説明

外装材の端部防水構造

【課題】本発明は建築、構築物の外装を形成する外装材において、長手方向の両端部の防水性を強化した外装材の端部防水構造に関するものである。
【解決手段】略垂直の化粧面4と、化粧面4の上下端部に雄雌連結構造を有する長尺状外装材Aの長手方向両端部の連結構造において、外装材A下端部に形成し上方に窪んだ係合溝11内の表面側の上縁9と、外装材A上端部に形成し上方に突出した嵌合片17の表面側の目地面12の少なくとも一方に凹凸部18を形成した外装材Aを上下に連結することにより、外装材A両端部の係合溝11内に防水空間γを形成した外装材Aの端部防水構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築、構築物の外装を形成する外装材において、長手方向の両端部の防水性を強化した外装材の端部防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製板材をロール成形、プレス成形等して加工した建築用パネルは数多く上市され、その形状は、所謂落とし込み構造である。(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−172884号公報
【特許文献2】特開平11−172892号公報
【特許文献3】特開平11−210149号公報
【特許文献4】特開2002−220908号公報
【特許文献5】特開2002−235423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜5は落とし込み構造の外装材であるが、嵌合部からの毛細管現象により、目地部、出隅部、入隅部、見切部などから躯体内部に雨水Rが浸入してしまう危険性があり、コーキング材などで防水処理を完全に行っておく必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を解決するために、略垂直の化粧面と、化粧面の上下端部に雄雌連結構造を有する長尺状外装材の長手方向両端部の連結構造において、外装材下端部に形成し上方に窪んだ係合溝内の表面側の上縁と、外装材上端部に形成し上方に突出した嵌合片の表面側の目地面の少なくとも一方に凹凸部を形成した外装材を上下に連結することにより、外装材両端部の係合溝内に防水空間を形成した外装材の端部防水構造に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る外装材の端部防水構造によれば、外装材同士を連結した際の外装材の長手方向の両端部の表面材側の係合溝内に防水空間を形成し、係合溝内の毛細管現象を防止して防水性を向上することにより、(1)外装材の端部の係合溝から躯体内部に雨水が浸入することがない。このために(2)躯体内部の雨水の浸入による腐食を防止出来る。(3)外装材切断面の腐食を防止出来る。(4)家屋の寿命が延びる。(5)横走りシーリング材の施工の簡略化が図れる。(6)横走りシーリング材の施工忘れを防止出来る。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る外装材の端部防水構造の施工状態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る外装材の端部防水構造の施工状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る外装材の端部防水構造の施工順序を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る外装材の端部防水構造の施工順序を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材の一例の両端部分を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る外装材の端部防水構造を施工する端部被覆材の一例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す説明図である。
【図11】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る外装材の端部防水構造に使用する外装材のその他の実施例を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る外装材の端部防水構造で使用する端部被覆材のその他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
以下に図面を用いて、本発明に係る外装材の端部防水構造一実施例について詳細に説明する。すなわち、図1(a)、(b)〜図4は施工状態を示す断面図である。外装材Aは図5(a)、(b)〜図7(a)、(b)((a)図は左端部、(b)図は右端部を示す一部切り欠き斜視図)に示すように、表面材1と裏面材2で例えば合成樹脂発泡体からなる芯材3をサンドイッチした外装材Aである。また、図8(a)〜(c)は外装材Aを施工する端部被覆材Yの一例を示す断面図である。
【0009】
外装材Aは図5(a)、(b)〜図7(a)、(b)に示すように、長尺で金属製の薄板材からなる表面材1とシート状の裏面材2間に芯材3をサンドイッチし、略垂直の化粧面6と下端に内方に屈曲した下側壁7、上端に内方に屈曲した上側壁8を形成し、幅方向の下端に形成した雄型連結部4、上端に形成した雌型連結部5とから形成したものである。なお、化粧面6には凹6aと凸6bを形成したものである。
【0010】
さらに詳説すると、雄型連結部4は下側壁7の先端を上方で化粧面6の裏面側へ突出した上縁9と、上縁9の先端を下方に屈曲した係合片10と、上縁9と係合片10とからなる係合溝11とから形成したものである。
【0011】
雌型連結部5は上側壁8の先端を上方に屈曲した目地面12と、目地面12の先端を折り返し下方に突出した上面13と、上面13の先端を上方に屈曲して突出した下面14と、上面13と下面14とから形成した嵌合溝15と、下面14をさらに上方に突出した固定面16、目地面12と下面14とからなる嵌合片17とから形成したものである。なお、Pは防水性強化のために形成したシーリング材である。
【0012】
図1(a)、(b)、図2において、αは躯体、βは固定具である。
【0013】
さらに詳説すると、図5(a)、(b)〜図7(a)、(b)に示すように外装材Aの左右端部の目地面12上には凹凸部18を設けることにより防水空間γを形成するものである。この、凹凸部18は図1(a)、(b)〜図4に示すように係合溝11内において防水空間γを形成するものであり、図4に点線矢印で示すように係合溝11内の毛細管現象により浸入してこようとする雨水Rの浸入を防止するために形成したものである。
【0014】
さらに詳説すると、従来の外装材A同士の係合溝11内には極小間隙が連続して形成されているために、この極小間隙内を風雨とその係合溝11内の極小間隙による毛細管現象により、雨水Rが目地部方向に横走りし、躯体α内にまで浸入してしまう危険性があった。このために、目地部などの端部被覆材Yを形成した部分は、特に防水性強化のためにバックアップ材、コーキング材、などのシーリング材P1を形成する必要があった。
