説明

外壁パネル固定構造及び壁受け部材

【課題】基礎梁等に対して外壁パネルを偏芯させて配置する外壁パネル固定構造について、ロッキングの挙動が確保できる基礎梁と外壁パネル下部に関する外壁パネル固定構造を提供する。
【解決手段】外壁パネル50を壁受け部材を介して梁30の天端面31に固定した建物の外壁パネル固定構造であって、壁受け部材は、起立片と第一の水平片と第二の水平片とを有し、第一の水平片上に設けられたかさ上げ部を有する。第二の水平片は、梁30の天端面31に固定され、外壁パネル50は、その下端51を該かさ上げ部の台部に載せて該かさ上げ部と第一の水平片を介して梁30の天端面31に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は外壁パネルの下部の梁(基礎梁)への固定構造に関する。具体的には、基礎梁と外壁パネルとの取付け構造に関するものである。さらに、本発明は当該構造に用いられる壁受け部材にも関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
図7は、工業化住宅の外壁部の断面図を示す例である。基礎梁30または二階梁35に外壁パネル50が取り付けられる。
【0003】
従来の基礎梁や土台の天端面に載せた外壁パネルの固定構造は、図8に示すとおり、基礎梁30等の天端面31から突設したたボルト71を外壁パネル50の下端小口面から開けられた孔に埋設されたナット(図示せず)で固定する構造が公知である。
【0004】
また、基礎梁等の天端面に外壁パネルと床パネルを同時に載せる場合には、基礎梁の幅が不足するのを補うよう、図9に示すように、支持部材201を設け、断面視で外壁パネル50を基礎梁30の外面からせり出した(基礎梁芯から偏芯させた)状態で固定する構造が公知である(特許文献1)。図9において、基準線となる通り芯14及び床仕上面15が示されている。当該構造に利用される、支持部材201の例を図10に示す。支持部材201は2つのアングル210と220とから構成される。
【0005】
なお、建築物の軸組躯体に帳壁を取り付ける際、帳壁が外力で破壊されることがないように軸組が負担すべき外力を直接帳壁に伝達しない、いわゆるロッキング構造が公知となっている(特許文献2)。これは図11に示すように、水平力を受けた躯体が揺れに応じて帳壁(外壁パネル50)も所定範囲で動く構造である。
【0006】
また、外壁パネルの裏面から埋設されたナットにボルトを螺合して裏面から突設させ、ボルトの先端に稲妻プレートをその挿通孔から挿入して該稲妻プレートを外壁パネルの裏面に沿って固定し、さらに外壁パネルと稲妻プレート下部の間にできる隙間を基礎天端面に配置したアングル片を挿入して(短冊プレート方式)、外壁パネルをスライド可能にさせることにより外壁パネル面に平行な方向に及ぶ水平力を逃がす取付構造が公知である(特許文献3及び4)。
【0007】
図11に示すロッキング構造では、外壁パネルの下端小口がパネル全幅に亘り基礎の天端面(アングル材)に接触して載せられているので、ロッキング時に外壁パネル下両端が基礎天端にぶつかる。このため、外壁パネルの揺動範囲にはおのずから制限があった。また、建物の振幅が予想外に大きくなると外壁パネルが傷つくおそれも残されていた。
【0008】
また、特許文献5には、図12に示すように、基礎部分であるコンクリート梁41に立ち上がり部と欠きこみ部が設けられ、立ち上がり部の頂部に溝型鋼43を設け、さらに連結片部46aを有する受け金具46、受け金具46に固定した揺れ規制部47に嵌合する取付金具44を有し、取付金具44の孔から外壁パネル50壁面下部に貫通ボルト45を挿入してナットで締結することにより梁41に外壁パネル50を支持するとともに、梁41の欠きこみ部に、外壁パネル下端を納め、下端小口には支持部材48で支持する構造が開示されている。また、特許文献6には、外壁パネル下端中心の直下に支持部材を設ける構造が記載されている。
【特許文献1】:特許第3734862号公報
【特許文献2】:特許第3701486号公報
【特許文献3】:特許第4004351号公報
【特許文献4】:実公平04−004084号公報
【特許文献5】:実公平6−26651号公報
【特許文献6】:特開2009−97184号公報
【0009】
(先行技術の問題点)
しかしながら、図12に記載された構造では支持部材48と揺動部がコンクリート製梁41の別々の部位に設けられており、支持部材と揺動部に一体性がなく挙動が不確実である。また、RCと思われる梁41と外壁パネル50の間にシーリングが施されるが、密着性や防水性も危ういと思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の目的)
