説明

外壁構造

【課題】 建物の外観を損ねることなく、例え隣接建物との間に足場スペースを確保できない場合であっても、安全かつ効率的に配管作業が行なえる外壁構造を提供する。
【解決手段】 外周枠を含むパネル枠体に外装板を固着して形成され、建築構造体に取り付けられて外壁を構成する外壁パネルと、前記パネル枠体と同厚の配管パネル枠体に同厚の外装板を固着するとともに前記外壁パネルよりも小巾に形成され、かつ前記外壁パネルの間で建築構造体に取り付けられる配管パネルとを具え、前記配管パネルは、屋上に設置された外部設備機器と屋内の内部設備機器との間に配管される管体を、外装板の内側、かつ配管パネル枠体の厚さの領域に収容したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接建物との間に足場設置スペースが確保できない敷地条件であっても、安全かつ効率的に配管作業が行なえる外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機器のヒートポンプ、給湯器の貯湯タンクなどは、省スペース、運転効率その他の理由から屋上に設置されることが多く、これら屋上の外部設備機器から冷媒、湯水などを屋内へ供給する管体は、外壁の外側に配管される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−140312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外壁面に沿って配管すると、建物の見栄えを低下させ、特に配管箇所が表通りに面する場合は、街の景観を損ねるという問題がある。また、都市部、商業地域など狭小地に建設される建物では、隣接建物との間に、充分なスペースが確保されず、配管作業用の足場を設けることが出来ない建築現場が多く存在する。そしてこのような状況下、足場なしで配管作業する場合、作業の能率が著しく低下し、工事に危険性を伴なうという問題がある。
【0005】
本発明は、屋上に設置された外部設備機器と屋内の内部設備機器との間に配管される管体を、外装板の内側、かつ配管パネル枠体の厚さの領域に収容することを基本とし、建物の外観を損ねることなく、例え隣接建物との間に足場スペースを確保できない場合であっても、安全かつ効率的に配管作業が行なえる外壁構造の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、外周枠を含むパネル枠体に外装板を固着して形成され、建築構造体に取り付けられて外壁を構成する外壁パネルと、前記パネル枠体と同厚の配管パネル枠体に同厚の外装板を固着するとともに前記外壁パネルよりも小巾に形成され、かつ前記外壁パネルの間で建築構造体に取り付けられる配管パネルとを具え、前記配管パネルは、屋上に設置された外部設備機器と屋内の内部設備機器との間に配管される管体を、外装板の内側、かつ配管パネル枠体の厚さの領域に収容したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明において、前記配管パネル枠体は、上下枠体の一部を切欠して形成した管体挿通部を有し、前記管体はこの配管挿通部を通るとともに、上下にのびて配管され、請求項3に係る発明における配管パネルは、配管された管体の屋内側が耐火性を有する断熱ボードによって覆われ、断熱ボードは、外壁パネル及び配管パネルの屋内側に連続して設けられて耐火層を形成するとともに内装下地を構成し、また請求項4に係る発明の配管パネルは、耐火性を有する断熱ボードを、外装材と管体との間に更に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、設備配管を外壁外面に取り付けることないため、建物外周に配管工事用の足場を設営することが不要となる。その結果、隣接建物との間に余裕スペースのない、狭小地での建設工事を効率的かつ安全に行なえる。一方設備配管は、外装板によって覆われるため、配管の劣化、凍結などが抑制され、液漏れ、破裂などのトラブルを減じてメンテナンスが容易になるとともに、配管が外部から隠れるため、建物の見栄えが向上する。