説明

外観検査システム

【課題】 不良品が多発する前にその兆候を掴み、不良品の多発を未然に防ぐことが可能な外観検査システムを提供すること
【解決手段】 視覚センサと所定の制御装置とを通信を介して接続してなる外観検査システムであって、視覚センサは撮像手段と良否数量化手段とを含み、制御装置は、検査対象物が検査されるたびに視覚センサから得られる数量データを取得するデータ取得手段と、データ取得手段により逐次取得される数量データに基づき一連の数量域を構成する各数量域毎の数量データの出現度数を表すヒストグラムデータを生成するヒストグラムデータ生成手段と、ヒストグラムデータ生成手段により生成されるヒストグラムデータ上において、良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布の所定特徴に基づいて不良品の出現間近を判定する出現間近判定手段とを含む、ことを特徴とする外観検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品の外観を検査する外観検査システムに関し、特に、不良品が発生乃至多発する前に、予防保全を行うことが可能である外観検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の外観を視覚センサなどの撮像素子で撮像し、得られた画像に基づき製品の外観検査を行う外観検査システムが従前より知られている。外観検査システムにおいては、製品を撮像して得られた画像データに画像処理を施して濃度を数値化し、その数値により良品/不良品の判別を行っている。
【0003】
この種の外観検査システムにおいて、出力情報よりヒストグラムを作成し故障診断を行うという技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の発明は、予め故障診断用の複数の関数パターンを記憶しておき、出力されたヒストグラムと記憶されている複数の関数パターンとを比較し、最も一致度の高い関数パターンを基準として異常情報を程度情報として得ることが可能であるというものである。
【特許文献1】特開平5−011836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の故障診断装置においては、故障もしくは異常が発生した後にその原因を推測するのには効果的であっても、不良品が頻発する前にその兆候を掴み未然に防止することはできず、結果として不良品の多発を許すこととなっていた。
【0005】
本発明は、このような従前の問題に注目してなされたものであり、その目的とするところは不良品が多発する前にその兆候を掴みトラブルを未然に防ぐ外観検査システムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的とするところは、良品と不良品との判定基準となる良否判定値を適切に設定可能な外観検査システムを提供することにある。
【0007】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、本発明の外観検査システムは、視覚センサと所定の制御装置とを通信を介して接続してなるものである。ここで視覚センサは、検査対象物の外観を撮像して画像データを生成する撮像手段と、撮像手段から得られる画像データを画像処理することにより、検査対象物の外観良否の程度と相関のある数量データ(例えば、濃度データ)を生成する良否数量化手段とを含むものである。また、制御装置は、検査対象物が検査されるたびに視覚センサから得られる数量データを取得するデータ取得手段と、データ取得手段により逐次取得される数量データに基づいて、一連の数量域を構成する各数量域毎の数量データの出現度数を表すヒストグラムデータを生成するヒストグラムデータ生成手段と、ヒストグラムデータ生成手段により生成されるヒストグラムデータ上において、良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布の所定特徴に基づいて不良品の出現間近を判定する出現間近判定手段とを含むものである。
【0009】
このような構成によれば、良品の分布特徴に基づいて不良品の出現間近を判定することが可能であるため、不良品が発生乃至多発する前に異常を察知し対処することが可能となる。
【0010】
また、本発明の外観検査システムにおいては、出現間近判定手段における判定基準となる度数分布の所定特徴が、良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布のばらつきの程度であるように構成してもよい。
【0011】
ここで、「良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布のばらつきの程度」とは、例えば、任意に定められた値よりも度数の高い濃度値の分布幅等で表すことができ、異常察知の基準の一つとなる。なお、この「良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布のばらつきの程度」は、実施形態における「ばらつき指数」に相当する。本発明においては、数量データの度数分布のばらつきの程度が当初定めたばらつき警報値を超えた場合(出現間近判定に相当)に、ばらつき警報を出力することができる。
【0012】
そして、このような構成によれば、何らかの要因で数量データの度数分布範囲が広がってばらつきが生じ、そのまま放置すると不良品が多発しかねないという場合に、早期に異変を察知し対処することが可能となる。
【0013】
また、本発明の外観検査システムにおいては、出現間近判定手段における判定基準となる度数分布の所定特徴が、良品に相当する一連の数量域内における数量データの最大度数を示す数量域と不良品に相当する数量域との距離であるように構成してもよい。
【0014】
ここで、「良品に相当する一連の数量域内における数量データの最大度数を示す数量域と不良品に相当する数量域との距離」とは、例えば、最も度数が高い数領域と、良否判定ラインとの距離とすることができる。数量データの分布のピークが不良品側に近づくと、不良品が大量に発生する可能性があるため、最大度数の数領域の変化も、異常察知の基準の一つとなる。本発明においては、最大度数の数領域が予め定めた最大度数接近判定値を超えた場合(出現間近判定に相当)に、最大度数接近警報を出力させることもできる。
【0015】
そして、このような構成によれば、最大度数を示す数領域が不良品側に近づいてきた場合に、最大度数の接近を早期に察知することが可能となり、不良品の多発を未然に防ぐことが可能となる。
【0016】
本発明の外観検査システムにおいては、所定の制御装置が、プログラマブル・コントローラにより構成されており、データ取得手段とヒストグラムデータ生成手段と出現間近判定手段とがプログラマブル・コントローラに含まれているように構成してもよい。
