説明

外壁構造

【課題】外装材を釘やビス等で傷付けることなく機能部材を外壁に取り付けることができる外壁構造を提供することを課題とする。
【解決手段】外装下地に取付具4が固定される。取付具4に掛止により機能部材を取り付け可能な取付部7が設けられる。取付部7が隣り合う外装材1の間の目地2に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の周囲には、外観を向上するために、デザイン性の高い格子や外壁照明が設けられる場合がある。なお、特許文献1にはサイディング材を固定具を用いて内壁材に取り付けた外壁構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−317183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、格子や外壁照明等の機能部材を建物の周囲に設置するにあたって、機能部材を建物の外壁に固定することが考えられる。しかし、一般的な外装材は前記機能部材を取り付けるための機能を有していない。このため、機能部材を外壁に固定するには、例えば機能部材を取り付けるための釘やねじを外装材を介して外装下地に打ち込む等する必要がある。しかし、このようにすると、前記釘やねじにより外装材が傷付くため、機能部材を取り外したときに外装材を補修する必要がある。また、外装材において釘やねじを打ち込んだ箇所から雨水が浸入する恐れがあるため、別途これを防止する対策が必要になる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、外装材を釘やビス等で傷付けることなく機能部材を外壁に取り付けることができる外壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の外壁構造は、外装下地に取付具が固定され、この取付具に掛止により機能部材を取り付け可能な取付部が設けられ、この取付部が隣り合う外装材の間の目地に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、前記取付具は前記取付部の屋内側端部の両側から前記外装材の面方向に突出して前記外装下地に固定される被固定部を有し、前記各被固定部が前記目地の両側の外装材のうち対応する外装材の屋内側に配置され、前記各被固定部とこれに対応する前記外装材の間がシール材で水密にされることが好ましい。
【0008】
また、前記取付部に前記機能部材を掛止するための屋内外方向に貫通する掛止孔が形成され、前記各被固定部と前記外装下地の間がシール部材で水密にされることが好ましい。
【0009】
また、前記シール部材が前記両側の被固定部に跨って、前記取付部の屋内側に配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記取付部は長尺であって、この取付部に当該取付部の長手方向に延びる電線用通路が形成されることが好ましい。
【0011】
また、前記目地に前記外装材に模した外観を有して当該目地を隠すカバーが設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、外装材を釘やビス等で傷付けることなく、機能部材を外壁に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の外壁構造の要部を示す斜視図である。
【図2】外壁構造の斜視図である。
【図3】図2のa部分の拡大図である。
【図4】機能部材に設けられる被掛止具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示す本実施形態の建物の外壁構造は、外壁にはない機能や外観を有する機能部材を外壁に取り付けられるようにしたものである。前記機能部材としては、収納具、デザイン性に優れた格子、収納式の物干し機、外壁を演出する照明装置、ガーデニングに用いられる用具、折り畳み式の縁側等が挙げられる。
【0015】
図2に示す本実施形態の外壁構造では、外装下地が、建物躯体に間隔を介して複数設けられた縦胴縁3で構成されている。
【0016】
各縦胴縁3の幅方向中央部には、機能部材を取付可能な取付具4が取り付けられている。各取付具4は縦胴縁3と平行な縦長の部材である。各取付具4は、金属製(詳しくはステンレス製)の板金を図1のように平面視で屋内側に開口するハット状に折曲加工したものであり、長尺な取付部7と、取付部7の屋内側の端部から両外側方(外装材1の面方向)に向かって突出する被固定部8で構成されている。両側の被固定部8は共に取付部7の長手方向の全長に亘って形成されている。
【0017】
各取付具4の両側の被固定部8は屋内側シール部材6を介して縦胴縁3の屋外側の面に沿って配置されている。図2に示すように各被固定部8の上下方向の複数箇所には孔29が設けられており、各孔29に屋外側からビスや釘などの固着具を通して縦胴縁3に固着することにより、各取付具4は縦胴縁3に取り付けられている。
【0018】
図1に示すように取付部7は屋内側に開口する溝形に形成されている。取付部7の屋外側部分を構成する前面部には、機能部材を掛止可能な掛止孔9(図2、図3参照)が等間隔で上下方向に複数形成されている。
【0019】
屋内側シール部材6は、材質が発泡EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)であって乾式であり、取付具4と略同じ長さのシート状に形成されている。屋内側シール部材6は、両側の被固定部8に跨って各被固定部8と縦胴縁3の間に配置されており、屋内側シール部材6の幅方向中央部は両側部分と同様に縦胴縁3の屋外側の面に沿い、取付部7の屋内側に位置している。
