説明

変速機

【課題】回転装置の回転力を、流体を利用しない簡易な構造で強力な動力変換が可能な変速機を提供する。
【解決手段】変速機10の第1変速部11は、ケース12内に同軸状に挿入された入力回転軸27と、中間板24に回転自在に取り付けられた出力回転部材31と、入力回転軸27に固定された回転誘導部35と、回転誘導部35の外方に配置され入力回転軸27に回転自在に取り付けられた質量部材46を有する回転変換部45とを備えている。第2変速部61は、出力回転部材31に取り付けられた外歯車部材62と、外歯車部材62と右端板17との間に設けた取付板部材67の中心を挟んだ径方向の2か所に固定され、外歯車部64と螺合する中間歯車81,82を有する一対の中間歯車部材74,75と、右端板17と取付板部材67の中心を貫通して取り付けられ、中心歯車72が中間歯車81,82に螺合する出力歯車部材69とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、エレベータ、ベルトコンベア等の動力変換に用いられる変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変速機としては、流体の力学作用を利用したトルクコンバータが知られている。トルクコンバータは、例えば特許文献1に示すように、流体要素としてポンプインぺラ、タービンランナ、ステータを有し、ステータを固定軸上に支持するワンウェイクラッチを備えている。エンジンによってポンプインぺラが駆動されると、内部の流体がポンプの回転によってポンプインぺラに沿って外方に押し出され、タービンランナに流入してタービンランナにトルクを与えて回転させ、ステータを通って再びポンプインぺラに流入する循環主流が形成される。しかし、このトルクコンバータは、流体の循環を利用するものであり、流体を密封する構造であるため、構造が複雑であり高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−71610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、エンジン、電動モータ等の回転装置の回転力を、流体を利用しない簡易な構造で動力変換して外部駆動装置に伝達する変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、両端面が端板で封止された中空の筒形状であって、軸方向の中間位置で中間板により仕切られて第1筒部と第2筒部に分けられたケースを有し、第1筒部側が第1変速部になっており第2筒部側が第2変速部になっている変速機であって、第1変速部が、第1筒部の端板を貫通して両側に同軸状に延び、端板に回転自在にかつ軸方向に移動不能に支持され、外端側にて外部回転装置の回転軸に連結される入力回転軸と、第1筒部内にて、複数の磁石板が周方向に極性を揃えて筒状にかつ同軸状に配設された内側磁石の内外周面が筒状の内側支持部により挟持され、内側支持部の両端が磁気非透過材料で形成された一対の内円環板によって封止され、一対の内円環板の中心孔にて入力回転軸に挿嵌されて入力回転軸の所定位置に固定された回転誘導部と、第1筒部内の回転誘導部の外方に同軸状に配置され、筒状の質量部材の内周面側にて複数の磁石板が周方向に極性を揃えて筒状に配設されて内側磁石と隙間を隔てて対向して配置された内側磁石との間に互いに磁気反発力を生じる外側磁石が外側支持部によって質量部材の内周面に固定され、質量部材の両端が磁気非透過材料で形成された一対の外円環板によって封止され、一対の外円環板の中心孔にて入力回転軸に挿嵌されると共に入力回転軸に対して回転自在にかつ軸方向に移動不能に取り付けられた回転変換部と、中間板側の外円環板の外面に同軸状に固定され、中間板の中心孔を貫通すると共に中間板に回転自在に取り付けられて回転変換部を支持する出力回転部材と、を備えてなり、第2変速部が、第2筒部内に突出した出力回転部材に同軸状に固定された円環盤部と、円環盤部の中間板に対して反対面の外周縁に固定された環状で内周面の全周に沿って歯が形成された外歯車部とを設けた外歯車部材と、外歯車部材と第2筒部の他端との間に設けた取付板部材と、取付板部材の中心を挟んだ径方向の2か所にてそれぞれ固定されて中間板に向けて軸方向に平行に延びた支持軸と、各支持軸に回転可能に取り付けられた環状で外周面の全周に沿って歯が形成された外歯車部の半径より小径の中間歯車とを設け、各中間歯車が外歯車部に回転自在に螺合する一対の中間歯車部材と、第2筒部の端板及び取付板部材の中心を貫通して回転可能かつ軸方向に移動不能に取り付けられて第2筒部の軸方向内外に延びた出力軸と、出力軸の内端に同軸状に固定された環状で外周面の全周に沿って歯が形成された中心歯車とを設け、中心歯車が一対の中間歯車に回転自在に螺合し、出力軸の外端にて外部駆動装置に連結される出力歯車部材とを備えてなる、ことにある。