【0017】
また、所定の制御装置が、プログラマブル・コントローラとプログラマブル表示装置とを含んで構成されており、データ取得手段とヒストグラムデータ生成手段とがプログラマブル・コントローラに内蔵されており、かつ出現間近判定手段がプログラマブル表示装置に含まれているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の外観検査システムによれば、計測データのばらつきが一定以上になった場合や、最大度数が不良品側に近寄りすぎた場合に警報を発するため、不良品が発生乃至多発する前に設備の点検や検査条件の調査などを行い、不良品の発生乃至多発を防ぐことが可能である。
【0019】
また、温度、ラインスピードなどの環境要因と計測データとを関連付けて保存することにより、環境要因とヒストグラムとの相関性を把握することが容易である。
【0020】
また、良否判定基準値が確定していない場合でも、計測データより仮の良否判定基準を定め、適切な条件で計測を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明の外観検査システムの好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示すものに過ぎず、本発明の要旨とするところは、特許請求の範囲の記載によってのみ規定されるものである。
【0022】
先にも述べたように、本願の外観検査システムは、ヒストグラム上における良品の分布傾向を把握することにより不良品の発生乃至多発を未然に防止するというものである。このような外観検査システムの構成例が図1に示されている。同図において、101は表示器(請求項のプログラマブル表示装置に相当)、102は視覚センサ、103はプログラマブルコントローラ(PLC)、104はスピードメータ、105は温度調節器/湿度計、である。このシステムにおいて、PLC103は、外観検査システム全体を制御するもので各種演算やデータの保存等を行う。より具体的には、外観検査システムにて被検査対象品を検査した結果の傾向データにおけるヒストグラムの作成処理、外観検査システムにおける検査制御に用いる推奨判定値や警報出力を求める処理、外観検査システムにおける検査データ・計測データ・要因データ等の一時保存乃至長期保存処理などである。視覚センサ102は、撮像カメラ(図示せず)から被検査対象の画像を取り込み、被検査対象が良品か否かの良否判定をし、検査時の計測データ・輝度データなどを出力する。また、表示器101は、視覚センサ102が撮像した画像の表示、PLCの演算結果の表示、ヒストグラムの表示、警報情報表示などに用いられる。スピードメータ104は被検査対象を搬送するためのベルトコンベアの搬送スピードを計測し、その計測値をPLCへ出力する。温度調節器/湿度計105は外観検査システムの周辺温度や周辺湿度を計測し、その計測値をPLCへ出力する。なお、以下の例では表示器101は画面表示と画面タッチ式入力との2つの機能を備えたタッチパネルとしたが、表示部と入力部を別々に設けてもよいことは言うまでもない。
【0023】
本発明の外観検査システムに用いるPLCのCPUユニットのハードウェア構成を示すブロック図が図2に示されている。同図に示されるように、このCPUユニット2は、ユーザプログラムメモリ(UM)201と、入出力メモリ(IOM)202と、ROM203と、ワークRAM204と、データ格納用不揮発性メモリ205と、アプリケーションスペシフィックIC(ASIC)206と、マイクロプロセッサ(MPU)207とを含んでいる。
【0024】
ユーザプログラムメモリ(UM)201は、外観検査システム全体を任意に制御するためのユーザプログラムを格納するメモリである。入出力メモリ(IOM)202は、外部I/O割付用のメモリ、あるいはユーザプログラムで使用するデータメモリ等として使用されるメモリであり、例えばPLCに接続された表示器101からの入力データ、視覚センサ102の検査結果や計測データ、スピードメータ104の計測値データ、温度調節器または湿度計の計測値データなどを記憶するメモリである。ROM203は、システムファームウェアを格納するメモリである。ワークRAM204は、システムワークとして使用されるメモリである。データ格納用不揮発性メモリ205は、異常通知の設定や異常ステータス等を格納するメモリである。ASIC206は、ユーザプログラムメモリ(UM)201からプログラムを順番に読み出して実行し、実行結果を、入出力メモリ(IOM)202へ書き込む機能を有する。
【0025】
マイクロプロセッサ(MPU)207は、ユーザプログラムメモリ(UM)201のユーザプログラムを実行する。ユーザプログラムに含まれた所定の実行命令は予め決まった動作をするものであり、ROM203にはマイクロプロセッサ(MPU)207がその決まった動作をするためのシステムプログラムが記憶されている。データ格納用不揮発性メモリ205には、バックアップされたユーザプログラムや、電源遮断しても残したい計測データ、制御データ、異常データが記憶される。ワークRAM204には、マイクロプロセッサ(MPU)207の処理に用いる各種データが記憶される。ASIC206は、マイクロプロセッサ(MPU)がユーザプログラムメモリ(UM)201または入出力メモリ(IOM)202に対してアクセスする際にデータ送受をおこなうとともに、CPUユニット2にバスを介して接続された各種I/Oユニットとの間でデータ送受を行うものである。
【0026】
本発明の外観検査システムにおいては、視覚センサに組まれた撮像カメラ(請求項の撮像手段に相当)にて検査対象物を撮像し、得られた画像データに画像処理を行い、検査対象の表面の傷や汚れの大きさを0〜255の256段階の濃度値で判定する。例えば撮像した画像データの各画素を2値化処理し、傷や汚れの部分を白(または黒)、それ以外の正常な部分を黒(または白)となるようにする。そして黒または白の画素の数に比例するように256段階の濃度値を定義し、傷や汚れが小さければ濃度値は小さく、傷・汚れが大きければ濃度値は大きくなり、濃度値が一定値以上であった場合にはその製品は不良品として判定される。
【0027】
このような外観検査システムの一応用例が図3に示されている。図3(a)は角形シートの汚れ検査への応用例である。この外観検査システムにおいては、ベルトコンベア303上を搬送される角形シート302の汚れ検査を行っている。具体的には、視覚センサに組まれた撮像カメラ301で角形シート302を撮像し、視覚センサにて撮像した画像に画像処理を施してその濃度値を求め、得られた濃度値により良品か不良品かを判別する。判別結果はPLCへ送られ、PLCの制御によりベルトコンベアの下流に設けた排除装置(図示せず)が駆動され、その排除装置によって不良品であると判定された角形シート302はベルトコンベアから排除される。図3(b)には、取り込み画像を2値化処理した後の画像データイメージ図が示されている。図のように2値化処理によって、傷や汚れの部分が白色又は背景部分が黒色となっていて、角形シート302bの計測領域304内にはキズ305が含まれていることがわかる。視覚センサは、2値化処理した後の画像のキズ305に相当する白画素数を計数し、この白画素数が不良品と判定される大きさであった場合、つまり濃度値が一定値以上であった場合には、その角形シート302bは不良品と判断する。