【0020】
屋内側シール部材6の両側部分は、対応する被固定部8と縦胴縁3によって屋内外方向に挟持され、この屋内側シール部材6によって各被固定部8と縦胴縁3の間が取付具4の全長に亘って水密にされている。また、溝形の取付部7の内側に形成された屋内側に開口する溝部は電線を通すための電線用通路13となっている。
【0021】
図2に示すように、各縦胴縁3の取付具4の両側に位置する箇所には、外装材固定具14が一定のピッチで上下方向に複数取り付けられている。各外装材固定具14は、外装材1の下端部が嵌め込まれる下嵌込部分と外装材1の上端部が嵌め込まれる上嵌込部分を有している。
【0022】
各外装材1は横長矩形板状のサイディングであり、前記複数の縦胴縁3で構成された外装下地の屋外側に横張りで縦横に並べて取り付けられている。各外装材1は、複数の外装材固定具14を介して外装下地に取り付けられている。すなわち、外装材1下端部の両側端部は対応する外装材固定具14の下嵌込部に嵌め込んで支持され、外装材1上端部の両側端部は対応する外装材固定具14の上嵌込部に嵌め込まれ、これにより各外装材1は外装下地に取り付けられている。
【0023】
このように取り付けられた外装材1のうち、横方向に並べて設けられた外装材1の間には目地2(図1参照)が形成されている。本実施形態では、横方向に隣り合う外装材1間の目地2と、当該目地2の上段において横方向に隣り合う外装材1間の目地2とが連続して、上下複数段の外装材1に亘る一直線状の縦目地18が形成されている。
【0024】
図1のように、各縦目地18には、対応する取付具4の屋外側に突出した取付部7が配置されており、取付部7は縦目地18の全長に亘っている。取付具4の各被固定部8は、目地2両側の外装材1のうち、対応する外装材1の側端部と縦胴縁3の間に配置されている。
【0025】
各外装材1の屋内側を向く背面の側縁部には、屋内側及び目地2側に開口する段部15が上下全長に亘って形成されており、各段部15には材質が発泡EPDMである乾式のシール材5が全長に亘って配置されている。各シール材5は、外装材1と被固定部8の側端部とで屋内外方向に挟持され、これによって各被固定部8と対応する外装材1の間が上下方向の全長に亘ってシール材5で水密にされている。なお、このシール材5は上下複数段の外装材1に亘るものであるが、外装材1毎に設けられるものであってもよい。
【0026】
取付具4が配置された各縦目地18の屋外側部分には、屋外側シール部材25を介してカバー26が全長に亘って配置されている。
【0027】
屋外側シール部材25は、材質が対候性を有する熱可塑性エラストマー(TPE)である。屋外側シール部材25は、縦目地18よりも幅が広いシート状に形成されており、取付具4の屋外側を覆っている。屋外側シール部材25は、幅方向の中央部が取付部7の前面に当接して各掛止孔9を塞ぎ、また、両側端部が対応する外装材1の側端面に屈曲した状態で当接している。
【0028】
カバー26は屋外側から縦目地18の屋外側端部に嵌め付けることにより固定され、目地2及び目地2に配置された屋外側シール部材25を覆っている。カバー26の両側には屋内側に突出する突条27が形成されている。両側の突条27と取付具4の取付部7によって屋外側シール部材25は挟持され、これによりカバー26と両側の外装材1の間から浸入した雨水が取付具4側に至ることが防止されている。
【0029】
カバー26は取付具4や屋外側シール部材25が配された縦目地18の全体を覆っている。カバー26の屋外側の面は両側の外装材1の屋外側の面と面一となっている。また、カバー26の屋外側の面には、対候性の優れた塗料を塗布して両側の外装材1と色調や柄等を合わせた塗装を施してあり、これにより外装材1に模した外観になっている。
【0030】
上記本実施形態の外壁構造にあっては、任意のカバー26及びこの屋内側の屋外側シール部材25を取り外して取付具4の取付部7を屋外側に露出させることで、外装材1の屋外側に配置される機能部材に設けられた図4に示す被掛止具19が取付可能になる。
【0031】
被掛止具19は、ビス等を用いて機能部材本体に取り付けられる板状の被取付部20と、被取付部20から屋内側に突出する筒状の被掛止部21を備えている。被掛止部21の先部には短円筒状の膨大部22が形成されており、被掛止部21の膨大部22よりも根元側には膨大部22よりも外径が小さい筒状のくびれ部23が形成されている。
【0032】
被掛止部21は前記屋外側に露出させた取付部7の任意の掛止孔9に掛止することができる。前記各取付具4の各掛止孔9は、図3に示すように円形の挿通用孔部10と、挿通用孔部10から下方に延びて挿通用孔部10よりも孔幅の小さい掛止用孔部11とで構成されただるま孔である。
【0033】
挿通用孔部10は被掛止具19の膨大部22よりも大径であり、膨大部22を通過させることができる。また、掛止用孔部11の幅は膨大部22の外径よりも小さく且つくびれ部23の外径よりも大きくなっており、膨大部22は通過できないが、くびれ部23は通過できるようになっている。
【0034】
被掛止部21を取付部7の掛止孔9に掛止するには、膨大部22を屋外側から挿通用孔部10を通して取付部7内に挿入し、続いて被掛止具19を下方に移動し、膨大部22を掛止用孔部11の縁部屋外側に係止する。これにより、被掛止具19は、下方及び横方向の移動が規制された状態で掛止により取付部7に取り付けられる。このように被掛止具19を取付部7に取り付けることで、機能部材は取付具4に取り付けられる。
【0035】