【0006】
上記のように構成した本発明においては、外部回転装置の回転により、第1変速部にて外部回転装置の回転軸に連結された入力回転軸が回転し、入力回転軸に同軸状に固定された回転誘導部が回転する。ここで、図9に示すように、回転誘導部35の内側支持部36に支持された内側磁石41と、回転変換部45の外側支持部54に支持された外側磁石57とは、その極性を合わせて配列されているため、両者の間に互いに磁気反発力を生じるようになっている。そのため、回転誘導部35の回転に伴う内側磁石41の回転により、内側磁石41との磁気反発力によって外側磁石57も内側磁石41と同一方向に回転しようとする。これにより外側磁石57を固定した回転変換部45も一体となって回転を開始するが、回転変換部45に設けた大きな重量の質量部材46が回転することにより大きな遠心力が発生し、そのために、回転変換部45は外部回転装置の回転力を変換した回転力を発生できる。
【0007】
この回転力が、出力回転部材を通して第2変速部に伝えられ、第2筒部内に突出した出力回転部材に同軸状に取り付けられた大径の外歯車部材が回転する。これに応じて、外歯車部材の外歯車部に螺合した外歯車部の半径より小径の中間歯車部材の中間歯車が、外歯車部材より高速で回転する。この中間歯車部材の回転が中間歯車に螺合した出力歯車部材の中心歯車に伝えられて、出力歯車部材が高速で回転し、その回転が外部駆動装置に伝達される。その結果、本発明においては、第1変速部で外部回転装置の回転が変換された回転力を発生でき、第2変速部で回転変換部よりさらに高速の回転力に変換されて、外部駆動装置に伝達されるため、強力な動力変換が可能になる。
【0008】
また、本発明によれば、内円環板と外円環板がステンレス、アルミニウム等の磁気非透過材料で形成されているため、内側磁石と外側磁石の大きな磁力は、筒状のケースの外部に漏れないように遮断される。その結果、本発明においては、内側磁石と外側磁石の大きな磁力が、回転誘導部による回転変換部への回転力の変換に有効に活用されると共に、磁力が外部に漏れることにより外部の電気機器に悪影響を与えるおそれもない。また、本発明によれば、変速機は、筒状のケース、入力回転軸、出力回転部材、回転誘導部、回転変換部、外歯車部材、取付板部材、中間歯車部材、出力歯車部材という簡易かつ安価な部材で構成されているため、安価に提供される。
【0009】
本発明において、第2筒部の端板及び取付板部材を軸方向に平行に貫通すると共に、回転可能かつ軸方向に移動不能に取り付けられて第2筒部の内外に延びた第2出力軸と、第2出力軸の内端に同軸状に固定された環状で外周面の全周に沿って歯が形成された外歯車部の半径より小径の第2中間歯車とを有し、第2中間歯車が外歯車部に回転自在に螺合する第2出力歯車部材を備え、第2筒部から外方に延びた第2出力軸が発電機の回転軸に連結可能にされることが好ましい。
【0010】
これにより、外歯車部材の回転に応じて第2出力歯車部材が外歯車部材より高速で回転する。そのため、その回転が発電機に伝達されて発電が行われ、発電機で発電された電力がバッテリーに充電されあるいは直接各種電気機器の電力として利用可能にされる。その結果、本発明によれば、変速機の回転が外部駆動装置の回転に加えて、他の電気機器の給電にも利用されるため、変速機の効率的な利用が可能になる。特に、バッテリーに充電された電力が変速機を回転させる電動モータ等の外部回転装置の駆動に利用されることにより、外部回転装置を含めた変速機全体としてのさらなる効率的な利用が確保される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1変速部において、回転誘導部と回転変換部における内側磁石と外側磁石の磁気反発力の作用により、回転誘導部の回転力が重い質量部材を有する回転変換部で変換され、第2変速部において、回転変換部からの出力が外歯車部材、中間歯車部材、出力歯車部材を経て高速の回転出力として外部の駆動装置に伝達されるため、簡易な構造で大きな動力変換が可能になる。また。本発明においては、第2変速部に第2出力歯車部材を設けることにより、第2出力軸を発電機に連結させて、第2出力歯車部材からの回転力により発電してバッテリーに蓄電することができ、外部の電気機器等の電源として利用することができるため、変速機のさらなる効率的な利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である変速機を用いた動力変換機構の概略構成を示す摸式図である。
