説明

変色体

【課題】 可逆熱変色層と、低屈折率顔料を含む吸液により透明又は半透明化する多孔質層とを並設してなり、生活環境温度域の温度変化及び水等の媒体によって多彩に色変化させた様相を視覚させることができ、前記変化した様相は、繰り返し、可逆的に再現できるため、多様な分野に応用展開が変色体を提供する。
【解決手段】 布帛等の支持体上に、可逆熱変色層と低屈折率顔料を含む多孔質層とを並設した熱又は水により変色する変色体、前記可逆熱変色層は図柄層を形成したり、多孔質層は図柄層を形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色体に関する。更に詳細には、熱及び/又は水により常態と異なる様相に変化する変色体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可逆熱変色性材料を適用した熱変色性加工体は、玩具、装飾分野等に広く適用されている。又、低屈折率顔料を含む多孔質層を設け、吸液状態で透明化して常態と異なる着色像を現出させる加工紙等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭50−5097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、前記可逆熱変色性材料と、吸液透明化材料との併用により、前記単一材料では奏することのできない、複合効果を発現させる変色体を提供し、玩具や装飾分野への応用展開を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、支持体上に、可逆熱変色層と低屈折率顔料を含む多孔質層とを並設してなり、熱又は水により変色する変色体を要件とする。
更には、前記可逆熱変色層が図柄層であること、前記多孔質層が図柄層であること、前記可逆熱変色層が図柄層であり、且つ、前記多孔質層が図柄層であること、前記支持体が布帛であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明変色体は、可逆熱変色層と、低屈折率顔料を含む吸液により透明又は半透明化する多孔質層とを並設してなり、生活環境温度域の温度変化及び水等の媒体により、多彩に色変化させた様相を視覚させることができ、前記変化した様相は、繰り返し、可逆的に再現できるため、玩具、意匠、ファッション、装飾分野等に応用展開が可能な変色体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記可逆熱変色層の形成に用いられる可逆熱変色性材料には、例えば、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物、液晶、AgHgI、CuHgI等が用いられる。
前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性材料として、具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44708号公報、特公昭52−7764号公報、特公平1−29398号公報、特開平7−186540号公報等に記載のものが挙げられる。前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
【0007】
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性材料も有効である。
【0008】
前記した電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性材料は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包して使用するのが好ましい。即ち、種々の使用条件において可逆熱変色性材料は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μmの範囲が実用性を満たす。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0009】
前記可逆熱変色性材料(好適には、前記マイクロカプセル化顔料)は、膜形成材料であるバインダー中に分散されて、インキ、塗料等の色材として、各種の支持体上に熱変色層を形成させることができる。
尚、非熱変色性の一般の染料や顔料等を前記熱変色層中に混在させて多彩に変色させることができる。
【0010】
前記支持体としては、紙、合成紙、布帛、植毛或いは起毛布、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材等、すべて有効である。
【0011】
前記バインダー中に含まれる樹脂は透明状の膜形成樹脂が好適であり、以下に例示する。
アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、リニヤ低密度ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、酢酸セルローズ、硝酸セルローズ、エチルセルローズ等を挙げることができる。
【0012】
前記多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であって、乾燥状態では下層を隠蔽し、水等の媒体を吸液すると透明又は半透明化して下層を視認でき、前記吸液した部分が乾燥すると再び元の状態に戻る層である。
又、多孔質層中に着色剤を含む場合、乾燥状態では有色透明化して下層を隠蔽し、水等の媒体を吸液すると有色透明又は有色半透明化して下層を視認でき、前記吸液した部分が乾燥すると再び元の状態に戻る層である。
前記着色剤としては一般有色染料や顔料、又は、蛍光染料や顔料が挙げられ、所望により二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料等を用いることもできる。
