22によりダイオード接続されたMOSトランジスタ23に微小な電流が流れている。このMOSトランジスタ23は、ダイオード素子16とダイオード素子18との間で分岐して、グランドに接続されているライン上に、電流源22及びMOSトランジスタ25,29と共にダイオード素子16と直列に接続されている。一方、ダイオード接続されたMOSトランジスタ23とダイオード素子18とは等価であり、ダイオード接続されたMOSトランジスタ23の一方の端子に接続されるノードN8の電位とダイオード素子18のカソード端子に接続されるノードN7の電位とは、ダイオード素子16のカソード端子に接続されるノードN1の電位からダイオード素子1個分の電位だけ夫々加算された電位であるので、等電位である。よって、ダイオード接続されたMOSトランジスタ24はオフ状態のままであり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ24には電流は流れない。このように、通常時は、出力端子VOUTから電流が流れないので、コンデンサマイクロフォン31には所望の直流電圧が供給され、ノイズ特性が劣化することはない。
【0042】
コンデンサマイクロフォン31に大きな音圧が加えられ、出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こした時は、ノードN7の電位が一時的に上昇する。このとき、ノードN8の電位は変わらないので、ダイオード接続されたMOSトランジスタ24はオン状態になり、出力端子VOUTからMOSトランジスタ24に電流が流れる。出力端子VOUTからダイオード接続されたMOSトランジスタ24に電流が流れ始めると、出力端子VOUTの電圧が徐々に下げられ、ノードN8の電位は所望の電位に近づく。そして、ノードN8の電位とノードN7の電位が等電位になり、ダイオード接続されたMOSトランジスタ24はオフ状態となり、出力端子VOUTからダイオード接続されたMOSトランジスタ24には電流は流れなくなる。
【0043】
このように、ダイオード接続されたMOSトランジスタ24はスイッチング素子として動作し、出力端子VOUTの電圧がオーバーシュートを起こしたときに、速やかに出力端子VOUTの電圧を所望の直流電圧に収束することができる。よって、出力端子VOUTに所望の直流電圧以上の電圧が出力されている不安定な状態が、長時間継続するということがない。
【0044】
尚、実施形態2のバイアス電圧生成回路20においても、実施形態1のバイアス電圧生成回路10と同様に、MOSトランジスタ25のゲート端子がチャージポンプ回路32´内の昇圧途中の所望のノードN11に接続されるような構成をとっているので、ノードN9を所望の電位とすることができる。よって、MOSトランジスタ26、27は、その半導体プロセスの絶対最大定格以上の電圧に対しても、耐圧条件違反を起こさないようになっている。また、本実施形態においては、MOSトランジスタ25は1個であるが、複数個であってもよい。MOSトランジスタ26、27が高耐圧のMOSトランジスタであるときは、MOSトランジスタ25を無くすことができる。
【0045】
同様に、MOSトランジスタ29はダイオード接続された構成をとっているので、ノードN10を所望の電位とすることができる。よって、MOSトランジスタ26、27は、その半導体プロセスの絶対最大定格以上の電圧に対しても、耐圧条件違反を起こさないようになっている。また、本実施形態においては、MOSトランジスタ29は1個であるが、複数個であってもよい。MOSトランジスタ26、27が高耐圧のMOSトランジスタであるときは、MOSトランジスタ29を無くすことができ、MOSトランジスタ27を直接接地してもよい。
【0046】
尚、ダイオード接続されたMOSトランジスタは、ダイオード素子で構成されていてもよい。また、チャージポンプ回路32´は、Dickson型チャージポンプ回路に限定されず、例えば、Cockcroft−Walton型チャージポンプ回路やそのほか一般的なチャージポンプ回路でもよい。電流源22は、スイッチトキャパシタ型電流源としたが、一般的な電流源であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明した本発明は、コンデンサマイクロフォンを用いる携帯電話機やICレコーダ、ビデオカメラ等の小型電子製品等で、音声をアナログ電気信号に変換するための変換装置として利用される。
【符号の説明】
【0048】
10、20、32 バイアス電圧生成回路
11、21 クランプ回路
13、16、18、41〜45 ダイオード素子
17、19、28 キャパシタ
14、15、23〜27、29、46〜49 MOSトランジスタ
12、22 電流源
32´ チャージポンプ回路
40 クロック信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサマイクロフォンを用いて音声を電気信号に変換する変換装置であって、
バイアス電圧を生成し、前記バイアス電圧を前記コンデンサマイクロフォンに出力するバイアス電圧生成回路を備え、
前記バイアス電圧生成回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧の電圧を下げるクランプ回路を有することを特徴とする変換装置。
【請求項2】
前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧が出力される出力端子から電流が引き抜かれるような動作状態にするためのスイッチング素子を有することを特徴とする請求項1に記載の変換装置。
【請求項3】
前記クランプ回路は、
前記バイアス電圧が出力される少なくとも1つのバイアス電圧出力用ダイオード素子と並列に接続された第1のダイオード素子と、
前記第1のダイオード素子に電流を供給する電流源と、
を有し、
前記スイッチング素子は、前記バイアス電圧と前記第1のダイオード素子の出力電圧とに基づいて、導通状態がオン状態またはオフ状態に切り替わるように制御されることを特徴とする請求項2に記載の変換装置。
【請求項4】
前記第1のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする請求項3に記載の変換装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子は、ソースまたはドレイン端子に前記バイアス電圧が供給され、ゲート端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給されるMOSトランジスタであることを特徴とする請求項3または4に記載の変換装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、入力端子に前記バイアス電圧が供給され、出力端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給される第2のダイオード素子であることを特徴とする請求項3または4に記載の変換装置。
【請求項7】
前記第2のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする請求項6に記載の変換装置。
【請求項8】
前記電流源は、スイッチトキャパシタ型電流源で構成されることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項9】
バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路であって、
前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧の電圧を下げるクランプ回路を有することを特徴とするバイアス電圧生成回路。
【請求項10】
前記クランプ回路は、前記バイアス電圧が所望の電圧以上になったときに、前記バイアス電圧が出力される出力端子から電流が引き抜かれるような動作状態にするためのスイッチング素子を有することを特徴とする請求項9に記載のバイアス電圧生成回路。
【請求項11】
前記クランプ回路は、
前記バイアス電圧が出力される少なくとも1つのバイアス電圧出力用ダイオード素子と並列に接続された第1のダイオード素子と、
前記第1のダイオード素子に電流を供給する電流源と、
を有し、
前記スイッチング素子は、前記バイアス電圧と前記第1のダイオード素子の出力電圧とに基づいて、導通状態がオン状態またはオフ状態に切り替わるように制御されることを特徴とする請求項10に記載のバイアス電圧生成回路。
【請求項12】
前記第1のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする請求項11に記載のバイアス電圧生成回路。
【請求項13】
前記スイッチング素子は、ソースまたはドレイン端子に前記バイアス電圧が供給され、ゲート端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給されるMOSトランジスタであることを特徴とする請求項11または12に記載のバイアス電圧生成回路路。
【請求項14】
前記スイッチング素子は、入力端子に前記バイアス電圧が供給され、出力端子に前記第1のダイオード素子の出力電圧が供給される第2のダイオード素子であることを特徴とする請求項11または12に記載のバイアス電圧生成回路。
【請求項15】
前記第2のダイオード素子は、ダイオード接続されたMOSトランジスタで構成されることを特徴とする請求項14に記載のバイアス電圧生成回路。
【請求項16】
前記電流源は、スイッチトキャパシタ型電流源で構成されることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載のバイアス電圧生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46385(P2013−46385A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185116(P2011−185116)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】