説明

外用貼付剤

【課題】薬物の経皮吸収性が高く、しかも安定性に優れた、塩基性薬物含有の外用貼付剤の提供。
【解決手段】オキシブチニン酸付加塩、乳酸および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸および有機酸塩を必須成分として水を含有しない外用貼付剤。有機酸塩は、カルボン酸の金属塩であるか、特に酢酸ナトリウムであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用貼付剤に関する。本発明は、特に、塩基性薬物、有機酸および有機酸塩を含有し、経皮吸収性と安定性に優れた外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬物の投与方法として、経口投与、直腸投与、皮内投与、静脈内投与等、種々の方法が知られているが、経口投与が最も広く採用されている。しかし、経口投与には、薬物を吸収した後、肝臓での初回通過効果を受けやすいことや、投与後一時的に必要以上の血中濃度が認められる等の欠点を有している。また、経口投与においては、胃腸管障害、嘔吐感、食欲不振等の副作用も多く報告されている。さらに、近年の高齢化社会において、嚥下力の低下した患者が増加していることを考慮すると、より服用しやすい製剤が臨床上望まれている。従って、このような経口投与における欠点を解消し、より安全にしかも持続的に患者が服用しやすい製剤として、外用貼付剤の開発が積極的に進められ、製品も上市されている。
【0003】
しかしながら、多くの薬物は経皮吸収性が低いため、外用貼付剤の開発が困難であり、外用貼付剤はその目的を未だ十分に達成し得ていない。すなわち、正常皮膚は本来、異物の体内への侵入を防ぐバリヤー機能を有しているため、通常の外用貼付剤に用いられる基剤では、薬物が十分に経皮吸収されないことが多い。
【0004】
そのため、皮膚の角質層を介する薬物の経皮吸収性を高める工夫が求められており、いわゆる経皮吸収促進剤の基剤への配合が一般的に試みられている。例えば、低級アルキルアミドと組み合わせた吸収促進剤として、ジメチルアセトアミドとエチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルパルミテート等を組み合わせた例(米国特許第3,472,931号公報)や、2−ピロリドンと適当なオイル、直鎖脂肪酸とアルコールのエステルを組み合わせた例(米国特許第4,017,641号公報)、また、低級アルコールと炭素数7〜20のアルコール、炭素数5〜30の脂肪酸炭化水素、炭素数19〜26の脂肪酸カルボン酸のアルコールエステル、炭素数10〜24のモノまたはジエーテル、炭素数11〜15のケトンと水を組み合わせた例(特開昭61−249934号公報)等がすでに提案されている。しかしながら、これら従来の吸収促進剤および吸収促進組成物は皮膚に対する安全性が十分ではない。また、塩基性薬物を酸付加塩の形態で含有した外用貼付剤においてはその効果はほとんど期待できなかった。
【0005】
また、外用貼付剤として、薬物と有機酸を組み合わせる手法も報告されている。例えば、天然ゴム系粘着剤に、吉草酸ベタメタゾンと有機酸を組み合わせたテープ製剤の例(特開昭56−61312号公報)、アクリル系粘着剤に非ステロイド系消炎鎮痛剤と有機酸を組み合わせたテープ製剤の例(特開昭62−126119号公報)、また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ポリマーに、薬効成分としてサリチル酸メチル、乳化剤、有機酸、可塑剤、粘着付与樹脂および水を組み合わせたパップ型製剤の例(特開昭63−159315号公報)等がすでに提案されている。しかしながら、これらの公報において有機酸塩は使用されておらず、また有機酸の使用目的は、安定性の改善、溶解性の改善およびpH調整剤であり、経皮吸収性の向上を目的としたものではない。さらに、これらの公報における薬物は酸性または中性であるため、本発明のように、イオン対の形成を介して塩基性薬物の皮膚透過性及び安定性を向上させるために、有機酸を用いるものでもない。
【0006】
また、塩基性の生理活性物質の皮膚透過性を向上させる手法も試みられている。例えば、アクリル系粘着剤に、クエン酸と塩酸イソプレテレノールを組み合わせたテープ製剤の例(特開昭63−79820号公報)、アクリル系粘着剤に有機酸とピンボセチンを組み合わせたテープ製剤の例(特開平5−25039号公報)等が報告されている。しかしながら、これらの製剤には、剥離時の刺激性の問題があり、薬物の放出量が治療に十分な効果をもたらすに至っていない。
また、経皮投与製剤として、薬物と有機酸を組み合わせた手法も報告されている。例えば、非ステロイド系の消炎鎮痛剤の塩に、有機酸およびグリコールを含有したもの(特開昭62−181226号公報)、アルカリ金属の塩形態を有する非ステロイド系消炎鎮痛剤および遊離状態の非ステロイド消炎鎮痛剤より強酸性の有機酸を含有する貼付剤(特公平7−47535号公報)がある。しかしながら、これらの提案は、酸性薬物に関するもので、塩基性薬物に関するものではない。また、塩基性薬物またはその塩、炭素原子数2〜5のアルコール炭素原子数2〜5の有機酸および炭素原子数16〜20のカルボン酸エステルの組み合わせの例があるものの、有機酸塩の使用に関する記載はない。
【0007】
さらに、WO 96/16642には塩型の塩基性薬物に有機酸塩を含有させた貼付製剤の技術が開示されているが、有機酸と有機酸塩を組み合わせることによって薬物の皮膚透過性を向上させ、粘着物性や性状等の外用貼付剤の物理的安定性を高めることについては開示がない。
