説明

外壁構成体

【課題】 通風量を調節する羽根を風の強さに応じて自然に回動させられるだけでなく、羽根の開度を居住者が任意に設定することも可能な外壁構成体の提供
【解決手段】 縦方向又は横方向に設置した構造材1と、構造材に屋内外に連通して設けた通風路2と、通風路内に軸支してあり通風量を調節する羽根3と、羽根駆動部4とを備え、羽根3は開方向に付勢してあり、羽根駆動部4は、操作部5と、操作部と羽根とを係脱自在にする係脱機構6を有し、係脱機構6が係合状態のときに羽根3を任意の角度に保持可能であり、操作部5を所定量以上操作することで係脱機構6が非係合状態となって羽根3が風の強さに応じて閉方向に回動自在となり、操作部5を戻すと係脱機構6が係合状態に復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気機能を持たせた方立等の構造材を有するサッシ、カーテンウォール等の外壁構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の換気装置として特許文献1には、無目に外気を屋内に取り入れる通風路を設け、通風路内に揺動自在に軸支した羽根(翼6)により通風量を調節自在としたものが開示されている。羽根は、重力により通風路を開く方向に付勢されており、風が強くなるにしたがって通風路を閉じる方向に揺動して屋内に吹き込む風の量を調節する。またこの換気装置は、羽根を手動又は電動により強制的に揺動させて通風路を閉鎖する強制閉鎖装置を備えている。強制閉鎖装置は、ハンドル又はモータにより回動する軸が羽根の軸と同軸上に配置され、両方の軸の軸端に設けたフランジの突起物を互いに係合させることで、羽根を閉鎖側に強制的に揺動させることができる。
【特許文献1】特開2006−52927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の換気装置は、風の強さに応じて羽根が自然に揺動して通風量が自動的に調節されるが、居住者が羽根を動かして開度を自由に設定したいという要望もある。特許文献1記載の換気装置では、強制閉鎖装置により羽根を閉鎖側に強制的に動かすことはできるが、羽根を全開位置や中間位置で保持することはできなかった。本発明は以上に述べた実情に鑑み、通風量を調節する羽根を風の強さに応じて自然に回動させられるだけでなく、羽根の開度を居住者が任意に設定することも可能な外壁構成体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による外壁構成体は、縦方向又は横方向に設置した構造材と、構造材に屋内外に連通して設けた通風路と、通風路内に軸支してあり通風量を調節する羽根と、羽根駆動部とを備え、羽根は開方向に付勢してあり、羽根駆動部は、操作部と、操作部と羽根とを係脱自在にする係脱機構を有し、係脱機構が係合状態のときに羽根を任意の角度に保持可能であり、操作部を所定量以上操作することで係脱機構が非係合状態となって羽根が風の強さに応じて閉方向に回動自在となり、操作部を戻すと係脱機構が係合状態に復帰することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による外壁構成体は、請求項1記載の発明の構成に加え、係脱機構は、羽根と連動して回動する羽根連動アームと、操作部と連動して回動する操作部連動アームとを有し、羽根連動アームと操作部連動アームのうちの一方のアームは、他方のアームとの対向面より出没自在に且つ突出方向に付勢して設けた係合ピンを有し、他方のアームは、アーム長手方向に設けてあり且つ一端部に側方に向けて開放した開放部を有する係合ピン受け溝と、開放部が設けてある側の係合ピン受け溝の側方に設けたテーパー部とを有し、一方のアームの回動軸と他方のアームの回動軸とが互いに偏心しており、係合ピンが係合ピン受け溝に係合することで羽根を任意の角度に保持でき、操作部を所定量以上操作すると係合ピンが開放部を通じて係合ピン受け溝から抜け、操作部を戻すと係合ピンがテーパー部又は開放部より係合ピン受け溝に係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による外壁構成体は、羽根駆動部に操作部と羽根とを係脱自在にする係脱機構を有しており、係脱機構を係合状態とすることで羽根を任意の角度に保持できるので、羽根を全開位置に保持して涼風感を得たり、中立位置や閉鎖位置に保持して通風量を制限したりできる。さらに、操作部を所定量以上操作すれば係脱機構が非係合状態となるため、羽根が風の強さに応じて閉方向に回動自在となり、通風量が自動的に調節される状態となる。また、操作部を戻せば係脱機構が係合状態に復帰し、操作部の操作により羽根を動かせる状態に容易に復帰できる。