本願発明は、上記問題点の解決を図ることを目的とし、基礎梁等に対して外壁パネルを偏芯させて配置する外壁パネル固定構造について、ロッキングの挙動が確保できる基礎梁と外壁パネル下部に関する外壁パネル固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために、本願発明では、外壁パネル(50)を壁受け部材(1)を介して梁(30)の天端面(31)に固定した建物の外壁パネル固定構造であって、
該壁受け部材(1)は、起立片(10)と第一の水平片(11)と第二の水平片(12)とを有し、第一の水平片(11)には、少なくとも立上げ部(26)と台部(27)とを有するかさ上げ部(2)が設けられ、
第二の水平片(12)が、梁(30)の天端面(31)から突設するアンカーボルト(70)に挿通されることにより梁(30)に固定され、
外壁パネル(50)の下端(51)が台部(27)に載せられ、
外壁パネル(50)の裏面(52)から突設するボルト(75)を軸に回動可能に裏面(52)に固定された短冊プレート(3)と裏面(52)とが対向して形成された隙間部(60)に起立片(10)が挿し込まれて、梁(30)の天端面(31)に外壁パネル(50)が支持されることを特徴とする。
ここで、外壁パネル(50)の下端(51)は、いわゆる小口面の部分であり、外壁パネル(50)の幅の略中央部が、かさ上げ部(2)の台部(27)に載せられる例が考えられる。
【0012】
また、前記壁受け部材(1)は、第一の水平片(11)と第一の起立片(101)とからなる第一のL型アングル(110)と第二の水平片(12)と第二の起立片(102)とからなる第二のL型アングル(120)とが互いの起立片(101、102)を背中合わせに面着させて前記起立片(10)を形成するように構成されたことを特徴とする。
例えば、前記かさ上げ部(2)を挟んだ両側において締結部材(73,74)で固定されること等により2つの起立片を面着させるのである。
【0013】
さらに、前記壁受け部材(1)は長尺部材であり、前記かさ上げ部(2)は外壁パネル(50)の幅寸法の間隔で壁受け部材(1)の第一の水平片(11)上に設けられたことを特徴とする。
【0014】
さらに、 前記壁受け部材(1)には、かさ上げ部(2)を形成するかさ上げ部材(21)が配置されたことを特徴とする。また、さらに、前記壁受け部材(1)には、前記かさ上げ部材(21)を配置する基準となる目印が設けられたことを特徴とする。
【0015】
あるいは、前記かさ上げ部と壁受け部材(1)とが一の板状部材で構成されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記壁受け部材(1)において、第一のL型アングル(110)が長尺部材であり、第二のL型アングル(120)が小物部材であり第一のL型アングル1個につき複数個配置されたことを特徴とする。
【0017】
さらに、壁受け部材(1)の第一の水平片(11)と外壁パネル(50)の下端との間に弾性シーリング材(4)が充填されていることを特徴とする。また、さらに、壁受け部材(1)の第一の水平片(11)と外壁パネル(50)の下端(51)とで形成される隙間に弾性を有する鋼板(61)を介在させてシーリングポケット(63)を形成し、該シーリングポケット(63)に弾性シーリング材(4)が充填されていることを特徴とする。
【0018】
さらに梁(30)の天端面の基準線である通り芯(14)を挟んだ一方側には、外壁パネルが配置され、通り芯(14)を挟んだ他方の側には、床パネル(40)が配置されて支持されていることを特徴とする。また、さらに、 前記かさ上げ部(2)の高さ(28)に合せた厚さの下地層(85)が前記床パネル(40)に設けられていることを特徴とする。また、さらに、 前記下地層(85)が断熱フォームであることを特徴とする。
【0019】
一方、本願発明は、建物の外壁パネル(50)を梁(30)の天端面(31)に固定するための壁受け部材(1)であって、該壁受け部材(1)は、起立片(10)と第一の水平片(11)と第二の水平片(12)とを有し、第一の水平片(11)には、少なくとも立上げ部(26)と台部(27)とを有するかさ上げ部(2)が設けられ、第二の水平片(12)が、梁(30)の天端面(31)から突設するアンカーボルト(70)に挿通されることにより梁(30)に固定され、外壁パネル(50)の下端(51)が台部(27)に載せられ外壁パネル(50)の裏面(52)から突設するボルト(75)を軸に回動可能に裏面(52)に固定された短冊プレート(3)と裏面(52)とが対向して形成された隙間部(60)に起立片(10)を挿し込むように構成されたことを特徴とする。