【図2】同変速機を示す図3のII−II線方向の断面図である。
【図3】同変速機を示す止め具と押え具を省いた状態の右側面図である。
【図4】同変速機を示す図2のIV−IV線方向の断面図である。
【図5】同変速機を示す図2のV−V線方向の断面図である。
【図6】同変速機を示す取付板を省いた状態の図2のVI−VI線方向の断面図である。
【図7】図2における回転誘導部と回転変換部の一部を拡大して示す断面図である。
【図8】図4における回転誘導部と回転変換部の一部を拡大して示す断面図である。
【図9】同変速機の内側磁石と外側磁石との関係を説明する摸式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は一実施例である変速機を用いた外部回転装置である電動モータの回転を外部駆動装置である車両のトランスミッションへ伝達する動力変換機構を摸式図により示したものである。図2は変速機を軸線位置での断面図により示し、図3は変速機を右側面図により示し、図4、図5、図6は変速機をそれぞれ図2のIV−IV線方向とV−V線方向とVI−VI線方向の断面図により示したものである。なお、変速機10の左右、上下方向については、図2の左右、上下方向に合わせるものとする。
【0014】
変速機10は、軸方向の右端側の中間位置で中間板24により仕切られて第1筒部12aと第2筒部12bに分けられた円筒形のケース12を有しており、第1筒部12a側が第1変速部11になっており、第2筒部12b側が第2変速部61になっている。ケース12は、鉄製で円筒形の中空の容器であり、両端開放の円筒部13と、その左右両端にてボルト13aにより取り付けられた端板である円環形の左右端板14,17とを設けており、左右端板14,17によって両端面が封止されている。円筒部13内周面の右端近傍位置には、円環形の中間板24がボルト13aにより取り付けられており、ケース12が上記第1筒部12aと第2筒部12bとに仕切られている。ケース12は、軸方向両端側に固定された一対の支持脚12cにより水平な台等の上に設置固定される。
【0015】
左端板14の中心位置には小径の中心孔14aが設けられ、中心孔14aには環状のベアリング15が挿嵌されている。ベアリング15は、左端板14の右端にて中心孔14a内にわずかに径方向に突出した突起に係止されると共に左端板14の左側面に重ね合わされてボルトにより固定された環状の押え具16に挟まれて左端板14に固定されている。右端板17は、図3に示すように、中心位置に小径の中心孔17aを設け、中心孔17aに対して斜め右上位置に略同径の周辺孔17bを設けており、中央孔17aと周辺孔17bにはそれぞれ環状のベアリング18,22が挿嵌されている。ベアリング18,22は、右端板17の左側面に重ね合わされてボルトにより固定された環状の押え具21(図3には示さない)により右端板17に固定されている。中間板24の中央には大径の中央孔24aが設けられ、中央孔24aにはベアリング25が挿嵌されている。ベアリング25は、中間板24の右端にて中央孔24a内にわずかに径方向に突出した突起に係止されると共に中間板24の左側面に重ね合わされてボルト25bにより固定された環状の押え具25aにより挟まれて中間板24に固定される。
【0016】
左端板14に挿嵌されたベアリング15の中心孔には、入力回転軸27が同軸状に挿嵌されている。入力回転軸27は、左端側から所定距離隔てた3か所が段部27a,27b,27cになっており、それを境として順次外径がわずかずつ大きくなるようにされている。入力回転軸27の他端27dは、後述する外円環板48の中心孔48aに挿嵌されたベアリング51の中心孔に挿入されている。入力回転軸27は、その外側段部27aをベアリング15に当接させることによって軸方向外方に移動不能なようにベアリング15の中心孔に挿嵌されている。入力回転軸27は、一端側が左端板14からケース12の外方に延びており、左端板14からの延出部分には入力プーリ28が同軸状に挿嵌されて取り付けられている。