【0007】
請求項2記載の発明による外壁構成体は、操作部を回転させるだけの簡易な操作により、羽根の開閉操作及び任意角度での保持、係脱機構の係合・非係合状態相互の切替を安定確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図3は本発明の外壁構成体の一実施形態を示す屋外側正面図であり、図4(a)は図3のA−A断面図、図4(b)は方立部の屋内側面図、図5は図3のB−B断面図、図6は図3のC−C断面図である。本外壁構成体は、嵌め殺し窓を連窓した連窓サッシであって、図3に示すように、複数のパネル15が横方向に並べて配置してあり、左右のパネル15間に方立1が設けてある。パネル15は、上枠16と下枠17と左右の竪枠18a,18bとを枠組みした枠内にガラスパネル19を嵌め込んだものであり、上枠16と下枠17は建物の躯体20に固定され、竪枠18a,18bは方立1に固定してある。
【0009】
方立1は、図5に示すように、左右のパネル15,15を連結する方立本体部21と、方立本体部21と連通して屋外側に張り出した屋外側張出部22とを有している。屋外側張出部22は、屋外側に向かうにつれて見付寸法が小さくなるように左右の側面23a,23bが湾曲した傾斜面となっており、屋外側から見て左側の側面23aに外気導入口24が縦長のスリット状に複数列形成してある。方立本体部21は、図4に示すように、屋内側面に通気口25が縦長のスリット状に複数形成してある。このように外気導入口24と通気口25を設けることで、方立1内には屋内外に連通した通風路2が形成されている。通風路2は、図4(a)に示すように、方立本体部21内に設置した仕切り板26により、上側と下側とに仕切られており、上下の各通風路2内に通風量を調節するための羽根3が上下方向の軸27に軸着してそれぞれ設けてある。上下の通風路2,2間の方立本体部21内の空間部には、上下の羽根3,3を駆動するための羽根駆動部4を設けてある。
【0010】
羽根3は、図4,5に示すように、アルミ押出形材で縦長の中空の板状に形成され、基端部に上下に突出して設けた軸27を方立本体部21内の屋内側から見て左側の側面寄りの位置に軸受け28で回転自在に支持して取付けてある。羽根3は、約90°の範囲で回転し、図5中に実線で示すように、最も屋外側に回動した全開位置では通風量が最も多くなり、屋内側に回動するにつれて通風量が少なくなり、屋内側に約90°回動してタイト材29に当接すると通風路2が閉鎖される。上側の羽根3の上方と下側の羽根3の下方には、図7に示すように、羽根3を屋外側に回動する方向(開方向)に付勢するバネ30と、羽根3のチャタリングを防止するためのダンパー33を設けてある。また羽根3は、図5に示すように、先端部の前面側に傾斜した受風部31が設けてあり、全開位置にあるときでも羽根3と方立本体部21内の側面との間に隙間32が形成されるようにしている。
【0011】
図1は羽根駆動部4の斜視図であり、図2(a)は羽根駆動部4を屋外側から見た正面図、図2(b)は羽根駆動部4の側面図である。羽根駆動部4は、屋内側に突出して設けたダイヤル式の操作部5と、操作部5と羽根3とを係脱自在にする係脱機構6を有している。係脱機構6は、ギア34a,34bを介して羽根3の軸27と連動して回動する羽根連動アーム7と、ウォームギア35とウォームホイール36とを介して操作部5と連動して回動する操作部連動アーム8とを有している。羽根連動アーム7と操作部連動アーム8は、上下対称に2つずつ設けてある。羽根連動アーム7は、先端部に操作部連動アーム8との対向面より出没自在に且つバネ(図示省略)で突出方向に付勢した係合ピン9を有しており、操作部連動アーム8は羽根連動アーム7との対向面に係合ピン受け溝11を有している。操作部連動アーム8の回動軸13は、羽根連動アーム7の回動軸14に対して屋内側に偏心している。係合ピン受け溝11は、図9−1に示すように、操作部連動アーム8の長手方向に沿って形成してあると共に、回動軸13側の端部に側方に向けて開放した開放部10が設けてある。開放部10と連続する係合ピン受け溝11のコーナー部37には、突起38が設けてある。係合ピン受け溝11の開放部10が設けてある側の側方には、テーパー部12が設けてある。操作部5とウォームギア35間にはトルクリミッター(図示省略)が内蔵してあり、これにより操作部5からの適度な締付力を確保すると共に、羽根3を閉める際等に力の掛かり過ぎにより部品が破損するのを防止している。