しかも配管パネルは、外壁パネルと同厚に形成されるため、配管パネルを外壁パネル間の任意な位置に配置でき、配管経路を自由に設定できる。従って設備機器は、配管の制約を受けることなく、使用状況、平面プラン等を勘案した最適箇所の設置が許され、効率的な運転及び快適な使用が可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明のように、配管パネル枠体に上下枠体の一部を切欠して形成された管体挿通部を設けると、管体はこの管体挿通部を通って上下に真っ直ぐ配管でき、施工性を向上するとともに、最短の配管経路を形成できる。
【0010】
請求項3に係る発明のように、外壁パネル及び配管パネルの屋内側を、連続して耐火性を有する断熱ボードで覆うと、耐火構造建築、或いは準耐火構造建築の外壁を選択的に構築することができる。しかも、管体の大部分は配管パネルの内部に配置されるため、断熱ボードと緩衝することが少なく、同じ配管パネルを用いながら、建物の仕様に応じて、必要レベルの耐火仕様を任意に構築できる。
【0011】
また請求項3に係る発明では、管体の太さにより、配管パネルから管体の一部が屋内側にはみ出して配管パネルを屋内側で覆う断熱ボードが薄い場合にも、外装材と管体との間の断熱ボードがこれを補うため、全体として必要充分な耐火性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、外壁構造1は、外壁パネル6と、この外壁パネル6の間に配される配管パネル8とを具える。
【0013】
前記外壁パネル6は、図2、3に示すように、軽量溝形鋼を用いた縦フレーム材、及び横フレーム材を矩形状に枠組みした外周枠2Aの内側に補強桟(図示せず)を架け渡し形成された鋼製のパネル枠体2の屋外側に、外装板3を固着した片面パネルが用いられる。他方前記配管パネル8は、上下に長い帯鋼板を横断面リップ付コ字状に折り曲げて形成した略縦溝形状の配管パネル枠体7に、前記外壁パネル6と同厚の外装板3を固着して形成される。なお、前記配管パネル枠体7の上下端部には、図2、4に示すように、屋内側を矩形状に切り欠いて管体挿通部12が形成された上下枠体8Aが設けられる。
【0014】
前記外壁パネル6、及び配管パネル8は、その高さが、建物の階高と略同じ寸法に形成され、例えば、2500〜3500mm程度、本形態では2900mmとしている。また、外壁パネル6の巾は、例えば建築モジュール寸法を900mmとすると、その整数倍の1800mm、2700mm、3600mmなどの大きさに形成され、所謂モジュラーコーディネイトされている。なお配管パネル8は、前記モジュール寸法の半分の450mmの大きさに形成されている。
【0015】
前記外装板3は、本形態では、厚さ50mmのALCパネルを用いている。外装板3はこの他、ケイ酸カルシウム板、フレキシブルボードなどの窯業系、発泡樹脂層を鋼板、アルミ板等でサンドイッチした金属系、合板、木毛セメント板、木片セメント板に防水被覆した木質系の各種サイディングボードを用いることもよい。
【0016】
しかして、外壁パネル6は、配管パネル8を配管箇所に組み入れながら、複数枚が縦横隙間なく並んで設置される。そして公知の外壁ファスナー(図示せず)を用いて、建築主要構造をなす建物構造体4の屋外側に取り付けることにより、所謂カーテンウォール構法の外壁5が形成される。なお本形態の建物構造体4は、柱とこの柱間にI型鋼を用いた梁21を架け渡して組み立てられた鉄骨構造が採用される。
【0017】
前記配管パネル8には、外装板3の内側でかつ配管パネル枠体7の厚さの領域に、屋上に設置される外部設備機器9と屋内の内部設備機器10との間に配管される管体11が収容される。本形態では、図1に示すように、屋上に取り付けられた空調装置の屋外機9Aから、屋上スラブ22を挿通して最上階の天井裏空間へ至るとともに前記梁21の配管孔を通過して外壁5側へ向かい、さらに前記配管パネル8の内部を下方にのびて下階の屋内空間で壁に固定された室内機10Aにまでのびる冷媒循環用のダクトが配管される。
【0018】