【0020】
さらに、第一の水平片(11)と第一の起立片(101)とからなる第一のL型アングル(110)と第二の水平片(12)と第二の起立片(102)とからなる第二のL型アングル(120)とが互いの起立片(101、102)を背中合わせに面着させて、前記起立片(10)を形成可能となるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願発明では、外壁パネルの基礎梁への取り付け部(搖動部)にかさ上げ部を一体化するか、取り付け部(搖動部)にかさ上げ部の位置を一致させているのでロッキング挙動が確実になり、優れた耐震性能を有するという顕著な作用・効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明による外壁パネル構造の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本願発明第一の実施形態による外壁パネル構造の詳細図である。
【図3】本願発明による壁受け部材の一実施例を示す図である。
【図4】第一のL型アングルとかさ上げ部とを1枚板材から作成した例の斜視図である。
【図5】薄板鋼板61の実施例を示す図である。
【図6】第一の実施形態と第二の実施形態との相違を示す図である。
【図7】工業化住宅の外壁部の断面図の例である。
【図8】外壁パネルを基礎梁に固定する場合、従来の固定構造例を示す図である。
【図9】外壁パネルを基礎梁芯から偏心させた状態で基礎梁に固定する場合の、従来の構造例を示す図である。
【図10】従来構造に用いられる支持部材の例を示す。
【図11】ロッキング構造を示す図である。
【図12】外壁パネルを基礎梁に固定する場合、他の従来の固定構造例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一実施形態)
第一実施形態は、本発明に係る基本的な外壁パネル固定構造であり、外壁パネルの下端(小口面)の略中央部で支持部品により1点支持する。当該支持部品である壁受け部材は、建物の設計モジュール寸法に従って等間隔で、基礎梁に設けられるアンカーボルトによって締結される構成である。
【0024】
図1には第一の実施形態の全体構造を示し、図2のうち(b)には建物の外壁パネル固定構造の組立部分の断面図を、(a)及び(c)には、それぞれ(b)におけるA−A及びB−Bによる断面を示す。図3にはこの構造に用いられる壁受け部材1の実施例を示す。各部分の構造を下記に説明する。
【0025】
(1)梁
建物の基礎梁30は、断面形状が逆T字やL字の形状の鉄筋コンクリート製の連続布基礎の基礎梁部分であり、複数の外壁パネル50をその側面を突き合わせて並べ(図示せず)、支持部品である壁受け部材1を設け、壁受け部材1を介在させて、順次基礎梁30の上端面(天端面)31に固定する。建物の基礎梁30は、鉄筋コンクリート製に限らず、鋼材の梁(H型鋼、C型鋼、他)が採用可能である。図1には、基準線である通り芯14が示される。
【0026】
(2)壁受け部材
壁受け部材1は、起立片10、第一の水平片11、第二の水平片12及びかさ上げ部2を有し、立上げ部26と台部27とを有したかさ上げ部2が第一の水平片11上に設けられる。第一の水平片11は起立片10とともに外壁パネル50の下部を受け持ってこれを固定するために設けられる。第一のL型アングルにおける垂れた部分18は、水切りのために設けたものであるが、後に説明する鋼板61をはめる場合の係止のためにも有用である。
【0027】
第二の水平片12は、基礎梁30に埋め込まれたアンカーボルト70を利用して壁受け部材1を固定するための部分である。第二の水平片12は、梁30の天端面31から突設するアンカーボルト70に挿通してナット(図示せず)で締結されることにより梁30の天端面31に固定される。
【0028】
前記壁受け部材1は、好ましくは、第一の水平片11と第一の起立片101とからなる第一のL型アングル110と、第二の水平片12と第二の起立片102からなる第二のL型アングル120とが互いの起立片101及び102を背中合わせに面着して構成される。この場合面着された第一の起立片101及び第二の102が起立片10を構成する。
【0029】
図2に示されるように、第一のL型アングル110と第二のL型アングル120互いの起立片101及び102の面着は、一組のボルト73とナット74などの締結部材を使用している。梁30の天端面31から突設するアンカーボルト70を挟んだ位置で締結し、締結部材の間にかさ上げ部2を設けている。