【0028】
図3(c)には、リング状製品の欠陥検査の例が示されている。この例では、視覚センサは、リング状製品306の製品の縁を撮像した画像を2値化処理し、濃度値を求め、リングの縁の欠けやバリなどの有無を判別する。リング状製品306bは縁が欠けており、濃度値が許容範囲を超えた場合にはそのリング状製品306bは不良品と判断する。
【0029】
次に、このような外観検査を行う場合の視覚センサ側における処理について説明する。外観検査における視覚センサ側の処理フローが図4に示されている。この処理が開始されると、先ずはじめに光電センサが動作ONしたか否かの判定が行われる(ステップ401)。この種の光電センサにおいては、例えば、撮像カメラの撮像領域に検査対象が侵入してきたことを検出できるように光電センサを配置し、その光電センサを視覚センサに接続する。光電センサが検査対象の侵入を検出して動作ONすると、視覚センサは、そのON信号を入力したタイミングで撮像カメラから画像を取り込むわけである。撮像カメラの撮像領域に検査対象が存在しないか、または撮像タイミングではない場合には、光電センサの動作はOFFである。ステップ401において光電センサの動作がOFFであった場合には(ステップ401NO)、次の画像処理のステップには進まず、光電センサがON動作するのを待つ(ステップ401)。光電センサがON動作した場合には(ステップ401YES)、検査対象である製品を撮像カメラにて撮像し、取り込んだ画像を画像処理する(ステップ402)。ここで画像処理とは、取り込んだ画像を2値化処理し、傷や汚れの部分とそれ以外の正常な部分とに区分けし、傷や汚れの部分の画素数を計数して256階調の濃度値を求めることである。なお、ステップ402の処理は、請求項の良否数量化手段に相当する。
【0030】
続いて、得られた濃度値が予め定めた良否判定値を超えているか否かの判定を行い、濃度値が良否判定値を超えていた場合には不良品と判定し、濃度値が良否判定値を超えていなかった場合には良品と判定する。濃度値が良否判定値を超え不良品であると判定された場合には(ステップ403YES)、その不良品を排除する必要があるので、不良品である旨の不良品検査信号をPLC103に送る(ステップ404)。良品と判定された場合には(ステップ403NO)、その良品を排除する必要がないのでステップ404を行わず次の処理に移る。
【0031】
次に、良否判定の結果に拘わらず、良否判定結果データと計測データとをPLCへ送信する(ステップ405)。ここで良否判定結果データとは、良品か不良品かを示すデータのことであり、検査対象品の1個につき1つのデータである。また計測データとは、検査対象品1個の取り込み画像を画像処理した結果の濃度値を示すデータである。なお、この例では、計測データを2値化処理した後の傷または汚れに対応する画素数に基づいて求めた256段階の濃度値としているが、良否の度合いを示すデータであれば他のデータであってもよい。良否判定結果データと計測データの送信を終えると、続けて検査を終了するか否かの判定が行われる(ステップ406)。通常は検査を継続するのでステップ401に戻り、以降、検査が終了するまで上述の処理が繰り返される(ステップ401〜406NO)。そしてすべての検査対象品の検査が終了した時点で同図に示す処理を終了する(ステップ406YES)。
【0032】
次に、外観検査を行う場合のPLC側における処理について説明する。PLC103のCPUユニット2内のMPU207が行う処理フローが図5,図6に示されている。図4にて説明したように、視覚センサは検査対象品1個を検査するごとに良否判定結果データと計測データとを出力するので、PLCは検査対象品1個の検査ごとに視覚センサから出力された良否判定結果データと計測データを受信する(ステップ501YES,図4ステップ405参照)。このステップ501の処理は、請求項のデータ取得手段に相当する。PLC103のMPU207は、良否判定結果データと計測データを受信すると、受信した情報のうち良否判定結果データの内容判別を行なう(ステップ502)。受信した良否判定結果データの内容が良品であった場合には、良品カウント数を「+1」とし(ステップ502良品,ステップ503)、受信した良否判定結果内容が不良品であった場合には、不良品カウント数を「+1」とする(ステップ502不良品,ステップ504)。良品カウント数および不良品カウント数については、例えばワークRAM204、あるいはデータ格納用不揮発性メモリ205に記憶するようにすればよい。そしてMPU207はいずれかのメモリに記憶した記憶値について、現在値に1を加えた値にその都度更新すればよい。
【0033】
次いで、MPU207は計測データ(濃度値)について該当する分布域の度数を「+1」とする(ステップ505)。PLCでは計測データ(濃度値)がとりうる値を分布域に分け、分布域ごとの度数を例えばデータ格納用不揮発性メモリ205に記憶している(詳しくは図7にて後述する)。MPU207は受信した計測データ(濃度値)が予め定めた分布域のいずれに該当するかを判断し、該当の分布域度数の現在の記憶値に1を加えた値に更新する。要因データについても数値と回数を記憶する(ステップ506)。ここで、「要因データ」とは、温度、湿度、輝度、ラインのスピードなどの、測定に関する様々な環境要因のデータのことである。要因データのうち、温度や湿度については温度調節器や湿度計105からPLCが現在値を取り込み、それを例えばデータ格納用不揮発性メモリ205に記憶する。また、コンベアの搬送スピードについてはスピードメータ104からPLCが現在値を取り込み、記憶する。輝度などの視覚センサの検査情報については、視覚センサからPLCが受信して、記憶する。なお、外観検査システムにおける他の環境要因に関するデータもPLCが所定の機器から取り込めるようにしてもよい。
【0034】
通常の検査時は、ヒストグラムの表示要求が行われず、全ての検査対象品を検査し終えるまで検査が続けられるのが一般的である。従って、要因データの記憶の後は、PLC103のCPUユニット2のMPU207は、ヒストグラムの表示要求が行われず(ステップ507NO)、判定終了信号を受信せず(ステップ513NO)、ステップ501に戻り、ステップ501〜513を繰り返す。
【0035】