すなわち、塩基性薬物を酸付加塩の形態で外用貼付剤に含有させ、優れた安定性を有し、かつ期待する薬物の経皮吸収を得ることができる外用貼付剤は、未だ見出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の課題を解決し、薬物の経皮吸収性が高く、しかも安定性に優れた、塩基性薬物含有の外用貼付剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、塩基性薬物を酸付加塩型で含有する外用貼付剤に、特定量の有機酸と有機酸塩を含有させると、有機酸塩を単独で用いる場合より安定にイオン対を形成し、外用貼付剤中に皮膚透過性に優れた準安定状態が安定して保持されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、塩基性薬物、有機酸および有機酸塩を必須成分として含有することを特徴とする外用貼付剤である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための最良の形態 以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の外用貼付剤は、粘着層を含むものであることが望ましく、その他、例えば、粘着層を支持する支持体層、粘着層上に設けられる離型紙層を有するものであることができる。本発明の外用貼付剤において、塩基性薬物、有機酸および有機酸塩は上記粘着層中に含有されることが好ましい。
【0011】
本発明の外用貼付剤の粘着層において使用される塩基性薬物としては、塩基性薬物の酸付加塩であることが望ましい。塩基性薬物の酸付加塩としては、特に限定はないが、例えば、催眠・鎮静剤(塩酸フルラゼパム、塩酸リルマザホン等)、解熱消炎鎮痛剤(酒石酸ブトルファノール、クエン酸ペリソキサール等)、抗片頭痛剤(酒石酸エルゴタミン、メシル酸エルゴタミン等)興奮・覚醒剤(塩酸メタンフェタミン、塩酸メチルフェニデート等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、塩酸イミプラミン等)、局所麻酔剤(塩酸リドカイン、塩酸プロカイン等)、泌尿器官用剤(塩酸オキシブチニン等)、骨格筋弛緩剤(塩酸チザニジン、塩酸エペリゾン、メシル酸プリジノール等)、自律神経用剤(塩化カルプロニウム、臭化ネオスチグミン等)、抗パーキンソン剤(メシル酸ペルゴリド、メシル酸ブロモクリプチン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン等)、抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン、タンニン酸ジフェンヒドラミン等)、気管支拡張剤(塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール等)、強心剤(塩酸イソプレナリン、塩酸ドパミン等)、冠血管拡張剤(塩酸ジルチアゼム、塩酸ベラパミル等)、末梢血管拡張剤(クエン酸ニカメタート、塩酸トラゾリン等)、循環器官用剤(塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、塩酸ベニジピン、塩酸エホニジピン、フマル酸ビソプロロール、マレイン酸チモロール、塩酸ジルチアゼム、酒石酸メトプロロール等)、不整脈用剤(塩酸プロプラノロール、塩酸アルプレノロール等)、抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン等)、鎮暈剤(メシル酸ベタヒスチン、塩酸ジフェニドール等)、セロトニン受容体拮抗制吐剤(塩酸オンダンセトロン、塩酸グラニセトロン等)、麻薬系の鎮痛剤(塩酸モルヒネ、クエン酸フェンタニル等)が挙げられる。
【0012】
これらの塩基性薬物は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよく、無機塩または有機塩のいずれの形態の薬物であってもよい。また、これらの塩基性薬物の配合量は、外用貼付剤としての充分な透過量および粘着物性等への影響を考慮して、粘着層の組成全体の質量に基づいて、0.1〜20質量%とすることが好ましい。この配合量が0.1質量%未満となると、充分な薬効が得られず、20質量%を超えると、貼付剤としての物性が劣ったものとなる。
【0013】
本発明の外用貼付剤の粘着層中において使用される有機酸は、特に限定されないが、炭素数2〜7のカルボン酸が好ましい。炭素数2〜7の有機酸としては、脂肪族(モノ、ジ、トリ)カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等)、芳香族カルボン酸(例えば、サリチル酸、安息香酸等)等が挙げられる。これらの中でも、特に酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸が好ましい。
【0014】
これらの有機酸は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機酸の配合量は、外用貼付剤としての安定性および皮膚への刺激性を考慮すると、粘着剤層の組成全体の質量に基づいて、0.01〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜15質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。有機酸の粘着層における配合量が、0.1質量%未満となると、安定性が劣ったものとなり、20質量%を超えると、皮膚刺激が生じる。