前記低屈折率顔料としては、微粒子状珪酸、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.7の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては微粒子状珪酸が挙げられる。微粒子状珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法微粒子状珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるもの(以下、湿式法微粒子状珪酸と称する)とに大別され、いずれを用いることも可能であるが、湿式法微粒子状珪酸を用いた場合、乾式法微粒子状珪酸の系に較べて常態での隠蔽性が大きいため、微粒子状珪酸に対するバインダー樹脂の混合比率を大きくすることが可能となり、多孔質層の皮膜強度を向上させることができるので、より好適に用いられる。
前記した如く多孔質層の常態での隠蔽性を満足させるために用いられる微粒子状珪酸としては、湿式法微粒子状珪酸が好ましい。これは、乾式法微粒子状珪酸と、湿式法微粒子状珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法微粒子状珪酸は以下に示されるような珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、
【化1】

湿式法微粒子状珪酸は、以下に示されるように、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。従って、前記乾式法微粒子状珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法微粒子状珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法微粒子状珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
【化2】

又、前記多孔質層に含まれる低屈折率顔料は、浸透する媒体が主に水であることから、適度の親水性を有することが望ましい。従って、湿式法微粒子状珪酸は乾式法微粒子状珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く存在するため親水性が高く、好適に用いられる。
【0013】
前記湿式法微粒子状珪酸を低屈折率顔料として用いる場合、湿式法微粒子状珪酸の種類、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸水状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m〜30g/mであることが好ましく、より好ましくは、5g/m〜20g/mである。1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/mを越えると吸水時に十分な透明性を得ることが困難である。
【0014】
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散して塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、カルボシキル化SBR樹脂、カルボキシル化NBR樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して顔料に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。よって、耐洗濯性、耐擦過性が必要となる用途においては、上述のバインダー樹脂としてウレタン系樹脂又はナイロン樹脂を用いるか、或いは前記樹脂を少なくとも含有することが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解及至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、媒体との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速性をコントロールすることもできる。
【0016】
本発明の変色体には、必要によって、一般染料、顔料を含む非変色性インキにより非変色層を設けたり、二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を含むインキにより金属光沢層を設けることもできる。
又、保護層や光安定剤層を適宜設けることもできる。具体的には、前記光安定剤層は紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を分散状態に固着した層である。
尚、帯電防止剤、極性付与剤、揺変性付与剤、消泡剤等を必要に応じ、可逆熱変色層や多孔質層に添加して機能を向上させることもできる。
【0017】
前記可逆熱変色層と多孔質層は必要により文字、記号、図形等の図柄層であってもよい。
又、非変色層を各層の間に介在させたり、上層に設けてもよく、同様に文字、記号、図形等の図柄層であってもよい。
前記可逆熱変色層、多孔質層、非変色層は、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、等の手段により形成することができる。
【0018】
本発明は前記可逆熱変色層と多孔質層が近接配置することにより、熱及び水のいずれかによって変色させることができ、変色手段の多様化、其に伴う多彩化とが相まって玩具性、意匠的効果を高める。
【0019】
本発明変色体は、平面状に限らず、線状、凹凸状、立体状等多様な形態が有効である。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を示す。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1(図1参照)