一方、検査中であっても現場の製造管理者等が良品の分布傾向を把握したくなった際には、管理者によるタッチパネル101の操作により、PLC103はタッチパネル101からヒストグラムの表示要求を受信し(ステップ507YES)、メモリ(例えば、データ格納用不揮発性メモリ205)に保存された計測データ(濃度値)の分布域ごとのカウント数よりヒストグラムを作成し、これをタッチパネル101上に表示する(ステップ508)。このステップ508は、請求項におけるヒストグラムデータ生成手段に相当する。また、要因データの表示要求があった場合には(ステップ509YES)、検査中断モードに移行した後に要因データの平均値を算出し、得られた平均値を表示する(ステップ510,ステップ511)。表示例については図10にて後述する。なお、ヒストグラムの表示要求がなく(ステップ507NO)、要因データの表示要求がなかった場合には(ステップ509NO)、判定終了信号の受信有無の判定に移る(ステップ513)。
【0036】
判定終了信号が送信される場合としては、検査対象品を切り替えるときや工場の一日の稼動を終了するときなどがある。PLCがタッチパネル等から判定終了信号を受信した場合には(ステップ513YES)、各種データの処理ステップに移行する。各種データの処理がはじまると、はじめに一時記憶領域に保存された要因データから要因データの平均値を求め、長期記憶領域に保存する(ステップ514)。次いで、一時記憶領域に保存された良否判定結果のカウント値と計測データ(濃度値)のカウント値とを長期記憶領域に保存する(ステップ515)。一時記憶領域に格納された各種データを長期記憶領域に保存した後に、一時記憶領域に格納されたデータをゼロクリアして、同図に示された処理を終了する(ステップ516)。なお、ここで「長期記憶領域」とはPLC内に設けられた所定の記憶領域(例えばデータ格納用不揮発性メモリ205等)であってもよいし、PLC内に設けられた別の各種記憶媒体、外部機器に設けられた外部記憶領域であってもよい。また、この例では要因データの表示要求があった場合には検査を一時中断するとしたが、検査を続行しながら表示するように構成してもよい。この場合には、表示要求があった時点までの要因データを用いて平均値を求めるようにすればよい。
【0037】
次に、図5,6を参照して説明した良品/不良品のカウント数、及び計測データの分布域度数のカウント数について詳細に説明する。良否判定結果データと計測データの各濃度値毎のカウント数を表した図表が図7に示されている。この例では、PLC103が受信した計測データの濃度値がとりうる値の全範囲を、予め定めた0から255の256段階に区分けする。視覚センサの説明で述べたように、濃度値とは、視覚センサ102にて撮像画像データの各画素を2値化処理し、傷や汚れの大きさを黒または白の画素の数の多さに比例するように定め256段階にわけたものである。例えば、検査対象品の傷や汚れが少なければ濃度値の区分け段階の数値が小さくなるようにし、傷や汚れが大きいほど濃度値の区分け段階の数値が大きくなるように定める。この例では具体的に、濃度の段階が0〜16なら良品とし、濃度の段階が17〜255なら不良品と定めている。そして、MPU207は、それぞれの段階における各カウント値をPLC内のメモリ(ワークRAM204またはデータ格納用不揮発性メモリ205等)の予め定められた領域(例えばD0からD255)に記憶する。そして段階0〜255のそれぞれのカウント値を対応するメモリ領域に記憶する。
【0038】
ここで良品の合計数は、良品とされる濃度値0〜16に対応するD0(濃度値0の度数)〜D16(濃度値16の度数)のカウント値を積算したものであり、別途定めたメモリ領域、例えばD1000に記憶される。同様に不良品の合計数は、不良品とされる濃度値17〜255に対応するD17(濃度値17の度数)〜D255(濃度値255の度数)のカウント値を積算したものであり、別途定めたメモリ領域、例えばD1001に記憶される。
【0039】
図7は、視覚センサより新たな良否判定結果と濃度値とが送られてくる毎に、メモリの記憶内容が更新されていく様子を示したものである。同図において、横軸は各メモリアドレス領域のそれぞれ対応するカウント値を示しており、良品の合計数がアドレスD1000、不良品の合計数がアドレスD1001、段階0〜255のそれぞれのカウント値がD0からD255に対応している。縦軸は時間要素であり、検査対象品の1個目を検査したときのメモリの記憶内容がL1行目に、検査対象品の17個目を検査したときのメモリの記憶内容がL17行目に対応している。つまり図7は、ある時点のメモリの記憶内容を1行ごとに示したものである。メモリに各行の情報を記憶し、変化の履歴を残してもよいが、ここの例では、検査対象品1個を検査して良否判定結果と濃度値とが送られれて来るたびに、メモリの各アドレス領域の記憶内容を上書きするといった更新方法を採用している。
【0040】
さて、検査が開始されると、視覚センサ102によって検査対象品の1個目が検査され、検査対象品1個目の良否判定結果と濃度値とが視覚センサ102からPLC103に送信される。PLC103がその結果を受信すると、MPU207が図5のPLC側処理フロー(その1)の処理を実行する。1個目の検査対象品が良品、濃度値分布が4段階であったなら、図7のL1行目のように、濃度値分布の4段階に対応するメモリアドレスD4に「1」が積算され(図5のステップ505に対応)、良品に対応するメモリアドレスD1000にも「1」が積算される(図5のステップ504に対応)。続いて、2個目の検査結果をPLC103が受信した場合もMPU207では同様の処理が行われる。つまり2個目の検査結果が不良品、濃度値分布が18段階であったなら、L2行目のように、不良品カウントD1001に「1」が積算され(図5のステップ503に対応)、濃度値分布の18段階に対応するメモリアドレスD18に「1」が積算される(図5のステップ505に対応)。このようにして、PLC103のMPU207は、検査対象品ごとに視覚センサより送られてきた濃度値と良否判定結果とを順次メモリに蓄積し、保存する。図7ではPLC103が17個目の検査結果を受信したところまでしか示していないが、それ以後も検査対象品の数に応じて順次更新され続ける。なお、これらのカウント値はPLCの一時記憶領域に随時上書きされながら保存され、検査が終了した時点でメモリアドレスD1000に記憶された良品のカウント値と、メモリアドレスD1001に記憶された不良品のカウント値と、メモリアドレスD0〜D255に記憶された各濃度毎のカウント値とが長期記憶領域に保存され、一時記憶領域に保存されたデータはゼロリセットされる。
【0041】
図7のカウント表のL17行目のカウント値を元にして作成したヒストグラムが図8に示されている。同図において、横軸は濃度値分布、縦軸はそれぞれの濃度毎の度数(カウント数)、801は良否判定ラインである。この良否判定ライン801の左側の濃度値分布0から16までの間が良品、右側の濃度値分布17以上が不良品にあたる。この例では、D0〜D18のうち度数が1以上であるのは、D3(1)、D4(5)、D5(6)、D6(2)、D7(3)、D8(1)、D9(1)、D10(1)、D11(1)、D18(2)であり、最も度数が大きいのはD5である。