また、塩基性薬物の酸付加塩と有機酸の配合比は、5:1〜1:5(当量比)とすることが好ましい。この塩基性薬物の酸付加塩と有機酸の配合比が5:1〜1:5の範囲外となると、安定性が劣ったものとなったり、皮膚透過性が劣ったものとなる。
【0015】
本発明の外用貼付剤の粘着層中において使用される有機酸塩は、特に限定されないが、例えば、脂肪族(モノ、ジ、トリ)カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、乳酸、マレイン酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等)、芳香族カルボン酸(例えば、フタル酸、サリチル酸、安息香酸、アセチルサリチル酸等)、アルキルスルホン酸(例えば、エタンスルホン酸、プロピルスルホン酸、ブタンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸等)、アルキルスルホン酸誘導体(例えば、N−2−ヒドロキシエチルピペリジン−N’−2−エタンスルホン酸(以下、「HEPES」と略記する)等)、コール酸誘導体(例えば、デヒドロコール酸等)の各水溶性無機塩類を挙げることができる。これらの中でも、カルボン酸の金属塩が好ましく、特に酢酸ナトリウムが好ましい。また、これらの有機酸塩は無水物であっても水和物であってもよいが、疎水性の粘着層中に用いられる場合には無水物であることが好ましい。
【0016】
これらの有機酸塩は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機酸塩の配合量は、外用貼付剤としての充分な透過量および皮膚への刺激性を考慮すると、粘着層の組成全体の質量に基づいて、0.01〜20質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。有機酸塩の配合量が、0.01質量%未満となると、皮膚透過性が劣ったものとなり、20質量%を超えると、皮膚刺激が生じる。
また、塩基性薬物の酸付加塩と有機酸塩の配合比は5:1〜1:5(当量比)であることが好ましい。この塩基性薬物の酸付加塩と有機酸塩の配合比が5:1〜1:5の範囲外となると、皮膚透過性が劣ったものとなったり、物性が劣ったものとなる。
さらに、有機酸と有機酸塩の配合比は、3:1〜1:20(当量比)とすることが好ましく、さらに好ましくは2:1〜1:15(当量比)であり、特に好ましくは1:1〜1:10(当量比)である。この有機酸と有機酸塩の配合比が3:1〜1:20の範囲外となると、皮膚透過性が劣ったものとなったり、安定性が劣ったものとなる。
【0017】
本発明の外用貼付剤の粘着層は、上記した必須成分としての塩基性薬物、有機酸および有機酸塩の他、吸収促進剤、可塑剤、脂溶性の疎水性高分子、粘着付与樹脂、および必要に応じて、その他の添加剤等を含有することができる。
吸収促進剤としては、皮膚での吸収促進作用が知られている化合物であればいずれのものも用いることができ、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステルまたはエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステルまたはエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、環状、直鎖状分枝状のいずれでもよい)、さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0018】
上記吸収促進剤の好ましい例としては、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、HCO−60、ピロチオデカンが挙げられ、特に好ましい例としてラウリルアルコール、l−メントール、プロピレングリコール、ピロチオデカンが挙げられる。
【0019】
これらの吸収促進剤は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、吸収促進剤の配合量は、外用貼付剤としての充分な透過性および発赤、浮腫等の皮膚への刺激性等を考慮して、粘着層の組成全体の質量に基づいて、0.01〜20質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10質量%であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の量である。
【0020】
本発明の外用貼付剤の粘着層に用いることができる可塑剤としては、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、 トール油、ラッカセイ油)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴム)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン、セバシン酸ジエチル等が挙げられる。これらの中でも、特に流動パラフィン、液状ポリブテン、サリチル酸グリコール、クロタミトンが好ましい。
【0021】
これらの可塑剤は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、可塑剤の粘着層の組成全体に基づく配合量は、充分な透過性および貼付製剤としての充分な凝集力の維持を考慮して、合計で10〜70質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは10〜60質量%であり、特に好ましくは10〜50質量%である。
【0022】