第一のL型アングル110及び第二のL型アングル120は、連続布基礎の基礎梁である梁30の天端面の長さ方向に沿って設置されるが、連続する「長尺物部材」とすることができ、外壁パネル50の配置間隔に適応させて等間隔に配置する「小物部材」とすることでもよい。いずれの場合にも壁受け部材1に設けられるかさ上げ部2が各外壁パネル50の略中央の位置するように配置される。
【0030】
かさ上げ部2は、かさ上げ部材21が第一の水平片11上に配置されていることにより形成されている。図1ないし図3において、かさ上げ部2は、断面ロの字型となる、第一のL型アングル110とは別の部材で構成される。このとき、壁受け部材1、具体的には第一の水平片11,第二の水平片21または起立片10のいずれかに、かさ上げ部材21を配置する基準となる目印(図示せず)を設けると便利である。目印は例えば、第一の水平片11においてかさ上げ部材21を配置する場所に浅い凹部を設けることで実現できる。
【0031】
一方、図4に壁受け部材1の別の実施例を示す。第一の水平片11及び第一の起立片101の中央部を折り上げ加工をして、かさ上げ部2を第一のL型アングル110と一体的に形成した例である。このように、壁受け部材1とかさ上げ部2とを1枚の板材から制作することが可能である。
【0032】
第一のL型アングル110と第二L型アングル120とは、基礎梁30に比較して十分短い長さを有する「小物部材」である。例えば、外壁パネルの幅寸法(例えば610mm)に一致させてもよいが、図4では、外壁パネルの幅寸法(610mm)に対して、150mm〜200mm程度に第一及び第二のL型アングルの長さを合わせている。(もちろん、かさ上げ部材21を第一のL型アングル110とは別の部材で構成した場合においても、図4と同様、外壁パネルの幅寸法(610mm)に対して150mm〜200mm程度に第一及び第二のL型アングルの長さを設定することも可能である。)第一のL型アングルと第二のL型アングルとを背中合わせに面着させる際、かさ上げ部2の両側においてボルト・ナットで締結して固定するようになっているが、これに換えて溶接して一体化してもよい。この場合、両側のボルト・ナットに挟まれた位置(設計モジュール寸法X=610mmの間隔で設けられている。)を目印としてかさ上げ部材2を設けることができる。
【0033】
また、かさ上げ部2の長さは例えば100mmであり、かさ上げ部2によってかさ上げされる寸法、すなわちかさ上げ寸法28の例は30mmである。
【0034】
(3)外壁パネルの固定
外壁パネル50は、その下端(小口面)51の中央部を前記台部27に載せることにより、梁30の天端面31に配置される。
【0035】
ここで、短冊プレート3を利用して、壁受け部材1を外壁パネル50に固定する。短冊プレート3はその裏面から突設されるボルト75を軸に回動可能に外壁パネル50の裏面に固定される。該短冊プレート3と該外壁パネル50の裏面52とが対向して形成された隙間部60に前記壁受け部材1の起立片10が挿し込まれて支持される。このような構造を設けるため、短冊プレート3は断面が稲妻形をしていることが好ましい。
【0036】
(4)隙間部のシーリング等
好ましくは、外壁パネル50と壁受け部材1とで構成される隙間にシーリング部材4を充填し、さらに好ましくは、隙間形状に係合する厚さの薄い鋼板61を嵌めた上で、シーリング部材4を充填する。この構造を下記に示す。
【0037】
壁受け部材1の第一の水平片11と外壁パネル50の下端(小口面)51とで形成される隙間形状に係合する弾性を有する鋼板61を嵌める。鋼板61の斜視図を図5に示す。鋼板61は基礎梁30の長さに対応した長尺部材とすることが好ましい。鋼板61の厚さは、0.4mm厚程度であるが、弾性を有して形状が保持される限り厚さは限定されない。また、樹脂材などでも良い。
【0038】
鋼材61は、かさ上げ部2の立上げ部(26)にビス77等で固定される。このため鋼板61には、かさ上げ部2の配置間隔に合わせて、ビス孔78を予め設けておくことが好ましい。
【0039】
かさ上げ部2のかさ上げ寸法28が、例えば30mmを越え50mm前後と大きい場合は、鋼板61によりシーリングポケット63を形成し、シーリングポケット63は弾性シーリング材4を打設して充填される。これにより、弾性を有する鋼板61と弾性シーリング材4により、外壁パネル50と基礎梁30の天端面31との隙間の防水を確実にするとともに、外壁のかさ上げ部2を支点とする外壁パネル50の揺れを一定範囲に押さえ、かつ減衰させる効果が期待できる。シーリング部材は、ポリウレタン樹脂製が使用されるが、