【0015】
このような弱点を解決するために、外装材Aの端部の目地面12上に凹凸部18を形成することにより防水空間γを形成し、係合溝11内の毛細管現象を防止して、雨水Rの横走りを防水空間γにより阻止し、防水性を向上するものである。
【0016】
なお、図では凹凸部18として凹部を示しているが、勿論、凸部を形成して凹凸部18とし、防水空間γを形成しても良いものである。また、凹凸部18より形成される防水空間γにシーリング材P1を形成して防水性を強化することも出来るものである。シーリング材P1の形成は、防水空間γの全部を閉塞せず、部分的に形成すると毛細管現象も防止しながら防水性を強化出来るものである。
【0017】
勿論、凹凸部18は図のように目地面12に形成すると共に、雄型連結部4の係合溝11内の上縁9に形成しても良いし、上縁9にのみ凹凸部18を形成して防水空間γを形成しても良いものであり、外装材Aの両端部の係合溝11内において、凹凸部18の形成により防水空間γが形成されれば良いものである。
【0018】
なお、図8(a)〜(c)に示す端部被覆材Yは金属製板材、あるいは金属製押出材、もしくはプラスチック材からなるものであり、図では本発明に係る外装材の端部防水構造Aを施工する下地として縦目地部に使用する端部被覆材Yを示すものである。
【0019】
さらに詳説すると、端部被覆材Yは敷目板Bとカバー材Cの2部材からなり、敷目板Bは固定部19と係止部20、係止溝20aからなる長尺状部材である。また、カバー材Cはカバー化粧面21、係止片部22、係止片部22に一定間隔で形成した係止爪22aからなる長尺状部材である。
【0020】
凹凸部18の形成位置は、図4に示すように敷目板Bの係止部20からカバー材Cの端部までの距離をT、図5に示すように敷目板Bの係止部20から凹凸部18の端部までの距離をtとすると、T>tの関係が防水上好ましいものである。
【0021】
表面材1と裏面材2は金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したもの、あるいは無機質材を押出成形、プレス成形、オートクレーブ養生成形等して各種任意形状に形成したものである。また、裏面材2としてはアルミニウム蒸着紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、または2種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物からなるものでも良いものである。
【0022】
芯材3は例えばポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等、の合成樹脂発泡体からなるものであり、特に耐火性を必要とする場合にはレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、表面材1、もしくは裏面材2の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成したものである。また、芯材3中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、耐火性、防火性を向上させることも出来る。勿論、芯材3としてロックウール、グラスウール、セラミックウール等の無機材を使用しても良いものである。
【0023】
外装材A同士は、係合片10が嵌合溝15へ、係合溝11には嵌合片17が連結されることにより、図4(b)に示すように連結されるものである。
【0024】
そこで、外装材Aの端部防水構造の施工順序について図1〜図8(a)〜(c)を用いて説明する。まず、図8(a)に示す敷目板Bを図4(a)に示すように躯体αに固定具βを使用して固定する。
【0025】
その後、図1(a)、(b)〜図3(a)、(b)に示すような外装材Aの端部を図5に示すように係止部20に当接し、外装材Aの固定面16を固定具βにより図6に示すように固定する。
【0026】
その後、下段の外装材Aの嵌合溝15へ係合片10が、係合溝11には嵌合片17が連結されることにより、上段の外装材Aを固定する。このような工程を土台から軒天まで、敷目板Bの係止部20の左右で行うことにより、外装材Aの施工を完了する。
【0027】
次に、外装材Aと係止部20間の隙間、および外装材Aの凹凸部18のさらに奥側の目地面12上に防水用のシーリング材P1を形成するものである。
【0028】
その後、図4(a)、(b)、図7に示すように敷目板Bの係止溝20aにカバー材Cの係止片部22の係止爪22aを係止することにより、目地部の外装材Aの施工を完了するものである。
【0029】
以上説明したのは本発明に係る外装材の端部防水構造の一実施例にすぎず、図9(a)〜(c)〜図16(a)〜(c)に示すように外装材Aを形成することも出来る。
【0030】
すなわち、図9(a)〜(c)〜図16は外装材Aのその他の実施例を示すものである。
【0031】
特に、図10(a)〜(l)は凹凸部18のその他の実施例を示すものであり、その形状は凹状、あるいは凸状である。
【0032】
また、図11、図12は凹凸部18を全面に形成したものであり、特に図12は波状に凹凸部18を形成したものである。
【0033】
さらに、図12〜14はシーリング材P1を形成した外装材A、図15は凹凸部18にシーリング材P1を形成した外装材A、図16(a)〜(c)は端部被覆材Yのその他の実施例を示す断面図であり、出隅部、入隅部、見切部に使用する端部被覆材Yである。
【符号の説明】
【0034】
α躯体
β固定具
γ防水空間
A外装材
B敷目板
Cカバー材
Pシーリング材
P1シーリング材
R雨水
Y端部被覆材
1表面材
2裏面材
3芯材
4雄型連結部
5雌型連結部
6化粧面
6a凹
6b凸
7下側壁
8上側壁
9上縁
10係合片
11係合溝
12目地面
13上面
14下面
15嵌合溝
16固定面
17嵌合片
18凹凸部
19固定部
20係止部
20a係止溝
21カバー化粧面
22係止片部
22a係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直の化粧面と、該化粧面の上下端部に雄雌連結構造を有する長尺状外装材の長手方向両端部の連結構造において、外装材下端部に形成し上方に窪んだ係合溝内の表面側の上縁と、外装材上端部に形成し上方に突出した嵌合片の表面側の目地面の少なくとも一方に凹凸部を形成した外装材を上下に連結することにより、外装材両端部の係合溝内に防水空間を形成したことを特徴とする外装材の端部防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−184953(P2011−184953A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51446(P2010−51446)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(390018463)アイジー工業株式会社 (100)
【Fターム(参考)】