【0042】
図5におけるPLCのMPU207の動作に照らして説明すると、検査対象品の17個目の検査が終ったとき(つまり検査中)に、現場の製造管理者が良品の分布傾向を把握したくなったとする。管理者はタッチパネル101を介してPLC103へヒストグラムの表示要求をする(図5のステップ507YES)。このとき、PLCのメモリの記憶内容は図7のカウント表のL17行目のとおりになっている。MPU207はメモリから図7のL17行目に示した情報を読み出し、ヒストグラムを作成するための情報を生成する。MPU207はタッチパネルへその生成情報とともに表示命令を出力し、タッチパネル表示器101にヒストグラムを表示させる(図5のステップ508)。このように測定結果をヒストグラム化し、表示器101に表示することにより、分布傾向の把握がしやすくなる。なお、この例では良否判定ライン801により良品/不良品が把握しやすいように構成したが、良品の範囲と不良品の範囲で度数表示の色を変える、バックグラウンドの色を変える、などの手法を用いても良い。
【0043】
次に、本発明の外観検査システムの画面表示例について説明する。メイン画面の表示例が図9に、ヒストグラムの表示例が図10に、各種数値のトレンドグラフ画面の表示例が図11に、それぞれ示されている。これらの表示画面を、図1の外観検査システム中の表示器101、または図1には図示していない視覚センサやPLCのモニタ手段、その他の表示手段に表示する。表示器101等が表示する表示画面中の情報は、PLCまたは視覚センサ等から取得する。
【0044】
図9のメイン画面の表示例では、製品の検査カウント数、良品数、不良品数などが表示されている。良品数はPLCのCPUユニット2内のメモリアドレスD1000に記憶されているカウント値情報であり、不良品数は同じくPLCのCPUユニット2内のメモリアドレスD1001に記憶されているカウント値情報である。検査カウント数は、良品数カウント値と不良品数カウント値の合計数であり、PLC側で予め計算処理しておいてもよいし、表示器101が良品数と不良品数とを取得した後に表示器101側で計算処理してもよい。表示器101は、いずれの情報もPLC102のCPUユニット2から随時取り込むか、PLC102のCPUユニット2へ都度データ要求をして取り込む。またメイン画面右上にはビデオ映像表示領域がある。図1に示したように、表示器101は、PLC103とつながる回線を利用してPLC103を経由して、または視覚センサ102とつながる回線を利用して直接視覚センサ102から、視覚センサ102の撮像画像を自動受信してモニタ表示できるようになっている。このモニタ画像は、現時点の視覚センサの取り込み画像を表示してもよいし、視覚センサ102にて画像処理(例えば2値化処理)した後の画像を表示してもよいし。他に、良否判定ラインに関する閾値や幅計測パラメータ、ばらつき警報値などを表示するための表示領域も設けられている。メイン画面下方にはタッチパネルに連動するタッチボタン領域があって、「ヒストグラム」のボタンをタッチ操作すると、図9のメイン画面から図10のヒストグラム画面に切り換わる。
【0045】
図10のヒストグラムの表示例では、濃度値がヒストグラム表示され、関連するばらつき警報値、幅計測パラメータなども同時に表示されている。このヒストグラムはPLC側にて判断および収集された情報をもとに表示する。ヒストグラム表示に用いる情報は、具体的にはPLC103のCPUユニット2が主に図5ステップ505の処理にて判断・収集した情報であり、図7で説明したPLC内のメモリのアドレスD0からD255に記憶されたカウント数である。図10のヒストグラムは、図8と同様に、横軸は256段階の濃度値分布(濃度欠陥値)、縦軸はそれぞれの段階ごとの度数(カウント数)である。そして、ヒストグラム中に閾値設定の情報として良否判定ライン1001を示すことができ、良否判定ライン1001の左側の濃度値分布が良品、右側の濃度値分布が不良品の区分を示す。ヒストグラムの略上半分には、図9と同様に、製品の検査カウント数、良品数、不良品数、良否判定ライン1001に対応する閾値、幅計測パラメータ、ばらつき警報値などを表示するための表示領域が設けられている。なお、ヒストグラム画面下方にはタッチパネルに連動するタッチボタン領域があって、「トレンドグラフ」のボタンをタッチ操作すると、図11のトレンドグラフ画面に切り換わる。
【0046】
図11のトレンドグラフ画面の表示例では、ばらつき警報値、最大度数の濃度値など複数のパラメータの時間変化が示されている。同図において、横軸は時間(月、日など)、縦軸は度数である。このようにばらつき指数や最大度数濃度値などの経時変化が一目で把握できることにより、不良品の発生頻度のみでなく良品の分布傾向からも異変を掴むことができる。
【0047】
先にも述べたように、本願の外観検査システムにおいては、良品の度数分布が一定の傾向を示した場合に、良品の程度がばらついてきた旨の警報を出すというものである。より具体的には、任意の幅計測パラメータにより決定されるばらつき指数とに基づいて「ばらつき警報」を判断している。また、本願の外観検査システムにおいては、良品の分布が不良品の分布に近づいてきた旨、換言すると、良品の分布が良品不良品の閾値に近づいてきた旨の警報を出すというものである。より具体的には、良品最大度数(最大度数濃度値)の位置が基準以上に不良品側に近づいたとき、異常察知であると判断している。
【0048】
まず、本発明の外観検査システムの表示器101において、幅計測パラメータにより決定されるばらつき指数とに基づいて「ばらつき警報」を判断することについて説明する。この「ばらつき」というのは、ある度数を超えた分布のひろがりを意味し、その広がりの大小によって異常か否か、または異常となる兆候があるか否かを判断する。表示器側では、ばらつき警報の判断をするために、後述の「幅計測パラメータ」を定義する。
【0049】
ばらつき許容範囲を超えているか否かの具体的な判断手法としては、ヒストグラムの256段階のそれぞれの濃度値分布(濃度欠陥値)について度数が最大(つまりヒストグラム中の縦軸の値が最大となる値)となる濃度値を求め、この度数を100%とし、最大度数の何%か(例えば50%)を超える度数に達した濃度値分布の広がりを調べることにより、判断することができる。ここで、「幅計測パラメータ」とは度数の最大値とヒストグラムの各分布との比であり、濃度値分布の広がりを調べる範囲を特定するために用いられるパラメータである。「幅計測パラメータ」は、例えば「%」の数値で表わすことができる。具体的に例示すると、例えば図8の開示範囲においては、ヒストグラムの度数の最大値はD5(段階では6段階目)の度数「6」である。ここで、度数3以上を広がり判断の対象にしようとするなら、3÷6=0.5であり、これを%の数値にした「50」が幅計測パラメータとなる。図8において最大値度数は「6」なので、判断基準となる幅計測パラメータを50とすると、ヒストグラムの256段階のうち、度数「3」を超える濃度値分布が対象となる。