本発明の外用貼付剤の粘着層に用いることができる脂溶性の疎水性高分子としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と略記する。)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、「PIB」と略記する。)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」と略記する。)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、「SBR」と略記する。)アクリル系ポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、メタクリレート、メトキシエチルアクリレートおよびアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも2種の共重合体)を挙げることができる。これらの中でも特に、SIS、PIB、これら2種のブレンドおよびアクリル系ポリマーが好ましい。
【0023】
これらの疎水性高分子は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、疎水性高分子の粘着層の組成全体の質量に基づく配合量は、粘着剤層の形成および充分な透過性を考慮して、SIS、PIB等の場合は、10〜60質量%が好ましく、さらに好ましくは15〜50質量%であり、特に好ましくは18〜40質量%の量である。同様にアクリル系ポリマーの場合は、10〜98質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜98質量%であり、特に好ましくは30〜98質量%である。
【0024】
本発明の外用貼付剤の粘着層において用いることができる粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂、マレイン酸レジン等が挙げられる。これらの中でも特に、水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。
【0025】
これらの粘着付与樹脂は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の粘着層の組成全体に基づく配合量は、貼付剤としての充分な粘着力および剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、10〜70質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは15〜60質量%であり、特に好ましくは20〜50質量%である。
【0026】
また、本発明の外用貼付剤の粘着層には、必要に応じて、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等の添加剤を用いることができる。
抗酸化剤としては、トコフェロールおよびこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等を用いることができる。
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等を用いることができる。
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤を用いることができる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等を用いることができる。
【0027】
このような抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等の添加剤の配合量は、本発明の外用貼付剤の粘着層の組成全体の質量に基づいて、合計で、10質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
【0028】
このような組成を有する本発明の外用貼付剤の製造方法は限定されず、いずれの方法によっても製造することができる。例えば、薬物を含む基剤組成を熱融解させ、離型紙または支持体に塗工後、支持体または離型紙と張り合わせて本外用貼付剤を得ることができる。また、薬物を含む基剤成分をトルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させ、離型紙または支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去後、支持体または離型紙と張り合わせて本外用貼付剤を得ることができる。
【0029】
本発明の外用貼付剤は水を含有しない非水系外用貼付剤であることが好ましい。
なお、本発明の外用貼付剤は、上記のような塩基性薬物、有機酸塩および有機酸を含むものであれば、その他の構成や各構成部分の素材は、いずれの種類のものであってもよい。
粘着層を支持するために設けることができる支持体層は、伸縮性または非伸縮性の支持体を用いて形成することができる。支持体としては、例えば布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート等、またはそれらの複合素材から選択して用いることができる。
また粘着層上に設けることができる離型紙層は、例えば、粘着層との接触面にシリコーン処理されたポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフィルム、または上質紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等から選択して用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。尚、実施例、比較例および試験例において、「%」は、全て「質量%」を意味するものとする。