【0017】
中間板24のベアリング25の中心孔には、鉄製の円柱状の厚板である出力回転部材31が同軸状に挿嵌されている。出力回転部材31は、鉄製の円柱状の厚板である取付円盤部32を有しており、その左端側が径方向にわずかに延びた環状のフランジ部33になっている。出力回転部材31は、フランジ部33をベアリング25の内側端面に当てることによって軸方向外方に移動不能にベアリング25に取り付けられている。出力回転部材31は、取付円盤部32が中間板24の右方に延びており、その延出部分には後述する外歯車部材62が同軸状に嵌め合わされてボルト65によって固定されている。
【0018】
回転誘導部35は、内側支持部36と内側磁石41と左右一対の内円環板42とを設けている。内側支持部36は、入力回転軸27を囲んだ径方向外方に同軸状に配設されている。内側支持部36は、図7,図8に詳細に示すように、厚肉の鉄板を円筒状に加工した内筒部材37と、薄肉の鉄板を円筒状に加工した外筒部材38を同軸状に内外に配置したものであり、外筒部材38は内筒部材37より軸方向両側にわずかに延びている。内筒部材37は、外周面の周方向の等間隔な複数個所にて軸方向に延びた断面長方形の細い溝37aを設けている。複数の溝37aには、鉄製の断面正方形の仕切り線材37bが密着状態で嵌め合わされており、一部が溝37aから径方向外方に突出している。内外筒部材37,38の両端には、後述する内円環板42の一部を構成する鉄製の円環状の抜け止め部材39が配置されている。
【0019】
内外筒部材37,38の間には、内側磁石41が周方向に極性を揃えて円筒状に配設され、内外筒部材37,38によって挟持されている。内側磁石41は、複数の円弧状で薄肉の磁石板41aをN,Sの極性を揃えて周方向に並べたものをさらに軸方向に複数列配置したものであり、ネオジュムを含む強力かつ長寿命の磁石である。各磁石板41aは、内周面側の周方向両端にて切り欠かれて軸方向に延びた線状凹部41a1を設けている。内側磁石41は、内筒部材37の外周面の溝37aに嵌め合わされた仕切り線材37bに各磁石板41aの線状凹部41a1を嵌め合わせることにより、周方向に移動しないように位置決め固定される。なお、内側磁石41については、接着剤等により内外筒部材37,38に固定することも可能である。
【0020】
内筒部材37の両端開口には、それぞれ円筒状の厚板である内円環板42が挿嵌されている。各内円環板42は、磁気非透過材料であるステンレスで形成されており、中心に板を貫通した中心孔42aを設けており、また外周側において内側面側が全周に沿って断面長方形に切り欠かれた環状凹部42bを設けている。環状凹部42bは、内筒部材37の断面形状と同一であり、内筒部材37の端部が環状凹部42b内に嵌め合わされて、内円環板42が内筒部材37にボルト43aにより固定される。また、内円環板42には、外筒部材38と抜け止め部材39とがボルト43bにより固定される。回転誘導部35は、内円環板42をその中心孔42aにて入力回転軸27に挿嵌させ、左側の内円環板42外側面を入力回転軸27の段部27c位置に合わせ、軸方向両外側から止め具44で固定させることにより、軸方向に移動不能にかつ回転不能なように入力回転軸27に取り付けられる。
【0021】
ケース12内において、回転誘導部35の径方向外方には回転変換部45が同軸状に配置されている。回転変換部45は、質量部材46と左右一対の外円環板47,48と、外支持部54と外側磁石57とを設けている。質量部材46は、鉄製の径の異なる2本のパイプを嵌め合わせて形成した厚肉で第1筒部12aの内周面に近接した大径の大きな重量を有する円筒形状の部材であり、軸方向両端が回転誘導部35の軸方向両端に対して軸方向外方にわずかに延びている。左右の外円環板47,48は、磁気非透過材料であるステンレス製であり、中心にて軸方向に貫通した中心孔47a,48aを設けており、外周側において互いに対向する内側面側が、全周に沿って断面長方形に切り欠かれた環状凹部47b,48bを設けている。
【0022】