このように、屋上から屋内に続く管体11が、配管パネル8内に収容され、外装板3の屋内側で配管されるため、管体11を外壁の外側に取り付ける必要がない。従って、外壁に沿って配管用の作業足場を設けることが不要となり、そのため都市部、市街地などのように隣接建物との間に余裕スペースのない狭小地であっても、配管工事を効率的かつ安全に行なえる。しかも設備配管が外装板3によって覆われ露呈しないため、管体11の劣化、凍結などが防止でき、液漏れ、破裂などのトラブルが減少してメンテナンスが容易になるとともに、管体11が外装板3に隠されるため、建物の見栄えが高まる。更には、配管パネル8は、外壁パネル6と同厚に形成されるため、外壁パネル6間の任意の位置に配管パネル8を設置でき、そのため、設備機器類を使用条件及び建築条件に最も適合した箇所に配置して、効率的に運転され快適に使用できる。
【0019】
また配管パネル8は、前記の如く、上下枠体8Aに管体挿通部12を設けるため、管体11は、障害物を避けて蛇行する必要がなく、上下ストレートに配管できる。その結果配管作業の能率を向上し、しかも最短の経路で配管できるため、熱ロスを減じてエネルギー効率を高めることができる。
【0020】
前記外壁パネル6および配管パネル8の屋内側は、連続した耐火性の断熱ボード13によって覆われる。前記断熱ボード13は、本形態では、防湿石膏ボート23Aにポリエチレンフォーム23Bを積層した断熱材付石膏ボード23が用いられる。
【0021】
本形態の管体11は、図3、4に示すように、屋内側の一部が配管パネル枠体7から屋内側へ僅かに食み出すため、これを回避するため、配管パネル枠体7のリップ部8Bに木桟を用いたスペーサ24が取り付けられ、この上に前記断熱材付石膏ボード23が取り付けられる。従って、外壁パネル6には、前記断熱材付石膏ボード23との間に、前記スペーサ24と同厚の断熱材25を用いた追加の断熱ボード13が設けられ、その結果、該断熱材25と断熱材付石膏ボード23とが積層された、高性能の断熱層が形成される。更に配管パネル8においては、外壁パネル6の断熱材25の分の断熱性能を補うため、配管パネル枠体7の内側で管体11と外装板3との間に断熱材26を用いた補助の断熱ボード13が設けられる。
【0022】
このように本形態では、断熱材付石膏ボード23、断熱材25、26により、外壁パネル6及び配管パネル8の屋内側に連続する耐火層14が形成される。そのため、これら断熱材などの厚さ、材質を適宜選択することにより、敷地の用途地域に応じて耐火構造建築、或いは準耐火構造建築などの外壁を選択的に構築することができる。しかも配管部は、部分的な食み出しはあったとしても、殆どが配管パネル8の内部に配管されるため、断熱ボード13と大きく緩衝することはなく、従って同一種類の配管パネル8を使用しつつ、建物の仕様に応じて、必要レベルの耐火仕様を任意に構築でき、工期短縮及びコスト削減できる。
【0023】
しかも本形態のように、比較的大径な管体11が収容され、その一部が配管パネルから屋内側に食み出して配管パネルの屋内側の断熱ボードが薄くなる場合には、外装材と管体との間に挿入する断熱材26でこれを補うと、全体として必要充分な耐火性能が得られる点で好ましい。
【0024】
なお前記、断熱材25、26及び防湿石膏ボード23に積層される断熱材は、発火温度が略480度のポリエチレンフォームを用いると、耐火性能を向上できる点で好ましい。しかしこれ以外にも、グラスウール、ロックウールなどの無機繊維断熱材、セルロースファイバー、インシュレーションボードなどの木質繊維断熱材、発泡ポリスチレン、硬質ウレタン、フェノールなどの発泡樹脂断熱材、或いはこれら断熱材にアルミ箔を貼着した積層断熱材を用いることもよい。
【0025】
前記耐火層14は、同時に内装下地を構成し、その屋内側に内装仕上げ材が貼着される。内装仕上げ材としては、エンボス無地系壁紙、プリントエンボス壁紙、発泡壁紙、シルクスクリーン壁紙などのビニル壁紙、平織壁紙、綾織壁紙、不織布壁紙、植毛壁紙を含む織物壁紙、洋紙壁紙、和紙壁紙、特殊紙壁紙を含む紙壁紙、銘木シート壁紙、コルクシート壁紙を含む木質系壁紙、無機質壁紙などを用いる。無機質壁紙は、表面に化粧を施し難燃処理した紙、寒冷紗などの表層を、クロス状のガラス繊維、箔状の水酸化アルミニウムなどの無機質基材により裏打ちしたもので、防火性に優れる点で好ましい。