これに限らず、弾性、コンクリートや鋼材等との密着性、防水性を有する限りあらゆる材料が使用可能である。
【0040】
なお、かさ上げ部2のかさ上げ寸法28が、例えば10mm〜20mm程度と小さい場合は、鋼板61を嵌めでシーリングポケットを形成せずに、外壁パネル50と壁受け部材1とで構成される隙間にシーリング材を充填することも可能である。
【0041】
(5)床パネル、下地層(断熱材)
さらに、基礎梁30の天端面31の上に床パネル40を設ける。この場合、外壁パネル50と該床パネル40の間にモルタル90を介在させることが行われる。床パネル40の上には、必要に応じて断熱フォーム85などの下地層を敷く。断熱フォームの層厚を前記壁受け部材1のかさ上げ部2の台部の高さ(かさ上げ寸法28)に一致させると、柱梁の構成(軒高や柱梁の取り付き位置)、部材の設計を変更せずに、基礎梁の天端高を下げて床パネルを敷設して、その高さに一致した層厚の断熱フォームを敷くことが可能であり好都合である。断熱材が入るので住宅の床部の高断熱化に寄与する。
【0042】
本実施形態においては、つぎのような作用効果を有する。
【0043】
外壁パネルの基礎梁への取り付け部(搖動部)にかさ上げ部を一体化するか、取り付け部(搖動部)にかさ上げ部の位置を一致させているのでロッキング挙動が確実になり、優れた耐震性能を有するという顕著な作用・効果を有する。
【0044】
また、外壁パネルの下側(小口面)の両端は、基礎天端面と隙間を形成し、中央部でのみ支えられるので、躯体全体が揺れたときに、外壁パネルの搖動(ロッキング)を妨げない。また、搖動により外壁パネルが傷つくことがない。
【0045】
特に、外壁パネルがALC(軽量気泡コンクリート)である場合、ALCの基材・表面を傷めたりへこませたりすることなく、ALC自体を搖動することがきる。
【0046】
外壁パネルと壁受け部材の隙間に弾性シーリング材が充填された場合、かさ上げ高さを十分に確保しつつ、下部基礎梁との隙間を弾性及び水密性のある部材で構成したので、躯体の層間変形角が大きな場合にも外壁のロッキング挙動を制限することなく挙動範囲にも十分な余裕があり、また、一方、薄板鋼板をはめ込んだ場合は、薄板鋼板の作用によりロッキングによる外壁パネルの挙動範囲が大きくなりすぎることを抑えることができる。これによりシーリングの亀裂等による防水部の破壊を回避することができる。
【0047】
また、かさ上げ部のかさ上げ寸法の分だけ、ALC等の床パネルの床下げ対応が可能である。また、床の層構成(断熱材の追加等)を厚くすることができる。また、床下げ及び層構成の変更調整が可能である。
【0048】
すなわち、かさ上げ部のかさ上げ寸法の分だけ、工業化住宅の基礎の天端を低くすることにより階高寸法を大きくすることができるので、外壁パネルの高さ寸法を変更せずに済む。しかも基礎天端に載せる床パネルの面が下がるので、従来の規格のまま、室内天井高を高くしたり、床下地の断熱材の厚さを増やしたりすることができる。したがって、工業化住宅において、工業化住宅の規格化された外壁パネルをそのまま使用して躯体システムの軒高を変更せずに(すなわち、有効天井高を低くせずに)床の断熱材層を厚くして躯体の省エネ性能を向上させつつ建物の地震時等に生じるロッキング挙動範囲を十分に確保し、基礎梁と外壁パネル下部の防水性が高い外壁パネル(下部の)固定構造となる。法令に基づく建築制限により有効天井高を高くすることができない場合に好都合である。
【0049】
(第二実施形態)
つぎに本願発明による 外壁パネル固定構造の第二の実施形態を示す。
本実施形態は、壁受け部材1の構成が異なる点が相違するほかは、第一実施形態と共通である。本実施形態は、壁受け部材を長尺のアングル材として該アングル材にかさ上げ部を設けるものである。かさ上げ部2などの構成に第一の実施形態で説明されたものを採用できる
【0050】
長尺部材となる壁受け部材1の構成例を下記に示す。第一のL型アングル110を連続布基礎の基礎梁30の長さ全体に亘った「長尺部材」とする一方、第二のL型アングル120を例えば外壁パネルの幅寸法(例えば610mm)の長さを有する「小物部材」とする。また、第二のL型アングル120の長さは、図4に示したように、610mmの外壁パネルの幅寸法に対して150mm〜200mmとするなど、相対的に短くすることも可能である。必要とされる数の第二のL型アングル120を長さ方向に並べ、第一のL型アングル110に面着させる。さらに、第一のL型アングル110を基礎梁30の天端31に固定していく。第二のL型アングル120は第一の実施形態で示した構成のものを使用できる。さらに第一のL型アングル110の第一の水平片上11に、第二のL型アングル120の長さまたは外壁パネルの幅寸法の間隔で、かさ上げ部2を設ける。かさ上げ部2の構成は、第一の実施形態で示したようなかさ上げ部材21を用いることができる。さらに、第一のL型アングル110の第一の水平片11または第一の起立片101にかさ上げ部材21を配置する基準となる目印を設けると便利である。