外円環板48の中心孔48a内にはベアリング51が挿嵌されており、左面側から止め板52により軸方向に移動不能なように中心孔48a内に固定されている。ベアリング51は、その中心孔に挿嵌された入力回転軸27の他端27dを受け止めるようになっている。外円環板47,48は、環状凹部47b,48bにより質量部材46の両端側に嵌め合わされて、ボルト49により固定されて質量部材46の両端開口を封止するようになっている。質量部材46の内周面には、内側支持部36の内側磁石41に対向して、内側磁石41と同じ材質のネオジュムを含む外側磁石57が配設されている。
【0023】
外側磁石57は、複数の円弧状の磁石板57aをN,Sの極性を内側磁石41の極性に揃えて周方向に並べさらにこれを軸方向に複数列配置したものであり、ネオジュムを含む強力かつ長寿命の磁石である。各磁石板57aは、外周面側の周方向両端に切り欠かれて軸方向に延びた線状凹部57a1を設けている。外側磁石57は、図7,図8に詳細に示すように、質量部材46の内周面の溝46aに嵌め合わされた仕切り線材46bに各磁石板57aの線状凹部57a1を嵌め合わせることにより、周方向に移動しないように位置決めされて固定される。外側磁石57は、鉄製で薄肉の筒状の外側支持部54によりその両端に設けた円環状の抜け止め部材55と共にボルト56により質量部材46に固定されている。なお、外側磁石57については、接着剤等により質量部材46に固定することも可能である。
【0024】
回転変換部45は、外円環板47,48の中心孔47a,48aにて入力回転軸27に挿嵌される。入力回転軸27の他端27dが、外円環板48の中心孔48a内に設けたベアリング51の中心孔内に挿嵌され、外円環板47内側面が入力回転軸27の段部27bに当接した状態で、外円環板47の外側にて止め具58により入力回転軸27に対して回転自在にかつ軸方向に移動不能なように取り付けられている。外円環板47と入力回転軸27との間には、両者が互いに回転可自在なように滑り処理が施されているが、これに代えて両者間にベアリングを介在させてもよい。右端側の外円環板48は、外側面にて接触する出力回転部材31にボルト65により固定されて一体にされている。外側磁石57は、複数の円弧状の磁石板57aを周方向に内側磁石41の極性を合わせて並べたもので、内側磁石41との間にわずかな隙間を隔てて配置されており、それにより内側磁石41との間に磁気反発力が発生するように構成されている。
【0025】
上記第1筒部12aの左端板14の中心を貫通して第1筒部12a内に挿入された入力回転軸27と、第1筒部12a内に収容され入力回転軸27に固定された回転誘導部35と、第1筒部12a内にて回転誘導部35の外方に同軸状に配置され入力回転軸27に回転自在に取り付けられると共に、他端側の外円環板48が出力回転部材31に固定された回転変換部45と、出力回転部材31とにより、第1変速部11が構成されている。
【0026】
中間板24に取り付けられた出力回転部材31の第2筒部12b側に突出した取付円盤部32には、外歯車部材62が同軸状に取り付けられている。外歯車部材62は、外円環板47,48とほぼ同径で薄肉の円盤部63と、円盤部63の外周縁に固定された環状の外歯車部64とを設けている。円盤部63は、取付円盤部32との対向面中央に取付円盤部32が嵌合される円形の凹部63aを有しており、反対面の外周縁に薄肉の環状で内周面の全周に沿って歯が形成された外歯車部64がボルト64aにより一体で固定されている。外歯車部材62は、円盤部63の凹部63aにて取付円盤部32の右端側に嵌合され、ボルト65により取付円盤部32に固定されると共に、取付円盤部32も外円環板48に一体で固定される。
【0027】
外歯車部材62と第2筒部12bの右端板17との間には、円形の薄板である取付板部材67が両者に平行に配置されて、ボルト13aにより第2筒部12b内周面に固定されている。取付板部材67は、図6に示すように、それぞれ板を貫通した中心孔67aと、中心孔67aを挟んだ径方向の上下二か所に取付孔67b,67cと、中心孔67aに対して斜め上方向の上記周辺孔17bに対応する位置に取付孔67dを有している。中心孔67aにはベアリング68が挿嵌されて取付板68aにより軸方向に移動不能に固定されている。ベアリング18とベアリング68には出力歯車部材69が取り付けられている。出力歯車部材69は、出力軸71とその一端の大径部71aに固定された中心歯車72とを設けている。中心歯車72は外周縁全周に沿って歯が形成されている。出力歯車部材69は、出力軸71をベアリング68側からその中心孔を経てベアリング18の中心孔に挿通させ、大径部71aをベアリング68に当接させ、ベアリング18の外側で止め具18aで固定することにより、右端板17と取付板部材67に対して回転可能にかつ軸方向に移動不能に取り付けられる。