【0031】
(実施例1)
酢酸ナトリウム 1.0%
酒石酸 0.5%
アクリル系粘着ポリマー 93.5%
(PE−300:日本カーバイド社製)
イソシアネート系架橋剤 1.0%
(CK−100:日本カーバイド社製)
ピロチオデカン 2.0%
塩酸チザニジン 2.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全量 100.0%
これらの組成中、酒石酸、酢酸ナトリウム、ピロチオデカンおよび塩酸チザニジンを酢酸エチルに加え、室温で攪拌、溶解した後、アクリル系粘着ポリマー酢酸エチル溶液およびイソシアネート系架橋剤を添加して攪拌し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET:30μm)上に伸展し、90℃で15分間熱架橋し、50μmの粘着層を得て、次いで本発明の外用貼付剤を得た。
【0032】
(実施例2)
酢酸ナトリウム 9.0%
乳酸 2.0%
流動パラフィン 14.0%
ロジン系粘着付与剤 29.0%
(KE−311:荒川化学工業社製)
PIB 13.0%
SIS 18.0%
塩酸オキシブチニン 15.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全量 100.0%
これらの組成中、酢酸ナトリウム、乳酸、塩酸オキシブチニン以外の成分をトルエンに溶解、混合した後、残りの成分を添加し、均一になるまで分散させた後、PETフィルム(30μm)上に粘着層が50μmとなるように伸展し、本発明の外用貼付剤を得た。
【0033】
(実施例3)
酢酸ナトリウム 9.0%
クエン酸 2.5%
流動パラフィン 10.5%
ポリテルペン樹脂系粘着付与剤 32.0%
(アルコンP−100:荒川化学工業社製)
PIB 13.0%
SIS 18.0%
塩酸オキシブチニン 15.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全量 100.0%
これらの組成中、酢酸ナトリウム、クエン酸および塩酸オキシブチニン以外の成分をトルエンに溶解、混合した後、残りの成分を添加し、均一になるまで分散させた後、PETフィルム(30μm)上に粘着層が50μmとなるように伸展し、本発明の外用貼付剤を得た。
【0034】
(実施例4)
酢酸ナトリウム 1.0%
リンゴ酸 0.3%
流動パラフィン 27.4%
ロジン系粘着付与剤 27.5%
(KE−311:荒川化学工業社製)
PIB 12.0%
SIS 22.3%
ピロチオデカン 3.0%
クロタミトン 5.0%
BHT 0.5%
塩酸チザニジン 1.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全量 100.0%
これらの組成中、酢酸ナトリウム、リンゴ酸、塩酸チザニジン以外の成分をシクロヘキサンに溶解、混合した後、残りの成分を添加し、均一になるまで分散させた後、PETフィルム(30μm)上に粘着層が50μmとなるように伸展し、本発明の外用貼付剤を得た。
【0035】
(実施例5)
酢酸ナトリウム 1.0%
安息香酸 0.3%
流動パラフィン 27.4%
ロジン系粘着付与剤 27.5%
(KE−311:荒川化学工業社製)
PIB 12.0%
SIS 22.3%
ピロチオデカン 3.0%
クロタミトン 5.0%
BHT 0.5%
塩酸チザニジン 1.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全量 100.0%
これらの組成中、酢酸ナトリウム、安息香酸、塩酸チザニジン以外の成分をシクロヘキサンに溶解、混合した後、残りの成分を添加し、均一になるまで分散させた後、PETフィルム(30μm)上に粘着層が50μmとなるように伸展し、本発明の外用貼付剤を得た。
【0036】
(実施例6)
酢酸ナトリウム 1.0%
サリチル酸 0.3%
流動パラフィン 27.4%
ロジン系粘着付与剤 27.5%
(KE−311:荒川化学工業社製)
PIB 12.0%
SIS 22.3%
ピロチオデカン 3.0%
クロタミトン 5.0%
BHT 0.5%
塩酸チザニジン 1.0%
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全量 100.0%
これらの組成中、酢酸ナトリウム、サリチル酸、塩酸チザニジン以外の成分をシクロヘキサンに溶解、混合した後、残りの成分を添加し、均一になるまで分散させた後、PETフィルム(30μm)上に粘着層が50μmとなるように伸展し、本発明の外用貼付剤を得た。
【0037】
(比較例1〜6)
比較例1〜6はそれぞれ、実施例1〜6の各実施例に対応して行い、実施例1〜6において用いられた酢酸ナトリウムを配合しないこと以外は、それぞれ実施例1〜6と同様にして外用貼付剤を得た。
【0038】
(比較例7〜9)
比較例7〜9はそれぞれ、実施例1〜3の各実施例に対応して行い、実施例1〜3において用いられた有機酸を配合しないこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして外用貼付剤を得た。
【0039】
(比較例10)
比較例10は、実施例4に対応しており、実施例4において用いられた有機酸を配合しないこと以外は同様にして、外用貼付剤を得た。
【0040】
(試験例1:In vitro経皮吸収性試験)