【0026】
なお、図2、3に示すように、配管パネル8の下部は、専用ファスナー27を用いて梁21に固着される。この専用ファスナー27は、一対の管体11を囲む矩形枠体28を有し、この矩形枠体28と管体11の隙間に耐火目地材29が充填される。
【0027】
図5は他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態の配管パネル8は、各々内向きに開く軽量溝形鋼を用いた縦フレーム7V、横フレーム7Hを矩形状に枠組みした配管パネル外周枠7Aの内側中央で縦にのびる軽量溝形鋼を用いた補強桟7Rを架け渡した配管パネル枠体7が用いられる。
【0028】
前記配管パネル8は、横フレーム7Hに、楕円孔30からなる管体挿通部12を設けるとともに、横フレーム7Hのフランジ間に、前記楕円孔30に連続する短角筒状の支持部31が嵌合固定される。また配管パネル8には、補強桟7Rを挟み、縦にのびる2本の管体11が収容され、この管体11は、配管パネル8の上下部において楕円孔30及び支持部31内を連続して挿通して配管される。このように、配管パネル8内を上下に配管される管体11は、支持部31により安定して支持されるため、位置ズレすることがなく、しかも管内を液媒、温水などが流動しても管体11が振動を生じることが防止される点で好ましい。
【0029】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する縦断面図である。
【図2】その一部切り欠き拡大斜視図である。
【図3】そのA−A断面図である。
【図4】その要部拡大斜視図である。
【図5】他の実施の態様を例示する一部切り欠き拡大斜視図である。
【図6】そのB−B断面図である。
【図7】その要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 外壁構造
2 パネル枠体
2A 外周枠
3 外装板
4 建物構造体
5 外壁
6 外壁パネル
7 配管パネル枠体
8 配管パネル
9 外部設備機器
10 内部設備機器
11 管体
12 管体挿通部
13 断熱ボード
14 耐火層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周枠を含むパネル枠体に外装板を固着して形成され、建築構造体に取り付けられて外壁を構成する外壁パネルと、前記パネル枠体と同厚の配管パネル枠体に同厚の外装板を固着するとともに前記外壁パネルよりも小巾に形成され、かつ前記外壁パネルの間で建築構造体に取り付けられる配管パネルとを具え、
前記配管パネルは、屋上に設置された外部設備機器と屋内の内部設備機器との間に配管される管体を、外装板の内側、かつ配管パネル枠体の厚さの領域に収容したことを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
前記配管パネル枠体は、上下枠体の一部を切欠して形成した管体挿通部を有し、
前記管体はこの配管挿通部を通るとともに、上下にのびて配管されることを特徴とする請求項1記載の外壁構造。
【請求項3】
前記配管パネルは、配管された管体の屋内側が耐火性を有する断熱ボードによって覆われ、
前記断熱ボードは、外壁パネル及び配管パネルの屋内側に連続して設けられて耐火層を形成するとともに内装下地を構成することを特徴とする請求項1又は2記載の外壁構造。
【請求項4】
前記配管パネルは、耐火性を有する断熱ボードを、外装材と管体との間に更に設けたことを特徴とする請求項〜のいずれかに記載の外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−46273(P2007−46273A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229779(P2005−229779)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】