【0028】
取付孔67b,67cにはそれぞれ中間歯車部材74,75が挿嵌されている。図2、図5、図6に示すように、中間歯車部材74,75は、支持軸76,77の大径部76a,77aにベアリング78,79が挿嵌されて頭部76b,77bに当接した状態で固定されており、ベアリング78,79の外周に中間歯車81,82が固定されている。中間歯車81,82は、外周縁全周に沿って歯が形成されている。中間歯車部材74,75は、支持軸76,77を取付孔67b,67cに挿入して大径部76a,77a端部を取付板部材67に当接させ、小径のねじ部76c,77cにナット83を螺着させることにより取付板部材67に取り付けられている。中間歯車部材74,75は、取付板部材67への取り付け状態で、一対の中間歯車81,82が出力歯車部材69の中心歯車72に互いに回転自在に螺合しており、さらに外歯車部材62の外歯車部64にも互いに回転自在に螺合している。本実施例においては、外歯車部64と、中間歯車81,82と、中心歯車72の外径の比は、略23:9:5になっており、回転速度の比は、略1:2.6:4.7になっている。なお、外歯車部64と、中間歯車81,82と、中心歯車72の外径の比については、用途によって適宜変更可能である。
【0029】
上記取付孔67dにはベアリング87が挿嵌されて押え具(図示しない)により軸方向に移動不能に固定されている。図5,図6に示すように、ベアリング22とベアリング87には、第2出力歯車部材84がその中心孔を挿通して取り付けられている。第2出力歯車部材84は、出力歯車部材69と同一構造であり、第2出力軸85とその一端の大径部に固定された第2中間歯車86とを設けている。第2中間歯車86は外周縁全周に沿って歯が形成されている。第2出力歯車部材84も、出力歯車部材69と同様、第2出力軸85を外歯車部材62側から取付孔67dを通してベアリング87,22の中心孔に挿通させ、ベアリング22の外側で止め具(図示しない)で固定することにより、右端板17と取付板部材67に対して回転可能にかつ軸方向に移動不能に取り付けられる。第2出力軸85の外端にはプーリ89が固定されている。
【0030】
上記第2筒部12b内に突出した出力回転部材31に取り付けられた外歯車部64を有する外歯車部材62と、外歯車部材62と右端板17との間に設けた取付板部材67と、取付板部材67の中心を挟んだ径方向の2か所にてそれぞれ固定されて中間板24に向けて軸方向に平行に取り付けられた一対の中間歯車部材74,75と、右端板17と取付板部材67の中心を貫通して取り付けられた出力歯車部材69と、右端板17と取付板部材67の周辺の一か所を貫通して取り付けられた第2出力歯車部材84と、により第2変速部61が構成されている。
【0031】
変速機10は、図1に示すように、その入力プーリ28が回転装置である電動モータ91の回転軸に取り付けられたプーリ92にベルト93を巻装することによって連結され、出力歯車部材69の出力軸71が外部駆動装置であるトランスミッション94の回転軸に連結され、またプーリ89が発電機であるダイナモ95のプーリ96にベルト97を介して連結される。ダイナモ95にはバッテリー98が接続され、ダイナモ95で発電された電力によってバッテリー98が充電される。バッテリー98が電動モータ91に接続されており、バッテリー98から電動モータ91に給電できるようになっている。
【0032】
上記構成の実施例においては、電動モータ91の回転により電動モータ91の回転軸に連結された入力回転軸27が回転し、入力回転軸27に同軸状に固定された回転誘導部35が回転する。ここで、回転誘導部35の内側支持部36に支持された内側磁石41と、回転変換部45の外側支持部54に支持された外側磁石57との間に互いに磁気反発力を生じているため、回転誘導部35と一体となった内側磁石41の回転により、内側磁石41からの磁気反発力によって外側磁石57も内側磁石41と同一方向に回転を開始する。これにより外側磁石57を固定した回転変換部45も回転を開始し、重量の大きな質量部材46が回転することにより大きな遠心力が発生し、そのために、回転変換部45は電動モータ91からの入力を変換した回転力を発生できる。