図4に示す被掛止具19の筒状に形成された被掛止部21の内側の孔28は、被取付部20に形成した図示しない連通孔を介して被取付部20の屋外側に開口している。このため、被掛止部21を取付部7の掛止孔9に掛止して機能部材を取付具4に取り付けた場合、取付具4の電線用通路13に通した電線を被掛止部21の孔28及び連通孔を介して機能部材本体に接続することができる。
【0036】
以上説明した本実施形態の外壁構造では、外装下地に取付具4が固定され、取付具4に掛止により機能部材を取り付け可能な取付部7が設けられ、取付部7が隣り合う外装材1の間の目地2に配置される。このため、目地2に設けた取付具4の取付部7に機能部材を掛止して取り付けることができる。しかも、この場合、外装材1を釘やビス等で傷付けることなく機能部材を外壁に取り付けることができる。
【0037】
また、取付具4は、取付部7の屋内側端部の両側から外装材1の面方向に突出して外装下地に固定される被固定部8を有し、各被固定部8が目地2の両側の外装材1のうち対応する外装材1の屋内側に配置されている。そして、各被固定部8とこれに対応する外装材1の間がシール材5で水密にされている。このため、シール材5により目地2に浸入した雨水が各被固定部8と対応する外装材1との間から屋内側に入り込むことを防止できる。
【0038】
また、取付部7には、機能部材を掛止するための屋内外方向に貫通する掛止孔9を形成するだけで、機能部材を取り付けるための掛止部を設けることができる。また、各被固定部8と外装下地の間が屋内側シール部材6で水密にされているので、掛止孔9から浸入した雨水が各被固定部8と外装下地の間から屋内側に入り込むことを防止できる。
【0039】
また、屋内側シール部材6は両側の被固定部8に跨って、取付部7の屋内側に配置されるため、掛止孔9から浸入した雨水が外装下地に至ることを屋内側シール部材6によって防止できる。
【0040】
また、長尺な取付部7に当該取付部7の長手方向に延びる電線用通路13が形成されているため、電線用通路13に機能部材に接続される電線を通す等して電線を外壁の内部に仕舞い良く収めることができる。
【0041】
また、本実施形態では、目地2に外装材1に模した外観を有して当該目地2を隠すカバー26が設けられている。このため、機能部材を外壁に取り付けないときには、カバー26により取付部7が設けられる目地2を隠して外観を向上させることができる。また、雨水が目地2に浸入することをカバー26によっても防止できる。
【0042】
なお、本実施形態では、外装下地を縦胴縁3で構成したが、これに限定されるものではなく、柱や面材等で構成してもかまわない。また、本実施形態の取付具4は外装下地において横方向に隣り合う外装材1の間に形成される縦目地18に対応する箇所に設けられている。しかし、縦方向に隣り合う外装材1の間に形成される横目地に対応する箇所に設けられるものであってもよい。また、本実施形態の取付具4は縦方向の複数の外装材1に亘って設けられているが、縦方向において一枚の外装材1に対応する箇所にのみ設けられるものであってもよい。
【0043】
また、取付部7には機能部材を掛止するための掛止部として掛止孔9を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば機能部材に被掛止孔を設け、取付部7に被掛止孔が掛止される掛止部を設ける等してもよい。
【0044】
また、両側の被固定部8と外装下地の間は、一枚の屋内側シール部材6で水密されるようにしたが、被固定部8毎に設けられた屋内側シール部材で水密にされるようにしても構わない。また、この他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 外装材
2 目地
4 取付具
5 シール材
6 屋内側シール部材
7 取付部
8 被固定部
9 掛止孔
13 電線用通路
26 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装下地に取付具が固定され、この取付具に掛止により機能部材を取り付け可能な取付部が設けられ、この取付部が隣り合う外装材の間の目地に配置されることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
前記取付具は前記取付部の屋内側端部の両側から前記外装材の面方向に突出して前記外装下地に固定される被固定部を有し、前記各被固定部が前記目地の両側の外装材のうち対応する外装材の屋内側に配置され、前記各被固定部とこれに対応する前記外装材の間がシール材で水密にされることを特徴とする請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記取付部に前記機能部材を掛止するための屋内外方向に貫通する掛止孔が形成され、前記各被固定部と前記外装下地の間がシール部材で水密にされることを特徴とする請求項2に記載の外壁構造。
【請求項4】
前記シール部材が前記両側の被固定部に跨って、前記取付部の屋内側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の外壁構造。
【請求項5】
前記取付部は長尺であって、この取付部に当該取付部の長手方向に延びる電線用通路が形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の外壁構造。
【請求項6】
前記目地に前記外装材に模した外観を有して当該目地を隠すカバーが設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2180(P2013−2180A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135634(P2011−135634)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】