【0050】
次に、「ばらつき」の求め方について図8を用いて具体的に説明する。先にも述べたように、本発明の外観検査システムでは、幅計測パラメータを用いて求めるばらつき指数がばらつき警報値を超えた場合にばらつき警報を出力し、濃度値分布がばらついていることを警告するものである。なお、この例では幅計測パラメータは50とする。先ず濃度値分布の最大値255から0に向かって最初に幅計測パラメータを超える濃度、即ち度数「3」以上となる濃度値を検索する。この例ではD7であり、これがばらつきの上限となる。つぎに濃度値分布0から最大値の255に向かって最初に幅計測パラメータを超える濃度、即ち度数「3」以上となる濃度値を検索する。この例ではD4であり、これがばらつきの下限となる。上限となる濃度値と下限となる濃度値との間の幅(上限・下限を含む)がばらつきを示す「ばらつき指数」となる。この例では上限D7と下限D4との間の幅は「4段階」、つまりばらつき指数は「幅4」となる
【0051】
この「ばらつき指数」の傾向を把握することにより「これ以上ばらつくと不良品が多発する」等という現象を予測することができる。つまり、「ばらつき指数」とは、幅計測パラメータとして設定された任意値よりも度数の高い濃度値の分布幅を表す指標ということができ、異常察知の基準の一つとして利用できる。表示器側では、このばらつき指数が設定したある閾値を超えると、異常察知であると判断する。図9,10の例においては、ばらつき警報値を「6」と設定している。
【0052】
次に、本発明の外観検査システムにおいて、最大度数(最大度数濃度値)の位置が基準以上に不良品側に近づいたとき異常察知であると表示器101側にて判断することについて説明する。最大度数が不良品側に近づき過ぎてないか判断するために、先ず濃度値分布の最大値255から0に向かって各度数を検索し、その最大値となる濃度値分布を求める。図8の例では度数6であるD5(6段回目)が最大度数濃度値であるから、最大度数濃度値が「6」と求まる。この最大度数濃度値が所定の最大度数接近判定値を超えているかどうかを比較し、最大度数濃度値が最大度数接近判定値を超えている場合には、「不良品が多発する傾向にある」等という現象を予測することができ、最大度数濃度値と最大度数接近判定値が同じまたは下回る場合には、「不良品が多発する傾向がない」と判断する。例えば、ばらつき警報値として「最大度数基準値」を「6」と設定した場合には、度数の最大であるのはD5の6段階目だから、最大度数濃度値は「6」であり、「ばらつき警報値」の「6」を超えていないので、「不良品が多発する傾向がない」と判断する。なお、判断に用いる「所定の最大度数接近判定値」についても、前述のばらつき警報値と同様に表示器101上に表示領域を設けてもよい。
【0053】
以上においては、表示器101側にてばらつき警報を判断する構成を説明したが、表示器に代えてPLC側にて判断し、その結果を表示器にて表示する構成としてもよく、また、表示器以外のモニタ表示等(図示せず)にて判断する構成としてもよい。同様に、最大度数濃度値が最大度数接近判定値を超えたかどうかについても、表示器に代えてPLC側にて判断し、それを表示器にて表示する構成としてもよいし、表示器以外のモニタ表示等(図示せず)にて判断する構成としてもよい。
【0054】
本発明の外観検査システムの表示器101において、ばらつき警報もしくは最大度数濃度値による警報が出力される場合のヒストグラムの例が図12に示されている。図12(a)において、1201は良否判定ライン、1202は幅計測ラインである。良否判定ライン1201は、図10の良否判定ライン1001に対応するもので、良否判定ライン1201より左側の濃度値分布が良品、良否判定ライン1201より右側の濃度値分布が不良品である。幅計測ライン1202は、幅計測パラメータを「50」、つまりヒストグラム中の縦軸の値が最大となる値の50%に該当する度数を示したものである。この幅計測ライン1202を超えた分布(図12中の棒グラフの白部分)がひろがり幅を求める対象であることを示す。そして図12(a)には、幅計測パラメータとばらつき指数による警報パターン例が示されている。図12の1−1において、幅計測ライン1202を上回る度数は、D3とD4であるから、「ばらつき指数」は、この両者の間の幅である「2段階」、つまり「幅2」である。図10のようにばらつき警報値を「6」と設定していた場合には、「幅2」はばらつき警報値の「6」に達していないため、1−1の状態は正常と判定される。一方、図12の1−2において、幅計測ライン1202を上回る度数は、D3、D4、D6、D8、D9であるから、「ばらつき指数」は、D3とD9の間の幅である「7段階」、つまり「幅7」である。幅7はばらつき警報値「6」を超えているので、1−2の状態は以上と判定されてばらつき警報が出力される。
【0055】
正常時である図12の1−1のように、ヒストグラムのばらつきが最大度数の前後に集中していて、そのばらつき幅が狭いのに対して、警報発生時である図12の1−2のヒストグラムを見ると、幅計測ライン1202を上回る度数の範囲が広く、そのばらつき幅が不良域(つまり良否判定ライン1201)に近づいていることがわかる。本発明の外観検査システムでは、このばらつきが予め設定したばらつき警報値を超えると警報を出力する。
【0056】
図12(b)には、本発明の外観検査システムにおける検査結果のヒストグラムについて、最大度数濃度値による警報パターン例が示されている。警報発生時(2−2)には、正常時(2−1)と比べて最大度数濃度1203が不良品側に近づいていることがわかる。最大度数濃度1203が予め設定した基準を超えると警報が出力される。ここで、最大度数基準値を「6」として正常と異常について説明する。図12(b)の(2−1)においては、最大度数濃度値1203aはD3であるから、「4段階目」である。最大度数濃度値4は最大度数基準値6を超えていないから、2−1は正常であると言える。一方、図12(b)の(2−2)においては、最大度数濃度値1203bはD6であるから、「7段階目」である。最大度数濃度値7は最大度数基準値6を超えているから、2−2は異常であると言える。
【0057】