【0033】
つぎに、回転変換部45からの回転力が、出力回転部材31を通して第2変速部61に伝えられ、第2筒部12b内に突出した出力回転部材31に同軸状に取り付けられた外歯車部材62の円盤部63が回転し、これと一体になって大径の外歯車部64が回転する。これに応じて、外歯車部64に螺合した外歯車部64より小径の中間歯車81,82が、外歯車部64より高速で回転する。この中間歯車部材74,75の回転がこれに螺合する出力歯車部材69に伝えられて、出力歯車部材69が中間歯車部材74,75よりさらに高速で回転し、その回転が出力軸71を通してトランスミッション94に伝達される。その結果、本実施例においては、第1変速部11で電動モータ91の回転が変換された回転力を発生でき、第2変速部61で回転変換部45よりさらに高速の回転力に変換されて、トランスミッション94に伝達されるため、強力な動力変換が可能になる。
【0034】
さらに、外歯車部材62の回転に応じて第2出力歯車部材84が高速で回転し、その回転がプーリ92を介してダイナモ95に伝達され発電が行われる。ダイナモ95で発電された電力によりバッテリー98が充電され、さらにバッテリー98に蓄電された電力が電動モータ91に供給される。バッテリー98には、他の電力源からの充電も行われる。その結果、本実施例によれば、変速機10の回転力が、トランスミッション94の回転駆動に加えて、電動モータ91の回転にも利用されるため、動力のさらに有効な利用が可能になる。
【0035】
また、本実施例においては、内側磁石41と外側磁石57に発生した大きな磁力は、内円環板42と外円環板47,48がアルミニウム、ステンレス等の磁気非透過材料で形成されているためケース12の外部に漏れることが抑えられる。その結果、実施例においては、回転誘導部35による回転変換部35の回転力の伝達に有効に活用されると共に、外部に漏れた磁力により電動機等が破損する不具合を確実に防止できる。また、本実施例によれば、変速機10は、ケース12、入力回転軸27、出力回転部材31、回転誘導部35、回転変換部45、外歯車部材62、出力歯車部材69、中間歯車部材74,75、第2出力歯車部材84等の安価な部材からなる流体を必要としない簡易な構成の装置であるため、安価に提供される。
【0036】
なお、上記実施例において、回転誘導部35における抜け止め部材39と内円環板42を一体にする等の変更を行うことができる。また、電動モータ91と変速機の入力回転軸27との連結についても、ベルトを介することなく、互いの回転軸同士を直接連結させることも可能である。また、バッテリー98に充電された電力については、電動モータ91以外の電気機器への供給も可能である。さらに、上記実施例において、必要に応じて第2出力歯車部材を省き、第1出力歯車部材のみとすることも可能である。また、上記実施例においては、変速機を車両に使用しているが、車両以外の用途にも使用可能である。また、外部回転装置として、電動モータの代わりにエンジン等の他の回転装置を用いることも可能である。さらに、上記実施例において、第2出力歯車部材を、発電機の回転軸の代わりに他の回転駆動装置に連結させて使用することも可能である。その他、上記実施例に示した変速機については一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、変速機の第1変速部において回転誘導部と回転変換部における内側磁石と外側磁石の磁気反発力の作用により、回転誘導部の回転力が回転変換部で変換され、第2変速部において、回転変換部からの出力が外歯車部材、中間歯車部材、出力歯車部材を経て高速の回転出力として外部の駆動装置に伝達されるため、簡易な構造で大きな動力変換が可能になるので、有用である。
【符号の説明】
【0038】