ヘアレスマウス(6〜9週齢)の背部皮膚を摘出した後、真皮側の脂肪を注意深く取り除き、真皮側がレセプター相となるように、フロースルーセルに装着した。尚、フロースルーセルには37℃の水をレセプター相の外周部に循環させた。この摘出皮膚の角質層側に実施例1〜6および比較例1〜10の各貼付剤(製剤の適用面積は5cm)を貼付し、レセプター相である生理食塩水を1時間当たり約5mlで流した。2時間毎に24時間までサンプリングを行い、流出するレセプター相の流量を正確に測定した。その後、高速液体クロマトグラフ法によりレセプター相の薬物濃度を測定し、累積透過量[Q]を下記式に従い算出した。
累積透過量[Q](μg/cm
=[薬物濃度(μg/ml)×流量(ml)]/製剤の適用面積(cm
皮膚透過速度[flux]は、単位時間当たりの透過量の変化量として定義され、時間tによりflux(μg/cm/hr)=ΔQ(μg/cm)/Δt(hr)
と表される。Flux値が大きい製剤は、経皮吸収性に優れたものと認められる。結果を表1に示す。
【0041】
(試験例2:製剤安定性試験)
実施例1〜6および比較例1〜10で得られた各外用貼付剤を、25℃の条件下で3ヶ月保存した後、肉眼で観察し、結晶形成の有無を調べた。経時的に結晶が形成すると、貼付剤の品質の可否判断である外観の性状が変化するので、医薬品として安定なものとは認められない。また、結晶が形成すると、放出特性および粘着物性が変化するため、不安定な製剤と判断した。結果を表1に示す。
・経皮吸収性と製剤安定性の総合評価 実施例1〜6および比較例1〜10について、上記試験例1〜2の結果を鑑みて、経皮吸収性と安定性のどちらも良好なものを○、どちらか一方のみが良好なものといずれも良好でないものを×とした。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示される結果から明らかなように、塩基性薬物と有機酸と有機酸塩を組み合わせて用いた実施例1〜6の外用貼付剤は、経皮吸収性および安定性がともに優れたものであった。これに対して、塩基性薬物と有機酸のみを組み合わせて用いた比較例1〜6の外用貼付剤は、安定性は良好であったものの、経皮吸収性は著しく劣っていた。さらに、塩基性薬物と有機酸塩のみを組み合わせて用いた比較例7〜10の外用貼付剤は、経皮吸収性は良好であったものの、安定性が著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、薬物の経皮吸収性が高く、しかも安定性に優れた塩基性薬物含有の外用貼付剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシブチニン酸付加塩、乳酸および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸および有機酸塩を必須成分として得られることを特徴とする水を含有しない外用貼付剤。
【請求項2】
有機酸塩が、カルボン酸の金属塩であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項3】
有機酸塩が、酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求の範囲第1または2項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項4】
粘着層の組成全体の質量に基づいて、オキシブチニン酸付加塩0.1〜20質量%、乳酸および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸0.01〜20質量%および有機酸塩0.01〜20質量%を用いて得られることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項5】
粘着層の組成全体の質量に基づいて、オキシブチニン酸付加塩1〜15質量%、乳酸および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸0.3〜2.5質量%および有機酸塩1.0〜9.0質量%を必須成分として得られることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項6】
オキシブチニン酸付加塩と有機酸塩の配合比を、5:1〜1:5(当量比)として得られることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項7】
オキシブチニン酸付加塩と有機酸の配合比を、5:1〜1:5(当量比)として得られることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項8】
有機酸と有機酸塩の配合比を、3:1〜1:20(当量比)として得られることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水を含有しない外用貼付剤。
【請求項9】
オキシブチニン酸付加塩が、塩酸オキシブチニンであることを特徴とする請求の範囲第1〜8項のいずれかに記載の水を含有しない外用貼付剤。

【公開番号】特開2011−79855(P2011−79855A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272021(P2010−272021)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2001−511904(P2001−511904)の分割
【原出願日】平成12年7月25日(2000.7.25)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】