次に、表示器101におけるばらつき警報判定処理の具体的な処理について説明する。本発明の外観検査システムの表示器101におけるばらつき警報判定処理のフローが図13、14に示されている。この例では、表示器101は、PLC103の一時記憶領域に保存された濃度毎の度数の情報を要求し、PLC103より取得した情報を用いてばらつき指数を求める。ばらつき警報判定処理が開始されたときは、通常、外観検査実行中でなく(ステップ1301NO)、警報確認を要求されている(ステップ1302YES)。警報確認の処理は、図12aの1−1または1−2にて説明したような、幅計測パラメータとばらつき指数に基づいて「ばらつき警報」を判断する処理に対応する。なお、図13,14に示されたばらつき警報判定処理は、請求項の出現間近判定手段に相当する。
【0058】
警報確認については、先ずはじめに各濃度毎の度数が参照され、最も度数の大きい濃度が求められる(ステップ1303)。そして、最大度数と幅計測パラメータ(任意に設定)を用いて、以下の条件Aを求める。
Di>(幅計測パラメータ×最大度数÷100)・・・条件A
なお、幅計測パラメータは予め設定されるものであるが、例えば幅計測パラメータ=50とすれば、条件Aは最大度数の50%以上の度数を有する濃度を求めることとなる。この条件Aによって、図12aの1−1または1−2における幅計測ライン1202が定まる。つぎに、iに良否判定値を代入し(ステップ1304)、濃度iの度数Diが条件Aの幅計測ライン1202を超えるかどうかを判断する。つまり、図12aにおいて、良否判定ライン1202から左側へ順番に各濃度毎の度数が条件Aの幅計測ライン1202を超えるかどうかを判断する。条件Aを超えなかった場合には、「i=i−1」とし(当初のiより1減じた数を新たなiとする)、条件Aを満たす最初の濃度iが見つかるまでこの演算を繰り返す。この処理によって、一番初めに条件Aの幅計測ライン1202を超えた濃度分布の値を求めることができる(ステップ1305,1306)。具体的には、図12aの1−1においてはD4がそれに該当し、図12の1−2においてはD9がそれに該当する。条件Aを満たす最初の濃度iが見つかったら、この値を記憶する(ステップ1307)。この濃度分布の値は「ばらつきの左端」、換言すると「ばらつきの上限」を示す情報となる。
【0059】
次いで、ばらつきの右端を求めるために同様の演算を行う。ばらつきの右端を求めるには、図12aでいうと濃度分布の値が「0」のところから右へ順番に各濃度毎の度数が条件Bの幅計測ライン1202を超えるかどうかを判断する。つまり、条件Bを満たす最初の濃度jを求める(ステップ1308,1309、1310)。ここで求められる濃度jは、ばらつきの下限となる値である。
Dj>(幅計測パラメータ×最大度数÷100)・・・条件B
なお、濃度jの初期値はゼロであり、幅計測パラメータはばらつきの上限を求めたときと同じ値を用いる。濃度jが条件Bを満たさなかった場合には、「j=j+1」とし(当初のjに1加えた数を新たなjとする)、条件Bを満たすjが見つかるまでこの演算を繰り返す(ステップ1309NO,1310)。条件Bを満たす最初の濃度jが見つかったら、この値をばらつき指数を求めるための濃度Bとする(ステップ1311)。具体的には、図12aの1−1においてはD3がそれに該当し、図12の1−2においてはD3がそれに該当する。これらの値を濃度Bとして記憶する。この濃度分布の値は「ばらつきの右端」、換言すると「ばらつきの下限」を示す情報となる。
【0060】
次に、条件Aを満たす濃度Aと、条件Bを満たす濃度Bを用いて、以下の式よりばらつき指数を求める(ステップ1312)。
ばらつき指数=A−B+1
この処理により、具体的には、図12aの1−1においては「幅2」が求まり、図12の1−2においては「幅7」が求まる。この式より求められたばらつき指数が、予め設定されたばらつき警報判定値を上回った場合には、ばらつき警報を出力する(ステップ1313YES,ステップ1314)。ばらつき指数がばらつき警報値未満であった場合には、警報を出力せずに当該処理を終了する(ステップ1313NO)。図12aにおいては、ばらつき警報判定値を「6」としていたので、1−1においては「警報なし」であり、1−2においては「警報あり」と判定した処理が、この一連の処理に対応する。。
【0061】
また、図8の例で説明すると、最大度数はD5の「6」である。幅計測パラメータを「50」として条件Aに該当する濃度A(ばらつき上限値)と、条件Bに該当する濃度B(ばらつき下限値)を求めると、それぞれ濃度A=5、濃度B=4となる。従って、図8の例においては、
ばらつき指数=5−4+1=2
となり、ばらつき指数は2と判定される。従って、ばらつき指数「2」がばらつき警報値を超えていた場合にはこの時点ばらつき警報が出力され、ばらつき警報値を超えていなければこの時点ではばらつき警報は出力されない。
【0062】
次に、表示器101における最大度数接近警報処理の具体的な処理について図12,15を参照しつつ説明する。本発明の外観検査システムの表示器101における最大度数接近警報の処理フローが図15に示されている。この例では、表示器101は、PLC103の一時記憶領域に保存された濃度毎の度数の情報を要求し、PLC103より取得した情報を用いて最大度数の接近判定を行う。最大度数接近の判定処理が開始されたときは、通常、外観検査実行中でなく(ステップ1501NO)、警報確認を要求されている(ステップ1502YES)。最大度数接近警報確認の処理は、図12bの2−1または2−2にて説明したような、最大度数基準値と最大度数濃度値とに基づいて「最大度数接近警報」を判断する処理に対応する。なお、この図に示された最大度数接近警報処理は、請求項の出現間近判定手段に相当する。
【0063】
警報確認処理では、先ずはじめにD0〜D255の中で最も度数の大きい濃度値が求められ、この最大度数Dcの濃度を濃度Cとする(ステップ1503)。図12bの例で説明すると、2−1における最大度数はD3であり最大度数を有する濃度値は「3」となる。また、2−2における最大度数はD6であり最大度数を有する濃度値は「6」となる。次いで、濃度Cが任意に設定された最大濃度接近判定値を上回っているか否かの判定を行い、「濃度C>最大度数接近判定値」であった場合には(ステップ1504YES)、ピーク接近警報を出力する(ステップ1505)。「濃度C≦最大度数接近判定値」であった場合には(ステップ1504NO)、そのまま当該処理を終了する。図12bの例で説明すると、最大度数接近判定値を「6」とした場合に、最大度数濃度値が「4」である2−1は正常であり最大度数接近警報は出力されない。一方、最大度数濃度値が「7」である2−2は異常であるため最大度数接近警報が出力される。
【0064】
また、図8の例で説明すると、最大度数はD5の「6」である。従って、この「5」という値が最大度数接近判定値を超えていた場合にはこの時点で最大度数接近警報が出力され、最大度数接近判定値を超えていなければこの時点では最大度数接近警報は出力されない。
【0065】
なお、図13〜15の例では、外観検査の実行中には警報が出力されないようになっているが、検査実行中にも出力されるように構成してもよいことは言うまでもない。例えば、検査中であっても、一定時間ごとにばらつき指数や最大度数濃度値などを求め基準値と比較するように構成すれば、検査実行中であっても出力可能となる。