【0012】
図8−1(a)は、羽根3を屋内側に回動した閉鎖位置で保持したときの羽根駆動部4の斜視図であり、図9−1(a)はこのときの羽根連動アーム7と操作部連動アーム8と羽根3との位置関係を示す平面図である。このとき、羽根連動アーム7と操作部連動アーム8は先端部が屋外側を向き、係合ピン受け溝11の先端部に係合ピン9が係合している。この状態から操作部5を開き側に回転操作すると、図8−1(b)と図9−1(b)に示すように、操作部連動アーム8が屋内側に回動し、それにつれて羽根連動アーム7は係合ピン9が係合ピン受け溝11を回動軸13側に移動しながら屋内側に回動する。羽根連動アーム7が屋内側に回動すると、その動きがギア34a,34bを介して羽根3の軸27に伝達され、羽根27が屋外側に回動し中間位置で保持される。その後さらに操作部5を開き側に回転操作すると、図8−2(c)と図9−1(c)に示すように、操作部連動アーム8と羽根連動アーム7はさらに屋内側に回動し、係合ピン9が係合ピン受け溝11内に設けた突起38に乗り上げるため、操作部5に当りが生ずる(操作が重くなる)。なお、突起38が無くても、係合ピン9が係合ピン受け溝11のストレート部からコーナー部37に移動することでいくらか当りが生ずるので、突起38は必ずしも無くてもよい。この時点で羽根3はほぼ全開位置まで回動しており、ここで操作部5の回転操作を終了することで羽根3が全開位置に保持される。その後さらに操作部5を開き側に回転操作すると、図9−1(d)に示すように、操作部連動アーム8がさらに屋内側に回動するのに伴い係合ピン9が突起38を乗り越え、開放部10を通じて係合ピン受け溝11から係合ピン9が抜け出し、図8−2(d)と図9−2(e)に示すように、羽根連動アーム7と羽根3が自由に回動できる状態となる。この状態のときに外気導入口24より方立1内に風が入ってくると、受風部31に当る風の風圧により羽根3がバネ30の付勢力に抗して屋内側に回動し、通風量が自動的に調節される。その後、操作部5をそれまでとは逆に閉じ側に回転操作すると、図9−2(f)に示すように、操作部連動アーム8が屋外側に回動するのに伴い、係合ピン9が操作部連動アーム8のテーパー部12に押されて引っ込みながら係合ピン受け溝11に再び係合し、羽根3と操作部5とが係合する状態に復帰する。この復帰操作の際、羽根3の位置によっては係合ピン9が開放部10を通じて係合ピン受け溝11に係合する場合もある。
【0013】
以上に述べたように本外壁構成体は、羽根連動アーム7の係合ピン9が操作部連動アーム8の係合ピン受け溝11に係合した状態で操作部5を回転操作することで、羽根3を任意の角度に回動してその角度に保持できるので、羽根3を全開位置に保持して涼風感を得たり、中間位置や閉鎖位置に保持して通風量を制限したりできる。さらに、操作部5を所定量以上開き側に操作すれば、係合ピン9が係合ピン受け溝11から抜け出て羽根連動アーム7と操作部連動アーム8とが非係合状態となるため、羽根3が風の強さに応じて閉方向に回動自在となり、通風量が自動的に調節される状態となる。また、操作部5を戻せば係合ピン9が係合ピン受け溝11に係合し、操作部5の操作により羽根3を動かせる状態に復帰する。このように本外壁構成体は、操作部5を回転操作するだけで、羽根3の開閉操作と、羽根3と操作部5との係合・非係合状態の切換えを安定確実に行うことができ、操作性が優れている。また本外壁構成体は、方立1に屋外側張出部22を設け、屋外側張出部22の傾斜した側面23aに外気導入口24を形成したので、壁に向かってまっすぐ吹く風だけでなく、壁に沿うように吹く横風も効率良く屋内に導入できる。