【0051】
本実施例の、図3及び図4に示した例との2つのL型アングル110及び120における相違を図6に示す。これは上面図であり、この図においては、第一及び第二のL型アングル110及び120、並びにかさ上げ部2のみを示している。(A)は図3に示された構造であり、第一及び第二のL型アングルが同じ長さ(外壁パネルと同じ長さである610mm)で短いもの(「小物部材」)が長さ方向に配置されている。(B)は本構成例を示し、第一のL型アングル110が基礎梁の直線部の長さに亘って長尺(寸法X=610mmの整数倍、1830mm、3660mm等)の部材を複数用いて構成し、その長さに対応して、短い(150mm〜200mm程度)第二のL型アングル120が複数配置される。第一のL型アングルが長尺部材、第二のL型アングルが小物部材となり、壁受け部材として長尺となるほかは、壁受け部材の構成は第一の実施形態と同様である。すなわち、かさ上げ部2などの構成に第一の実施形態を採用できる。図6(B)においては、(A)と相違し、第一のL型アングル110に継ぎ目の箇所が少ない。また、図6(C)は、第一の実施形態の図4に示した例に対応する。外壁パネルの幅寸法(610mm)に対して、150mm〜200mm程度に第一及び第二のL型アングルの長さを合わせているものである。
【0052】
なお、図6において寸法Xは、工業化住宅の設計に使用される基本的な単位寸法(モジュール寸法)である。基礎には、寸法Xごとにアンカーボルトが埋設されている。また、外壁パネルの幅(610mm)は、寸法Xに一致している(一般に工業化住宅の構成部品は、寸法Xに一致するかその整数倍または整数分の一に設定される。)。
【0053】
本実施形態では、第一実施形態で採用した種々の構成を採用している。したがって、本実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上本発明の実施例を説明した。特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想から逸脱することなく、これらに変更を施すことができることは明らかである。
【符号の説明】
【0055】
壁受け部材 1
かさ上げ部 2
短冊プレート 3
弾性シーリング材 4
起立片 10
第一の水平片 11
第二の水平片 12
通り芯 14
床仕上げ面 15
かさ上げ部材 21
立上部 26
台部 27
立ち上げ寸法 28
梁 30
梁の天端面 31
床パネル 40
外壁パネル 50
外壁パネルの下端(小口面)51
外壁パネルの裏面 52
隙間部 60
鋼板 61
シーリングポケット 63
アンカーボルト 70
ボルト 73
ナット 74
下地層(断熱フォーム) 85
アンカーボルトを通す孔 98
L型アングル締結用孔 99
第一の起立片 101
第二の起立片 102
第一のL型アングル 110
第二のL型アングル 120

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネル(50)を壁受け部材(1)を介して梁(30)の天端面(31)に固定した建物の外壁パネル固定構造であって、
該壁受け部材(1)は、起立片(10)と第一の水平片(11)と第二の水平片(12)とを有し、第一の水平片(11)には、少なくとも立上げ部(26)と台部(27)とを有するかさ上げ部(2)が設けられ、
第二の水平片(12)が、梁(30)の天端面(31)から突設するアンカーボルト(70)に挿通されることにより梁(30)に固定され、
外壁パネル(50)の下端(51)が台部(27)に載せられ、
外壁パネル(50)の裏面(52)から突設するボルト(75)を軸に回動可能に裏面(52)に固定された短冊プレート(3)と裏面(52)とが対向して形成された隙間部(60)に起立片(10)が挿し込まれて、梁(30)の天端面(31)に外壁パネル(50)が支持される外壁パネル固定構造。
【請求項2】
前記壁受け部材(1)は、第一の水平片(11)と第一の起立片(101)とからなる第一のL型アングル(110)と第二の水平片(12)と第二の起立片(102)とからなる第二のL型アングル(120)とが互いの起立片(101、102)を背中合わせに面着させて前記起立片(10)を形成するように構成された請求項1に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項3】