【0066】
次に、要因データとヒストグラムとの相関について説明する。要因データとヒストグラムとの相関関係を説明する図が図16に示されている。PLC2内のメモリに温度、湿度、照明輝度などの要因データと、計測データ(濃度値)とを関連付けて保存することにより、検査結果と環境要因との相関関係を把握しやすくなる。温度情報や湿度情報については、PLC103が温度調節器/湿度計から受信する。照明輝度情報については、PLC103が視覚センサ102から受信する。例えば、視覚センサ102が図4のステップ405を処理することにより、計測データとともに要因データをPLC103へ送信するような構成とし、PLC103が図5のステップ501を処理することにより、計測データとともに要因データを視覚センサ102から受信する。なお、要因データを計測データの一種と扱うような構成とすることもできる。そして現場管理者は表示器の表示画面を通じて、要因データと計測データとの相関関係を把握することにより、たとえば良品にばらつきが生じた場合でも、温度等の環境要因の影響によるものであり特に問題なし、環境要因以外に原因があると推測され問題がある、などの判断も可能となり、警報の精度がより高くなる。
【0067】
本発明の外観検査システムにおいては、次式に基づき推奨良否判定値を算出することも可能である。
推奨判定値=μ+3σ
(x:計測データ、n:検査数、μ=Σx/n、S=Σ(x^2)−(Σx)^2/n、V=S/(n−1)、σ=√V)
上記の式より良否判定値を求めることにより、ノウハウ等の個人差に依らず好ましい良否判定値を設定することが可能となる。算出した推奨良否判定値は、PLCのMPU207が処理する図5のステップ502における判定値に利用することが好ましく、図8における良否判定ライン801や図12における良否判定ライン1201として表示するとよい。
【0068】
以上の例では濃度値1つ毎に区切って判定を行う構成について述べたが、本発明においては、濃度値2つ毎、濃度値3つ毎・・・などの単位で濃度値を区切り、複数の濃度値を含む数領域単位で判定を行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】外観検査システム構成図である。
【図2】PLCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】外観検査の一応用例を示す図である。
【図4】視覚センサ側の処理を示すフローチャートである。
【図5】PLC側の処理を示すフローチャート(その1)である。
【図6】PLC側の処理を示すフローチャート(その2)である。
【図7】カウント値を表す図表である。
【図8】ヒストグラム表示の一例である。
【図9】画面表示例(その1)である。
【図10】画面表示例(その2)である。
【図11】画面表示例(その3)である。
【図12】警報発生例を示す図である。
【図13】ばらつき警報の処理を示すフローチャート(その1)である。
【図14】ばらつき警報の処理を示すフローチャート(その2)である。
【図15】最大度数接近警報の処理を示すフローチャートである。
【図16】ヒストグラムと要因データとの相関関係を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
2 CPUユニット
101 表示器
102 視覚センサ
103 PLC
104 スピードメータ
105 温度調節器/湿度計
201 ユーザプログラムメモリ(UM)
202 入出力メモリ(IOM)
203 ROM
204 ワークRAM
205 データ格納用不揮発性メモリ
206 アプリケーションスペシフィックIC(ASIC)
207 マイクロプロセッサ(MPU)
301 視覚センサ
302 角形シート
303 ベルトコンベア
304 計測領域
305 キズ
306 リング状製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚センサと所定の制御装置とを通信を介して接続してなる外観検査システムであって、
視覚センサは、
検査対象物の外観を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
撮像手段から得られる画像データを画像処理することにより、検査対象物の外観良否の程度と相関のある数量データを生成する良否数量化手段と、を含み、
制御装置は、
検査対象物が検査されるたびに視覚センサから得られる数量データを取得するデータ取得手段と、
データ取得手段により逐次取得される数量データに基づいて、一連の数量域を構成する各数量域毎の数量データの出現度数を表すヒストグラムデータを生成するヒストグラムデータ生成手段と、
ヒストグラムデータ生成手段により生成されるヒストグラムデータ上において、良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布の所定特徴に基づいて不良品の出現間近を判定する出現間近判定手段と、を含む、
ことを特徴とする外観検査システム。
【請求項2】
出現間近判定手段における判定基準となる度数分布の所定特徴が、良品に相当する一連の数量域内における数量データの度数分布のばらつきの程度であることを特徴とする請求項1に記載の外観検査システム。
【請求項3】
出現間近判定手段における判定基準となる度数分布の所定特徴が、良品に相当する一連の数量域内における数量データの最大度数を示す数量域と不良品に相当する数量域との距離であることを特徴とする請求項1に記載の外観検査システム。
【請求項4】
所定の制御装置が、プログラマブル・コントローラにより構成されており、データ取得手段とヒストグラムデータ生成手段と出現間近判定手段とがプログラマブル・コントローラに含まれている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外観検査システム。
【請求項5】
所定の制御装置が、プログラマブル・コントローラとプログラマブル表示装置とを含んで構成されており、データ取得手段とヒストグラムデータ生成手段とがプログラマブル・コントローラに内蔵されており、かつ出現間近判定手段がプログラマブル表示装置に含まれている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外観検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−198803(P2007−198803A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15605(P2006−15605)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】