支持体4としてピンク色のナイロンタフタ生地上に、微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを180メッシュのスクリーン版を用いて、花の図柄を印刷し、130℃にて5分間乾燥硬化させて、多孔質図柄層31を形成した。
前記花の図柄を設けていない部分に、感温変色性色彩記憶性材料を内包したマイクロカプセル顔料(青色←→無色、15℃以下で青色、30℃以上で無色)10部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)10部、シリコーン系消泡剤0.2部、水1部、エチレングリコール0.5部、増粘剤0.5部、イソシアネート系架橋剤0.5部を均一に混合攪拌してなる可逆熱変色性スクリーンインキを109メッシュのスクリーン版を用いて印刷を行ない、130℃にて5分間乾燥硬化させて可逆熱変色図柄層21を形成した。
前記のようにして、支持体4上に多孔質図柄層31と可逆熱変色図柄層21を並設した変色体1を得た。
前記変色体1は、15℃以下に冷却すると支持体4のピンク色と可逆熱変色図柄層21の青色が混合となった紫色の部分と、多孔質図柄層31の花の図柄が視覚され、この様相は30℃未満の温度域で保持される。又、30℃以上に加温すると、可逆熱変色図柄層21が無色となり、支持体4のピンク色の部分と、多孔質図柄層31の花の図柄が視覚され、この様相は15℃を越える温度域で保持されるものであった。
【0021】
前記変色体1に15℃以下の冷水を付着させると、多孔質図柄層31が水の付着により透明化して、紫色の部分と、下層の支持体4によるピンク色の花の図柄が視覚される。前記変色体1を24℃の室温下で放置したところ、水が付着した多孔質図柄層31は、水が蒸発するに従い、徐々にピンク色から白色に戻り、乾燥状態に戻ると元の白色となった。
次に、前記変色体1に30℃以上の温水を付着させると、多孔質図柄層31が水の付着により透明化すると共に、可逆熱変色層が青色から無色に変色して支持体4によるピンク色の変色体が視覚できる。
前記ピンク色の変色体1を24℃の室温下で放置したところ、水が付着した多孔質図柄層31は、水が蒸発するに従い、徐々にピンク色から白色に戻り、乾燥状態に戻ると元の白色となった。
この様に、前記変色体1は、紫色の部分と白色の花柄、ピンク色の部分と白色の花柄、紫色の部分とピンク色の花柄、全面がピンク色の4状態を示す変色体を得ることができ、これは何度も繰り返し行なうことができた。
【0022】
比較例1
支持体としてピンク色のナイロンタフタ生地上に、感温変色性色彩記憶性材料を内包したマイクロカプセル顔料(青色←→無色、15℃以下で青色、30℃以上で無色)10部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)10部、シリコーン系消泡剤0.2部、水1部、エチレングリコール0.5部、増粘剤0.5部、イソシアネート系架橋剤0.5部を均一に混合攪拌してなる可逆熱変色性スクリーンインキを109メッシュのスクリーン版を用いて全面にベタ印刷を行ない、130℃にて5分間乾燥硬化させて可逆熱変色層を形成して変色体を得た。
【0023】
前記変色体は、15℃以下に冷却すると支持体のピンク色と可逆熱変色層の青色が混合して紫色が視覚され、この色調は30℃未満の温度域で保持される。又、30℃以上に加温すると、可逆熱変色層が無色となり、支持体のピンク色が視覚され、この色調は15℃を越える温度域で保持されるものであるが、色調の変化は2状態しかなく、変化性に乏しいものであった。
【0024】
比較例2
支持体としてピンク色のナイロンタフタ生地上に、微粉末シリカ〔商品名:ニップシールE−1011、日本シリカ工業(株)製〕15部、ポリカーボネート系ウレタンエマルジョン(固形分:30%)45部、水20部、シリコーン系消泡剤0.2部、エチレングリコール3部、水系増粘剤3部、ブロックイソシアネート系架橋剤1.5部を均一混合攪拌してなる白色スクリーン用インキにて、180メッシュのスクリーン版を用いて印刷し、130℃にて5分間乾燥硬化させて白色の多孔質層を設けて変色体を得た。
【0025】
前記変色体は、乾燥状態で白色を呈し、水を付着させると多孔質層が透明化して支持体のピンク色が視覚さるものであるが、色調の変化は2状態しかなく、変化性に乏しいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明変色体の一実施例の縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 変色体
21 可逆熱変色図柄層
31 多孔質図柄層
4 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、可逆熱変色層と低屈折率顔料を含む多孔質層とを並設してなり、熱又は水により変色する変色体。
【請求項2】
前記可逆熱変色層が図柄層である請求項1記載の変色体。
【請求項3】
前記多孔質層が図柄層である請求項1記載の変色体。
【請求項4】
前記可逆熱変色層が図柄層であり、且つ、前記多孔質層が図柄層である請求項1記載の変色体。
【請求項5】
前記支持体が布帛である請求項1乃至4のいずれかに記載の変色体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−281789(P2006−281789A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172051(P2006−172051)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【分割の表示】特願平10−283515の分割
【原出願日】平成10年9月17日(1998.9.17)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】