前記壁受け部材(1)は長尺部材であり、前記かさ上げ部(2)は外壁パネル(50)の幅寸法の間隔で壁受け部材(1)の第一の水平片(11)上に設けられた請求項1または2に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項4】
前記壁受け部材(1)には、かさ上げ部(2)を形成するかさ上げ部材(21)が配置された請求項1ないし3のいずれか一項に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項5】
前記壁受け部材(1)には、前記かさ上げ部材(21)を配置する基準となる目印が設けられた請求項4に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項6】
前記かさ上げ部と壁受け部材(1)とが一の板状部材で構成された、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項7】
前記壁受け部材(1)において、第一のL型アングル(110)が長尺部材であり、第二のL型アングル(120)が小物部材であり第一のL型アングル1個につき複数個配置された、請求項3ないし6のいずれか一項記載の外壁パネル固定構造。
【請求項8】
さらに、壁受け部材(1)の第一の水平片(11)と外壁パネル(50)の下端との間に弾性シーリング材(4)が充填されている請求項1ないし7の何れか一項に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項9】
さらに、壁受け部材(1)の第一の水平片(11)と外壁パネル(50)の下端(51)とで形成される隙間に弾性を有する鋼板(61)を介在させてシーリングポケット(63)を形成し、該シーリングポケット(63)に弾性シーリング材(4)が充填されている請求項8に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項10】
さらに梁(30)の天端面の一方側には、外壁パネルが配置され、他方の側には、床パネル(40)が配置されて支持されている請求項1ないし9の何れか一項に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項11】
前記かさ上げ部(2)の高さ(28)に合せた厚さの下地層(85)が前記床パネル(40)に設けられている請求項10に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項12】
前記下地層(85)が断熱フォームである請求項11に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項13】
建物の外壁パネル(50)を梁(30)の天端面(31)に固定するための壁受け部材(1)であって、
該壁受け部材(1)は、
起立片(10)と第一の水平片(11)と第二の水平片(12)とを有し、第一の水平片(11)には、少なくとも立上げ部(26)と台部(27)とを有するかさ上げ部(2)が設けられ、
第二の水平片(12)が、梁(30)の天端面(31)から突設するアンカーボルト(70)に挿通されることにより梁(30)に固定され、
外壁パネル(50)の下端(51)が台部(27)に載せられ
外壁パネル(50)の裏面(52)から突設するボルト(75)を軸に回動可能に裏面(52)に固定された短冊プレート(3)と裏面(52)とが対向して形成された隙間部(60)に起立片(10)を挿し込むように構成された、
梁(30)の天端面(31)に外壁パネル(50)を支持する壁受け部材。
【請求項14】
第一の水平片(11)と第一の起立片(101)とからなる第一のL型アングル(110)と第二の水平片(12)と第二の起立片(102)とからなる第二のL型アングル(120)とが互いの起立片(101、102)を背中合わせに面着させて、前記起立片(10)を形成可能となるように構成された、請求項13に記載の壁受け部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−92526(P2012−92526A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239134(P2010−239134)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】