10…変速機、11…第1変速部、12…ケース、12a…第1筒部、12b…第2筒部、14,17…左右端板、15,18,22…ベアリング、24…中間板、27…入力回転軸、31…出力回転部材、35…回転誘導部、36…内側支持部、41…内側磁石、45…回転変換部、46…質量部材、47,48…外円環板、54…外側支持部、57…外側磁石、61…第2変速部、62…外歯車部材、64…外歯車部、67…取付板部材、69…出力歯車部材、72…中心歯車、74,75…中間歯車部材、81,82…中間歯車、84…第2出力歯車部材、86…第2中間歯車、91…電動モータ、94…トランスミッション、95…ダイナモ、98…バッテリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面が端板で封止された中空の筒形状であって、軸方向の中間位置で中間板により仕切られて第1筒部と第2筒部に分けられたケースを有し、前記第1筒部側が第1変速部になっており前記第2筒部側が第2変速部になっている変速機であって、前記第1変速部が、
前記第1筒部の端板を貫通して両側に同軸状に延び、該端板に回転自在にかつ軸方向に移動不能に支持され、外端側にて外部回転装置の回転軸に連結される入力回転軸と、
前記第1筒部内にて、複数の磁石板が周方向に極性を揃えて筒状にかつ同軸状に配設された内側磁石の内外周面が筒状の内側支持部により挟持され、該内側支持部の両端が磁気非透過材料で形成された一対の内円環板によって封止され、該一対の内円環板の中心孔にて前記入力回転軸に挿嵌されて該入力回転軸の所定位置に固定された回転誘導部と、
前記第1筒部内の前記回転誘導部の外方に同軸状に配置され、筒状の質量部材の内周面側にて複数の磁石板が周方向に極性を揃えて筒状に配設されて前記内側磁石と隙間を隔てて対向して配置された該内側磁石との間に互いに磁気反発力を生じる外側磁石が外側支持部によって前記質量部材の内周面に固定され、該質量部材の両端が磁気非透過材料で形成された一対の外円環板によって封止され、該一対の外円環板の中心孔にて前記入力回転軸に挿嵌されると共に該入力回転軸に対して回転自在にかつ軸方向に移動不能に取り付けられた回転変換部と、
前記中間板側の前記外円環板の外面に同軸状に固定され、該中間板の中心孔を貫通すると共に該中間板に回転自在に取り付けられて前記回転変換部を支持する出力回転部材と、
を備えてなり、前記第2変速部が、
前記第2筒部内に突出した前記出力回転部材に同軸状に固定された円環盤部と、該円環盤部の前記中間板に対して反対面の外周縁に固定された環状で内周面の全周に沿って歯が形成された外歯車部とを設けた外歯車部材と、
前記外歯車部材と前記第2筒部の他端との間に設けた取付板部材と、
該取付板部材の中心を挟んだ径方向の2か所にてそれぞれ固定されて前記中間板に向けて軸方向に平行に延びた支持軸と、該各支持軸に回転可能に取り付けられた環状で外周面の全周に沿って歯が形成された前記外歯車部の半径より小径の中間歯車とを設け、該各中間歯車が前記外歯車部に回転自在に螺合する一対の中間歯車部材と、
前記第2筒部の端板及び前記取付板部材の中心を貫通して回転可能かつ軸方向に移動不能に取り付けられて該第2筒部の軸方向内外に延びた出力軸と、該出力軸の内端に同軸状に固定された環状で外周面の全周に沿って歯が形成された中心歯車とを設け、該中心歯車が前記一対の中間歯車に回転自在に螺合し、該出力軸の外端にて外部駆動装置に連結される出力歯車部材とを備えてなる、
ことを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記第2筒部の端板及び前記取付板部材を軸方向に平行に貫通すると共に、回転可能かつ軸方向に移動不能に取り付けられて該第2筒部の内外に延びた第2出力軸と、該第2出力軸の内端に同軸状に固定された環状で外周面の全周に沿って歯が形成された前記外歯車部の半径より小径の第2中間歯車とを有し、該第2中間歯車が前記外歯車部に回転自在に螺合する第2出力歯車部材を備え、前記第2筒部から外方に延びた前記第2出力軸が発電機の回転軸に連結可能にされることを特徴とする請求項1に記載の変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149523(P2011−149523A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12549(P2010−12549)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【特許番号】特許第4523672号(P4523672)
【特許公報発行日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(597153523)有限会社窪工機 (1)
【Fターム(参考)】