【0014】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。羽根3を開方向に付勢するバネ30と羽根3のチャタリングを防止するダンパー33は、羽根駆動部4に設けることもできる。羽根3と操作部5間の係脱機構6は、操作部5を所定量以上操作したときに非係合状態となり、操作部5を戻すことで係合状態に復帰できるように構成してあればよく、係合ピン9や係合ピン受け溝11の形状・配置等は適宜変更できる。係合ピン9を操作部連動アーム8に設け、係合ピン受け溝11を羽根連動アーム7に設けることもできる。構造材とパネルの配置・取付構造は任意であり、無目や下枠等の横方向の構造材に通風路を設け、その通風路内に羽根3を横向きに設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】羽根駆動部の斜視図である。
【図2】(a)は羽根駆動部を屋外側から見た正面図であり、(b)は羽根駆動部の側面図である。
【図3】本発明の外壁構成体の一実施形態を示す屋外側正面図である。
【図4】(a)は図3のA−A断面図であり、(b)は方立部の屋内側正面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図3のC−C断面図である。
【図7】図4のX矢視図である。
【図8−1】羽根駆動部の動作を示す斜視図であって、(a)は羽根を閉鎖位置に保持したときの状態、(b)は羽根を中間位置に保持したときの状態を示している。
【図8−2】羽根駆動部の動作を示す斜視図であって、(c)は羽根を全開位置に保持したときの状態、(d)は羽根連動アームと操作部連動アームとが非係合状態となり羽根が風圧で回動自在となったときの状態を示している。
【図9−1】羽根と羽根連動アームと操作部連動アームの動作を示す平面図であって、(a)は羽根を閉鎖位置に保持したときの状態、(b)は羽根を中間位置に保持したときの状態、(c)は羽根を全開位置に保持したときの状態、(d)は羽根連動アームと操作部連動アームとの係合が外れるときの状態を示している。
【図9−2】羽根と羽根連動アームと操作部連動アームの動作を示す平面図であって、(e)は羽根連動アームと操作部連動アームとが非係合状態となり羽根が風圧で回動自在となったときの状態、(f)は羽根連動アームと操作部連動アームとが係合状態に復帰するときの状態を示している。
【符号の説明】
【0016】
1 方立(構造材)
2 通風路
3 羽根
4 羽根駆動部
5 操作部
6 係脱機構
7 羽根連動アーム
8 操作部連動アーム
9 係合ピン
10 開放部
11 係合ピン受け溝
12 テーパー部
13 操作部連動アームの回動軸
14 羽根連動アームの回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向又は横方向に設置した構造材と、構造材に屋内外に連通して設けた通風路と、通風路内に軸支してあり通風量を調節する羽根と、羽根駆動部とを備え、羽根は開方向に付勢してあり、羽根駆動部は、操作部と、操作部と羽根とを係脱自在にする係脱機構を有し、係脱機構が係合状態のときに羽根を任意の角度に保持可能であり、操作部を所定量以上操作することで係脱機構が非係合状態となって羽根が風の強さに応じて閉方向に回動自在となり、操作部を戻すと係脱機構が係合状態に復帰することを特徴とする外壁構成体。
【請求項2】
係脱機構は、羽根と連動して回動する羽根連動アームと、操作部と連動して回動する操作部連動アームとを有し、羽根連動アームと操作部連動アームのうちの一方のアームは、他方のアームとの対向面より出没自在に且つ突出方向に付勢して設けた係合ピンを有し、他方のアームは、アーム長手方向に設けてあり且つ一端部に側方に向けて開放した開放部を有する係合ピン受け溝と、開放部が設けてある側の係合ピン受け溝の側方に設けたテーパー部とを有し、一方のアームの回動軸と他方のアームの回動軸とが互いに偏心しており、係合ピンが係合ピン受け溝に係合することで羽根を任意の角度に保持でき、操作部を所定量以上操作すると係合ピンが開放部を通じて係合ピン受け溝から抜け、操作部を戻すと係合ピンがテーパー部又は開放部より係合ピン受け溝に係合することを特徴とする請求項1記載の外壁構成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公開番号】特開2010−84983(P2010−84983A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253205(P2008−253205)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【出願人】(591006117)株式会社ナガエ (16)
【Fターム(参考)】